【初心者】合宿!尖月島
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 25人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/11/08 17:24



■オープニング本文

「真世。お前の履歴、偏りすぎてないか?」
 神楽の都の一角にたたずむ珈琲茶屋・南那亭の店内で、志士の海老園次々郎がコーヒーカップを弄びながら言った。南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)は、この言葉にぎくり。
「し、仕方がないじゃない。林青さんに頼まれて、尖月島開拓とかコーヒー流通依頼に付きっきりだったんだモン」
 つん、とめいど服のエプロンを縛った大きなリボンを翻し厨房に下がって行く。
 しばらくのち。
「はい、どうぞ。次々郎さん」
「‥‥真世。お前もしかして、弓の腕鈍ってないか?」
「ななな、何言ってるのよ。そんなわけないじゃない」
 お代わりを持ってきた真世に呟く次々郎。真世の方は真っ赤になって否定する。
「ここの青い髪の店員さんに聞いたぞ。‥‥『真世さん、戦闘になると弓を撃たずにまず敵に近付こうと』‥‥」
「わーっ、わーっ!」
 慌てふためく真世に、店内の視線が集まる。
「そ、そんなわけないじゃないっ」
 こそこそっと次々郎に言い張る真世。次々郎の方は、「それならいいんだが」と、コーヒーにミルクを入れる。
「ただ、なぁ」
 しみじみ、そう続ける。
「前の依頼で泰国の栗林に出向いたんだが、女性の弓術師と一緒になってな‥‥」
 真世、ふんふんと真面目に聞き始める。たまにふざけるが、性根は素直な娘である。
「真世もあれだけ頼りになるかなぁとか思ったわけだ」
「そりゃ、私より頼りになる弓術師なんてたくさんいるよ。‥‥別に私は戦闘依頼が大好きってわけでもないし」
「‥‥こないだの大規模戦」
 もじもじしていた真世だが、次々郎がぼそりと呟いた言葉にまたもぎくりとする。
「難しい戦闘にほいほい首を突っ込んでしばらく足腰立たなくなるくらいへろへろにやられたらしいじゃないか」
「そ、そんなことないよ。1日たったら普通になったし、ヘーキな振りはできたモン!」
 つまり、どこぞの数値が真っ赤になるくらいにコテンパンになったようで。
「‥‥それで、林青さんがな」
 責める風でもなく、優しく次々郎は言葉を続けた。
「真世がひどい目に遭ったのは自分のせいかもしれないって気に病んでるんだよ」
 どうやら旅泰の林青、自分が真世を戦闘のあまりない仕事ばかりに付き合わせてしまって弓の腕を鈍らせてしまったのかもしれないと思っているようだ。
「そんな。林青さんは全然悪くないよ。‥‥私が弱っちいのがいけないんだし」
 まったくその通りである。
「でな、南那亭も落ち着いてきたし、尖月島で一泊二日の訓練合宿をしたらどうかと提案してるんだよ。林青さんは」
「合宿‥‥? 一泊二日で?」
 次々郎の言葉に、好奇の目を輝かせる真世。なぜか某単語が抜け落ちてる事に不安を抱いた次々郎は、「おい、訓練だぞ」と目くじら立てて念を押す。
「そういえば尖月島、しばらく行ってないよなぁ。清らかな空に、青い海。‥‥常夏の島だから、こっちの冬以外は快適に泳げるんだったよね」
 ああ、ヤシの実ジュースに高床式の別荘〜、などと呟きながら両手を胸の前で組み合わせうるうると遠い地に思いを馳せる。‥‥次々郎の声はもはや、耳に入っていない。
「うん、分かった。それじゃ早速、一緒に行ってもらえる人をギルドで募るね!」
「‥‥まあ、尖月島の知名度向上のためそうするよう林青さんからは言われてるんだけどね。って、訓練だぞ、訓練」
 真世の調子の良さに、匙を投げ‥‥じゃなくて匙を置いてコーヒーを飲む次々郎だった。

