【泰猫】泰猫隊、出動!
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
EX :危険 :相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/02/21 22:41



■オープニング本文


「はいヨ。フカヒレスープ、できたアル。お客さんに持て行くヨロシ」
 泰国某町にたたずむ泰猫(たいねこ)飯店は、今日も繁盛していた。
「大将〜。林青の旦那がいらっしゃいましたぜ〜」
「お、珍しいアルな。すぐ行くアル」
 泰猫飯店店主の鈍猫(ドンビョウ)は働く手を止めずに呼び掛けた弟子にこたえた。やがて料理をほかの弟子に任せると、「太った体は料理人の誇り」そのままの姿を揺すって古い友人、林青商会代表のひょろっとした体つきをした林青(リンセイ)の待つ奥の間へと向うのだった。
「や、久し振り。すまんが、緊急事態だ」
 林青は挨拶もそこそこに用件を話した。
「お前さん、昨秋に片栗産地の村を救っただろう?」
「実際にはほぼ全滅アルが、女・子どもの多くは開拓者のおかげで無事なのが多かったアルな」
 このあたりの事情は「【泰猫】植物津波の村」に詳しいが、要は主要労働力たる成人男性のほとんどがアヤカシにやられてしまっているということだ。この後、鈍猫に働き口を頼ってきた町のチンピラどもを村に定住させて再興の労働力として働かせているのだが。
「新たに小鬼のアヤカシやって来て村を襲ったんだよ」
「何と! そ、それで住民は無事アルか?」
 目を丸める鈍猫。これで大被害であれば何のために先のアヤカシ災害を生き延びたか分からない。いや、あまりに無慈悲すぎる。
「ああ。うまいこと村に残したチンピラたちが根性見せたようでな」
「た、戦ったアルか?」
「いいや、あの腰抜けどもは逃げやがったよ。‥‥村の女・子どもを連れてな」
「でかしたアル。前の瑞鵬(ズイホウ)と比べて頼りないアルから逃げるのではと思てたが、一番いい逃げ方をしたヨ」
 会心の笑みを浮かべる鈍猫。襲ってきた小鬼は最初小数で、後から大部隊がやってきたようである。斥候だった小数の発見が早く、戦いもせずすぐに全員で逃げた腰抜けっぷりが被害の出なかった要因であった。
「ただ、小鬼どもは村に居座っているんだな」
「分かたアル。開拓者を雇って追い払うアルっ!」
 初夏の片栗収穫に影響が出て、あんかけ料理などに影響してくるので当然の対応である。
「ただ、開拓者は所詮一過性の戦力だぞ。村の女・子どもたちはもう別の場所で暮らしたがっているが‥‥」
「それは困るアル。苦節十ン年、ようやく良質な片栗の群生地を見つけたというのに」
 ここで、にっと笑みをたたえる林青。
「それじゃ、冬の間に村を守りつつ、チンピラたちに根性入れて村を守るよう鍛えてもらえる人材も雇ってはどうだろう? 今なら、安く来てもらえる奴らがいるんだがな‥‥」
「分かたアル。‥‥出費は痛いアルが、林青ならワタシに悪いようにしないと信じるネ」
 腹をくくる鈍猫であった。
 後日、この決断は鈍猫に望外の喜びを与える事となる。


 場面は変わって、天儀本島は武天の某山中。
「と、いうわけでここを離れる事にはなるが出稼ぎのできる話があるんだが」
 にやにやと林青が話を切りだした。
――場所は、義賊・泰猫隊の守る宿、「山賊砦」だったりする。
「鈍猫の旦那が困ってるんなら、当然地の果てだろうと掛けつけて力になるっ。‥‥いや、俺たちももう鈍猫の旦那に真正面を向いてお礼を言っていい頃だ。ここでお役に立てずにどうする。なあ、みんな!」
 話を聞いていた瑞鵬が、周りにいた泰猫隊を振り返る。
「おおっ」
「俺たちで役に立つんなら、いくらでも使ってくれってもんだ」
 泰猫隊の大半は、町のチンピラだった。泰猫飯店の鈍猫を頼ったところ、人生の大転換点となる戦いを開拓者と経験した後に山賊砦で人々のため、自分たちのために働き、充実した日々を送っている。
「鈍猫の旦那に、俺たちの姿を見てもらってご恩返しをするぞっ!」
「おおっ!」
 時に、山賊砦は大雪に見舞われ宿泊客はおろか通り掛る者もいない。商売上がったりの状態で困っていた。この状態を見かねていた林青は、それとなく彼らを助けてやれたことでにこにこしていた。

