尖月〜勝利の南国バカンス
マスター名：瀬川潮
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| ■オープニング本文 ●尖月島のこと 泰国南西部は南那沖に位置する尖月島は無人島である。 沖側が遠浅の浜となり大陸側は岩礁地帯で、干潮時には半月のような形、干潮時には三日月のような形になる。 古くから漁民が移り住もうとしたが、保水能力の低い森しかなく飲料水確保の問題で長らく放置されていた。やがて、アヤカシが居つくことになる。 数年前、旅泰が当時閉鎖的だった南那との交易を視野に旅泰がここを保養地として整備することにした。 開拓者の出番である。 アヤカシを退治し、伏流水の湧き水を利用しやすく整備したことでひとまず利用できるようになる。 その後、開拓者の保養地として、漁民の漁業中継地点として機能した。 が、海賊連合軍により占領。交易港「備尖」攻略の橋頭堡とされる。 これを、備尖を預かる元海賊の血筋、顕・庵錬（ケン・アンレン）率いる備尖艦隊と開拓者による突撃隊の活躍で取り戻すことに成功するのだった。 ●本編 ここは天儀の神楽の都。 珈琲茶屋「南那亭」にて。 「というわけで尖月島から海賊を追っ払ったんだ」 コクリ・コクル（iz0150）が珈琲そっちのけで南那亭めいど☆の深夜真世（iz0135）に話している。 「ふうん、そっちも大変だったのね〜」 真世の方は南那の北部で頑張ってきたところだったり。 「それよりね、海賊ってすごいんだよ？」 コクリ、無邪気にまくし立てる。 「尖月島に居付くつもりだったらしくて井戸を掘って地下水のくみ出しに成功してたり、新たに長屋を作ってたり、備蓄倉庫や森の中に貯水槽を作ったりしてたんだ」 「え？ その……それまでにあった浜辺のコテージや海の家は？」 真世、驚いた。そして慌てて聞く。それまであった施設はいずれも馴染み深い。壊されたりしてたらどうしようとやきもきしている。 「大丈夫。それまである便利なものを壊したりは一切してないみたいだよ。……海賊が定住できるように改良したから、もう南那の漁民が移り住んでるんだ。もう、無人島の隠れた保養地なんかじゃないよ」 だから、とウインクするコクリ。 「みんなで取り返した尖月島だから、みんなで楽しまなくちゃね。……旅泰の林青さんや南那の新領主、椀栄進さんから依頼が来たんだ。『海岸とは反対側の森林部を整備してくれる名目で、遊びに来てくれる開拓者をできるだけ多く集めてくれ』って」 ぐーん、と両手を広げて晴れやかな表情のコクリ。どうやら、まずは人を呼んでバカンス地としての知名度をさらに上げたいという狙いがあるらしい。もう一点、閉鎖的だった南那に、有為な人材を呼びたい栄進の思惑もあるようだ。部外者に冷たいと思われているイメージを、まずは尖月島を使って払拭したいらしい。 「ボクは一緒に戦ったみんなと取り戻した島を実感したいから遊びに行くんだよ」 「いいなぁ。……私も行っちゃってもいいよね？」 真世、おねだりするようにコクリを見る。 「もっちろん、真世さんも都合が付くなら呼んできてって林青さんから頼まれてるんだ☆」 そんな、きゃいきゃい賑わう席とは別の席で。 「旦那、たまには神楽の都を離れたほうがいいじゃないですか？」 「どうしてまた」 もふらの面を被った男と、金髪エルフの男性――クジュト・ラブア（iz0230）が珈琲を飲んでいた。 「旦那は浪志組にどっぷり漬かってちゃいけない人だからですよ。……というか、今はちょっと神楽の都から離れていてほしいんです」 「……理由を伺いましょう」 「親切すぎるから、旦那の好意に頼る小さな話が舞い込みすぎてるんです。こちらとしてはミラーシ座としての話もほしいですし、浪志組としても便利屋じゃねぇですからね。『いま神楽の都にいないから』という言い訳が必要でして」 「人斬り六本丸が心配ですよ？」 「それもあります」 思案げにクジュトが言うと、もふら面の男はそこを強調した。 いわく、「旦那を狙っているかどうかが分かる」とのこと。 「私を狙っているのだとしたら？」 「囮なってもらって、そこを開拓者に叩いてもらうのが一番でしょ？」 そんなこんなで、クジュトも尖月島に行くようだ。 というわけで、夏の尖月島に行って海水浴をしたり一泊してのんびりする人、求ム。 もちろん、言い訳程度に森林部で作業するのも忘れずに。島の裏に行く道の草刈りや異常がないかの巡廻でいいそうだ。 |
| ■参加者一覧 / 水鏡 絵梨乃（ia0191） / 静雪 蒼（ia0219） / 紗耶香・ソーヴィニオン（ia0454） / 柚乃（ia0638） / 天河 ふしぎ（ia1037） / 静雪・奏（ia1042） / 礼野 真夢紀（ia1144） / からす（ia6525） / 猫宮・千佳（ib0045） / アーシャ・エルダー（ib0054） / ニーナ・サヴィン（ib0168） / 御陰 桜（ib0271） / 十野間 月与（ib0343） / 真名（ib1222） / ミリート・ティナーファ（ib3308） / 龍水仙 凪沙（ib5119） / リンスガルト・ギーベリ（ib5184） / リィムナ・ピサレット（ib5201） / ファムニス・ピサレット（ib5896） / フランヴェル・ギーベリ（ib5897） / セフィール・アズブラウ（ib6196） / 泡雪（ib6239） / サフィリーン（ib6756） / ナキ＝シャラーラ（ib7034） / 愛染 有人（ib8593） / 雁久良 霧依（ib9706） / リズレット（ic0804） |