 そんなわけで、真世に付き合って泰国南西部は南那、尖月島でバカンスの合間に各種訓練をする人を、求ム。


■参加者一覧
/ 風雅 哲心(ia0135) / 白拍子青楼(ia0730) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 巴 渓(ia1334) / 皇 りょう(ia1673) / 斉藤晃(ia3071) / 真珠朗(ia3553) / からす(ia6525) / 和奏(ia8807) / アーシャ・エルダー(ib0054) / 琥龍 蒼羅(ib0214) / リン・ヴィタメール(ib0231) / アイシャ・プレーヴェ(ib0251) / シルフィリア・オーク(ib0350) / 猫宮 京香(ib0927) / 白藤(ib2527) / シルト・マーズ(ib3087) / 常磐(ib3792) / 鉄龍(ib3794) / イクス・マギワークス(ib3887) / 長谷部 円秀 (ib4529) / 鞍馬 涼子(ib5031) / 加藤清正が子孫(ib5056) / 洸 桃蓮(ib5176


■リプレイ本文


 空がようよう白くなりつつあった。
 変わらぬ波の音に、風に揺れるヤシの葉の音。
 日の出はもうしばらく先だが、尖月島の短い夜が終わり新たな日が始まろうとしていた。
――どたどたどたっ!
 そんな早朝の静寂を破ったのは、どこかの高床式別荘の濡れ縁。海は満潮で別荘の下は海である。別荘間には渡り板があるが、夜は扉に鍵を掛けるがごとく板を外している。
「おりゃっ!」
 そして、気合いの音。
 どうやら先ほどの音は助走の音で、たったいま跳躍したらしい。
――ずだ〜ん!
「な、何だ何だ」
 何者かが着地した別の別荘に寝ていた者たちは不意の騒音と振動に目を覚ます。
「私、見てきますね」
 床から抜けささっと上着を羽織った鞍馬涼子(ib5031)が、引き戸の出入り口に近付いていった。開拓者になる前、実家で病弱の弟を気遣っていた。深夜や早朝などの不意の事態に慣れている。対応が早い。
 と、その時。
「深夜はおるか? さぁ、楽しい修行の時間や!」
 がらぴしゃーんと引き戸が開いて、大きな人影が胸を張ってそそり立っていた。きゃああ、と後ろに尻餅をつく涼子。そして見上げる。
 鍛え抜かれた筋肉質の体は巌の如し。
 揺ぎ無い顔つきは不屈の精神力を表す。
 そしてフンドシ一枚でもうやる気満々。
 斉藤晃(ia3071)、朝一からむさ苦しく堂々と登‥‥
「てめえ、自分の罪を数えやがれッ!」
 薄手の布一枚を纏った巴 渓(ia1334)が猛る。
「む、朝駆けかっ」
 皇りょう(ia1673)も手早く掛け布団にしていた薄い布を巻いて対応。
「騎士としてここは守り通しますっ」
 アーシャ・エルダー(ib0054)も胸から下だけを薄い布団で巻いて続く。
「早速特訓とは」
 イクス・マギワークス(ib3887)もローブのように布団を巻き付け、魔法のように。
 それぞれ、枕を力いっぱい投げつけたッ!
「むおっ!」
 飛んできた枕をばすっ、ぼすっと受けて後退する晃。さらに飛んできた枕を食らって、海にどぽ〜ん。派手に水柱が立った。
「び、びっくりしました」
 涼子が改めて振り向くと、枕を投げた渓、りょう、アーシャ、イクスが立ち上がってため息をついていた。座っているのは、一緒の布団の包まって抱き合う深夜真世(iz0135)とアイシャ・プレーヴェ(ib0251)。
「お姉、皆さん。どう思います?」
 アイシャは枕を投げた手を戻しつつ立ち上がるとそう聞いた。とどめの一撃は彼女だったようで。
「‥‥さすがにまだはええな」
「まだ暗いので泳ぎの訓練もできませんし」
 渓が頭をかきながら言うと、イクスも理路整然と続く。
「じゃ、真世さん‥‥」
アイシャはそう言って寝ぼけた眼をこする真世を立たせ出入り口まで導く。と、トンと背中を押した。
「んあっ! アイシャさん?」
 寝ぼけた感じの真世だったが、ことここに至って事態に気付く。
 が、もう遅い。どぷ〜んと晃の隣に落ちて水柱。水着姿で寝ていたのがあだとなり、そのまま早朝特訓へ直行である。
 そして、上。
「‥‥やさしいところもあるんですね」
 立ち上がった涼子は散らかった枕を集めながらこっそり言う。全て晃が当たりに行ったようで、一つも海に落ちてなかった。
「おや、これは‥‥」
 一方のりょうは、寝ている間に腕に絡まっていた薄い布切れに気付いた。
 なにやら紙切れが付いているようだが。
――りょうさんへ。真世より。
「‥‥何であるか。この青い複雑な布切れは」
 もちろんせくしぃな水着ですよ、りょうさん。


