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■オープニング本文 ※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 「はっ!」 突然の展開で申し訳ないが、泰国南西部に浮かぶリゾート地、尖月島で水着姿となってバカンスを楽しんでいたアナタは潮風に乗り流れてきた濃厚な瘴気に包まれてしまった。 意識も一瞬、飛んでしまう。 ――きゃーっ、きゃーっ! 次に気がついたときには、どこかジルベリアの城内やアル=カマルの宮殿内を思わせるような石畳の街中にいた。往来を、変わった服装の人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。両側は各種商店のようで華やか。明らかに、ついさっきまでいた遠浅の砂浜と青い海が広がる尖月島ではない。 「ゾンビだ! ショッピングモールにゾンビの大群が出現したぞっ!」 「どうして警察は来ないんだ?」 「くっ。このゾンビの大群、速いのと遅いのがいるぞ!」 「た、たすけてくれぇ〜」 がしゃ〜ん、ぱり〜んと商店街のガラスが割れる音。 のっそり歩きじりじりと囲みにはいるゾンビがいると思えば、壁を使って三角飛びまでする俊敏なゾンビもいるようだ。 と、その時。 「ほ〜っほほほ。舵天の空を飛び越えて、やって来ました『えんぢぇるメイド』!」 お玉ステッキをかざしながらゾンビどもを指揮している人物がベンチの上にいた。 胸の谷間を強調する、露出の高いミニスカメイド服姿でそそり立つは南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135) 。 尖月島で着替える前だったためか、水着姿ではない。 「ゾンビさんたち、やっちゃってください。この世界の甘いものも可愛い服も、みぃ〜んな私のものよっ」 「そこまでだ、真世っ!」 高笑いする真世を指差し宣戦布告する姿があった。 志士の海老園次々郎である。やっぱり男でも水着姿。 「恋人のいる身で惜しげもなく素肌をさらすのは……」 ちゃきり、と刀を構えどぅんと横にいたゾンビに短銃を放って真世に肉薄するッ! 「けしから〜〜〜〜ん!」 「それはそれ、これはこれよっ。ゾンビさんたち、お願いしますっ」 「おおおおおお……」 襲い来るゾンビを右に左に切り結び迫る。 はじけ飛ぶゾンビの体液。びしゃびしゃと浴び続け赤くなる次々郎。 そして。 「取った! 目を覚ませ」 ぐばあ、と大上段に構え真世に切りかかる次々郎。きりっ、と刃を返し峰打ちを狙う。 「んもう、ダメねぇ。次々郎さん、もう終わってるじゃない」 「何っ!」 不敵に笑う真世に躊躇いつつも刃を振り下ろす次々郎だったが、その一撃は途中で黒い霧となった。――次々郎の体と共に。 「ゾンビの体液を浴びすぎちゃったんですよ。次々朗さん自身が瘴気になって、倒されたアヤカシのように霧散したのよ」 ふぁさっ、と前に回った髪を肩の後ろに跳ね除け高笑いするえんぢぇるメイド・真世。先ほどまで彼女の目の前にいた次々郎の姿はまったくない。 「ふふふ、さぁて。それじゃあ甘いものと可愛い服をたっぷり堪能しよっかな♪」 るん、とベンチから降りて左足をレの字に上げる真世だった。 もちろん、真世や次々郎のようにアナタも西暦2013年の複合型商業施設に水着のまま飛ばされてきている。 ゾンビを思う存分切り結んでもいいし、真世の目を覚ますため彼女の弱点をついてもいいし、そんなん関係なく思う存分パフェとか映画とかを堪能してもいい。デートもできそう。 なお、真世はなぜか不死身状態となっており、数回倒したくらいでは某場所から復活してしまう。ゾンビはもちろん、真世が倒されるまで無限増殖する。真世の弱点を攻めるとかなり効果的だが、その弱点が何かは不明だ。 ゾンビと戦うのはいいが体液の浴びすぎには注意。スーパー銭湯を探して洗い流そう。 とにかく、この悪夢を早く終わらせなければ……。 |
■参加者一覧 / 静雪 蒼(ia0219) / 羅喉丸(ia0347) / 紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454) / 柚乃(ia0638) / 九竜・鋼介(ia2192) / 海月弥生(ia5351) / からす(ia6525) / 白漣(ia8295) / エメラルド・シルフィユ(ia8476) / 猫宮・千佳(ib0045) / 不破 颯(ib0495) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / ファムニス・ピサレット(ib5896) / フランヴェル・ギーベリ(ib5897) / ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905) / 神座真紀(ib6579) / エルレーン(ib7455) / ラグナ・グラウシード(ib8459) / 啾啾(ib9105) / 雁久良 霧依(ib9706) / 鴉乃宮 千理(ib9782) / ルース・エリコット(ic0005) / 伊波 楓真(ic0010) / 紫ノ眼 恋(ic0281) / ヴィオレット・ハーネス(ic0349) / 鶫 梓(ic0379) |
