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■オープニング本文 神楽の都、珈琲茶屋・南那亭にて。 「ソースのたこ焼でしょー、生地に利かせた出汁の味だけで食べるたこ焼でしょー、大判焼きでしょー、もふちゃんの形をしたお饅頭でしょー‥‥」 ぽわわん、と指折り指折り数えるのは、南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)。どうやら石鏡でにぎやか開催していた安須大祭での土産話らしい。食べ物屋台の話ばかりなのは、まあ致し方なしといったところか。 「南那亭では屋台を出さなかったんだな」 ここで、南那亭に客として訪れていた志士の海老園次々郎(かいろうえん・じじろう)が、真世の話しっぷりに冷静に突っ込んだ。 「もちろん。祭はやっぱり参加してこそよね〜」 どうやら今回は本当にただひたすら楽しむためだけに参加したらしい。大もふ様を捕まえに行って思っきし轢かれるとかひどい目にあっていつぞやのようにどこぞの数値が真っ赤になることもなかったようだ。 が、しかし。 「もしかしてそれって、言い訳じゃないか?」 ぼそりと呟く次々郎。 「ななな、何よ。何の事よ?」 「屋台を出そうにも、コーヒーだけじゃ物足りない。でも、料理全般ができないから屋台を出したくても出せなかった、とか」 「ど、どうして料理全般ができないって決めつけんのよ。シツレーしちゃうわね」 ぷんすか腹を立てる真世。 「ここの常連さんに聞いたぞ」 腕を組んで毅然とした態度だった真世だが、ここで吊り上がっていた眉が下がった。 「真世さん、料理を差し入れしたら『私、料理できないからうらやましいです』って‥‥」 「わーっ、わーっ!」 慌てて話をごまかす真世。ほかの客の視線が集まる。 「何だよ」 「ここがコーヒーだけなのがそんな理由だなんて誤解されるわけにはいかないでしょっ!」 にやにやと不満を言う次々郎に、真世が言い訳する。ちなみに、南那亭で料理が出ないのは本来は高価なコーヒーを薄利多売の安価で提供しているため、長期保存のできない物を仕入れるなどのリスクを回避し安定運営を実現するためだったりする。 「‥‥ほら、真世」 「な、何よ。コレ」 突然、大金を差し出す次々郎に目を丸くする真世。 「ここでコーヒーの指導をしていた加来(カク)が来てたんだよ。真世が安須大祭に行ってる間に」 「え、そうなんだ? 南那に帰ったのに‥‥。会いたかったなぁ」 「その時に、『このお金を真世さんの役に立つよう使ってください』って預かったんだよ」 「えええええっ」 衝撃の事実に目を見開く真世。 「ギルドの依頼に顔も出さずここで働いていた真世に、せめてもと‥‥」 「やったぁ。じゃあ早速美味しいものでも‥‥」 へらっ、と陽気に小躍りする真世。 「このバカ野郎ッ!」 次々郎、真世の様子に砲術隊の一斉射撃もかくやの様子で激怒したッ! 「そんなわけで、私に料理特訓してもらえる料理上手さんと、私と一緒に料理を習いたいっていう人を募集したいんです〜」 開拓者ギルドで依頼する真世の様子は、しおしおのしゅんしゅんだったとか。 どうやら加来は、「せめて、真世さんに料理ができるようになって欲しい」と次々朗に進言したようだ。‥‥加来が南那亭にいた頃は、まかない料理は加来が担当していた。「これは何とかしないと。珈琲の次は料理かな」などと思っていたらしい。ことほど左様に手間のかかる娘のようで。 ともかく、包丁が苦手で自分の作った料理は美味しいと感じることができず料理から遠ざかっている真世を何とかしてくれる人、及びそんな彼女のお仲間さん、求ム。 |
■参加者一覧
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
龍威 光(ia9081)
