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■オープニング本文 「チョコレート・ハウス?」 コクリ・コクル(iz0150)が突拍子もない声を上げた。 場所は整備がほぼ完了した白い湯と肌にしっとりとなじむ温泉「美人の湯」。ほこほこと湯気が舞う中、胸元まで漬かったコクリの頬は色っぽく上気している。大きな手の平の形をした板から柄が伸びる「ぽろりはんど☆」を持っているのは、手持ち無沙汰だったりするのと、割と気に入ったから。 「そ。チョコレート・ハウス」 色っぽく繰り返すのは、その隣に漬かる対馬涼子。 「飛空船の名が知ってもらえれば、当然商売もやりやすくなるわよね。『新対馬丸』でも良かったんだけど、2月のチョコレート輸送がことのほか関係者に喜ばれて、この名前が愛称になっちゃったわけ」 「艦長の八幡島さん、『対馬丸』の名前にこだわりがあったようだけど‥‥」 がははと笑う豪快な艦長の姿を思い浮かべながらコクリが心配する。ちなみに、飛空船ではあるが武装しての戦闘行動が可能なため一般分類は「艦」となり、従って肩書きが「船長」ではなく、「艦長」となるのだそうだ。 「嫌がったわね。激しく。‥‥でも、こちらは商売でやってますからね。八幡島には長い事世話にはなったけど、艦長職は退いてもらったわ」 涼子、涼しい顔して肩に湯を掛けながらさらりと言ってのけた。 「ええ〜っ!」 「そんな顔しないの。‥‥実際、八幡島は飛空船の運用全般の職人であって、戦闘指揮の専門家でも商売の専門家でもないの。分かるわね、この理屈。‥‥だから、この機会に組織図を一新したわけ」 ちょん、とコクリの額に人差し指を乗せて、立ち上がって抗議しそうな勢いを止めた。温かい笑みをたたえているのは、八幡島を気遣ったコクリの優しさを愛おしく思っているから。 「いい? 八幡島は、操船部門の総責任者たる副艦長になってもらいました。‥‥実質今までと同じだし、『チョコレート・ハウス艦長』っていう可愛らしい名前を嫌った彼もこれを喜んでるわ」 「八幡島さんが喜んでるんならそれでいいけど、それじゃ、艦長は?」 「もちろん、コクリちゃんが艦長よ?」 「ええええ〜っ!」 驚きのあまりざばっと立ちあがるコクリ。涼子はコクリから「ぽろりはんど☆」を奪って彼女の前を隠す。 「ボク、一人で気ままなところがあるから艦長なんてできないよ〜」 「安心して。コクリちゃんにやってもらいたいのは、『チョコレート・ハウス』の顔になってもらいたいだけ。‥‥うふふっ。売れるわよ〜、きっと。‥‥新たなチョコレート・ハウス艦長の主な仕事は、そこね。操船は副艦長にお任せ。戦闘は、開拓者を雇うことになるから、その時のメンバーで話し合えばいいと思うわ。コクリちゃんにやってもらいたいことは、みんなの話をよく聞いて、取りまとめてもらうこと」 「それならまあ、いいけど‥‥」 「じゃ、早速チョコレート・ハウスを出港させて。‥‥艦長になったのに乗ることがない、じゃ実感がわかないでしょ? 前のチョコレート臨時航路にいたアヤカシ、少しでも倒しておいてチョコレート産地に『チョコレート・ハウス』が成果を上げていることを知らせ機運を守り立てるわよ」 「う、うん。分かった‥‥」 コクリ、あまりの展開の速さに頭がついていかない。長風呂をしてのぼせ気味で、頭がうまく回らないこともある。ほぼ涼子のいいなりだったり。 「安心して。初陣で酷い目にさんさんたる結果は出せないから、アヤカシの比較的少ないだろうと目されている場所を選んでおいたわ。‥‥チョコレートの好きな人のため、頑張ってね」 こうして、中型飛空船「チョコレート・ハウス」に乗り込み森林内のアヤカシ退治をする依頼が開拓者ギルドに張り出された。 戦闘想定場所は、チョコレート臨時航路の森林中、唯一着陸できる広場から東北に位置する地点。「幽霊型のアヤカシ」の巣窟だが、いるのは15匹程度とのこと。 森林内は何かと狭く薄暗い。道なき道を行くため、陸戦の小型朋友の同行が効果的か。 空戦用朋友同行の場合は、空に逃げた幽霊の掃討ができる。森林内に無理なく着陸する場所がないため(強行着陸はできる。が、敢行した場合は然るべき数値が減少する)、逃げてくるまでは上空待機となりそう。コクリはこちらを担当する。 |
