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■オープニング本文 神楽の都に、雨がしとしと降る。 梅雨である。 「でもやっぱり、アジサイはこういう日が一番映えるよね」 コクリ・コクル(iz0150)は青や紫に咲き乱れる花に顔を寄せて微笑んでから、顎を上げて上目使いで言った。 「そうだな」 視線の先には、志士の海老園次々郎がいた。傘を差し、自分よりコクリが雨に濡れないよう配慮しながら持っている。 「‥‥あれから、遺跡調査はどうだい?」 「小手毬隊のみんなと天井の低い場所をあらかた踏破できたよ」 訪ねる次々郎にコクリは誇らしく言うのだった。 「前も言ったよね。三文字の単語三つが彫ってあって、それが何を意味するのか分からないって」 「ああ。実はそれが気になってしかたがなくってね」 「えっとね〜」 得意顔で「次々郎に教えるのは、特別だよ」と前置きしてから、コクリはこれまでの成果を話し始めるのだった。 10人編成による第二次小手毬隊の出撃は、第一次調査時とは異なり戦闘が相次いだ。 一方、まだあるのではと期待された謎の三文字単語は、新たに六つを発見。こちらの探索より戦闘の方に苦労するという図式となった。 三文字単語は、いずれも他の開拓者が探索したときの未踏破地域、天井の低い通路の先にある広間で、壁に直接文字が彫り込まれているという形で発見された。 出てきた単語は、次の通りである(順不同)。 「くぐけ」 「あおい」 「えしお」 「きはく」 「けはこ」 「うたえ」 「かぐき」 「おもか」 「いいう」 「でも、これらが何を意味するかっていうのがまったく分からないんだ」 コクリは難しい顔をしてそう結ぶ。 「あそこ、だろうなぁ」 「えっ」 次々郎の言葉に、コクリが色めき立った。 「あれから私の仲間もさらに探索が進んで、ついに手詰りになったんだけどね」 彼の話によると、仲間が探索していたルートで難関が立ちはだかっているという。 袋小路に突き当たってしまったのだ。 ただし、隠し通路を発見。その先にかなり大きな天然の広間があることも確認しているのだが‥‥。 「その通路、例によって天井が低いんだよ」 「よっし。出番だね。任せてよ」 途端に元気になるコクリ。 「いや、今回はちょっとなぁ」 言い淀む次々郎。 理由を聞くと、アヤカシがウヨウヨいるらしい。 「スキルを使っていろいろ調べたんだが、空中浮遊型を中心にかなりいる。仲間が放った人魂は、知覚攻撃が集中してあっという間に消し飛んだ」 「突入しなかったの?」 「無茶言うな。いざというときの撤退を考えたらぞっとする。隠し通路はまっすぐでちょっと長い。かがんだ姿勢でもたもた逃げてたら背中から知覚攻撃を食らい放題。下手すりゃ全滅の危険性だってある」 「先の方に逃げれば‥‥」 「おっと。言い忘れた」 次々郎、式を使った者からの情報だと前置きをした。 「広間は他に通路はないらしい。袋小路だ。‥‥ただ、遺跡の入口にあったような扉があるようだけどね」 「あの、呪文を唱える必要があるっていう」 「そう。あれよりちょっと小さいらしいが」 「‥‥つまり、三文字単語はここで使うことになる、と」 「おそらく」 もっとも、「扉には『9文字』と記されていたらしいけどね」、と次々郎は肩をすくめる。 「どういうことかなぁ?」 「呪文は9文字だ、ということだとは思うけど」 とりあえず、謎である。 「まあ、みんなと話し合ってみる」 「広間のアヤカシも注意しろよ。いくら小手毬隊とはいえ、通路は横幅もない。1人ずつ突入するしかない。何か工夫をしないとえらい目に遭うぞ」 三文字単語の謎より、こっちが厄介かもと忠告する。スキルによる調査では、吸血蝙蝠多数に地縛霊数体、闇目玉数体を確認している。当然、それだけとは限らないかもしれない。激しい戦闘になるだろう。 「小手毬隊の優位性は、連結する通路の移動のみ。広間に出てしまったら適材適所とは言い切れん」 「でも、体格の大きな人がもたもた突入してたら一網打尽にされるかもだし」 戦場を思い巡らし思案する二人。が、根本的に打開する案などはない。 やがて、顔を上げるコクリ。 「大丈夫。ボクはいい仲間に恵まれたから。ボクたちならやれるよ」 瞳に惑いはない。 「そうか。じゃあ、この地図は小手毬隊に託そう」 次々郎は懐から地図を取り出すと、コクリに渡した。 「ありがとね、次々郎」 きびすを返すと、早速走り出すコクリだった。 雨は、いつの間にか止んでいた。やれやれ、と次々郎は傘を閉じ見送るのだった。 |
