【希儀】オリーブ販売隊
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/01/02 17:08



■オープニング本文

●新たな大地
 大樹ヘカトンケイレスが消滅し、主要なアヤカシの多くを討ち果たした希儀――明向。かつての宿営地として建設されたその名は、やがて、隣接する都市の名として通ずるようになっていった。
 希儀には精霊門も開かれ、大型輸送船の定期航路開通も決定。
「入植予定の方はこちらで身分改めを願います」
 ギルド職員が木のメガホンを手に大声を張り上げる。希儀は無人の大地が広がっているとあって、天儀各国はおろか、アル=カマルやジルベリア、泰からも入植者を受け容れることとした。無論、土地は非常に安価であるか、魔の森に追われた家庭など、対象者の状況によっては一銭も徴収されない。
 明向周辺は人口も急増し、俄かに活気付き始めた。

●新たな食文化
 チョコレート・ハウスは空の上。
「うんっ、これならおいしいよ」
 中型飛空船「チョコレート・ハウス」内で、艦長のコクリ・コクル(iz0150)が満面の笑顔を浮かべていた。
「そりゃあ良かった。俺たち男どもが味見してもうまいかどうかなんて分かんねぇからな」
 八幡島副艦長はうんうんと肯いている。
 どうやらチョコレート・ハウスのチョコレート職人に作ってもらった「オリーブオイルチョコ」を試食していたらしい。これまで開拓者仲間で話し合った結果、誕生した商品である。
「ふぅん。チョコレートの中にあるカリカリのパンに、たっぷりオリーブオイルを染み込ませてるんだね〜」
「ああ。チョコの風味とは別に、オリーブオイルが香るようにという配慮らしい。チョコの使用量も減るから価格も微妙に抑え目にできたらしい」
「でもチョコをたくさん味わいたい人には物足りないかも……」
「それなら普通のチョコでいいはずだぜ、コクリの嬢ちゃん」
「あ、そっか。……ふうん。軽やかな食感と口の中に広がる風味が新鮮だよね」
 ぽい、と口にほお張るコクリ。オリーブオイルチョコは一口で食べられるサイズをセットで売り出すようだ。
「新たな儀の特産を手軽に味わえるんで、十分商売になるはずだ。これ自体はあまり利益にゃならんが、オリーブオイルの認知度が上がれば願ったりだ」
「そう、それだねっ」
 八幡島が顎をさすって言うように、今直面している課題はその点に尽きる。とにかく、オリーブオイルを知ってもらわないと話にならない。
「たしか、年末の『クリスマス』前に特設販売所を設けてオリーブオイルの料理を売ったりするんだったな?」
「うんっ。ショコラ隊のみんなとそんな約束をしたよ」
「オリーブオイルは泰猫隊が現地に住み込むことで量産態勢はできたが……」
 うーん、と難しい顔をする八幡島。
「どうしたの?」
「いろいろ縄張りや権益の問題があって、神楽の都の通りで売り出すってことにゃいかねぇんだよ」
 不思議そうにするコクリに説明する。
「えーっ! そういうもんなの?」
「人がいなかったり寛容だったりする田舎町じゃねぇんだ。金のうなるような場所だと大方そうだぜ」
「それじゃあ……どうしよう」
 コクリ、とたんに瞳を陰らせる。八幡島、これを見て微笑みながらぽんと肩を叩いて元気付けてやる。
「なぁに、港で商船の荷捌き市として開いちまえばいい。……ただし、そうすると一般広くが来場してくれるわけじゃねぇ。ある程度は売れるがそれ以上は工夫が必要だな。林青に頼みゃ、珈琲茶屋・南那亭が使えるが食べ物を扱う場合は周りの店舗への配慮のため店内のみの展開となる。やや間口は狭くなっちまうな」
「う〜ん。いろいろ難しいんだね」
「ま、実働にゃまだ間がある。この二案より別の案がありゃ、各種交渉に動いてやるぜ。ただし、無理なもんは無理だからその辺は勘弁してくれよ」
「みんなと話し合ってどこで売るかを考えればいいんだね。うんっ、分かったよ」
 もちろん、オリーブオイルチョコ販売のほかに、オリーブオイルを使った食べ物屋台や美容品としての実演販売所、料理実演などが必要だろう。

