【泰動】桃園のグライアイ
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/10/21 22:59



■オープニング本文

●世をしのぶ
 天儀西に位置する国、泰。
 その泰から、春華王が天儀へ巡幸に訪れているという。
「こちらでは、お初にお目にかかります。茶問屋の常春と申します」
 少年がそういって微笑む。
 しかし、服装や装飾品こそ商家の若旦那と言った風であるが、その正体は、誰であろう春華王そのひとである。
「相談とは他でもありません」
 その泰では、近年「曾頭全」と呼ばれる組織が暗躍している。そこではもう一人の春華王が民の歓心を買い、今の春王朝に君臨する天帝春華王を正統なる王ではない、偽の王であると吹聴して廻っていた。
 だが宮廷の重臣らは危機感が薄く、動きが鈍い。彼は開拓者らと共に、宮廷にさえ黙って密かにこれを追っていたが、いよいよ曾頭全の動きが本格化してきたのである。
 開拓者ギルドの総長である大伴定家が小さく頷く。
「ふうむ。なるほど……」
「是非とも、開拓者ギルドの力をお貸しください」

●泰国、【劉の桃園】にて
「さて、今年は秋季剪定を遅らせてみたあるが……」
「暑い時期が長かったあるし、ちょうどいいのこと」
 高枝バサミや脚立を運ぶ集団が、丁寧に下生えの刈り取られたなだらかな斜面を歩く。
 時折上げる顔に映る、横に枝を伸ばした桃の木。落葉にはもう少し早い。やや枝葉の密度が多いのは、元気が良すぎるから。
 彼らは、庭師。
 ここ、泰国中西部に佇む歴史的な庭園、『劉の桃園』の管理を国から任された庭師集団である。
 一歩一歩踏み締め、並ぶ桃の木を過ぎて行く。
「おおい!」
 この時、背後から走って呼び止める声が。
「おお、警備隊長殿あるか」
「アンタら、ここが『グライアイ』と名乗る変な3人組に昨日乗っ取られたっていう情報は伝わってないのか?」
 追いついた三人の兵士は慌てつつ、周囲を警戒しながら口早に話した。
「聞いてるある。【劉氏の鍵】が曾頭全に狙われてたはずあるが」
 平然とこたえる庭師たち。
「いや……どっちにしてもすぐに出てくれ。三国時代、劉氏が二人の豪傑と義兄弟の杯を交わした由緒ある土地で、敵ならいざ知らず同胞の死者を出したくはない」
 必死に説得する警備隊長。
「隊長らがいても、歯が立たなかったあるか?」
「逆だ。グライアイ三人のうち二人が消えたと思うと、我が手勢はなぜか恐慌に陥って同士討ちを始めた。強い者がこの手の攻撃にかかってしまうととんでもないことになる。すぐに全員撤退させた」
 まして由緒ある土地で同士討ちなど……と震える隊長。
 余談であるが、ちょうどその時、曾頭全なる一味から代々由緒ある場所で至宝の如く隠されていた【劉氏の鍵】を厳重に保管すべく春華王から鍵の回収する指示が来るかもしれないと噂されていた。
 そして、実際に中央から然るべき立場の者が来た。
 現場にはまったく知らされていなかった隠し場所から【劉氏の鍵】が取り出された時!
「人間だ〜」
「ホントだ。またやられに来たの?」
「この美しい桃の園はあたしたちのすみかにするっていったのにー」
 三人組の妖精、グライアイが本当に姿を現した!
 鍵が奪われた時と、そして今ここにも!
 途端に現実に引き戻される隊長。
「ひ、ひぃぃぃ〜」
 転がり落ちるように逃げる警備兵たち。
「おまえら、なんで逃げないんだ?」
「わしら、ここの庭師ある。いいかげん剪定せんと来年の桃の開花が美しくなくなるある」
 不満そうなグライアイに庭師がこたえる。
「あ、やっぱり? ここって満開になったら物凄く奇麗なはずだよね」
「うんうん。見なくても分かるよ。この辺りは最高に居心地が良いって」
「いまのままでも本当に美しいよねー」
 目玉をひょいひょい奪い合いをしつつうっとりする三人。
「ほう、分かるあるか。花がなくてもここの良さが!」
「あったりまえじゃん」
 庭師は春や夏以外でここの良さを褒めてもらうのがうれしく、グライアイは自分たちが褒められて気分がいい。
「じゃ、あたしたちは奥にこの鍵を隠してくるから、お仕事頑張ってね〜」
「おお。今年は蛇や蜂が多いんで気をつけるあるよ〜」
 そんなこんなで、秋季剪定は数日掛けて無事に終ったようである。

