【遺跡】ろりぃ隊再び☆
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/24 17:34



■オープニング本文

「次々郎、もしかして疲れてるのかな?」
 神楽の都のある茶屋で、背の低い志士コクリ・コクル(iz0150)が隣に座る海老園次々郎の顔を下から覗き込んだ。
「‥‥ちょっとね。南の島に付き合わされたり、遺跡の探索に行ったり。‥‥それよりすまないな。相談に乗るはずなのにこっちがしんどそうな顔してしまって」
 次々郎はぐっと茶を飲み干して、笑顔を作った。
「いいんだよ。今日はボクが無理言って付き合ってもらってるんだから」
 コクリも茶を飲んだ。
「‥‥あのね」
 しばらくすると、コクリが聞いてきた。
「次々郎も栢山遺跡(かやまいせき)に行ったんでしょう。‥‥その時、壁に三文字の単語が彫り込まれた広間って、あった?」
「さあ。私の方ではそんなの見たことないし、初耳だな。三文字って、例えばどんなのだ?」
「ボクたち『小手毬隊』が発見したのは、この三つだよ」
 コクリはそう言って、地面に書いて見せた。

「くぐけ」
「あおい」
「えしお」

 の三つだ。
「どういう意味だろうな?」
「それが分からないんだよ」
 串に刺さった団子を食べながら、次々郎は頭を捻る。が、分かるわけがない。
「もしかしたら、まだあるのかもしれないし、何か手掛かりがほかにあるかなって。‥‥どう、次々郎?」
「うーん。あの遺跡から何か出てくるって話は、まだアヤカシ以外は聞いたことないなぁ。‥‥あ。妙な匂いのする紐ショーツがあったってのは、聞いたことがある」
「あ。それは多分ね‥‥」
 コクリ、真っ赤になりながら自分の紐ショーツかもしれないと打ち明ける。確かに、前回の探索で天井の低い通路の終わりから竪穴を降りた場所に、目印としてくくっておいた。
「‥‥まさか」
「おい。ちびったとかじゃないんだからね」
 誤解されていきり立つコクリ。小手毬隊のみんなと経験した冒険を話し説明するのだった。
「なるほどねぇ。正式名称は小手毬隊で、ろりぃ隊は通称で残っちゃったか」
「食いつくとこはソコじゃないでしょ!」
 閑話休題。
「そういえば私の知り合いで、例の遺跡に入っても『天井の低い横道に時々見掛けるんだが、そこは全部後回しにしてる』ってのがいるんだよね。‥‥彼らも、特に三文字の単語のことは言ってなかった。彼らはちょうど紐ショーツのあった先、さらに下層に行ってたわけだが、もしかしたら他にも三文字単語が出てくるかもしれないな。ろりぃ隊で調査してみるか?」
「‥‥小手毬隊」
「すまんすまん」
 刺さっていた三個目の団子を食べて、竹串を皿に戻しながらおどける次々郎だった。

 そんなわけで、再出撃する「ろりぃ隊」こと小手毬隊の人員募集が開拓者ギルドに掲げられるのだった。
「そうそう。下層には手の形をした岩のアヤカシや、下衆鼠の交じった人食鼠の大群がいたりするから気を付けろよ」
「下衆鼠?」
 『【遺跡】ろりぃ隊再び☆』の依頼張り出しを見上げながら付け加える次々郎に、怪訝な視線を送るコクリだった。
「『暗殺鼠』とも言うらしい。とにかく、鼠の大群に数匹紛れて強力な非物理攻撃を仕掛けてくる鼠野郎だよ」
「そりゃ、鼠野郎でしょ。何だかなぁ」
 次々郎の口癖を真似て呆れるコクリだった。
「ともかく、今回は天井の低い通路だけの探索じゃない。そういった通路があちこちに点在しているらしいから。通常の高さの部屋でもアヤカシに遭遇するかもしれない。この点も注意だな」
「そうだね」
 赤面する次々郎と、してやったりでくすくす笑うコクリ。
「まあ、今回は増額したし頭数も増えたから、分かれ道も二手に分かれて同時に探索できる。ボクたちにしか集められない情報なら、頑張ってやるだけだよ」
 そんなわけで、今回の主目的は遺跡洞窟内でほかの開拓者が放置して未確認の天井の低い通路を調べて調べて、調べまくること。狙いは、まだあると思われる、壁に刻まれた三文字単語の収集だ。幸い、先行調査する開拓者たちから地図は書き写す事ができた。あとは実行あるのみだ。
 果たして、謎の三文字単語の収集の果てに何が見えてくるのか――。


