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■オープニング本文 ※このシナリオは初夢シナリオです。 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 「はっ!」 突然の展開で申し訳ないが、洋行の画家・下駄路 某吾(iz0163)は下宿していてた部屋で飛び起きた。 「……夢……か」 あれは何だったんだろうと思い返す。 窓ひとつない蝋燭の灯す広ささえもはっきりしない部屋で戦っていたのだ。 際限なく襲ってくる、亡霊と、騒霊と、骸骨とっ。 「えらく現実味はあったがな……」 ぶるっ、と身震いするがいつまでも悪夢の余韻に浸りたくはない。頭を振ってイメージを振り払うと出掛ける支度をする。 日中の彼のすることは、通りでのデッサンだ。 ここは米国某州のナーカムという町。芸術の都、というわけではないがカメラマンや画家が寄り付いている。噂では、幽霊屋敷があってカメラマンはそこで稼ぎ、画家も感性を身に着けるためここで修行する者がいるという。某吾は、「ここならよそ者が長期滞在してもなぜか格安だから」と勧められここに落ち着いていた。 ともかく、町の平和な様子を画用紙に描き出す。 「ん?」 が、その途中に手が勝手に動き出したではないか。 「どういう、ことだ?」 怪訝がる某吾を余所に、彼の手は画用紙に次々とそこにはないモノを描き出していくのだった。 夜。 悪夢が何であるか、とある酒場で知った。 「読んだか、その手記。おそらく、あんたが見た悪夢っていうのはこの館で起こったことだろうな?」 気紛れでカウンター席に座った某吾、何か話題をと思い悪夢のことを話したらすぐにバーテンが「これを読め」と紙束を渡してきたのだった。 まさに、自分が悪夢で見たことが記されていた。 「予知した……のか?」 「いいや」 愕然とする某吾に、バーテンが首を振った。 「悪夢を見た、ということは『呼ばれている』んじゃねぇのか? 予知夢でそんな結末の夢を見たなら、館にゃ近付かんだろ?」 「このメモを書いた人物は?」 「死んだよ。館から無事に一人だけ生還したが、逗留した下宿でこの世のものではない何かを見たような形相をして、な。これを書いた後に」 館の名前は、フェザートップ館というらしい。地元で有名な幽霊館だという。 「まあ、この酒場になぜかふらっとやって来て『悪夢を見た』っていう奴は結局、フェザートップ館に行って帰ってこないから予知夢ってのはあながち間違っちゃいねぇけどな」 「待て……。この報告書に、これもこれもこれも、出てきてるぞ? ということは、これもこれもこれも、館で発見できるものか?」 某吾はバーテンの話を聞き流し、昼間に自動書記で描いた画用紙をばさばさと見比べていた。 以下、描いてある物を記す。 A羽根ペン Bぎょろり目の人形 C爪先立ちした眠り人形 Dブーケ抱く女性の肖像画 Eチェス盤 F先割れスプーン G左翼のない女神像 H花瓶 I首吊りの縄 J馬頭柄のナイフ K水晶の髑髏 「報告書にも出てきてるアイテムが多いな。ま、行く気みたいだし、上手くやってくれ。一人じゃアレだろ? 俺が仲間を募っておいてやる。……噂じゃ、あの幽霊屋敷は『名状しがたきもの』を封じているということだ。謎を解いて、災厄を払ってくれるのを住民は願っているのさ」 バーテンはそう言って話をまとめるのであった。 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
月野 魅琴(ib1851)
23歳・男・泰
霧雁(ib6739)
30歳・男・シ