 ちょうどその時、コクリ・コクル(iz0150)は。
「……コクリちゃん、桃園は今立ち入り禁止らしいわね」
「えーっ。そんなぁ」
 チョコレート・ハウスのオーナーである女性商人、対馬涼子と一緒に桃園に向かっている最中で、手前の町で止められる。何でもギルドにその依頼が出ているとか。
「よし、それじゃボクも参加して問題解決してくるよっ☆」
「まあ、コクリちゃんたら」
 というわけで、【グライアイ】に占領された【劉の桃園】に突入もしくは潜入し、【曾頭全】からも狙われているとみられる【劉氏の鍵】をグライアイから奪還する依頼を受けるコクリだった。


■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
来須(ib8912
14歳・男・弓


■リプレイ本文


 なだらかな丘に、枝葉を広げ整然と桃の木が並ぶ庭園にて。
「ここが【劉の桃園】ですか」
 目の前に広がる桃の園を前に、鈴木 透子(ia5664)が市女笠を上げて見回し溜息混じりに目を見開いた。
「何事もなく終わればいいんだけどにゃー。ともかく、コクリちゃんがんばろうにゃ♪」
 隣で歩く猫宮・千佳(ib0045)が機嫌よく横を見る笑顔の先には、コクリ・コクル(iz0150)。千佳と一緒。
「うん。その、飛鈴さんが言ってたことは……」
 そのコクリ、視線を背後に流した。
「こう人手が足りないとナ」
 ブラブラと見学がてらという感じで歩く梢・飛鈴(ia0034)がそう返す。本来なら、コクリを【劉の桃園】の外に残し、開拓者が回収依頼を受けた、【劉氏の鍵】を狙う曾頭全が着たら知らせてもらいたかったのだ。
「曾頭全、すでに警備兵に紛れ込んでるかもだからねっ。奇襲には注意しよ♪」
 飛鈴の言葉にリィムナ・ピサレット(ib5201)が続く。無防備に脇の下を晒しつつ両手を頭の後ろに組んでリラックスしつつ、「コクリちゃん、心眼頼むね」と奇襲にも気を配る。
「しかし、その曾頭全が狙ってるっていう【劉氏の鍵】ってのは一体何なんだろうな?」
 思案に沈みながら皆に続いている来須(ib8912)がこぼす。
「何か重要なもんってのは分かるが……俺たち、都合よく使われてねぇか?」
 これを聞いた羅喉丸(ia0347)。
「桃園の警備が完全ではない。鍵を狙う曾頭全が乗り込んでくる可能性がある」
「そうだな。まずはグライアイ。……後は一応、兵士の振りした誰かとか鍵を取りに来たっていう然るべき立場の何某ってのまでも疑っておくか」
 目の前の危険性を指摘する羅喉丸。来須はその後も疑っていたようだが、今は今と集中する。
「そうそう、アイちゃん。友好的な関係を築けるといいよね〜。……お〜い。アイちゃんたち〜。お花見しにきたよ〜!」
 こくこく頷いたリィムナ。いきなり駆け出して臥竜橋をどたどたと渡り遠くまで響くよう声を張った。
「グライアイ、確か【希儀】の資料にあったな。妖精で、三種の毒が塗ってある針を使い、透明化もできるらしい」
 かかとを上げてぶんぶんどこかに手を振っているリィムナを見守りながら羅喉丸が真面目な話。
「このだだっ広い場所から、しかもどんな形をしてるか分からんものを探すのカ……。しかも情報を持ってるのはこれまた情報の少ない敵? と来たもんダ。堪らんナァ」
 飛鈴、ぼそり。あたしもやるにゃ、と猫耳尻尾を付けた衣装の千佳が駆け出しリィムナの横に立つ姿を見送りながら。
「あたしはグライアイと前に会ったことがあります。何かの交換条件を出さないと鍵を譲って貰うのは難しいと思いますね」
 透子、控えめに。コクリも駆け出しリィムナや千佳と並んでぶんぶん手を振る様子を見守りながら。
 そして。
「おまえら、楽しそうだな」
「誰もいないところに手を振って……バカだろ、おまえら」
「仕方ないバカばかりだから、まざってやってもいいぞ」
 グライアイが現れた。
「……なんなんだよ、こいつら」
 来須、ぴくぴくとつり目を引きつらせながら呆れるのみ。



