【朗読】駆落地獄ノ洞窟
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/06/16 23:40



■オープニング本文

「へえ、『駆落地獄ノ洞窟』(かけおちじごくのどうくつ)ねぇ」
 貸本絵師、下駄路 某吾(iz0163)(げたろ・ぼうご)はすすっていた湯飲みを置き、改めて向き直った。
「はい。実際にそう呼ばれているわけではないのですが、貸本の題材としてはいいのではないかと……」
 目の前に座る男はそう説明する。
「そりゃ『女殺油ノ地獄』(おんなごろしあぶらのじごく)なんて浄瑠璃の話もあるし、喜ばれそうな題目ではあるかなぁ」
 ぽり、と顎の下をかく某吾。
「ぜひ、奇天烈なものを手掛けたら五本の指に入ると言われる下駄路さまに我が村にある洞窟を……」
「待て待て待て。何だその奇天烈なものってのは!」
 口の滑った依頼人に、腰を浮かせて問い質す某吾。

 それはともかく。
「……まあ、とにかく仕事だな。その洞窟の逸話を描いて、駆落ちした男女が安易に洞窟に身を隠すなんてことをしないように脅せばいいんだな?」
「概ねそのとおりで。実際には駆落ちしなくても愛する若い男女は薄暗いところがあれば好き好んで入り込んであれやらこれやらしますので」
「そこがアヤカシの洞窟とはねぇ」
 ふう、と溜息をつく某吾。
「はい。闇に隠れて生き血を吸い取るような、姑息なアヤカシのすみかになっています。明かりをつけている間はいいのですが、ひとたび消せば闇に隠れて纏いつき血をすする『うしろがみ』が寄ってきます。洞窟は人の通れないような隙間が多く、アヤカシはそこを移動しているようです」
「つまり、雇った開拓者に洞窟に入ってもらって明かりを消して待機。アヤカシを集めて一掃する、と」
「ええ。そしてアヤカシがいなくなったことで、今度は愛する若い男女の巣窟にならないよう、下駄路さまの描く資本で『洞窟は人里近くても危険』という常識を広めてほしいのです」
 ふむ、と納得する某吾に、改めて手筈を話す依頼人。
 と、ここで某吾がピンと来る。
「……雇った開拓者も愛する若い男女で暗闇でいちゃいちゃするかもだぜ?」
「まあ、アヤカしさえ退治していただければ。その後も暗闇でいちゃいちゃされてはたまりませんが」
 つまり、アヤカシを倒す前ならいちゃいちゃし放題なのだな、とか揚げ足を取るようなことは言わない某吾だった。
「もちろん、暗所恐怖症の開拓者がこの機会に苦手を克服する、なんてことをしてもいいのです。アヤカシさえ倒してもらえれば」

 というわけで、ある村近くの洞窟に行って暗闇でいちゃいちゃ……ではなく、アヤカシ退治をしてもらえる開拓者、求ム。


■参加者一覧
海神 江流(ia0800
28歳・男・志
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
プレシア・ベルティーニ(ib3541
18歳・女・陰
ティアラ(ib3826
22歳・女・砲
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
雲雀丘 瑠璃(ib9809
18歳・女・武
リズレット(ic0804
16歳・女・砲


