南那〜北の砦対破城塔
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: シリーズ
危険 :相棒
難易度: 難しい
参加人数: 9人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/03/26 22:36



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●蘇る激闘の記録
「破城塔、か……。確か、長い歴史の中で一度戦ったことがあるらしい」
 深夜真世(iz0135)と開拓者たちが偵察戦闘から戻って報告したとき、親衛隊長の瞬膳(シュンゼン)はそう唸ったという。
「もっとも、記録をあさってみないとよそ者の私もその詳細は分からないが」
「南那にしては大きな戦でしたから、ここらの地の者なら大まかに知ってます」
 瞬膳が唸る横で、北の砦守備隊長の粋頑(スイガン)が話を引き寄せた。
「確か、当時の周辺国連合軍が破城塔で攻略しようと多数の牛に引かせて進軍したそうです」
「牛?」
 ここで、真世が突っ込んだ。
「ええ。文字通りの牛歩戦術ですね」
「そんなことしたら、こっちから騎馬が出て狙い放題じゃないかなぁ?」
「馬に引かせると貴重な戦力が割かれますからね。当然、こちらからは騎馬が迎撃に出ました」
 うーん、と頭を悩ませる真世に粋頑が説明する。
「つまり、破城塔を見せられ出戦を強いられたわけです。こちらはコテンパンにやられましたね」
「だったら、ある程度近付けてから全力出撃した方がいいんじゃない? こっちの砦には固定巨大機械弓が二門あるみたいだし、砦の上から牛さんを狙えば城に接壁するまでに足は止まるんじゃないかなぁ?」
 真世、珍しく頭が冴えた。
 しかし。
「当然考えたようですが、敵は上手でしたね。……破城塔で攻略してくると見せかけて進軍を途中で完全にやめたんですよ」
「は?」
 一体どういうこと、な感じに粋頑の顔まじまじと見る。
「アンタ、南那西部戦線での英雄の一人らしいが……まあいい。敵は破城塔を途中で止めて一夜城のように使ったんですよ。あっという間に兵站を支える戦略拠点ができたんだ。こちらはここまで来ると思っていたから虚を付かれたらしい」
「い、言っとくけど、私は英雄なんかじゃないですからねっ。私の仲間が英雄なんだもん」
 呆れられて慌てた真世だが、戦の駆け引きの応酬の話にすっかり虜になってしまっている。
「で、こちらもついに捨て身の攻撃。『右翼迂回の巧者』の異名をとる武将が得意の右回りで破城塔の左側面に多大な損害を与えたりしたらしいが結局は落ちなかったらしいね」
「でも、今になってアヤカシ化して蘇ったんだから……」
「ええ。結局は和平交渉で戦闘は終了。破城塔は、城を破ることなくその場で自軍から火をつけられて焼失した。……無念だったでしょうね。ここを落とせるかもしれなかったのに」
 引き換えに当時の南那は交易上、不利な条件を飲んだらしい。
「なるほど。……今回はアヤカシ化して、厄介なことに自走能力を持っているか。一気に城まで来るか、それとも前回と同じくまずは橋頭堡となるか」
 瞬膳も納得し、前回の人の手による進軍と、今回のアヤカシ化しての進軍に頭を悩ませる。
「とにかく、こちらは志体持ち部隊が少ない。真世君たち『南那の騎馬部隊』は英雄部隊だが、弱点は長期拠点防衛に運用できないことだ。とにかく一度戻って、次の展開に備えて欲しい。我々親衛隊も一度、椀那(ワンナ)に戻って椀那領主の椀栄董(ワン・エイトウ)に報告し対策を練る。砦部隊はその間、広域塹壕を掘って破城塔の進軍対策とし、同時に巨大機械弓の整備を進めておくように」
 こうして、真世たち開拓者はいったん引き上げた。