 というわけで、未だもうひとつの生産地であるアル=カマル出身者以外には馴染みの薄いオリーブオイルのイベント販売に協力してくれる人、求ム。


■参加者一覧
静雪 蒼(ia0219
13歳・女・巫
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
新咲 香澄(ia6036
17歳・女・陰
ベアトリーチェ(ia8478
12歳・女・陰
猫宮・千佳(ib0045
15歳・女・魔
シータル・ラートリー(ib4533
13歳・女・サ
バロネーシュ・ロンコワ(ib6645
41歳・女・魔
アリエル・プレスコット(ib9825
12歳・女・魔


■リプレイ本文


「よ〜し、それじゃやるよっ☆」
 珈琲茶屋・南那亭にコクリ・コクル(iz0150)の元気な声が響き、オリーブのような緑色をした水玉模様のエプロンがばさっとなびいた。胸元にひときわ濃い緑色のリボンがワンポイントで付き、清潔感を醸している。
「服装はこれでよし」
「さあ。いよいよオリーブの売り込みだねっ」
 新咲 香澄(ia6036)が揃いのエプロンをひらめかせて着けつつコクリの顔を覗き込む。
「真世さんは留守やぇ? とにかく場所、お借りしますぇ」
 静雪 蒼(ia0219)が店員に場所を借りる挨拶をする。もちろん蒼もふわりと揃いのエプロン。
「コクリちゃん今回もよろしくにゃ♪ 香澄お姉ちゃんと一緒にしっかり宣伝していこうにゃ♪」
 猫宮・千佳(ib0045)は、エプロンを手にして前に合わせただけでコクリに抱き付き頬すりすり。抱き止めたコクリは真っ赤になりつつ背中に手を回し蝶結びしてあげたり。
 そんな様子を見つつにこやかに会釈するのは、シータル・ラートリー(ib4533)。
「今回もよろしくお願いしますしますわね♪」
 やや下げた頭はスカーフでまとめて清潔感に溢れている。すでにエプロン装着済み。
 そして皆から少し離れた場所にいるのは、ベアトリーチェ(ia8478)。
「オリーブオイルの販売、ようやくここまで来たみたいね。必ず成功させましょう。ねえ、コクリ?」
 ベアトリーチェは振り向くと、ゆったりウェイブする銀髪を手の甲で背後に払った。そして飛び切りの微笑。
「あはっ。りちぇさん」
 これを見てにっこりするコクリ。他の皆もほほ笑んでベアトリーチェを見ている。
「な、何よ。コクリ」
「揃いのエプロン着てくれたんだねっ☆」
「当たり前でしょ? こら、抱きつかない。カスミもアオイもチカもべたべたしないっ!」
 わいわいと寄って来る仲間に面食らい抵抗しつつ、結局もみくちゃにされるりちぇさん。
「と、とにかく。珍しがるんならフシギを珍しがりなさい」
 ベアトリーチェ、その場しのぎに天河 ふしぎ(ia1037)に話を振った。
 そのふしぎ、背を向けていたがぎくっとして振り返る。
 そしていま、明らかになる事実!
「しっ、仕方なくなんだからなっ」
 前屈みでニーハイソックスをきゅっと上げ、ふりん☆とスカートの裾をなびかせている。南那亭のメイド服に揃いのグリーンドットのエプロンという、堂々の女装である。あせあせと弁解しているが……。
「まあ、ふしぎちゃんはいつも通りだしね」
「いつも通りやね」
「うに」
「うふふ」
 あっさりと香澄が言い蒼が否定せず、千佳が頷きシータルが温かく見守っている。特に止める風でもない。
 一瞬、賑わいが止まる。 
「あ。いよいよ販売ですね……頑張りましょう!」
 ここでアリエル・プレスコット(ib9825)が、皆の勢いを取り戻すべく健気に声を張った。もちろん揃いのエプロン姿。
 次の瞬間、ぎくりとするアリエル。
 皆がにま〜っとして彼女を見詰めていたのだ。
「え? あの……」
「アリエルはん、その通りやぇ〜」
「アリエルちゃん、可愛いのにゃ〜」
「普段大人しいアリエルさんにそこまでいわれちゃ頑張るしかないよねー」
 びくりと怯むアリエルに、蒼が、千佳が、香澄が駆け寄ってもみくちゃにする。
「……というわけで、オリーブの確保は目処がついたとはいえ認知と普及がまだまだ至らず。今回の試みのため、宣伝用の瓦版と担当区域地図を用意しました」
 騒ぎから一歩引いて冷静に言うのは、唯一の大人な女性のバロネーシュ・ロンコワ(ib6645)。眼鏡の位置を整えつつ、仲間を導くためキリリとした態度で締める。
「バロネーシュさん、ありがとっ。……揃いのエプロン、似合ってるよ☆」
 コクリがウインクするように、バロネーシュももちろん揃いの格好だった。



