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■オープニング本文 「うーんっ!」 青い空、高い太陽。 「やっぱりここは何度来ても気持ちいいなぁ」 セパレート水着姿のコクリ・コクル(iz0150)は目いっぱい伸びをして、ふう、とかかとを落とし脱力する。 周りでは寄せては返す波の音。 見晴らす景色は、ぐぅ〜んと横に広がる遠浅の砂浜。キラキラと波が輝き一面の白い砂がまぶしい。 ここは泰国南西部の南那。さらに沿岸の尖月島。 南国パラダイスなリゾート地はすでに海水浴シーズンに突入している。 ぱさっ、と首にくくっていた麦わら帽子を浜に投げ出すコクリ。夏の日差しに誘われるように走り出す。 なびくコクリの髪。 遠い背後で高床式で波にさらされていたり完全に海の上となって並ぶ別荘が流れていく。 ――ばしゃ〜ん。 入水して泳ぐ。 日の光でほてった肌が潤う感覚。 体全体の動きが確認できる心地好さ。 やがて、背泳ぎして空を見上げる。 「いいのかなぁ……、こんなにのんびりして」 思わずつぶやいたのは、少し前まで希儀の依頼で忙しかったから。 「いい、コクリちゃん?」 尖月島に来るまでに、交易船「チョコレート・ハウス」オーナーの対馬涼子は言うのだった。 「尖月島も、私たち小さな商人が開拓した大切なリゾート地なの。いつもなら珈琲茶屋の店員さんにお願いしてる保守依頼なんだけど、その開拓者さん、南那北部で大忙しなんだって」 だからコクリに回ってきた、と。 とはいえ、コクリとしてはしばらく冒険してないので物足りない。 「コクリちゃん。……仕事だけじゃなくしっかり遊ばないと、いい女性にはなれないわよ?」 この言葉でコクリは大人しくなった。ぺったんこな胸元に自分の手を当てて。 とはいえ、依頼仲間と一緒に尖月島入りすると男の子のように走り回って目いっぱい泳いでしっかり堪能しているのだが。 その時だった。 ――ブヒョゥ……。 「え?」 突然響いたホラの音にざばりと身を正すコクリ。見ると、大規模な船団が尖月島に近寄っているではないか。 そして驚愕の事実が。 「あーっ。あれって、海賊旗!」 頭蓋骨を意匠にした旗を目の当たりにして、慌てて引き返す。 「どうしよ。着替えてるヒマなんかない。……今日は一般の漁師の人はいなくて開拓者だけだから戦ってもいいけど……」 ここで思い直すコクリ。 涼子が言った「大切なリゾート地」という言葉が蘇ったのだ。 「ここで戦わないほうがいいよね」 実際、数的な戦力差は絶望的だ。この時点で海賊たちの志体持ち比率が不明なので無茶はできない。 というか、弓の装備は充実している。逃げるにしても無傷というわけにはいきそうにない。 ちなみにコクリたちは、中型飛空船「チョコレート・ハウス」でここまできた。現在チョコレート・ハウスは近隣に交易に出ているためしばらく戻ってこない。脱出するためには飛行相棒で離脱するか、もやいである小さな船を借りて逃げるしかない。どちらにしても撤退戦闘は避けられないだろう。 さて、尖月島でコクリと一緒に遊んでいた開拓者たちの判断は。 なお、尖月島に着た依頼は、「チョコレート・ハウスの護衛と海水浴シーズンに入った尖月島の保守管理」である。このため、コクリはここでは必要ないからと滑空艇「カンナ・ニソル」をチョコレート・ハウスに残している。各開拓者の同行している相棒もそれぞれの判断によって尖月島にいたりいなかったりするだろう。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
アーシャ・エルダー(ib0054)
20歳・女・騎
アイシャ・プレーヴェ(ib0251)
20歳・女・弓
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
朽葉・生(ib2229)
19歳・女・魔