 グライアイは現れたが……。
「ほー。蓮の池が綺麗だナァ」
「『眺蓮亭』っていうのがあそこにあるみたいですね」
 飛鈴が臥竜橋の手すりに寄りかかり、透子が近くにある庵を指差す。
 グライアイそっちのけで。
「こら〜っ。お前ら無視すんな〜」
「では聞くが、【劉氏の鍵】を取って隠したようだが」
 むきー、と機嫌を損ねたグライアイ。羅喉丸が構いついでに聞く。
「それがどうした、バカ! 欲しいって言ってもやらないぞ!」
「てか、その鍵ってなんなんだよ……」
 グライアイ、うれしそうに羅喉丸に突っかかる。でもって、来須が根本的な疑問を口にする。
「そんなんしるかー」
「よく分かりもしないものを隠したのかよ」
 胸を張って主張するグライアイに重ねて聞く来須。
「……なんか、こういうちっこいので理不尽なのは心当たりがあるナ」
 その横で飛鈴、自分の人妖を思い浮かべながら苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 それはともかく、さらに羅喉丸。 
「その鍵がないと俺たちも困るんだが……」
「おまえたちの勝手だ、バカ」
 いー、と羅喉丸に。
「なあ、鍵の代わりになる物があるんなら考えてみようぜ」
 来須がグライアイを無視して羅喉丸に聞いてみる。押せば引く、引けば押すの流れにはまってしまっているグライアイ、不安そうだ。
「あの……」
 おず、と透子が会話の流れを引き寄せた。
「みなさんには前に会ったことがあるのですが」
 透子、希義での依頼を思い出している。
(たしか、人を個々で見る感じではなかったと思います)
「こっちは知らないよ、バカ」
 グライアイ、にべもない。
「ではみなさん、一人ひとりのお名前は?」
 やはり覚えてない。透子、続ける。「そんなんどーでもいい」、「では名前を付けてあげましょうか?」、「いらない」などと話が続く。
 ふぅ、と透子。名前を呼んで親しくなる作戦は失敗だ。
(それでも、三人の特徴は覚えましたけどね)
 髪の長さ、ブレスレットやアンクレットなどの飾りがそれぞれ異なっているのに気付いた。
「そんじゃ、マア……」
 この隙に飛鈴が寿司の折詰を取り出していた。
「何でそんなもの取り出すんだ、バカ」
「桃園を荒らす気は毛頭ないし、花見なんぞをナ」
「この季節に花なんかあるかー」
 グライアイが突っ込んだところでリィムナ登場。
「アイちゃん達、それは心配無用だよ。見ててね」
 リィムナ、フルート「ヒーリングミスト」を取り出し奏で始めた。
――ひゅるり・ひゅるる……。
 柔らかく優しい音色が響く。
 体を波打たせるように、情感を――いや、願いを込めるように体全体を使って音を紡ぐ。
 スウィング感のあるリズムを刻む楽曲は人の心をはっとさせるようで、何かを期待させるようで。あれほど落ち着きなくかしましいグライアイもすっかり大人しくなって耳を傾けている。
 やがて。
「あっ! あれ」
 コクリが気付いて千佳をつんつんして指差す。
 これまでず〜っと静かだった千佳。実は曾頭全を警戒していた。とはいえ、コクリに呼ばれたこの時ばかりは素直に指差す小枝を見た。
「にゅ……桃の木が芽吹いてるにゃ!」
 目を見開く千佳。枝の先からつぼみが顔を出し、ぐぐぐと大きくふくよかになっている。
――ふひゅる、ひゅるるる♪
 リィムナの長い演奏はまだ続いている。「華彩歌」と呼ばれる開花演奏はそのくらい長い。
 そして。
「咲いたにゃ!」
 満開の桃の花に千佳の顔にも笑顔が咲く。
「見事だな」
 羅喉丸も思わず見惚れて欄干に身を預け桃の花を眺める。コクリも隣に。透子は「やはり美しかったですね」と後でにこり。来須は「すげぇな…」と開花はもちろん、吟遊詩人の技にも感心。飛鈴は「ま、こんなモンだろ」と満足げに腕を組んでいたり。
「あったりまえだ。あたしたちの見込んだ場所だからな」
 わが手柄のようにグライアイたちは胸を張っている。
「じゃ、お花見だね。一緒に楽しもうよ、アイちゃん達♪」
 演奏を終えたリィムナは早速重箱弁当や月餅を出しつつ、満開の桃の下に陣取った。