■リプレイ本文 ● 「む……」 はっ、と羅喉丸(ia0347)が気付いたとき、目の前に広がっていたはずの尖月島の海岸はなかった。 ふと、右に気配を感じ振り返ると柚乃(ia0638)がいる 声にならない悲鳴を上げて、肩を小さくし腰を捻り太股をすり合わせて、両手で自らの水着姿を隠している。 「何処かで着替えを…っ」 清楚な水色に紫の縁取りのある白水玉ワンピース水着のまま、きょろと周りを確認している。 「柚乃殿。さっきまでは平気そうじゃなかったか?」 「ら、羅喉丸さま。女性には時と場合というものが…」 柚乃、それだけ言って恥じらいひとしお赤面乙女。とにかく、ぴゅーっとゾンビに目もくれずどこかにいってしまった。 と、ここで。 「ほーほほほほっ……って、え? なになに、ゾンビちゃんたち。……うん? あっちにおいしそうな甘い物があるのね。よ〜し、次はあっちよ〜っ!」 ミニスカメイド服姿の深夜真世(iz0135)がいた。ゾンビどもに耳打ちされて指差されたほうに走っていく。 「珈琲茶屋の主人は何をしているんだ」 羅喉丸、普段は精神力の塊だが、さすがにくらっときた。 見たこともない異国の地に、水着にゾンビ。夢にしても酷いと思った。疲れているのかも、とも。 が。 「夢にしても、逃げ惑う人を眺めているだけはできないか」 がつ、と近くの懐古主義の店先に置いてある番傘を手にした。そのままゾンビの群れに走る。 「珈琲茶屋主人、こいつらを止めろ!」 叫びつつ番傘でゾンビを突く。囲まれる右に肘。左には身を翻し番傘の横殴り。 おっと、倒れたゾンビの体液が飛び散ってきたぞ? 羅喉丸、ばさりと番傘を開き止める。水着一枚で筋肉質の裸体に傷も体液もつけさせない。 「何よ、羅喉丸さんっ。邪魔をするんなら……」 真世が気付いて言うが、言葉はそこまで。 紛うことなく事の元凶と判断した羅喉丸が一気に詰めて真世のこめかみを突いたのだ。 「む」 しかし、真世は消えた。 はらりとミニスカメイド服だけを残して。 ● 時は若干遡る。 「さて、奴らと戦う前に服を調達しないとねぇ…」 戦いの側で、黒い水着姿の九竜・鋼介(ia2192)が尻尾を巻いた。いや、手近なブティックに入ったのだ。 「よし!」 次に現れた時、赤いロングコートと黒いズボン姿で決めていた。どうやらここってコスプレショップだったようで。 「何故かゾンビじゃなくて悪魔を倒さなきゃいけない気がするが…」 鋼介、太刀「救清綱」の柄に手を掛ける。 「ふむ、しっくり来るのがこれくらいしか無いし…」 ゆる〜く言うとおもむろに抜刀。ゾンビの群れに突っ込んだ。反対側ではちょうど、羅喉丸も突っ込んできている。もちろんその線上には、真世のざっくり開いた白い背中。 「死者を冥土から連れて来て操るか…メイドだけにってねぇ」 右袈裟、左袈裟と切り結び迫る。はっ、と振り返る真世。鋼介得意の駄洒落は聞こえたはずだが、なんか無反応。その間に素早いゾンビが爪で攻撃してくる。 「くっ。受けが悪いようだが、こうやってちゃんと受けやがれ!」 爪を刀で止め、返す刀でバッサリ。口も回って駄洒落も尽きない。激しく切り結んでいるのはウケが悪いからではない。飛び散るゾンビどもの腕とか首。 ――スタン! ここでばささっ、とゾンビどもが横一直線に倒れた。 「何?」 振り向く鋼介。 「海を満喫しに来たのに何でゾンビが勢揃いするよねえ…」 はらりとゴージャスな金髪を払いのけた女性がいた。弓を持っている。 「丁度弓を携えてきた事だし。うっとうしい存在を撃ち払うわよ」 きっ、と瞳を見据えた女性は、海月弥生(ia5351)。白い肌に緑色のビキニが目に眩しい。再び構えて先の一撃、バーストアローが来る。スタン、と音が響く。 そして、局地戦が終わって。 「ちょうどいい。着るか?」 「あたし?!」 弥生、羅喉丸から真世の残したミニスカメイド服を勧められるのだったり。 ● それはそれとして、ゾンビたちが向かおうとしていた場所。 「きゃ〜っ!」 丸い小屋として独立しているジェラートショップ前で買い物客がゾンビに襲われていた。 というか、そこに居座って場所を確保しているような? 「う、うわあ…な、な、何だこれは?!」 ここに運悪く居合わせたのが、騎士として鍛え上げた体と不敵な面構えが頼もしいラグナ・グラウシード(ib8459)。 っていうか、逃げた! ヤギ柄海パンのままで。 そして右手から素早く強いゾンビが出てきたぞ。 「ひぃぃ!」 ラグナ、ぶわっとこみ上げ目尻からこぼれそうになるものを堪えつつ、助けを求めるように……もとい、私が守るのだとばかりに抱き締めていた大きなうさぎのぬいぐるみ「うさみたん」を庇うようにする。 囲まれた。どうする? ラグナには守るべきモノがあり戦えないぞッ! ――にゃ〜ん! 「な、何だ?」 狼狽するラグナ。突然、上から猫が飛び降りてきて前を横切ったのだ。ゾンビも意表をつかれ動きを止めた。 振り仰ぐラグナ。 そこにはっ。 「にゅふふ、ピンチに登場。魔法少女マジカル♪ チカ参上にゃ♪」 ああ、ジェラートショップの屋根の上。ちっちゃな胸の前で腕を組む黄色いワンピ水着姿、すらりモデル立ちする猫耳頭巾少女は猫宮・千佳(ib0045)だ。