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ● 尖月島の高床式別荘の中で。 ――さらりん☆。 黒い長髪がなびいて白い肩がくねった。 振り向いた女性は、雁久良 霧依(ib9706)。 豊満な胸が激しく揺らいだが、身に着けた布面積極小の黒マイクロビキニは弾けることなく抑える。 「んふふ。可愛い子が多いし、今日は楽しむわよ〜」 これからビーチに繰り出して繰り広げるであろうきゃっきゃうふふをぽわわんと桃色に妄想。きゅ〜んと両手で自らの胸を抱き締めるのだったり。 「あら」 その後で、身を屈めた女性が荷物を確認して意外そうな声を出している。 「あたしには可愛すぎる気もするけど、折角からくりメイドのプラムちゃんが選んで荷物に入れてくれたんだしね♪」 とか言いつつ服を脱ぎ、足を踏み換え小さな布切れに足を通す。 きゅっ、と引き上げた肩紐をぱちんと離し、ピンクのフリル付きワンピース水着の上からくびれたウエストをさすったり。 「尖月島の保守管理かぁ、遊べそうなのもイイけど桃の気分転換にもなるとイイわねぇ♪」 髪の毛をポニーテールにまとめつつ振り向いた顔は、御陰 桜(ib0271)だ。忍犬の桃が外できっとお待ちかねヨね、とるんるん気分。 「そろそろ行こうか?」 実は一緒にここにいた水鏡 絵梨乃(ia0191)が冷静に二人に言う。 「あら、絵梨乃さん。私と色違いのお揃いねぇ」 霧依が横に並ぶ。 確かに絵梨乃、霧依のように布面積が小さめの白ビキニ水着で豊満な胸を包んでいる。 「霧依より面積は少なくないぞ」 「じゃ、イきましょ♪」 絵梨乃がぽり、と頬を掻き、桜がばばんと更衣室の扉を開けてビーチに出る。 波音響く南国リゾート地、尖月島が三人娘の前に広がるのだった――。 ● 「にゅふふ♪コクリちゃん待つにゃー♪もう少しで捕まえるにゃよ」 浜辺では、黄色いビキニ姿の猫宮・千佳(ib0045)がうふふな感じで砂浜を走っている。 「千佳さん、捕まえるだけじゃなくボクに猫耳つける気満々だから捕まらないよ〜っ」 その前には、きゃっきゃと逃げる青いセパレート水着のコクリ・コクル(iz0150)。確かに追っている千佳は猫耳カチューシャを手にしていたり。 『ああ、海へと連れだされないこの幸福…。ずっと続く事を祈るにゃー』 そんな二人を遠くに見る木陰で、千佳の相棒の百乃(猫又)がマジカルワンドを枕にお腹出して寝ている。だらりん、と脱力した仰向け姿は本当に幸せそうで。 また、この景色を遠くから振り返っている白い姿がある。 砂浜の中央にある大きなコテージのテラスに立つ朽葉・生(ib2229)。爽やかな雰囲気の女性用水着「ホワイトワンピース」に身を包んで、髪と腰に巻いたパレオを潮風に洗われるに任せている。 「コクリさんも千佳さんも羽を伸ばしてますね。……ヤタも行って来なさい」 相棒のヤタ(迅鷹)を空高く放った。 ばさり、と二対四枚の翼を広げ、ヤタが気持ち良さそうに大きく羽ばたくのだった。 ――ひゅおぅ。 砂浜に落ちるヤタの影が、一人の人物に落ちた。 「槍烏賊さん、槍烏賊さん♪ 槍烏賊さんもやっぱり海が好きですね♪」 瞳と同じ色の青い水着に身を包んだ金髪少女、シャルロット・S・S(ib2621)が愛用の巨大イカ……ではなくて、イカにしか見えない槍、「槍烏賊」をぶんぶん素振りしてご機嫌だった。 「シャルさん、元気ですね〜。でも、あまり日焼けすると後でヒリヒリしますよ?」 ここで真紅のビキニを着たアイシャ・プレーヴェ(ib0251)がやって来た。ジプシークロースをひらりと体に纏わせて微妙に隠したり隠さなかったり。 「ヒリヒリはいやですよ〜」 「はいはい。それじゃ、ここに横になってください。土をかけてあげますからね〜」 トラップなどの工作はお手の物。アーシャがぱぱぱっと作業して、あっという間に顔だけ出して横になった、砂蒸し風呂状態のシャルが完成した。 