「あ。ボクはもうちょっと準備するよ? お客に配る『使い方メモ』を作るんだ」
「私は、ここで試した人が持って帰って、他の人にも見せたりするための小さな試供品を作るわ」
 早速、香澄とベアトリーチェが机に座って作業する。
「お客はん、オリーブオイル使ぅてみまへん? 寒い時期でも肌が潤いますぇ〜」
 蒼は、珈琲を飲みに来ている妙齢の女性にまずはターゲットを絞った。手を握っただけで相手が「まぁ」と表情を変えたのは、事前に懐に入れておいた温石で自分の手を温めていたから。
「えぇかおりやろ〜。髪につけてもえぇし、顔も大丈夫、男性にも使えます〜」
 爽やかな青い印象のある小さな少女が、かいがいしく自分の手を包んでマッサージしている。それが客にはたまらなく嬉しい。
「あら、本当。いいわね」
「オリーブオイルチョコもありますぇ。料理につこぉてもえぇし、肌につこぉても……」
「それじゃ、一つ頂こうかしら?」
 蒼、首尾よく販売したぞ。
「あたしらは宣伝に出発にゃ〜♪ いっぱい宣伝して皆にオリーブオイルを知ってもらうにゃ♪ コクリちゃん、いくにゃよ〜」
「うんっ」
 千佳はコクリと手を繋いで出発。
「では、入り口付近の客を導入させていただきますわね♪」
 「特産オリーブ体験販売中」と書かれた幟旗を手にしたシータルも出る。
「私は施設を回ってきます」
 バロネーシュも試供品を持って出た。
「よし。僕はここに来る前に体験販売会を報せた井戸端会議のおばさんたちがちゃんと分かるように……」
 ふしぎは張り紙を手に店の外に出る。
 そしてばばんと掲示。
『希儀産オリーブオイル入荷しました!』
『美容と健康の為に!』
『一粒で口いっぱいに緑の香り、オリーブオイルチョコ』
 なんとも歯切れが良く伝わりやすい短文。ふしぎは満足して店内に戻る。
 すると。
「あら……。先ほどの」
 ふしぎが声を掛けていた井戸端会議のおばさんたちがやって来ていた。
「ようこそおすぇ〜」
 早速、美容マッサージに誘う蒼。
「奇麗になりますぇ」
「ええ。男性だと思っていたあの人を見ると信じれますわね」
 丁寧にマッサージする蒼に、満足そうな客。男だと思っていたふしぎが女の子みたいに見えたようで。
「最初は独特の風味があって取っつきにくいけど、アル=カマルとか希儀では美容の為に昔から使われてるらしいんだぞ」
 ふしぎはといえば、そんなことを思われているとも知らずほかの客に、えへんと説明していたり。
「そう。独特の風味はありますが、お魚やお豆腐にも合うんですよ」
 ここでアリエルが声を張っておばさんの注意を引き寄せた。故郷・アル=カマルにもあり、普及に使命感を感じているのでいつもの大人しさはなりを潜めている。
「事前に、豆腐・白身魚のオリーブオイル漬けを沢山作ってきました」
 じゃじゃん、と重箱から豆腐と白身魚を取り出して用意する。
 いや、さらに何か取り出したぞ?
 もふらのぬいぐるみだ。
「オリーブ料理ショウへようこそ! 私はアリエル。そしてこれは助手のジャクソン」
 アリエル、人が変わったようなハイテンション。もふらのぬいぐるみ「ジャクソン」を振って挨拶する。