「ああっ、今年は調子を崩してる間に過ぎちゃったんやけど‥‥」
 日の昇った尖月島の広い広い砂浜を走る背の低い女性が一人。さくさくさくっと足跡が残る。紫の髪がなびき、白いビキニの水着が躍動する。
「夏を取り戻せて、幸せ!」
 跳躍一番、リン・ヴィタメール(ib0231)が腕を伸ばした。ちょうど被った陽光がきらめく。
「海、綺麗ー‥‥」
 そんなリンの姿を見ながら、白藤(ib2527)が前に来ていた長い髪を後ろに跳ね除けた。
「海で鍛錬出来て遊べるのが良いよねぇ‥‥」
 着ているのは、左胸元に白い蝶の刺繍が入った黒のビキニとパレオ。趣味の収集品の一つである。‥‥あ、いや。集めているのは水着ではなく蝶模様の品であるが。
 と、そこへシルト・マーズ(ib3087)と常磐(ib3792)がやって来た。
「結構暖かいな。‥‥昨晩のうちに到着して不安だったが、ここに泊まって練習できるのはいい」
「自分は、ギルドの依頼は初めてですからね。いいスタートを切りたいですね」
 濃紺の丈長水着に上着を羽織った黒猫的獣人、常磐が背筋を伸ばしながら言うと、青い髪に青い短め水着のシルトも笑顔。黒い尻尾がゆらゆら揺れて、隣では青いまん丸の眼が好奇心に輝いている。‥‥少年二人の姿は、見る人が見れば放っておけないような魅力を放っている。
 そして、その魅力に気付く人一人。
「あ。常磐、シルトくん! 2人とも水着似合ってるよー!」
 ぐりんと振り返る白藤が、両手を広げて自由に空を舞う蝶のように二人に駆け寄る。
「う、また暴走か」
 常盤は眉をひそめながら上着から陰陽符を取り出す。
「ちょっと、常盤さん。まだ訓練じゃ‥‥」
 シルトは、戦闘態勢をとる友人を止めた。第一、まだ水着を褒めながら近寄っているだけである。それだけの行為が、スキルを発動する仕打ちにつながるのか?
 しかし、シルトの言葉は途中で途切れた。
 瞬間、がすっという衝撃を味わうのだった。
「もーっ、シルトくん。似合ってるんだから〜!」
 頬を擦りつけぎゅうぎゅう抱きつく白藤。子ども大好き体質爆発である。
「おい、人前だぞ。お前は何考えてるんだ!」
 抱き付かれなかった常盤は、容赦なく呪縛符発動。シルトに心奪われている白藤に、砂から湧いた猫のしっぽのようなものがうねうね絡みつく。
「ちょっと。常盤こそ何考えてるのよ。水着の女性を人前で拘束するなんて」
 具体的描写は、伏せる。
「う、仕方ないだろう。‥‥シルト行くぞ。お前も約束があるんだろ?」
「約束?」
「いいから行くぞ!」
 白藤の抱擁から脱出したシルトと手を取り合って走り出す常盤。「もう抱きついてあげないんだからねっ!」という白藤の言葉に、ぴくっと常盤の耳が動いたのは秘密だ。