 と、いうわけで泰猫隊20人と村のチンピラ15人を編成・指揮して片栗産地の村に居座る小鬼約50体を退治してもらえる開拓者、求ム。


■参加者一覧
真珠朗(ia3553
27歳・男・泰
天野 瑞玻(ia5356
17歳・女・砲
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
来島剛禅(ib0128
32歳・男・魔
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918
15歳・男・騎
エリーセ(ib5117
15歳・女・騎
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂


■リプレイ本文


 開拓者たちは、自らの見込みの甘さを呪っていた。
「どういうことでしょうか? 鬼たちは逃げた俺たちを追ってくる様子はないんです」
 偵察に残っていたチンピラが振り返って開拓者に判断を求める。場所は村を見下ろす丘、林の木々。
 奇しくも、葛アヤカシの波と戦った開拓者が突撃を始めたのと同じ場所である。
 つまり、民家のまばらな村までは距離があり、視線が奇麗に通る状況。
 見た感じ、鬼どもは村を表立ってうろついていない。
「ふむ。いずれ村人は戻ってくると判断しているのか、村を砦にでもしようというのか‥‥」
 来島剛禅(ib0128)(以下、クリス)が思案する。
「俺としたことが滑稽なことだな」
 額に手を当て天を仰ぎ自嘲気味に話す竜哉(ia8037)。「まさか練兵をまたやる事になるたぁね‥‥」とぼやきつつ部隊の指導をしていた。半面、敵を知る努力を怠った。
「そうすねぇ。ちんぴらーズさんはどう思いますかね?」
 真珠朗(ia3553)が、自ら率いることになるチンピラに聞いてみた。
「さあ? 鬼の考えることなんざ知りませんがね。ただ、性質の悪いチンピラなら、戻ってくる村人と一緒に建物も壊したいとか」
「そりゃまたえげつないこって」
 苦み走った笑みを湛える真珠朗。
「‥‥ですけど、一度獲物にありつき損なってるわけすから」
 ありえる話ですねぇ、と面を正し村を見る。
「洪燕(コウエン)、それならすぐ村に入るべきでは? 俺たちは戦えない村人じゃない。すぐに詰みだろ?」
 チンピラどものリーダー、洪燕に知恵袋の忠威(チュウイ)が進言した。
「大丈夫ですかね、クリスさん?」
 この言葉を聞いていた瑞鵬(ズイホウ)が、信頼するクリスに聞いた。
「それで大丈夫でしょう。‥‥ただ、我々開拓者の『大丈夫』と一般の人の『大丈夫』は違いますよ? ‥‥ああ、泰猫隊さんたちはいいんです。何度も付き合って理解してますからね。新たな皆さんは実戦経験のある泰猫隊の皆さんを見習うと良いでしょう」
 クリスが即突入案を支持しながらそれとなく、いわゆる上下関係を刷り込んでおいた。
「僕、この依頼が終わったら‥‥油揚げをいっぱい食べるのです‥‥!」
 出撃の機運高まる中、ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)がそんなことを口走った。
「おおっ。俺たちはやがて来る鈍猫のおやっさんに礼を言うんだ」
 ネプの言葉を聞いて、瑞鵬率いる泰猫隊の面々も「おお」と盛り上がった。
「俺たちは‥‥?」
 チンピラたちは、何のために戦うかすぐに言葉が出なかった。
「俺たちは、村に住民を笑顔で受け入れるんだ!」
 ちょっと考えてから、洪連が言い切った。「おお」と泰猫隊を真似するチンピラたち。クリスはこの様子を見てにこやかだった。