■リプレイ本文

●駆落地獄ノ洞窟
 わお〜ん、と野犬の遠吠えが聞こえています。
 ここは依頼現場の洞窟前。

「駆け落ち、ですか…」
 はふ、と掌を頬に添えて溜息をつくのは、リズレット(ic0804)さん。
 おず、と顔を上げて前を見ます。
 天河 ふしぎ(ia1037)さんと海神 江流(ia0800)さんが楽しそうに話をしていますね。
「アヤカシ『うしろがみ』の退治か」
「うん。愛し合う恋人同士を邪魔するアヤカシなんて許せないよね」
 江流さんとふしぎさんの話すとおり、今回はそんな仕事です。
「ところで、中は暗いんだろう? 顔くらい見えないと話にならんと思うんだが逢引ってそんなもんなのか?」
「顔が見えにくいから近くに寄って……」
「寄って?」
「な、なんでもないんだぞっ!」
 ふしぎさん、真っ赤になってごまかします。
「ふ、ふしぎ様? ここですよね…」
「おっと、それじゃあな」
 リズレットさんがふしぎさんにぴとって寄って来たので、江流さんは邪魔にならないよう外します。
「あ、ふしぎたいちょー」
 ここで新たに元気いっぱい「もふもふ狐」こと、プレシア・ベルティーニ(ib3541)さんがやってきました。うしろには双子の妹、雲雀丘 瑠璃(ib9809)さんが隠れています。
「お、お姉ちゃん…」
「ほみ? うん。今回は邪魔しないから、色々頑張ってきてね☆」
 つんつんと瑠璃さんに諭されて、プレシアさんは空気を読みました。うん、えらいですね。
「べっ、べつに暗闇だからって、変な事考えてなんか、いないんだからなっ」
 でも、ふしぎさんは真っ赤になってわたわた。リズレットさんも猫耳へにょってしながらふしぎさんにくっついて真っ赤になってます。
「神父さま」
「ええ、行きましょう」
 ほかに、神父のエルディン・バウアー(ib0066)さんと助祭のティアラ(ib3826)さんがいます。
「さあ、リィムナ。いざゆくぞ」
「リンスちゃん、ヤル気満々だね」
 小さな女の子連れ、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)さんにリィムナ・ピサレット(ib5201)さんもいます。
 おや。
 何やら猫笑みしてる女の子もいますよ?
「にゅふふ……せっかくだから他の人のいちゃらぶを覗いてコクリちゃんと一緒に……」
 幸せそうな顔で妄想してるのは、猫宮・千佳(ib0045)さんです。
 さあ。各自、使命や期待や下心を抱きつつ、明かりを灯して突入ですよ。


●空賊の二人
「リゼとふしぎ様なら大丈夫です…、行きましょう…?」
 リズレットさんはふしぎさんの手を引いて積極的に進みます。
「リズ、いつもより積極的……ううん、暗いから足下気を付けて」
 なんと、明かりなしです。
「ふしぎ様…、真っ暗…ですね」
 ここでリズレットさん、ふしぎさんの腕に不安そうに抱き付きました。
 おや、その動きで枝分かれした道に入りましたよ。皆さんと分かれ二人きりになっちゃいました。
「うっ、うん…まっ、真っ暗だね」
 暗い場所で二人きりで、手を繋いで伝わってくる柔らかさや温もり、そしてリズレットさんの甘く切ない香りにも包まれて、もうどっきどき☆です。
 もう、そこからは二人ともよく覚えていません。
 いけない気持ちになるリズレットさんに、いけない気持ちを悟られまいとするふしぎさん。
 やがて、ちょっと狭い広間で行き止まりに。腰を下ろして休憩します。
 いや、リズレットさんが意を決したように顔を上げましたよ?
「あの、ふしぎ様…」
「え?」
 返事をした時には、リズレットさんが優しく身を預けてきて……押し倒されました。
「リゼは、魅力がありませんか…?」
 ふしぎさんにのしかかったまま聞いてきます。甘い、か細い声で。
「リズは、魅力的だよ…僕、いつもリズの事で、ドキドキしたり抑えられなくなりそうで…」
 どうやらふしぎさん、恋人さんのことを大切にしすぎたようです。
「ふしぎ様…、リゼは、ふしぎ様になら…」
 ゆっくりと、ふしぎさんの体に自分の体を重ねるリズレットさん。ふしぎさんは柔らかい感触に息を飲みます。
 が、ついに意を決して。
「ありがとう、リズ…」
 抱き締めてキスしようと身を起こし――。
「あ、ん……」
 悩ましいリズレットさんの声。
 でも、まだふしぎさんは何もしていません。
 何もしていないのですっ!
 振り返るとアヤカシガいましたっ!
「…許しません」
 リズレットが怒りの銃撃。組み敷いたふしぎさんは無言でぷっつんして「黄泉より這い出る者」。