 場所は変わる。
「よし、それじゃみんな集まってくれ」
 抱えていたものをがらがらと砂浜に投げ出したのは、志士の風雅 哲心(ia0135)だ。この機会に腕を磨きたい者がわらわらと集まってくる。
「『合宿のしおり』がないので勝手は分かりませんが‥‥」
 和奏(ia8807)も近寄ってくる。今まで剣の稽古は少人数で鍛えてきた。大人数での稽古は良く分からないらしい。
「まあ、やればわかるのだと思いますよ。‥‥とにかく、お願いします」
 椰子の実があしらわれたさぁふパンツ姿の長谷部 円秀(ib4529)が挨拶しながら、和奏の居場所を作った。
「しばらく忙しくて剣術の稽古をしてないから、ちょうどいい」
 紺色ワンピの涼子も寄って来た。
「まあ、一人で稽古する者もいるが‥」
 哲心はそう言ってあごをしゃくる。
 その先には、いつもの姿の琥龍蒼羅(ib0214)が自然体で立っていた。
 対峙するのは、木になっている椰子。蒼羅は瞬きもせず、何かを待つかのようにじっと立っている。果たして、何を見ているのか。
「今だッ!」
 瞬間、腕が動く。あっという間に椰子の実に突き立つ朱苦無。
 力のこもった投擲は見事に椰子の実を落とした。無手の状態から投擲までの時間の短い見事な早撃ちではあるが‥‥。
「駄目だ。まだ遅い」
 どうも納得いかない様子。
「‥‥まあ、せっかくなので俺たちはみんなでやろう」
 集まった者に振り返り、そうまとめる哲心であった。
 そんなこんなで、ともかく乱取り。
「では一手、指南お願いします」
 円秀は哲心に挑んだ。
 が、円秀。どちらかといえば器用であり、性格は優しい。猛ればそうでもないだろうが、稽古では技に走る。
 哲心、これを覇気不足と取った。
「まだまだ、もっと打ち込んでこい。相手は大人しく待ってるわけじゃないんだぞ!」
 一気に踏み込み圧力を掛ける。まずは体力面を鍛えるようだ。
「では、木刀が燃えるかもしれませんが‥‥」
 面を改めた円秀は、炎魂縛武。
 木刀は炎に包まれるが、これは実際の炎ではないため燃えることはない。続けて激しくやりあう。
 別の組。
「じゃあ、一緒にやりましょうか」
 アーシャは、サムライの涼子と一緒に。早速切り込む涼子の木刀を防ぐアーシャ。
「あっ!」
「涼子さん、大丈夫ですか?」
 木刀を弾いた力が強すぎたか、涼子がよろめいた。心配するアーシャだが、きっ、と睨み返された。
「甘えるつもりはありません。‥‥続けましょう」
「分かりました」
 再び厳しく打ち合う。
「弟のためにも‥‥腕を上げないと」
 戦う合間にそうこぼす涼子。この様子に好感を抱いたアーシャは、ついつい打ち込みを激しくするのだった。


 さて、真世はどうなっている?
「もう私、死にたいよぅ‥‥」
 砂浜にうつぶせになって嘆いていた。鬼教官と化した晃からとにかく泳ぐだけ泳がされてへろへろにくたばっているのだ。
「ほら、立たんか。水泳の次は楽しい弓の修行を始めるんやでっ!」
「きゃっ。やあぁぁん!」
 心を鬼にして真世を鍛えると誓う晃は、容赦なく真世のざっくり開いた背筋から水着の端を握るとぐわばと引っ張り起こした。当然、真世は晃の手を払ったり水着がずれないようにと動くのだが‥‥。
「ちょっと、あたしのむ‥‥こほん。深夜のおぜうさんに何してるんですか」
 真珠朗(ia3553)がやって来た。
「当然、鍛えてやって‥‥」
「次は弓なんすよね? ここからはあたしが」
「ああ。真珠朗さん、ありがとう」
 休みたい一心の真世は溺れる者は何とやら。真珠朗にがっちり抱きつく。
 ‥‥ところで真珠朗さん、ラッキーとか思ってないですか?
「深夜のお嬢さんをみてると、なんつーか。娘がいたら、こんな感じかねぇとか思うんすよねぇ」
 問い質したとしたらそんなことを言うかもしれない。「妹というには、なんか幼いというか、危なっかしいというか」などとも。
 が、これが新たな悲劇の始まりだった。
「聞けば、弓持ちながらまず敵に近付こうとするとか。‥‥初めて会った時に、敵に突っ込まないようって言った気がするんすけどねぇ」
 ため息を吐きながらそんなことを言う。
「だって〜」
「まず距離を取る。そして敵味方の位置把握をする。孤立しがちになるので、敵の数が事前に把握できていれば、数の確認も怠らない。奇襲への警戒‥‥」
 言い訳する真世に言い聞かせる真珠朗。
 言っていることは、正しい。
 しかし。
「脇が締まってない。駄目っすねぇ」
「やん。ソコ触っちゃだめぇ」
「今度は腰が砕けたじゃないすか」
「やだぁ。そこお尻ぃ」
「ほら、顔はこっち。周囲の警戒も怠らない」
「‥‥あ、や。そんな近くで見詰めないでぇ」
 とかなんとかじっくりねっちょり手取り足取り腰取り‥‥。
「あ、真世さん」
 そこへ、アイシャがやって来た。
「お互い弓術師同士まったりいきましょうねー」
 強引に真世と腕を組んで、彼女を連行するのであった。