| ■リプレイ本文 ● ぴちち、と尖月島森林部に鳥のさえずりと羽ばたきが響く。 「ふぅ」 茂みにかがめていたポニーテールの頭が上がる。 「真夢紀ちゃん、そっちはどう？」 十野間 月与（ib0343）が額の汗を拭いながら周りに声を掛ける。 「あたしはこの島大好きだけど、森の方は来た事なかったもんね」 『そうなんだ。マユキが大好きなら、大好きになれそう……』 月与に呼ばれた礼野 真夢紀（ia1144）と彼女のからくり「しらさぎ」がもんぺ姿で並んでしゃがみ、草刈り鎌を振るっていた。長い黒髪を後に束ねた背中と、真白ふわふわの髪を後で束ねた姿が仲良く作業で揺れている。月与、この様子を見てにこり。 「真夢紀さん、夢中みたいですね〜。……月与さん、次は道に張り出したこの枝を折っちゃいましょう。真世さん、ちょっと下がっててくださいね〜」 離れた場所からアーシャ・エルダー（ib0054）の声がする。 「うん、分かった」 「あたいがこっちを持てばいいね、アーシャさん」 深夜真世（iz0135）が素直に下がり、代わって月与が強力で腕を強化し反対の枝を掴む。 その一方で。 「こんなものかな」 からす（ia6525）が道に張り出した枝を山姥包丁で斬って具合を確かめている。真世はこちらに来て「うん、そんな感じ？」とか。 『んー』 その横からからすの羽妖精「キリエ」がいまいちとばかりに出てきた。そして何を思ったのか剣で低木をばっさばっさ。 「キリエ？」 『可愛いほうがいいじゃないですかー』 声を掛けたからすにウインクして舌を出すキリエ。低木はうっふんした腰つきの女性のようになっていた。 「よーし、そんなら私もっ！」 「真世様、お尻が見えますよ？」 キリエに負けじと下に置いていた山姥包丁を取り上げる真世の尻を、セフィール・アズブラウ（ib6196）が叩いた。きゃん☆と飛び上がる真世。 「膝から曲げて屈まないとお尻が醜く見えるだけです。見せないための、見せる動きを」 滔々とメイドのなんたるかを説くセフィール。 「二人とも森の整備でもメイド服なんですね？」 近くにいたクジュト・ラブア（iz0230）が突っ込む。 「メイド服は作業着です、クジュト様」 「作業着です〜」 ゆらりとサマーメイドドレスのスカートをひらめかし振り向くセフィールに、同じドレスのスカートを激しく波打たせ振り向く真世。 「……真世様、あとで海の家に」 「へ？」 これを見て冷たく言い放つセフィール。真世はガクブル。 「あ、ニーナも草刈り？」 クジュトは、悠然と歩いてきたニーナ・サヴィン（ib0168）を見掛けて目を輝かす。 「手が切れたら大変じゃない」 ニーナは微笑しはぐらかす。ビキニ「マゼンタ」を見せないよう、上着の前をしっかり合わせつつ。 「私は周りを気にしておくからアリス、お願いね♪」 空いた手で、続いて歩いていたからくりの「アリス」にひらり。『いいけど』と桃色髪で可愛らしく頷くアリス。少年型からくりだが。 この時、やや離れた大樹の影。 開放的なドレス「水姫」を纏った姿はサフィリーン（ib6756）。 「お兄さん……次の話題振らなきゃ」 クジュトを見つつ溜息。この声に超越感覚のニーナが気付いた。 振り向くニーナに手を振っておく。ニーナも気付いてウインクしつつ手を振り。二人の手首には白い貝殻のブレスレットが揺れている。お揃いだ。 『グァッ！』 「あ。ミラ？ 次はこの荷物を砂浜まで運んでね」 サフィリーン、相棒の駿龍「ミラ」に呼ばれ森の外に。刈った草を束ねて渡す。 その横を、一角獣人の愛染 有人（ib8593）が行く。 「日差しが強いね。楓は平気？」 『ご心配なく、姫。からくりには熱中症などないのです！』 上目遣いで聞いてくる有人に、相棒のからくり「楓」がきぱり。有人が気遣ったのは、楓の長髪や水着が黒だからというのもある。 『姫が熱中症になったら……』 楓、ちらと主人のもふもふ尻尾を見た。有人、ぎくり。 「あ。前に颯と来た時にはなかった物が結構あるね」 『そうなのですか？』 有人、海賊が新たに掘った井戸やなんかを指差し話題をそらした。楓の方は、羽妖精の颯から聞いていた尖月島に主人と来れたことに感謝しつつ微笑んでいる。 その井戸では。 「うん、冷たい。海賊たちもいい仕事してくれてるじゃない」 龍水仙 凪沙（ib5119）が海賊たちの掘った井戸から水を汲み上げ、持参した「陰殻西瓜」を冷やしていた。身体に密着する薄い布地で作られた水着「ブルーワンピース」はどこぞの世界ではスクール水着と呼ばれるようで。凪沙は胸元にはひらがなで「なぎさ」と書かれたものを着用。体のラインと白い腕と足が伸びる様子が強調され、健康的で眩しい。 「……おや？」 凪沙、聞き覚えのある声に気付き振り向いた。 「桃、奪還頑張ってくれたわね♪」 『わん！』 黒のレースで彩られた水着「モノトーン・プリンセス」を着た御陰 桜（ib0271）が、相棒の又鬼犬「桃（もも）」と歩いていた。