■参加者一覧
静雪 蒼(ia0219)
13歳・女・巫
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
のばら(ia1380)
13歳・女・サ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
アルネイス(ia6104)
15歳・女・陰
ベアトリーチェ(ia8478)
12歳・女・陰
ベル・ベル(ia9039)
15歳・女・シ
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
シャンテ・ラインハルト(ib0069)
16歳・女・吟
式守 麗菜(ib2212)
13歳・女・シ
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ● 「コクリちゃん今回もよろしくにゃ〜♪」 出発前。そう言っていきなりコクリ・コクル(iz0150)に抱きついたのは、猫宮・千佳(ib0045)。今回も元気でにゃんにゃんだ。 「う、うん。よろしくね」 「コクリ様、皆様、はじめましてですの〜。よろしくお願いしますわ♪シャル、一生懸命頑張りますの」 その横で、ぺこりと金髪を揺らしお辞儀したのはシャルロット・S・S(ib2621)。仮にここに目敏い人がいたなら、足元に注目していたろう。普通に話していても、足はもじもじ。愛すべきどじっ娘さんと読むだろう。 「おおっ、やはりわしらは間違えてなかったぞ」 「そうじゃ。毎回可愛らしい娘が加わりつつ、そして成果もあがっとる。出資して悔いなし!」 「悔いなし!」 なにやら悔いなしの大合唱をしているのは、ろりぃ隊、もとい小手毬隊に出資するでぶでぶとしたエロ親父など。もちろん有閑マダムさんたちも静かに見守っていた。当然、目敏い人たちだ。 「彼女もいいが、わしはこの娘のチラリズムに満ちた愛らしい姿にめろめろじゃあ」 とかなんとか言う出資者の前には、輝夜(ia1150)がいた。きぐるみ「まるごととらさん」姿だ。チラリズムなのは、顔。 「ほれ、もうちょっと顔を見せてくれんか」 「が、がぅ」 「おお、こっちを向くか。ほれほれ、顎をあげて‥‥」 「う、がぅ」 輝夜、かまわれまくり。 「カガヤ、苦労するわよ」 その様子を見てベアトリーチェ(ia8478)がため息交じり。前々回の記憶が蘇っているのだろう。 「私たちのコクリちゃん、そして私たちの小手毬隊の皆さん。頑張ってきてくださいね」 マダムさんたちはそう言って、皆を送り出すのだった。出資者満足は今回もばっちりのようで。 「じゃ、今回も頑張るですよ〜☆」 ベル・ベル(ia9039)の掛け声で、れっつご〜。 ● さて、洞窟内。 「‥‥」 「うむ? 阿修羅な虎で阿修虎(アストラ)と名付けてみたのじゃがどうじゃ?」 輝夜は、歩く姿をじっとシャンテ・ラインハルト(ib0069)に見られていたので、逆に積極的に見てもらった。 「‥‥とらさん行進曲、なんて似合うかもしれません」 シャンテ、どうやらそんなことを考えていたらしい。「阿修虎、阿修虎、どこへゆく」などメロディにのせて呟いていたり。 「やぁん!」 「シャルロットはん、怪我しぃへんかたぇ?」 後方では殿担当の騎士、シャルロットがこけていた。転がりかけるのを静雪蒼(ia0219)ががっちりと抱いて止めた。‥‥蒼さん、どうもそういう役回りのようで。