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■オープニング本文 ここは泰国南西部に位置する、南那。 その最大の都市、椀那(ワンナ)にたたずむ、「珈琲茶屋・南那亭」で――。 「加来さん、加来さぁん」 サマーメイドドレス姿の女性店員が、厨房で働く褐色の肌に剃り上げた頭の大柄男性、加来(カク)の名を激しく呼んでいた。 「どうしました? また失敗か何かしたんですか?」 「違うんです違うんです。猫族のお客様が……」 ひょい、と厨房から顔を出した加来に女性店員がまくし立てる。 「珈琲が熱いって……」 と、勢いがなくなって何か考える風にしながらそんなことを言った。 「……やれやれ」 加来、仕方なく客席へと行く。 「ごめんなさい、お客様。熱かったですか?」 「違うにゃ。熱いは熱いにゃが、我々は猫舌。それはいいにゃ」 謝ると猫族の若い男性はそんなことを言う。くるっ、と振り返る加来。てへ、と舌を出す先の店員。どうやら騒ぐうちに何を伝えなくてはならないのか忘れてしまっていたようだ。 「それより、この店の常連からうわさを聞いたのにゃ。『ほうしゅうはスシーではないのか?』にゃ」 「は? 『ほうしゅうはスシー』?」 猫族の指摘を繰り返し口にしつつ首を捻る加来。 「ここは『南那の英雄』の馴染み店ときいたにゃ。その英雄たちが生魚の料理、『スシー』が報酬として欲しいといってたにゃ。報酬としてほしいくらいにゃから、とてもうまいはずにゃ。それが秋刀魚なら、もっとうまいはずにゃ。我々は『三日月は秋刀魚に似てるよ祭り』に、秋刀魚のスシーを所望するにゃ!」 「英雄……真世さんたちか」 ほわほわほわん、と深夜真世(iz0135)の姿が頭に浮かんだ。ここからの理解は激しく早い。 「きっと握り寿司ですね。天儀の料理です。……その英雄に話して、何とかしてもらいます」 「ホントにゃか? 今年はアヤカシに邪魔されずに秋刀魚は豊漁にゃから、秋刀魚はたくさん提供するにゃ。祭りもここらでやるにゃから、みんなで盛り上がればいいにゃ! ようし、みんなに報せてくるにゃよ」 喜び勇んで返っていく猫族男性。 「ふう、やれやれ」 ひとまず、顧客に満足してもらって安堵する加来だった。 ところが。 「まだにゃか〜?」 「秋刀魚のスシーはまだにゃか?」 「加来さん、加来さぁ〜ん」 その日から期待に目を輝かせる猫族が入れ替わり立ち代り、毎日毎日やって来てはねだるようになった。店員ちゃん、大忙し。加来はその度に「後日、通りで祭りをする許可が出て旅泰が準備をしてますからお待ちください」と説明……というか、なだめて珈琲を飲んでもらうのだった。 「……まあ、我々の祭壇もまだ用意されてないにゃし」 「でもスシー楽しみにゃ〜。今は珈琲で我慢にゃけど」 「……この店の珈琲、うまいにゃね」 「とりあえず真世さんが来てくれないとどうしようもない」 そんなこんなで、期待に溢れ今日も賑やかな南那の南那亭だった。 というわけで、椀那で猫族の祭りが催されることとなった。 深夜真世を通じて、寿司職人が多数連れて来られ寿司文化が南那に流入することになる。 当日は夕暮れから秋刀魚の塩焼きや肉饅頭に屋台、雑貨市が立つほか、猫族の秋刀魚奉納式典、猫族踊りなどが繰り広げられる。南那亭の屋台も立つ。 また、寿司大食い大会も開催されることに。 参加者開拓者はまず食いっぷりの手本を見せるため、大食い大会への参加が義務付けられた。 以下のルールに従って参加すること。 ※ルール 寿司大食い大会は、二十種類のネタを参加者が注文して食べ、なくなったネタを注文して「ワサビてんこ盛りネタ」が出る(ドボン)までに何カン食べたかを競う。つまり、参加者の好みによって消費速度に差が出るため、何を優先して食べるか、何を避けるかが勝負の分かれ目になる。 最初は寿司桶で各種一貫(計二十貫)出てくる。あとは、次の二十種類の寿司から好みで注文することとなる。 