「合宿とはちょうど良かったですよ〜♪」
 パレオ付き水着で伸びをするのは、猫宮京香(ib0927)。
 改めてゲイルクロスボウを構えると、砂浜に立てた案山子にずびし。腕がなまっているかもと心配していたようだが、ちゃんと当たっている。‥‥若干、下にそれているようではあるが。
「んー、人形だと勝手が違いますけど、腕はまだまだ鈍ってないですかね〜?」
 ちなみに当たった場所は、ちょうど人が立っていた場合の股間の部分。どうやら体の真ん中からそれたのではなく、そこを狙ったようで。京香は満足そうに、にこにこにこにこ。
 そして、また撃つ。
 ばすっ、と今度は顔に命中。京香、にこにこにこにこ。
 と、ここで金髪をなびかせ振り返る。
「あ、真世にアイシャ。あなたたちもやってみる?」
「え? エグいから‥‥ううん、疲れてるから今はいいよ。あはは」
 股間に立つ矢を見ながら赤くなる真世。まさかあれを近寄って見るわけにはいかないだろう。

 さて、次に真世とアイシャは水際で一人黙々と木刀を振る姿を見つけた。
 りょうである。
「ギルドの仕事では刻々と変化する状況に対応せねばならぬ。普段と違う環境で鍛錬するのも良いものだ」
 一区切りついたのだろう、長い銀髪をかき上げる。走り込み、素振り、打ち込みとこなしてきている。あとは型の練習をするつもりのようだ。
「りょうさぁ〜ん」
「おお、真世殿にアイシャ殿」
 凛々しい立ち姿のまま振り返るりょう。
「うれしい〜。ちゃんと水着、着てくれたんですね」
 瞬間、真っ赤になるりょう。慌てて身をくねり両手で体を隠そうとむなしい努力をする。
 なんと、りょうの水着は股ぐりが両腰骨より高く、背中は獣人の尻尾が出るくらいまでざっくり下がり、胸は横に隠すのではなく縦にそれぞれ隠しているくらいに肌の露出度が高かった。
「す、推奨なので仕方がないであろう」
「うん。推奨推奨〜」
 ちなみに、多くの場合は女性が花柄ワンピに、男性が濃紺短パンという感じだったが。

「んあっ!」
 次に会った人物を見て、思わず真世は声を上げた
「真世、こんにちわ」
 志士からシノビに転職したばかりの天河ふしぎ(ia1037)である。
「今日は一緒にしっかり特訓するんだからなっ!」
「う? うん‥‥」
 真世が戸惑い気味なのは、ふしぎが「ぎしふ」と書かれた名札の付いた白いワンピを着ていたから。世界が世界であれば、「すくぅる水着」と呼ばれるであろう女性用水着である。
「僕もシノビ初心者だから、初心に返って訓練しなくちゃって、ね♪」
 にっこりふしぎ。もう何がおかしいか指摘できる雰囲気ではない。仕方なく話題を変える真世。
「ふしぎさん、今日もゴーグルを頭につけてるんですね」
「もちろん」
 大きな木剣で練習するあたりも、いつもの通りである。
「って、そうか。そのカッコもいつも通りといえばいつも通‥‥」
「さぁ、一緒に練習しよう。まずはその弓で素振り1000回!」
「え!」
 どこかで見たノリである。なぜにここだけ普段と違う。
「じゃ、真世さん。私は行くから」
 ついにアイシャにも見放されたり。