そして彼女を慕って集まった猫さんたち。 「あたしが来たからにはもう安心にゃよ♪」 ロッドでポーズを取ると、くるり飛び降り猫たちと共に激しく戦闘を繰り広げる。猫がにゃにゃんとゾンビの顔に張り付き、この隙に千佳がロッドで殴る・叩くっ。 ラグナの方はごろごろっと転がり戦線離脱。 片膝ついたまま顔を上げた場所は、地元高等学校学生服指定店だった。 そこで気付く。 「え、何?」 ラグナが命を付け狙う女性、エルレーン(ib7455)がいるではないか。 大きな姿見の前でラグナを振り返っている。 「き、貴様! 貴様もここにいたのか!」 「ちょっと、着替えの最中よっ!」 がばり立ち上がり指差すラグナ、エルレーンは言うわりにすでにセーラー服姿。鏡の前でるん♪、とポーズつけていたので恥ずかしかったのだ。 「どどどどうせ貴様も怖くて仕方ないのだろう、しししし仕方ないから私が一緒についていてやろう」 「人の話を聞けーっ。とにかくまずはこれを着なさい」 まったくいつもなら「殺す」って言うくせにふふんおばかさんのラグナったらこわがりだなぁ、などと心中で勝ち誇ったように笑うエルレーン。 「今日だけだぞ、特別だぞ」 ぶつぶつ言いながら素直に従うラグナ。 「こ、これでいいな?」 というわけで、襟の激しく高い学ランにツバ割れ学帽、裸足下駄姿の番長ルックとなったラグナ。 「ぬいぐるみは余計じゃない?」 「うさみたんを悪く言うなーっ」 とかなんとかいいつつ、エルレーンに縋り付く勢いのラグナだったり。 ● そのころ真世。 「羅喉丸さん、酷いよね〜」 しゃっ、と試着室のカーテンが開き姿を現した。 店内から見繕った、肩と胸元丸出しのパーティードレス姿だ。かつり、とハイヒールを鳴らしまたも甘味を求め彷徨う。 と、この姿を見送った者がいた。 「これは…事件の匂いがしますね」 影できらりと瞳を輝かすのは、伊波 楓真(ic0010)。黒い海パンにミラーレス一眼カメラを首から提げている。 「お客さん、そのカメラ防水じゃないから…」 「分かりました分かりました」 誤解する店員を振り切り、適当な店に入り黒いスーツを着込む。 と、ゾンビを発見。カメラを構えシャッターを切る。 しかし、この隙に襲い掛かられた。レンズ越しでは距離感が掴みにくい。 「はっ」 間一髪、敵の突っ込みをかわす。素早いゾンビだ。振り向きざまの追撃が来る。 「おっと」 楓真、付近にあったショッピングカートを手繰り寄せ前に移動させた。ごすん、と突っ込み買い物かごに頭を突っ込むゾンビ。どすんばたんと格闘を繰り返した挙句……。 ――しゃこーっ! 「道を開けてくださーい! 台車通りまーす!」 壁に向かって勢いよく走らせガシャーン。 おや、衝撃でホビーショップから楽しげなものが転がってきたぞ? 「折角なので皆の戦っている姿を撮りますかー」 カメラを手にスケボーに乗ってしゃこーっと真世を追う。 それはそれとして、真世。 「きゃーっ。ソフトクリームってゆーんだー。きゃー、おいしー」 ジェラートショップに辿り着き、至福の甘味タイム中。 ここで、ぬっと真世に迫る影。 「久し振りやな。けどそこまでやで、真世さん!」 ビシッと霊刀「ホムラ」と突きつけ宣言するのは、神座真紀(ib6579)。 「えーでも真紀さんもハイレグビキニ水着でえんじょいしてるぢゃない〜」 真世の方は、黒ビキニですでにいくらかゾンビを切った後らしい姿に不平の声。確かに真紀の顔は生き生きしている。もっとも、これは露出高めのビキニを喜んでいるのではない。 「これか? 知らん。どー考えても真世さんの仕業やな。覚悟しいや!」 「ちょっと〜っ。ゾンビちゃんたち、お願いします〜っ!」 鬼気迫る真紀の様子にびびった真世が口元にソフトクリームつけたまま逃げる。 「先ずは邪魔なゾンビ共を蹴散らすか」 真紀のほうは、瞬間の威力を見せる技でゾンビをぶった斬る。これぞ柳生、新陰流。が、その技の終わりに攻撃を合わせてくる俊敏ゾンビもいるぞっ! 「あまい!」 何と真紀、もう一刀「ホムラ」を抜いた。そのまま腰を屈めて潜るように「払い抜け」。見切りの技発動は気に入りの白い大きな髪留めリボンを切るほどの間一髪だった。 ――かしゃーん。 この時、倒れたゾンビが帽子店のショーウィンドウを破った。ひら、と黒い帽子が流れてくる。 ぱしっ、とキャッチする真紀。珍しくポニーテールが崩れ下ろした髪となった自らの頭に被る。 「こっからや。かかって来ぃ」 タンカを切って再び激しく乱闘に身を投じる。 振る腕が。 身を運ぶ太股が。 豊かな胸を包んで揺れる黒いビキニと相まってどこまでも白く、美しかった。 ● 「こ、ここ、ど、何処です!?」 その頃、啾啾(ib9105)は戸惑っていた。 「う……」 とかなんとかいいつつ、自らの羽織る白く清楚なパーカーの合わせをぎゅっと両手で閉じたのは、胸のつるっぺたさを強調するようにつやつやと光沢する紺色のスクール水着が場違いと感じたから。 っていうか啾啾さん。そもそもの前提が違ってやしませんか? 「あわわ、ゾンビ」 襲い掛かられ手近にあったフリーペーパーラックを抱えてゾンビをぐしゃり。舞い散るゾンビと体液とフリーペーパー。ぱら、とめくれたページには「夢見るような春色ワンピ」の特集が。 