鮭(サーモン)・鮪(マグロ)・鰤(ハマチ)・鯛(タイ)・海老(エビ)・赤貝(アカガイ)・烏賊(イカ)・蛸(タコ)・鰹(カツオ)・鯖(サバ)・秋刀魚(サンマ)・鱸(スズキ)・太刀魚(タチウオ)・鮑(アワビ)・玉子(タマゴ)・海栗(ウニ)・鰻(ウナギ)・穴子(アナゴ)・帆立(ホタテ)・稲荷(イナリ) プレイングには、必ず自分の食べたいネタ一位〜三位と、食べたくないNGネタ一つを書くこと。 以下、テンプレート。 ▽▽▽以下、テンプレート▽▽▽ 1) 2) 3) NG) △△△テンプレート、以上△△△ 大食い大会後は、改めて好きなネタを食べたり、祭りを堪能したり屋台を手伝ったりできる。 |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)
18歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
エリナ(ia3853)
15歳・女・巫
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)
15歳・男・騎
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
八条 高菜(ib7059)
35歳・女・シ
捩花(ib7851)
17歳・女・砲
奏 みやつき(ic0952)
19歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ● 「よーし、これでいつでも始められるぜ」 天儀からやって来た寿司職人たちが額を拭う。 もちろん、すでに会場で待っている参加者もいる。 「お寿司食べ放題なんて天国よねえ。……あ、ウメさんじゃない」 兎獣人の龍水仙 凪沙(ib5119)もそんな参加者。前回握ってくれた職人を見つけて目を輝かせる。 「お。褒め上手のウサギさんじゃねぇか。ありがたいねぇ。よ〜し、腕によりを掛けて握るからな」 「それじゃもちろん、お寿司を食べるよ。食べつくすよ!」 この時、悪戯っぽく笑う凪沙の隣に座る者が。 「お寿司リベンジよ! 前と違っていっぱい食べられるようになったわ! 負けないんだから!」 前回も参加したエリナ(ia3853)だ。 「おおっ。可憐なお嬢さんじゃねぇか。嬉しいねぇ。またたくさん食ってな?」 ウメの言葉にこくりと頼もしく頷くエリナだった。 ここで。 「はうっ! うさねぇ発見なのです!」 狐獣人のネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)が知人を見つけてダッシュしてきた。 「あらネプも出るの?」 「はぅ! 負けないのですよ! 勝って尻尾もふもふさせてもらうのです!」 「そりゃいいけど、大怪我してたんじゃないの?」 凪沙の言葉に我に返るネプ。が、大怪我くらいで彼の勢いは止まらない。 「いっぱい食べて早く怪我を治すのです!」 「そうだな。傷を治すには美味いものを食べて栄養を取って休む事だ」 ぽんとネプの肩を叩いて隣に座ったのは、大柄な泰拳士・羅喉丸(ia0347)。 「怪我人大集合だわね」 「『武をもって侠を為す』。怪我は恥ずかしいことじゃない」 「ことじゃない、なのです!」 これまた偶然ね、といった感じで軽口を叩いた凪沙に怒るでもなく淡々と言う羅喉丸。これが気に入ったネプも羅喉丸に続く。 「お寿司食べ放題なんて天国ね! ここは天国なのね!」 そこへ新たに捩花(ib7851)がやって来た。傍目には普通な感じだが、小袖「春霞」を襷掛けしているぞ。 「め、滅多に食べられないし張り切って臨む所存よ!」 「はぅ、ライバルがいっぱいなのですっ」 捩花の本音を耳にしたネプが、エリナと羅喉丸を挟んで反応し釣られて袖捲くり。 「……大食い大会でネタがなくなったら山葵入りって」 新たに狸獣人の奏 みやつき(ic0952)が通りかかる。「へー」とか言いつつ近寄って着席。 「まあ、美味しいものがただで食べられるし、文句ないけどさ……わっ!」 みやつきの悲鳴は、頭の横に被っていたもふらの面を後から下ろされたから。「誰だ?」