桃の返事は誇らしく、さながら「御世話になっている島ですし奪還に尽力したのは当然です」と言わんばかり。 「お〜い、桜さ〜ん」 「あら、凪沙ちゃん。おいしそうなもの冷やしてるわね？」 手を振る凪沙ににこやかに返す桜。 「後で西瓜割りしようと思ってね」 「あら。こっちはあの浮舞台で尻相撲シよっかナって思ってるんだけど……」 楽しそうに後のお楽しみを話す二人。 「それまでは海賊の作った施設を確認しないとね」 「あたしは見回りも兼ねて森の散歩にイクわね♪」 凪沙が言うと、桜は桃を撫でて森のほうを見る。 「あ。ふる〜つ生ってないかしらねぇ？ 生ってたら、そこで冷やさせてね？」 「もちろん」 ここに有人たちが到着。 「尻相撲……」 『面倒な作業はさっさと終わらせてしまいましょう』 偶然聞いたイベントを呟く有人に、期待に満ちた楓が森林部へと主人を急かすのだった。 ● 場面は再び森林部。 「ふぅ……」 屈んで草刈りをしていたコクリ・コクル（iz0150）が顔を上げて汗を拭っている。 『草刈りなら妾に任せるのにゃ』 「え？ わっ！」 突然背後から掛けられ振り向いたコクリ、ビックリして横に避ける。 『どうにゃ？ 「鎌鼬」も結構役に立つにゃよ？』 「あ。百乃さんじゃない」 にゃふん、と得意げにしていたのは猫宮・千佳（ib0045）の相棒、黒い猫又の「百乃」だった。 『主が探してたにゃから、ここは妾に任せて行くにゃよ』 「千佳さんが？ うんっ。分かった」 というわけで砂浜に戻るコクリ。 「よっ、クジュトの旦那。楽しもうぜ！」 帰るコクリと入れ違いに浪志組の少女、ナキ＝シャラーラ（ib7034）がやって来た。 「ちょっとナキさんっ！ 葉っぱなんかで肌を切るかもしれませんから水着の上に何か羽織って下さい！」 ビキニ水着「ノワール」を着たナキの白い肌も露わな姿にクジュトが慌てる。 「ちゃんと着てるぜ？ ほら。この水着はこのボトムの下に……。完全な紐だけどな！」 「ちょっと……はっ！」 もぞ、と下を脱ぎＴバックを見せるナキ。クジュトが慌てたのは、ニーナがジト目でこっちを見ていたから。 「やーねー、浴衣に着替えた方がいいかしら。アリス、行くわよ？ あなたも着替えさせてあげる」 『俺も？』 ニーナとアリスも一区切り。 そして、並んで束ねた髪を揺らしている二人。 「これ以上炎天下に居たら倒れそう…明日早起きして続きやるからね」 『うん、わかった』 ふう、と立ち上がる真夢紀としらさぎも真似をして立ち上がる。 「うふふ。真夢紀ちゃんたち、本当に姉妹みたいね」 月与が優しく声を掛けると、真夢紀としらさぎが同時に振り返って幸せそうににこり。 「さあ、今日の仕事はきっちりこなしたし、後は久々にゆっくり遊ばせて貰うかな？」 ん〜、と伸びをする月与。 こうして作業組は海岸へ。 その頃、コテージでは。 ぴくっ、と機嫌良さそうに犬耳が動いている。 そしてくりる〜ん☆と回ってピンク地に白桜吹雪のパレオを腰にぴたり。 「だう、ぴったりだ」 にこぱ、と笑顔は犬獣人のミリート・ティナーファ（ib3308）。ちょいとローライズ気味にパレオを巻いたのは、尻尾を出すため。 「あら、ミリート。ピンクのビキニが可愛いじゃない」 一緒に着替え終わっていた真名（ib1222）が髪をかきあげつつにこり。 「はやぁ〜、真名お姉ちゃんは……」 「ちょっときわどいかしらね？ でもたまには」 真名、腰を揺らしてポーズ。紅のビキニは胸元・股ぐりともにやや大胆。健康的なミリートとは違った、お姉さんっぽい魅力でまとめる。 「尖月に足を運ぶのは何度目だったかな〜♪」 機嫌の良さそうな声は、柚乃（ia0638）。セパレートの白い水着を神秘的に着こなしている。 「久しぶりに夏の海辺ということですので、たまにはゆっくりと遊ぶことにしますか」 『遊ぶもふ！』 その隣では紗耶香・ソーヴィニオン（ia0454）が水面を思わせるような水色のホルターネックビキニをセクシーに。お供のすごいもふらさま「もふ龍」も元気にぴょんこ。 「夜も楽しみ。星が見えるといいなー♪」 もふら好きの柚乃はもふ龍を見ながら、両脇を無防備に上げ後ろ手で髪は結い上げて花飾りで纏める。胸先をつんとそらして踵を上げる足首にはアンクレットきらり。歌声に合わせて「聖鈴の首飾り」が小さくチリン。 「気分はセイレーン♪」 「ん、柚乃の水着はかわいいな」 上機嫌な柚乃に目がいった水鏡 絵梨乃（ia0191）、クスッと優しく声を掛ける。そんな絵梨乃は赤の花柄ビキニにパレオ。 そんな絵梨乃は今何をしているのかというと。 「その……着てみました」 へにょん、と猫耳を伏せて不安そうに胸元に手をやるリズレット（ic0804）と水着を見てやっていた。 「うん。かわいいぞ、リズ。やっぱり初めての水着はワンピースが安心できるしな」 「あ…ありがとうございます、水鏡様」 どうやらリズレットが初めての海だということで絵梨乃が水着を選んだらしい。確かにフリル付きの橙色花柄ワンピースだが……。 「でもこれ、生地が少し透けてて、その…近くで見るとビキニにも見える…」 リズレット、恥ずかしがってミリートの後に隠れてしまった。 「だう？ リズちゃん、絵梨乃お姉さんに選んでもらったの？ 大丈夫、可愛いよ」 「そうね。