豆腐は賽の目に切って塩をパッパ
そしたらお豆腐ちゃんをひたひたにオリーブオイルをかける
んで一晩おく!
はい、一晩おいたのが……


 軽快に歌いながら、リズムに乗って料理するアリエル。
 お手軽音楽クッキングはしかし……。
「あら、一晩おいたら空に?」
「もしかしてジャクソンちゃん、食べちゃった?」
「へ?」
 客の予想外の反応にびっくりするアリエル。取り出した重箱の中を改めて見ると空だった。
「ちょっとジャクソン、ちゃんと用意しておいてよねっ! ……こ、これでいいかな……?」
 もう一度取り出した重箱には、ちゃんと中身が入っていた。
 客が拍手し、アリエルも気を取り直し再び歌う。


はい、一晩おいたのがこれね♪
ん〜芳醇ないい香り
皆さんお一ついかがです?


 もちろんと試食するおばさんたち。
「うん、美味しいわね」
「よその儀の特産も、意外と身近な食材に合うのね」
 おばさんたちの肥えた舌に認められたぞ?
 台所に立つ人たちに受け入れられたのは大きかった。



 その頃、宣伝組。
「お風呂上りは特にいいものです。実際にお使いになってみると良いでしょう」
 銭湯でバロネーシュが熱心に話していた。
 というか、売り込んでいる。とはいえ番頭も頭が固い。
「うちとこの客は庶民でい。こんなもの使うより毎日銭湯に通うほうがいいにきまってらぁ」
「いつもの銭湯だからこそ変化も必要ですね。お客様との話の種にも良いでしょう」
 商売人の理屈で反論してくる番頭に、落ち着いた口調で理屈で返したバロネーシュ。これにはさすがに番頭もぐうの音も出ず。
「まあ、説明書きがあるなら今日だけ置いときな」
 礼を言って瓦版を置いて、辞す。
「美容に関係する商いをする所はほかに……」
 バロネーシュ、今度は花街に出入りする商人に当たることにした。精力的である。

「希儀で採れたオリーブオイルの販売をしているにゃー。興味ある人は南那亭まで来るのにゃ♪ チョコやマッサージの実演もやってるにゃよ〜♪」
 千佳はコクリと一緒に幟旗を持って歩いていた。
「う〜ん。反応鈍いね、千佳さん」
「女性の多そうな場所に行くにゃ」
「っていうと?」
「呉服屋の通りなんかどうかにゃ?」
「よしっ。行こう」
 移動する二人。これが功を奏す。
「うに、お姉ちゃん、南那亭でチョコの販売とマッサージの実演やってるから来てにゃ♪ マッサージでお姉ちゃん、もっと綺麗になって見るにゃ♪」
「あら、可愛い娘たちね。……ホントに奇麗に見えるの? それじゃちょっと寄ってみようかしら」
 お洒落好きに多く出会えたようである。

 そして、南那亭の前。
「オリーブオイル……?」
 通り掛かった女性が、何それという視線で南那亭を見ていた。
 すぐにこの様子に気付くシータル。小走りに駆け寄って説明しようとする。
 が。
「あ。私難しい話は……」
「奇麗になれます。手がすべすべになります」
「え?」
 最初嫌がった女性を見て、シータルは一言で説明した。にこやかに。
 これが相手の心を鷲掴みにした。
「実演してますから、見てるだけでも分かりますし体験もできます。さあ、こちらですわ〜♪」
 とにかく誘導する。
「ただ今オリーブオイルを知って頂くキャンペーン中でして〜♪」
 シータルの、一人の説明に時間を掛けず中に入れる作戦は効率的だった。
「女性へのプレゼントに、チョコは如何でしょうか。美容に良いそうなので、喜ばれると思いますわ〜♪」
 男性のハートもがっちりキャッチ。