厳島あずさ(ic0244)
19歳・女・巫 |
■リプレイ本文 ● ――カシャーン! 「こ、こんな恐ろしい館にいられません! 帰らせていただきます!!」 東洋の巫女、厳島あずさ(ic0244)が涙をにじませつつ叫び振り返ると、先ほど入ってきた大きな扉を開こうと手を掛けていた。 フェザートップ館一階エントランスはひどい有様。 下駄路 某吾(iz0163)たち探索隊が一歩踏み込んだ途端、扉が勝手に締まり天井からシャンデリアが落ちてきたのだ。 さらに、シャンデリアの隙間から亡霊が湧き出しては「ひひひひひ」「ふふふふふ」と飛び交っている。同時に、ここに飾ってあった全身の鉄鎧がまるで生きているかのように歩き出し剣を振り上げ迫り来るではないか。 「悪夢に出てくる、館……ですか。これは興味深い」 月野 魅琴(ib1851)の瞳がモノクル(片眼鏡)の奥で薄く細められる。 「文士さんっ、避けろ。亡霊は体当たりで攻撃してくるぞっ」 某吾の声。 「ふむ……護身術も、習っておくものですね」 魅琴は落ち着いた足運びで亡霊の体当たりをかわしている。そればかりか、回避際に掌を輝かせて打ち込んでいるではないか。 「ただの文士ではない、ということか」 華僑の道士、羅喉丸(ia0347)が華麗な身のこなしで魅琴に感心する。明らかに武道者の身のこなしと判断、彼を庇う必要はないと前を見据える。 ――ガゥン! 羅喉丸の隣で銃声が響く。 「胡散臭いな、ここも」 黒ずくめのマフィアの運び屋、ロック・J・グリフィス(ib0293)が懐から45口径を取り出しぶっ放したのだ。がこん、とへこんでたたらを踏む全身の鉄鎧。 と、ここで隣を気にする。 「……道士よ、そんなもので大丈夫なのか?」 「ただの布だと思わぬことだ」 聞いたロックにそれだけ答え、羅喉丸が襲い来る亡霊に向かって神布「武林」を巻いた拳を溜める。 「九天応元雷声普化天尊よ、我に力を」 突き出す拳。 間合いは遠かったが、拳を突き出すと同時に紅の波動が放たれた! じゅう、と浄化される亡霊。 ――ドンドンドン! 「そ、そんな、でられないなんて!」 ホールの入り口では、あずさが空しく両開きの扉を叩いていたのだ。どうやら開かないらしい。そこには『時が来れば』という張り紙がある。 「危ない。もう一体来たぞ!」 響く羅喉丸の声。 正面扉から続く奥の通路より、新たな全身鎧が姿を現したのだ。 今度は台座に車輪が付いており、前に構えた盾はとげだらけ。 「圧殺のトラップか」 ロックが仕掛けの狙いに気付くが、彼は鉄鎧にトドメの一発を放った直後だ。対応できず見送るのみ。 「ひ!」 そして、圧殺鎧の先にはあずさがいた。鎧の台車は砕けたシャンデリアをふっ飛ばし圧倒的な質量と速度で迫る。 ――ゴシャ! 鎧は両開きの扉に激突して止まった。 「あずさっ!」 響く某吾の、ロックの、羅喉丸の声。 「いや……」 魅琴はにやりとモノクルを直す。 その、視線の先。 「アメリカンNINJAには全てお見通しでござるよ」 霧雁(ib6739)があずさを抱えてポーズを取っている! 忍者にしては桃色の長髪が目立ちまくりだが、とにかく彼が素早く横合いから身を入れてあずさを抱き込み激突から助け出していた。 「ここにいちゃまずい。散るぞ!」 某吾、気を取り直して叫ぶ。 同時に、散る。 某吾、羅喉丸、魅琴、ロックが右に回り二階へ。 あずさと霧雁は左に行きつつ一階奥へと進む形となった。 ● その後、二階。 「おかしい。夢では二階には追ってこなかったはずだ」 某吾が逃げつつわめく。 そして、苦し紛れの行動に出た。 手近な扉を開けたのだ。不用意にッ。 「グアッ!」 