やはり今回も、惜しみなく神風恩寵。 「何かあったの?」 コクリが取って返す。 「はやや〜。罠はなかったと思ったですよ〜☆」 「そ、そうですよね」 罠に注意をしていたシノビのベルと式守麗菜(ib2212)も心配そうに寄ってきた。 「大丈夫?」 「べ、別に何もないんですの」 アルネイス(ia6104)もやってきてシャルロットを抱きしめなでなで。ちなみに、シャルロットの言う通りそこには確かに何もない。でも、転ぶ。理屈ではない。 そんなこんなで、ここで小休止。 「‥‥」 「あっ。これは別に‥‥」 水月(ia2566)にじっと見詰められていたのばら(ia1380)が、真っ赤になって慌てていた。 「‥‥のばら、もじもじしてた?」 のばらに聞かれこくりと頷く水月。 「紐ショーツ、今回は大丈夫だと‥‥。蒼さんはどう?」 お尻を突き出して背中越しに下着の収まり具合を確認しようとして、蒼に気が付いた。実はのばら、蒼にも履くよう誘っていた。みんなで履けば恥ずかしくない? 「うちは‥‥」 聞かれて腰のあたりを気にする蒼。突然、にっこり。 「何時の間にやら無くなってはるんは気のせいやろか?」 どうも着物ですれて結び目が解けたようで。これでろりぃ隊がこの遺跡に残した紐ショーツ、二枚目。 「ここまでは完全に安心、ということでいいのかにゃ」 「いいみたいですね。‥‥ろりぃ隊♪可愛い方々が沢山おりますねー」 千佳はこの隙に趣味に走り、アルネイスに抱きつきあたっく。アルネイスは慣れたもので、動じることなく甘えられるに任せていた。 って、どうしたんですか皆さん今回。抱きつきまくってますが何か意味があるのでしょうか。 「大丈夫かなぁ」 一人コクリ、不安顔。 ● そんな一行、ついに問題のアヤカシ広間の前にたどり着いた。 「今回は随分と人数を揃えたわね。それだけ本気ってことかしら、コクリ?」 振り返ってベアトリーチェが微笑した。薄く流す視線に本気度がうかがえる。 (よかった。大丈夫だ) 安心するコクリの頬に、ベアトリーチェの指先が伸びた。 「ちょっとコクリ。何を緩んだ笑顔しているのよ。この重要な時に」 ぐりぐりと攻めるベアトリーチェ。「ご、ごめんなひゃい」とコクリ。 ともかく。 「順序は、そう‥‥」 広間に至る狭く天井の低い通路への突入順序を指差す水月。輝夜、のばら、コクリ、シャンテ、アルネイス、ベアトリーチェが頷き、水月が自分自身を指す。そして、ベル、千佳、麗菜、蒼、シャルロットも。 「うちがのばらはんとコクリはんに」 「‥‥輝夜さんに」 蒼の加護法でのばらが淡い光に包まれる。輝夜には、水月からの加護法で。 「アルネイス殿、行ってまいります」 アルネイスが人魂を放った。茶色いカエルの姿。しゃべったようだが、これは彼女の腹話術。 「うようよいます。効果ないかもですが」 続けて、後方から撹乱狙いの焙烙玉投入。 この爆発を合図に、開拓者たちが一斉に動いたッ! 「‥‥悪いわね。我慢してちょうだい」 人魂を放つベアトリーチェ。囮役のやられ役となる黒猫に情を掛ける。 「開拓者としての能力に身長など関係ない」 続いて本隊先頭の輝夜が後続を鼓舞しながら走る。黄色い風となるまるごととら‥‥もとい、阿修虎。流れる音楽は残念ながらとらさん行進曲ではないが、騎士の魂と霊鎧の歌の組曲「不屈の魂」。シャンテが勇気を、願いを送る。 いざ、広間の戦い。 ● 恐ろしい光景だった。 茶色のカエルが広間に入ると、天井一面を覆っていた吸血蝙蝠がうねるように飛び始め、地面では薄い乳白色の人の姿。何体も何体も闇を背景に浮かび上がっていた。無念に見開かれる双眸に、声は聞こえないが何か恨みつらみを言っているように動く口。広間は、アヤカシの溜まり場そのものだった。 カエルはコウモリの攻撃で瞬殺。焙烙玉の爆発は何も巻き込まないが、その土煙を突き抜け輝夜が無事に突入し、入り口から距離をとる。 「こんな所かしら? カグヤ、任せたわよ」 突入口では、黒猫目線のベアトリーチェが呟いた。吸血蝙蝠を引き付け、輝夜の前に誘い出したのだ。