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■オープニング本文 「というわけでね、コクリちゃん」 中型飛空船、チョコレート・ハウスのオーナーで商人の対馬涼子が、肘をテーブルに突きしながれるような姿勢で微笑した。対面に座るコクリ・コクル(iz0150)に話す口調からしてけだるい雰囲気を醸している。 「新しくできたチョコレート・ハウスの二番艦で、ちょっと試運転がてら冒険をしようと思うの」 「へええっ。どんな冒険?」 話に食いつき身を乗り出すコクリ。涼子のほうは満足そうに、にこーと微笑むと手招きした。コクリ、素直に涼子の隣に座り直す。 「この秋に理穴で新たに大アヤカシを倒したのは知ってるわよね? 今度は、残留アヤカシを退治するために理穴の王様が魔の森に大軍を仕向けたの。……できるだけ派手に戦いたいみたいね」 涼子、隣に座ったコクリの髪の毛を撫でたり胸元のリボンをちょいちょいと整えてやったりと構いまくりつつ話す。有閑マダム丸出し。もっとも、涼子は自らの幼少時にあまり外を飛び回ることができなかったこともあり、元気に駆け回ったり冒険したりするコクリが大好きなので仕方ない。 「うん。ボクはチョコレート・ハウスのみんなと希儀に行ってたから序盤戦には間に合わなかったけど」 「広範囲に、しつこく、派手に攻め込みたいみたいだから私たちも行くわよ」 きゅっ、とコクリの手を握って涼子が言い切った。 「でも、完成したばかりの二番艦をいきなり戦いに……」 「チョコレート・ハウス級の二番艦ですもの。戦闘くらいできなくちゃ完成とはいえないわ」 涼子、誇らしく笑みをたたえた。 「乗組員に経験を積ませたいし、それにね」 ここで少し間をおいた。 「今回は戦ってる振りでもいいらしいの。しかも、あまり戦闘の本命ではない場所で騒いで欲しいみたい。だから、私たちにも声が掛かったの。……目立つのが目的だから空戦だけでいいし、戦果も大して問われないわ。人手不足で困ってて話が来たんだから、そこまで厳しい条件じゃないの。引き受けてあげるべきね」 唇の前で人差し指をたて、いたずらそうにウインクしてコクリをのぞき込む涼子。 「全体的には掃討戦でも、私たちの役目は別の場所での陽動。だから、二番艦は囮として魔の森を低空飛行して、アヤカシが出たらコクリちゃんたちのショコラ隊に出てもらって迎撃。戦線拡大や戦闘の本格化を避けるため適度に倒して引き上げるってことをして欲しいの」 「適度に……倒すの?」 「敵が本気になって二番艦をしつこく追われても大変だし、全滅をねらって大暴れするとアヤカシが組織的になって場所移動する可能性もあるわ。……人里の方に逃げたら最悪。本隊は陸上戦力も運用して全滅狙いだけど、私たちはそうじゃないから陸戦はなしで空戦力のみよ」 人差し指を伸ばし、つんとコクリの額をつつく。あう、とあげた顎を素早くつついた手を回して支え、反対の指でコクリの唇にも、つん。 「だから、ショコラ隊の人や空中戦のできる人を集めてね」 うふふ、と自分の唇に人差し指をつける涼子。 コクリ、何だかよく分からず自分の唇をなでながら「うん、分かったよ」と返事をした。 というわけで、コクリたちと理穴東部の魔の森上空で空戦をしたい開拓者、求ム。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟
シーラ・シャトールノー(ib5285)
17歳・女・騎
