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■オープニング本文 泰国南西部の南那(ナンナ)沿岸にある尖月島(センゲツトウ)。 もともと無人島で長らく放置されアヤカシまではびこっていたが、開拓者の活躍で危険は取り払われ現在、旅泰と開拓者の手で観光地としての開発作業が進んでいた。 「‥‥最近、商人の間でこういうのが出回りはじめたんですよ」 開発の指揮をしている旅泰は林青商店代表の林青(リンセイ)はそんなことを言いながら、赤ストライプのワンピース水着で身を包んでいる深夜真世(iz0135)にあるアイテムを手渡した。 丸い。 「何、コレ?」 「ああ、知ってる。『球「友だち」』だろう」 目を丸める真世だったが、隣にいた菖蒲柄の長海パン姿をした海老園次々郎が説明した。 「へえっ。どうやって使うのさ?」 次々郎の隣にいたコクリ・コクル(iz0150)が興味深そうに聞く。――ちなみに、コクリは紺色ピチピチのすくぅる水着姿だったり。胸の白い布には手書きで「リクコ」の文字。当然、コクリと読む。 「おそらく、こう」 砂浜でバックステップをして下がり距離を取ってから、足の内側で球を軽く蹴った。砂でほとんど跳ねずに、真世の前に転がる。 「こう、かな?」 真世は球の下から足の甲ですくうように、軽く蹴った。ぽーんと高く上がって、コクリの胸元に落ちて行く。 「もしかして、こう?」 コクリはこれを、のけぞりながらいったん小さな胸の谷間で跳ねさせて勢いを殺す。改めて足元に落ちてくるところ、いたずらっぽい表情をしながら真世に力を入れて蹴り返したッ! 「あっ! ひっどぉい」 真世は何とか股を開いて膝を上げ、太股の内側でこの球を受ける。足元に球が落ちたところ、何とコクリがこれを奪おうと迫っていた。 「いやん。渡したらまた強く蹴ってくるでしょう」 抵抗する真世だが、あっさり奪われる。今度は真世が奪いにいくが、コクリはこれをかわした。 が。 「きゃあっ!」 どだんとからまって倒れ込む二人。それはいいのだが、何だかコクリが涙目ですよ。 「あっ。ゴメン」 何と真世、コクリを押し倒し胸をわし掴みにしていた。事態に気付いてびっくりして、ちょっと揉んだりも。コクリ、さらに涙目。砂浜なので倒れて痛いというより胸を揉まれて戸惑っているのだ。 「ピピー。真世くん反則」 何と、林青が呼び子を取り出して吹き赤紙を掲げている。 「罰則は‥‥」 「じゃ、これを取って来ること〜」 ノリで突っ込んだくせに口篭る林青。仕方ないとばかりに次々郎がノリを引継ぎ別の球を取りだして沖に蹴った。 ああ、遠く波間でただよう「球『友だち』」。 「もう。仕方ないなぁ」 コクリちゃんゴメンね、と謝っておいて駆け出す真世。ざばざばと泳ぎ始める。 ‥‥。 ‥‥‥‥。 「ふうっ、ただいま〜。って、あれ?」 しばらくして戻ってきた真世だったが、何だか場の雰囲気が変わっていた。 どうやら漁師の網を木の枠に張って、そこで攻防していた。蹴り入れようとするコクリに阻止せんと気合を入れる次々郎。実に楽しそうだ。 「ひっどい。私もまぜてよ〜。っていうか、みんなで楽しもう。ね〜」 砂をかかとで蹴り上げ、駆け出す真世。常夏の日の光も、濡れた真世の髪でキラキラ跳ねていた。 そんなこんなで、干潮で広大な砂浜が現われる尖月島で開拓者による水着での蹴鞠集団戦を楽しむ人、求ム。 ちなみに薄謝が出るが、これは神楽の都に戻った時に「尖月島良かったよ〜」と口コミしてもらうためと「球『友だち』」の販売促進のための有効活用案を模索してもらう賃金らしい。林青、このあたり抜け目ない。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