14歳・男・志
常磐(ib3792)
12歳・男・陰
ウィリアム・ハルゼー(ib4087)
14歳・男・陰
緋姫(ib4327)
25歳・女・シ
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)
15歳・男・騎
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
ベルナデット東條(ib5223)
16歳・女・志
天ケ谷 月(ib5419)
16歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● 南那亭の店内にて。 「うー、どこいったかなぁ」 兎の神威人・龍水仙 凪沙(ib5119)が探し物をしていた。 「あ、そういえば‥‥」 ひらめいて厨房に。 「ひ!」 「なんだ、龍水仙か」 暗い厨房ににうずくまっていたのは黒猫の神威人・常磐(ib3792)。ちょっとツンなところのある気高い少年だ。 「これで道具はよし。買い出し組が帰ってくる前にやれる事はやっておかなくちゃな」 ここで白い割烹着を着る。 「常盤?」 さらに厨房の奥から、優しそうな声がした。 「お野菜、みじん切りにすればいいの?」 ひょいと、天ケ谷 月(ib5419)が姿を現した。二カ所でまとめた長い髪が傾げた頭にあわせ揺れる。青い瞳に銀の髪。着物は黒で帯は白と青。大人びた雰囲気を醸している。 「ああ。ミンチ肉は何とかなったから、できるだけ準備をしておこう」 頷く常盤。一体何をするつもりか。 忘れ物を改めて隠し持った凪沙も加わって、下準備。果たしてうまくいくか。 ● 「折角ですから買い出しからしたいですねぃ♪」 こちらは別働隊の買い出し組。市場を闊歩しながら龍威 光(ia9081)がきょろきょろ。 「やっぱり、みんなで買い出しは楽しいよね〜」 後ろには、深夜真世(iz0135)が続いている。 「同じメイドとしてお互い頑張りましょう」 彼女の横には、ウィリアム・ハルゼー(ib4087)。真世と共にジルベルアのメイド服姿。スカートの裾の純白フリルがそろってフリフリ揺れている。 それはそれとして、野菜市で。 「深夜殿。葉が青々と茂っているのが、よい大根選びのポイントだ」 野菜を選ぼうとした真世を止めたのは、可愛いフリルがはみ出る着物姿のベルナデット東條(ib5223)。大根の大きさにとらわれていた真世に、新鮮さの重要性を説く。 続いて、魚市。 「ちょっと待って」 真面目に選ぶ真世を、緋姫(ib4327)が止めた。 「食材は新鮮なものが一番! その上で食材によって注目する場所が違うから‥‥分からない場合はお店の人に聞くと良いわ」 「そうですねぃ。魚屋さんとお話をして新鮮なものを買うといいですねぃ♪」 「そうそう。旬のものは勧めてくれるはずだから」 姉御肌の緋姫が言えば、光も同調。緋姫が返し話が弾む。 どうやら買い物一つとっても置くが深いようで。 「‥‥それに深夜様、必要なのは秋刀魚ですよ?」 「うぎゅ」 鰈を持っていた真世に突っ込むウィリアム。仲間の話を聞くことも重要である。 「はぅ。重要な任務なので手堅くいくですよ」 そして、泰国は猫族の男性、ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)。 荷物持ちとして活躍する覚悟で付き添っている。そしておもむろに、アーマーケースを下ろしアーマー出そうとする。 「ネプさん、僕も手伝いますねぃ♪」 光が気を利かせて荷物持ちを手伝う。ネプ、しっぽをへにゃっと垂らしてしゅん。って、本気だったんですかい! ● さて、買い出し組が南那亭に戻ってきた。 「ふふふ。常磐、久し振りね」 留守番の常盤を見つけると、緋姫がそれまでの真面目路線はどこへやら、むぎゅりと常盤を自らの胸に沈めるように抱き締め‥‥。 