「これで日焼けの心配はなくなったですの」 「そういえばシャルさん、相棒は?」 「日焼けが心配でしたのでアーマーのレーヴェ弍式はチョコレート・ハウスに置きっぱなしですの〜」 ちなみにまったくの余談であるが、シャルのレーヴェは「駆鎧の鋸刀」を装備してたりする。主人愛用の槍烏賊に負けず劣らずこだわった武器である。ていうか、アーマーに日焼けの心配はいるのだろうか? と、ここでアイシャを呼ぶ声。 「アイシャ」 じゃり、とサンダル「小悪魔」を履いた足を進めるのは。 「お姉? 泳がないんですか?」 振り向くと、アーシャ・エルダー(ib0054)がいた。 湖のような青色で裾広がりのドレスを着て堂々と立つ。小脇に泰国産「めろぉん」を抱えて棍「彗星」を持っている。 「お姉、無駄に気合い入ってますね……」 苦笑しながらめろぉんを受け取りセットするアイシャ。 「お。アーシャの水着は大胆だな」 「きゃあん!」 一方のアーシャの方は、浜に出てきた絵梨乃にスカートの裾をこっそりぴらり捲くられていたり。 「おっと、邪魔してすまない。はい、目隠ししてぐるぐる回って……」 真っ赤になって振り返るアーシャにぱぱっと目隠ししてぐるぐる回す絵梨乃。 「よし!」 「きゃっ! ……ふふふ〜、めろぉんはどこにあるのかな〜〜?」 最後にぱしん、と絵梨乃にお尻を叩かれ飛び上がるが、スタートと知って気合いを入れるアーシャ。 というか、殺気をまとったまま明後日の方に行ってるぞ! 「あ、あの……アーシャ先輩?」 シャル、身の危険を感じ取った。 が、砂に埋まって逃げられない。恐怖のあまり声もあまり出ない。騎士学校時代に習った、身の危険を感じたらじっとして声を潜めろとの教えを忠実に守っている。いや、悲しいかな体に染み付いた習性だ。でも、今回はそれは拙いような? 「えーと、これは危ないのかな……」 アイシャは笑って見ていたが、さすがにどうしようか迷い始めている。 この時。 「コクリちゃん、捕まえたにゃ〜っ!」 「わ〜っ!」 「きゃ〜っ!」 どし〜ん。 千佳の抱き付きタックルを喰らったコクリが勢い余って横からアーシャにタックル。三人仲良くもつれて砂浜に倒れ込むのだったり。 「あ。シャルも〜、シャルもまざるですの〜」 この様子を見て、シャルはいやいやするようにぐいぐいを体を揺すって砂から出たげ。 「はいはい」 アイシャはようやくシャルを出してあげるのだった。 ● それからしばらくして。 「桃〜、そろそろ休みましょ♪」 波打ち際でピンクのフリルをひらめかせ振り向く桜が忍犬の桃を呼んだ。 「わんわん!」 ぱしゃぱしゃ水しぶきを上げて主人に寄ってくる桃は、はうはうと飛び跳ねじゃれてきて「私はまだ大丈夫です」と言っているふう。 「イイから、イイから♪」 桜の方は慣れたもので、もふもふして落ち着かせる。これには桃も「く、くぅ〜ん」と手の平を返すように大人しくなる。 「それにしても、今日はいるかいないのねぇ?」 「ええ。私のヤタも警戒しているようですね」 首を傾げたところで生がやってきた。ばさり、と翼を広げ彼女の相棒、迅鷹のヤタが着地した。 「生ちゃんのそれに、いるかが怯えたとかは?」 「それ以前に、見掛けないようですね」 桜の突っ込みにさらりと答える生。 「ねえ、コクリちゃん知らない?」 ここで釣竿や釣果を入れる麻袋を手にした霧依がやって来た。 「あら、霧依ちゃん、それは?」 「これ? 最近、樹理穴踊りに興味を持ってるのよねぇ」 色っぽく聞く桜に、「コクリちゃんにも是非教えたいものだわ」とか手にした羽扇「黒八咫」を見せる霧依。生は自分の扇「精霊」を見て「樹穴踊りですか……」としみじみ。 「コクリちゃんなら、あそこかシら?」 沖を指差す桜。 コクリがそこで泳いでいた。 「って、ちょっと」 霧依の表情が即座に変わる! 「まさか……」 生も身を乗り出して遠くを見る。 