シエラ・ダグラス(ia4429)
20歳・女・砂
ジルベール・ダリエ(ia9952)
27歳・男・志
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
小(ib0897)
15歳・男・サ
央 由樹(ib2477)
25歳・男・シ
フェイル・ランツィスカ(ib3126)
18歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ● 空に高く眩しい太陽。 寄せる波に白い砂浜。 「さあっ。思いっきり楽しむわよ〜♪」 さくさくっと足跡を残して走り思いっきりジャンプしたのは、御陰桜(ib0271)。桃色の髪に陽の光が刹那の光条を見せる。ピンクのビキニに包まれた大きな胸も開放感豊かに弾んでいる。 南の島の尖月島は、今日も今日とて夏色元気色だ。 「さかーなぁ‥‥。なんか語呂悪い気がするぜ」 小麦色の肌に白い髪が眩しい小(ib0897)も、斜に構えながら歩いてくる。手に持つは、「球『友だち』」。 「裸足で球が上手く蹴れるかいな」 続くのは、央由樹(ib2477)。赤褐色の肌に黒髪で紺色のトランクス水着をゆったりと着ている。 「どんなんだか分からねけど」 とりあえずやってみる小。球を放ると右足の甲で上に蹴り、次は太股で跳ねさせる。トランクス型の黒い水着は、由樹と違って少し細身。軽快に動き今度は左足の甲で球を蹴っていた。 「なるほどな」 「やってみる?」 小、由樹にパス。 「おっ、と。‥‥裸足の方がむしろ丁寧にやれるな」 由樹も落とさず受けて、左右の足でもてあそんだ。 「蹴鞠は楽しいからな。きっと面白いに違いないっ♪」 獣人泰拳士のフェイル・ランツィスカ(ib3126)がコクリ・コクルとやって来る。 「ほいよっ、と」 「よしきゅん、さんきゅ」 いきなり由樹をそう呼ぶフェイル。まずは勝手に愛称をつける。どうもそういう娘らしい。ちなみに水着は髪の毛と同じ緑色のすくぅる水着。本人は特にこだわりがないようで、コクリに勧められてそうなったようだ。 「へえっ。フェイルさん上手い上手い」 「体動かすの好きだからな。泰拳士やし」 とん・とんと球を下に落とさず蹴り続ける。褒めるコクリ。器用ではあるが、より俊敏さで対応して捌いているといった感じだ。艶やかな狐の毛並のごとく絶好調のようで。 「じゃ、次はララちゃんやね」 フェイルはそういって、シエラ・ダグラス(ia4429)に球を回す。‥‥またも、あだ名。どうもフェイル、そういう娘らしい。 「え。いきなり‥‥」 ララちゃんことシエラの方は想定外だったようで、右側にそれた球にとっさに反応。股を大きく開く形で右足を広げつつ受けるが、球はそこでついに地面に落ちた。 「きゃっ!」 私、はしたなかったかしら、とシエラは股を閉じながら両手で前を隠している。プラチナブロンドの長い髪も艶やかな肌も白く、水着のすくぅる水着も白い。おまけだが、胸には「しえら」の文字。なぜかひらがなで妙に気の抜けた筆致だ。 「なんや、いやな予感するなぁ」 よく分からないが、この様子を見てジルベール(ia9952)が眉を顰めている。何か不都合でもあるのだろうか? 「まあ、蹴鞠じゃないし球は落としても問題ないんだけどね」 一方、海老園次々郎はそう言ってシエラの恥じらいを見なかったことにした。 (もしもあの時‥‥) その横では、深夜真世(iz0135)が上目遣いで指をくわえてイケナイ妄想をしていたり。 ――ここで恒例、深夜真世の回想を覗いてみよう。 ● 「カワイイのあるかしら♪」 女性更衣室となった高床式別荘内で、桜が上機嫌で水着を選んでいた。「こっちのもイイけど、やっぱりこっちね♪」と選んだのは、ピンクのビキニ。 