 風が、吹いた。
 いや、大勢が一度になだれのように動いたための風か。それとも風が誘ったのか。
「よし、妾に続くのじゃ。此度の戦、必ず勝利致すぞ!」
 ブロークンバロウをかざし振り向きながら一気に丘を下る少女騎士、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)を先頭に泰猫隊混成部隊48人全員が動いた。
 飛び散る草に「うおおっ!」という鬨の声。
 徒歩ながらもどどどどと迫力のある突撃。
 しかし、目標の村からは鬼が出てこない。
「連携戦闘をします。僕に続いて」
 何かある、と見た砲術士の御調 昴(ib5479)は早々に援護戦闘の構え。先ほどまでの柔和な表情は消え覚悟の感じられる表情となっている。
 すすっと寄った先は、エリーセ(ib5117)の小隊がいた。
「瑞鵬、錐間(きりま)。私が盾になる。頼んだぞ!」
 泰猫隊のリーダーと片腕の名を呼び先行するエリーセ。
「おおっ。‥‥おい、白いお嬢さんの負担を軽くするぞ!」
 続く瑞鵬がチンピラにはっぱを掛ける。彼らと合った最初に礼儀正しい挨拶をしたエリーセ。チンピラたちの働きを正当に評価する尊敬の眼差しを向けていたこともあり、すっかり皆から慕われているようで。折り目ある態度から「白いお嬢さん」と呼ばれ親しまれている。
 と、ここでようやく村の家屋から小鬼どもが出てきた。十匹程度。
「さ、来たわ。いいとこ見せなさい、いくわよ!」
 中央付近の天野 瑞玻(ia5356)が立ち止まると、クルマルスを構えぶっ放した。
 早い。
 瑞玻小隊の泰猫3人とチンピラ3人も止まるが、弓を構えるなどもたつき瑞玻のようにはいかない。が、これは仕方がない。
「教えたでしょ? 私たち弓隊の役目は、こちらに近づかれる前に相手の戦力を削ぐ事。‥‥で、狙うのは相手の胴。的が大きくて一番動きが鈍い所だから!」
 事前に教えたことを繰り返す。そして、自ら実践。まずは一発で敵を確実に仕留める。その後、部下の矢がぱらぱらと飛んでいく。
「壁役の部隊に守ってもらう分、彼らが少しでも楽に戦えるようにしっかり撃って!」
「おい、お前。落ち着いて狙え。あっちの攻撃はこっちには届かないんだから」
「そうそう、チンピラさんは先輩猫さんの言う事を良く聞いて」
 瑞玻。単動作で再装填しつつ、上手く指導している泰猫を褒める。
「おっと、乱戦になったら良く見ろよ。‥‥回り込もうとするのがいるはずって言ってたぜ」
 前衛部隊は早くも激突しようとしていた。


「チンピラの小墨、煙計、常寂、盾を掲げて壁を作るのじゃ。泰猫の3人は分かっておろう?」
 最前線のリンスガルトが声を張る。そして槍を持った泰猫隊は彼女の指揮に従い盾の間から突きを繰り出す。
「よいか! 此度の戦、勝利するは当然として誰も死んではならぬ! 貴様等が為すべきは戦場にて死ぬことに非ず!」
 自らも長柄槌を振るい威圧しつつ叫び鼓舞する。部下の士気は上がりまくりだ。
「はぅ! たまにはかっこよく決めるのですよ!」
 リンスガルトが正面右翼を受け持てば、正面左翼はネプ。チンピラと計3人である分、ネプが刀「泉水」で頑張る。短い刀は乱戦を見越してのこと。
「とりあえず、自分の身を一番に戦ってくださいなのですよ」
 言い捨てながら敵の一撃は掲げたガードで防ぎ、いま、横薙ぎ一閃。止めは後ろで槍を構えたチンピラに任せ自信を持たせる。
 2隊の分かれる中央は、瑞玻弓隊の担当。数的有利を作り敵を圧倒する。
 そして、全体の右翼。
「敵さんも同じ考えのがいるようすねぇ」
 遊撃として物陰を伝い移動する真珠朗隊が、民家の影の敵小隊と遭遇した。
「泰猫さんに洪燕さんに忠威さん、援護たのんますよ?」
 真珠朗、得意の瞬脚からの崩震脚。数匹は瞬殺するが、敵総数は十匹。範囲の問題で半数以上が残る。背後からの気配にしゃがむ真珠朗。飛んでくる矢。
 しかし、敵は意外な行動に出た。
「‥‥統率がとれてると?」
 思わず振り返る真珠朗。奇麗に抜かれた。敵は何と、前に逃げたのだ。いや、この速さは主力後衛への突撃だ。
「まずい」
 果敢に隊猫の一人が長柄を手に前に出るが、これは想定外。一人の護衛で弓隊を護れるわけもなく。急いで取って返す。
――この時。
「基本は狡くずるく。転ばせて皆で滅多打ちだ」
 竜哉の声。
 そして横合いから突撃してくる棍部隊6人。
「それよりまずそのでかいのを‥‥」
 敵隊長と思しき小鬼を指差す真珠朗。
 竜哉はすぐに反応して、泰術棍「武林」で一撃、そしてくるりと回っての追撃。どっしり腰を落としてから円弧を描く泰拳士っぽい動きはリーチが長く一撃も重い。圧倒的な強さを見せる。その背後では、竜哉棍小隊が数的有利を背景に、竜哉直伝のえげつな‥‥もとい、効果的な転倒からの滅多打ちで真珠朗弓隊を救っていた。
「竜哉さん、もうこっちに敵はいないようですよ」
 竜哉から、「障害物が多く、視界に制限がある場所では、物音に注意を払うこと」と教えられていた泰猫隊は周辺状況を確認し、チンピラを使って竜哉に報告していた。
 とりあえず全体の右翼はこれで片付いた。