開けると同時に人狼が部屋から飛び出してきて襲いかかってきた。 「あっ」と不意をつかれ体勢を乱す某吾。 「酒場で読んだ報告書にもあったな、ここは」 二人の横合いから、羅喉丸の拳! 派手さのない正拳突きだが、人狼のわき腹にメキョォ、とめり込んでいる。ドシャーッと吹っ飛ぶ人狼。 「羅喉丸さんっ」 「夢は覚めなければな、悪夢とあらばなおさらだ」 某吾の叫びに、ぐっと拳を固めてにやり。 そして、再び向かってくる人狼に目の覚めるような連打を繰り出すのだった。 しかし、その戦いを見ていた某吾は、扉から出てきた亡霊に「ひっ!」と悲鳴を上げ膝から崩れ落ちた。その後二度と動き出すことなく力尽きるのであった。 一方、先行して逃げていた魅琴。 「む、いない……」 振り返ると、付いて来ていたはずの某吾と羅喉丸がいない。逃げてきた通路は音も光も飲み込むようなねっとりとした闇があるだけだ。 ――ギャララン……。 「また圧殺トラップか。文士、部屋に飛び込め」 前を警戒していたロックがそれだけ言うと、後を見ている魅琴の首根っこを掴んで手近な扉を開けて飛び込んだ。間一髪、廊下を圧殺トラップが行く。 「ん? ここは寝室か」 「おわっ!」 魅琴が顔を上げたとき、横にいたロックが物凄い勢いで部屋の奥に消えた。 すぐに気付く。窓からうねうね動く植物の蔦が侵入してロックを連れ去ったのだ。 魅琴の方はすぐに絡み付こうとした蔦を手刀で弾き払い、骨法起承拳。蔦はそれ以上は襲ってこずに、窓はぴしゃりと閉じられた。 「ふむ……護身術も、習っておくものですね。しかし……」 どうしたものか。 見ると、部屋には空の花瓶と花を抱く女性の肖像画、そしてチェス盤があった。 魅琴は花瓶にわき目も振らず、チェス盤を挟んだ椅子の一つに座る。 そして、馬頭柄のナイフの存在に気付いた。手に取る。 「ふうん。チェックメイト……何て」 どすっ、とキングを追い詰める場所にナイフを立てた。 が。 「貴方は怖くないのか?」 ふと、誰かが魅琴に聞いてきた。姿は見えない。 「私だって、人間ですから恐怖は感じます。ですが……あり得ない体験に、心が躍るのですよ。この感覚、少しでも書に残せれば、本望です」 いや、見えている。 対峙する椅子を見据える魅琴は明らかに、そこに何者かの存在を捕らえていた。 「本望?」 位置を直すモノクルに、うっすらと白い鼻髭の壮年男性が映りこむ。 「ええ。喩え、命をとしても……」 瞬間、横手の壁にかかる肖像画の女性の目が輝いた。ぐりん、と回転するチェス盤。チェックメイトのナイフのナイトの目が魅琴を睨み据え光った。 「既視感と懐かしさがあるが……ぐっ……」 魅琴、超常現象を目の当たりにし息を飲むようなしぐさをすると、ぐったりと椅子の背もたれに身を預け動かなくなった。 いや、最後にぴくりと手だけが不自然に動き、床に転がるペンを持つとさらさらと記した。 「馬の道 黄泉路の手向けに 花もなし」 辞世の句であった。 ● そしてロックは。 「ヘ〜イ♪ ミーとトゥギャザーするでござるよ!」 「はらたまきよたま、はらたまきよたま……」 どしゃっ、と裏庭に落ちたところで、霧雁とあずさが戦っていた。もちろん敵は、ロックを引き摺り下ろした蔦の本体たる謎植物だ。 「巫女さん、ミーの門下生にトライするでござるか?」 霧雁は鋼線を広範囲に伸ばして一気に引き蔦をばっさり狩り落とす。どうやら彼はここで手柄を立てて門下生を増やしたいらしい。 「帰らせてください帰らせてください。怖いの苦手なんです〜っ!」 あずさ、聞いちゃいない。目をつぶってアゾットをぶんぶん振り回すだけだ。もちろん当たっていないが、霧雁が切り落としているのでもう攻撃はない。 