「ゆ、夢でしょう、か」 ともかくラックを振り回して道を開けつつ、フリーペーパー片手にショップ巡りに出掛けるのだった。 その横を、真世がすごい勢いで走っている。いや、追われている。 「ちょっとそれはばっちいよーっ!」 振り向く先にはルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)の無邪気な姿。 「真世さん、見てみて! でっかい犬のウンコだよー♪」 何とルゥミ、とぐろをまいた物体を棒に刺して前にかざし走っているではないか。 「ルゥミちゃん、どこでそんなの見つけたのよ〜っ!」 「あはは。スパークボムでどっかーん! ブレイカーレイでどどどどっかーん! ってゾンビを吹っ飛ばしてたら見つけたんだよ〜」 「るぅみ」と名前の書かれた白いスクール水着姿は無垢で、その笑顔も行動もどこまでも無垢である。もちろん、さっきまでどどどどっかーんしてた魔槍砲「赤刃」は背中に抱えている。魔槍砲の先でつついてないのだから贋物ではなく本物と真世は見ている。 そして真世の前をスケボーの楓真が過った。 「先輩、ここは任せました!」 大きな熊のヌイグルミを真世の前に置いて離脱する。いや、その熊の手にはガムテープで機関銃のモデルガンが固定されているではないかっ! 楓真、激しく現代社会の玩具でやりたい放題だ。 「ちょ……」 真世、拙いことにハイヒール。止まった瞬間ぐきりと足をくじいた。 ――タタタタタ…。 楓真呼ぶところの熊センパイが身を揺すりながらBB弾を連射。その振動で右に旋回しつつ広範囲にばら撒くばら撒く。 「あたっ、あたたたた」 足首をさすっていた真世の額にも当然ぴしぴし命中している。 ――ぴとっ! ここでルゥミに追いつかれてほっぺに嬉しくないプレゼント。「ひっ!」と悲鳴をあげるとフリルワンピを残し真世は消えた。相当ショックだったらしい。 「あはは。ここはペット連れ込み禁止だからこんなのなんてないのにね〜」 笑うルゥミ。どうやらおもちゃだったらしい。その横を千佳と猫たちがにゃんにゃん歩いていたが、それはそれ。 ● 「ルゥミちゃん、酷いよね〜」 しゃっ、と試着室のカーテンが開き、ノースリーブ肩紐無しのウエディングドレス姿の真世が出てきた。 どうやら真世はやられると試着室にワープするらしいが、まあそれもそれ。 と、その目が見開かれた。 「な、なんだここは!? 城か? 城下町? ジルベリアとも違うようだが…」 エメラルド・シルフィユ(ia8476)がきょろきょろしたあと、「水着のまま!?」とか自らの体を抱くようにして内股をすり合わせ赤面していた。いつもと似たような格好だが、今は赤紫の布地少なめビキニ姿である。 そこへ、ゾンビが群がる。 「アヤカシかっ、幸い剣はある。叩き斬ってくれる!」 「ちょ……。エメラルドさん、まず服を着たほうがいいんじゃない? 水着がポロリしそうよ?」 豊かな胸があまりに揺れているので思わず真世は声を掛けてしまった。ゾンビは真世の姿を見て警護に付く。 「な、真、真世!? お前がゾンビの頭領か? ……というか、その格好はいかん! そーいうのは計画的に着ないと婚期を逃すぞ」 「そ、そうなの? じゃあちょっと待って」 真世、婚期を逃すの言葉に激しく反応。素直に頷くと再び更衣室へ。 今度はころん、と下駄の音を響かせ浴衣姿で出てきた。 「よし。では改めて。……お前がゾンビの頭領か? しかし、真世は親友と言ってもいい…それを斬るなど…! 私はどうすれば…!」 頷きエメラルドが最初のノリへ戻る。 「まあでも世を乱すのであれば仕方あるまい。覚悟せよ、真世!」 「隙あり!」 苦悩の表情から軽く手の平を返したエメラルドだが、真世がこの隙を突いた。 ――はらっ。 「きゃあっ! み、水着を取るなぁっ! ダメェッ!!」 またも自らの体を抱くようにして体をくねらせるエメラルド。真世のお玉ステッキがエメラルドの水着に引っかかって以下略。白く豊かな胸を両手で隠し艶かしくいやんいやんをする。 「ほーほほ、恥ずかしかったらこれを着ればいいじゃない」 「くっ……」 勝ち誇る真世が先ほど自分の着ていたウエディングドレスを差し出す。婚期を逃すらしいが今は今。仕方なく着替える。 「わ〜い。エメさんのお嫁さん姿可愛い〜♪」 「おのれ、シルフィユ家奥義、服だけ斬り!」 服を着て腕が自由になれば話は別。真世は「きゃっ」とか両手で自らの体を以下略して消えた。 ● 「まったく、エメさんも酷いよね〜」 またかよ、な展開だがしゃっと以下略で真世が出てくる。今度はミニスカディーラー姿だ。胸がきつそう。 「あっ。ヴィオさん、どこ行くの?」 ここで黒いビキニ姿のヴィオレット・ハーネス(ic0349)を発見。胸の布地が少なめのビキニっぽいが、商品的には普通のビキニなのでお間違いなく。 「ああ。面白そうな映画があるんでな」 チラシを見せるヴィオ。タイトルは「シスターくえすと/ドラキュラの逆襲」。 と、ここでゾンビの群れが真世を守ろうと寄ってくる。 「…ち、面倒なのがきた」 魔槍砲「瞬輝」を構えるヴィオ。どごん、と一体をふっ飛ばす。 「どうも面倒だな」 ぼそりと言うや、何やら魔槍砲にアタッチメントを装着した。 「っていうか、取り付けた部品のほうが巨大じゃないのよ」 「そうか?」 