「っ!? だから抱きつくなっ! 抱きつく必要無いだろ!?」 常盤がじったんばったんしていると、最後の開拓者がどかーんと扉を開けて登場した。 「んじゃ『第一回! チキチキ!! マヨたんお料理上達しちゃおう会』はっじまるよー♪」 清々しいほど元気がいい村雨 紫狼(ia9073)。 「な、何よそのチキチキっての。何か私が駄目駄目みたいじゃない〜」 「ほらほら、キョドってる場合じゃないだろう〜。もうみんなはじめてるぜ」 真っ赤になる真世の肩に両手を掛け回れ右させる紫狼。 とにかくいきなりにぎにぎしく料理開始だ。 ちなみに、紫狼。無駄口は多いが動きに無駄はない。白くてフリフリエプロン姿の光が「お米は水で洗って、研ぐんですねぃ」などといいつつご飯を炊いている姿を真世に見せる。 「ま、米は炊けるってことだったな。じゃ、包丁を使わない別のものから」 紫狼、真世を連れて常盤に凪沙、月のいる場所へと移動した。 三人が作っていたのは、玉子焼き。 ちなみに、天儀の焼きの文化は網などの直火が主流だが、ここは泰国の食文化を伝えるお店。各種手段で火を通す泰国の焼き文化を示す底の浅い鉄鍋が多数揃っている。 卵を割って、黄身と白身をかき混ぜて味付けしてから、浅鉄鍋で焼きつつ巻いていく。 「確か料理の基本だし、包丁も使わないんだよね。これなら真世さんも安心」 にぱっと微笑む凪沙。なにやら物知りだが、実は料理はしない。あくまで知識としての蓄積だ。そんなんで大丈夫か? 「ふーん。卵はゆでたのをむいた事しか‥‥」 真世、そこまで言って固まる。ぐしゃっ、と卵の殻を割ったというか、砕いたのだ。 「そうじゃない。ひびを入れてから、こう」 常盤がぱかっと開いて手本を見せる。凪沙も成功し、にっこり。が、真世はまたもぐしゃり‥‥。 「真世〜」 「わたしもお料理、上手じゃないから、一緒にがんばろ、真世」 びしりと厳しい指導の常盤に、可愛らしく優しい月。なんという飴と鞭。 「もし苦手なら、これ」 そう言って網を出したのは、凪沙。失敗しても殻と中身はちゃんと分かれる裏技だ。‥‥黄身は濾されてしまうが。 「いいじゃん、卵は混ぜるんだし♪」 「ま、そうだな」 にぱっと笑顔の凪沙に静かに、常盤が頷く。 「う〜ん、この、くるくるって巻いて作るのが、苦手。形が崩れちゃって‥‥」 「もし上手く巻けないなら一度火から下ろして、濡れ布巾に玉子焼き器を置いてゆっくりやれば、焦げたりしないから大丈夫だ」 失敗して眉を煙らせる月に、落ち着いて指示する常盤。 「美味しくなあれ、美味しくなあれ♪」 その横では、歌いながらるんるん調理する凪沙。 ――失敗しても、大丈夫。 そんな、雰囲気。 「うわっ、ぶくぶくしてきた。大丈夫? これ大丈夫なの!?」 「きゃ〜、私も私も。凪沙さん、どうしよ?」 真世と凪沙が仲良くぶくぶく。常盤は、「まったく」と真世に後ろから抱き着いて濡れ雑巾へと連れて行く。月もそれを見習って凪沙に後ろから抱き着いてよっこいしょ。 「あははっ」 四人顔を合わせて笑ってみたり。 ● ――天ケ谷月、細身の巫女。 本名は別で、それを知る者は少ない。あるいは、身の上話は好きではないのかもしれない。 「わあっ。ベルナデット、包丁、すっごく上手」 卵を焼きながら巻いている最中、よそ見をする。 「緋姫は、なんでもてきぱき、できちゃいそう。すごいなあ」 また、よそ見。 「あ‥‥」 「どうしたの、真世?」 ふと、自分を見ていた真世に気付き、聞いてみた。 「月さん、とっても楽しそうだなって」 柔らかい笑顔の月を、真世はそう表現した。皆と一緒に料理するのが本当に楽しそうなのだ。 「真世も、楽しんで」 「よーし、真世たん」 ここで、どどんと紫狼が再登場。 「もっと料理が美味しくなる方法あんだけどさー。‥‥試す?」 