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■オープニング本文 ここは、とある商人の屋敷。 「ううん……」 ごろん、と寝返りをうつ姿。 むにり、とミニスカートから伸びた両の太ももが絡むように回って上下が入れ替わる。 「んんん……」 目蓋を閉じたまま畳に横たわっているのは、コクリ・コクル(iz0150)。寝顔は安らかではなく、辛そうに眉の根を寄せている。 この時襖が静かに開く。 「コクリちゃん、お仕事のお話が入ったんだけど……」 姿を現したのは、中型飛空船「チョコレート・ハウス」オーナーの対馬涼子だった。 声を掛けたがコクリに反応はない。 優しい眼差しをしたあと、涼子は廊下の奥に話しかけた。 「ごめんなさい。コクリちゃん、疲れてるみたいだからこの話はなかったことに」 「……はっ!」 ここでコクリ、がばっと身を起こした。 「仕事の話? ごめんなさい、ボク、ついつい寝ちゃってたみたい」 目をこすりながらも涼子に言うが、腰砕けのままぺったりとお尻をついたままで起き上がっていない。 「いいのよ。コクリちゃん、疲れてるんだから。無理する必要はないの」 「ううん。ぜんぜん無理じゃないから、ほら……」 ほら、と言いつつ立てずにいる。 「ご覧の通り、コクリちゃんは先の合戦で相当疲れてるの。……潜入しての交渉や、潜入偵察みたいなものばかりだから、気疲れなのかもしれないわ」 「いやいや。ワシらもコクリちゃんが心配じゃから、こうして仕事の話を持ってきたんじゃて」 涼子の言葉に異を唱えた親父どもがどかどかとやって来る。 「コクリちゃん、温泉に行ってくるとええ。……コクリちゃんが元気がないと、わしら『ろりぃ隊出資財団』の面々も元気が出んのじゃ」 話を詳しく聞くと、今回の仕事。 泰国南方に無人島が新たに発見されたという。 アヤカシなどの危険は局地的にあれど、表立っての大きな危険は確認されない状況だ。 そこで、開拓者ギルドにアヤカシ討伐と調査の依頼が持ち込まれたという。 「そんなわけで、大きな商店なんかが今のうちに一枚噛んでおこうと物資支援なんかしとるわけだが、わが財団もコクリちゃんを送り込むことで一枚噛んでおきたいというわけじゃ」 「でな、コクリちゃんのためにアヤカシ退治じゃなく、密林調査の仕事を取ってきたわけじゃ」 「おそらく温泉があるはずと見られとる。温泉を探し当ててゆっくり漬かってくるといい」 普段は助平親父どもだが、疲れた子を見るのは忍びないらしい。優しい言葉を掛けてやる。 「でも、他のみんなは頑張ってるんでしょう? ボクだけそんなのんびりできないよ」 気丈に言うコクリだが、やはり立てないでいる。起きようとする素振りは見せるものの、ぺったりと座ったまま。本当に体が動かないらしい。 「合戦で疲れた人はほかにもいるはずよ。コクリちゃんの仲間も疲れているかも。助け合って温泉を探して、みんなでゆっくりしてきたらどう?」 涼子はそんなコクリに手を差し伸べ立たせてやりながら言う。 「ちゃんと仕事はしてることになるし、ね?」 「そうじゃ。ろりぃ隊として行ってくれればワシらも大助かりの大切な仕事なんじゃ」 「うん。分かった。それじゃ、行ってくるね?」 皆に説得されて素直に従うコクリだが、ふらふらと頼りない。 「だ、大丈夫かいの……」 とりあえず、大急ぎで仲間を募るろりぃ隊出資財団の面々だった。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
アクエリア・ルティス(ib0331)
17歳・女・騎
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
泡雪(ib6239)
15歳・女・シ |
