【秋市】山賊砦の屋台
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/10/30 21:51



■オープニング本文

「私たちも屋台を出したいです〜」
「出したいったら出したいです〜」
 武天の某山中、裏街道のお宿たる山賊砦にかしましい娘たちの声が響く。
 一体何事かというと、秋の収穫時期に合わせ、武天では「野趣祭」(やしゅまつり)という収穫祭が繰り広げられており、これに行きたいと。
 野趣祭りとは武天の都、此隅で開催されている。秋に肥えた野生肉が多く扱われる市で、期間中、肉を扱う屋台のおかげで暴力的に美味しそうな匂いが漂い続けるとかなんとか。
「麓の両村からも屋台を出すんだろう。その手伝いはいいのかよ」
 山賊砦に住み込んで働く泰国出身の青年たち――恩人の飲食店の名を取り、「泰猫隊」を名乗っている――は、いつも手伝いに来てくれている麓の村の年頃の娘たちに疑問を投げかけた。
「お父上が行かれて、私は留守番なんです〜」
「お姉様が行かれて、私は留守番なんです〜」
「人数は足りてるから、来なくていいって言われたんです〜」
 口々に、ぴーちくぱーちく。
「でも、とにかく私たちも行きたいんですっ!」
 つまり、こんな楽しいことに参加できなくてつまんない、ということのようで。彼女らなりに考えた末の妙案が、「山賊砦として屋台を出せばいいじゃない」。‥‥何というか、「ごはんがなければお餅を食べればいいじゃない」的ではあるが。
「しかしなぁ‥‥」
 ぼそっとつぶやく泰猫隊リーダーの瑞鵬(ズイホウ)。
 実は、山賊砦が結構繁盛して忙しいのだ。
 裏街道を近道として使ってくれる急ぎの商人。
 もの珍しさに泊まるだけ泊まりに来る観光客。
 そういった人たちで、村の娘たちも本格的に手伝っている忙しさだ。
「我慢してくれ」
 といいたいところが本音の瑞鵬だが、もうしばらくすれば冬。今のうちに存在を広く知ってもらっておくべきである。
「そういや、後ろ盾の旅泰の定期便が来るとか言ってなかったか。頼み込めば、行きと帰りを飛空船で面倒見てもらえるかもしれんぞ」
 山賊砦の切れ者、錐間(きりま)が指摘した。
 手間は増えるが、その旅泰の代表・林青(リンセイ)は、「商売は真心」など普段言っている男だ。今まで世話をしてきた者たちの申し出を簡単に断ることはないだろう。
「しかし、余剰の食材がないぞ。山賊焼きは野鳥をもう少し狩らないとこっちで出せなくなる」
「あの手で行けばいい。‥‥ほら、ここを守った戦いのときのように」
 にやりと、錐間。
「開拓者、か。確かに、狩りも釣りもできるし、猪や鹿なんかも狩ることができるだろうな」
 ふむ、と考え込む瑞鵬。
「しかし、予算が‥‥」
「主催者側に連絡して、『会場周辺を警備する開拓者も連れて行くから』という条件を付ければいい」
 つまり、警備する人材確保の仲介をすることで、手間賃をもらうというわけで。
 話ははしょるが、これが上手くいった。
 というか、図に当たった。
 逆に言えば、ちょいと今年の野趣祭は荒くれ者が暴れたりと荒れている様子で。
 ともかく、これで予算的な目処は立った。
「よし、早速開拓者ギルドにお願いしよう」
「おおっ」
 瑞鵬の号令に、盛り上がる泰猫隊であった。
「これで祭りに行けるです〜」
「行けるです〜」
 娘たちもきゃいきゃいと盛り上がるのであった。

 そんなわけで、山賊砦周辺で狩猟したり釣りしたりして食材を確保して、武天は此隅で長期間に渡って開催中の野趣祭に屋台を出して山賊焼きとか山賊むすびとかを売って山賊砦ここに在りを知らしめて、ついでに会場警備してもらえる人材を、求ム。
 ‥‥って、えらい長いぞ。
 もちろん、娘たちといちゃついても大丈夫(好みのタイプを教えてください・青少年健全育成上問題ある行動は、禁止)。