 しかし、戦況は着実に乱戦への道をたどっているのだった。


 敵は、統率を持って当たっている――。
 それが如実に現れたのが、援護部隊への猛攻だったかもしれない。
「昴さんを護れっ」
 全体左翼の昴隊は、割を食っていた。
 宝珠銃「皇帝」と短銃「ピースメーカー」の二丁拳銃を構える昴は、瞬間火力とその後の隙で特に目立っていた。
 当然、敵が狙ってくる。
 まずいことに、昴隊の3人は剣のみの攻撃装備。消耗戦に巻き込まれてしまう。昴の援護も敵十匹に対しては万全ではない。
「こっちだ。私たちが相手になる!」
 まずいと判断したエリーセは、燐と声を張り挑発。特に敵部隊を指揮している大柄な小鬼を何とかしたいと目論むが。
「隊猫はチンピラを助けながら。ほらっ、いまだ」
「白いお嬢さんを守れっ!」
 専守防衛で敵を止めながら指示をする。横合いから瑞鵬や錐間が棍で小鬼どもを叩く・叩く。
 もっとも、戦力は十三人対約二十匹。敵2小隊と戦っている計算となり、若干苦しい。開拓者も部下を気にしながらの戦いで大暴れというわけにはいかない。
――そして、中央。
 新たに敵小隊1つが駆けつけ、中央突破を仕掛けていた。瑞玻隊潰しである。
 その時、ネプ隊は。
「男を守る趣味は無いのです‥‥早く強くなって、守る側になってくださいなのですよ‥‥」
 3人は苦しいか。「もう駄目だ」と目をつぶったチンピラに対し、身を挺し守るネプ。
 傷は負ったが浅く、痛みを堪えつつ反撃。ひらめく刀身に黒い瘴気がしぶくように霧散する。ともかく、手一杯。
 そして、リンスガルト隊。
「突出するでないっ! 緩やかに後退じゃ。‥‥全員で凱旋するぞ! 一人として欠ける事、この妾が許さぬ!」
 数的不利と敵突進力に時間稼ぎ色が強くなっている。というか、すでに中央突破されかなりまずい状況だ。瑞玻隊が丸裸となる。
 と、この時。最後方から救いの手が差し伸べられるッ!
「壁を作りました。ここまで引いてください」
 クリスである。
 クリスがアイアンウォールを展開していた。一人彼についていた隊猫隊が壁をよりどころに弓を放ちまくっている。クリス自身もサンダーで援護。戦線が長くなり乱戦の様相となった。
「とにかく、まずあそこに逃げ込みましょう」
 元弓使いの瑞玻が弓術隊に撤退命令。被害を最小限に食い止める。
「エリーセさん、大丈夫ですか?」
 装填に苦労しながらも、エリーセの盾に護られつつ昴が援護射撃。
 開拓者たちの旗色が悪くなったが、勝負の分かれ目がここでようやく訪れた。
「それじゃ、こっちからも弓で」
 唯一数的有利を作り出し敵を一掃した真珠朗隊が戻ってきたのだ。まずは弓の斉射。問題は威力ではない。攻囲して遠巻きに攻撃しているという事実だ。
「分断を狙え」
 次に竜哉隊が突入。リンスガルト隊正面の敵裏を突き、相手の二正面化からの分断に成功する。
 そして、真珠朗と竜哉が並んで戦線突入。リンスガルトのブロークンバロウも再び頭上に掲げられ、ぐわしと一撃抹殺。舞煙る黒い瘴気に混じり土が跳ねているのが威力の恐ろしさを物語る。小さな体躯なので、なおさら。そして、ネプ隊も落ち着いてきた。最後方では、隊列を組み替えた瑞玻弓術隊の本格的な援護射撃が再開されていた。頭の両横で少量まとめた金髪と赤いリボンが揺れ、クルマルスが火を噴く――。