「お願い‥‥当たって」
 そうつぶやいたかと思うと、狙いもそこそこに矢を放った。狐の獣人、洸桃蓮(ib5176)である。しっぽの赤いリボンが可愛らしい。
「おや、真ん中に命中だ」
 黒ビキニに白パーカーのからす(ia6525)が微笑して「瞬速の矢」の技量を称える。開拓者として歩み始めたばかりの桃蓮と仲良く弓の練習をしているのだ。
「ちょうど頭みたいですね〜♪」
 京香もやって来て椰子の実を狙う。
「やっぱり真世さんも呼んでこようかしら?」
「ちょうどいい。苦無の練習は終わったから、俺が呼んでこよう」
 アイシャの迷いに、蒼羅が動く。
――そして、歩く蒼羅の前を駆け抜ける人影が一つ。
「砂浜で遊んでいいですかしら♪」
 すれ違って走って行ったのは、白拍子青楼(ia0730)だ。フリルふりふりな薄い桜色のタンキニ姿。肩紐のないトップからうなじと肩がさらされ、下は腰の左右でリボン紐が揺れる。後ろは「T」の字でヒップはほぼむき出し。微妙に多い露出部分に白い肌がまぶしい。
「水着、似合ってるじゃないか」
 うきうき青楼の駆け寄った先には龍の獣人、鉄龍(ib3794)がいた。こちらは黒のとらんくす水着。
 って、なにやらいやんいやんとフリルやら腰紐リボンやらが揺れてますが。
「駄目ですの駄目ですの。私泳ぎは苦手‥‥」
「砂浜で遊ぶの、好きだろ?」
「それは‥‥」
「だったら、海も好きになったら素敵じゃないか。‥‥しっかり補佐してやるから」
 鉄龍の優しい眼差しに、涙を浮かべていた青楼はついに首を縦に振った
 そんでもって、浅瀬に。
「ほら、力を抜いて浮かんで脚を動かして」
 ばしゃばしゃといい感じですよ、青楼さん。
 と、ここで鉄龍、手をそっと放そうとした。
「て、手を離したらいけませんの〜」
 すると青楼は溺れる者は藁をも掴む状態に。
「お、おい。青楼」
 首に抱き付かれ鉄龍も溺れるかと思いきや、ここは騎士魂でぐっとこらえる。
「って、ずれそうずれそう。下もヤバい」
 今度はずりずり下がってぽろりしそうなトップと左側が解けた腰紐に騒動が移る。ばっしゃんむぎゅうあわあわと何やってんだか状態。
「‥‥これでよし。青楼、落ち着いたか?」
 さらに浅瀬に移りつつ紐を結んでやって、ようやく人心地付いた。
「鉄龍様、今度は解けそうにないんですの」
「何っ!」
 鉄龍。ほどけた腰紐を結んでやったのはいいが、解きにくい結び方をしたようで。改めて結び直してやる羽目に。
「は、恥ずかしいですの。あまり顔を近づけないで‥‥」
「う、動くな」
「くすぐったいです〜」
 後日、知人に土産話をねだられた鉄龍は言ったそうな。
「尖月島か、アツかったな‥‥」


「せえっかくの海ですもの。あたいは、いやだからね。水着で過ごすのに痣だらけなんて訓練するの」
 両腕を上げて頭の後ろで組みそんなことを言うのは、シルフィリア・オーク(ib0350)。青い水着であるが、上は「H」で下は「V」。肌を面で覆う布の部分は少なく、へそ下やウエストサイド、そして胸の谷間の大部分を紐で編んでいる非常に露出の高い水着だったりする。上下は輪っかで結合してある。
「足腰の鍛錬、体のバネの鍛錬‥‥ってね」
 木刀を持つが、それに布切れを付けて浜に刺す。
 そこへ、礼野真夢紀(ia1144)がやって来た。
「ほえ。‥‥シルフィリアさん、何するんです?」
「こうして、‥‥こうするのをどっちが早いか競うのよ、真夢紀ちゃん」
 うつぶせに寝てから起き上がり、だだっと走って滑り込んで旗を取る。
「戦闘っ。‥‥まさに戦闘訓練ですねっ」
 戦闘依頼ぎぶみーな日々を送っていた真夢紀はノリノリである。地元は島であり海には慣れっこであるが、こういう遊びは目新しいかもしれない。青いくるくる眼もきらきら。

