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■開拓者活動絵巻
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■オープニング本文 前回のリプレイを見る ●これまでのあらすじ 古代人、唐鍼(からはり)からもたらされた情報は世界の滅びに関する内容だった。 ただしそれは、再生のための滅び、と。 そして「護大を滅することなど不可能だ。ある訳がない」と言いつつももたらした情報がある。 「旧世界にある、御大の墓所には三つの封印と、三柱がある――」 早速、旧世界への精霊門から開拓者達が偵察に送られた。 一方で、三つの封印とその解除法も解明する必要に迫られた。 唐鍼は封印と解除法などは知らなかったが、手掛かりは教えてくれた。 その一つ。 「裏のある場所、手掛かりのある扉の奥」 そこには抜刀術の求道者が身を隠したと言う。 「裏のある場所」を、冥越の魔の森にある滝の裏ではないかと思いついたコクリ・コクル(iz0150)は、開拓者を募って中型飛空船「チョコレート・ハウス」で偶然見掛けた滝に向かう。 裏には洞窟があり、「手掛かりのある扉」もあった。 求道者と思しき幽霊剣客との一対一を制した彼らは、最奥に練力をまとう地蔵を発見する。 その地蔵が言うのだ。 「究極の物を捧げよ」 と。 ●その後のコクリ 「ん……」 もぞ、と布団がうごめいてコクリが身を起こした。 ここは、飛空船「チョコレート・ハウス」の艦長室。 「胸……まだ傷むな」 小さく膨らむ胸元に手をやり、先日滝の裏の洞窟で気絶させられた一撃のダメージをかみ締める。 ――どさっ。 コクリ、ベッドに仰向けに倒れこんだ。 「……弱いな、ボクって……」 仲間は誰もやられなかった。 地昇転身でかわしたのにゃ、無刃と夜を使い手数で圧倒しました、烈風撃で強引に距離を取ったよ☆、ストーンウォールで止めてララド=メ・デリタで止めを刺したにゃ♪、餓縁で制して天歌流星斬を見舞ったんだぞ、須臾なんか使っちゃったわね、……ダークガーデンで反撃して葬送の旋律を奏でたの……、などと仲間の武勇伝を聞いた。 コクリはガードした武器を跳ね飛ばされ腕十字固めを狙ったところを反撃され、服の下に仕込んだ胸当ての装甲を砕かれ気絶した。 「もっと強くならなくちゃ……」 天井を見ていた瞳に手の甲を当てる。あふれ出た光るもの認めたくない。 ここで、ノック。 「コクリ、久しいの」 入ってきたのは、背の低い猫獣人の老人だった。 「マクタのおじいちゃん……くっ!」 飛び起きようとしたコクリ、胸の痛みに動きを止めた。いいからいいからと留めるマクタ。 「しばらく見ないうちに強くなったの」 マクタ、にこやかに言う。 「そんなことないよ……もっと強くならなくちゃ」 コクリ、中空を見据えて歯軋りした。 「……強さにはいろいろある。仲間を支える強さも身に着けるといいの」 それを悲しそうに見つつ、マクタは言った。 「仲間を支える強さ?」 「そう。一族の長となれば、一人が戦いに強くてもそれだけでは足りん。それより、一人が皆の心の支えとなる方がよほど強い時もある。……お前には、ワシら生き残った一族皆が期待しておる」 ぽむ、とコクリの肩を叩くと一振りの剣を渡した。 「わあっ、『少剣「狼」』。マクタのおじいちゃん、また鍛えられるようになったの?」 「生き残った一族を支えねばならんし……コクリも支えねばの。お前も大切な一族じゃ」 コクリは人間の捨て子で、マクタの一族に拾われ育てられた。 「くれるの? ありがとう。里から使ってたのは鍛冶で失敗してくず鉄になっちゃったから」 「一人で、それだけで強くなろうとしすぎるのも考えものじゃ。皆と強くなるのが一番じゃ」 「ありがとう、マクタのおじいちゃん。これでまた冒険に向き合えるよ」 すっかり元気を取り戻したコクリ。指にはめた石の指輪を見せて、滝の裏の冒険とこれから皆と解決に向かう謎について話すのだった。 |