「ところで、ここは三人の英雄が義兄弟の誓いをした場所だと知っているのですか?」
 桃の木の下でずずず、とお茶をすする透子が尋ねてみた。
「もぐもぐ……そんなん知らないー」
「あたしたちももぐ……3人だけど、そんなんもぐ……必要ないしー」
「それよりそこのおまえ、花見なんだからもっと飲め」
「飲んでるよ。飲んでるじゃねぇか!」
 もぐもぐ食べながら答えるグライアイ。来須はなぜか突っ込まれて猪口をぐいっとやる。が、警戒して酒は飲んでない。中身は水だ。この辺、抜け目ない。ちゃんと左右に視線を流し警戒も怠ってない。
「ところで、何のために鍵を取って隠したンだ?」
 飛鈴は、ほお張りすぎてげふんげふん咳き込んでるグライアイに携帯汁粉を差し出しながら聞いてみる。
「げふげふ……大切そうにしてたからもらってやっただけだし、大切なものなら隠すのが当然だからだ、バ……さっきはありがと」
 汁粉を飲んでひと心地ついて、そう言う。
「……誰かに頼まれたのではないのですか?」
「もし誰かが来て渡すんなら、一緒に護衛してやるぜ?」
 透子が切り込んでみた。来須も援護。柔らかい雰囲気にするよう務めた。
「別に誰かに言われたわけじゃない。バカ」
 違うようだ。
「だったら交換に応じんカ?」
 飛鈴、別の手で攻めてみる。
「つーん」
「色々交換できる。鍵のように光る綺麗な小物や甘いものもあるが……」
 続いて羅喉丸はキャンディボックスなどを差し出してみる。
「ん……つーん」
 残念、釣られない。羅喉丸が本格的に説得に乗り出そうとしたところ、千佳がすっと立ち上がった。
「コクリちゃん。一緒に踊るにゃ♪ お揃いの服も用意してきたにゃよ♪」
「え? ……あ、うんっ。そうだね、一緒に踊ろう☆」
 コクリ、着替えを持って千佳と連れ立ち木々の奥に隠れる。ごそごそ着替える音と「え? 猫耳猫尻尾のバラージドレス?」、「そうにゃよ? ねこのても持つにゃ」とか言う声に、慌てて羅喉丸と来須が背を向ける。
「どうやってここまで来たのですか?」
 透子、その隙にさらに聞いてみた。
「前の森が面白く無くなったんで気紛れで来たに決まってるだろ」
 ああ、気紛れですか、と視線を遠くにする透子。そういう意味ではないのですがと内心。
「でも以前はアヤカシに頼まれてキビシスを隠し持っていました。今回も……」
 どうやら曾頭全から頼まれて鍵を隠しているのではないかと疑っているらしい。来須も横から身を乗り出しこくこく頷いてる。同じ立場であろう。
「キビシスは弱点だからだ、バカ。今回の鍵はここにいた奴らが大切そうにしていた。だから隠し持っててやってんだ」
 透子、茶をずずずと飲む。分かるようで良く分からない理屈である。
「それじゃ、アイちゃん達にはあたしの大切なもの上げるね!」
 横から顔を出したリィムナ、じゃじゃん、と薄手の布を取り出して押し付けた。
「何だ、これ?」
 ぴらっ、とグライアイが布切れを広げる。
 何と、水着である。
「そ♪ あたしとお揃いで羽が窮屈にならないよう、背中が開いた白い水着だよ♪」
 ばさっ、と上着を脱いでリィムナが白いスクール水着姿になっていた。
「寒いだろ、バカ」
「でもバカは風引かないっていうし……」
「お待たせにゃ♪」
 ぐちゃぐちゃグライアイが言ってると、猫的バラージドレス姿になった千佳とコクリが登場。
「仲良しになったしるしだから大切にしてねっ。それじゃ伴奏するよ♪」
 急いでそれだけ言ってリィムナがまたフルートを吹き始めた。
「仕方ない。鍵を隠した一番奥の桃の木の根っこに隠しとくか」
「目印の石、大きいけど大切なら一緒がいいな」
「ん?」
 グライアイたちの会話に反応する、透子、羅喉丸、来須、飛鈴。
「じゃ、いくにゃ♪」
「うんっ。楽しく踊ろっ!」
 千佳とコクリがすぐににゃんにゃんと踊り出す。リィムナも楽しそうに演奏。残りの四人は先の言葉をしっかりと記憶しながら手拍子で盛り上げる。
「あたしたちも踊るにゃ」
「語尾がにゃににゃるね」
 釣られて踊るグライアイ。
 桃の花も風に揺れて楽しそう。
 しかし、その時!