と振り返ると、色っぽく歩く女性がいた。 「そうよねぇ。美味しいものがただで食べられるし、猫族のかわい娘ちゃんもたくさん来てるし、いいわよねー」 八条 高菜(ib7059)がやって来て頬を手の平でくるみながら微笑している。 集まっている猫族の中で可愛い娘を眺めながら、すでに高菜は上機嫌。 「さあ、大食い大会! 優勝狙って頑張るぜぃ!」 続いてルオウ(ia2445)も到着。が、参加者の一人に憧れ……げふげふ、見知った姿を見つけて指を差した。 「え、エリナ? ど、どどうしてここに?」 「あら。私、寿司大食い大会の常連なんですもの」 指差すルオウに一瞬、ぱああっと嬉しそうにするエリナ。すぐに胸を張ってみせるが。ルオウの方は「いや……エリナが大食いはないだろ」とかごにゃごにゃ。 「あれ?」 同時に別の場所でも意外そうな声が上がる。 「何で沙耶香さんが板前さんの場所に?」 大会に参加する深夜真世(iz0135)が、屋台の中で鮮魚を下ろしている紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)に気付き突っ込んだ。 「大会はもふ龍ちゃんが出ます〜」 「頑張るもふよ〜☆」 ととん、と下処理した魚を柵に切り分けて横の板前に渡しながら沙耶香が言うと、真世の席の下からぴょん☆と沙耶香のもふら様「もふ龍」が飛び上がってきた。 それだけではない。 「おむー」 寿司をむしゃむしゃ食べながら人妖がふよふよ近寄ってきた。 「あれ? 狐鈴ちゃんじゃない。飛鈴さんは?」 梢・飛鈴(ia0034)の相棒の人妖「狐鈴」だった。真世はきょろ、と飛鈴の姿を探すがどこにもいない。 「わたいがしゅやくだ。参加するのは人妖の狐鈴。飛鈴はおまけ!」 むふん、と胸を張る狐鈴。真世、ほわほわと飛鈴の姿を想像する。もふら面を額に被ったまま、「ん?」と振り返り肉まんを食べている姿が浮かんだ。きっとどこかでそんな様子なのに違いない、と思うことにした。 「住民がわたいのいってたスシーに興味をもったおかげでまたひらけたわけだな。しかとかんしゃするがよいぞ」 真世が黙っていると狐鈴がむふふんとドヤ顔で独演会。その真世の頭にはルオウの仙猫「雪」が乗って尻尾で顔をぺちぺち。「ああんっ、雪ちゃん〜」とかぽわわんしてる真世に、「ボンが久し振りと言ってます」となどとごあいさつ。 それはそれとして。 「秋刀魚のスシー」 「我々も早くスシー食べたいにゃ」 「儀式で秋刀魚を三匹お供えするまでは先に食べるわけにもいかにゃいし……」 「早く儀式が始まればいいにゃ」 周りでは猫族が羨ましそうにしている。寿司という料理名も既に知識として行き渡っているようだ。 「むははー。これがけいもーしゅぎというやつだな」 「よっしゃ、それじゃはじめるぜ」 狐鈴が満足したところで、板前の言葉で大会が始まった。 ● 「まずは前の寿司桶の20種計20貫を味わってくんな」 ウメさんの声で一斉に寿司桶を開ける開拓者たち。早速好きなネタから手を付ける。 「へっへー! きたきたきたぁ! いっただっきまーす!!」 まずはルオウが豪快に両手を使ってかき込んだ! その食いっぷりにお預けを喰らっている猫族たちは喉を鳴らして羨望の眼差しを送る。 「やるからには負けたくないよねー」 みやつき、ルオウのペースに負けじと食べる。彼を知る者がこの積極的に争う姿を見れば意外に思うかもしれない。ただし、周りはみやつきの競争心に盛り上がっている。大会に参加した以上盛り上げるといういつもの頼まれごとを断りきれない性癖が出ているのかもしれない。 閑話休題。 「スシーぐいならまかせろー。くえればいい、それがすべてだ」 狐鈴も素晴らしい食いっぷりだ。周りの猫族からは「あんな体が小さいにょに!」と驚きの声。 「もふふ〜☆」 もふ龍も調子に乗ってほお張っている。「あのもふらさま、凄いにゃ」とかこちらも注目を浴びている。 「あぁ生きていて良かったと思えたよ! 目いっぱい食べるよ!」 感涙しそうな勢いの捩花。ただし、天を仰いで感謝しただけで実際には涙せずただひたすら食べている。