■参加者一覧
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
来島剛禅(ib0128
32歳・男・魔
リン・ヴィタメール(ib0231
21歳・女・吟
燕 一華(ib0718
16歳・男・志
ノルティア(ib0983
10歳・女・騎
常磐(ib3792
12歳・男・陰


■リプレイ本文


 覆い被さるような木々は、秋色に染まっていた。
 渡る風にひらと一枚の紅葉が舞い、水面に落ちた。石の川原に流れる清流である。ちょうど深みとなっているため流れは緩やかで、浮いた紅葉もほぼ流れない。
 その葉っぱの隣に、浮きが一つ。
 ちゃぽんと、浮きが沈んだ。
「よっ、と」
 常磐(ib3792)が竿を上げる。左腕のブレスレットが陽光を跳ねてきらめく。
「常磐殿は釣りがお得意ですね」
 隣で竿を持つエルディン・バウアー(ib0066)がにこやかに隣人を称えた。
「そうでもないが‥‥。とりあえず、魚を一匹でも多く釣らないとな」
 ぴちぴちっと跳ねる山女を魚籠に入れながら答えた。特段、喜んでいる風でもないが長い黒尻尾が気持ちよさそうに揺れているのでいい気分ではあるようだ。常磐、このあたり激しく黒猫的である。
「エルディンは、女性に囲まれていたほうが良かったんじゃないか?」
 常磐が機嫌悪そうな顔で聞く。そのくせしっぽはほにゃほにゃと力ない。
「そうでもありませんよ。屋台で売る食材を得るための仕事も、また人々のため」
 山女を釣り上げ、整った面でにっこりスマイルのエルディン。ちなみに二人、ここにはしっかりした風な村娘に案内してもらった。
「この辺りは不慣れなものですから、案内していただけませんか?」
 きらきら美男子すまいるで一人の村娘をたぶらか‥‥こほん、頼んだのだ。
 すでにその娘は帰ったが、「私、朝月といいます」と最後に言葉を添えていた。名残惜しそうな様子だった。
「それなら、いい」
 エルディンは、それとなく常磐が釣りに誘っていた。もしかしたら悪いことをしたのかもと思っていた。
 とりあえずこの二人、順調に食材を集めた。


 さて。別の場所。
 かさかさっ。
 大きな幹のそばに、大きなきのこ。
 もとい、三度笠。
 くいっと端が上がると、燕 一華(ib0718)の赤い瞳が覗く。揺れる、笠の端に括りつけた照々坊主。
 そっと星天弓を構えると、小枝の鳥を狙って‥‥落とした。
「可哀想ですけど狩った分、皆さんに美味しいと思って食べて貰いたいですねっ♪」
 狩った獲物に近付きながらにぱっと笑顔。喜ぶ見知らぬ子どもの顔が浮かんだか。
「‥‥ん。ちゃんと‥お役。立てる、よう‥‥頑張る」
 一華と一緒にいたノルティア(ib0983)も、弓「緋凰」を引き絞っていた。
 ちなみにノルティア。とても小さい女の子だが穢れを知らぬように、白い。山中で目立つことこの上ない。
 が、弓「緋凰」の射程は驚くほど長い。白い姿は狩りに影響ないようで、こちらも鳥を落とした。
「ちょと‥‥かぁいそう、だけど。いつも食べてるものだし。これも‥‥良い、経験。かな」
 ノルティアも獲物を取りに移動する。
――と、その時だった。
「ん、しまった!」
 獲物を回収し、次の標的を探していた一華がぐるんと首を回した。
 心眼を使ったところ、ノルティアが感知内にいないので振り返ったのだ。
 見ると、獣のイノシシがいた。
 屈んで無防備になっているノルティアを狙っている。
 不味いことに、二人が別方向に長距離射撃をしたので、かなりの距離が離れてしまっている。星天弓の射程距離外でもある。
 そして、イノシシが突進を始め、ノルティアが今気付いて‥‥。
 と、そのイノシシが倒れた。
「楽器を持ってきて正解どしたな」
 ノルティアの近くの茂みから、ざっとリン・ヴィタメール(ib0231)が顔を出した。お団子に髪をまとめた吟遊詩人だ。緑色のラフォーレリュートを手に、夜の子守唄を奏でたようだ。イノシシはこれで寝たらしい。
「あり‥‥がと」
 礼を言うノルティアに、気軽に手を振るリン。改めて仲良くなれたようで、一緒に山菜取りもする。
「あ。見て‥‥これ。絵本で、見た。キノコ‥‥そっくり。食べられる?」
 ノルティアが、赤く丸っこい傘に白い点々のあるキノコを手にした。「それはちょっと‥‥」と苦笑する一華。
「山の幸はええもんどすな。うちの故郷でも、秋になると山菜がたくさん取れて、毎日キノコの丸焼きとか、キノコご飯とか‥‥」
 うっとり話すリンに、へええと身を乗り出して聴くノルティア。さすがに吟遊詩人、話術が上手い。