「海賊、かシらね」 桜が行ったところで、ぶひょぉ〜という法螺貝の音が響いた。 沖から髑髏の旗を掲げた船団が近寄っているのだ。 しかも数が数。押し寄せる大小の船は計三十隻はいた。 「ばかんすの邪魔するなんて懲らしめてやりたいとこだけど、装備が万全じゃないし多勢に無勢かしらねぇ…?」 「これでは海水浴…もとい、保守管理は難しそうですね」 桜がぺたぺたと自らの水着姿を確認しながら言うと、生はぎゅっとパレオを外れないよう結び直し、「イルカの声が聞こえないはずですね」などと納得した様子。 「コクリちゃんとの甘いひとときがっ…。いいわ、お相手してあげる♪」 霧依はぐぐぐと拳を固めたかと思うと踵を返してどこかへ行ったぞ? 「霧依さん!」 「みんな、戦わずにいったん逃げて様子を見よう!」 振り向く生だが、今度は海側からコクリが戻ってきた。 「そうですね。海賊撃退は難しいと判断します」 「うに、流石に多すぎるにゃね。コクリちゃん撤退にゃー」 生の声に被る形で、頭に百乃を乗せた千佳がやって来る。手には愛用のマジカルワンド。 「コクリちゃん、大変ですの〜っ!」 「コクリさん、これは逃げたほうがいいですよ?」 さらにシャルが走ってくる。さっきまでは砂まみれだったが、今は泳いで洗い落として清楚な白い肌と青い水着姿である。続くアーシャは望遠鏡を持っている。敵をじっくり見た上での判断のようだ。 「でも、どうしよう」 「私がセルムで出ます。……アイシャ?」 コクリの問いに毅然と答え振り向くアーシャ。 「やれやれ、バカンスに来ておきながら残念な話ですね。……もちろん、ジェイドで続きますよ、お姉」 アイシャがタオルを羽織って応じる。うん、と頷き合うと砂浜奥へと走るのだった。 「んー……久しぶりの依頼なのに遊びに来たから罰が当たったかな。来るって分かってたら、こんな恰好はしなかったんだが」 入れ違いに絵梨乃がやって来た。 「とにかく、尖月島で戦って荒らしたくないから逃げよう。飛行相棒の人が時間稼ぎしてくれるみたいだから、ボクたちは早く船の場所に……」 コクリは言って走り出す。シャル、千佳、生、桜が護衛に付くべく彼女を追う。 残った絵梨乃は空を見上げて頷くと、何やら悪戯そうな笑みを浮かべ海に駆け出していったではないか。 その間にも、海賊船団はどんどん近付いてくる。 ● 「よしっ。みんな、乗って!」 桟橋で小さな手漕ぎの船に乗ったコクリが皆を乗せてぎいぃ、と漕ぎ出す。 同時に、遠くで駿龍と鷲獅鳥が飛び立った。 「さあ、護衛に急ぎますよ〜」 鷲獅鳥「セルム」の背にひらりと乗ったアーシャが戦況を見る。海賊船は足の速そうな小さな船と、結構収容力のある中型船で構成されていた。 「あ」 そして気付いた。 何と、絵梨乃が海賊船に向かって泳いでいたのだ。 いま、ひょ〜い、と薄い桃色の影が急降下して行った。彼女の相棒、迅鷹の「花月」だ。 その、絵梨乃。 「おぉい、交渉だ。上がるぞ?」 「あぁん? 美人なら歓迎だぜ。ただし、上がれたらの話だがな」 中型船の下から呼ぶ絵梨乃に、ぎゃははと下品な笑いで答える海賊野郎ども。 「それじゃ、遠慮なく」 「うおっ?」 まさかの表情の海賊達。 絵梨乃、急降下してきた花月と「友なる翼」で同化すると背中から光り輝く翼を生やし、そのままふわりと甲板まで難なく上がってしまったのだ。 「さて、と。ここは大切なリゾート地だから、できれば他をあたってくれないか?」 「海のお宝は宝石だろうがリゾート地だろうが俺たちのもの。美人の姉ちゃんも俺たちのもの。ってなぁ?」 まったく話にならない。絵梨乃の白ビキニ姿を前にしてはまあ、仕方のない部分もあるかもしれないが。 「姉ちゃんも俺たちのモノになりな」 「……コクリたちの時間稼ぎにもなりゃしない」 一斉に襲い掛かってくる海賊に、転反攻でかわしてハイキック。 「うっ、ひょぉう!」 高々と上がる太股と白ビキニに海賊達は歓声を上げる。