 そして次に呼ばれたとき、決断を迫られることとなる。
 近付きつつある破城塔に対し、近寄らせず出戦で討伐するか、接近させて砦の火力を交え総力戦で叩くかのどちらかを。

「真世君、出戦をしてもしも砦に戻れないような状況になったら、迷わず荒野方面に逃げなさい」
 余談だが、この話を聞いた珈琲流通組合の旅泰商人・林青(リンセイ)は、念のためだと前置きして真世に言うのだった。


■参加者一覧
萬 以蔵(ia0099
16歳・男・泰
ジルベール・ダリエ(ia9952
27歳・男・志
アーシャ・エルダー(ib0054
20歳・女・騎
アイシャ・プレーヴェ(ib0251
20歳・女・弓
アレクセイ・コースチン(ib2103
33歳・男・シ
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918
15歳・男・騎
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905
10歳・女・砲
アルバルク(ib6635
38歳・男・砂
クロウ・カルガギラ(ib6817
19歳・男・砂


■リプレイ本文


「来た〜っ! 破城塔が来たぞ〜っ!」
 南那の北部、「北の砦」前方の荒野で緊張が高まる。
「よし、後は開拓者部隊と親衛隊に任せろ。一般兵は引けっ」
 親衛隊隊長の瞬膳(シュンゼン)が大きく頷き指示を出す。

 その頃、砦内部。
「ん? 動きがあったな」
 珈琲カップを手にしたクロウ・カルガギラ(ib6817)が、バダドサイトでいち早く敵の接近を察知していた。
「あっ、しまった。私、メイド服のまんま……」
 慌てて給仕をしていた深夜真世(iz0135)が着替えに下がる。
「まったく……。だから真似事の給仕などよしておくべきと言い添えたのに」
 ロングコートに身を包んだアレクセイ・コースチン(ib2103)がやれやれと真世の落ち散らかしたポットなどをまとめる。
「アレクセイ、ここはプレーヴェ家でもエルダー家でもないのに」
 アイシャ・プレーヴェ(ib0251)も優雅に準備を整えながら実家の執事だった男に突っ込む。
「誇りもなく、自ら家主になる勇気もないからと執事の真似事をしても花は開きませんので。……それより、出戦のようで」
「相手は名前の通りに『破城塔』……城落としの為の兵器です。ならば野戦でこそ決着をつけるべきですよね」
 モノクルをキラリと輝かし話題を変えるアレクセイに、さらりと前に垂れた髪を後に跳ね除け言い放つアイシャ。
「先手必勝、攻撃は最大の防御なり!」
 びしり、と横でアーシャ・エルダー(ib0054)が言い切る。妹のアイシャも、執事のアレクセイも満足そうに頷く。
「そこに挑むべき敵がいるのなら、待っているだけなんてありえないし〜」
 優雅に珈琲を飲んでいたが、足を組み替えて立ち上がると、にこり。
「はぅ……」
 この様子に、ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)がしょぼんとしていた。
「どうしたい? 元気なさそうに。腹でも減ったか?」
 不良中年のアルバルク(ib6635)が、ぽむとネプの肩を叩いて励ます。
「違うのですっ。アーシャさんが格好良く駆鎧を動かしそうだと……」
「分かった分かった。すまねぇな」
 むっとしてネプはいうが、本音を口にした事には気付かない。
「あたいは格好良く滑空艇を動かすよ!」
「はいはい。馬に乗ってたときも格好良かったぜぃ?」
 今度は威勢よく拳を突き出してきたルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)をぽふぽふ。
「アルバルクさん、人気者やね」
 この様子に、ジルベール(ia9952)がにこにこ。
「おぅよ。人気者で茶菓子を食おうにも手が塞がってる有様だよ。……そっちは準備好きなようだし、美味しくぱくりといけそうかねぇ?」
 アルバルク、とぼけた風に応じた。
「そうやね。中央前側の塹壕に、待機用の塹壕をこちら寄りに両翼用意。真ん中は罠伏りした。万が一そこに誘導できんでも、避けた先にもあるとは思わんやろ」
 自分の意見の通りに塹壕を掘ってくれた瞬膳に感謝しつつ、ジルベールが装備を固める。
「まあ、脅威は出来るだけ減らした方が良いし、こちらに近付けさせないよう頑張るつもりだぜ?」
 萬 以蔵(ia0099)も力こぶを作って応じた。
「みんな、お待たせ」
 真世が戻ってきて、出撃だ。