 そして、毎度おなじみ山賊砦。
「屋台は根本的に、宿の給仕とは違ってきます」
 足りない食材集めに出なかった来島剛禅(ib0128)(以下、クリス)が、厨房で泰猫隊の青年に指導をしていた。
「上手くいけば、大量の客がやってきます。いつものように山賊焼きをじっくり焼く時間がないかもしれません」
「じゃあ、あらかじめ焼いておけばいい」
 青年の一人が声を上げた。ちなみに、手伝いに来ている村娘たちはいま主に宿仕事をしていてここにはいない。重要機密に直接参画させるわけにはいかない。
「悪い意見ではありません。ですが、目の前で焼くというのも集客要素につながりますし、『今焼き上がった』感が乏しいでしょう。‥‥これを見てください」
 クリスはそう言って、あらかじめ指示しておいた錐間(きりま)に鶏肉数本を持って来させた。
 おもむろに炭火に掛けるクリス。じゅうぅ、とたちまち良い香りが広がる。たれをつけ頃合を見てひっくり返し、やがて焼きあがる。
「‥‥早いな」
「いくら炭火といえど、中まで焼きあがってるのか」
 口々に不審そうにする青年たち。割ってみると、赤みのある生焼けの部分は、なかった。
「なぜ?」
「実は焼きあげた訳ではありません。下味用の汁で軽く煮、水を切っておいた材料をタレを塗りながら温め直して、焼きあとをつけただけです」
 説明するクリス。これなら、短時間でもまったく生の部分はない。技ありである。
「‥‥なるほど。味は違うといわれれば違うが、大差ない。というか、だしを利いているからこれはこれで、うまい」
 味にうるさい青年はそういうが、味については満足だとまとめた。
「触感や味が少し変わるので邪道ですが、屋台というレベルであれば、十分な焼き加減を出せます。‥‥実際にここでは、超大人数の客がいるとき以外はしないほうがいい、緊急手段です」
 クリスの説明に、うむ、と力強く頷く泰猫隊であった。
 と、ここで「きゃあああ〜」と歓声が。
 どうやらエルディンと常盤が戻ってきたのだ。エルディンは高身長の涼やか男性として、常盤は斜に構えたツンツン系としてモテモテだったり。
「‥‥ま、饅頭の準備を」
 厨房に現れた常盤の髪の毛や呼吸などが乱れがちなのは、やはり構われまくったからだろう。しっぽもちょっと、へろりん。