――どぉん……。
「な、何にゃ?」
「うわっ。……重力の爆音?」
 踊るコクリと千佳が謎の攻撃を受けた。
「いた! あそこだ」
 周囲を警戒していた来須が桃の木の陰を指差す。敵の吟遊詩人がすっと身を隠していた。
「まずい。グライアイに俺達と曾頭全が同類に見られてしまうかもしれない!」
 羅喉丸はそう呟いて瞬脚で敵に向かう。曾頭全も最初の一発は遠距離から来たが、すぐに次の前衛部隊が突っ込んできていた。
「今のうちに急げ。敵に消える暇を与えるな!」
 敵の掛け声。グライアイの情報を得ているようだ。
 そこへ、羅喉丸。
「行動を持って誠意を示す!」
 固めた拳に、神布「武林」。十分な踏み込みで迎撃する。
――ドゴッ!
「おわっ!」
 敵の悲鳴。グライアイに誤解されまいと派手にぶっ飛ばした。ちら、と背後を見る。特に味方に変化はない。この隙に攻撃を喰らおうが、誤解されたかどうかの確認は最優先事項だ。
「花見の席にはちと無粋でないかイ」
 続いて飛鈴。やはり瞬脚で一気に寄せていた。先に指示を出していた敵に即座の蹴り。絶破昇竜脚でふっ飛ばす。
 と、そこへ矢が飛んでくる。重力の爆音も。
 どうやら敵は遠距離攻撃主体で編成していたらしい。グライアイ対策だろう。
「くそっ、あいつら庭園で矢を撃つかよ。……俺は綺麗な庭は傷つけたくねえ」
「詰めるしかないですね。……来須さん、援護します」
 来須はいったん森霊の弓を構えたものの、グライアイの心証などを考えて剣「電光石火」に持ち直す。これを嬉しく思った透子が並んで走る。彼女も呪縛符を使おうと思えば寄せるしかない。
「うー、楽しい宴を邪魔する人には魔法少女がお仕置きにゃよ!」
「千佳さん、ボクも行ってくるね!」
 千佳は最後尾からホーリーアロー。コクリはもちろん剣を手に突撃。重力の爆音や敵のホーリーアロー、そして矢も飛んできている。しばらく一方的にやられるしかない酷い有様だ。
「よ〜し、纏めて子守歌で眠らせるよっ」
「せっかく庭師の人たちが綺麗に世話してくれてる木にゃ。ここを荒らさせたりはさせないにゃよ!」
 リィムナは前に。千佳もアムルリープを使うべく突っ込む。
 が、睡眠攻撃は利かない。
「グライアイから混乱を喰らわないよう、抵抗に特化してるのかもな」
 来須がぽそり。敵は同じ弓術師だからと積極的に接近戦。山猟撃はいつも使ってる。お手の物だ。
「おかげでこいつらはチョイとやりやすいナ」
 囲まれ戦う飛鈴が言う。対グライアイ戦用に肉弾戦隊はやや弱い。実は囲まれているのではない。瞬脚で動きつつ効率的に膝や急所に丁寧に蹴りを丁寧にプレゼントしているのだ。
 そして羅喉丸。
「曾頭全と言ったな!」
 一撃食らわせ言う。
「真の天帝であると称していたな。くだらんっ!」
 腰を落として二撃目。
「…天帝とはその仁徳によって民を治め、天に選ばれし者っ!」
 そして三撃目。重い連打を喰らい敵が崩れ落ちた。
「……従わぬ者を天罰の名の下に排除する外道共の何が天帝か」
 怒りを込めて見下し、言い放つ。
「はっ。そういえばグライアイは?」
 戦いがほぼ終わり、コクリが気付いた。
「戦闘が始まった後、『庭師のおっちゃんが怒るだろ、バカ』と言って空高く飛んでいきました」
 透子、戦闘そっちのけで注意深くグライアイの動向を見ていたようだ。

 とにかく、多勢に無勢で苦労はしたが曾頭全を桃園から追い出した。
 その後、グライアイの言っていた場所を探すと【劉氏の鍵】が出てきた。
 グライアイの行方は誰も知らない。