フランヴェル・ギーベリ(ib5897)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 ● 白く、凛々しい目付きの上級迅鷹が大きく翼を広げて舞い降りてきた。 「おお、ケルブよ、その羽ばたく姿はまさに神の御使い」 名を呼び腕を出して止まらせたのは、エルディン・バウアー(ib0066)。金髪の爽やか神父。ケルプを自分の方に移動させると、両手を広げ宮廷歌劇団のように声を響かせる。 「……山岳地帯で私の錬力尽き、アヤカシに囲まれていたときに彼女は颯爽と現われました。神への祈りが届いたのでしょう。……ええ、そうです。神は彼女を私に遣わしました」 瞳を伏せてかみ締めるように語るエルディン。 「そのときの彼女の奮闘ぶりは忘れません」 大空を前に感極まったエルディンが楽団の演奏の指揮を締めたように両手に力を込めて振り返る! が、誰も聞いてない。 「これがチョコレートハウスの二番艦ですのね!」 エルディンの目の前を小さな騎士、シャルロット・S・S(ib2621)がぱたぱたーっ、と走っている。一番艦との違いを見つけようと興味津々で甲板のさまざまなところを覗き込んでいる。 「コクリ艦長、姉妹艦……二年前にお世話になった時には思いもしませんでしたね」 「あは。レティシアさんにそう言ってもらえると実感が湧くよ☆」 レティシア(ib4475)はコクリ・コクル(iz0150)に言うと、目の前を横切ったシャルロットにつられて駆け出すのだった。やはり興味津々で真新しい機材に目を輝かせている。 「コクリ、名前とかはもう決まってるの?」 今度はコクリのところに天河 ふしぎ(ia1037)がやって来た。初めての飛空船に瞳キラキラ☆。 「確か豪華旅行の船よね、コクリ?」 シーラ・シャトールノー(ib5285)は静かに寄って来る。 「うんっ。でも名前はまだなかったかな?」 コクリ、ふしぎとシーラに首を傾げた。 「じゃ、ラ・ヴィラ・ド・ショコラは如何かしら?」 「ホワイトショコラとかはどう?」 シーラとふしぎから案が出る。 「え? ラ・ヴィラ?」 「別荘かい? いいね」 コクリが聞き返したところ、フランヴェル・ギーベリ(ib5897)が颯爽とやって来た。 「そういうセンスは好きだよ?」 「あら、嬉しいわ」 フランの微笑にシーラがにっこり。 「なるほど、一番艦はチョコレート・ハウスだからね」 ふしぎもへええ、と思ったようで。 と、ここで。 「コクリちゃん、よろしくにゃーっ♪」 「わわっ、千佳さん!」 猫宮・千佳(ib0045)がコクリに抱き付きあたっく。 『連続で空…って、みゃー!?』 「それにしても二番艦が出来るくらい大きくなったのにゃね、チョコレートハウスは♪」 千佳の頭の上に乗ってた仙猫「百乃」が勢い余ってコクリの頭に。またも空での依頼にぷるぷる身を震わせている。千佳の方は頬すりすり。 「コクリちゃん久し振りですのー♪」 シャルも戻ってきて抱き付きあたっくの頬すりすり。 この時、舳先付近で振り返っていたエルディン。 肩に乗っていたケルブが、千佳とシャルを見てエルディンの頬にすりすり。 目を細めてとても嬉しそうだ。 時は少しだけ遡る。 「……ん、彩颯ちゃんお待たせ」 甲板で空を見上げ、眼を閉じて意識を集中していた水月(ia2566)が息をついていた。手前の手すりに止まって大人しく主人を見守っていた白い上級迅鷹「彩颯」が羽ばたいて水月の肩目掛けて羽ばたいた。 「へー、迅鷹もいいなぁ。……それより、なあ水月、何やってたんだ?」 大人しく見守っていたのは相棒ばかりではなく、面白いこと大好きな虎の獣人、羽喰 琥珀(ib3263)もいたようで。 「……あまよみ」 「天気が分かんだよなー。で、どうだ?」 照れり、と俯きながら白い衣装を纏った白い長髪の小さな少女は赤くなってこたえた。変わったことは興味津々、な琥珀が目をキラキラさせて尋ねる。 「お? 水月が照れてるじゃないか。琥珀は水月に何言ったんだ?」 新たに水鏡 絵梨乃(ia0191)がやって来た。肩には桜色の輝鷹「花月」が止まっている。ツン、と余所を向いているが。 「何だよー、あまよみの結果を聞いてるだけだって」 「そりゃすまないな。