 でもって、お祭り参加当日。
「きゃ〜っ、お祭りです〜!」
「お祭りです〜っ!」
 武天の都、此隅の「野趣祭り」の会場に到着した泰猫隊一行。早速村娘たちが笑顔を輝かせる。
「やはり‥‥」
 クリスは一瞬眉をひそめた。
 何かというと、屋台の場所が賑わいの一番端っこで、しかもあてがわれた場所が狭いのだ。
「当初予定にないところへ出展したのです。こういうこともあるでしょう。まずは機材を効率よく動けるよう配置して。誰か、代表して周囲の屋台に挨拶を。早く上がるようでしたら場所を貸してもらいますよ」
 てきぱきと指示を出す。
「ごった煮は魚と肉の二種類。二つ鍋は‥‥だめか、それなら」
「そうですね。酒粕かで味を調律しましょう」
 常盤は、クリスと一緒に調理に。
「それでは、私たちはお役目の警護へと出掛けましょうか。一華殿?」
「行きましょう! ノルティア、行ってきますねっ」
 エルディンと一華がお勤めに出る。
「がん‥‥ばって」
「さー、ノルティアはん。一緒に売ってくどすえ」
 ノルティアは、まず持参した団子を売って景気付けやと声を出すリンの補佐に回った。
「クリス、味はどうだ? 酒はもう少し入れた方が良いか?」
 急いで味を調える常盤。ごった煮は二種類を考えていたが、場所の問題で一つにまとめた。昼までもうすぐなのに、ここで遅れを取るわけには行かない。村娘たちも、とりあえず下ごしらえなどの手伝いに動き回っている。
「特に猫好きというわけでもない? まぁ、ええ。仲良くやっていけたらな、よろしゅうに」
 リンの楽しそうな声がする。泰猫隊に声を掛けたのだ。一緒に屋台骨を支えようと奮戦するうち、打ち解けて自然な会話が生まれているようだ。


「おんどりゃ、どういう了見じゃい!」
「ああん、てめぇが先にぶつかってきたんじゃろうがぁ!」
 賑わう場所に問題ごとは付きもののようで。
 警備巡回していたエルディンと一華は、早速猛るごろつきに遭遇した。別に放っておいてもいいのだが、周囲に迷惑が掛かる。
 と、もみ合いそうになった二人の間にすっと長い棒が割って入った。薙刀のように長い棒の先に、三度笠。ふっと顔を上げ、一華が微笑する。
「あんだ、てめぇはよ」
「やろうってんなら相手になってやるぜ」
 荒くれ者二人、なぜか一華を共通の敵とみなした。一歩下がったエルディンは「ははあ、そういうことですか」と納得。‥‥どうやらこの二人、とにかく暴れることを目的としているらしい。
「仕方ないですねっ。‥‥さあさあ祭りに喧嘩は華なれど、賑わい汚すは無粋な物。それならば演舞の一つとして、皆様に楽しんで頂きましょうっ!」
 くるん、ぱしんと地面を叩いてから、本格的に演舞に入る。敵の二人はなんと、匕首を取り出し手にしている。
 葉擦で棒の先を揺らして、ぱしんと足元をすくう。半回転して倒れる荒くれ者。もう一人は切りかかっているが、これを円運動で回避。虚心の心得である。
 エルディンは、しゃんしゃんと手拍子をして援護。本気の戦いを出し物に見せているのだ。怖がっていた来場者もしゃんしゃん叩く。
「何やってんだ、てめぇ。余計なことを」
 仲間は他にもいたようだ。新たな一人が現れエルディンに絡む。
「手荒なことはしたくないのですが、どうしてもとおっしゃるのなら相手しましょうか。‥‥手加減、難しいのですよ」
 一瞬どすが利くエルディンの声。かざしたルーナワンドからホーリーアローが飛んで近くの屋台の柱にずびしッ! 新たな男はこれですごすごと引き下がった。
 そして、一華相手のもう一人も半回転して倒れた。
「お、覚えてやがれ!」
 しっぽをまくる荒くれ者二人。
 観客からは大きな拍手が上がった。