 それはそれとして、真世。
 蒼羅に呼ばれて無事に弓のグループと合流。
「そういえば、真世さんが弓を持ってるのを見るのは初依頼以来ですね。どこまで腕を‥‥って、外すし」
 アイシャと一緒にきゅんきゅん弓の練習。京香や桃蓮とも楽しくやる。
「さてと‥‥真面目に鍛錬しようかな」
 白藤もやって来て、朔月や鷹の目を試しつつ椰子の実を落とす。
「これが、響鳴弓」
 突然女性の悲鳴のような音が響いたのは、からすが上位スキルを披露したから。
「‥‥ふう。今のが、月涙」
 一瞬の忘我状態から帰ったからす。今度の矢は揺れる椰子の葉を何枚も貫通して見事狙った椰子の実に当たった。
「私は、まだまだ未熟。‥‥守りたい人のため、もっともっと技量を伸ばさないと」
 からすの技を見て、真顔になって心に誓う桃蓮であった。
「真世殿、次は騎射などどうかね。他職にない技術だね‥‥もしくは、鷲の目」
「うん、考えてみる」
 からすにお勧めのスキルを聞いて、素直に頷く真世だった。
「鷲の目は確かにいいよね〜」
「そうだね、便利だよねやっぱり」
 京香も勧め白藤も太鼓判を押す。アイシャも愛用しているようだ。真世がどっちを取るかは、後日。

 時は若干遡る。
「戦いの似合わねぇ娘がこれ以上暴力に深入りするのはどうかと思う」
 訓練する真世の姿を背中越しに見つつ、渓がつぶやいていた。
「無論、自分の身を守るのは大事だがな」
 前を向く。
(俺の様な魂の病んだ人間が、戦いに安息を求める因業を背負う)
 しんみり、そんなことも思う。
「妖魔は倒せても滅ぼせはせん。だから生き残る術を‥‥」
 そこまでつぶやくと、「おらぁ! 新人」と大声を出した。
「渓さんは、泰拳士でしたね」
「お? おお」
 積極的に声を掛けて回っている円秀が渓に声を掛けた。
「他職と戦う時、どうされてますか?」
「おおっ、いい質問だなぁ」
 渓、乗ってきた。武器に頼らないだけに工夫がいることを良く分かってるじゃないかと肩を叩き、今まで闘った経験の中で得たものを惜しみなく話した。
 ちなみに、円秀。その後、哲心ともじっくり話した。
「志士ってのは色んな意味で器用貧乏だから、最初のうちにどういう方向で行くかを決めないと、置いてかれる」
 円秀にとって、頷ける話であった。
「俺はこの精霊剣を覚えた事で、近接での物理非物理両方でいけるようになったし、今後の形も決まっていったな」
 なるほど、と思う円秀であった。
 さらに、その後。
「帝国騎士の力を見せましょう。出でよ、オーラドライブ!」
「円秀さん、これが虚心です」
 アーシャの気合いを込めた一撃は、その気合がゆえに和奏に交わされていた。円秀、話に実践にと大いに収穫を得たと満足そうだった。


