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■オープニング本文 ●未来 叛は、終わった。 開拓者たちの意志と信念は万華鏡のように入り乱れ、結果として、慕容王も、風魔弾正も、共に命を繋ぐこととなった。 「叛はこれにて終いである」 即日のうちに出された慕容王の触れは、衝撃となって陰殻中を駆け巡った。 幾多の王を、誰一人として天寿を全うさせずに葬り続け、陰殻を陰殻たらしめてきた倫理が、今まさに崩れようとしている――ある者はこの青天の霹靂に唖然とし、またある者は開拓者たちの関与から薄々来るべき時が来たのだと覚悟を決めた。 狂騒が去り、後片付けが待っている。 新たなる未来の形をつむぐ為に。 ●まだ狂騒する者たち ある一軒家で。 「何だ! このしけた打ち上げ花火みたいな終わりはよぅ!」 あるシノビは、どだんと座していた畳を叩いて不満を爆発させる。横には大きな風魔手裏剣が。 人は彼を「影手裏剣の政」と呼ぶ。 別の場所、森の中。 「しょうもねぇ。まるで全てが茶番だ」 大樹の枝に座るシノビが、そう呟いて葉の付いた小枝を口にくわえた。大きな斬馬刀。 「旋風の笙」とは彼のこと。 そして、とある茶屋。 「いけないねぇ。こころざし、ってのは貫くものでございましょうに」 ひょろりとした男が背を丸めて呟き、茶の入った椀を回している。何と腕の長いことか。 仮に彼を知る人がここにいれば、「蛇忍の藪だ」と恐れおののいたろう。 あるいは、寂れた寺の境内。 「つまらん。『叛』とはかくもつまらぬものだったのか? もっと血を見るものではないのか?」 ぱしん、と拳を打ち鳴らす。その拳には闘布が巻かれている。 周りには誰もいない。もしかしたら「拳法かぶれの巌だ」と、関わらないようにしているのかもしれない。 一方、ある庭。 陽と木立が織りなす光と影の中で、中空を見据え刀を振るっている男がいる。 「……暴れ、足りぬな」 ぱちん、と鞘に収め濡れ縁に行き紙を取る。 「抜ける」 さらりと筆で書きとめ、巫女衣装の袂を払った。 人呼んで「剣術馬鹿の幸」、里を捨てた瞬間である。 果ては、先日抜け忍始末のあった睡蓮の池。 「くそう……。このままでは……」 ここで大半が討たれた「三途忍」の一人が膝をついて湖面の睡蓮を見詰めていた。 「俺一人ででも、復讐してやる」 顔を上げる男。名を「蓮」という。 この、血叛で燃えつきそびれた、もしくは遺恨を残した男たちが滝のある広場で偶然出くわした。 実はすでにこの6人。 さまざまな経緯で既に開拓者ギルドに討伐依頼が出されていた。 「出て来い。……ここで殺ろうじゃないか?」 彼らもつけられていたのは百も承知だった。 依頼を受けた開拓者たちが、戦場となる広間に姿を現すッ! それはそれとして、神楽の都。 「やれやれ。前の忍法帳が結構な人気だ、ってか?」 貸本絵師の下駄路 某吾(iz0163)がぼりぼりと頭をかいていた。 「師匠、何か都合が悪いの?」 弟子の娘、灯(あかり)が首を捻る。 「聞いて絵を描くより、お前にゃ自分の目で見たことを描かせたいんでなぁ」 とりあえず、今回も某吾が貸本の題材にするらしい。 |
■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
ユリア・ソル(ia9996)
21歳・女・泰
カルロス・ヴァザーリ(ib3473)
42歳・男・サ