「…せっかく、勇気を出して、言えたのに…っ」
「そんな顔しないで…続きは帰ってから」
 退治した後、えぐえぐ泣くリズレットさんを優しく抱き締めるふしぎさんでした。
 灯した明かりの中で。


●狐っ娘姉妹
「ゆけーゆけーりばーーーまうす♪」
 暗闇の洞窟に、そんな歌声が響いています。
 プレシアさんが、瑠璃さんと繋いだ手をぶんこぶんこ振りながら能天気に歌っています。
「お、おねえちゃん、その歌はなぁに?」
「ほみ? 歌ってたら元気出るから、瑠璃ちゃんも歌うの〜」
 ランタンを掲げびくびくと聞いてきた瑠璃さんに、にこぱ笑顔で答えます。
「ほ、本当に? おねえちゃんはすごいなあ…」
 すっかり感心した瑠璃さん、「ゆけーゆけー…」とかたどたどしく歌うのです。
 が、すぐに正気に。
「みんなとはぐれちっゃた…みたい」
「ボクがいるから怖くなんかないよ〜! ボクがばちこーん☆ ってやっつけちゃうんだからね〜」
 鼻息ふんすっ、と胸を張るプレシアさん。これで瑠璃さんもひとまず納得したようですね。仲良く狐尻尾をふりふりしつつ歩きます。
 やがて、ちょっと狭い広間に。
「にゅ、この辺がいいかな〜?」
「ほ、本当に明かりを消すの‥??」
 さっそく腰掛けるプレシアさんに、どきまぎしつつ聞く瑠璃さんです。
「む〜、言うこと聞かない子は、めっ! ってするよ〜?」
「ふぇぇっ…ううぅ…」
 腰掛けてほっぺたぷうっと膨らませるプレシアさんを見て、半泣きしつつも横に腰掛けて未練たらたらに火を消すのです。
「うん、瑠璃ちゃんは良い子良い子♪」
「うう〜、おねえちゃ〜ん」
 聞き分けの良さに撫で撫でするプレシアさん。
 瑠璃さんはしがみつくように抱きついたので、プレシアさんが蝙蝠型人魂を放ったのを知りません。
「ふに〜、暇だね〜。お腹減ったの〜」
「え? 今日はまだきゅるる〜ってお腹鳴ってないよ?」
 顔を上げて、気付くのです。
 アヤカシが天井の隙間から現れていることを。
「じゃ、お弁当を広げるね?」
「よ〜し、おにぎりがぶがぶしちゃうぞー!」
 プレシアさんが幸せそうにおにぎりを口に運んであ〜んって大口を開けたときでした。
――ぐあっ!
 アヤカシが襲ってきたのです。
――がぶっ!
 そしてなんと、プレシアさんがおにぎりにかぶりついたと同時に、直前に召喚した「黄泉より這い出る者」がアヤカシに襲い掛かって、がぶーっ!
「こ、このアヤカシめっ、怖い目に遭わせた事を償ってもらいますからね!」
 瑠璃さんもカンテラの火をつけて勇気百倍。 方天戟「無右」を構えプレシアさんの前に出ると鬼神のごとく突きまくり……。
「これで終わりよ!」
 宝蔵院の技で最後の一匹を叩き伏せるのでした。