■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
星芒(ib9755)
17歳・女・武
小苺(ic1287)
14歳・女・泰
サライ・バトゥール(ic1447)
12歳・男・シ |
■リプレイ本文 ● 滝のある広間に次々と滑空艇が下り立っていた。 もちろんすでに着陸した者もいる。 「お供え物を要求してくるお地蔵さんがいるなんて予想外だったの……」 これから再び歩を進める滝を眺めながら、水月(ia2566)がちいさくぽそり。 「とりあえずイロイロ持ってきてはみたけどどうなるかしらねぇ?」 水月の横に御陰 桜(ib0271)が立った。 「意地悪なの……お地蔵さん。欲しい物があるならちゃんと教えてくれれば良いのに……」 「『究極の物』を捧げ、封印のひとつを解除せよ! うにゃー!」 ぽそりと水月が言ったところで小苺(ic1287)がやって来た。言葉の通り勢いよく。 「はいはい、小苺ちゃんまだ行かないのよー」 桜、勢い余って通り過ぎようとする小苺の首根っこを掴んで止めた。うにゃ〜、と大人しくなる小苺。 「封印解いたら魔神が出てきたりしてね☆」 今度は反対側から声。 びくっとする水月の横から、いつも元気な星芒(ib9755)が顔を覗かせていた。 「……それなら封印は解かないほうがいいかもなの……」 「でも、手掛かりをお地蔵さまからちゃんと教えてもらわなくちゃね☆」 袖口で口元を隠すようにして言う水月の目の前に出てきて持参した包みを見せる星芒。冒険することが楽しそうで、この様子を見た水月も思わず心が弾みこくと頷く。 「究極……」 後ろからは新たにサライ(ic1447)がやって来ていた。 「見当もつきませんが、もし……」 「ストップ」 ごそごそと何かを出そうとしたサライを見て桜が止めた。 「謎掛きと言ったら冒険の醍醐味なんだぞ、見事地蔵の好きな物を当てて秘密を聞き出しちゃうんだからなっ!」 桜の近くに立った天河 ふしぎ(ia1037)が拳を固めて主張していたり。 「ということだから楽しみは後でね」 「そうですか……」 桜とふしぎの様子をよそに、「究極…水と豆腐…じゃないですよね」とかぽそりと呟いているサライだったり。 「うにゅ……」 ここでとぼとぼと猫宮・千佳(ib0045)がやって来た。 「あ、千佳さん。どうだった?」 気付いた星芒が元気に振り返る。 「水中呼吸器、ギルドは貸してくれなかったにゃ」 「なんとなくヤな予感がするから借りたかったけど……」 「仕方ないよね。いざとなったらあたしに任せて!」 千佳と桜、同じ事を考えていたらしい。これについては星芒も同じ考えだが、どーんと自分の胸を叩く。 そして最後にコクリ・コクル(iz0150)がやって来た。 「コクリ、もう大丈夫?」 ふしぎが顔色を覗く。 「コクリにゃん、気落ちすることないにゃっ」 小苺が抱き付いて頬すりすりっ。 「うに、コクリちゃんはあまり無茶しちゃダメにゃよー! でも元気になってよかったにゃ♪」 千佳が反対側からコクリに抱き付く。 「コクリさん、お体はもう大丈夫ですか? 無理をしないでくださいね」 サライがコクリの体を気にする。 「ありがとう。もう大丈夫……」 「何泣いてんの。しゃんとシてればいいのよ」 気に掛けてもらい目尻を拭ったコクリの頭を桜がぽふり。水月と星芒のうんうんと見守っている。 「う、うんっ。それより早く行こう!」 照れて駆け出すコクリ。一人で先行させるわけには行かないと皆が追う。 