きらーん☆と笑顔の白い歯が輝く。 「まずはこれを‥‥。ぱいるだ〜‥‥」 「え、ちょっと」 うろたえる真世だがもう遅い。ぴこぴこ〜んと取り出した猫耳カチューシャ、おん! 「んで、こんな感じで振り付けしてみ? そうそ、両手でハート型つくってさー」 くるっと回る紫狼。最後に横に腰を振って、両手でハートマーク。 「こ、こう?」 くるっと回る真世。ひらりんっ☆て舞うフリル。スカートのふくらみが戻ると、横に腰を振ってからほっぺの横で両手のハート。腰の引け具合とニーソックスの内股どぎまぎっぷりが‥‥ 「マジさいこーっ!」 萌える紫狼。さらに「もっと可愛く」とか呪文を教えたりとかしてテイク・ツー。 「おいしくなるおまじなーい♪ おいしくなーれ、おいしくなーれラブ注入☆」 ひらりんっ☆てしてから、頬を染めウインクまでする真世。 「マジさいこーっ! 女の子は、難しい顔より笑った顔が一番いいんだぜ」 それはともかく、月。 「あ。‥‥えーっと、ちょっとこんがりの方が、美味しい‥‥よね?」 紫狼の様子を見て呆れてるうち、ちょっとたまごを焦がしたり。 「ん?」 さらに月の様子が変わったのは、なにやら凪沙が卵焼きに細工をしていたように見えたから。 「‥‥気のせいかな?」 月、ことほど左様におしとやかである。 ● さて、包丁が苦手な人。 「うん。お豆腐は簡単だね、光さん」 光に、まずは竹包丁で豆腐を切るよう言われた真世。慣れたかな、と思って光は「じゃあ」と本格的に包丁を使わせたのだが。 「痛っ」 あっさりやっちゃった☆。がっくりうなだれる光。 「ほら、これで大丈夫痛いの痛いのとんでいけですねぃ〜」 仕方なく真世の切った指先を口に含んで手当てしてから呪文を唱える光。料理は得意でない彼も、本を借りて勉強したり、まず形からと可愛いエプロンをつけたりして上達ようだ。が、人を教えるのは話は別のようで。 「まずは昆布のだし汁」 そんな一言から調理を始めていたのは、ベルナデット。 「はぅ‥‥油揚げ」 「さ、ヴィンダールヴ殿。大根の切り方からだね。‥‥深夜殿、こっちに来てくれないか」 煮立てて準備している間に、油揚げに心を奪われているネプの首根っこを引っつかむ。ついでに真世も呼んで一緒に。 「真世さん、一緒にがんばりましょうなのですよ〜。はぅ♪」 「うん。がんばろ、ネプさん」 仲良く並んで、大根の銀杏切りに挑戦。ベルナデットは大根の皮を切り世話をしてやる。 って、何やらドカカカカとか音がしてますが。 「あ〜。ネプさん、大根粉々じゃない〜」 「あ、あぅぅ‥‥」 「楽しそうにするのはいいが、張り切りすぎだ」 大根をなぜかみじん切りにしてしまいへにゃりと耳を垂らすネプに、ベルナデットが突っ込む。って、真世さん。あなたの大根はつながってますが? 「上手く切れなくても気にすることはない。私も最初の頃はひどかったものだよ」 これは二人とも重症だな、と天を仰いだベルナデットは、自らの昔の話をしてまず和ませた。 「上手くいったら、何か甘いものでも‥‥」 「それじゃあ、綺麗に切れたら凪沙さんの耳をいっぱいもふもふするのです!」 「あ。それ、いい」 ベルナデットの提案に、ネプがなんだそりゃな褒美を求めた。真世もやる気だッ! 「深世様、下ごしらえを手伝って頂きます」 次の包丁修行の講師は、ウィリアム。さらなる包丁修行にと光もやって来る。 「よほどのことがない限りサンマは駄目にならないので気楽にやりましょう」 にこっと微笑む背後に、「さんま十尾、しょう油さじ2杯半」などと材料の書かれた張り紙が。 「適当ばかりだと短期間で身に着きませんから」 煮る時間などこまめに目安を教えるなど、効率的な指導をした。後の話になるが、真世としては大変参考になったようで。 さて、サンマの下ごしらえ。 「ここは包丁の先を使って‥‥」 まず手本を見せるウィリアムス。