■リプレイ本文 ● 「それじゃ、頑張って温泉を探しましょ♪」 御陰 桜(ib0271)がしゃがんだ前に、二匹の相棒がいる。 力強く主人に向いているしばわんこの方は又鬼犬の「桃(もも)」。 やや落ち着きなく周りを見ている黒白の子しばわんこの方が忍犬の「雪夜(ゆきや)」。 『わんわんっ』 『あぅ?』 桃は「温泉を探すのですね。頑張ります」という感じで返事をするが、雪夜の方は「へんなにおいのおふろだっけ?」みたいな感じ。 「桃は温泉入ったコトあるから臭いで探せるわね。雪夜は……」 『あんっ♪』 んー、と唇に人差指を添えて考える桜。その隙に雪夜が余所に行く。 「おっ、と……桜のとこの雪夜じゃないか。元気だったか?」 『あんっ♪』 おねーさんだー、な感じで尻尾ふりふりしつつ移動した先には、水鏡 絵梨乃(ia0191)がいた。屈んで抱いて撫で撫で。 「うふふ。絵梨乃様、わんこさんに大人気ですね」 この様子に笑みを浮かべる泡雪(ib6239)。自分の相棒、忍犬「もみじ」を抱っこしている。 「もみじ、鼻を頼りにさせてもらいますよ。温泉ですから独特の匂いがあるはず……って、あっ、もう」 もみじ、泡雪のほっぺを舐めるとぴょんと降りて先へと走り出した。 『わんっ』 これを見て桃も出発。 「桃、見つけたら遠吠で呼んでね。……それにしても、猫ちゃんたちは元気ないみたいね」 桜が、ふうと腰に手をやり別の方を見る。 『温泉……妾はまた濡れに来たのかにゃ……』 そこには、猫宮・千佳(ib0045)の被る猫耳頭巾の上にぽふっと乗った彼女の相棒、猫又「百乃」がいた。哀愁ある目で虚空を見つめ、まったく元気がない。 元気がないといえば、主人の千佳も。 「うにゅ。コクリちゃん元気ないにゃ? 大丈夫にゃ?」 もじり、と両手を胸の前で合わせて心配そうにコクリ・コクル(iz0150)の顔を覗き込んでいる。 「あ、うん。大丈夫。元気だよ」 聞かれて伏目がちだった顔を上げるコクリ。千佳の元気のない要因はコクリのようで。 ここで人影。うに、と百乃が顔を向ける。 「そうそう、温泉だよ。百乃ちゃんも千佳ちゃんもコクリちゃんも、いっぱいあったまろうね♪」 リィムナ・ピサレット(ib5201)が明るく近寄っていた。 その隣に人影が。 「あ。こっちはからくりのヴェロ−チェだよ♪」 「よろしくですにゃ♪」 リィムナに紹介されぺことお辞儀するメイド服姿のからくり「ヴェロ−チェ」。 ここで。 「コクリちゃん達と一緒に温泉探しですのーーーー♪」 「わっ、シャルさん!」 はぎゅーっ、とシャルロット・S・S(ib2621)がコクリに抱き付き頬すりすり。 「何か浮いてるにゃ」 『おほん。我輩はプリンスキン。騎士である。同志シャルの為に一肌脱ぐである』 千佳がシャルの横に浮いている南瓜に気付くと、早速それ――提灯南瓜「プリンスキンさん」は滔々と話し始めた。 『とはいえ、脱ぐものなどないのであるがな? 中の人などいないのである』 「しっつもん!」 プリンスキンさんの口上を横から響いた言葉がとめる。 「おやつはバナナに入りますか?」 相棒の霊騎「エルウィンに乗ったアクエリア・ルティス(ib0331)が堂々言い放つ。突然のことで誰も突っ込まない。 「っていうか別に温泉だからついてきたわけじゃないんだからねっ!」 豊かな胸をツンと反らして堂々言い放ちごまかす。 「うん。アクアさん、久し振りだよねっ」 「お、覚えててくれて嬉しいわけじゃ……。エルウィン、頑張って温泉探索よ!」 コクリに言われ意気に感じたアクアが霊騎を走らせる。 「そうだな。早く探索に出よう。……花月?」 絵梨乃、空に目をやった。 これに気付いて一羽の上級迅鷹が滑空してくる。桃色の姿は絵梨乃の相棒「花月」。 降りてきてすぐ、姿が消えた。代わりに絵梨乃の背中に光の翼が生える。 「ボクは空から探すよ」 いま、顎を上げ空を見た絵梨乃が『大空の翼』で舞い上がる。 「行くわよ、雪夜」 『あん!』 桜と雪夜も先を急ぐ。 