「……ふん」 最後に土中から出てきた球根に、ロックが銃口を合わせる。ごうん、と銃が吠えると植物は一発で大人しくなった。 「アタッシュケース?」 現場には黒い鞄が残っている。中からは真空管が出てきた。 「さて、マッピングの続きでござるな。……引きずり出された窓から戻って続きをウォーキングするでござる」 「マフィアさん。わたくし、これを見つけました」 ずい、と窓に足を掛ける霧雁に、先の部屋で発見した羽ペンを見せるあずさ。ロックはあずさがすぐにけろりとした様子に面食らっている。 が。 「またかっ……」 「マフィアさんっ!」 戻った一階の次の部屋で、暖炉の中から伸びた腕に連れ去られるロック。あずさが涙を散らしながら手を伸ばすが叶わない。 「体細胞の発生する電気を直列に繋ぎッ! 錬力を注ぎ込んで手裏剣型に凝縮ッ! 投擲するッ!」 その背後では霧雁のアメリカン忍術が大炸裂っ。ござる語尾もどこへやら、雷撃手裏剣を投げる・投げるっ! 「その名もスタープラズマッ!」 す、と変なポージングでモデルのように立つと、最後の亡霊も力なく姿を消すのだった。 その頃、二階。 羅喉丸。 「よし。ぎょろり目の人形から目を先割れスプーンで抉って、水晶の髑髏の眼窩にはめれば……」 人狼と亡霊を倒した羅喉丸が書斎を調べ見つけたアイテムを組み合わせていた。 が、何も起こらない。 いや、足の下。階下というかさらに地の底の方で何か変化があったような気がした。そのまま髑髏は書棚の魔方陣の上に戻し、二階の探索を続ける。 と。 「文士さん。……くっ。下駄路さんに続いて」 寝室で魅琴が冷たくなっていたのを発見した。 「月野魅琴。ただのしがない、作家である。館に訪れたのは、ただのネタ探し」 酒場ではじめて顔を合わせたとき、魅琴は自然な笑みを湛えてそんなことを言っていた。 「せめて、戻れば著作でも……ん?」 名乗った名前が筆名か本名か分からない。と、それよりも彼の辞世の句を発見した。 「ブーケ抱く女性の肖像画には花瓶……というところか?」 羅喉丸が手向けの花に気付き花瓶を肖像画に近付けると、女性の亡霊が浮き出て花瓶に花を生けた。 すると、背後でチェスが進行する。いや、差していた亡霊二人が羅喉丸の方を向き、襲い掛かってくるっ! 「……手間取ったが、『女王のましますベッドにナイフを』」 亡霊二人を難なく片付けた羅喉丸は、馬頭柄のナイフをクイーン取りキングにチェックする位置に刺した。 すると。 頭の上、三階から何かが動き出すような音がするのだった。 寝室のベッドからは黒いアタッシュケースも見付かった。中身は三つの穴のある心霊機械だった。 ● この時、霧雁とあずさは二階にいた。 「ミーが倒しても次から次へと……」 霧雁、得意の忍眼で二階への隠し扉を発見し上がってみたものの、そこは亡霊の無限発生地獄だった。 「はらたまきよたま……亡霊だけならお任せくださ……あっ!」 可憐にアゾットで払うあずさ。実に凛々しい。対亡霊戦だけだと以前のように恐慌してしまうこともない。が、激しく戦ううち唯一の手柄である羽ペンを折ってしまった。大失態である。 「あ。でもっ!」 大きな瞳でひらめく。 戦闘をやめて、だっと部屋の中央にあった左翼のない女神像に羽ペン刺し込む。 「ん? 亡霊がイレイズしたでござる」 「見てください、ニンジャさん。真空管です」 両翼がそろうことで、固定してあった女神像が外れ中から真空管が出てきたのだ。二本目である。 そしてロック。 ――ジリリリン! 「ボスか? ……そうか、ならあっちでウォーランと仲良くと伝えてくれ……全く、たちの悪い悪戯だ」 地下に引きずり込まれ、井戸の底から線の延びる黒電話の呼び鈴に出てそう答える。 