ここで攻撃を受け、黒猫、消滅。 「我は阿修羅な虎、阿修虎じゃ!」 目の前の蝙蝠をなぎ払っておいて、咆哮一閃。蝙蝠のみが寄ってくる。その数、計測不能。 「わらわらと鬱陶しい。じゃが、この刀の名には相応しい状況やも知れぬの」 振るうは殲刀「朱天」。今、群がる敵を殲滅せんと、必殺の回転斬り! 「しゃっとあうとなのです!」 二番手のばらは、突入口の確保。咆哮の影響はあるも物理的に寄せることのできない蝙蝠が来るのを叩く。 「シャンテさん、行こう」 「‥‥はい。ずっと守られてきた自分が、今度は皆様に道を示す為に」 コクリとシャンテも突入。シャンテ、積極的に前々につける。 (自分に向いている場が、与えられた以上‥‥ここできちんとやれることをやらなければ、開拓者を名乗れません) 覚悟が、思いが旋律に乗る。目指すは、孤軍奮闘する輝夜の後ろ。 が。 「うむ‥‥」 輝夜の動きが鈍った。地縛霊から呪声の集中砲火を浴びている。抵抗はするが、動きを止めた隙に蝙蝠の大群から細かく細かく傷付けられている。 「輝夜さん」 シャンテ、「夜の子守唄」に切り替えた。コクリに守られているとはいえ、細かく傷付く。それでも意志を貫く。 やがて、大半の蝙蝠が地面に不時着した。 ● 後続の突入は、のばらの空間確保と大半の蝙蝠が眠りについたことで円滑に進んでいる。 「なんとなく嫌な感じがします」 眉を顰めながらも、地縛霊に斬撃符「回転尻尾斬りオタマジャクシ」を放つアルネイス。周囲の警戒に余念がない。 「紅き薔薇よ、彼の者を切り裂く刃となれ!」 アルネイスと背中合わせのベアトリーチェも薔薇の花びら状の斬撃符で攻撃する。こちらは、前回少しもまれたこともあり接近戦回避の範囲警戒をしながら。 水月も無事に続き、まずは戦況確認。 と、地縛霊に敢然と立ち向かうべく走る者がいる。 麗菜だ。 ピンクのスカーフが背後になびく。そのまま敵に突貫すると、瞬間、彼女の周囲で炎が渦巻いたッ! 火遁である。 巻き込んだ地縛霊を屠るが、数は多い。目に見えない反撃を食らう。 「麗菜さん?」 ベルが雷火手裏剣で援護。何度も使えないことは承知しているが、決断に迷いはない。 「あきまへん」 蒼は火種で炎の探知陣とも言うべき数を展開していたが、麗菜に気付いて神風恩寵。 「ありがとう。みんな」 振り返る麗菜。だが、皆のもとには帰らない。火遁に巻き込むわけにはいかないのだ。ああ、くのいち麗菜、一人行く。それでも表情には笑顔。みんなと戦っている実感に、眼鏡の奥の瞳に力がこもる。 「にゃっ! マジカル♪コートにゃ♪」 一方、千佳はのばらにホーリーコートを付与。この間にシャルロットも無事に突入した。 「はっ!」 「来ました。四方にいます」 アルネイスが周囲を改めて見回し、水月が落ち着いて状況を知らせた。 「ぐっ」 そして、安定して残りの蝙蝠と戦っていた輝夜が、左肩を庇いながら片膝をついたッ! 目を合わせたのだろう、前方に霧状の黒いもやをまとった大きな目玉が浮いていた。 「そんな‥‥」 見回すコクリ。蝙蝠と地縛霊の二重包囲を破りかけていたところ、さらに四体大きな目玉に取り囲まれていたのだ。 「妙にどこからか知覚攻撃を受けていると思ってましたが‥‥」 シャンテが珍しく口を開いた。かなり攻撃を受け消耗しているからか。水月が閃癒を唱える。 状況は、蝙蝠も眠りから覚めていた。地縛霊退治を優先した結果、ずいぶん楽になっていたが今度は蝙蝠との乱戦、そして闇目玉との戦いが始まる。 ● 「あっつい!」 輝夜が再度吠えた。きぐるみから腕と肩を出すと、とらさんの両前肢を胸の前で結んだ。ちょうど胸が隠れて真ん中にリボンができた形。のばらのような格好になって、再び蝙蝠の大群を引き付ける。 「目玉は任せてください」 麗菜、火遁はまだ打ちつくしてないとばかりに援護に走る。 「こうなったら動き回るですよ〜」 ベルも展開。蝙蝠を狙いつつ、残りの地縛霊に雷火手裏剣。一撃で落としている。 もちろん、アルネイスとベアトリーチェもがぜん忙しくなっている。 