食うことが感謝。そんな勢いだ。 その一方。 「ん。食べやすいように隠し包丁が入ってるのね」 凪沙は一つ一つをゆっくり味わって食べている。ルール上、早食いではないので問題はない。観客からは、分かる人には分かるらしく「ふむ」とか「ほう」とか声が上がっている。 「いやあ素晴らしいですよねお寿司、私大好きですよすっごく」 高菜がしっとりと食べている。一口味わっては頬を手の平で包んで、にこり。色っぽい仕草に歓声がわく。 「ねー、高菜さん。お寿司、美味しいよね〜」 横では真世がぱくついては高菜ときゃいきゃい。 「せっかくだから、秋刀魚はしっかり味わっておきたいところだな」 羅喉丸は、まずは祭りの主役である秋刀魚をじっくり味わうつもりだ。 「旬だし、脂がのっていて旨いんだろうな」 ぱくり。 「ん?」 意外な顔をする羅喉丸。 「これは……じんわり甘いな。うまい」 晴れやかな顔をして味わう。周りの猫族がこれを聞き、にゃーにゃーと今までで一番騒ぐ始末だ。 「脂が乗り切っちまうと焼いたほうがうまいだ。好みにもよるが、寿司にするにゃその前がおススメだぜ」 板前の説明に羅喉丸はうんうん頷く。 その頃、エリナ。 「なんかドロッとして気持ち悪い……」 ネタによってはそんなことも口走っている。これはマイナス印象を持たれまいか? 「ジルベリア育ちだからあまりお魚を生で食べるって経験なかったけど……」 そんなことを言いつつ、馴染み深い鮭を醤油につけてぱくっ。 「でも……とても美味しいです」 一転、とろける食感をそのまま伝えるような、とろける表情で味わっている。に゛ゃーっ! と辛抱たまらんような声が周りで一斉に響く。 そして、ネプ。 「これ、どれだけ食べてもいいのですよね! はぅ! 稲荷、あるだけくださいなのです!」 もきゅっ、とあっさり寿司桶の稲荷一つを真っ先に食べたネプが稲荷のお代わりを頼む。 「いや、ルールはまず全種類を食べること。話はそれからだな」 「ダメなのです? はぅ……」 板前に諭され耳へにょして海老に手を付ける。 と、すんすん鼻をすすり始めたではないか。 「……わさび抜き、お願いできないですか?」 さすがに下手に頼むネプ。これは聞き入れられたようだ。 ● やがて大会はそれぞれの注文戦に移っていった。 「今度こそ稲荷なのですっ!」 わざわざ席から立ち上がり主張するネプ、無事に出てきて尻尾ぱたぱたでもきゅもきゅ。 「やー外せませんよねー、これは私の稲荷寿司だーっとー♪」 高菜もおいなりさんに。やはり幸せそうにもきゅり。 「あっ。んじゃんじゃ、私も稲荷〜」 真世、あっさり二人の雰囲気に流された。 「美味そうな寿司ネタがたくさんあるし、折角だから俺は稲荷じゃなくて旬のものを貰おうか」 羅喉丸は蛸に行った。先に秋刀魚を食べているのであっさり系に走ったようだ。もちろん、蛸は食感も相まってあっさりしてうまい。 「ご主人さまは『途中であっさりしたものも食べるのよ』って言ってたもふね」 もふ龍も穴子や秋刀魚を食べていたが、沙耶香の事前の言いつけを思い出し意識して太刀魚を頼む。 「ん、蛸か。……鮭や玉子が好きだけど、あえて」 おっとみやつき、鮭のあと好みを外して蛸に行った。勝負を意識しているっ! 「鯛、おいし……」 「あっ。エレナさん、そうだよねっ。鯛、美味しいよね〜。あ、そうだ。次は烏賊なんかどう?」 真世、エレナと好みが同じと見て盛り上がる。 「それじゃ私も。……ルオウ?」 エレナ、ルオウにも振ってみた。 「烏賊は、ジルベリア出身だった親父が『デビルフィッシュ!』とか言ってやたらと忌避してたからなぁ」 ルオウ、そんなこといいつつ鮪を頼んだ。 「まぐろー」 そんなエレナとルオウの横で狐鈴も鮪を注文した。 「負けるかっ」 ルオウ、さらに鮪を頼み、がっつく。 と、ここで。 「ふぐっ!」 突然彼の様子が変わった。 涙目だが、何かを堪えている。ちら、とエレナを見た。気力を使う。男として堪えねばならんのだ、と背中が語る。 「う、うまかったぜぃ」 それだけ言ってルオウ、席を立って引いた。 