やられた仲間そっちのけで襲い掛かってきたぞ? 「志体持ちばかりみたいだな」 絵梨乃、蹴った手応えからそう判断すると、ズダン。崩震脚を踏み込んだ。間合いを詰めた敵はこれでぐらり。 「あっ。こいつ!」 「蹴りはしてくんねぇのかよ?」 今度は遠距離からの弓攻撃。もっとも、色っぽい姿見たさに威嚇でしかない。 「手の内は分かったし、もういいか。……花月、頼む」 海を背に戦っていた絵梨乃は海に身を投げた。 いや、花月がそれを急降下で追った。 直後、舷の下から光の翼を生やした絵梨乃が浮かび上がり、コクリたちの方に飛ぶのだった。 「おっと。後のお相手は……」 ここでアーシャ登場。 「おい、上から新手だ!」 「何と大胆なっ!」 「くそっ。白黒つけてやる!」 甲板の海賊たちが上を見て騒ぐ。この言葉に反応するアーシャ。 「ちょっ、やだ、みんな見ないでくださいよ〜」 風にひらめき見えそで見えないドレスの裾を押さえる。もちろん海賊たちがどこを見ていたかは謎だ。 「ねえ、アイシャ、皆に何とか言ってってば〜」 「あら、お姉の水着。大人気ですねー。や、見せるのはお姉に全面的にお任せしますので。私はこっちで対応しますよ」 駿龍「ジェイド」に乗ったアイシャが横につき、ロングボウ「ウィリアム」を見せる。ちなみに秘密だが、アーシャの本日の水着は黒地に白水玉の大胆なビキニ。海賊達に見られたかは不明だが、先の彼らの叫び声は見事に一致している。 「うわ〜〜ん、絶対に許さないんだから!」 見られた、と判断したアーシャが羞恥に真っ赤になりながら怒りのオーラショット。が、射程外。代わりに矢が飛んでくる。 「くやし〜〜っ。セルム〜〜」 「グァ」 主人に頼られ、セルムが真空刃。さらに飛翔翼で逃げる。見事主人の期待に応える。 「さて。お仕置きに格の違いを見せつけてあげないといけませんね」 入れ替わりに、アイシャのジェイドが高速飛行で突っ込んでくる。 「五文銭!」 「おわっ!」 射手の股を抜き甲板に突き刺さる一撃。そして離脱。ラッシュフライトで翻弄しつつ、今度は別の大きめな船に襲い掛かった。 「ジェイド、『火炎』!」 ごぉう……。 今度は帆船の帆布を狙った。 「……さすがに燃えにくくしてますね」 こちらの方は延焼は狙えなかったようで。 とにかく、航空部隊が先頭の敵を抑えるのだった。 ● もちろん、敵は多いのでこの隙に先頭船団を追い越している。 「おい。なんだ、ありゃ?」 そんな海賊は、間近に迫った砂浜で奇妙な姿を見ることになる。 「お客さんが一杯♪ 嬉しい♪」 何と、滑空艇「カリグラマシーン」を浮かべた水上ステージで、お尻をくねらせうっふんしている霧依がいるではないかっ。もちろん衣装は黒いマイクロビキニのまま。 そして、艶然とした笑みを浮かべ黒い羽扇「黒八咫」を振るっ! 合わせて腰も振るっ! 豊かな胸が、長い黒髪が揺れるっ! 「ちゃ〜ちゃっちゃ、ちゃちゃちゃ、ちゃ〜ちゃっちゃ……」 そうっ。 これが。 これが、樹理穴踊りっ! 「フォー!」 体をくねらせて扇情的ダンス。海賊の注目集めている。 「うっひょう。いい島にいい姉ちゃん。頂くぜっ!」 霧依に釘付けの海賊達の船はさらに浜に急ぎ接近するがその時っ! 「あっつーい♪」 なんと霧依、ビキニトップを脱ぎ捨てたっ。 自由にはじける胸は奇跡的に舞う長い髪に微妙に隠されている。それがまた海賊たちの視線を引き寄せる。見えてはいけないところまで見えていたらこうはならなかったろう。なにが言いたいかというとつまり、「あくまで見えてない」。 が、ここから地獄が始まる。 「お相手感謝♪」 ――どご〜ん。 霧依のメテオストライク炸裂。 自らの肢体で敵を集めてからの範囲攻撃。なんと狡猾。 立ち上る水柱、揺らぐ水面と混乱する中、霧依は急起動で一気に空へ。逃げるかと思いきや反転して、麻袋から砂を巻いて目潰ししたりアークブラストやらメテオやら放ったり好き放題暴れるのだった。 