「蒼さん、お任せしました」 非物理の手数不足と見たか、ついに水月が役目を捨てた。力の歪みで朧な目玉に対抗する。 「前回の反省踏まえて一体づつ確実に行くにゃ! マジカル♪サンダーにゃ!」 千佳はマジカル全開で打ち合いに応じる。 「きゃっ!」 「やっぱりいたです!」 麗菜の悲鳴に、のばらの声。物理戦闘用の岩の手が広間の端に潜んでいたのだ。のばら、拠点防衛から切り替える。 「これはまずい」 「シャル、負けませんの!」 コクリとシャルロットも動く。戦況はすでに非物理戦闘が中心となっている。大きく展開しなかったため、ここで岩の手が起動したのは幸いだったかもしれない。のばらの地断撃の隙に麗菜は対目玉戦に復帰。寄せたコクリのフェイントからの攻撃。そして萌木色の光を纏い、シャルロットがガードで壁役になりつつ時間を稼ぐ。 最後は、のばらの両断剣。 「やりました!」 キメポーズは、腰を横に一つ振って紐ショーツの結び目を摘み上げたような感じに可愛らしく。 「‥‥たくさんジロジロ見られました」 別の場所では、アルネイスがげっそり。とにかく、対闇目玉も落ち着いたようで。 後は、蝙蝠数匹のみ――。 ● 広間の中、栢山遺跡の入り口そっくりの扉を前に、ろりぃ隊が集合していた。 「未踏破地域の謎の呪文付きの扉を開く、これぞ開拓者としての本懐じゃの」 呪文は、九文字。手掛かりから、全員が答えを見出していた。 「じゃ、全員で。せーの!」 輝夜が満足そうに頷き、アルネイスが声を掛けた。 ア・輝・麗・シャン・ベル「おいたしもぐはぐは」 蒼「にくきゅうぷにぷにしたいお」 の「おいたしもにぷにぷ」 水・シャル「‥‥」 りちぇ「はぐはぐもしたいお、かしら?」 猫「はぐはぐもしたいお、にゃ♪」 ‥‥。 ‥‥‥‥。 「開いた、けど」 コクリは言うが、一体どれが本物の呪文だったか、みんな「大丈夫」と言ってたはずだが‥‥。 「も〜」 「ち、違うわよ! わざと間違えたのよ! 正しくは『おいたしもぐはぐは』だ何ていうのは判ってるわっ!」 暗黒笑顔でアルネイスにほっぺぷにぷにされるベアトリーチェ。珍しく真っ赤っか。 「りちぇ殿、かわいいです〜♪」 この反応にアルネイス、さわやか笑顔ではぐはぐ実行。りちぇさんは「べ、別に‥‥」とか言いかけたところ、千佳が抱きつきアタック。 「のばらさん、蒼さん、信じてたのに〜」 私からは言うことないと思っていた麗菜は、がっくり。 「はっ、間違えました!」 と、髪の毛ピンと立つのばら。 「なんだか恥かしかったの、です」 口ぱくの水月はそんな言い訳。 「今度は抱きつきたいのか。いや、まぁ、別によいのじゃが‥‥」 「ふふふ、責任者でてきてつかぁ〜さい」 そっぽを向く輝夜に、さらに混乱を呼ぼうとする蒼。 盛り上がってますが、とにかく先に進みましょうよぅ。 ● 扉の先はやはり天井の低い通路。 その先には、壁面に地図と文字が彫られていた。 西へ西へ西へ行く ふるふるふるむ〜ん・ぷるぶるぷるむ〜ん 木の根をくぐってよじのぼり ふるふるふるむ〜ん・ぷるぷるぷるむ〜ん そんな調子で続く文字に、ろりぃ隊は首を傾げる。 が、コクリは突然ぺたりと地面に腰砕けとなった。 「知ってる。‥‥ボクが育った神威人の隠れ里に伝わる歌だ」 コクリは自分が孤児であること、背の低い者のみ、隠れるように住んでいた神威人の小規模な里に預けられ育ったことを打ち明けた。 「三文字単語があったのは、背の低い通路のみ。そして、九つの単語はアルネイスさんの言うとおり『しりとり』でつながっていた。‥‥これは同胞へのメッセージなのかも。『仲間はここにいますよ』っていう」 つまり、コクリの知っていることが秘密として出てきたというわけで。 でも、ろりぃ隊は満足そうですよ。 コクリが歌に本来ついている踊りを披露したからだ。 「わあっ。可愛いですっ」 喜ぶ麗菜の声。 ひたひたにゃん・ひたひたにゃんと踊るコクリに、千佳もついて踊ったり。 あるいはこうやって、ここから新天地を目指したのかもしれない。 |