とっても華やかじゃない」 「ミリート様…真名様…」 二人に褒められ、ようやくぴょこんと猫耳を立てるリズレットだった。 「絵梨乃様、お待たせしました」 絵梨乃の方は、泡雪（ib6239）に呼ばれていた。見ると、黒ビキニ姿。バスト上部の丸みが際立つハーフカップのセンターに大きめな黒リボンが存在感を示している。 「泡雪もかわいいぞ」 「絵梨乃様、今回はモノキニではないんですね？」 「それより……下は布地が少なくて大胆だな」 「言わないで下さいませ、言わないで下さいませ」 くすっと微笑する絵梨乃に、きゃーばしばしと赤くなる泡雪。今日も仲良し。 そして仲良しといえば。 「よし。行くぞ、リィムナ」 「うん。リンスちゃん、行こう」 超薄手の白スク水を着て金髪を揺らすリンスガルト・ギーベリ（ib5184）と、やはり白スク水……はただの日焼け跡で赤い前掛に白字で祭、褌は後ろが完全な紐の前掛ビキニ「海祭」を着たリィムナ・ピサレット（ib5201）が手と手を取って走り出す。少女の後ろ姿を、今開け放たれたコテージの扉からの光が包む。 夏の日差しの砂浜が目の前に広がった。 ● 「コクリ、真世、遊びに来たよ！わぁ、２人とも水着よく似合ってるね」 「コクリちゃんにゃ〜」 浜辺に、空賊服の上着を羽織った天河 ふしぎ（ia1037）と、ふわふわブラトップのパレオ付きセパレート水着姿の千佳がいた。 「……ふしぎさん、その水着でいいの？」 「こ、これが普通なんだからなっ」 『イエス、マイキャプテン』 真世、珍しく（？）男性用水着のふしぎに突っ込む。真っ赤になって強調するふしぎに、彼のからくり「ＨＡ・ＴＥ・ＮＡ−１７」もこくこくと同調。 「わわっ。千佳さん、今日もたっぷり遊ぼうねっ」 コクリの方は抱きついて来た千佳を受け止めくるりん☆。 「みんな来たわね。それじゃ、第一回尖月島尻相撲大会、はじめようかシら」 ピンクの髪をなびかせ隣に立った桜が堂々言い放つ。 これを聞いたふしぎが微妙な表情をしているが……。 『安心してください、エントリーはすませておきました』 「そっか、ハテナ出るんだ」 『いえ、マイキャプテンの…ではハテナ、森林での作業に移ります』 「えっ？ …えーっ」 というわけで尻相撲大会の開催だ！ それはそれとして、波打ち際。 青くてフリフリなゴスロリ系ワンピース水着姿の静雪 蒼（ia0219）がいた。 「ほぅら、取りましたぇ〜」 ざぱーん、と水しぶきを上げて浅瀬で飛び上がる。右手を上げ海老反りの肢体が日の光を浴びて輝くが、無い胸つるぺた幼女体型なので期待した人はごめんなさい。その代わり、奇麗な足とお尻がとても健康的。 「やれやれ、蒼は元気がいいなぁ」 一緒にいるのは、兄の静雪・奏（ia1042）。紺色の長めの水着姿で首筋をさすっている。 というのも、いま蒼に首から提げていた「呼子笛」をむしりとられたから。 「ほらほら、取り返さないとうちが吹いてしまいますぇ〜」 「それは弱ったな」 自分の首に下げて、にまりと見返しながら笛をぷらぷらさせる蒼。奏は妹のおちゃめに寛容だ。 「それより、海の家に行って吹き口を辛子塗れにしまひょか？」 「そ、それは困る」 黒微笑とともに口走った蒼と、急に慌てる奏。 「なら、捕まえてみてつかぁさい〜？」 「こら。ボク以外の人が吹いたら大変だろう？」 途端にきゃいきゃい、ばしゃばしゃと追いかけっこ。 「蒼さ〜ん」 ここで白セパレート水着のコクリがやって来た。「コクリはん、今日もかわいいおすぇ〜」、「蒼さんも可愛いよぅ」とかいちゃいちゃ。 「奏というよ。妹がお世話になってるね、ありがとう」 「うちの兄ぃやぇ〜」 奏がコクリに挨拶すると、蒼は奏に纏いついていちゃいちゃ甘えまくり。心を許している様子にコクリも納得。 「それより、尻相撲大会するんだって。蒼さんもどう？」 「うちは……今日は兄ぃの保護者やし」 「保護者って……」 「かぁいらし娘はんを困らせんように、やね」 ばしゃばしゃ水を掛ける蒼。 「まったく、コクリが困ってるんじゃないのかい？」 「ほぅら、兄ぃが困らせた」 奏がばしゃばしゃ返すと蒼も喜んでばしゃばしゃ。 「あは、ボクは困ってないよ。それじゃ行ってくるねっ。賞品あったらおすそ分けするね〜っ」 手をふり走り去るコクリ。 「……いい娘じゃないか」 「当たり前おすぇ〜」 後ろ姿を指差す奏に、蒼は機嫌良くまたばしゃり♪ で、コクリが戻ったとき。 「トーナメントの枠はくじ引き。優勝したら参加した人から一日ちやほやされて姫様気分。そして最下位の人は……今日一日コレを着ること」 桜が大会説明をしていたのだが、突然水着「シェルビキニ」をちょうど取り出したところだった。布胸当ての部分に貝殻がついていて、隠す面積が小さい。 一斉に、ぽっとする泡雪、真世、ふしぎ。 「……赤くなって恥ずかしがってた人は何？ そんなに着たいの？」 桜の悪戯っぽい笑みに三人が「そんな…」、「違います〜」、「違うんだからなっ！」と否定したところで歌声が。 「尻相撲と聞きつけて〜♪」 桜たちに伸びる影。何やら頭部が異様に大きい。 「着ぐるみ自作し身に付けて、やってきましたプリプリマン〜♪」 どどん、とフランヴェル・ギーベリ（ib5897）が青いワンピ水着で登場。 問題は、頭部。 お尻の被り物の真ん中からフランが顔を出している。卑猥といえば卑猥な感じだったり。 