「……僕もよく空賊団の方で無茶してみんなに心配されたり怒られたりしてるから、やっぱりみんなが居てくれて自分が居る。一人じゃ出来る事なんてたかが知れてるんだよね」 「……ふふふ…」 うんうんと頷くふしぎ。その様子に微笑した水月が行って一人残ったことに気付き、「ちょ……僕をおいていくなんて酷いんだぞ」とか言いつつ追うのだった。 ● 滝の裏の洞窟内は、前回同様にヒカリゴケで松明などいらなかった。 「ん? こないだよりジメジメしてる?」 「相変わらず、足元が濡れてたりコケの生えた岩に水がにじんでたりシてるのが気になるのよねぇ?」 星芒が足元を気にして口にすると、桜も壁を注視しながら同調した。 「……大丈夫です、焦らなくてももっと強くなれますよ」 「だからコクリ、今日も一緒にがんばろ」 サライはコクリに、伸びる時は一気に伸びることを話してたり。ふしぎもにこり。 「それにしても……纏っていたのは精霊力でも瘴気でもなくて練力? というのが気になるの。もしかしてあのお地蔵様って生きてるんでしょうか??」 水月はこれまでも感じていた疑問を口にしていたり。 「そうそう。練力要るなら練力回復する物がお地蔵さまも嬉しいかな?」 「練力は知らないけど未練はたらたらにゃ」 反応した星芒が振り返ると、小苺がにゃにゃにゃと前回地蔵と会った時の様子を思い返してまくし立てる。 「それにしても究極の物ってなんなんだろうにゃー?? あたしはさっぱりわからなかったのにゃ…」 千佳が言う。やはり話題はそこに戻るようで。 そうこうしているうちに、下り坂が終わり手の平のあとのある扉の前に。 「着きましたね。前にもらった指輪を嵌めて開ければ大丈夫だということですが……」 サライが指輪をした手をかざしてみる。 と、姿が消えた。 「サライ!」 ふしぎが追う。手を窪みに合わせると消えた。 「…前と違ってすぐに窪みが復活するの……」 「きっともう大丈夫」 水月がいい、今度はコクリが。 「うにに、行くにゃ」 「待って」 千佳が追い、その裾を星芒がつかむがするりと抜けた。改めて追う。 小苺も行き、桜が続いて、そして水月が――。 「…ほっ…」 転移して安堵する水月。 前回のように抜刀の幽霊剣客の姿はなく、皆が元気な姿のまま揃っていた。 そして目の前に地蔵が。 『来たか。究極の物を捧げよ』 練力がオーラとなり、地蔵の周りで揺らぐ。 ――ざっ……。 「……」 言葉を受け、ぐっと握った拳を胸元に当てる水月が前に出た。 「究極の物なんて言われてもさっぱりですけど、それならわたしはあの店のお菓子を選ぶの」 少なくともわたしにとってはそうだし、お地蔵さまにだって胸を張って差し出せるお薦めの逸品、との思いが瞳に映る。 す、と供物台に差し出したのは【兎月庵の白大福】。 すると、揺らいでいた練力が地蔵から離れ人型となって脇に立つ。 じ、と大福を見ると手を伸ばしつかむと――実際の大福は供物台に載ったままではあるが――あんぐりと食べる仕草をした。 ふむふむと満足そうに頷きながら食べるが、ふぅと少し肩が落ちる。 「あ……甘いものを美味しくいただくためには……」 口内をさっぱりさせてくれるお茶が欠かせないの、とばかりに【緑茶「陽香」】も供える。 人型の練力はこれも飲む。 ほう、と気に入ったように顔を上げている。これはいい感触だ! 「……ええと……」 『究極の物を捧げよ』 期待を込めて声を掛けたが、ダメだったようで。水月、「美味しいのに」とくすん。地蔵は美味しく食べたことは間違いないのではあるが。 「あたしは【甘露水 Lv2】をお供えするよ!」 次に星芒が元気よく出てきた。 「これは天地の気が凝集したって伝えられるほのかな甘みと涼やかな香りのする水で、一気に飲み干すと練力が回復するっていうのね」 指を立てて説法する星芒。人型練力はうんうんと興味深く聞いているようだ。 