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ● 人里離れた滝の広場に、大柄な男一人。 「誰だ?」 呟いて振り向く。 視線の先、茂みの中から男が出てきた。 「拳法かぶれの巌、であってるよな?」 男、陰陽甲「天一神」を篭手に付けた拳で自らの鼻頭を弾く。 「ああ。それよりここでいいか?」 「いいんじゃないか? 俺は劫光。陰陽師だ。」 劫光(ia9510)、ぱしりと拳を鳴らし最初の問いに答える。 そこから少し離れた場所で。 「槍を持っているなら広い場所の方がいいんでしょ?」 河原で「三途忍の蓮」が背中越しに声を掛けて肩を竦めた。 「ま、そういうことにしておきましょう?」 背後から出てきたのは、ユリア・ヴァル(ia9996)。「仕方ないわね」的な溜息をつくのは、敵が水忍術の使い手だと知っているから。が、特にとがめない。 「美人の顔が苦痛に歪む姿もよく見えますしね?」 「くだらない趣味ね。管を巻いて八つ当たりをする暇があるなら相応の実力を身に着けなさい」 逆手に忍者刀を構える蓮に、すうっと神槍「グングニル」で正対するユリア。 一触即発! さらに別の場所。 「これまたチビッ子に睨まれたモンですねぇ」 「蛇忍の藪」がすうっと目を細めて正面にいる人物を睨め付けていた。いや、ちろちろと舐めつくすように観賞していたというべきか。 「妾は今回の『叛』の戦には参加しておらぬ。聞いた限りでは陰殻は良い方向に向かう様じゃ」 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)が「天下無双羽織」の袂を襷でまとめながら言った。 「いけないねぇ。聞いただけの話で判断して」 「では、どうすればよいのじゃ?」 きゅっ、と長い金髪を後で束ねて前を見据えるリンス。藪は手を広げ腰を落とし戦闘体勢。 もう、リンスにも言葉はなかった。 さらに他の場所。 「暴れ足りぬ、か…まったくもって同感だな」 ざ、と横に動いたのは竜の神威人、カルロス・ヴァザーリ(ib3473)。肩に担いだ野太刀「鬼霧雨」をとんとんと肩で弾ませながら眉の根を寄せている。 「……」 対峙する「剣術馬鹿の幸」、馬鹿正直に太刀を両手で構え正眼に構えたままカルロスとは逆の円を描く。 「誠、ぬるい結末であった。腑抜けた王の決断に興醒めするのは仕方あるまい」 とん、とひときわ大きく弾ませて、構えた。前を向く。幸もぴたと止まった。 「来い、最期に楽しませてやろう」 くわと目を見開くカルロス。 間合い、詰まる! やはり別の場所。 「茶番ねェ…そォだな、マッタク同感だァ」 のっそりと藪から黒髪の男が出てきた。顔を隠すようにうつぶせている。 「だからと言って燃えカスがボヤを起こしちまうのも後味悪ィしよォ。ロクでもネェ事やるんだったら……」 上げる顔は鷲尾天斗(ia0371)その人。 対面するは「旋風の笙」。 「しょうもねぇ。里に俺の始末を頼まれたのか?」 笙、斬馬刀を面倒くさそうに構える。 「……スッパリ潰してヤんよォ」 天斗、魔槍砲「アクケルテ」を声を張った! 「人の話を聞けぇ〜っ!」 問いを無視され突っ込む笙。 双方動いたっ! ● この時、天河 ふしぎ(ia1037)。 (手裏剣のいい的になってる) 茂みにダイブしすぐさま転がり場所を変えて思う。 樹木の幹に隠れ振り返ると、先ほどまで転がっていた大地に手裏剣が刺さった。 「わっ!」 はっと気付いて身を屈める。ととんと幹に手裏剣が刺さった。 「軌道を変えて曲がってくる…誘い込まれたのは、僕の方? でも、やられはしないんだからなっ!」 「何だ? 終わりか? だらしねぇな?」 ダイブしてさらに森の奥に行くふしぎ。嘲笑する「影手裏剣の政」の声。真後ろから聞こえてくる。 「普通、そうだよねっ」 くるんと身を起こしたふしぎ、宝珠銃「レリックバスター」を構えている。