■参加者一覧
静雪 蒼(ia0219
13歳・女・巫
のばら(ia1380
13歳・女・サ
ベアトリーチェ(ia8478
12歳・女・陰
リエット・ネーヴ(ia8814
14歳・女・シ
ベル・ベル(ia9039
15歳・女・シ
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
シャンテ・ラインハルト(ib0069
16歳・女・吟
式守 麗菜(ib2212
13歳・女・シ
卜部 美羽那(ib2231
10歳・女・陰


■リプレイ本文


「ろりぃ隊改め小手毬隊、いざゆくのです♪」
「隊長ぉ、また宜しくだじぇ。いえぇーいぃ♪」
 足も高々とのばら(ia1380)が進めば、横からリエット・ネーヴ(ia8814)が笑顔で駆け寄ってVサインで挨拶してくる。
「いえ〜い♭」
 コクリ・コクル(iz0150)もVサインで返した。
「コクリはん又お会いでけましたなぁ〜」
 その横の静雪蒼(ia0219)は今日もたおやかに。
「ろりぃいってはるんはダメな大人ややよって、気楽にいきまひょ。評価は後から付いてくるわぁ」
「うん、そうだね」
 すったもんだの末に残ってしまった「ろりぃ隊」の通称を気に病むコクリだったが、蒼は前向きに慰める。
「‥‥結局この名前。いつか粛清してやるわ、あのじじい共」
 二人の背後で殺意を燃やしているのは、前回そのじじい共にモテモテだったベアトリーチェ(ia8478)。もしも正式名称まで「ろりぃ隊」だったら血の雨が降っていたかもしれない。
「では、小手鞠隊、出陣ですよ☆」
 改めて音頭を取るのは、やっぱり今日もにこにこ。明るいシノビのベル・ベル(ia9039)だ。
 そう。
 前回一緒に頑張った仲間。頼れる、心強い仲間。
 最初は面食らったが、もうコクリも慣れた。顔を上げ元気に歩を進める。
「‥‥いい、ですね」
 そんなコクリの心情を察したか、新たに参加したシャンテ・ラインハルト(ib0069)がほほ笑んだ。
「体が小さいことで、周りの方にご迷惑をおかけしたことも、あります」
 と小さく続ける。シャンテも体は大きくない。
「それが、役に立つのなら‥‥」
 静かな、決意。
 が、その横で。
「あ〜、パトロンのジジババはわしと同年代か年下なんじゃがなあ、ええんかの?」
 にぎやかな笑い声がした。
「わしは、みうなたん10さいで〜す、じゃ」
 キラっ☆と挨拶する卜部美羽那(ib2231)の勢いで、シャンテの呟きはかき消された。
「赤飯隊じゃったか、おぼこ隊じゃったかの〜あひゃひゃ☆。‥‥ん? わしはとっくに済んどるが」
 明るくボケをかます美羽那は、自称・外見10歳で実年齢はその約五倍強だとか。
「‥‥」
「あ、コクリちゃんは初めましてにゃ♪。魔法少女マジカル♪チカにゃ♪。よろしくなのにゃ〜♪」
 コクリが美羽那の年齢にどう反応していいか迷っていると、猫宮・千佳(ib0045)が元気良く手を挙げた。
「‥‥自分より年上がいなくて少しがっかりにゃ」
「そうだね。みんな似たような年だよ」
 ぷ、とコクリは噴き出して言った。難しく考えることはない、今ここに皆がいる。それがすべてだと思うことにした。
「じゃ、コクリさん、行きましょう」
 必要最低限の部位を帷子など纏う軽装備の式守麗菜(ib2212)が、コクリの腕を掴んで先に進むのだった。
「始めまして。宜しくお願いしますね」
 とにっこりほほ笑む麗菜。
 新たな仲間も加わって、小手毬隊、再び出撃☆。