「かけっこなら負けませんですのー」 「うに。早く探して疲れをとるにゃ♪ コクリちゃんも無理しちゃダメにゃよー? 百乃は匂いで探すにゃ」 「うんっ。頑張ろうシャルさん、千佳さん」 『犬じゃないからわからないにゃよ!?』 シャル、千佳、コクリも駆け出す。 「もみじは行きましたし、私は水の流れを……」 「……だねっ。あたしも超越感覚で水の音を探るよ」 泡雪が言い、リィムナも頷く。ヴェローチェを伴い出発した。 ● 森の上。 ざざざ、と緑の木々の上すれすれを絵梨乃が「大空の翼」で飛んでいた。 「飛空船から湯気は見えなくても、このくらい低空飛行なら……あっ」 時に小枝に当たり木の葉を飛ばしつつ探していたが、ついに湯気のある場所を発見した。 降り立つと、木々が覆い被さる中に結構な広場があり、小さな岩場が点々としていた。そこに小さな温泉がいくつも湧いている。 『わんっ!』 『はっはっ……』 「わっ。桃ともみじじゃないか。賢いな。ちゃんと探し当てたんだな」 湯を眺めていた絵梨乃の足元に又鬼犬の桃と忍犬のもみじが擦り寄ってきていた。 そして遠吠えを上げる桃。やがて桜と雪夜がやってきたが、新たな事実を知ることとなる。 「おつかれなコがいて大変なことになってるのよ。まず戻ってお昼にしようってコトになったわ」 桜が絵梨乃に言う。 「まあ、もみじや桃が場所を覚えたから戻っても大丈夫だな。急ごう」 本隊に引き返すこにとした。 時は遡り、本隊。 周りをきょろきょろ見ながら歩いている中、コクリが突然どさっと倒れた。 「ちょっとコクリ、どうしたの?」 アクエリアスが馬から下りて倒れこんだコクリの元に駆け寄っている。 「うにに!? コクリちゃん大丈夫にゃ!?」 千佳も気付いて戻ってきた。ごろんと仰向けにしてやり顔を覗き込む。 「真っ青にゃ、どうしちゃったにゃー!」 慌てて胸元を緩めてやったり額に手を当ててみたり。特に異常はなさそうだ。 「こうなったら、あたしが抱えていくにゃ♪」 『そこで何故その抱き方なのかにゃ』 千佳、コクリをお姫様抱っこ。百乃が突っ込むが千佳はそれどころではない。 「待ってください。まずは安静に。ここで寝かせてあげましょう。折角ですからお昼にしましょう」 泡雪が冷静に判断する。 この時、どどどど……と何かが物凄い勢いでやって来た。 「コクリちゃーん! 大丈夫ですのーー?」 シャルだ。 「シャルがおぶっていって差し上げますの! シャルも実は危なかったりするかもしれないですけど、シャルは騎士で女の子! 負けませんのーーー!」 千佳が横たえたコクリをぬぎぎーと抱えてダッシュする。なんという勢いか。 「あっ! シャルちゃん待って! ここでお昼にして休んでいくことになったから」 「え? お昼ですの?」 リィムナの言葉に反応してきききと止まるシャル。再び横たえたコクリを優しく撫でてやるリィムナ。 「相当疲れてたんだね…」 「そうだ。絵梨乃様にも教えて差し上げないと」 気付いてぽん、と手を合わせる泡雪。 「もう、体力ないわねっ! 大丈夫、いざとなったら私が……え? 絵梨乃を呼び戻す? ほぅら、早速私の出番じゃない!」 キリ、と言い放ちエルウィンをはいどうするアクエリアス。 が、いきなり張り出た枝にべきりとおでこをぶつけてしまった。落馬する。 「は! アクアちゃんも大丈夫ですの!? しっかりするですのーーー」 たたたー、と駆け出すシャル。ぐったり横たわるアクエリアスの様子を覗きこんだ。 「うー、さいてー。……そーいえば合戦からこっち、大好きな水浴びもしてないし温泉も入ってないのよね〜」 先程までの勇姿はどこへやら。ぐでーと伸びている。ゆっさゆっさするシャル。おっきな胸がゆっさゆっさなるだけだ。 「アクアちゃんー。……よーし、こうなったら。いつもアーマーケースを背に頑張ってきたのですからこれくらいはへいちゃらですの!」 