で、飲んでみる。もちろん実物は供物台に載ったままだが。 ――ぐぐっ! 人型練力、力が溢れるようで力拳を作ってナイスポーズをするっ! が。 『レベルが高いのは良いが……究極の物を捧げよ』 「ええーっ!」 星芒、これならと思ったのに、と残念そう。実際、人型練力は喜んではいるのだが。 今度はふしぎ。 「食べ物じゃないのかもなんだぞっ」 何と、笠を地蔵の頭につけてみた。 『……』 「昔、笠地蔵って話を聞いた事があるから……って、少しは反応しないと失礼なんだぞっ!」 ハズレのようで。 「昔からあるものかにゃ? まるいもの……」 小苺は不服そうなふしぎの後ろでうーんうーん唸っている。 「はっ! お月さま。【鞠】を捧げるにゃ」 『……』 猫族らしい発想だが、ハズレ。 「あたしの究極の物はこれにゃ♪ コクリちゃんの錦絵は手にい入れるの苦労したのにゃっ」 次は千佳。 【豪華錦絵「コクリ・コクル」】を捧げる。 『……』 「ネックレスは皆で大冒険してその結果でもあるし、こっちも大切な物にゃ」 さらに【ネックレス「コクリ・コクル」】を追加。 『……』 「でも一番究極なのはコクリちゃん本人にゃー!?」 「ちょっと千佳さんーっ!?」 今度はコクリ本人を、どーん! 『……』 人型練力、コクリを見てふぅと首を振った。何か敗北感を覚えるコクリだったり。 「僕だったら、究極は迷わず空や仲間なんだけど、もちろん妻の……って、なっなんでも無いんだぞ」 人なの? という感じで再び出てくるふしぎだが、勢い余った失言で真っ赤になりつつ取り出したものがある。 「お地蔵さんは、子供を見守る神様だって聞いた事があるんだ、だから子供の好きそうなお菓子が究極の物なんじゃないかなって」 ふしぎ、【菱餅】と【雛あられ】、そして【甘刀「正飴」】を取り出した。意外と知的な選択に「おおっ」と仲間から期待の声がわく。 『……』 が、むしろ首を振るのは早かった。 「甘刀?」 ふしぎの失敗は無駄ではないっ。ピンときたサライが前に吸い寄せられるように出てきたぞ。 「もし、剣術の求道者が……」 ● サライ、顔を上げた。 「剣を極める事によって地蔵となったのだとすれば……それは刀剣類ではないでしょうか」 剣禅一如といいますし、とも呟く。 そして出したのは【殲刀「秋水清光」】。天儀最高峰の刀工の一人「加賀清光」の手による一振りで、水の如く澄み渡った宝珠を備え、刀身ののびる様は秋水の名に恥じない。 『おお……』 これには人型練力、大きく心を動かされた様子だ。 「自分が地蔵菩薩の境地に至った剣の道……それを象徴する刀です」 瞳、淡く揺らいで。夜春を使っている。 が。 『究極の物を捧げよ』 おしい。 「きゅ〜きょくのモノ? シかたないわねぇ」 ふぅ、と溜息混じりに桜が前に出た。さっきまで皆に隠れてごそごそやっていたが、何をしていたのだろう? とにかく、ばらばらっと出して捧げたのは以下の物だ。 【神楽之茶屋のみたらし団子】 【高級チョコレート】 【グラスラビッツ】 【水着「豊饒」】 「これは絶妙に美味で、チョコは特別感あふれる一品。水月ちゃんの捧げてた白大福も至極の味なのは保証するんだけど……」 桜の説明を覗き込みふんふん頷く人型練力。水月も寄ってきてこくこく頷いている。 「飲み物が欲しいならどーぞ☆」 星芒も側に来て、味見する様子の人型練力に甘露水を差し出す。ありがたそうに飲み食いする人型練力。これはこれで満足そう。でもやっぱりダメみたい。 桜、行商人よろしく次の商品説明に入る。 「グラスラビッツは……その手のヒトには究極? こっちは胸元が気になるコには究極?」 いわゆる赤いバニーガール衣装をぴらっと掲げてみたり、胸がおっきく見える水着をぴろ〜んと広げてみたり。 