真っ直ぐ追っていた政、これにはぎょっとする。 ――ガィン! 政、ふしぎの射撃を巨大な風魔手裏剣を盾にすることで防いだ。 「ちょうどいい。貴様を殺して天儀で殺し屋をやる幕開けとするぜ!」 「させないっ。戸惑う気持ちも分かる…でも、それで世に混乱を起こそうというのなら、放って置けない!」 悪意と決意のぶつかる戦いはまだ始まったばかりだ。 さて、劫光。 「いくぜ?」 十二天の最高位の名を冠した手甲を突き出し、「黄泉より這い出る者」の詠唱に入る。 「がふっ……」 巌、わざと喰らって血を吐いた。ゆるりと拭う。 「血を見たいってのは自分の血かよ? なら、ここで終わりにしてやる」 「赤や朱色ってのはいいな。心が弾む」 再び手甲を構えた劫光、今度は詰める巌。丸太のように太い腕で殴る。 が、今度は劫光が避けない。 「……どうしたよ! そんなもんか!?」 受けて涼しい顔をしている。さすがに目を見開く巌。「九字護法陣」を事前にこっそり掛けていたのは内緒だ。 「小うるさい奴め」 巌が挑発に乗り大きく拳を引き絞った。劫光、この隙を見逃さない。 「おらぁ!」 ――ずだ〜ん。 「霊青打」の青い燐光を放つ右腕で巌の首を刈った。ラリアットで背中から落ちる巌。 「死に損なった、てか? 情けねえなあ」 「そうでもない。俺の叛は今、このときだ」 背中越しに見やる劫光ににやりと返し起き上がる巌。ここから展開が速い。 来るか、と背後へ肘打ちを繰り出す劫光だが、これはタイミングを外された。正面からの打撃。 「なら……ぐっ!」 耐えた後の渾身の正拳突きは、身を沈められ両手の重いラッシュを食った。さらに起き上がって劫光の首に掴みかかろうとするところ、下段に蹴りを放って足を払って難を逃れる。 ――からん……。 「ん?」 この時、劫光の身から『朱盃「金銀日月」』が落ちた。朱塗りが見事な逸品だ。これに巌の目がいく。 「隙あり!」 劫光、一気に連打。燐光を纏う拳を放つ、放つ……。 「恨むな、とは言わねえよ。この顔刻みつけていけ」 不意に止める拳。劫光が呟いた後、巌はずぅん…と倒れ静かになった。 こちら、ユリア。 ――どっぱ〜ん。 突然、自身の足元から上がった水柱に目を見開きバックステップをする。 「水遁? ……来たっ!」 虚を付かれたが、肉薄してきた蓮には対応。蓮が逆手に持った刀で斬り付けてきたところを回り込む。脚絆「瞬風」、伊達ではない。 「美人の濡れ姿もいいですねぇ」 「叛……私も初めから気に入らなくはあったのよね」 にやにやする蓮に、真顔で呟くユリア。挑発を無視されむっとした蓮が苦無を投げる。 「王位継承の形として、叛は酷く歪だわ……国の王を決めるなら、少なくともその国を背負っていく覚悟のある人でなければダメよ。里長も族長も一緒」 横に流れかわすユリア。蓮は川の水面を並行移動し苦無を投げ隙をうかがう。 と、卍型の手裏剣を出した! 「貴方はその覚悟があったの、蓮?」 「今は、ある! 抜け忍として仲間を粛清された今なら……」 卍型手裏剣、投擲。ユリアは毒の可能性を加味し大きくかわす。 この隙に再び、水遁。左右を警戒するユリアだがっ。 「最初の水遁は囮。こっちが本命だっ!」 何と蓮、跳躍して頭上から切り伏せてきた。 「くっ!」 「泰拳士は踏み込みさえ気をつければ……ん?」 蓮、いい気になってまた距離を取ろうとしたところで動きが鈍った。フローズを喰らったのだ。 「美人に見惚れるだけじゃなく、ちゃんと目配りしなさい?」 ここで初めて攻勢に転じるユリア。こおお、と体を赤く染め、白い気を纏わせた神槍を構え一気に出てくるっ! ――ざしっ! 「魔法…も?」 