固まる一同。 「ボクは尖月島に住む心優しいケモノ、オシリス！ ボクのお尻はここ。ではコクリ、対戦開始……」 「フランさん何やってるの？！」 「フランヴェルよ、汝は何をしておるのじゃ！」 「…がはあっ！」 嗚呼、リィムナのとび蹴りとリンスのぶん殴りでフランが飛んでいく。 「じゃ、十二人で抽選するわね？」 桜が紙縒りを作って差し出す。 というわけで。 「にゅふふ♪ こういうのは参加することに意味があるのにゃ♪」 狭い土俵桟橋への花道を千佳が行く。 「楓、しっかりね」 『問題ありません、罰ゲームなら姫が……いえ、冗談です』 続いて、有人に見送られてからくり楓が進む。ちなみに有人が水色と白の横縞ぺったんこトップに水色ひらひらボトムのセパレート水着。楓は黒の際どいモノキニ姿。 これらを遠くで見る人が。 『むぅ、でかいですね』 赤いワンピース水着の羽妖精・キリエが見やりながら感心している。 「胸か？」 黒いビキニに白いシャツを羽織って座るからすが突っ込んだ。 『いえお尻も』 「好きだね君」 『真世さんくらいが特にいい。それよりふしぎさん有人さんこういうのに無頓着なんでしょうか』 「容姿がアレだから仕方ないね」 『男が負けたら？』 「シェルビキニだね」 『隠れるですかね』 「見えても何を今更」 とにかくすごい言われようだ。 あれこれするうち、待ったなし。 「はっけよい、のこった！」 行司役のコクリの声が響いた。 「コクリちゃん、見ててにゃ〜っ！」 千佳、元気いっぱいにお尻を突き出した。 どぷ〜ん。 『……わざと負けてるわけではないのですが』 海に落ちてびしょ濡れになった楓が有人を見ると、尻尾を丸めてこっそり場所を移動していたり。 次の勝負。 「やるからには、負けないんだからなっ…って、はわわわわ」 ふしぎがどぷ〜ん。 「ふふ……ふしぎは尻が軽いわけじゃないんだけど、今は浮き足立ってたな」 勝者の絵梨乃は突き出したお尻越しに振り返ってなぐさめの言葉を掛けていたり。 「リンスちゃん、頑張れ〜」 「よし。数合わせとはいえ妾も出るからには……」 リィムナの応援を背に気合いを入れたリンスだが。 「やみくもにお尻を突き出してもだめよン♪」 対戦相手の桜、ひらり。 『わんっ』 リンス、派手にどぷ〜んするが又鬼犬「桃」がフォローしてぷかりと浮かぶ。 「リンスちゃん、大丈夫？」 「リィムナよ、頑張ってくるがよい！」 大きな浮き舞台に戻ってきたリィムナ、こうなったら恋人のリィムナを全力応援するだけだ。 「って、ひゃあんっ！」 リィムナ、リンスにお尻を撫でられ土俵へ。 「リィムナと対戦！ 剥き出しの尻対決だな！」 対戦相手はナキだ！ が、しかし。 「わーっ！ 双方失格〜！」 コクリの声が響く。 激しい尻のぶつかり合いで水着がぽろり。リンスがリィムナに、コクリがナキにタオルを掛けてその場をごまかす。 『今の、素早く隠したね〜。まったく見えなかった』 「みんなこうなるんじゃないかと思ったしね」 遠くではキリエとからすが感心していたり。 浮き舞台では、長駆助けにやって来たフランをリンス・リィムナ・ナキが連行して騒ぎが収まっていた。 「ふふっ、日ごろの鍛錬で鍛えたお尻です」 次に土俵に上がったのは、青いワンピース水着に身を包んだアーシャ。 「そんじょそこらのお尻とはワケが違います〜！」 ふりん、とひらひらスカートをひらめかせつんとお尻を突き上げてポーズ。 「あ、あはは……」 これには赤いワンピース水着の真世、頬を染めてたじたじ。 「いつもは共に戦うだけでちゃんとした勝負をしたことはなかったですよね。……さあ、かかってらっしゃい」 「う、うんっ。負けないんだからねっ！」 覚悟を決めた真世、騎士道精神に基きお尻を突き出すアーシャに自らのお尻を掲げるっ！ そして勝負は！ 「きゃん☆」 真世、どぷ〜ん。 腰の高い真世に、下から突き上げたアーシャの勝ち。 「真世さんのお尻、柔らかかったですよ〜」 「じゃ、最後はボクだねっ」 セパレート水着のコクリが登場。 「尻相撲……恥ずかしいですよね」 相手は、泡雪。 「わわっ！」 が、コクリ。気合が入りすぎて泡雪にかわされ、どぷ〜ん。 ● 「すまない。どうしても泡雪とやりたいんだ」 勝ち残ったの五人だね、と困っていたところで絵梨乃が申し出た。先に恋人と戦って、勝った方が準決勝に行くことにする。勝った方が今日何でも言うことを聞くという条件のスペシャルマッチだ。 「ボクが勝ったら、泡雪は一日敬語なしだ」 「じゃあ私は……」 とにかく、尻を合わせて勝負！ 「それっ！」 「えいっ！」 どぷ〜ん！ 「ぷはあっ！」 水没して顔を上げたのは、絵梨乃だった。気合いを入れて突き出した尻は奇麗にすかされた。「敬語なしの泡雪を見たいって気持ちもある。夫婦だから……」という願望。無欲に破れる。 さて、準決勝。 「にゅふふ♪ 次も……にゃ！」 「千佳さん、大丈夫？ はい、拭いてあげるね」 千佳、桜に敗れてコクリになぐさめられている。思い切りのいい千佳、対戦相手の桜に上手くかわされたようで。 その次。 「負けちゃったな、泡雪」 泡雪は、絵梨乃との対戦を見て対策を練ったアーシャに敗北。絵梨乃に引き上げられ……。 「でも、絵梨乃様に勝って言う事を聞いてもらってるから満足です」 「お姫様抱っこだな」 「今日一日、移動する度に、ですよ」 泡雪、真っ赤になりつつ満足げな微笑を見せる。 