「はぅ。軍馬さんお願いするのですっ」
「今回も骨鎧がわらわらいるわね。見てなさいよ〜」
 軍馬を借りたネプと、霊騎「テパ」に乗ったアーシャが荒野を走る。どちらとも背中にアーマーケースを背負っている。出来るだけ早く二人を戦線投入する作戦だ。
「邪魔はさせませんよ」
「うんっ。二人が駆鎧に乗るまで守るんだからねっ」
 霊騎「ジンクロー」のアイシャと同じく「静日向」の真世が続き、弓を構えて先制攻撃をしている。
「おいらは先に両翼塹壕に隠れてたかったけど、攻城塔が穴に引っかかったら突っ込むからなっ」
 以蔵は最後尾で我慢。実際、霊騎「鏡王・白」に乗ったまま、突貫作業であまり深く掘れてない塹壕に身を隠すのは不可能に近かった。親衛隊も今回はほとんど徒歩で塹壕に隠れている。
 その横を、すうっと上がっていく姿。
「ちょいと気張ってみたりしてなあ……」
 霊騎「アラベスク」のアルバルクだ。魔槍砲二本差しは騎乗状態ならでは。先の縁で援護しようとネプの後につく。
「騎馬なだけに」
「地口……」
 アルバルクの最後に一言に、全員が彼を見た。じと目で。
「辛ぇなぁ……。ま、集中してるのはいいこったな」
 頭をかくアルバルクが、お、と頭上を見上げた。
 ひゅうん、と冬季迷彩の白い機体の腹が一直線に通り過ぎた。
「でっかいのをやっつけるよ! 出戦だ!」
 ルゥミの滑空艇「白き死神」である。
 地上開拓者部隊を追い抜いたところで、前回よりうっすらした黒い霧の両脇を固めていた骨鎧が気付いて寄ってきていた。
「来た来た。まずはアーシャちゃんとネプちゃんの援護だね」
 無邪気に言って魔槍砲「赤刃」を構えると低空飛行。くりくりっとした大きな瞳を片目つぶりに正確に狙った。
――どーん!
 得意の魔砲「スパークボム」で範囲爆破。
 骨鎧も前回喰らって分かっていたようで、一斉に防御体勢を取って耐える。
「んもう。空爆してお掃除するつもりだったのに。もう一回いくよ!」
 撃った後機首を引き上げ急上昇していたルゥミが、ふっと失速して急降下。もう一回狙うが、今度は敵の弓術射線が迎撃している。
「援護するって約束したんだよ!」
 駄々をこね……ではなく、意地を張って進入角度は変更なし。もういっちょ、ど〜ん。
「よし、俺は先に行くぞ」
 また上昇離脱するルゥミの横を、水平にクロウの駿龍「カスゥルガ」が高速飛行で飛んでいった。
「塹壕掘りはいいって言ってくれた隊長さんらの期待には応えないとな」
 クロウ、ちゃきりとフリントロックピストルを抜いた。
 距離の詰まる黒い霧を見定めながら去来する思い。