ぬぎぎーと背負うシャル。萌黄色のオーラの耀きを纏いながら気力も使い一人頑張る。 「はいはい。桃も行ってるからアタシが呼んでくるコトにするわ」 その横を軽やかに桜が行く。とことことエルウィンも戻ってきた。 「あ、桜ちゃん頑張ってですのー。アクアちゃんはエルウィンちゃんに、預けるですの」 「あーうー…エルウィンもっと優しく…ゆっくりぃーー…。酔いそう…しぬー」 アクエリアス、一応まだ死んでないようで。 「うわぁ、すっごい力作じゃない。これならわんこ達も食べられるし。帰ったらお礼言わないとね」 『わん』 『あん♪』 桜と犬達の声がする。 「ん、おいしい。ボクの好きな具ばかりだな」 「え? 絵梨乃様の……き、きき気のせいですよ!?」 絵梨乃と泡雪のいちゃら……楽しそうな声も聞こえる。 一体何をしているのだろう。 「ん……」 コクリが気づいた時、そんな皆の背中が見えた。ずり、と濡らしたタオルが額からずり落ちた。 「コクリちゃんが目覚めたですの!」 「コクリちゃん、大丈夫にゃ? びっくりしたにゃよ?」 シャルと千佳が気付いて寄って来た。 「その、ごめん。……なんか、先の合戦から元気なくて。あの潜入した町って住民みんなが疑心暗鬼でさ。誰も信用してないようで、笑顔なんかひとつもなくって……それ見てから、なんか気分が悪かったんだ」 えぐ、と涙を浮かべるコクリ。 「いいんですよ。いまは、こうして皆さんがいらっしゃいます。温泉も皆さんが探し当ててくださいました。コクリ様がここまで頑張ったのですから、皆さんも頑張ったんですよ……どうぞ。お弁当の時間ですよ」 にこ、と泡雪が不安を拭うような笑みをたたえている。自分の作ってきたサンドイッチを差し出しながら。 そう。お昼でお弁当を広げていたのだ。 「コクリちゃん。こっちはあたしが恋人と作った沢山の泰ニャンにぎりだよ」 リィムナが横から、猫の顔の型抜きをしたおにぎりを差し出してきた。おにぎりはゆる〜い顔がデザインされている。 「アタシからは、留守番のからくりめいど作のおにぎりよ」 桜も、油揚げを使った桃の顔に似せたおむすびと海苔を使った雪夜の顔に似せたおにぎりの入ったおべんと箱を差し出してきた。 コクリ、改めて周りを見る。 みんな、サンドイッチや泰ニャンにぎり、そして桃おにぎりに雪夜おにぎりを楽しそうに食べている。 「みんな、ありがとっ」 涙を拭いてサンドイッチにかぶりつくコクリ。それを見て皆が安心して笑顔。 「はい。おやつはチョコとワッフル。皆で食べよう!」 ヴェロ−チェの出した包みを広げるリィムナ。 「おやつはチョコとワッフルに入るんだな!」 「アクアちゃんも元気になったですのー」 「べ、別におやつにつられたわけじゃないんだからねっ!」 アクアとシャルも楽しそうだ。 ● そして出発し、温泉に到着。 目の前に岩場が点々として小さな湯がそこここに湧いている。 「温泉ラッキー♪ いっちばんのり〜」 ひらっ、と宙にアクエリアスの下着……ではなく胸当てやら腰下の守りやらが舞う。すでに彼女は素っ裸で長い黒髪を左右に揺らす背中をみせ、温泉にどぷ〜ん。もふんと白い湯気が立つ。 「あれ? アクアちゃんて疲れてしぬーとか言ってたような?」 「言ってたにゃ♪」 これを見てリィムナとヴェローチェが突っ込む。ちなみにリィムナはよいしょと屈んで下着をずりおろしていたり。一瞬スク水を着ているように見えるがこれはただくっきりと残った水着の日焼け跡。素っ裸だが、うまいことに彼女のからくり、ヴェローチェもリィムナに向かって前屈みになって服を脱いでいたので大切なところは隠れている。 「え〜? 疲れてるって、何〜?」 アクエリアス、両手を湯船の岩に掛けてふぃ〜とリラックスして知らん振り。 「さっそく入るにゃー♪ うに、コクリちゃんはあたしが脱がさせてあげるのにゃ♪」 千佳はるんるんとコクリの服を脱がしに掛かっている。