「模擬戦とはいえ、魔術は手加減が難しい‥‥」
 黒のワンピ水着に身を包んだイクスは、右手に回り込みながら思案していた。
 対するは、常磐。こちらも右に回り込んでいる。
 魔術師対陰陽師。
 基本的に撃ち合いである。
 炎や雷が迸り、カマイタチが飛ぶ。
「撃つだけが戦いじゃない」
 常盤、白藤の暴走を止めた呪縛符を放つ。
 しかし、ここで常盤、眠気に襲われ膝から崩れた。
「撃つだけが戦いじゃない、は同感。常磐クンには悪いが、お互いこれ以上はね」
 クールに言いながら、常盤を開放するイクス。
 後、目覚めた常葉が治癒符で回復。お互いの技量の価値を認め合った。
 一方、シルトは剣術稽古組に合流していた。
 涼子と打ち合い、和奏やアーシャのスキルを見たり。
「もっと速く、もっと鋭く‥‥」
 蒼羅は、大きな木剣で居合いの練習。さすがに重いようで、いつもの切れはない。が、これこそ訓練。ふしぎも習ってやってみたり。
「真世はん、こっちで勝負や。‥‥アーシャはんもどう?」
 駆け回って誘っているのは、リン。
「シルフィはんらが楽しいことしてはるんえ」
 どうやら、球「友だち」を使ってばれーをするらしい。
「うちだって負けまへんで♪ 詩人の戦い方、見せてあげるわ」
 身長の高いシルフィリアが鋭角的に球を打ち下ろす様を見て、リンは桶に水を入れてばしゃーっとかけたり。
 って、なぜに悪戯した方がほろりんとか泣いてるんですか。
「だって、嬉しいんやもん」
「リンさんを泣かせましたね。よ〜し」
 燃え上がる、真夢紀。
「私もまだまだだね」
 からすは、球を落としてから抜けてお茶タイム。
「なかなかに新鮮な気分だ」
 りょうも笑顔。
 そして、楽しい時はあっという間に過ぎるようで。


 夜。
「やっぱり海はこれやなぁ」
 がはは、と晃が焼き魚にがっつき酒を飲む。
 大きな炎を焚き、りょうやアーシャ、鉄龍が昼間に取った魚介類をじゅうじゅう焼いている。
「京香さん、この辺りはもう焼けましたよ。どうぞ〜」
「あ、ありがと〜」
 円秀から焼き魚を手渡された京香は、シルトをじ〜っと見詰めていたり。可愛い男の子好きな面があるようなないような。

♪みんなに誘われ南の果てに、ここは常夏尖月島〜

 リンは椰子の実を叩いて歌を心地よく。
「線香花火を持ってきた」
 蒼羅は夜空のような浴衣姿で花火を出す。星が散りばめられているのがおしゃれである。
「あたいも買ってきたよ」
 シルフィリアもにっこりと。
 この二人にからすに真夢紀、涼子たちが付いていき、しっとりとした花火を囲む。
 そして、酒をついで回る鉄龍。
「どうだ、一杯」
「ああ。動いた後の一杯ってのもいいもんだな」
 杯を受けた哲心は濃紺の浴衣姿。くいっとやって鉄龍にも注ぐ。
 さて、真世はといえば‥‥。
「別に斉藤さんから逃げたわけじゃ‥‥むにゃ」
「やれやれや」
 昼間に訓練から逃げて悪いと思ったようで、お酌しに来たまま寝てしまったようだ。晃は膝枕でそっとしてやりつつ、酒を飲む。

「そんな、楽しいことだらけでした」
 桃蓮は帰ってから里の皆にそう手紙を書いたという。


●おまけ
 浜辺の炎もすっかり燃え尽きた深夜。
「ん、アイシャか?」
 大剣を素振りしていた鉄龍が、近寄ってきた人影に問うた。
「こんばんわ。鉄龍さんも夜に鍛えるタイプですか?」
「さあな」
「私も、努力はコソコソやるタイプです」
「その割に訓練したようじゃねぇな」
「鉄龍さんに見つかりましたから」
「俺もこれくらいにしておくか」
 帰る道すがら、二人は波音にまぎれる声を聞いた。
「真世、お疲れさま。感覚は掴めた? 」
 そっと近寄ると、真世とふしぎが椰子の木の下で夜空を見上げていた。こくりと頷く人影。
 と、その人影がふしぎと思われる人影に身を預けたッ!
――まさか、このまま‥‥。
 どきどきと見守る鉄龍とアイシャ。
「‥‥真世、寝ちゃった? 僕もいい経験になったよ、今日はありがとう」
 そっと膝枕して、ふしぎはまだ見ぬ空を求めるように星を見上げるのだった。