「攻城塔のアヤカシ化? また妙な事になったもんだな」
 前回引き上げる前、夕日の差す部屋でクロウはそう眉を顰めた。
「アヤカシ化するやなんて、砦が落とせんかったことがよっぽど無念やったんやろか」
 その時、ジルベールはおどけて見せた。
「アヤカシになっても任務をってかい……男意地だねえ」
 ははっ、と笑って振り向いたのはアルバルク。
「でかい家城みたいなアヤカシが迫ってるということで、次はおいらたちも男意気を見せるつもりだぜ」
 大きな体で力拳を作る以蔵は漲る意欲を隠しもしない。
「もちろん、無念を晴らさせてやる義理はないわな」
 座って俯き加減だったジルベールの瞳が僅かに上がり、密かにぎらりと中空を見据える。
「しかし自走型のアヤカシか。朧車の親戚みたいなもんか。それならやっぱ物理攻撃で殴るのが有効なのかね」
 ふうっ、と皆に背を向けるよう身を翻したクロウの前には、瞳をきらきらと輝かした真世がいた。
「みんな、男ね〜」
 真世の言葉に気付き、それぞれ男の本気を見せていた面々はちょっと照れさっと隠すのだった。

「もちろん、仲間の期待にも」
 霧に僅かに突っ込んでから、短銃射撃。大きな塹壕方面から突っ込んで離脱する。わざわざギリギリの距離まで肉薄したのは、ダメージ目的ではなく誘導目的だ。
「……っと。危ないな、これは」
 ふぅっ、と駆け抜けた空域を省みながらクロウが目を見開いていた。騎乗のカスゥルガに矢傷がついている。接近したときに、塔上部から弓を構えた骨鎧に狙われたのだ。
「城を攻略する気満々か……こりゃ教えといたほうがいいな」
 ぎゅうん、と身を翻し陸上部隊へと向かう。