で、どうだった、水月?」 「……はれ」 何だかんだで和気あいあいとやりつつ、コクリたちの元へ。 その時、彩颯と花月は気付いた! コクリに千佳とシャルが頬すりすりしているのを見て、エルディンに頬すりすりしているケルブの姿をッ。 「あ……彩颯ちゃん……」 早速真似して頬すりすりする彩颯。ちっちゃな水月は、最近すっかり大きくなった彩楓に甘えられると力負け。あわわと一生懸命相棒の甘えを自らの頬で受け止めていたり。 「……どうした、花月?」 一方の花月。主人の絵梨乃をじっと見たが何もせず。相棒の様子に気付いた絵梨乃が声を掛けるとツンとそっぽを向いたり。 ● 「コクリちゃん、そろそろ作戦空域よ」 檣楼にある艦橋からオーナーの対馬涼子が声を掛けた。 「では二番艦ショコラ隊の初陣ですわね! 戦果で飾りますのよ!」 シャルがコクリと水月の手を掴んで走る。 「行くのにゃー♪」 千佳が百乃を頭の上に乗せ、艦載滑空艇で浮上。 その手前、シャルを乗せた甲龍「サンダーフェロウ」が力強く羽ばたいた。 続いてコクリの滑空艇が前に突き進む。 遅れて、すいーっと白い上級迅鷹「彩颯」が飛ぶ。追いかけるように艦載滑空艇で出た水月の白い姿。飛び立った主人の様子を確かめるようにいま、ふわっと減速して彩颯が水月の真横に付く。 そして、雄々しく滑空艇・改弐式が加速していく。 ふしぎの「星海竜騎兵」だ。 一方、甲板。 「フフッ。魔の森から敵少数が出てきたね」 フランヴェルが下を見て言う。 「行かなくて良かったのか、フランヴェル?」 「誰かがこの別荘の留守を守らないといけないだろ? ボクは一人ででもやるよ」 聞いてきた絵梨乃にこたえるフラン。 「今回、いつどれだけ敵が出てくるかわからない……かしら。チームとして連携を取った行動もやっておきたいわね」 「じゃ、ボクたちはそうしようか?」 シーラの言葉に周りを見る絵梨乃。 「いいですね、隣人を敬愛。神の教えに習いましょう」 すかさずエルディンが爽やかスマイル。 「はい。……私、後列やってみたいですっ! ちょっと上めで。呼子笛も持ってきました。撤退合図できます!」 横からレティシアが勢い良く顔を出したり。 「ははは。これはレティシア殿、積極的で」 「様子がいきなり違うんだが……大丈夫か、レティシア?」 どうやらレティシア、のめりこみモードに入ったようで。相当興味を引かれている。エルディンは様子を崩さないが絵梨乃がちょっと心配する。 「興味のあることはいいことよ。念のためあたしも若干後方、上側について警戒しておこうかしら?」 「よろしくお願いしますね、シーラさん!」 「……なんかいい感じにまとまったな。じゃ、俺もフランヴェルみたいにここを守ろーかな」 きゃいきゃいと仲の良いシーラとレティシアを見て虎しっぽふりんふりんしながら笑顔の琥珀だったり。 さて、出撃した者たち。 眼下の魔の森から出てきた蛇羽に怪鳥、そして鬼蝙蝠と戦闘体勢に入っていた。 「いきますのよ! サンダーフェロウ!」 シャル、甲龍とともに上から襲い掛からんと風になる。決意の宿る青い瞳で敵を見据えつつ。 「シャルさん!」 「シャルに続くよ! コクリ、久しぶりに空の双子の力、存分に見せてやろう!」 叫ぶコクリをふしぎの星海竜騎兵が追い抜く。戦陣「龍撃震」でシャルを支援。そして横を通り際、コクリに親指を立ててにこっ☆。 一方のシャル。 「正面突撃こそ騎士の花道! シャルロット、勇気一番、突貫しますの!」 騎士に二言はないとばかりに突っ込んでいる。 が、少々無謀。 怪鳥などの怪音波が響き、蛇羽の毒針しっぽがシャルに集中した。シャル、「うー、シャルは強い子我慢の子なのです」と我慢。どう見てもイカに見える槍「槍烏賊」をぶん回す。これが一匹の蛇羽に命中し、一発で絶命し落ちていく。 「うー」 敵の包囲を抜けたシャル、腕を押さえている。