超重量火器に変貌した魔槍砲を「よいしょ」と肩に担ぎ片膝をつくヴィオ。ドゴン、とミサイルランチャー発射。 ――ゴゥン! 見事爆砕。 「じゃあ、映画に行ってくる」 「ひぃぃ」 もっとも真世、あまりの破壊力に逃げた後だが。 『もふ〜! なんかまよまよがとんでもない事になってるもふね〜何とかしなくちゃもふ!』 この様子を金色もふらさま「もふ龍」が見ていた。 「もふ龍ちゃん落ち着いて……ね?」 主人の紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)がなだめる。赤いビキニに白いエプロン姿は、実は海辺で慣れていたり。 それはそれとして、沙耶香は忙しい。 何せ、無人になった焼きそば屋台の営業を支えていたのだから。 「ホルモン焼きそば始めたって聞いたんだけど?」 「はいはい。お待ちを〜」 前店主のメニューにはなかったホルモン焼きそばを始めたところ、逃げるのを惜しんで求める客が後を絶たず忙しい。 ここで、真世も気付いた。 「沙耶香さんっ。何かおいしそうね?」 『まよまよも食べるもふ〜』 「それより真世さん、何でゾンビを操ってるんです?」 「ん? んー、よくわからな……え? う、うん。そ、そんなの知ったことじゃないわっ!」 おいしそうにホルモン焼きそばをすすっていたが、ゾンビに耳打ちされてツンしたり。どうやらゾンビに操られているらしい。 ――ぶわっ。 ここで真世に影が落ちた。 「みぃつけたァ」 上から何かが落ちてきているのだ。 『おいしいもふか〜』 この時運よく、もふ龍がもふ龍アタックを真世にかましてじゃれていた。無事に難を逃れる。 ――すたん! 「ちっ!」 斬戟と共に上から来たのは、左眼帯の紫ノ眼 恋(ic0281)だった。 「避けられたが、楽しいことになってんじゃァねェか! 狼の名においてェ! 斬って斬って斬りまくってやんぜぇッ!」 すかさず体勢を立て直すや、「ケケケケ、ぎゃははははっ!」とか危ない感じで周りのゾンビを切りまくっている。 「ちょっと恋さん、水着取れかけてるっ」 「何!?」 カジュアルなビキニ姿だったがトップがポロリしそう。真世からばさっ、と可愛らしいベビードール風ブラウスを投げ渡された。 「か、可愛いのはちょっと、どうせ似合わないし……」 急に獣耳へにょして真っ赤になる恋。「胸が隠れればそれでいいんだ。でもこれは……」とか、上目遣いで色っぽくおねだりする。 「これならどうですかね〜」 沙耶香が投げて渡したのは、無地のパーカーだった。 「これがいい。……スタイルは良いが胸はかろうじてBだぁ!」 「そんなの聞いてないよーっ」 恋、おねだりモードから狼のような様子に戻った。これで真世をばっさり。ミニスカディーラー服を残し消えたが、そのままゾンビどもを斬って斬って斬りまくる。飛び散るゾンビの生々しい欠片。 「ホルモン焼きそばいかがですか〜」 隣では沙耶香が呼び込みの声を上げるが、他意はない。 ● それはそれとして、ヴィオレット。 「ここだな?」 ポップコーン片手に見上げた巨大看板は「シスターくえすと」。教会のシスターがドラキュラの毒牙にかかる様子がでかでか描かれている。 「こ、これは……ご立派です!」 ん? と気付くと、横に可愛いピンクフリル水着のファムニス・ピサレット(ib5896)がいた。目を輝かしているのはかわいいが、ヴィオのおっきな胸をガン見している。というか、ぐんぐん寄ってきてたらしたよだれをつけようかという勢いで。 というか、ゾンビまでファムニスと一緒に顔を寄せてるぞ? ――ざしゅっ! 「仔猫ちゃん、無事かい?」 ゾンビの方は、颯爽と現れたフランヴェル・ギーベリ(ib5897)が殲刀「秋水清光」で一刀のもと切り崩した。大きな白いワイシャツ姿。真白な太股が股の付け根付近からスラリと伸びている。 「どうしようずっと見ていたい! でも戦わないと……」 ファムニスの方は我に帰ったが、この間にヴィオは悠然と映画館に。 「ゾンビなどボクの剣にかかれば!」 フランはファムニスを庇うように戦い、次々と叩き斬る! 見えそうで見えない太股の上。 ――ブン! 「はっ!」 突然、速い動きの攻撃がきた。フランは避けるが、ワイシャツの前を斬られた。はらりと開くと、下から黒いビキニ姿が現れた。男性のような外見だが、知らない者が見たら実は女性の姿にはっとするだろう。 「やってくれるね。……柳生無明剣!」 「後からも来てる」 フランの必殺の一撃。同時に、フランを別の場所から狙っていたゾンビが吹っ飛んだ。 「おおっ。これは……」 ファムニスのキラキラした瞳が凝視するのは、今しがたフランを援護攻撃した雁久良 霧依(ib9706)だった。 「ゾンビの体液? ……体が少し汚れた」 「あら。それならこの先に大きな銭湯があるわよ?」 汚れたことが意に染まらぬフランに、白いマイクロビキニの霧依がウインク。すでにボディローションとかを洗面桶に入れてるし。ファムニスはどどんと大きな霧依の胸に視線を奪われどこにでもついて行きそうな勢いだ。 というわけで、温泉に。 「食らえ! 鏖殺の交響曲…ジェノサイドシンフォニー!」 途中で、「魂よ原初に還れ」でゾンビを範囲滅殺しているリィムナ・ピサレット(ib5201)に出くわす。