コクリの方は再び歩き疲れが出たようでぽややんと無防備に立っているだけだ。「は〜い、万歳するにゃ〜」、「次はぱんつ下ろすにゃよ〜」とか楽しそうな千佳の言うがまま。 と、ここでちょっと正気に戻った。 「あっ! ボク、水着持ってきてないよ?」 「……確かにタオルすらないですね。使えそうなのはこれくらいでしょうか?」 泡雪、コクリの荷物からメイドカチューシャを見つけてかぽっとつけてやる。 「それが使えそうなものか、泡雪?」 「あら、絵梨乃様。髪の毛を洗う時に額に動かすと……」 「しゃんぷーはっとだねっ。あたしの恋人もよく使ってるよ」 絵梨乃と泡雪とリィムナがきゃいきゃい♪ 「コクリちゃん、温泉ー! ですのーーー!」 その隙にシャルが裸のコクリをおんぶして温泉に突撃。 「わーっ。シャルさん隠して〜っ」 シャルも裸だが、コクリが背後から必死に手を伸ばして大切なところを隠しているが。 ――どぷ〜ん。 「んもう。自然の中だしたおると桶は持ってた方がイイわよ?」 この様子を見て、既に裸になっている桜が立ち上がった。 足元からくびれるシルエットを見上げる。 まったくの裸に桃色の長髪が神秘的に絡みついている。うふん、とよじった右肩。伸ばした手は桶を持って腰の前に。やや上げた左肩。肘は曲がって腕は横一文字。艶かしくくねりふりんとつきあがった豊かな胸を隠している。 ざばりと立ち上がり、豊かな湯気の中自分の腰とか胸とかを確認するシャル。 ちゃんと腰はくびれているし可愛らしく胸も膨らんではいるのだが、立ち居ぶるまいからして子供と女性といった感じで。 「シャルも軽装の騎士になれるよう特訓ねっ!」 「アクアちゃん何するですのくすぐったいですのーっ!」 これを見たアクエリアスが一肌脱ぐ。 そんな騒ぎを遠くで見ている猫又一匹。 『温泉には興味ないし』 百乃である。濡れるのがイヤなので、ヒゲをへにょっとさせて距離を置こうとしていた。 が! 『適当な所で丸く……にゃ?』 「コクリちゃん、待ってにゃ〜っ」 丸裸の千佳が逃げようとする百乃をがしっと掴んでコクリの入った温泉に突撃するっ。 『うにゃー!?』 悲鳴を上げる百乃の横に、ふよふよと提灯南瓜のプリンスキンさんが浮かんできた。 『そうそう。我輩も同志シャルの為に一肌脱ぐであった。繰り返すことになり恐縮ではあるが中の人などいないのである』 『妾だけはいやにゃ。道連れにゃ〜っ』 ――がしっ。どぷ〜ん。 『…は! なんであるかこの熱い湯は! あ、あ、ダメである! 湯で上がるー!』 百乃、濡れて耳へにょ。プリンスキンさんはあっぷあっぷ。千佳はふぃ〜、と極楽猫な表情。 「はっ。コクリちゃんの疲れがとれるようにマッサージするにゃよ♪ 体の疲れをほぐしてあげるにゃー♪」 というわけで、千佳はコクリをだきゅだきゅもみもみ。コクリの方はぐったりしつつも夢心地。 「あたしも癒してあげるよっ♪」 リィムナもジャンプしてどぷ〜ん。 「こ、こらっ。狭い湯船にこんなに入ったら……」 「アクアちゃんだけがこんなにおっきいから狭いんじゃない?」 「こらぁ、揉んじゃだめ〜」 「そんなこと言って、アクアちゃんだってたくさんシャルを揉んだですのー」 「ちょっとこら、シャルー!」 「うに。アクアお姉さんこっち向いたにゃ。うににっ。押し潰されるにゃ〜!」 どったんばったんじゃぶじゃぶむにむにもにもに……。 「……あん……」 そんな中コクリだけぐったりで反応も少ないのだが。 「え?」 コクリ、近くに立つ足に気付き顔を上げる。 「仲良しそうね。あたしもご一緒しちゃおうかシら」 桜だった。 「桜、助けて……っ!」 「もふもふしてあげればいいじゃない?」 伸ばしたアクアの手を握って温泉に入る桜。すでに何もせずとももふもふ状態で。 「挟まれたですのー」 「こういう時は素直に抱きつくといいにゃ♪」 「そうだ。コクリちゃん、しんたいけんさの時と比べてどーかなぁ?」 