■参加者一覧
のばら(ia1380)
13歳・女・サ
新咲 香澄(ia6036)
17歳・女・陰
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
ベアトリーチェ(ia8478)
12歳・女・陰
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ● 「あの、八幡島さん? 本当によかったの」 中型飛空船「新対馬丸」改め「チョコレート・ハウス」の艦橋で、コクリ・コクル(iz0150)が八幡島副艦長の顔色を伺っていた。 「がはは、いいにきまってるじゃねぇか。俺も艦長職には飽きてきたところだ。そろそろ跡継ぎを考えにゃならん時期でもあった。‥‥それに、こんな可愛い名前の艦に、こんな可愛い新艦長を迎えることができたんだ。こんなに嬉しいことはないねぇ」 無骨な八幡島はそう笑う。 「でも、何だか悪いよ」 「いいや、悪かねぇ。船は名前からして一つの家族だ。可愛い名前の船に俺みたいにむさい艦長だとちぐはぐだな。乗組員全員もちぐはぐな気持ちになる。‥‥そんな船は遠からず墜ちちまうなぁ。逆に、ぴったり来るのが艦長やってりゃ、少々穴が空こうが高く高く飛べるってな」 機嫌よく言う八幡島に、コクリは「ふうん」と納得したり。 「それじゃ、まずはコクリちゃん、船長就任おめでとうだよっ」 待ってましたとばかりに新咲 香澄(ia6036)がコクリに抱き付いてくる。 そして、リィムナ・ピサレット(ib5201)も向日葵のような元気一杯の笑顔で。 「コクリちゃんお久ー! 空賊のお頭になったんだって?」 「空賊? いやそれ違うよ」 「え、艦長? ‥‥それでもおめでとう。頑張ろうね」 香澄とリィムナにもみくちゃにされるコクリ。 と、ここでルンルン・パムポップン(ib0234)がにこにこと。なにやらおっきな巻物を持っている。えっへんと胸を張り、ババーン☆と広げるルンルン。 「『乙女が青春のショコラキッス号』で、王子様のハートもバッチリです!」 「いや、ルンルンさん。『チョコレート・ハウス』だから。みんなの空のお家だから」 「‥‥チョコレートなら甘いのかな?」 ルンルンの言葉を聞いて、リィムナがコクリのほっぺにキスする。 「小手毬隊のメンバーもいっぱい集まったね。‥‥ボクも、コクリちゃんのためなら一肌でも二肌でも脱ぐよっ、ボクたちにしっかり任せてねっ」 「やぁん、ボクの服が脱げちゃうよ〜」 コクリ、さらにもみくちゃ。リィムナが満足そうなのでキスの味は甘かったようで。 「アンタは男一人で大変だな」 「そうでもない」 八幡島に話を振られて、竜哉(ia8037)が自分の肩に座っている人妖の鶴祇を見た。 「ろりぃ隊でちょうどいいのがいるしな」 「誰がロリじゃ。後で箱の中に入るがいい」 メイド服姿の鶴祇、どうやら主人の竜哉とは対等の関係らしい。鋭く突っ込む。 「ボ、ボク、艦内を見て回ってくるね」 服が乱れまくったコクリは何とか脱出。見かねた八幡島は「やれやれ」と、香澄やリィムナ、ルンルンに操船など教えるのだった。 そして、甲板。 「こうしてコクリと一緒に行動するのは久しぶりね」 風に、豊かな銀髪がなびいていた。 舳先に独り佇んでいたのは、ベアトリーチェ(ia8478)。 「うん。ボク、嬉しいよ」 「‥‥別に開拓者の仕事をサボってたわけじゃないのよ?」 