真世もやったがどってんばってん。「ほら、肩の力を抜いて」など、構ってもらってようやく形に。 「切り落とすのはそれほど難しくないけど、内臓を取るのが少し難しいと思うのでそこに気をつけて。失敗しても致命的なミスにはなりませんし」 「あ‥‥」 この言葉に、真世が目を見開いた。 やりなおししたたまご焼き、失敗しても優しかった光、凪沙の耳をいっぱいもふもふしているネプにそれを見て笑うベルナデット。 失敗しても、大丈夫。 成功したらみんな笑顔。 「‥‥サンマを3等分して斜めにスッと切り目を入れて。しょうがは繊維を断つようにして薄切りに」 「ウィリアムさん。私、頑張るね」 え、と目を丸めるウィリアムだったが、改めて集中する真世を見てとても満足そうにした。 「うにゃ〜完成ですねぃ♪」 「あはっ。私も〜」 頑張る人たちには、包丁も応えてくれるようである。 ● そして食卓には、ご飯にお味噌汁にサンマの煮付けと玉子焼きが並んだ。いずれほくほくの湯気が立ち美味しそうなにおい。 「自分で作った料理はわくわくしますねぃ♪」 フリフリエプロンの光がご飯をよそったり最後の準備を終えた。 「じゃあ、いただきま〜す」 手を合わせてみんなで食事。 「お、マヨたん。こりゃいける。ご褒美にとらのぬいぐるみをプレゼントするぜ」 「あはっ、ありがと。‥‥でも、ホントにおいし〜」 「ね、真世。一生懸命作ったお料理、皆で食べると、楽しいね」 紫狼からぽふっとぬいぐるみを受け取る真世に、月が話し掛けた。 「だから、真世のお料理、もっと色んな人に、食べてもらってほしいな。一人のご飯は、味気ないっていうもの。ね?」 「‥‥う、うん」 あれ。ちょっと沈みましたよ? と、ここで誰も予想しなかった事件が発生したッ! 「う‥‥」 ベルナデットが口元を押さえて苦しそうにしてるのだッ! 「み、水」 「あ、まさか私用に作ったトウガラシ入りの玉子焼きが‥‥」 ああ、なんたることか。甘党ベルナデットの悲劇。 どうやら序盤から凪沙がこそこそしていたのはこれを作りたかったらしい。 「龍水仙〜。何で辛い玉子焼きなんて作ってんだよ!」 容赦なくおたまで凪沙のおでこを叩く常盤。涙が浮く凪沙だが、ベルナの目にも涙なので、妥当な罰。 「って、なんで俺のと入れ替える?」 こっそりベルナと常盤の玉子焼きを入れ替えようとしていた緋姫。ここでばれるが「そんな常盤も可愛いわ」とむぎゅり抱き締め。 「僕も辛いのはだめですねぃ〜」 「ネプ、それは私の玉子焼きっ!」 混乱に乗じ、トウガラシ入りをさらに光のと入れ替えようとしたネプに突っ込む凪沙。おたまでおでこぺしりして「あぅぅ〜」と涙目。甘党の光、セーフ。 「ねえ、真世」 楽しい食事の後、緋姫が手招きした。 「皮を剥く練習をしつつ遊びましょう?」 手には、リンゴ。 そして包丁を器用に使って‥‥。 「わあっ。ウサギさん〜」 真世の言う通り、くし型に切ったリンゴの皮がウサギの耳のようにぴょこんと浮き上がっていた。 「ほら、真世もやってみて」 可愛い物好き真世、緋姫の言葉を待つまでもなく熱中する。凪沙もネプも光も熱心に。ベルナとウィリアムはさらりとやってのけていたり。月はうふふと見守って。 「マヨたん、お客さんだぜ?」 そこにやってきたのは、南那亭の仕入れ旅泰・林青と友人の泰国料理人・鈍猫。 「‥‥ギョーザあるか」 奥に寝かしていた材料を見て鈍猫が言う。 「餃子包むの、楽しい」 「そうだね〜」 「月様、真世様。中身がはみ出してますよ?」 食事後に、皆でギョーザ作り。 「‥‥ま、いいか」 「そんな常盤もいいわね」 ギョーザくらい作れたという常盤に、手伝っていた緋姫が抱き締め慰めたり。 そんなこんなで、昼食も夕食も楽しく美味しく過ごせたという。 後日。 「うっさぎさん〜、うっさぎさん〜」 南那亭の厨房からそんな鼻歌が流れていたとか。 |