リィムナがコクリを背後から、ふにっ。 この瞬間! 「悪戯っ子はお仕置きですにゃ!」 ヴェローチェがリィムナを引っこ抜いて膝に乗せ、お尻ぺんぺんぺんぺん……。 「仕方ない、ボクが代わりに」 リィムナ、アウト。絵梨乃、イン。 そしてようやく騒ぎは収まって。 「みんな仲が良くていいな」 絵梨乃、風呂椅子に座りにこにこしている。素肌が泡だらけだったが、ざばりと背中から湯が掛かった。 「絵梨乃様、熱くなかったですか?」 背後から狐耳をぴくと動かしながら、泡雪が首をかしげるように覗き込んできた。 「いい湯加減だったよ。今度はボクが泡雪の背中を流そう」 紳士的に言う絵梨乃。二人一緒に仲良く向きを変えて、今度は絵梨乃が泡雪の綺麗な背中を泡だらけにしてあげる。 「どう、くすぐったい?」 「いえ、大丈夫です」 腕を前に回して丁寧に満遍なく洗いつつ、泡雪の表情を覗き込む絵梨乃。頬を染めつつ何かに耐えるように、平静を保つ泡雪。 瞬間、に、と悪戯っぽい笑みを浮かべる絵梨乃。 「そうか。泡雪にはいつも感謝してるからしっかりお礼をしないと」 「ひぃっ! 絵梨乃様……」 びくっ、と肩を竦め腰を浮かせてしまった泡雪。どうやら本格的にくすぐられたらしい。 「あはは。慌てた泡雪も可愛いな」 「あ、絵梨乃様……」 今度は悪戯のお詫びに抱きつくように洗われた。むにっと以下略で、泡雪の方はもう絵梨乃を呼ぶ声しか出ないようで。 「ぐ、ぐったりしたわね……」 狭い中で暴れ回ったアクアがぐでーっとなっている。 「コクリちゃんもぐでーってなってる。そうだ。あそこの温かい岩盤にっ」 「分かったにゃ♪」 リィムナはヴェローチェにコクリを背負ってもらって岩盤まで移動。うつ伏せに寝かせる。 「そしてオリーブオイルマッサージ。よく恋人と練習してるんだ♪」 ん〜、とコクリの背中に頬を付けて、優しく抱き付き体全体を使って揉みほぐしたり。続いて練乳を取り出しとろ〜っとかけて……。 「リィムにゃん……」 「はっ!」 ごごご、と背後に迫るヴェローチェ。ぺろって舐め取っていたリィムナは振り向き以下略。 場所は代わってシャルと千佳。 「千佳ちゃんこの湯、面白いですのーっ」 「ぶくぶくって泡がでて気持ちイイのにゃ♪ 次は打たせ湯にゃよ。完全制覇して元気になったコクリちゃんを案内するにゃ」 「おーですの」 二人して湯気の中ざばっと立ち上がって薄い胸を伸ばしつつ腕を上げる。どこかでぺんぺんとかいう音が聞こえるが、それはそれ。 「ああ、気持ちいい……」 アクアは岩盤浴が気に入ったようで、綺麗な背中を優雅に見せ続けていたり。 「あたしはあっちにいるわね?」 一方、桜は別の温泉に漬かりなおし。 「変わったのも面白いけど、温泉といえばやっぱりコレよねぇ♪」 『わふぅ』 『あんっ』 湯気で見えないが、ぷかぁ、と胸を浮かべてご満悦の桜に同意しつつ目尻を緩めてほわわんとしている桃。雪夜の方はばしゃばしゃやって楽しそう。 別の小さな湯では、絵梨乃と泡雪が肩を寄せ合ってゆったり。 「絵梨乃様、どうぞ」 「ああ、ありがとう」 銚子を傾け絵梨乃の杯に天儀酒を注ぐ泡雪。目の前には、湯に浮かべた風呂桶に泡雪の分の杯もある。 「こうして二人きりでのんびりするのもいいな」 「はい。この広さがいいですね」 絵梨乃、泡雪の言葉にぎくっ、とする。 さっきの騒ぎでアクアや桜のおっきい組とコクリ・千佳・シャル・リィムナのちっさい組のボディーチェックを済ませているのだ。桜やリィムナからはしっかりと仕返しされたが。 「そ、そうだな」 「うふふ。ここに来て良かった」 肩を寄せ触れ合わせてくる泡雪。 周りでは、コクリが千佳とシャルに連れまわされていた。お尻をさすっているリィムナはかき氷を作っていたり。 「ちょっとは元気になったようだな」 「はい。後でタオルを渡しに行きましょう」 まだまだ楽しいひとときは続きそうだ。 |