「こういう情報戦がシノビの本領じゃないのかしらね…?」 ――ざしっ! 意外な顔をする蓮に、止めの一撃を食らわすユリア。 ばしゃりと川に落ちると、蓮の血が流れていくのだった。 ● リンスの死闘。 「いけないねぇ。次から次に武器を出して」 藪は長い両手を広げ追い込むようにしながらじり、と近寄ってくる。リンス、魔槍を足に投げたり敵の抱き付きタックルをかわしざま手首に切りつけていたりしていた。 「あいにく、誰もがそうやって逃げるから慣れっこだけどね」 「この変態め」 言ってリンス、姿勢を低くしつつ一気に踏み込んでの突き。やはりかわして組み付きにくるが……。 「がはっ!」 リンスの裏拳が入った。先の突きとあわせ、これが「百虎箭疾歩」。 「泰拳士……。いけないねぇ」 ならば、と横に跳んだ。太い木を足場にしてリンスを見た。迷うリンスに、三角跳で迫る藪。 そのまま抱きつかれ空中に。 「おおっ?」 「む?」 ――どしん! 藪、得意の飯綱落とし。 が、万全の体制ではなかった。各種回避の動きはホールドを甘くしていた。 「このっ!」 「おっと、もう一度……」 払って敵を退けるリンスだったが、藪のかわす動きはまたも三角跳。今度は完全に背後を取られた。 しかしっ! 「これでも喰らうが良い」 なんとリンス、龍袍「江湖」を跳ね上げお尻を突き出したではないかっ! 「ぐっ!」 しかも藪、血を出してよろめいた。 「どうじゃ、パンツ型暗器の味は」 パンツの味はともかく、『女児ぱんつ「蜜蜂」』の針がもろに刺さったようだ。この勢いで足を凪ぐ。 これで敵の動きが目に見えて鈍った。 「大したこころざしよの。飴を欲しがって暴れる小童と変わらぬわ!」 攻勢に出るリンス。勝負は時間の問題である。 カルロスと幸は。 「参る!」 「――ッ!」 凜とした声を上げ太刀で踏み込む幸に、猿叫の後初太刀必殺の踏み込みをするカルロス。 ――ガッ! 共に受けた! いや、どちらが攻撃したのかどちらが受けたのか分からない。そんなの関係ない一直線の太刀筋が合わさった。 「遅い」 「おまえ、いいな」 ぐぎぎ、と峰で押し合いながらにらみ合う。 ばっ、と刀を払ったのはどちらからでもなく。双方やや下がっただけですぐにまた打ち合う。一瞬幸が速かったかもしれないが剣の出鼻を叩きにいった。 結果、またも太刀を合わせにらみ合い。 「示現流、か……」 「所詮シノビの火力」 お見通しだ、と言わんばかりの幸。 これにカルロスが仕掛けた。 ――がばっ! なんとカルロス、合わせを払うと同時に蹴りを見舞った。 「卑怯…いや……」 「古式示現流はそういうもんだぁ!」 蹴っただけではない、幸も気付いたがもう遅い。 間髪入れず袈裟斬りが襲ってくる。 ――ざしっ! 「足らぬ!」 「おまえッ!」 袈裟を喰らい血をしぶかせつつ、初めて幸が荒々しい声を上げて踏み込んできた。くわと目を見開きカルロス、唐竹割で応じる。 ――どさっ。 「……野晒しで鴉にでも喰われろ」 先ほどは幸が逃げた。今度は同様に斬り合うと、相打ちながら幸が酷く喰らって倒れた。カルロスとしては最後に余計な一撃を食った。死肉となった幸を蹴って――鴉に見付からないよう草むらに隠した。 「脆いな…」 呟き、傷口に手をやりその場を後にする。 天斗は? 「『旋風の笙』たるが技、とくとと味わえっ」 「さァ来いよ。天斗・ザ・サイク……」 天斗の言葉は途中で途切れた。 何と、敵が逃げたのだ! 森の中に。 「ちょっと、いきなり臆病風に吹かれたですか〜っ!」 呆れて追う天斗。 と、手裏剣が飛んできた。 「おっと。……お前の微風なんざ吹き飛ばしてヤっからよォ!」 