漢である。 会場から大きな拍手が贈られた。 「ふはははー、わたいにすしーどうでかとうなどひゃくねんはやい」 最後の前の鮪を味わった狐鈴は「道」を説いて勝ち誇り食い散らかすが、二度と鮪は頼まない。 一方。 「海老お願いするです〜」 「海老! 寿司ネタはやっぱり海老が至高よね!」 ネプと捩花は海老で盛り上がっている。 「あ、玉子も欲しいのです! 甘いのがいいのです! 玉子より砂糖いっぱい入れて欲しいのです!」 「やっぱり大食い大会にはそれ相応の戦士が来るのね……! あたいも海老」 好き放題注文するネプに、「あたいも頑張らないとね!」な勢いでついて行く捩花。 「おむ、たまごー」 そして悲劇は起こった。 「ぶしゅん!」 ネプと捩花の後に玉子を頼んだ狐鈴が不自然なくしゃみをした。ちら、と半分残った寿司から玉子をめくる狐鈴。中身はシャリに窪みを付けまで山葵が詰まっている。 「しっかくだとー。だがわたいにはむだなことだー」 ふはははは、と寿司を食いまくる狐鈴。「まあ、これは失格後の食事と言うことで」と板前たち。 鮪と玉子が消えてから展開は速い。 「に゛ゃ゛〜〜〜〜っ!? か、からいのです…あぅ〜」 「幸せー、あとはお酒があればもっと……んぐっ!? が、ふぅ……」 稲荷でネプと高菜が同時アウト。 「えぐえぐ……」 「すんすん……」 鯛で真世とエレナがドボン。 「もふっ! ……もふ〜ん」 「玉子に山葵山盛りよりましだけど……」 もふ龍が穴子で、みやつきが鮭でそれぞれ鼻ツーン。 これで3人に絞られたぞ。 「た、食べ物とは到底思えない代物!」 捩花、海老でついにドボン。 「あ、最後の三人だからさらに山葵もっといたぜ?」 なんと、板前から酷い仕打ちがあった様子。 「お寿司…天国……」 でも捩花、食べきった。 涙腺崩壊、顔真っ赤にして悶えてはいるが大きな拍手が送られた。 ● 残るは羅喉丸と凪沙。 「蛸」 おっと、注文被った。が、これはセーフ。凪沙と羅喉丸の視線が合う。ともに勝負を仕掛けるつもりだ。 「帆立」 凪沙、先に注文。ゆっくり食べていた分、一貫分遅れていたのだ。これで数は一緒。 「赤貝」 さらに凪沙、攻める。 「じゃあ……」 羅喉丸、迷った。頭にあるのは太刀魚と秋刀魚。先に食べたのは、あっさり系の蛸。さらに今日は猫族の秋刀魚の祭り。 「秋刀魚」 験を担いだぞ、羅喉丸。 結果はッ! 「ぶっ! ……し、職人さん、旨い寿司だった。『ごちそうさま』」 羅喉丸、山葵てんこ盛りの秋刀魚の握りを食っても意地で矜持を保った。 「よおっし、優勝だよっ!」 凪沙、見事『寿司大食い優勝』の称号を手にしたっ! ● 後は、ルオウがエレナを連れて屋台めぐりをしたり、羅喉丸が相棒へのお土産を見繕いに行ったり、捩花がイカ焼きを買い食いしたり、沙耶香が南那亭の屋台を手伝ったり、高菜がそこで腹いっぱいになって寝ている狐鈴をつんつんしながら酒を飲んだり、みやつきが珈琲を飲みつつそれを見守っていたりしているが、優勝した凪沙の動向を特に追うことにする。 ――だだだっ、とんっ! どげしっ! 「わん、つー……」 「これぞ兎の助走付き前転フライングボディプレス!」 凪沙がネプに向かって技名どおり体ごとぶつかりふぉーるの体勢。真世が滑り込んで大地を二つ叩いた。ネプは凪沙に押さえ込まれてばたんきゅ〜。 「すりー!」 「うはは、姉の強さを思い知ったか〜♪」 「うさねぇ、ひどいのです〜」 カウントスリーで約束通り、ネプにプレスを喰らわせた。 その後、南那亭で。 「真世さんと初めて料理教室で練習してから、私なりに料理は練習してるのよ。でも、まだ寿司は握ったことがないからねえ」 「わ、私にはちょっとレベル高すぎかもっ」 凪沙と真世が握り寿司に挑戦している。 「私が見ててあげますね〜」 沙耶香も一緒だ。 「む〜。思ったより力加減が難しいわね」 「りんごの時みたいにウサギに……」 「真世さん、それは駄目ですよ〜」 とにかく楽しく過ごしたようだ。 猫族たちも秋刀魚三匹を祭壇に捧げた後、秋刀魚の握り寿司を堪能し大はしゃぎしたという。 |