が、切った瞬間。 「コオオッ!」 井戸の底から亡霊が現れたッ! 「貴様、報告書にあったベネディクトかっ!」 ごうん、と45口径のトリガーを引くが……。 「……きかないだと?」 とにかく階上に逃げるロック。 「マフィアさん?」 逃げるうちにあずさたちに出会う。 「巫女さん、こいつは物理が利かないぞ」 「だったら……」 あずさ、アゾットを手に通り過ぎたロックの後に立ち塞がる。 「いけないでござるっ!」 「わたくしで……お役に立つなら」 霧雁が叫ぶ。背中越しにほほ笑むあずさ。気力を使い果たしたような、穏やかな顔をしている。同時に祝詞と閃光。 次の瞬間、ぱたりとあずさが倒れた。 ベネディクトの亡霊は、いない。 「真空管……三本目でござるな」 霧雁とロックは、ころりと転がっている三本目の真空管を手に入れた。 三階、羅喉丸。 「これは……首吊りの縄か?」 吹き抜けの鐘楼で、ぶらり垂れ下がる輪になった縄を見上げていた。 「ひょっとして、お探しの物はコレこれではないかな?」 上がってきたロックが、黒いアタッシュケースから出したものは、爪先立ちした人形だった。 「かわいそうでござるが」 霧雁が掛けると、ごーん、ごーんと鐘が鳴り始めた。 「時を報せる鐘、か」 見上げ呟く羅喉丸。入り口の張り紙が思い出されるが……。 「地の底が気になる」 「井戸から強力な亡霊が出てきたな」 羅喉丸が次の目的地を呟き、ロックが経験したことを口にする。 「『名状しがたきもの』もそこにいるかもでござるな」 風に吹かれ腕を組む霧雁が頷く。 ● そして、地下。 そこには光る魔方陣があった。 霧雁、羅喉丸、ロックが足を踏みこむと、魔方陣の中心から巨大な鋏を持つからくりが現れ襲ってきた。 ――じゃきん……。 「俺はロック、音楽を生業としている者だ」 ハサミのサウンドに負けじとロックが出したギターケース。そこから出たモノは……。 「うさんくさいが、ファミリーの依頼だ。悪く思うな」 トンプソンを取り出してドガガガガ、と乱射するッ。 しかし、ボロボロになっても倒れない。 「こいつも持って行け……」 最後にひょいとダイナマイトを投げる。マッチを吸った霧雁は、無言でロックの出したハッパの導火線に点火してから、自ら煙草を吸う。 ――ドォン。 からくりは吹っ飛んだが、地下室の蝋燭に映し出されるその影はいまだ残っている。ぐあっ、と盛り上がって襲ってきた! 「ぐっ。カポネ……」 最前にいたロックがショックで崩れる。 「怪力乱神は語らずというが……我雷公旡雷母以威声 五行六甲的兵成 百邪斬断 万精駆逐 急急如律令」 拳を固め紅砲を狙う羅喉丸が前に出るッ。 「人を惑わす鬼神の類め、去れ」 気力を使って紅色の波動を百裂させたッ! ドドド、と打撃音が響く。 纏っていた亡霊の塊がずるりとむけると、中からガラクタの集合体が出てきた。 「大型拳銃パイファー・ツェリスカ……巨象をも一発で倒す大口径マグナム弾でござる」 ――ドウッ! 霧雁の一撃で粉々になる敵。 これで、フェザートップ館の悪夢は終わった。 「これで静かになればいいな」 「でござるな」 二人は最後に、心霊機械に真空管三つを刺してその場に残すのだった。 そのまま、屋敷を後にする。 ● 後日。 「ん?」 世界中を股に掛けて旅している羅喉丸は、ある古書店で一冊の本を手にしていた。 本の表紙には「月野 魅琴・著」とあった。 懐かしそうな笑みを浮かべる羅喉丸。 「さて。……霧雁のニンジャ道嬢は上手くいってるかな?」 知人を思い出し、空を見上げる。 町では、カポネが若くしてファミリーのトップとなっていた。 |