毒を食らったのだ。 「はっ……シャルロットさん。……彩颯ちゃん?」 これを見た後方待機の水月が緑の大きな瞳を見開いた。シャルを助けるべく相棒の名を呼び滑空艇で急行する。 『クァッ!』 上級迅鷹の彩颯はそれだけの言葉で主人が何をともめているのか分かった。 シャルへと向かう主人を守るように、主人と敵を結んだ一直線上の中間地点に体を入れて敵を威嚇する。 この時、ふしぎ。 「この大きいのは僕がもらったんだからなっ!」 鬼蝙蝠の前をわざと過った。怪音波を食らい険しい表情をしたが、自らを追いかけさせることで怪鳥と超音波の一斉射撃をできないよう引き離すことに成功した。 シャルとふしぎが一直線に抜けたことで、敵も左右でやや一直線気味の隊列となったぞ? ここで千佳の目がきらーんと光った。 「新しい魔法の試し撃ちにゃー! マジカル♪ サンダー・フルバーストにゃ♪」 振り上げるマジカルワンド。 瞬間、閃光と共に電撃が奔った! 「千佳さんの次は……」 コクリが捻りこんで、千佳の電撃で黒コゲになった蛇羽の後方にいる怪鳥をばっさり。 そして過ぎ去ったふしぎ。 「よし、これでもうこいつの感覚は掴めた、一気に反撃だ…そんな動きでは僕についてこれないんだからなっ!」 追い掛けさせた鬼蝙蝠を意識しつつ、強引に機首を上げて急上昇。 だがこれは無謀な上昇。すぐに失速した。 ところが、鬼蝙蝠は失速すると分かってたのか無茶に追わずふしぎを追い越していた。 そのまま鬼蝙蝠が反転したところ、目を見開く! 「これが木葉落しなんだからなっ!」 失速したはずのふしぎが体勢十分ですぐ後にいたのだ。 ふしぎ、宝珠銃「レリックバスター」を連射しすれ違う。 このちょっと前、さらに上空。 「これで……だいじょうぶ」 眼下で繰り広げられる空戦におっかなびっくりしつつ、シャルに解毒を掛けていた。 「水月ちゃん、ありがとですのっ。もう一度行くですのー!」 きっ、と振り向いたシャル。 ふうわりと浮かんで失速しつつ急降下するふしぎの滑空艇を見て、これを追った! 相棒に龍岩甲を命じ、射撃するふしぎを追い抜き……おっと、突っ込みは敵にかわされた。 「まだまだですのーっ」 シャル、サンダーフェロウに尻尾を振らせた! ――どすっ! これが綺麗に入った。 遠心力たっぷりの龍尾を食らって鬼蝙蝠は落ちていった。 ● そのころ、ラ・ヴィラ・ド・ショコラ。 「おー、みんなすげーなー。これなら俺楽できる……わけないか」 琥珀。コクリたちの戦いを見て安心して視線を外したところ、別方面から浮き上がってくる敵を発見した。こちらは怪鳥一羽と羽二匹のみだ。 「久し振りに一緒の戦いだな、菫青……いくぜー」 相棒の空龍「菫青」の首を撫でると飛び乗り大空へ。 残された甲板では別の動きも。 「あら、あちらからも。レティシアさん、水鏡さん、エルディンさん」 シーラが後背からやってくる多くの敵に気付いて仲間を呼んだ。 そのまま滑空艇改「オランジュ」で出る。 雪を想起させる白銀の姿をした駿龍「フィル」が主人のレティシアを乗せて続き、艦載滑空艇を借りたエルディンも飛び立つ。彼の相棒「ケルブ」も白い翼を広げて追った。 そしてごぉう、と激しく唸る風の音。 先程まで絵梨乃の肩にいた花月の桜色の姿が、消えた。 直後、絵梨乃の背中に光でできた翼が生える! 「花月、一緒に行こう」 とん、と甲板を蹴る絵梨乃。 光の翼が大きく風を捕らえて羽ばたき、仲間を追った。 「留守はボクに任せておくといい。行っておいで」 残されたフランは不敵に微笑し皆を送り出した。 見方を鼓舞するためだろう、側にいる相棒の鋼龍「LO」に竜旗を掲げて。 はためく竜旗には、一匹の竜の周囲に無数の猫の顔が描かれていた。 さて、戦線。 「敵は近づかれる前に撃ち落しますよ」 金髪をなびかせエルディンが爽やかに錫杖「ゴールデングローリー」を振るう。 