「それで、大きな怪我人はいなかたアルか」
 鈍猫が現場に到着したとき、すでに戦闘は終わっていた。
「鈍猫のおやっさん。お久し振りですっ!」
 間髪入れず駆け寄る瑞鵬と隊猫隊の古株たち。
「あの時は俺たちを信じてくれてありがとうございましたっ。おかげでここにいるクリスさんら開拓者と一緒に砦を落とし、『山賊砦』として心を入れ替え働いてます!」
 特に申し合わせもせずに整列し、一斉にお辞儀する。すぐには頭を上げない。覚悟の感じられる、渾身の礼だった。
「おお、立派になったアルな。今まで何度か心を入れ替えると誓った若者に職とチャンスを与えたが裏切られてばかりだった。信じてよかたアル‥‥」
 何と鈍猫、涙を流した目を右腕で拭きながら我がことのように喜んだ。隊猫隊はこれを見てやはり涙した。
「あ‥‥。村のみんな‥‥」
 その後ろで、チンピラが洪燕の言葉に反応し一斉に顔を上げていた。
 村の女性や子どもたちが戻ってきたのだ。
「みなさんの手当ては私たちが」
 女性たちはそう言ってチンピラの手当てに。
「取り戻してくれたんですね。私たちの村を‥‥。これで、またこの場所が大切なものになりました」
 実の息子を見る母親のような優しさで語り掛ける女性たち。
「俺たちも、この場所が大切になった」
 照れたように言うチンピラたち。
「今度は、俺たちだけでもこの場所を守るようになるよ」
 チンピラの知恵袋、忠威が開拓者を振り返りながら言った。
 そして立ち上がり、真珠朗の前に立った。
「宜しくご指導ください、伊達男の兄貴」
 深々と頭を下げる忠威。
「キザ兄ィの次は伊達男すか」
 直近の依頼で何かあったのだろう、真珠朗は呆れている。
「皆さんの『自分たちで守ろう』っていう気迫と姿勢はとても勉強になりました。その調子で、連携戦闘の訓練をしたいのですが‥‥」
 戦闘中に指示を出していた気迫は消えおずおず言う昴に、「そうこなくっちゃ」とチンピラたち。
「よいか、妾が率いたお前たちは図体が大きく面構えも不敵じゃ。皆を守る盾となるにふさわしい」
 リンスガルトは、自分の初めての部下にまんざらでもない様子。熱心に盾と槍の稽古をしてやった。
「お前、ちょっと来い」
 竜哉は、一緒に戦った者の性格から相性の良い武器を助言してやる。
「お前、臆病だろう。いや、別にいい。用兵の書を学んで皆を導け。‥‥臆病な者は警戒心が強い、一つの流れから最悪を予測し対策を考え易いだろうさ」
 容赦なく言うが、駄目だとは言わない。臆病だった者はこの言葉に何度も頷いていた。
「泰猫さんもしばらくここに残るんでしょう?  村の人達が安心できるくらいまでは頑張って腕を磨いてね」
 瑞玻はにこやかに言って鬼の弓特訓。大きな胸の下で組んだ腕が「反対意見は聞きません」と雄弁に語っている。
「私はまだ未熟だが、今度会う時はお前達に負けない騎士になってみせるぞ」
 びしり、と指差すのはエリーセ。「おっしゃ、俺らも負けてられるか」と盛り上がる泰猫とチンピラ。えらく楽しそうだ。
 ともかく、手当てが終わると開拓者とその部下たちは訓練に、村人たちは家屋の修復などにかかり、にぎやかに村の再出発に向かうのだった。

●おまけ
「久し振りに手伝いましょう」
「おお、クリス。助かるアル。‥‥竜哉も元気に指導しててなによりアル」
 クリスは腹を空かすであろう皆のために鈍猫を手伝う。
「小宴会をすればまた結束が高まるでしょう」
 気の聞く男である。
「はぅ‥‥♪ 油揚げをいっぱい食べるのです」
 ネプは隣でしっぽを振りながら二人にアピール。
 有言実行の男なのである。‥‥その内容はともかく。