「ボクはこっちかな」 その横では、黒いビキニ姿の水鏡絵梨乃(ia0191)がいた。ん、しょとEカップの胸の横を持ち上げ、包み具合を美しくしている。何だか胸を覆う面積が少し小さいようで 「わぁお、こんなのもあるわよぉ♪」 突然声を弾ませたのは、桜だった。 なんと、ほぼ紐だけといっていいような水着を手にしている。 「ほらほら、真世ちゃんもたまにはぐっと大人びたの着たらぁ?」 いつものワンピ姿の真世に肩を摺り寄せる桜だが、ふと残りの女性三人に眼が行った。 コクリ、シエラ、フェイルが露出度のきわめて少ないすくぅる水着姿ではないか。 「いやだって、一番白かったんですから」 言い訳するシエラ。「意外と露出の少ない水着で助かりました」と内心。 「ま、いっか。その上から着てみる?」 とかなんとかいいつつ、すでに着せている桜。結果、胸の先ギリギリの部分だけを隠す黄色い水着が、白い肌に白いすくぅる水着の上から装着された。 「これは、ちょっと‥‥」 真っ赤になってくらくらするシエラだった。 ――そして、今。 (‥‥あの水着をシエラさんが着てたら) ぽろりどころの話ではなかったかもしれない。 そんな妄想で真世真っ赤になったり。 「真世、始めるよ」 はっと我に返ると、絵梨乃に腕を取られていた。ずりずりと連れて行かれる。 「にくまんー」 「うまー!」 見ると、離れた場所の円陣でフェイルが叫んで男性陣が気勢を上げていた。楽しそうだなぁと指をくわえる真世。 「ボクたちはこっち。相手チームが『にくまんうまー』で、ボクたちが‥‥」 「『せくし〜ふぁいぶ』ね」 絵梨乃の振りに、桜が後ろ髪を持ち上げてぽぉずを取った。片や男性四人が固まり、片やすべて女性となった。 ともかく、試合。 両チームが各陣営に分かれる。 「次々郎さん、後御留前任せたで。球は友達! 怖くないで!」 真顔で指示を出すジルベール。次々郎としては「お、おお」と言うしかなく。体よく押し付け‥‥いやいや、重要な任務を与えられた。 「後御留はボクが守るから、皆は安心して攻めていいぞ」 一方のせくし〜ふぁいぶは、絵梨乃が後御留前を固める。 ――ぴぴ〜。 審判を務める林青の笛が鳴った。 球の蹴り出しは、コクリ。今、ちょこんと桜の前に蹴った。 「みんな頑張りましょ♪」 顔を上げる桜。さあ、戦闘開始だ! ● 「‥‥ええ歳した女子がはしたない格好を。と、言いたいが、ルールやからなあ」 露出度の高い桜のビキニ姿が迫り、由樹がため息をついた。あまり手荒に接触プレーはできそうもない。 「隙あり♪」 運良くかわす桜だが、由樹は早駆で回り込み球を横に蹴り逃がす。由樹、さすがはシノビ。桜もシノビだが、なぜか今回は大人しい。 「よしっ。行くぜっ」 こぼれ球を抑えたのは小だった。すぐに真世が詰めて来ている。 「‥‥な、なんかやりにくい」 真世も割と胸は大きいほうか。水着女性相手に顔を赤くしながら距離をとろうとする小。が、真世は球を奪おうと身を寄せてくる。 「まったく、初心なんだから♪」 「っ! だー、う、うるせー!」 「隙ありっ」 桜の野次に反応し照れ隠しをする小。真世はこの間に球を奪取していた。何だか悪魔のコンビネーション。 「もろたー」 と、そこへフェイルのスライディング。きゃ〜と真世は顔から砂浜に突っ込む。 「スライディングって小柄な方がやりやすいんだってお母さんが言ってたんや」 「すごいすごい」 小柄の味方のコクリがフェイルの言葉に喜ぶ。 「ちょっと、まだ勝負は‥‥」 熱くなった真世が立ち上がり、同じく立ち上がったフェイルを追いかけようとして、ずっこけた。溺れる者は藁をも掴むで、フェイルの腰に抱きついてたり。 「きゃあっ」 どだん。 「ピピ〜。真世くん反則」 林青は、後ろから抱き付き倒しお尻を撫でる格好となった真世のため、沖に球を蹴った。