白いスク水姿かと思いきやそれは日焼けの影響で、実はマイクロ水着姿だったり。 「とっても修練して連発できるようになったんだよ。あたしのフルートの音色はあんた達の魂に直接響くのだっ!」 それはそれとしてリィムナのフルート「ヒーリングミスト」から響く曲は良心回路に響くのか、ゾンビどもは頭を抱え悶絶しながら瘴気に戻っていく。 「ちょっと、リィムナちゃん。なんってことを……」 ここで、ピッチピチのミニスカレースクイーン姿の真世登場。 「真世さんには子守唄ね♪」 「ぐぅ……」 「……開拓者としていかがなものか」 フランは遠くからこれを見て呆れてたり。 「はっ」 真世が気付いたのは、むぎゅりとリィムナに抱きつかれたから。フロントスープレックスを警戒して腰を落とすが、これは逆効果。 「げふっ!」 何と、リィムナは腰を落としつつ立てた右ひざに真世の腹をドゴォ。そのままピッチピチのミニスカを捲り上げる。おっきなお尻が丸出しになるが、一応ピンク水玉の水着をはいてるので安心だ。 って、リィムナ、その水着もずり下げたぞっ! 「悪い子の真世さんにはたっぷりお仕置きするからね♪」 そして高速のお尻ぺんぺん。「ひぃぃぃ〜」と涙声とレースクイーン衣装を残し、真世は消失するのだった。 「あら。リィムナちゃんとお揃いね♪」 「ひゃっ!」 リィムナの方は、霧依にお尻をタッチされそのまま力をなくし言いなりに。彼女らと共に銭湯へ。 ● それはそれとして、木陰。 淡く赤色のスクール水着に白いパーカーを羽織る小さな少女が隠れていた。 ルース・エリコット(ic0005)である。 右見て、左見て、ゾンビがいないことを確認してからぱたぱたっと出てきた。 「沙耶香……お姉さん」 「はい、ホルモン焼きそばお待ち〜」 沙耶香から大人気商品を購入すると、ぴゅーっと隠れていたトコまで戻って食べる。 にこ〜。 美味しいのだろう。完食して、ご馳走様。 そしてまた、きょろきょろ。 どうやら食後のデザートが欲しいらしい。 が、ジェラートショップまでは遠いぞ? 「も‥…もふえもん〜♪ もふえもん〜♪」 勇気を振り絞り、怖さを鼻歌で紛らせながら店まで行く。 ――ざざっ! 「ひっ!」 ああっ。ゾンビに見付かって通せんぼされたぞ? 「ぴぃ! 嫌あぁ! ゾンビ…… 嫌あぁ!」 全力ダッシュでぴゅーと逃げる。 刹那、黒地に青い花のシャツが舞った。ルースの顔にかかる。 「わぷ」 ルースが顔を出すと、青い髪を両サイドテールに流した小さな女性が立っていた。 す、と出した白い素肌の太股にウィップ「シークレット」が黒く巻き付いている。 視線を上げると、黒いワンピース水着……というか、女王様風胸部編み上げコルセット姿。 いま、太股の鞭を解いてぱしりとルースの横に走らせゾンビを弾いた。 「ルースはん、逃げることあらへんよ?」 そそり立っていたのは静雪 蒼(ia0219)だった。 たちまち最初に持っていたホーリーメイスを掲げてゾンビどもに襲い掛かる蒼。 ぶっ叩く。 鞭を振るう。 くねる腰のラインに弓なりに反る胸。ぐしゃりぴしりと獅子奮迅の戦……もとい、ご乱心のSM女王様のような美しさを見せる。 「ひいい……」 ルースはあまりの凄さと怖さに再びシャツを被ってぷるぷる。鞭でけん制しメイスでゴスっとする音も怖いようで、耳も塞いでいる。 やがて、音がしなくなったのでそっと顔を出してみる。 「終わった思たら、ここにも一匹や」 「ひぃ!」 蒼の怖い顔がアップに映り石化硬直。これに満足した蒼は微笑して黒地に青花のシャツを羽織って身を翻した。 「ルースはん、行きますえ〜。……怖かったら裾もっといてえぇよ?」 「ひん! 待っ…てぇえ〜」 置いてけぼりの恐怖に気付いたルース、涙をいっぱい溜め小走りに追う。 ● 「ここはどこかしら…? とりあえず服着たいわね……」 別の場所では、黒髪のポニーテールを揺らして鶫 梓(ic0379)が弓「弦月」で矢を放っていた。 とすっ、と額に刺さったゾンビは首無しになっても寄ってくる。 「ちょっと大胆な水着を着てみたから恥ずかしいのよねぇ」 梓、言うだけある。 白地に青い縁取りのモノキニ水着は布地の部分が思い切り良くざっくりと少なく、斜め後から見ると健康的な脇の下から形の良い胸の素肌が裸じゃないかというくらい見える。下に視線を移すとハイレグで腰骨が丸見え。 ここで、はっ、と梓が振り返る。 「あなた、後ろからなんてイヤラシイわね」 すとん、と梓が弓を放つ。矢が立ったのは読者ではなくゾンビなのでご安心を。 おっと。 梓の戦っている集団に、別の集団が近寄ってきたぞ? 「はっ!」 流れる銀髪。 沈んだ動きから繰り出される玄武錫杖。 ローライズにさらしのようなチューブトップ姿は、鴉乃宮 千理(ib9782)だ。 さらに別方向から新たな一団が戦いつつ近寄ってきた。 「喰らうといい」 ツインテールの黒髪が舞い、弓「蒼月」がしなる。 崩れ落ちたゾンビを見て別を撃つ黒ボーダー柄タンキニ姿は、からす(ia6525)である。 と、からすが何かに気付いて視線を上げる。 「やあからす。久方振りじゃのう」 背の高い、千理の赤い瞳と視線か合う。 「やあ千理殿。最後に会ったのは何年振りかね?」 どうやら知り合いらしい。