決勝。 「さあ、かかってらっしゃい」 「勝ち負けには拘らないけど本気でヤらないと楽しくないから全力でイクわね♪」 真っ直ぐ見据えるアーシャに、うふんと髪の毛を跳ね上げる桜。 「のこった！」 勝負は双方腰を落としての押し合いで一歩も譲らず！ 「やりますね、桜さん！ これなら……」 「あら、気合い十分ってトコかしら？」 むむっ、と合わせたお尻をずり下げ捏ね上げる動きを見せるアーシャ。桜の方は横に動いた。 奇闘術だ！ ――どぷ〜ん。 「危なかったわね♪」 勝者、桜。 一方の最下位決定戦。 「ちょ……ふしぎさ〜ん」 「はわわっ！ 事故、事故なんだからなっ！」 ふしぎは勢い余って対戦したコクリと一緒に絡まったまま水没。 コクリ、負け残り。 『姫を守ることができて良かったです』 続いて楓が身長差を生かしてコクリを落とし、ほっ。余談だが、もし負けてたら罰ゲームはやっぱり有人にさせるつもりだったらしい。 「よ〜し、コクリちゃんには悪いけど……」 真世も張り切って最後の戦いに挑むが……。 「きゃん！ ひっどい。どうして？」 コクリに押し出された。 『真世さん、腰が高いから』 「何事もふわついてるしね」 解説のキリエとからすが、遠くからそんな戦評。 罰ゲームは。 「こ、これ、胸がほとんど出る〜っ！」 「あら、真世ちゃんイイわね？」 真世はワンピから白いシェルビキニに着替えて出てきた。下はともかく、上は胸の丸みが貝からはみ出しまくりで。桜はそんな恥らう真世の姿を見てにっこり。 「真世さんだけにそんな姿はさせられません。ほら、こうすれば」 親友のピンチにアーシャが立つ。どこからか借りてきたシェルビキニを着けて出てくると、浮舞台の端に座って太股に長いパレオを巻きつける。 「はい、人魚姫の出来上がり。ほら、真世さんも」 「わ。アーシャさんキレー」 真世もパレオを巻きつけ人魚姫に。 「それー！」 そして一緒に海にダイビング。 一方、優勝者。 「あの……ボクたちがまっさーじしてあげるね？」 「あたしたちが桜お姉ちゃんを気持ちよくしてあげるにゃ！」 桜、浜辺で寝そべるとコクリが太股をもみほぐし、千佳が抱き付くように日焼け止め塗り塗り♪ 「言いだしっぺが勝っちゃって申し訳なかったかシら？」 うっとり身を任せながらも、ちょっと後ろめたそう。最後は作戦勝ちなのだから堂々としても問題ない。 ● もちろん、それぞれ海を楽しんでいる。 「ふふっ、じゃあいくわよー」 白く健康的な背筋が伸びる。 「そ〜れ！」 真名が球「友達」をさーぶ。赤いビキニに包まれた胸が揺れる。 真名とミリートがびーちばれーをしていた。審判は猫獣人のリズレット。 「だうっ！」 ミリート、横っ飛びで落ちるすれすれの球を打ち返す。さすが犬獣人。 ぽ〜ん、と上がった球はすぱいくしてくれとばかり。 「やるからには勝ちにいくわ！」 真名、全力でジャンプ。 もちろん渾身のすぱいく……。 「がおー☆」 なんと、ミリートがあの体勢からつめてブロックに飛んでいるではないか！ ぽ〜ん、と球が転がったのは、ミリート陣営。全力すぱいく、ミリートにとめられたが何とか押し込んだ形だ。 「はい、次はリズちゃん」 「……リゼ？ うーんと、頑張ってはみます……」 だうだうと上機嫌に犬尻尾を振るミリートから、しょも……と猫尻尾を垂らすリズが球を受け取る。 「えっと、そーれ」 「そうそう。いい感じよ」 えいっ、とさーぶするリズ。わざと甘い球を返す真名。 「う〜んと……」 リズ、見よう見まねですぱいくに飛ぶが……。 「あま〜い」 真名が身長差を生かし、リズの上から球をぶろっく。きゃんとお尻から落ちたリズは「ギブアップ…うぅ…」。 「はや〜。今度は私とリズちゃんで真名お姉さんと戦うよ」 「ちょっと二人とも〜」 ここで絵梨乃登場。 「リズ、ボクたちも入ろう」 「……絵梨乃？」 「泡雪お姉ちゃん？」 真名とミリートが目を丸くする。 絵梨乃が泡雪をお姫様抱っこしてるから。 「……ええと、尻相撲で勝っちゃいまして」 泡雪、すたんと下りて極上のほほ笑み。 場所は変わり、大きな傘を立てた日陰。 「ん……」 白く美しい肢体を黒のマイクロビキニに身を包んだ雁久良 霧依（ib9706）が仰向けに寝転がっていた。 「ん？」 優雅なひと時を過ごしていたが、急に何かが乗ってきたので目を開ける。 「雁久良さん、胸がおっきい〜」 紺色でぴっちぴちのスク水……ワンピース水着姿のファムニス・ピサレット（ib5896）の顔がアップで迫っていた。緩みきった笑みは幸せそのもので。そのままどこぞに顔を埋める。 「うへへへ、最高ですっ♪」 「……」 霧依、無言で傘をぐいっと下げてその場面を隠す。指にはネイルリング「真紅」が光っている。 そしてむにゅとかぺろとかずりっとか音がしていたが……。 「あん♪」 好きにさせていた霧依、ばっと両手を覆い被さるファムニスのヒップに伸ばす。水着の両脇を掴むと思いっきり引き上げてＴバックにすると。 ――ぎゅっ☆ 「ひゃあんっ。ごめんなさぁいっ…♪」 つねられびくっと上体を上げたようだが、どこか声に甘みのあるファムニスだった。 もちろん泳いでいる者も。 『もふかきもふ〜☆』 「ふうっ」 もふ龍が水に浮いてばしゃばしゃ遊んでいる横に、潜っていた沙耶香が上がってきた。