●神父と助祭
「暗闇、ですか…」
 ティアラが洞窟に入ったとき、反射的に身を竦めた。
 危険を感じたわけではない。
(暗い…どうしても馴染めない)
 思い出すのは子供の時、捨てられ一人夜の街を凍えながら彷徨っていた拭えぬ記憶。
「こんな事で怖気づいてどうします……」
 自らを励ます言葉が小さく口から漏れる。
 と、その瞳が見開かれた。
「神父さま…」
 思わず声を出した。
 エルディンが無言で手を重ねてきたのだ。
 顔を見ると、照れくさそうにしている。
「なんだか小さい頃を思い出しますね…」
 きゅっと手を握るエルディン。
「思い、出す?」
 思い出したのは、温もり。
 暗い夜を彷徨っていたティアラを救ってくれた、エルディンの父の手。同じ温もり、同じ慈しみ……。
「こうして二人で手をつないで散歩もしました。夜道を寄り添うように歩きました」
 丁寧に呟くエルディン。
 ああ、彼の胸中も揺らいでいたのだ。
 告白されたものの、いまだオロオロする日々。
 ティアラは妹のような存在で、妹と恋愛など……という神父としての強い背徳感が胸を刺す。ティアラを思えば思うほど、いくら幼い頃から――。
「な、なんですか、急に…」
 ティアラ、冷静を保とうとするがむしろ繋いだ手をしっかりと握り締めた。
 はっとするエルディン。
「そうだ、幼馴染」
 とは口にしない。
 この時、洞窟は狭い広間で行き止まりに。
「き、きっとここですね、出るのは」
「明かりを、消すのでしたね…」
 そっと座るエルディン。隣に座り頬を染めつつ明かりを消すティアラ。
 闇が二人を包む。
 分かるのは、寄り添う肩と繋いだ手の感触のみ。
(考えてみれば血は繋がっていない)
 エルディンのドキドキ。
(もう一人じゃない……好きです神父様)
 ティアラは唇を動かすだけ。
 きゅっと握る手と手。
「あ…」
「ん」
 小さな吐息とともにびく、と二人が身を震わせたのは……。
「アヤカシ!」
 エルディンのウエストとティアラの首筋への刺激は、恋人のものだとしたらちと焦り気味。暗闇をよく見れば、不定形の「うしろがみ」が浮いている!
 瞬間、ごうとブリザーストームが吹き荒れ、たぁんと銃声が響く。
 そして火を灯す。
 錫杖を持つエルディンと、銃を構えるティアラの視線が合った。
「ティアラ、大丈夫ですか? どこも怪我はありませんか?」
「はい……その…」
 無事を確認して、改めて寄り添い座った。


●子猫一人で
「うにゃ?」
 千佳さんはいつの間にか一人ぼっちです。
「うに……見失ったにゃ!?」
 せえっかく、誰かさんのラッキースケベや誰かさんの背徳ラブなトコとかにゅふふな妄想をしていたのですが、それがいけなかったようですね。
「こうなったら乙女の勘で追いかけるのにゃ!」
 エプロンドレスをひらめかせどどどどど…と取って返し枝道に。
「…そして外したのにゃ。にゃう…」
 しょんぼりしながらも、天幕を張って中でお着替え。
「寝る時は寝間着! 明かりを消すと本当に真っ暗にゃー。これならコクリちゃんとうにゃうにゃしても大丈夫にゃね♪」
 天幕に映る影は、ぺったんこながら微妙に膨らんだ胸を伸ばして万歳したり、お尻を突き出して屈む着替えの姿。そして明かりが消えますが、枕を抱いてごろごろしているのが気配で丸分かりです。
「にゅ?!」
 おや、立ち上がりましたよ?
 そして服を脱いだりばさばさする様子が。
 結局、明かりがつきます。
「うに、アヤカシにゃ! 見えてしまえばなんともないにゃ! マジカル♪アローにゃー!」
 どったんばったんして、天幕がばさり。
 うにゃっ、と半裸になった身を両手で隠す千佳さんです。