放つは神の祝福を受けた聖なる矢、ホーリーアロー。 と、ととんと三発、接近しようとした蛇羽に入り消滅する。 その横に白い影。 ぐあっ、とケルブがスカイダイブ。エルディンの矢を警戒し横に開いた蛇羽に襲い掛かった。 おっと、敵は他にもいる。 鬼蝙蝠の怪音波がエルディンまで届いてきたぞ。 ♪猟犬達の集う夜 ♪バレンタインさばいばるないとのお招きが… 甲高い響きのある歌声がエルディンの耳に響く。敵の怪音波にされされ苦しかったのがやや楽になった。 「これは?」 「エルディンさんなら賛美歌がお好みでしょうけど……『共鳴の力場』でカバーするのでガンガンどうぞ」 振り向いたエルディンに、フィルに騎乗したレティシアがにこやかに。 「いいですね。歌いながら戦う。……おお、ケルブよ、その羽ばたく姿はまさに神の御使い」 エルディン、その気になってケルブを称えるように歌い始めた。 『あのときは、キラキラが見えたから不思議に思って近づいたの。杖が光ってたのね』 ケルブの方は戦っていた蛇羽を片付け主人の元へ。エルディンの掲げた杖に止まり胸を張っている。 そして、愛おしそうに主人の顔を見る。 『そのとき、振り向いた神父様のキューンなのよ♪ 運命の人だと思ったわ♪』 もちろんそんなことは言わないが、キューンな感じで喉を伸ばす。 「後は任せた、ということかしら?」 その隙にシーラがオランジュで弐式加速。 怪鳥に突っ込んで宝珠を噴かせエアウォール。そのまま失速して大きく外れつつ落下し怪音波から逃れ……。 「ここからが見せ場よ」 にこ、と微笑し宝珠噴射で強引に急上昇。まずは距離がある内に機体右横に固定した爆連銃をぶっ放す。食らいつつ振り向く敵の横をすり抜け追い抜いて……。 「目の前を失礼」 上空で反転! これぞ燕返しのサーカス飛行。 再度振り向いた敵に、今度はど派手に魔槍砲「連昴」をど〜ん! 二発で見事粉砕した。 「もう一匹いてもいけるのが爆連銃と連昴の特徴よね」 シーラ、いい手応えを感じつつ戦闘空域から抜け去った。 「……あら?」 そして気付いた。 「あっ。フィル、絵梨乃さんの方へお願い」 レティシアも気付いた。位置的に一番近いので支援に飛ぶ。 その絵梨乃。 「こっそり現れて後ろから、か。……ボクにそんなのは通用しないかな」 エルディンたちから離れ背を向け、一人浮かんでいた。目の前には、新たに浮き上がってきた蛇羽二匹と怪鳥一匹。エルディンたちの後背をつこうとしていたのだ。 「自分だけで現状どこまでやれるか……」 絵梨乃、単騎突っ込んだ! まずは怪鳥の怪音波が来る。目には見えないが、口を開けた様子で何となく分かる。 というか、分かってても食らうのがこの手の攻撃の怖いところ。 だが! 「ふふっ」 絵梨乃、一瞬のうちに大きく横にそれ、何もなかったかのように涼しい顔をしている。足には光の翼がはためいていた。 必中スキルをかわしたのだ! 「鍛え上げたボク達の翼は、常識の壁を越えたんだよ」 これぞ、『神風』。 が、蛇羽二匹は攻撃してなかった分、ちゃんと絵梨乃の動きについてきている。 「おっと」 ぶうん、と振り回される尻尾を交わす。すぐに横にずれたのは、二匹目が裏へ動いたから。この攻撃は受けて反撃の蹴りを入れる。 「絵梨乃さん、頑張って!」 そうこうするうち、歌いながらレティシアが来た。エルディンもシーラも続いているぞ。 「あらら、そっちはもう終ったんだ。……まあ、空中でも乱戦が普通にできるな」 絵梨乃、ちょっと残念そうだったが手応えは掴んだ。 仲間と共に残りをあっという間に退治する。 この時、琥珀。 「菫青、俺の心配はいらねーからな」 怪鳥の怪音波を受け顔をゆがめつつ琥珀が言う。 菫青は言われたとおりに高速飛行から急襲でいま、怪鳥を捕らえた。 「よし、逃がさねーぞ!」 