もちろん、左手で胸を抱き隠したまま。 そしてコクリたちに接近する海賊もいた。 「ブリザーストームで加速にゃ」 「千佳さん、魔法で反動推進はちょっと……」 千佳が少しでも船速を上げようと後方に魔法発射。生が苦笑しているが。 「敵の射線がキたわよ?」 桜が振り返って注意を促す。もう右舷から来る敵の射程に捕らえられている。 「コクリさん。このまま浅瀬を逃げてください。……ヤタ?」 生、ヤタを呼んで立ち上がった。すぐに飛んできた迅鷹はきらめく光となって生に纏いついた。「金剛の鎧」の鎧である。 「うまく高さが出ればいいですが」 続けざまに、アイアンウォール。 手をかざした前方に、ざばりと黒い壁がそそり立った。浅瀬を逃げるよう指示した理由である。 とはいえ、幅はない。横から来る敵に対し、要所で連発することとなる。 そしてここでとんでもないことが。 「あっ!」 不意に声を上げたのは、コクリだった。 何と、敵の船は射線を防がれたと見るや空を飛んだのであるッ! 「偽装飛行船……」 コクリ、八幡島艦長から聞いたことのある言葉を呟いた。後の話となるが、この情報は貴重だった。 とにかく、上からも射線が来ることになる。 「ボクに任せろ!」 ここで、光の羽根で飛んできた絵梨乃登場。アイアンウォールを足場にして再び上昇し、飛空船を混乱させる。 半面、下では敵の小型船が壁を迂回して肉薄していた。 「下はシャルに任せるですの〜」 シャル、槍烏賊とともに飛び込んだ。 そのまま潜行して泳ぐ・泳ぐ。重い武器を持っているはずだが、そこは気力で。というか、モノがモノだけに海では便利か? 「むぐぐ……」 海中で息が続かなくなりそうになるが、シャルは根性の子。ここで暴走せずしてどこで暴走するの気概でついに敵船底に接近すると……。 (えい、ですの〜っ!) オーラドライブからユニコーンヘッドで下から一気に槍烏賊を繰り出し突き上げるっ! 「おわっ」 「今にゃ! コクリちゃんとの至福の時を邪魔する人にはお仕置きにゃ!」 『せっかく今回は濡らされず幸せだったのに…この恨みはしっかりぶつけさせて貰うにゃよ!』 船が揺れて浮き足立つ敵に、千佳がホーリーアロー。千佳の頭の上の百乃も八つ当たりの鎌鼬だ。 ――ざばっ! 「近寄ればこっちのモンだぜ!」 「わっ!」 驚くコクリ。敵が泳いで乗り込んできたのだ。 「あら。もう満員だから勘弁シてね?」 「おんっ!」 桜が胸元をちらりん、と開いたかと思うと明山の拳石を取り出しげしりとストライク投球。続けて桃が立体攻撃で舷を越え追撃。水蜘蛛、水呼吸と自在の戦いを演じ、後続の潜行部隊に打撃を与える。そして桜は投擲を続け連携を見せる。 「連携はさせないにゃよ〜」 千佳はブリザーストームを敵の船と船の間に放ち牽制する。 「戻りましたですの〜」 この隙にシャル、帰還。メテオストライクを放った生がずぶ濡れのシャルを引き上げる。桃はひらりと立体攻撃で上がってくる。 「あ、そういえば」 「にゅ?」 ここで生と千佳が気付いた。 メテオの後、波が来るのだ。 「今度は敵が真後ろに来るように漕げばいいんだねっ」 コクリ、気付いて船を操る。もう沖に出て浅瀬はないので渡りに船だ。 「これでどうですか」 「しつこい人達には痛いお仕置きにゃ。必殺、マジカル♪メテオにゃー!」 『面倒なので燃やしておくにゃ』 俄然、メテオ攻撃が盛り上がる。ついでに百乃は黒炎破。よほどご機嫌斜めらしい。 そして敵の追撃もなくなった。 尖月島の上陸に専念したからでもあるが。 戻って来る絵梨乃、霧依、アイシャたち。 「このまま大人しく撤退なんて。次に会ったら命無いと思いなさいね〜〜!」 尖月島を振り返り、アーシャがい〜っと悔しがる。 胸に去来するのは尖月島開拓に携わった時の蟹型アヤカシ退治に井戸掘り、どっちがどっちでしょ……。 「すぐに対策を練るからねっ」 もちろん、ひとまず本土に撤退するがコクリも奪還する気満々である。 |