というか、世間話をしつつ、からすは六節併用の乱射で矢の雨あられ。 「どうした?」 「あそこに真世殿がいる」 からすの指差す先には確かに真世がいた。 「んもう。布地がお尻に当ったらひりひりするじゃない!」 しゃっ、と試着室から出てきたところだ。今度は白いレオタードにぶかぶかのTシャツを胸下で縛っているようで。振り向いて気にしてるのはTバックのお尻。まだ赤い。 「着替えにはちょうどいいか」 梓もそれと気付いてからすと一緒に真世までの道をあけるべく、ゾンビに強射。 千理はさらにワイルドだったり。 「『芝刈り機』ってのはどう使うのだ?」 「ギルドに所属していたのは知っていたが、まさかこのようなところで芝を刈ってるとは夢にも思わなかった」 手近な店から芝刈り機を持ち出した千理はそれでゾンビの群れに突撃。からすはついていきながら世間話。 「まあ、ギルドに所属してまで芝刈りはないな……」 梓も呆れつつついて行く。実際にはゾンビを潰して刈っているが。 ――がしゃ〜ん! 「6番レジ、会計頼む!」 「きゃーっ! って、からすさんたち」 千理が店内に突っ込み、真世のところまで到着。 「ん? これはクールでいいな。……下はこのスカートでいいだろ」 梓はいきなり服を物色してたり。手に取ったのはミニスカートのテニスウエアだったり。 「わー、梓さんなんかかっこいい。からすさんも千理さんも着替えたら?」 「我はこれでいい」 真世に言われて千理がまるごと熊さんを着込む。その後では、梓が真っ赤になりながらスカートの裾を引っ張っている。遠距離の敵に矢を放ったまではいいが、手近な敵に蹴りを見舞ったときにひらりん☆したらしい。もちろんアンダースコートは履いてない。水着のままだ。店員に教わって、よいしょと踏み換え三段フリルのアンダースコートに足を通す梓。顔が真っ赤のなのは屈んだ弾みでスカートが以下略。もちろん水着をはいたままなのではあるが。 「なぁ真世殿、どれが似合うと思う?」 「千理さんがあれなら、からすさんはこれ?」 からすに聞かれて真世が出したのは、「金」と書かれた赤い前掛けだったり。 「さすがにそれはない」 「我と一緒でこれをしろと?」 あきれるからす。千理、手近にあった「ももたろう」の絵本を見せる。熊と金太郎が描かれていたり。 「あははっ。ごめん〜」 にこやかに逃げる真世。これを千理が追う。すぽ〜んとまるくまを脱いで。 「自分で着てみるといいよ」 からす、矢で逃げる真世の服を狙う。肌に優しい娘である。 「いや〜ん」 ぶかぶかのTシャツがはじける真世に、千理がタックル。そのまま寝具売り場のベッドにどだ〜ん。 「ほれ、逃げたいのか? 何をしたいのか言うてみ?」 「いや〜ん。千理さん抱きつかないで、耳に息吹きかけないで、ブラのサイズ確認しないで〜」 真世、たっぷり千理にいたぶられた後、レオタードを残し消える。 ● 「処だココ? そしてなんだこの状況? あれか? スタイリッシュ水着ゾンビアクションってかぁ?」 不破 颯(ib0495)が気付いたとき、目の前では黒い帽子と黒ビキニの真紀、ミニスカメイド服をひらめかしす弥生、赤コートを長くたなびかせる鋼介、水着一丁と番傘を操る羅喉丸がそれぞれスタイリッシュに戦っていた。 「今度はこっちのゾンビどもを分断して叩くわ」 「女性はゾンビの伸ばした手には気をつけろ。水着が引っかかるかもしれん」 弥生の指示に羅喉丸の心配。 「見た男は殺す!」 真紀、まだぽろりもしてないのに鬼気迫る表情でぶった切り。 「ゾンビはみんなに任せるかぁ」 これを見て颯はゆる〜く言うと、まずはオシャレすることにした。 シルバーアクセを身につけたりするが……。 「冷たっ!」 そりゃそうですよ、颯さん。あーた、褌一丁でしょ? 素肌にシルバーアクセぴとっとくっついたらそりゃ冷たいです。 「仕方ない」 素肌にGジャンGパンのワイルド……もとい、カジュアルな服装になって、ケーキショップに入る。 「緑茶と、ショートケーキ、チーズケーキに、この抹茶のシフォンケーキを2つずつ!それから……」 すると、すでに一人で盛り上がっている人物がいた。 「ん、美味しいなあっ。甘さ控えめだから苺の甘さが引き立つ! チーズケーキはなめらかで口に入れると溶けるし!」 白漣(ia8295)である。なんとも幸せそうな表情だ。 「そーだねぇ。やっぱ違う世界に来たらこれだろぉ。いや〜美味しそうだねぇ」 颯も加わり、テーブルはさらにケーキが埋め尽くした。 と、その時。 ――バタン。 「はぁ、はぁ……。む、胸がおっきくなっちゃうかと思った」 厨房からパティシエ衣装の真世が出てきた。どうやら更衣室は厨房の奥にあったようで。 「あっ。白漣さん、不破さん、おいしそうねっ♪」 目敏く二人を見つけて寄ってきたぞ。ゾンビも真世を守るべく寄ってきた。 この瞬間。 ――とすっ、ばさっ。 颯がアームクロスボウの烈射「天狼星」でゾンビを薙ぎ払い、白漣が立てかけてあった少剣「狼」で真世にケーキを渡そうとしたゾンビの手をばさり。颯は間髪入れず番傘を開き体液から自分とケーキを守る。 「美味しい時間を邪魔したのは誰ですかーっ! 」 刀を突きつける白漣、目がマジだ。 「って、それより白漣さん、パーカー羽織っただけでトップつけてないじゃないっ。