 一行は前回、紐ショーツをくくった地点よりさらに地下深くに分け入った。
「みんなに聞いた通りだじぇ」
 マップがあり、リエットが事前に他の開拓者に情報収集をしていた。円滑に先に進むことができている。
 そして地図に保留の印がある広間に。
「着地、できるわよね?」
 ベアトリーチェが抱いた黒猫に聞いてから上に投げた。薔薇の首輪だけが一点の星のように紅い。
 くるくる回った人魂の小さな黒猫は、広間の上部にある狭い通路にしたっと見事着地すると音もなく前進した。
「大丈夫。敵はいないわね」
 索敵結果を告げるベアトリーチェ。全員、通路に上がる。
「マップを埋めるには、地道が一番です。また次に訪れた時にも役に立ちますから、きっちり踏破していきましょう」
 麗菜が周囲を警戒すると、蒼がマップに続きを書き入れる。
「未踏の遺跡を探索。‥‥何かウキウキするにゃね♪」
 千佳は猫のように好奇心に目を輝かせている。
 さあ、未踏破部分の探索だ。
――しばらく後。
 広間に出た。
「のばらは、思うのです」
 手分けして探索する中、のばらが独白した。
「前回元々あった紐しょーつはなぜあんな所に?」
 最初からあったのか、先に遺跡に入った誰かが挟んだのか。謎である。と、ここで身もだえするのばらだったり。
「のばらさん、何か困ってるですか」
 腰を振ったりともぞもぞする様を見かねたベルが聞いてみる。
「なんだかこう、心地良いかんじの違和感がっ」
 振り返るのばらは困ったように赤くなっている。どうやら、紐ショーツをはいてきたらしい。何かの鍵になるかも知れないと思ってはいてたようだ。が、股ぐりがざっくりしているので、こう、慣れないとああなってそういう風になるようで。のばらさん、何気に真面目で挑戦者ですね☆。
「‥‥あった」
 そうするうちに、ベアトリーチェが壁面から三文字単語を発見した。暗視で広範囲を探していたリエット、高い位置を探していたシャンテが寄ってくる。
 三文字単語は、「きはく」だった。
「やっぱりこれだけだと意味が分からないわね」
 肩をすくめるベアトリーチェ。
 と、そこへ手帳片手の美羽那がやってきた。
「入れ替えに一字ずらし、頭一字広いにつなげて逆さから。パターンはいくらでもあるんじゃがな」
 メモしながら熱心に推測する。頼もしい限りだ。
「あれ、どうしたの?」
 コクリは蒼が文字だけではなく彫ってあった場所にこだわっているので声を掛けてみた。
「なんや法則があるやもしれへんし」
 蒼、抜け目ない。
「法則‥‥」
「法則かにゃ?」
 三文字単語をメモしていたリエットと千佳も上目使いで考えようとする。
「前もこんなに低い場所にあったのですか?」
 この中では背の高い方になってしまうシャンテが、刻まれた文字の近くに手をついてじっくり読むのを止めて振り向いた。コクリは素直に頷く。
「私たちの目線じゃないですね。より背の低い人が掘ったのでしょうか」
 首を傾げる麗菜。真相は当然、不明だ。