‥‥ところで、獣人族はしっぽとお尻ではどっちを触られる方がより嫌なのだろうか。 「ゴメンね、フェイルちゃん」 かくして真世、遠泳に。 「よ〜し。敵は一人少ないで〜」 試合は、反則地点からのふりぃきっくから再開。ドカンと蹴り出すジルベール。サーフパンツのサイドに走る白い三本ラインがスタイリッシュ。なかなかのおしゃれさんである。 それはともかく、さいどちぇんじ。これまでの球に集中する局地戦から空きスペースを利用したスペクタクルなさかーに切り替わる。 「由樹さんなら追いつける! 風になるんやー!」 「無茶振りやん、これ。きっついなぁ」 由樹、ぼやきながらも走る走る。結局相手後御留の真横程度まで来てしまった。 「ほい、頼むで」 どごんと、一気に後御留前に放り込んだ。寄せていたコクリ、絵梨乃は頭上を抜かれたことになる。 しかし、ここで絵梨乃が冴える。 視線を上げて球の弾道を見上げるコクリをよそに、背拳で瞬時に確認し反転すると瞬脚を使いあっというまに落下地点に到達した。 「転反攻ッ!」 球を待っていたフェイルの手前で跳躍一番、得意の相手の勢いを利用した蹴りで相手陣営にはじき返すッ! 「あらら。らっき〜」 めんどくさくて守りに戻ってなかった桜が、おっきな胸でぽよよんととらっぷ。そのまま相手後御留に突っ走るが、由樹が早駆で戻りこれを奪う。由樹、縦横無尽に動く動く。 「あらん。‥‥ふっ」 ところが桜。競り合いの最中に由樹の耳元に熱い吐息を吹きかけたッ! 「くっ。反則はアカン。反則はアカン‥‥って、しもた。奪われた」 罰則をめんどくさがって慎重になりすぎると、そうなるようで。桜の方は、手堅く味方にパス。 「えっ、私?」 球の先には、シエラがいた。が、これは想定外。でも味方からは狙え狙えの大合唱。 「じゃあ、必殺シュート・QKK!」 意味不明だが、「急に蹴鞠が来たので」の略らしい。狙うは、詰めてきた次々郎の股の下っ! 「抜かれた!」 見事、地を這うシュートが次々郎の股間を抜ける。 が、後御留は明後日の方向だったとか。 ● 後、ようやく試合が動いた。 「ふふっ、やっぱり後御留前は正解だったな」 後御留前の絵梨乃が満面の笑みを浮かべていた。せくし〜な桜のヒップ。細身のシエラのウエストライン。髪を上げている真世の無防備な片とうなじ。そして、男の子がすくぅる水着を着ているような背徳感のあるコクリ。 「これが、ボクのチームか」 もちろん、フェイルの狐耳とくるくるふわんの尻尾が可愛い水着姿も堪能中。 と、ここで緊急事態。 「行くで! 鷲の目シュート!」 弓術士のジルベールが後御留右45度の角度から右足を振り抜いた。スキル名を叫んだのは気分らしい。そのせいか狙いはばっちり、見事ネットを揺らす。 「すまない。皆の可愛い水着姿に見惚れていて、球を見てなかった!」 がくりと片膝をつく絵梨乃。謙遜じゃないところが彼女らしい。「まあ、さっきはすごかったし」とコクリ。背拳を使って止めていたのがこんなところで効いている。 「ちょっと、これ以上はまずいわね」 桜の焦りに、頷くシエラ。 「俺の反射神経は野生の勘やでっ」 とにかくまっしぐら☆。にくまんうまーのスペクタクルさかーの一翼を担う快速ウイング、フェイルがまたも縦の突破を試みる。 「シノビや泰拳士に機動性では劣っても、瞬発力と技術なら負けません!」 ついに水着の恥かしさに慣れたシエラが動く。篭手払を応用したような動きで球を奪うと、小に対してもフェイントと横踏で交わす。 「必殺シュート・シエラサイクロン!」 そのまま、足を伸ばして力いっぱい球を蹴った! 「って、天空めがけて物凄い勢いで蹴り飛ばしただけじゃないですか」 「しかしこれは天にも通じる高さで角度がある。