 この少し前、陸上部隊。
 すでに塹壕の前を駆け抜け、ルゥミの戦略爆撃が完了した頃。
「お姉、私が前に出てる隙に……邪魔はさせませんよ」
「テパ、いい子だからアイシャと一緒にいてね。ちゃんとあとで迎えに行くから」
 ひとしきり弓を撃ちつつ敵の接近を許さないアイシャが背中越しにアーシャへ言う。アーシャはテパからひらりと飛び降りアーマーケースを展開する。
「ネプさんも、ほら」
「分かったなのです」
 真世もアイシャに習い、ネプを背後にして庇い撃つ。
「おっと、こういう時は任せてくんなよ、『戦陣「十字硬陣」』できっちり守るぜ?」
 中心やや後方に着いたアルバルクが堅守防衛の構え。この声にアイシャと真世も「絶対守る」と弓を引く手に力がこもる。
「真世さん、そろそろ仕掛けるで」
 ここで、鷲獅鳥「ヘルメス」に乗っていたジルベールが下りてきた。ヘルメスが大地に立ち雄々しく吠える中、神弓「サルンガ」で射撃に加わりつつ真世に後退を指示した。
「はぅ。真世さん」
「うん、分かった。ネプさん。……また後でね」
 真世、去り際にネプの乗り込んだ遠雷型駆鎧「ロギ」に手を振る。横ではアーシャもゴリアテに乗り込んで、駆鎧組が準備完了。
 敵ももう目の前まで迫っている。
「後は任せたからね〜」
 ひゅうん、と飛び去るルゥミ。彼女の援護もここまでだ。
「ようし。ネプさん、陽動は任せます」
「前回はムスペルで不覚を取ったですけど、今回はロギなのです! そう簡単には負けないのですよ!」
 アーシャがゴリアテに搭乗し、右へと回る。
「お姉、行って!」
 アイシャはバーストアローでゴリアテの行く直線上の敵を怯ませる。ここをゴリアテがオーラダッシュで一直線。アイシャもテパを従えこれに続く。
 そして、ネプ。
 彼も一直線にオーラダッシュ。
 ただしこちらは近場前方の骨鎧の群れに突っ込んだ。なびくマントが横に揺れたのは、無骨なアーマーアックス「エグゼキューショナー」を構えた証し。前回彼の乗り込んだ火竜型アーマーと同じ桜色のカラーリングだが、動きは見違えるほど早く、キレもいいッ!
「旧世代だからって甘く見ると、痛い目に遭うですからね!」
 瞳を輝かせ吠える。外見は少年だったり少女だったりと間違われるが、今この瞬間は間違いなく男の輝き。
 格好良く駆鎧を使いそうなアーシャ。そして真世が見惚れていた男たちのダンディズム。
 それらに気後れはしない。
――ズシャッ!
 半月薙ぎで群がる敵を一気に捌く。
「今回は囮なのです!」
 腰を落としたロギの中で戦況を睨むネプ。
 右を見た。
 敵が体勢を立て直している。
 左を見る。
 敵が武器を構え直している。
「やるです!」
 決意の言葉とともに振り回すアックス。仲間を信じて派手に戦い、一手に敵を引きつける。
 この時、ネプの右をぐぅん、と低空で過る影。
「……ふむ。いい働きをしますね」
 甲龍「グロック」に乗ったアレクセイだ。涼しい顔をしつつ戦況を見極め、苦無「獄導」を必要に応じて投げている。
「私とグロックの影でお嬢様たちの動きは隠せましたかね」
 上昇して離脱。瞳を伏せ、いい仕事をしたと満足そう。
 そして、一旦離脱した真世とジルベール。
「よし、真世さん。ここに隠れとくんや。そしてあのでっかいのが塹壕に落ちたら、貸してたの撃ちこんで逃げてな?」
 ジルベール、罠伏りで真世を塹壕に隠した。徒歩の親衛隊もいる奇襲をしてもらうつもりだ。
「そんじゃ、頼んだで〜」
 ヘルメスで再び空に舞うと、そのまま黒い霧に向かった。
「気をつけろ。対空射撃してくるぞ」
 すいっ、とクロウが寄ってきた。これまでも上下左右に動いて幻惑しつつ、破城塔にちょっかいを出していた。
「それじゃ、あたいがまとめてど〜んしてくるよ」
 ルゥミが背後から接近して掠め飛びつつそれだけ言うと、魔槍砲「赤刃」を構え突撃して行った。
 が、霧の中から高機動からの急反転で離脱した彼女は結構弓を喰らっていたようで。
「その代わりでっかい屋根を壊してきたもん!」
「見てましたが、すぐに回復してました。その分黒い霧が晴れたようですけどね」
 グロックに乗ったアレクセイも寄ってきた。
「それより、アーシャお嬢様が突っ込みます。右手側から援護してください」
 アレクセイ、それだけ言うと破城塔左側面に急降下した。ジルベール、クロウ、ルゥミもこれに続き打撃を集中する。
「おおっ!」
 これを、隊列から離れ戦線後方で観察していた以蔵が目の当たりにして歓声を上げた。
「やるなぁ。すっげえ威力だよなっ」
 若者らしく顔を紅潮させて喜ぶ。一瞬、目視できるほど霧が晴れたのだ。
 直後、破城塔の反対側。
「壁を壊しますよ〜〜〜っ!」
 駆鎧「ゴリアテ」の中で騎馬に乗っているように前傾姿勢となったアーシャが、ゲートクラッシュで突っ込む。
――ガシン!
「まだまだ〜っ!」
「ちょっかいは出させませんからね」
 猛るゴリアテの後方には、アイシャ。ロングボウ「フェイルノート」を引き、後部から出てきた骨鎧を撃ち牽制する。純白の弓身と銀に輝く弦が黒い霧の中でも目立つ。もちろん、アイシャの方にやって来る敵はもちろん歓迎。近寄る前に一掃とばかりにバーストアローを連続発射し、ジンクローで踏みつけ。
「もしも〜し、誰かいるのでしょうか?」
 さらにゲートクラッシュしたところ、ついに壁が崩れた。
 もやはかかっているが中が見える。
 そして、一階中心に光る珠を見つけたッ!
「あっ」
 アイシャ、気付くが黒い霧が晴れる。
 一瞬で壁が再生すると、また霧が包む。さっきよりは薄い。
「塹壕が近い。そろそろ仕掛けるぜぃ」
 ここでアルバルクが突っ込んできた。
 そして、遠距離で観察する以蔵。
「アーシャ単独攻撃の右の方が弱そうだな」
 それだけ言うと佇まいを変えたッ!
 左を攻撃した4人が、これ見よがしに敵前方低空を掠めるように飛んだのだっ!
「ピックターン狙いや」
「空なら塹壕の上を飛んでも大丈夫だしな」
 ぎりり、と歯をかみ締めてジルベールが急旋回しながら前を飛び、クロウはひらりと塹壕上へと引いていく。
「これでどうだ、これでどうだ!」
 ルゥミはシュトゥルモヴィークで爆破射撃を連発しながらゆっくりと。
「よし。お嬢様……」
 アレクセイはすうう、と大きく息を吸い込んだ。
――ピィィィィ! ガリガリガリッ!
 アレクセイの呼子笛が響くとともに破城塔がピックターンに入った!