「分かったから顔近づけないで〜」 ごごごと詰め寄るりちぇさんに、コクリはたじたじに。 すると、ベアトリーチェの様子が変わった。 「‥‥ノバラが帰ってきたわね」 コクリが視線を追うと、一騎の龍がすでにばさあと着艦態勢になっていた。炎龍・義流 兼石に乗って偵察に出ていたのばら(ia1380)である。 「コクリさ〜ん。千代蓮さんの周りにアヤカシはいないですよ〜」 ぶんぶん手を振りながら報告するのばら。どうやら、ちょはす‥‥ではなく、チョコレート・ハウスの周辺空域に危険は存在しないようである。 やがて、チョコレート臨時空路の休憩地となる空き地にひとまず着陸するのだった。 出撃、である。 ● 「今回は、事前に調査した地図があるからやりやすいよねっ」 コクリが自分のグライダーを用意しながら言う。 すでに、幽霊アヤカシ討伐隊は「ショコラ隊」として出発している。ネーミングは、ルンルンの広げた巻物から取ったらしい。 「コクリ、あなたは船の護衛についてもらうわ」 一緒に残っているベアトリーチェがぴしりと言い切った。二人は後から出発して空からの索敵・援護をする手筈であった。 「え〜っ!」 「艦長であるコクリに怪我でもあったら全員の士気に関わるわ」 この一言にしぶしぶ納得。ベアトリーチェは独りで駿龍・ダンテに乗って飛び立つのだった。 一方、森の中を行くショコラ隊。 「幽霊アヤカシがいるとなれば、ケモノの類も大分参ってそうだな」 先頭に立ち道なき道を行く竜哉がつぶやいた。確かに、鳥のさえずりなどはない。 「‥‥それに、チョコレート自体滋養強壮の薬にもなる。一般に流通するようになれば苦しむ人の役にも立つ」 「ふむふむ、気合いを入れて頑張らねばの」 主人のしっかりした思いと的確な状況判断に、いつも突っ込みの厳しい鶴祇も誇らしそうな様子だ。 「幽霊だけに、木とか障害物をすり抜けてくるかもですよ!」 のばらが寄って来てそう声を掛ける。 いろんな場所から来る可能性を考慮し、竜哉の後ろについて広範囲を警戒しているのだ。 この思いはショコラ隊の共通認識。 「ベアトリーチェさんとコクリちゃん、大丈夫かな?」 任せたよ、と言って分かれたはいいが、やはり気になる香澄が最後列で振り返りながら後ろを警戒。 「不意打ちには注意、鼻先に幽霊の顔がぬっと出てきても慌てないように‥‥」 ぶつぶつ言いながら香澄の前を行くリィムナもきょろきょろ。 そして、空は早い。 上空にはすでにダンテのベアトリーチェが旋回していた。 「‥‥見つけたわ」 人魂で小鳥を放っていたが、目撃地域を地図を確認していたこともありあっさり幽霊アヤカシの巣を発見した。 敵の数は、十五体。 ピッ、ピッ、ピッと3回短く呼子笛を吹く。事前に取り決めた、左からという合図である。 「左だって!」 「いましたっ。発見しちゃいました」 陸上では、香澄が合図に反応し、ルンルンが進行方向左手に幽霊がたむろしているのを目視確認していた。かなり距離がある。 十分、奇襲できる状態であった。 「リィムナ、鶴祇を頼む」 「サジ太は初陣だから無理しちゃ‥‥え? わわわ」 「まかせるがよい。この娘らには傷一つ‥‥こほん。世話になる」 竜哉が人妖を後衛のリィムナに預け突っ込む。リィムナの方は組んだばかりの迅鷹・サジタリオに無理しないよう指示したところで、肩に飛び乗ってくる鶴祇をキャッチ。 「剣術だけじゃなく、体術も母様仕込みなのですよ」 ガキリ、と両拳のアーマードヒットを鳴らしてからのばらも続く。小柄な体で大きく振りかぶって戦う元気少女は、小さくピリッと戦うのもお好き。軽快な動きで竜哉に続く。 敵は、ここでようやく事態に気付いたようだ。 もう遅くはあるが、しかしッ! ● 「あっ」 声を上げたのは、上空のベアトリーチェだった。すでに人魂の効果は切れている。 「ゴメン、来ちゃった。