早くこれをつけないと」 真世、ビキニのトップを渡すが逆効果。 「僕は男ですっ!」 「俺の甘味道を阻む奴は容赦しないから。覚悟しなぁ」 白漣が突っ込む一方で、今度は颯が真世に番傘をぴしり。 「んもう。私、まだケーキ食べてないんですからねっ」 「甘味は、食べ過ぎると太りますよっ。いくら深夜さんでも甘味は渡さないっ!」 颯と白漣、絶対防衛の構えだ。 この時、助け舟が。 「真世さん、オススメの柚子カステラと苺タルトはいかがですか?」 真世が振り向くと、柚乃がいた。 襟なし、ふわり膝丈のチョコ色ワンピースでエプロンは桃色生地に縦細のライン。リボン飾りはあずき色。で、髪はツインテールでまとめていた。 「あああ、柚乃さん〜」 「はいはい。甘えないで」 しかし、不幸は重なる。 「わあ…すてきー、あれほしいなぁ……ラグナ、買ってきてぇ」 店先でエルレーンが乙女ちっくに瞳キラキラさせてるぞ? 「ゾンビを買うのか?」 「……うさみたんに頼もうかなぁ?」 「す、すまない。あれだな、柚子カステラだなっ。ちょっと待ってろ」 ボケたラグナだったが、うさぎのぬいぐるみをゾンビの方に投げられそうになったのでぶわっと涙目でつかいっぱしりに 「まあ、いらっしゃい」 柚乃が接客し、真世は置き去り。 さらに不幸は重なるッ。 「深夜はん〜可愛いこぉおるよってそろそろ鎮まらへんのぉ〜」 「ひん!」 蒼がなぜかルースを人質に真世に迫っている。 「な、何よぅ、蒼さん。こっちにだって可愛い子いるんだからねっ」 「あ、あの、ぼ、ぼく、お、男で、ですよ?」 真世は手近にいた、ワンピース姿の啾啾を人質にする。にまっ、と蒼が微笑したのは、啾啾にワンピースを着せた張本人だから。 「それとも大人の魅力がえぇんやったら……」 「くっ」 縄で拘束されたまま差し出されたウエディングドレス姿のエメラルドは白い肌を胸元まで真っ赤にしている。 「それともうち? 選び放題はべりますぇ〜」 ほほほほ、と女王様姿で白い脇の下を見せ髪をかき上げる蒼。勝ち誇っている。 「あ、報酬は甘いもんで? 食べさせますぇ〜」 ちらっ、と啾啾を見る蒼。 「こ、これ、た、食べて、お、落ち着いてください!」 啾啾はお団子を取り出して真世の口に、むぎゅり。 「か、辛い〜っ」 トウガラシたっぷりなのが混じってたようで、真世、パティシエ服を残し涙目で姿を消す。 ● 「ううう、ひどいよね〜」 からり、と牛乳を飲みつつバスタオル一枚の真世が、スーパー銭湯に姿を現した。 が、そこではとんでもない事態になっていた! 「このマッサージオイル、いいね」 頬を上気させたフランが湯気の中、一糸纏わぬ姿で横になり、同じく湯気と泡に隠れてはいるが素っ裸のリィムナにすりすりと我が身を以下略。 「ふぁっ、フランさんマッサージうまい……」 「はう! おっひー!」 ん、と身を縮め我慢するリィムナ。その横ではファムニスが嬌声を上げていた。 「こういうの初めてかしら♪」 霧依がおっきな胸とローションを使って正面からファムニスを以下略。 「さいこーですうう!!」 ファムニス、ついに鼻血を吹き、至福の表情で気絶 。 「じゃあ、次は……」 「おっきな胸当たってる……ひゃっ…あの、もういい…ふにゃああ!」 リィムナ。泡だらけの中正面から霧依がうりうり背後からフランがすりすりで悶絶。 「じゃ、ルゥミちゃんは髪を……寝ちゃった」 ルゥミ、バスタオルを身にまとったフランにタオルかけられお姫様だっこされ、退場。 「真世さんもどう?」 「ひぃぃ」 霧依にうっふんされ、たじっと後ずさる真世。 が、たゆん、と弾き返された。振り向くとヴィオレットが立っている。 「ゾンビがこっちに来てるぞ? 邪魔だからぶっ飛ばしつつ来たが」 そう。 真世がここにいるからゾンビが集まってきているのだ。 外を見てみよう。 「よし、追い詰めるぞ」 「真世さん、操られてるみたいで心配ですー」 『心配もふ〜』 羅喉丸たちが戦闘しつつ、沙耶香が心配しつつ戦闘方面に集まっている。 「ゾンビの体液、きもちわるーい」 「うさみたんにゾンビの体液がっ。これは早く奇麗にしないと」 エルレーンとラグナも銭湯方面に。 「ふにゅぅ、汗かいたからお風呂でさっぱりするのにゃ♪」 千佳と猫たちもにゃんにゃんと銭湯方面に行進中。 「真世殿にはこういうのも似合うのではないか?」 「服を残して消えるなら、裸の時を狙うとどうなるのじゃろうな?」 からすが真世用にナース服を持って、そして千理が素朴な疑問と共に銭湯方面に走る。 「胡椒を顔にぶちまけてくしゃみ死にさせたるで〜!」 物騒なことを言いつつ真紀も銭湯方面へ。 そしてこの時、男湯では! 「うわあ、ゾンビ湯!」 酒を飲みつつひとっ風呂と思っていた楓真が回れ右。 「銭湯で戦闘。湯はいい加減かもしれんが、いい加減にして欲しい」 鋼介は地口とともに乱入し戦闘! さらに女湯! 「真世はん〜。ここやったか〜」 ばーん、とタオル姿の蒼が登場。早速真世に襲い掛かるっ。 「いい湯だな、ひばのんのん♪」 ルースがのんびりしている背後で、「ひぃぃ〜!」とかいう真世の悲鳴やら水しぶきやらが響くのだった。 真世が真っ赤になってのぼせるまで、甘い悲鳴の響くこの夢は続きそうだ。 もちろん、白漣と颯はまだ甘味を喰らっている。 ことほど左様に甘い夢なのだ。 |