●少女が二人で
「リィムナ〜っ!」
 こちらではいきなり激しい声。
 小部屋に入るなり、リンスさんがリィムナさんに襲い掛かったのです。
「リンスちゃん、お預け〜っ」
「またか、リィムナ。泰大学で寮生活を始め、会う時間が減っておるではないか!」
「リンスちゃんの事は大好きだよ! でも、あたしいろんな勉強がしたかったからっ」
 がるる、と龍獣人の翼を広げ牙をむき出しにしつつも素直にお預けするリンスさん。
 一方のリィムナさんは、タンクトップ一枚に女児ぱんつ「蜜蜂」のチラ見えするいつもの姿で腰をくねらせ悩ましそうにします。
「妾は欲求不満じゃ」
 つん、としてリンスさんはカンテラにシャッターをして、茣蓙と毛布を敷いています。
「この依頼終ったら暫くリンスちゃんと過ごしたいな♪」
 リィムナさん、大人しく隣に座ります。
 瞬間。
「リィムナあああ!」
「はにゃっ!?」
 あっという間に押し倒されます。
 って、ちょっと。リンスさん、リィムナさんのタンクトップに下から顔を突っ込んでるじゃないですか!
「くんくん…リィムナ、風呂に入っておらぬな。暗がりに逃げても無駄じゃの」
「あひゃひゃ! くすぐったいいい!」
 服に顔を突っ込んで、へそ辺りを嘗め回しまくっているようですね。
「はぁ…はぁ…」
 やがてリィムナさんはぐったりしてしまいました。
「リィムナ…」
「あ、ん…」
 顔を出したリンスさんは、大人しくなったリィムナさんを妖艶に見下ろしぶちゅりと濃厚なキス。
 そして。
「もう辛抱たまらぬ!」
 リィムナさんの女児ぱんつに手を掛けたのですッ!
「ダメ! いろんな人に怒られちゃうっ!」
 リィムナさん、正気に戻った。
 「夜」で時を止めて脱出すると……
「ダメなんだからねっ!」
 なんと、「黄泉より這い出る者」を召喚。
 がぶっ、と食いついたのは、リンスさんではなくドサクサに紛れ近寄っていたアヤカシでした。
「何をするのじゃー!」
 リンスさんはぶうん、と赤いワンピースの裾が舞い、女児ぱんつ「蜂蜜」がチラ見えするくらい高い蹴り。アヤカシを蹴り倒します。
 そして最後は。
「ダブルお尻あたーっく!」
 二人合わせて反転しながら跳躍し、服の裾を上げるのですッ!
――ぶす、ぶすっ。
 お尻を可愛く突き出した二人。
 女児ぱんつ「蜂蜜」に仕込まれている蜂のような針を刺し、敵の息の根を止めるのでした。


●そして伝説が
「仕方ない」
 江流さんはふしぎさんに嫌味の一つでも、などと考えていたようですが、二人のいちゃラブぶりがすでに嫌味なので放っておくことにしたようです。
 で、一人洞窟の広間に。
 真面目にアヤカシ退治するようで。
「灯りがついてると出て来ないんだっけ?」
 面倒くさいアヤカシだなー、などとぶつくさ言いつつも松明を消して太刀「阿修羅」を脇において正座待機するあたり、真面目さんですよね。
「心眼と……敵が動けば空気が動くだろ」
 乱暴に言いますが、瞳を閉じた様子は凛々しいです。どうやら精神を研ぎ澄まして……。
「……ぐぅ…」
 寝てる! 良い顔したまま寝てるよ、この人。
「痛っ!」
 まあ、なんというタイミングでしょう。
 まるで突っ込みのようにアヤカシが攻撃しましたよ。
「せっかく良い気分だったものを!」
 江流さんは怒りの雷鳴剣で応戦です。
 この時、とんでもない事態がッ!

 なんと、追撃の蹴りが広間の壁に当たり、崩れてしまったのです。
 そして、ぴき、と江流さんの表情の固まります。
「え?」
 隣の広間では、ふしぎさんがリズレットさんを抱き締めているではありませんか!
「この……リア獣!」
「ち、ちがうんだぞっ」
 そう。
 リア充の充は獣の獣ではありません。
 というか、ふしぎさんは必死に弁明してますが、リズレットさんが泣いているのが致命的です。
 どったんばったんと騒動が続きます。


●そして
「これでお熱いカップルが入りたくなるようなことはあるまい」
 存分に暴れた江流さんのおかげで、「アヤカシに加えシット団も出る洞窟」として広まり、以前にも増して警戒されるのでした♪
 めでたしめでたし。