‥‥兼石さん、やっぱりのばらさんのそばに少しでも近い方がいいみたいで‥‥」 コクリがグライダーで兼石さんを連れてきていたのだ。 「それはもういいわ、コクリ。それより、苦戦しそうよ?」 「えっ?」 もう一度人魂を出しつつ、ベアトリーチェが下を指差した。 下では、想定してなかった事態に陥っていた。 「知覚攻撃の集中砲火‥‥しかも、距離を取るか」 竜哉が、幽霊から逃げながら呪声を滅多打ちされていた。 そう。 敵は物理攻撃を仕掛けて来ないので、寄って来ないのだ。後ろに逃げずに左右に展開するあたり、敵もやる気満々の様子。が、距離は約3スクエア。これが敵の間合いともいうべきだろう。 本来、近接戦闘を得意とするサムライにとっては辛い展開だが‥‥。 「まあ、準備はしてきたが‥‥フィーッシュ!」 用意した長い鞭が戦況に見事にはまった。 とはいえさすがに透過するので鞭を絡ませることはできないが、ダメージはある。 「任せて。‥‥ボクの火はそんなに甘くないよっ」 香澄も火輪で積極的に攻撃に出る。 「あっ、固まってる。よ〜しっ!」 リィムナは、ブリザーストーム。射程から巻き込んだ数は少なかったが、敵はさらに分散した。乱戦に持ち込める。なにより、集中砲火の数が分散した。 「対馬丸さんの後を継ぐ子は、つおいんですっ!」 サムライののばらは、咆哮一発。今乗るはかつて戦い思い出を作った船の後継艦。自分が立派に育てるのですという勢いだ。 「負けませんっ。精一杯頑張るのですよっ!」 たちまち集まり威嚇しながら攻撃してくる幽霊に立ち向かうのばら。 「終之拳・捨絶!」 ぐうんと両拳を固めて背伸びしてから、げしりと振り下ろすッ! 両断剣ならぬ両断拳だっ。 「あわったたた‥‥」 幽霊は霧散したが、手応えがないだけにつんのめってばたばたしたりも。ぐっ、と踏ん張り次を睨む。 その、のばらの前を影が行くっ。 「ライトアップルンルン‥‥。3種合体ニンジャ変化。ニンジャの心が一つになれば、一億と2千年後も安心なんだから!」 忍鳥『蓬莱鷹』(注・迅鷹です)と金剛の鎧で防具同化しルンルンが突っ込んできたのだ。三角跳から理で影分身しながら刀「水岸」を振るう。とにかく守りを固め相手を翻弄し、のばらと共に力で叩く。 しかし、目立った。 ルンルンとのばらに敵が集中する。 「交わしちゃいますっ。‥‥ハリケーンルンルンッ」 今度はルンルンの足が煌いた。とん・たたんと軽やかに大きく、素早く動いて敵からの攻撃を引き付けつつ戦場をかく乱する。 「あっ、逃げるのですっ」 のばら、咆哮が切れて散り散りになる幽霊にもう一度咆哮。しかし、今度はさすがに効きが悪い。 ――戦場は、生きている。 最前線の影では、別の動きがあった。 「さぁ観羅、今回もよろしくだよっ」 「ふん、アヤカシ退治か、手伝ってやろう」 香澄が、白い管狐・観羅を呼び出していた。もふりと揺らめく3本のしっぽ。って、えらく気品の高そうな管狐である。 もちろん、孤立するのばらを助けようと動いていたのである。 突っ込む理由はただ一つ。 「ボクの秘技を使うときが来たね‥‥」 走りながら不敵な笑み。彼女を動かすのは、戦友を独り矢面にさらせないという気高き思い。突入はルンルンから遅れたが、ゆえに力にならねばという心が燃える。 「観羅との同化で強化した瘴刃烈破を‥‥」 肩に纏うように従っていた観羅が消え、代わりに煌く忍刀「風也」。武器のきらめきを受け香澄の瞳が赤みを帯びるッ! 「‥‥くらえっ!」 「今、ニンジャ合体です蓬莱鷹‥‥全てはジダイの導きのままに!」 振り下ろし滅した香澄の背後に着地したルンルン。今度はマスタールンルン(本人談)だっ。ヴォォォン、と光を帯びる刀「水岸」。たちまち太鼓の撥さばきのような速さでヴォンヴォン振るいまくる。 そして、リィムナ。 「サジ太、あそこっ」 ホーリーアローの射程は長い。リィムナは魔杖「ドラコアーテム」を掲げて連発し、さらにサジタリオには風斬波を指示する。 