宝珠銃「エア・スティーラー」で撃ち落す。最初の乗りが戻った天斗、さらに「ウィマラサース」の技術で次の手裏剣を避ける動きで装填し射撃など連撃に対する見事な対処を見せる。 「どォしたどォしたァ! お前の嘆きはその程度なのですかァ? 俺の糧にすら……おわっ」 何と笙、中距離戦闘を繰り返すかと思いきや一気に詰めて巨大な刀を横薙ぎに振ってきた。沈んでかわす天斗。そこへ回し蹴り。これは回避できず。 そしてまた手裏剣から中距離攻撃。 (はぁん) 敵の攻撃を受け続けていた天斗、「旋風」の意味するところが投擲、斬撃、格闘の速攻一連攻撃だと理解した。特に斬馬刀を振り子にした回し蹴りには一定の破壊力がある。 「どっちにしても俺の糧にすらならねェやなァ!? そろそろ首を盗ろうかねェ」 「その魔槍砲は飾りか? しょうもねぇ。茶番だ」 節分豆を糧にしつつ挑発する天斗。乗って突っ込んでくる笙。どうやら魔槍砲を警戒していたらしい。 「茶番だろォが何だろうが、寝ても覚めても戦士ってモンはよォ突っ走る事しか頭にネェもんだ」 天斗、正面から応じた。ヒートバレットを加えた魔槍砲が火を噴くっ! ――ガウン、ガキッ! 砲撃を防いだ斬馬刀、吹っ飛んだ。いや、捨てた。匕首に持ち替え迫る笙。 二撃目は入る。が、捕らえられた。 ――どさっ、ごろごろ……。 「首は貰ったァ!」 声は、天斗。 魔槍砲を短く持ち笙の利き腕を止めたあと、巻き込まれる動きに任せ穂先の刃で首を狙った。 「逝けば仏、成仏せいやァ」 呟き立ち上がる天斗。笙は立ち上がることはない。 ● ふしぎはどうなった? 「結局今回の叛、僕達は混乱が人々に及ばないことだけを望み動いた、だから王も弾正も死ななくて、新しい風が吹いたことはいい事なんじゃないかなって思う」 大樹の陰に隠れ、先程大きな手裏剣の影に隠れるように投げられ喰らった小さな手裏剣を抜きながら叫んでいた。やや体が痺れている。 「知るか。これまで叛に生きて叛に死んだ者はどうなる!」 政は得意の展開に持ち込み余裕をかましている。ふしぎの言葉に返した。 「残された者が新しい風に生き、新しい風に死ねばいいんだぞっ!」 ふしぎ、長引くと不利と見て隠れていた場所から出た。先の声で政のいる方角は分かる。 「だったら新しい風を示してみろ!」 政も大樹の影から姿を現した。ふしぎの短銃の射程外と踏んでいるらしい。 「こちらも居場所さえ分かれば…いけっ、式神弾!」 斬撃符を放つふしぎ。慌てて身を隠す政。 これが勝負の分かれ目となった。 「シノビの体術も織り交ぜたこの技、これもお前が認めない、新たなる未来の可能性の一つなんだぞっ」 この隙に接近するふしぎ。手裏剣が来るがかわし、撃つ。「ウィマラサース」は砂迅騎の短銃術に泰拳術と忍術の動きを取り入れた新しい技術だ。 そして。 「これが可能性を信じるものと、過去にすがりつくものの違いなんだからなっ!」 銃を捨て、霊剣「御雷」を振りかぶってグレイブソードを放つのだった。 後日、神楽の都にて。 「ふんふん、それで政に止めを刺した、と」 下駄路 某吾(iz0163)がふしぎの話を聞きつつ頷く。 「で、そちらのお姉さんはびしょ濡れで、そっちの兄さんは敵の首を刈って大喜び……」 「わざわざ強調するところではないわね」 「はァ? 首は丁重に埋葬し供養したに決まってルデショウ?」 ユリアがぴくりと柳眉を逆立て、天斗が某吾の胸ぐらを掴む。 「妾の女児ぱんつも描くつもりか?」 「あの、お茶どうぞ」 「お。すまねぇな」 リンスが微妙な表情で聞く横で、灯がお茶を出し劫光が受け取る。 「ここは狭いな」 柱を背もたれにして座るカルロスは煙管をくわえ騒ぎを眺めるのだった。 |