上に回避しようとする怪鳥に殲刀「朱天」を居合でぶった切る! そのまま敵のダメージも見ずに飛び抜けた。 「うわっ。菫青、風焔刃!」 琥珀、反転したところで蛇羽が追ってきていたことに気付く。慌てて指示すると、火炎と風のうねる刃を菫青が放った。もう一匹はさらに来るが、寄って来たので自身の瞬風波の範囲。相棒との連携で敵にダメージをあたえる。 「琥珀さんっ!」 ここでコクリが援軍に。他のみんなもいる。 「よし。一気に片付けよーぜ、コクリ!」 気合いを入れる琥珀。もちろんこのあとすぐ敵は全滅した。 ● 「お帰り」 帰還した仲間をフランヴェルが出迎える。 「フランさん、この旗は?」 甲板に下りたコクリが見上げて聞いてみた。 「これかい? 一つ一つ、ボクの愛しい子猫ちゃん達に描いてもらったんだ♪」 フランの「この猫はあの娘がね」と、コクリの「あ、ボクも知ってる。いつも冒険してるんだ」。二人できゃいきゃい盛り上がる。 「うー……。空戦、見て考えて動いてで頭が痛い……」 レティシアは知恵熱のようで。 「そーいう時は甘いもんだな。ホットチョコレートを作ろうぜ?」 琥珀がぴぴん、と耳を立てて振り返る。 「あら、同感ね。じゃ、一緒につくりましょうか、琥珀」 シーラが嬉しそうに言って早速お菓子を作る準備をする。 「頭をたくさん使った時はやっぱり甘いものですよね♪」 レティシア、持参したチョコレートをざらざらと出したり。 この時。 「コクリちゃん、新手よ!」 艦橋から涼子の声。 「ボクが行こう。皆は休んでいて」 フラン、鋼龍「LO」に飛び乗る。 「行くぞLO!」 飛び出したフラン、敵は怪鳥と蛇羽二匹。 怪鳥の怪音波はLOの霊鎧で防ぎ耐える。 そうして近寄ると……。 「ボクは、姪とその親友からそんな攻撃もこんな攻撃も受けてるんだ!」 音の攻撃と、蛇羽の鞭のような攻撃を甘んじて受ける。そういう生活には慣れているとばかりにッ! 「お前達の攻撃など涼風に等しい!」 額から血を流しつつ涼やかな笑みをたたえ、殲刀「秋水清光」で回転切り! 二の太刀の柳生無明剣! 背負ったものの違いを見せるような、鬼気迫る戦いを繰り広げる。 しかし、敵はまだ出てきたぞ。 そこに萌黄色のオーラに包まれたシャルとサンダーフェローが突っ込んできた。 「シャルが助けに来ましたですのー!」 百乃を頭に乗せた千佳も来た。 『お前達が空を飛んでなければ空を飛ばないですんだのにゃー! 仙猫の力を見せてやるのにゃ!』 百乃の黒炎破が迸る。 「うに、ストレス解消ではないにゃよ? と、いうわけでそこにはマジカル♪メテオにゃー♪」 『ストレス解消は我にゃよ!』 千佳も派手にメテオどーん。百乃はしゃーっ! と突っ込んだが。 そしてふしぎとコクリも。 「行くよコクリ、ツイン雷鳴剣――雷の翼!」 「それっ!」 敵を挟みこむ美しい軌道を描いたところで、二人が雷鳴剣を放つ! 戦いはその後も断続的に続くのだった。 ●おまけ 「にゅふー、お空のデートにゃー♪ ゆっくり平和に飛んで見ると、いい景色にゃねー」 「うん、綺麗なだよねー」 戦い終わって、夕焼けの空を千佳とコクリが飛んでいた。二人だけだったはずだが……。 「うん、やっぱり平和な空がいいな」 「夕日が神々しくて良いですね」 ふしぎとエルディンも飛んでいた。 「……空を飛ぶのは気持ちいいの」 「水月も早く同化ができるようになるといいな」 水月と絵梨乃も夕焼けの空を堪能中。 「こういう空だと安心です」 「もう甘いものの補給は良さそうですね」 ふうっ、とリラックスして飛ぶレティシア。くすくす微笑むシーラ。 「あれ、フランヴェルは?」 「やっぱりお留守番するって言ってましたですのー」 きょろ、と探す琥珀に、コクリに追いつこうとするシャルが追い抜きざまに。 「フフ……」 甲板で留守番するフラン。大きな旗を手に、夕日に飛ぶ仲間の姿を堪能していた。 |