「そなた、もうちょっと寄れぬか。神風恩寵でまとめて癒せるが」 「鶴ちゃん、分かったよ」 ‥‥何げに朋友2体状態で忙しかったり。 「逃げるか? それもいいが‥‥」 鞭を振るって広範囲に戦っていた竜哉は、表情も変えずにつぶやいていた。 「‥‥空ってのは、止しておいたほうがいい」 見上げる竜哉。どこかでピイイィっと呼子笛も鳴った。のばらだ。あちらでも空に逃げられているようで。 「上空に来たところで、逃げられると思っているのかしら?」 白い肌に、ふふっと微笑する薔薇を思わせるような紅い唇。 ベアトリーチェ、ついに本気になる。駿龍ダンテの速さで浮上地点に急行するっ! 「炎よ、薔薇の刃と化して彼の者を燃やし尽くせ!」 火輪。 燃えるように消える幽霊。 気合いが入っているのは、敵の攻撃、痛みが自分ではなくダンテにいくから。 「ようし、ボクも」 「コクリ、絶対に怪我するようなことはしない事、いいわね?」 「分かった」 コクリは兼石さんと一緒に回り込み。 と、今度は幽霊、地上に引き返し始めた。 「紅き薔薇よ、彼の者を絡め取れ!」 これは透過しない様子。呪縛符ががっちりまとわりつく。コクリのクナイが飛び、再びベアトリーチェの火輪が走る。 「ふうっ、これで終わりかな?」 地上では、逃げていた最後の敵をリィムナがホーリーアローで止めを差していた。改めて立てた杖にばさばさっとサジ太が止まって、首を傾げるように主人の顔を覗き込むのだった。 ● さて、お家(チョコレート・ハウス)に帰ったショコラ隊の面々。 「ふむ、纏め役はいなかったな」 「う〜ん。だから逃げ散ってたりしてたのかなぁ」 竜哉が首を傾げると、香澄が苦笑してたり。 「そうだな。しっかりしてるのがいねぇと、集団ってのはまとまらないもんだからなぁ」 しみじみ八幡島が言う。 「任せてください。私、大型の操船経験だってあるんだからっ! 舐められるまでは有効なのです」 「舐めるって?」 「こう帽子を目深に被って、艦長席でどっしり構え、バカメと言ってやれ、なのです!」 ルンルンが操舵輪を持って好き放題している。 「艦長、艦内巡回終わりやしたぜ。‥‥何か他にあっしに出来ることはありやせんか?」 「リ、リィムナちゃん、助けて‥‥」 実は操舵輪。ちょっと動かしただけでがくんと船は反応する。いま操舵輪を持っているコクリは下手に身動きすることができない。 「ほら、ちゃんと腰はこう、胸は張る、です」 「ううう‥‥」 助けてという理由はルンルンにいろいろ触られているからだったり。‥‥ルンルンは至極真面目だが。 「艦長、目的地が見えてきやしたぜ!」 リィムナの方は、目の前に広がる船みたいな形の雲に夢中のようで。「ほらほら、コクリちゃん」とべたべたお触りで拍車が掛かる。 「‥‥纏め役はこの場合、誰に期待するのかの?」 「コクリちゃんに期待するしかないかなぁ」 鶴祇の突っ込みに、う〜んと香澄。「とにかく竜哉さん、また一緒になったらよろしくねっ♪」と、頼りにする。 ところで、のばらとりちぇさんはどこにいるのだろう? 「兼石さん、置いて行かれて少し機嫌が悪くなってると思うのですっ」 藁の敷き詰められた朋友待機室で、のばらが炎龍の兼石を丁寧になでなでしていた。ツン、としていた龍もまんざらではなさそうで。 「な、なによ。別に気になってるからここにいるんじゃないのよ?」 ツン、としているのはベアトリーチェ。駿龍のダンテが甘えたそうにしているのだが、主人の機嫌をはかりかねてもじもじしているような。 「あ、ようやくご機嫌になってくれたようですねっ♪」 にこにこののばらを見て、りちぇさんもようやくダンテに労いのなでなでをするのだったり。 ともかく、チョコレート産地ではチョコレート・ハウスの任務完遂と帰還、可愛らしいショコラ隊の活躍話で盛り上がったという。 |