 一方、山賊砦の屋台でも周りにまけじと暴力的に美味しそうな匂いが漂い始めていた。
 山賊焼き、ごった煮、山女の塩焼き、お餅、饅頭と品目が多いが、協力してうまく販売している。
「ありがと‥‥ございました。‥‥残さない、て。食べて‥‥くれる、と。嬉しい」
「ノルティアちゃん、その調子よ」
 商品渡しに頑張るノルティアに、村娘の朝月が笑顔で励ます。ふわっとした笑顔で返すノルティア。
 そして、リン。
 ぽろろん♪とリュートを奏でていた。屋台の前で。
「場所は端っこでも、賑わいの中心をこっちに移しますえ?」
 堂々言い放つ。そして、本格的に身も心も躍りだすような曲を始めた。
「朝月はんら、よければ踊ってくれはらへん? 秦猫隊の皆さんもどうですやろ? お、エルディン先生に一華さんもお帰り。さささ、歌って踊って。お祭りやからまず自分らが楽しまへんと♪」
 にこにこと笑顔を振りまきまずは朝月を巻き込む。お世話好きの朝月はもちろん踊り出す。それと一華も。
「美しい人ばかりですね。ガイジンさんはドキドキです♪」
 エルディン先生は、優雅に村娘を誘う。
「頑張れ。エルディン先生。先生なら女性にモテまくりだろ」
 見守る常盤が棒読みで応援する。
「花に例えるなら可憐な百合か、華やかな薔薇か」
 先生、乗ってきたッ! さらにその動きから無駄なく屋台の外に。金髪をなびかせて笑顔きらめかせて道行く女性を「一曲いかがですか」と誘う。こうなると手が付けられない。きら〜ん☆と白い歯を輝かせては「通常の3倍に輝く聖職者スマイル」(本人談)全開で動き回る。周囲の女性を、巻き込む・巻き込む。って、あなた何の宣教師だ? ‥‥まあ、愛の宣教師なんでしょうが。
 ともかくこうして、リンとせんせえの悪魔の‥‥こほん、天使のような連携で、一気に屋台通りの端が中央かと思わせるような活気になるのだった。


 その後。
「アイツへの土産にでもと思ったけど‥‥」
 店番を変わってもらった常盤が屋台を見て回る。飲食が多いが、装飾品も売られている。
「‥‥やっぱり、料理本でも買って美味い物を」
 ちょっと興味を引かれてじっくり見ると思えば、また次を探す。猫的である。結局、今回の屋台で作った料理の記憶が、知人への一番の土産になったようだが。
 そして、泰猫隊の屋台。
「ん?」
 くいくいっと袖を引かれ、一華が振り返った。ノルティアである。
 一華、「そうですねっ。一緒にお祭りも見て回りましょうかっ!」と一緒に休憩に出掛けた。
「一華さん、は。きゃいきゃい。楽し‥‥めた?」
「先生に教わって、ちょっぴり実践してみまよっ」
 にっこり微笑して、ノルティアの鼻と自分の鼻がくっつく直前まで顔を寄せた一華。
――まさか、キス?
 そんな予感にびくっと身構えたのは、二人を遠巻きに見ていたリン。どきどきどきどき‥‥。
「よく分かんないですけど、一緒にすっごく仲良くする事みたいですっ。朝月さんと仲良くなりましたよ」
「見てた‥‥。朝‥‥月さん、やさしい‥‥くて、楽しい‥‥」
 二人の顔は離れたが、よりきゃいきゃいきゅんきゅんと話が弾む。‥‥リンさん、内心「がくー」とか思ってないですよね?
(話の聞き上手になりましょう。そしていいとこを見つけて褒めましょう、でしたねっ)
 一華の方は、せんせえに教わったことを思い返していた。
「どう‥‥したの」
「いや、なんでもっ」
 大切な友達のノルティアには、自然とそうしてるような気がするなとか思う一華だったり。
「そこのお嬢さん、美味しい味噌鍋ありますよ。よろしければ私が給仕いたしましょう」
 そこへ、笑顔きらーんとせんせえが冷やかしにやって来た。朝月と、夕凪という清楚で可愛らしい娘を連れていた。ちなみに、朝月19歳、夕凪17歳。‥‥せんせえとしては、足して2で割りたいと思ったり思わなかったり。
「お、常盤はん発見。みんなのとこへ行きますえ〜」
 リンは一人で気ままに歩く常盤を発見すると、腕を取ってきゃいきゃいきゅんきゅんと皆の元へ。「お、おいっ」と常盤。ただし、本人の意思とは逆に流され属性が高いようで。
「皆さん、頼みますよぅ。クリスさんも休憩に連れてってください」
 頑なに現場を守ろうとするクリスを、泰猫隊が連れて来た。
「やれやれ」
 とか、クリス。
「きゃ〜、私たちも休憩〜」
「休憩〜」
 と他の村娘も参上。
 店を泰猫隊に任せ、思う存分楽しんだという。

 後日、山賊砦に新たな客が多く訪れたそうだ。「野趣祭り」への参加は大当たりだと瑞鵬たち泰猫隊は喜んだという。