手にした魚籠に貝類がたくさん詰まっている。 「ぷわっ！」 同じく潜っていた有人も。手にしたバヨネット「スラッシャー」に魚が刺さっている。 「沙耶香さん、有人さん、どうですか〜」 浜から真夢紀の呼ぶ声。隣でしっとりとたたずむしらさぎが手を振っている。 気付いた沙耶香と有人がそれぞれ獲物を掲げて大漁をアピール。 「さて。夜の浜焼きのため、磯の方でも何か美味しそうな物を掴まえてみたりしましょうかね〜☆」 というわけで移動する沙耶香たち。 『タコ発見もふ……もふ〜！』 もふ龍、蛸を見つけたが墨を喰らったようで。 「あ。沙耶香さ〜ん！」 ここで真世登場。 「……真世さん？」 あわあわする沙耶香。有人は心当たりがあるようで、「ははぁ」。 「真世さん、尻相撲で負けちゃったんですよ〜」 ざばん、と顔を出したアーシャと一緒にちゃんとシェルビキニ姿だった。 「負けましたか」 「いいもん。もふ龍ちゃん、沙耶香さん、泳ごっ☆ セフィールさんも」 どうやらアーシャのおかげで開き直った様子。岩場いたセフィールも誘う。 「まあ、折角ですし」 セフィール、はふぅと頬を掌で包みつつもその気になる。 この時、ニーナ。 「天儀の夏は暑いけど、こっちは心地いいわねぇ」 素足で波打ち際を散策していた。足の裏に感じるのは熱い砂だったり冷たく湿った砂だったり。白地に朝顔の浴衣姿で、泳ぐつもりはない。 隣に歩くのは、からくりアリス。着るは白地に朝顔の甚平さん。 「私とお揃い。相変わらず可愛いわね♪」 『俺は男だっ』 うふふ、と不満そうなアリスに微笑したところで橙の瞳が見開かれた。 「じゃ、イルカと遊びに行く人はこっちに」 クジュトが女性を先導していた。どうやら船をこぐようである。 「以前遊び損ねたから嬉しいなぁ」 タイルの良い体に水着「クィーンビー」を纏った月与がいる。かわいらしく柚乃が続いている。 「コクリちゃん、イルカさんと遊ぶにゃ♪」 千佳もコクリも、真名もミリートもリズも……。 「お兄さん？」 「ん？」 つん、とクジュトの腕をつつくサフィリーンも。 楽しそうな様子を眺めたニーナが、ちょっと口を尖らせたり。 いや、すぐにアリスの肩を両手で持って前に立たせて、すうっと息を吸い込んだぞ？ 「ねぇ……」 その呟きは浜でのんびりする霧依たち、収穫した海産物を受け取る真夢紀たち、泳いでいる沙耶香たちの横を抜けて一直線に――。 「ん？」 「どうしたの？ お兄さん」 櫂を手繰るクジュトに届いた。ニーナ、スキル「貴女の声の届く距離」を使ったらしい。 （……たまには私の声だけ聴いてよね） 遠くできょろ、とするクジュトに微笑し続ける。 「ねぇアリス」 好きなだけじゃあダメなのかなぁ 好きでいちゃダメなのかなぁ 『どうしたんだ？』 アリス、きょとんとする。 その向こう。クジュトはきょろきょろするのをやめ、じっとこっちの方を見ている。思わずアリスに隠れるニーナ。 「……なんでもないの」 声は返ってこない。自分の声は力ない。 「なんでもないのよ」 今度の言葉は力強い。クジュトがこちらを見たまま、船を漕いでいる。それを見て満足した。まだこちらを見ているようだ。前を向きなさい、と呟き心が晴れた。 船の方では。 「……ニーナ」 「お兄さん？」 クジュトはそう呟いていた。聞こえたサフィリーンが振り返り、首かくり。 船は行く。 ● やがて波間に見え隠れする背びれが見えた。 「見て、イルカよっ！」 「わわ、すごい…可愛いです……」 船上で指差す真名。隣のリズが身を乗り出し目を輝かせている。 「あ、寄ってきた。賢いな」 「よし、行こう！」 柚乃も身を乗り出しわくわくしている。月与はえいっと弓反りで身を投げ出し、ざぶ〜ん。 「真名お姉さん、リズちゃん、いくよ。がお〜☆」 続いてミリートもざぶ〜ん。 我も我もと続いて海に入る。イルカも久し振りに遊び相手が来たと喜んで近寄ってきた。体につかまれとばかりに身を寄せてくるぞ？ 「コクリちゃん、イルカさんと遊ぶにゃ♪ 島一周、どっちが早く回れるか勝負にゃ！」 「島一周はイルカさん、大変だよぅ」 千佳、イルカに乗って元気いっぱい行く先を示す。隣でコクリが頬ぽりぽり。 「つるつるのお肌に綺麗な形…可愛いっ」 サフィリーンは「イルカさん、撫でていい？」と語りかけてから抱き付き〜。もう一匹寄ってきてサンドイッチ上体に。仰向けのまま両脇を支えてもらってぷか〜っと小休止。 「幸せ……わっ！」 のんびりしたかったが、イルカが許してくれない。別の一匹がやって来てジャンプするとサフィリーンの上からざぷ〜ん。顔を出したときには捕まって泳いでいた。 「あはは。イルカさん、案内してくれるの？ じゃお願い」 そのままイルカの好きなように泳いでもらう。 そして歌声も。 さあ出発だ みんないこう♪ 目指すは宝の島に未知なる大地♪ ミリートがイルカに乗って歌ってる。 「未知なる大地♪」 「未知なる大……可愛いっ」 真名も歌い、リズは乗せてもらっているイルカをぎゅっと抱き締めている。 「たまにはお仕事休んでもいいよね」 働き者の月与もこの時ばかりはイルカに抱き付いて極楽のひと時。 「きゃっ！」 すぐに潜って背中に乗せられて好きに泳がれてと悪戯されるが。 