――ガターン!
「やった!」
 全員の歓声が響いた。
 破城塔が、前方本命の塹壕に見事はまったのである。
 この時。
「ふぅ、危なかったわね〜」
 アイシャは背面につぶてを大量に喰らっていたが、オーラダッシュで脱出し振り返って息をついていた。
「行くぜ!」
 後方でこの時が来るまで我慢していた以蔵がついに高速走行で最前線に猛然と吶喊。足の止まった骨鎧たちには爆砕拳を左右に見舞いつつ、塹壕に鏡王・白の踏みつけで敵をつぶして降り立つ。同時にはぁぁ、と気力を溜めた。
「わた……私の出番」
 真世も動いていた。
 静日向の高速走行で近寄ると、抱え大筒をドォン! 傾いた後背の車輪群の一部を砕く。
 その後、ジルベールの言いつけの通りに引かない。振り返ると、ロギがいた。
「はぅぅ、真世さん」
「約束だモンねっ」
 真世、静日向に乗せていた油壺の紐を、差し出したロギの手に持たせ導火線に火をつける。
「行くですよ〜っ! 燃えちゃえですーっ!」
 フレイルのようにぶうんと投げた!
――ボウッ!
 塹壕の外周にも油壺や火薬を用意していたので一気に炎に包まれる。が、破城塔はアヤカシなので延焼はない。ちりりとダメージを受けるだけ。火に弱いとかではない。
「それより左側面が弱点だぞ! ……と。回り込んでる時間はねぇけど」
 炎に照らされ、以蔵が物凄い形相で絡踊三操を繰り出していた。
「これがおいらの……破軍!」
 破軍、破軍、と連打・連打。ターンするピックや車輪群を狙い撃ち。足殺しだ。激しく晴れ散る黒い霧。
「よし、ここですね」
 アレクセイは、再びグロックに急降下チャージからの烈槍を仕掛けさせておいて地上に飛び降りていた。
 きっ、と振り返った視線の先は、敵の後方開口部。
「狙うか? あれは弱点っぽいが、罠の可能性もあるぞ?」
 この動きに気付いたクロウが、くん、とカスゥルガを転換させてチャージ。ちょうど開口部から骨鎧の弓術隊が構えを取っていた。アレクセイに向いていたが、さっとクロウに目標を変える。
「ただの囮で終わらせるには報酬に足りねえからなあ……」
 ここで、アルバルク。
 以蔵の叫んでいた敵弱点の左側面を駆け抜けつつ二丁乱舞をかましていたが、もう一つの弱点である後方開口部にひょっこり顔を出した。
 横合いから至近距離でいきなり出てこられては敵弓術隊もたまらない。アレクセイもクロウも狙うことが出来ずに乱れ、アルバルクの二丁魔槍砲を喰らった。いや、上空からはクロウの乗るカスゥルガのチャージが、そして正面からはアレクセイの手裏剣が飛んでくる。
 あっという間に敵の最終防衛ラインが崩れた。
「アレクセイ、核が中にありました」
「分かりました。今、明かりをつけます」
 突入するアレクセイに弱点らしき情報を伝えるアイシャ。内部に飛び乗ったアレクセイ、背中越しにほほ笑み返す。
 しかし、勝負はタッチの差だったッ!