「で、この【水着「シェイプガール」】は……」 次に桜、白いホルタータイプビキニをばばん、と披露した。何が違うんだろう、とサライとふしぎが横に来る。 「さっきまで着用シてたの。脱ぎたてはその手の……ね」 「……何でこっちを見るんですか」 「べっ、別にその手の人じゃないんだぞっ」 にま、と流し目をくれる桜。サライは顔を伏せてもじり。ふしぎは真っ赤になって横を向く。 人型練力はというと。 『……』 どうやらその手の人ではなかったらしい。 「最後は……あまりお勧めしないケド、ね」 気乗りしないように【魔刀「E・桜ver.」】を出した桜。理由は、「あたしにとっては究極だけど、ぴんぽいんと過ぎるから」。何せ、宝珠の周りに桜の文様があるなど、性能だけでなく柄や鞘の装飾にも桜が自らの好み……というか趣味丸出しでこだわって改造されているから。自称、「デコ小刀」。 『ほぅ……これはこれで素晴らしい。手の入れようは究極といえば究極だが……』 おっと。かなりいい線いってるらしい。 ここで小苺がぴしゃーんと雷に撃たれたかのようにひらめいた! 「究極に手を入れまくってる物は……【くず鉄】にゃー!」 どどーん、と主張するが後が続かない。 「しかし持ってないにゃ。カンカンしてみたものの、どれも大成功になるにゃ……」 うぎぎ、と悔しがる。 「それならボクが」 おっと、コクリ持ってた。里の剣を強化して失敗したあと、お守りのように持っていたらしい。 捧げると、人型練力の様子が激変した! 『な、なんだこれはー!』 「あらゆるモノが変じ得る、誰もが入手できるようで難しい一品。これぞ究極のゴミにゃ!」 練力の様子に勢いを取り戻した小苺が胸を張って説明するッ! 『これは……これは凄い。鍛錬のある種の極北、限界。これぞ、これぞ究極ーーーっ!』 ばすーん、と練力が四散してくず鉄も消えた。 その瞬間だった! ――どーん、どーん! ざばぁ……。 洞窟の壁面、特に光を失ったヒカリゴケのあった位置の岩が砕け水が物凄い勢いで噴出していた。 コクリたちは突然の激流に、飲まれた。 『三柱のうちの一つは「ホノカサキ」』 『会うには現地の地蔵を「究極の技で砕け」』 『究極の物と究極の刀、そして最上の物各種の礼に「一度見せた技で息の根は止まらず」とも伝えておく』 奔流に飲み込まれながらそんな声も聞いた。 ● しばらく後、洞窟の外。 「……間に合ってよかった☆」 滝壷のある広場で星芒がホッとしている。 手に持っているのは、自分の胴に巻いた荒縄。 「……あの隙に手伝って巻いたの……」 水月も星芒の動きに気付き、夜で時を止め氷龍で水の動きを少し止めるなど時間稼ぎをしていた。 「上に隙間があったのは助かったんだぞ」 「そうですね。水蜘蛛で上手く浮いて皆さんを引き上げることができました」 三角跳びをしたふしぎが胸を張り、サライが頷いた。 「やっぱりみんながいると心強いね」 「そうにゃ。何があっても手は離さなかったのにゃー!」 皆に感謝するコクリ。千佳はコクリの手を握っている。 「三柱、かぁ」 星芒は新たな情報を思い返している。 「今度は『究極の技』だね」 また謎が出てしょんぼりするコクリ。 「コクリにゃん、まだ落ち込んでるにゃ?」 「ううん、大丈夫。あの地蔵さん、みんなの誠意を感じてくれてたくさん情報くれたし。期待してくれてるんだと思う」 心配する小苺に、にっこりコクリ。 これを見てとびきりの笑顔を見せる星芒。 「そうそう。お地蔵さまが見てるって思うと力湧いてくるよね☆」 「うん」 「コクリちゃんも『目指せ、お地蔵さま』♪」 素直なコクリをはぎゅりと抱き締める星芒だった。 「それじゃみんなも落ち着いたことだし、折角濡れたんだから泳いでく?」 桜は立ち上がって皆をいたずらっぽい笑顔で振り返っていた。 水着はもちろん、たくさんある。 |