「もふらさま大好きだけど、イルカさんもいいな♪」 やはりイルカに乗せられ好きに泳がれている柚乃、またがったまま撫で撫でしてだきゅり☆。 こうして午後いっぱい、イルカたちが飽きて行ってしまうまで一緒に遊んだ。 浜に帰ると沙耶香たちが浜で石組みの網でどんどん食材を焼いていた。 『ば〜べきゅーできてるもふよ〜☆』 出迎えたもふ龍とともにおいしそうな匂いのする方へ。 「おいしそうだな」 「はい、絵梨乃様どうぞ」 絵梨乃と泡雪はもう来ている。塩みの利いた焼き魚をふーふー冷まして、あ〜ん♪。 「奏兄ィもあ〜んやぇ」 「あはは……」 蒼も笑顔で奏に身を寄せ、焼いたサザエを差し出しあ〜ん♪。 「柚乃ちゃん、白房ちゃん連れてキたの？」 「桜さんの雪夜ちゃん、元気かな？」 桜は置いて柚乃のちっちゃな忍犬、白房を撫で撫で。柚乃の方は桜の又犬鬼、桃にご挨拶。兄弟犬の雪夜がいなくて残念だったが、それはそれ。 もちろん、皆は食べて飲んで「美味しい」、「最高」などと盛り上がりまくり。歓談の声は絶えない。 裏方はこの時も頑張る。 「沙耶香さん、素麺できました」 「出汁もできたから……真世さん、セフィールさ〜ん」 真夢紀が顔を上げ、沙耶香が真世とセフィールを呼ぶ。 「……大胆になりましたね」 「う。尻相撲で負けた罰だモン。下はちゃんとパレオ着けてるしぃ」 セフィール、真世の貝殻水着を見て手短に。真世の方は胸を隠すようにひらりん☆。 ――ぺしん☆。 「きゃん！」 「見せないための、見せる動き」 昼間教えたことができてないとお尻を叩くセフィール。結構スパルタで。かく言う彼女自身は優雅にパレオをなびかせ振り向いている。 「蒼さん奏さん、食べてる？」 「そういうコクリはどう？ 甘いものも欲しくなってるんじゃない？」 コクリが蒼と奏のところに顔を出したとき、デザートを勧められた。 「奏兄ぃにこんぽ〜と作ってもろぉといたんや」 蒼がはむはむして甘い顔をしているのは、果物のワイン煮込みをかけたかき氷を食べていたから。 「おいしぃおすな〜」 「そうだね」 蒼と奏が仲良く食べるものだから、コクリばかりか他の人も寄ってきたり。 「はい。桜さんは優勝者ですからね〜」 アーシャが桜にあ〜ん。桜の後では有人が彼女の肩をもんでいる。 「有人ちゃんも、アリガトね☆」 そこにひらりん☆とセフィールが。 「かき氷に珈琲がけ、ではなく凍った珈琲を削ったかき氷もあります」 ここで凪沙が登場。 「デザートならこっちよもあるよ。真世さん、早速割ってね♪」 「って、ちょっと。私西瓜の位置ちゃんと見てない〜」 早速ふらついていた真世を捕まえ、目隠し。 「仕方ない。あまりにそれてバーベキューの火に突っ込んだら大変だから……」 凪沙、真世ならそれがありうると一計を案じた。 ――どすん、どすん！ 「ええっ！ 何したの？」 音しか聞こえない真世、腰砕けに警戒する。 「横に逸れないよう『結界呪符・黒』で道を作っただけよ。とんでもないところに向かっても、これで大丈夫ね」 「そ、そう？ じゃ、思い切って行くねっ！」 凪沙の言葉に安心したま真世、安心して姿勢を正すと棒を振りかぶって堂々と歩いて行った。 ――がつん！ 「いった〜い☆」 なんと、いきなり横道に反れて結界呪符の角に頭をぶつけてばたんきゅ〜。 「ちょっと真世さんっ！」 実は意地悪をしてやや引っかかりそうに設置していた凪沙、まさかココまで派手にぶつかって、貝殻ビキニをポロリするとは思わなかった。結界呪符・黒をもう一枚出して真世の裸が見られないよう衝立にする。 それはそれとして、いろいろ反省しつつ遅くまで森林整備をしていたフランが戻ってきた。 その前に、ファムニスとナキが立ち塞がる。 「お疲れ様ですねっ」 「残飯出たからくれてやるよ！」 言葉とは裏腹に、かき氷と手作りできたての料理をそれぞれ差し出している。 「ふ、二人ともっ……！」 「捨てるの勿体無いからだからな？ 勘違いすんなよな…おわっ！」 「あ…」 料理そっちのけで押し倒した音が密かに響く。 そして、お休みの時間。 「皆様、今日は…ありがとうございました…」 リズが真名に抱き付いて寝ている。そんなリズにミリートがぎゅっと抱き付いて寝ていたり。むにゃ、という寝言の中に「ありがとうだよ」の言葉が。 別のコテージでは、リィムナとリンスが抱き付いてすやすや。ふたりともおむつ装着で安心安心♪。 散歩から帰って来た人もいる。 「尖月島、無事に取り戻せてよかったね」 「うに。こうやってまたコクリちゃんと一緒に寝れてよかったにゃ」 コクリと千佳が抱き付いてお休みなさい。 外ではまだ声が。 「隅々まで奇麗に洗ってあげる♪」 「ああ…全身がや―らかくて溶けちゃいそうです…♪」 霧依とファムニスは、星影に隠れて森の水場で洗いっこ。 「仲良き事は美しきかな 」 岩場では、からすが夜釣りしつつ聞こえない振り。 そんなからす、不意に視線を上げる。 砂浜に踊る人影がある。 そこに近付く人影も。 「奇麗な星ばかりか、素敵な舞まで堪能できてしまいました♪」 「だってこんなに夜の星や浜辺が奇麗だなんて思わなかったんだよ」 近寄ったのは柚乃で、一人踊っていたのはサフィリーン。 お互い目を見合わせてくすくす微笑すると、改めて満天の夜空を見上げるのだった。 とにかく開拓者たちは尖月島を堪能し、リゾート地としての魅力を広く報告した。 |