「私‥‥方向音痴ですから、こんな所で仲間とはぐれたら二度と戻ってこれないですよ〜」
「いや、ベルちゃん。ここは二手に分かれよう。地図の記録はとってあるよね」
 分かれ道に突き当たり、ベルが印をつけようとしたのをコクリが止めた。振り返ると、蒼が頷き美羽那が手帳を掲げた。
「それぞれ広間に出たり袋小路に突き当たったらここに戻って来よう」
 どうやらここを起点に範囲捜索を決意したコクリ。隊を二つに割った。
「アオイ、危なっかしいからしっかりと見ていてあげなさいよ?」
 ベアトリーチェが、別々になった蒼に声を掛けた。
「解っておまりすぇ」
 にっこり笑う蒼は、早速スキップして行こうとするリエットの襟を掴んで止めていたり。たいまつを持ったりと忙しいことこの上ない。見かねた美羽那がたいまつ係になった。
「また後で合流するにゃー。そっちも気をつけてにゃ♪」
 ともかく、千佳が手を振るように二手に分かれて出発〜。
「のばらが先頭。頑張りどころなのです」
 ぐ、と胸の前で拳を固めるのばらを前に、のばら班が行く。後ろでは、ベルが忍眼で罠に警戒し、シャンテが長い棒で壁をつついたり天井に手を着き調べたり。さらにたいまつを持ったベアトリーチェ、背後を警戒しつつ麗奈が続いている。
 もう一方は、コクリ班。
 コクリを先頭に、やはり忍眼で罠探知するリエット、そのお目付け役の蒼、たいまつの美羽那、最後尾は魔法援護の千佳と続く。
――さて、コクリ班。
 広間らしき空間を通路の前に捉えていた。
「リエットはん。足元注意、ジャンプ注意やぇ」
「もちろんだじぇ。蒼ねー」
 まずは暗視のリエットがこっそり突入して様子を見る。もう、ジャンプはしない。やるときはやるシノビなのだ。
「あっ」
 ここで、突然岩が動き出した。――アヤカシ「岩の手」である。大きい。リエットの身長よりはるかに高い。敵は、呼び名となった体全体である腕の先、頭部と思しき位置にある大きな掌を広げると、リエットに倒れ掛かった。
 ズズゥン。
「リエットちゃん、大丈夫?」
 たまらずコクリが出て来てアヤカシに斬りかかる。リエットは、俊敏を生かしきれいに回避していた。
「コクリちゃんを助けるにゃ」
「猫宮はん、きばりやす」
 敵は一体と見るや千佳がにゃにゃんと突入し、これを蒼が神楽舞「速」で送り出す。
「魔法少女に負けはないにゃ! マジカル☆サンダー!」
「隊長を助けるじぇ!」
 むくりと起き上がる岩の手に、バリバリと電流が走る。さらに横に移動するリエットが撃針で素早く攻撃。やるときはやるシノビなのだ。仲間の援護を受け、コクリが最前線で体を張る――。
 しばらく後。
「コクリはん、大丈夫おすぇ?」
「ありがとう。‥‥でも情けないな。ボクは」
 蒼の神風恩寵を受けていたコクリは、片膝をついた姿勢のまま悔しそうに地面を叩いていた。結局、敵アヤカシは倒したものの、硬い体表に手数を要した。結果、仲間を危険にさらす時間が長くなった。幸い、攻撃にさらされたのは体を張ったコクリであったため仲間に怪我人はいなかったのだが。
「仕方あるまい。あの手の大きくて硬いのはわしらの大敵じゃ。‥‥ほれ。疲れたときには酸味が一番じゃ☆」
 そう言って、美羽那は梅干や岩清水を広げ慰めるのだった。
 ちなみにこの広間には先が無かった。美羽那が喫煙し煙で空気の流れを見るなどしたが、隠し通路などは発見できず。もっとも、「けはこ」の文字を発見することができた。