「ただいま〜」
「戻ったにゃ〜」
 コクリと千佳は、ただいま帰還。
「よし、今度はボクと行くよっ。さ、コクリちゃんこれに着替えて」
「え? 香澄さんなになに……きゃ〜っ」
 すぐに香澄に連れられ奥に行くと、そんな悲鳴が。
「それじゃ、行くコン」
「い、行くコン」
 出てきた香澄は、まるごときつね姿。隣のコクリはまるごと管狐姿の狐コンビである。
 そしてサンタの三角帽子を被って外に出ると。
「新発売のオリーブオイルチョコだよ。一口どうぞコン♪」
 手に提げた籠から、道行く人におすそ分け。
「き、狐に化かされたと思って食べてみて……コン」
「そうそう。コクリちゃんその調子。……他のオリーブオイル商品も南那亭で売ってるコン♪ ボクたちのツルツルのお肌は実はオリーブオイルのおかげなんだコンッ♪」
 両手の人差指を頬につけてこんと踵を大地に付けてと可愛さ爆発の香澄。「ほら、恥かしがらずに」とコクリも巻き込みとにかく愛嬌を振り撒く。
「お母さん」
「それじゃちょっと寄ってみましょうかね」
 子ども連れの母親に特に効果的だった。しかも有力な顧客層である。
「あ、そこのお兄さん、奥さんか彼女さんにオリーブオイルを贈ると喜ばれますよぉ、使い方のメモもつけてあげますっ」
「か、香澄さん、凄すぎ……」
 生き生きして動き回る香澄に、たじたじとなるコクリだった。

 その頃、店内。
「自分でやってみなさい。私がしてあげても身に着かないわ」
 つん、とベアトリーチェがそっぽを向いていた。
 ハンドマッサージの実演を担当しているにも関わらずっ!
 が、すぐに彼女の不機嫌そうな瞳は情けなさそうな様子に変わった。
 そっぽを向いた先で、蒼とアリエルがはらはらしていたのだ。
「くっ。どうしてこの私がこんな見も知らない女性の機嫌を取らなくちゃならないのよ」
 という不満は、実際には口に出していない。
 しかし、彼女を知る者が見ればもう、言ってるも同然のようで。
「あんまりこういうのは得意じゃないけど今回は我慢して下手に出るのよ……」
 唇がわずかに動いたが、実際には口に出していない。
「あの……」
「ふっ……。冗談だわ……じゃなくって、冗談ですわ。ご自身でできるようになって、大切な人にしてあげるようになればステキでしょう?」
 最初の言葉に驚いた女性に、笑顔を作って奇跡的に素敵なことを言うりちぇ。
 そして運がいい。
 実はベアトリーチェの前に座った女性、内気でややM気味だった。むしろ彼女に好意を抱いている。
 ところがベアトリーチェ、これに気付いてさららに嫌になる。
「くっ。何処かの変態親父共に向けるよりはマシ……そうよ、コクリの顔を思い浮かべておけば笑顔を振りまくくらいは出来るはずよ。マッサージも……」
 好意を抱くコクリを思い浮かべながら、丁寧にオイルマッサージをする。好意を抱いていた客もこれで大満足だ。
 これを遠くから見ていた蒼はほっとする。
「チョコやったら男性も食べやすぅおすぇ〜。オイルの方は、恋人さんへのクリスマスプレゼントに如何ですか〜。」
 続けて男性の接客にも力を入れる。
「私、次は店の前で豚汁屋台を出してきます。数滴垂らせば風味の良さが分かってもらえると思います」
 ぐ、と決意に拳を固めて外に打って出るアリエル。
「アリエル、僕も行くよ。ちょっとした炒め物にもオリーブオイル、緑の力を貴方の体に何だぞ!」
 ふしぎもついて行き、早速呼び声高らかに人を集めた。



「売れたにゃね〜」
「うんっ☆」
 販売終わって、オリーブオイルなどは全てなくなった。
「試供品も全部配ったおすぇ」
「小分けにした試供品で、次も使ってくれると良いよね」
 香澄は話題を振るが、りちぇさんは乗ってこずにコクリに自分の手を差し出した。
「え?」
「コクリ、それなりに労いがあっていいと思わない?」
 事情は分からないながらも、リチェさんの様子に押されてマッサージするコクリだった。
「実際、舞妓さんたちに浸透すればよいでしょうね」
「料理は人気だったと思うんです」
「思うんだぞっ」
 バロネーシュはそんな期待を口にしたり、アリエルは満足そうでふしぎは大きく頷いていたり。
「クリスマス前なのでオイルもチョコも売れましたね」
 シータルがほんわり言うように、イベントは大成功である。