「アレクセイ、アイシャ、気をつけて。敵は塹壕を越えるわよっ!」
 今度は外からの声。ゴリアテから出てアーマーケースにしまいこんでいるアーシャだ。周りは親衛隊が守っている。他の親衛隊は徒歩で骨鎧と戦い、瞬膳は弓術隊の指揮を取っている。
「はぅ、これは」
 ネプも存分に戦ったロギから出て驚いている。
 何と、破城塔の前面装甲板が剥離し、渡り橋のように前に倒れたではないか。
 もちろん、前は平地ではない。塹壕の窪みに引っかかり斜めになってる。
 が、破城塔にとってはこれで前輪がかかり足場となる。
「あっ。また霧が消えた……と思ったら」
 真世の叫び。
 どうやら黒い霧が瘴気で、破城塔は自らがやられたらそこから瘴気を補充して瞬間再生しているのだとさすがに看破している。いや、もしかしたら骨鎧もそうやって生み出しているのかもしれないとうすうす感付いている。
 しかし、それを前面装甲板で、自ら離脱するとは。
 気付いたときには、前面装甲板は再生していた。
 もっとも、これで霧はほとんど晴れたといってもいいくらいだが。
――ガリガリガリッ!
 そして凄い音を響かせ、多輪駆動の利点を生かし自ら切り離した板をべきべき砕きながら斜面を上がる。
「おおっ」
 中に唯一突入していたアレクセイがさすがに姿勢を崩す。
「あれですね?」
 中は黒い霧で視界が厳しい。暗視で光る珠を確認すると、持参していた油を撒き……。
「アイシャお嬢様、あとはお願いします」
 何とアレクセイ。炎を纏った!
 火遁であるッ!
 途端に延焼する油を撒いた周囲。
 黒い霧も一瞬晴れ、しかも炎で中は明るい。
「合いましたぁ! いっけぇ!」
 狙い澄ました一矢が走る。
――カツッ!
 脆い。
 敵中核らしき光る珠は、この一撃で中空に浮くのをやめて転がり、光を失った。
 瞬間ッ!
「霧が晴れたよっ」
 上空で塔上部に攻撃を加えていたルゥミが喜ぶ。
――ガタン!
 しかし、敵は塹壕から這い出ていた。
 そのまま物凄い勢いで北の砦に突進した。あまりの急激な動きにアレクセイは後方開口部からこぼれてしまう。
 抜かれた。
 もう、開拓者にこれを追う底力はない。というか、骨鎧が邪魔だ。
 砦から矢も放たれていたが、焼け石に水。塹壕堀に集中したため巨大弓は復旧していない。
――ガコン、ガコン……。
 破城槌の動く音が響いて、ついに北の砦が破られるのだった。

「私たち、失敗したの?」
 事前に林青に言われたとおり前に撤退する真世たち開拓者。
「いや、失敗じゃないですよ。隊長は、『今の南那の戦力じゃ防げない。援軍も真世さんたちだけじゃ少なすぎる』って言ってましたから」
 こちらについて逃げた親衛隊は、そう打ち明ける。
 後の話となるが、砦は破られたものの破城塔の特殊能力を潰したことが開拓者達の評価を上げることとなる。敵左側面の弱点を正確に看破し攻撃したとしても、砦は破られただろうと後に瞬膳は報告したという。