落ちてくるにしたがって円錐状に落下地点が広がっていくぞ」 「略して通天角打法、とか」 真世、次々郎、コクリが上を見て呟く。 ところで、いい加減疲れている人がいますよ。 「ちょ、これ意外ときついな‥‥」 ぜえはあと小が膝に手をついている。 「しゃーりん、後ろ後ろ〜」 「‥‥て、え? うぼあぁっ!?」 フェイルの声に反応して振り向いた小は、上空60度の角度から落ちてきた球を顔面に受けたり。 「もらいっ‥‥と」 こぼれ球はしっかり由樹が取った。 が。 「うぶわっ」 ぶしゃ〜と吹き出た水柱の犠牲になる。 「ぴぴ〜。桜くん反則〜」 「あらん、残念。じゃ、火照ったカラダを冷やシてくるわね♪」 ゆうゆうと海へ泳ぎにいく桜。 そしてここで、ジルベールが痛恨のミスをするッ! ● 「ボクが小さいからって、馬鹿にしてるだろう」 「そんなわけないって」 コクリと競り合うジルベールだが、どうも低年齢だからと手加減したらしい。続けて球を競り合うのだが、コクリのフェイントにかかってバランスを崩した。 「あっ、ちゃあ」 ジルベール、倒れ込んだまではいいがコクリを組み敷いていた。しかも庇ったはずの手の平はコクリの薄い胸に乗っかっている。 「ぴぴ〜。ジルベールさん奥さんに通告の刑〜」 林青の笛をひったくって、真世が反則宣告していた。 「ちょっ。それはないやろ〜」 ポロリ見るのだけは警戒しとったのにと後悔しつつ、とにかく蹴られた球を海に取りに行く。 「ここが勝負どころだわね♪」 この隙に桜は温存していた「球をきーぷシたまま早駆で体ごと後御留へ押し込み」っ! 球が足についてこなかったが、運良く敵が少なかったので見事成功。見事同点にする。 ところで、戻ってきたジルベール。 一体なぜに魚を持ってんの? 「いや、あとで皆と塩焼きにして食おうと思って」 「ちょうどいい。休憩にしましょう」 ここで、林青の言葉。ひとまず休むことに。 「んぐっ‥‥んぐっ、ぷっはぁ! はぁ〜、水がうめぇ」 いい飲みっぷりなのは小。 「由樹さん、ヤシの実ジュースもあるよ」 「へえ‥‥。さわやかなもんやね」 日陰で長い四肢を伸ばしてくつろいでいた由樹は真世の勧めるヤシの実ジュースを飲んだり。 「‥‥なんで肉まんが?」 「知り合いからの差し入れですよ」 林青の持ってきた蒸篭の中身に驚きながらも目を輝かす小。フェイルも加わり両手で持って頬張る。 「にくまんうまー」 と合唱。 「よ〜し、それじゃあ二試合目〜」 絵梨乃が集合の声を掛けた。どうやらまだ遊ぶらしい。 「今度はモフテラス崇め隊ね」 桜、小、真世、次々郎が集まり絵梨乃の支持に従う。 「粘りありチームを目指すで〜」 ジルベールの掛け声に集まったのは、シエラ、由樹、フェイル、コクリ。「なっとうー」、「だいすきー!」などまたも楽しそうな掛け声で盛り上がる。 さあ、今度は陣地を狭めてもうちょっと頑張ろう! 「あはぁん。コクリちゃん、うまいわねぇ♪」 コクリとの競り合いで背中をつつ〜となぞったりシて体勢を崩すなどという青少年健全育成上問題のある手段を使った桜が、コクリの仕返しに艶っぽい声で反撃。真っ赤になって腰砕けになるコクリ。 「‥‥さすがに、しんどい」 序盤から早駆で飛ばしていた由樹は、ちょっとお疲れ気味。 「あっちに日焼けした黒もふらさまが」 「な、何ッ!」 ジルベールと絵梨乃はまだ元気にやり合っている。 「ルーくん、こっちにパスパス」 フェイルも最後の気力を振り絞って、ジルベールから球をもらい見事一点ゲット。 「あはははは」 腰まである長い髪をなびかせ走るのは、シエラ。もう、点を取るとかではなく純粋に体を動かすことを楽しんでいるようだった。 「ああん。待って、シエラさん」 真世も次々郎も、みんな走る。ただ、楽しむために――。 そんなこんなで、尖月島に夕闇が訪れるのだった。 |