 一方、のばら班。
 やはり広間に到達し、岩の手と戦っていた。
「のばらはのばらに‥‥」
 相対するは、のばら。空間があると見るや刀「水岸」を両手に構え武芸全開。地味ながらもがっちりと敵の攻撃を防ぎつつ、味方に付け入る隙を作っていた。ベアトリーチェの斬撃符が、麗菜の黙苦無投擲が、そしてベルの雷火手裏剣が集中するッ!
「‥‥出来る事を、精一杯頑張るのです!」
 やがてのばらは、大きく気合いの言葉を込め大太刀で斬り付けた。止めとなったようで、崩れ落ちる岩の手。
「成敗☆」
 ぐ、と力こぶしを作ってきめぽ〜ずののばら。頭頂部の特徴的な二本の髪の毛がふわんと揺れていた。
 そして、広間の探索。
「やっぱり、低い位置にあります‥‥」
 屈んだシャンテが仲間を振り返る。指差す先には、「うたえ」の文字。これで合計六つ目だ。
 ほかに、先に続く天井の低い通路があった。
 いったん戻り、コクリ班と合流。再びこの広間に戻って先を目指した。
 その先にあった広間では、特にアヤカシの攻撃はなく静かなもの。
 そこでは、「かぐき」の文字を発見した。
――その後。
「ああ、もう迷子になりそうですよ〜」
 ほにゃほにゃと足取りが怪しいのは、ベル。今回は一本道の捜索ではない。ほかの開拓者が先を急いで遺しておいた、天井の低い未踏破部分をしらみつぶしに歩くことであるため、あっちにいったりこっちにいったりととにかく複雑で忙しい。方向音痴のベルがすでにへろへろと夢の中で空を飛んでいるような足取りになっているのも仕方のないことだ。
「次はあっちですぇ」
「そうじゃの。下手に方向感覚を欠いたまま進むのは自殺行為じゃ。気をしっかりな」
 地図を片手に蒼がしっかり指示し、美羽那が励ます。完全踏破の覚悟で臨む麗菜も力強く頷く。
 それでもあらかた調べたところで、またも分かれ道。コクリ班、のばら班に再び分かれる。
「今度はネズミの大群か」
 いきなり乱戦。コクリが「さっきの敵よりやりやすい」と前線で奮戦するが、突然信じられない攻撃を受けた。
「わっ!」
 雷撃である。攻撃が来た先は、間違いなく人喰鼠の群れの中からだった。
「これが次々郎の言ってた下衆鼠か」
 この間にもネズミに引っかかれる。
「たくさんの鼠さん‥‥。ここはマジカル☆チカにお任せにゃ♪マジカル☆ブリザードにゃ!」
 ごおうっ、と千佳のかざしたマジカルワンドから吹雪が吹き荒れた。
 が、ここでとんでもない事態となるッ!
「にゃああああっ」
 なんと、広範囲魔法を仕掛けるには、ここは狭すぎた。若干、開拓者たちの視界も真っ白になってしまった。
「す、すぐに何とかしますぇ」
 たいまつが消え、慌てて蒼が火種・火種。乱戦の中、扇子「明」で敵をはたいて直接攻撃するなど忙しい。
 その中で、再び下衆鼠の攻撃。
「そこじゃ」
 引き気味の美羽那も今度ばかりは痛い目に遭っているが、下衆鼠を見定め斬撃符。一瞬間が空いたことで判断がつきやすくなっていた。もっとも、強力な攻撃にさらされるコクリはたまったものではないがこれは彼女の役目。千佳の雷撃、リエットの撃針も選別攻撃で下衆鼠を屠る。どうやら下衆鼠、攻撃力は人喰鼠よりはるかにあるが見分けがつかないだけあって耐久力そのものは大差ないようだった。
――その頃、のばら班。
 やはり、別の広間で人喰鼠の大群と接触していた。もちろん、下衆鼠も交じっているようでのばらがカマイタチ状の攻撃を受けたばかりだった。しかも集中砲火。
「のばらさん。‥‥少しでも、皆様の痛みを和らげるよう」
 リエットは龍笛を奏で、仲間に騎士の折れない魂を呼び起こしていたが、曲調を変えた。今厳かに響くは、霊鎧の歌。これで仲間は心が流されることなく粘り強く戦えるだろう。
「むうっ。噂に聞く下衆鼠は抵抗力が高そうな感じ、ですから‥‥」
 なんとのばら。この鼠がわんさと寄ってきている状況で、咆哮をかましたッ!
「きゃあっ。‥‥ベ、ベルさんどう?」
 のばら、当然鼠まみれに。迎撃は一刀で屠ることができるも、さすがに周りを見る余裕はなくかなり一方的にやられる状態で。
「ばっちりですよ〜」
 刀を構えるベルは、ツインテールの赤い髪をなびかせのぱらに近寄らない鼠に殺到する。雷撃を喰らうがこの好機は逃せない。
「狙撃します」
 麗菜は近接格闘戦で人喰鼠と格闘していたが、下衆鼠が判明するや黙苦無で遠距離攻撃。ベルの狙う前の鼠を削り一撃必殺の手助けをする。
「紅き薔薇よ、彼の者を切り裂く刃となれ!」
 後ろに控えていたのに脇差を構え自己防衛するまで追い詰められていたベアトリーチェも、戦いの流れが変わりいつもの調子を取り戻す。呪殺符「深愛」から放たれるは、薔薇の花びらのカマイタチ。下衆鼠をきっちり狙う。
 やがて、人喰鼠だけに。こうなれば時間の問題だ。


 結局、コクリ班は「おもか」の文字を、のばら班は「いいう」の文字を発見した。
 未踏破部分はすべて歩いた。結局、今回新たに発見したものを含め三文字単語は九つだった。
「でも、これだけだと意味が分からないわね」
 ベアトリーチェのいう通りだった。
「いったん、引き上げるしかないか」
 悔しそうにいうコクリ。
 そこへ、リエットがひきゅっ、と抱きついた。
 見上げて言う。
「またね♪ 隊長ぉ〜」
「そうだね。ほかの人が何か情報を掴んでるかも。絶対、また皆でここに来よう」
 力強くうなづくコクリに、リエットは満足そうに笑むと胸元に顔を擦り付けるのだった。