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■オープニング本文 チョコレート・ハウスは空の上。 「まちがいねぇ。『オリーブ・オイル』を使う食文化圏の船だな」 「オリーブ・オイル?」 中型飛空船、チョコレート・ハウスの食堂で副艦長の八幡島が説明し、艦長の少女コクリ・コクル(iz0150)が首を捻っていた。 今は、武天の某砂浜に漂着した難破飛空船の調査団のため、立ち入り禁止警備の依頼をした帰りである。依頼は大成功で、好意的になった調査団から結構な内部情報を教えてもらっていた。 石像や美術品などがある中、八幡島が注目したのは多くの人が修復作業などに従事したそれらではなかった。 「ああ。積載物ももちろん調べなくちゃいけねぇが、意外と船の特徴が出るのが食堂や厨房だ。天儀の船だと底の深い鍋が多くて箸が目立ち、泰の船だと底の丸い鍋が多く、ジルベリアの船だとフライパンが多くなってくる、とかな」 「あ、なるほど。食文化の違いがそのまま出るんだね?」 八幡島の説明に納得するコクリ。このあたり、飛空船同士の交流などがないと気付きにくい点ではある。 「さらに言えば、飛空船が大きくなればなるほど保存の利く食料が積載されてたりすんだよな」 例えば、チョコレート・ハウスは天儀の船だから梅干など、泰の船なら糠秋刀魚などが特徴的となるとかなんとか。 「あの難破船だと……」 「そう。調味料の部類になるが、オリーブ・オイルが特徴的だな」 期待に目を輝かせるコクリに、八幡島がにやりと言ってやる。 あの難破飛空船の厨房や食料庫の棚には「オリーブ・オイル」と読める文字があったのだ。そして、復元した美術品にもオリーブの枝と葉を意匠にしたデザインが多く見られたらしい。 「ああいうのは、商売に目端の聞く奴じゃなきゃ、ただの価値のない情報かもしれんが、俺たち商人の端くれにかかりゃお宝情報だ。……コクリの嬢ちゃんたちの働きで、特別に教えてもらったんだ。大手柄だぜ?」 「あははっ。……でも、オリーブ・オイルって?」 コクリ、ぽふぽふと頭をなでられ喜んだが、ついに根本的なことを聞いた。 「アル=カマルでも流通している調味料だな。商人の間で話題にはなったが、醤油とはまた違った癖がある。それよりも、神楽の都で名の売れはじめていた珈琲なんかに商人たちは飛びついたから『売り』時期を逃したと商人間のもっぱらの話だ。だから、まだ天儀じゃあまり出回ってないし認知度も低い」 「ん?」 ここでコクリ、あることに気付いた。 「それって、最初の頃のチョコレートとか珈琲のときの状況と似てない?」 「そーゆーこと。一発、『新儀特産』なんて売り文句で煽りゃ、もう一度注目される。そこでうまく天儀の食文化に合うように売り込みゃ、涼子のお嬢さんも俺たちも嬉しいし、産地の農家も嬉しい、そして天儀の人も嬉しいって寸法だ」 にんまりとコクリを覗き込む八幡島。 「よし。とにかく行動だ。俺は神楽の都に戻ったら涼子のお嬢さんに報告する。コクリの嬢ちゃんは、開拓者を雇ってこれが本当にオリーブの葉か、これがオリーブ・オイルかどうかを調べてくれ。神楽の都にアル=カマル街があるから、そこを訪れるといいだろう。ついでに、オリーブが多く収穫できるという推測が成り立つから、そこから向こうの土地柄なんか推測を。……そうそう、権益をうまく俺たちが握る手段と、天儀の文化に合わせて料理なんかに使ってもらえる方法とか、とにかくいろいろ夢を広げてみてくれ。実行できるかは後回しでいい。……こりゃ久々に大冒険できそうな予感だぜ?」 「う? ……うんっ! 大冒険できそうだよねっ」 コクリ、子どものようにはしゃいでまくし立てる八幡島の言葉についていけなかったが、最後の「大冒険できそうな予感」だけには激しく反応した。 とにかく、難破船から発見され好意で分けてもらったオリーブ・オイルと思われる液体の入った瓢箪とオリーブの葉と思われる意匠のある紋章の写し絵を持って神楽の都のアル=カマル街に行き、これがオリーブであるか確認した後、オリーブを手掛かりにまだ見ぬ土地や文化、料理など想像して流通販売に有利になる動きを考えてくれる人、求ム。 |
■参加者一覧
静雪 蒼(ia0219)
13歳・女・巫
新咲 香澄(ia6036)
17歳・女・陰
アルネイス(ia6104)
15歳・女・陰
ベアトリーチェ(ia8478)
12歳・女・陰
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
バロネーシュ・ロンコワ(ib6645)
41歳・女・魔
鴉乃宮 千理(ib9782)
21歳・女・武
アリエル・プレスコット(ib9825)
12歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ● 中型飛空船、チョコレート・ハウスは神楽の都の港に到着していた。 その食堂。 「ちょっとコクリ」 「え? なに、りちぇさん」 ずいい、と金色に妖しく光る右の瞳がコクリ・コクル(iz0150)にアップで迫った。あだ名を呼ばれたベアトリーチェ(ia8478)は、コクリの顎に指を添え支えると一呼吸置いた。二人とも背が低い。 「知らない間になんだか凄い物を発見をしていたみたいね。……面白そうじゃない、私も手伝わせてもらうわよ、友人として」 「うんっ。ボク、嬉しいよ」 「ちょ……あくまでも友人としてよ?」 逆に、コクリに瞳を覗き込まれのけぞるりちぇ。あまりの無邪気さにたじ……となっていたり。 この時。 「コクリちゃんゲットにゃ〜♪ 今回も宜しくにゃ♪」 橙色をした猫的な何かが突っ込んできて、至近距離で見詰め合うコクリとりちぇにがしー、と抱きついた。 すかさず、うにうにと頬を擦り付けてくる。 「わっ、千佳さん!」 「チカ、こらっ、やめなさいってば……。べ、別に嫌じゃないけど……」 猫的な何かは、猫宮・千佳(ib0045)だったようで。 ――ばーん! 「わ!」 今度は派手に食堂の扉が開いた。 「コクリちゃんっ、新しい冒険だって!?」 いつも前向き陰陽師、 新咲 香澄(ia6036)だ。 「オリーブオイルっていう調味料に関する調査らしいですね」 「いろいろ考えるん楽しおすえ〜」 後にはアルネイス(ia6104)と静雪 蒼(ia0219)が笑顔で立っていた。 「香澄さん、アルネイスさん、蒼さん……」 思わず、吸い寄せられるように駆け出すコクリ。「ちょ……」、「お?」などと抱き付いていたりちぇと千佳も釣られて続く。 「みんな、頼りにしてるよっ☆」 三人に飛び込むコクリ。結局六人で抱き合い喜ぶのだった。 「……冒険は良いな。未知の発見は心が躍る」 「先日の武天に流れ着いた飛空船より色々調べた結果明らかに成ったのが多数有るのですが、やはり色々細かい処に手を尽くせば現実との関連を見出せる物が有りまして……」 香澄たちの後ろから、黒い翼の背の高い人物が近寄って微笑する。隣では色白で耳の長い姿。さらりとショートボブの茶色い髪が揺れる。 鴉の獣人、鴉乃宮 千理(ib9782)と、エルフのバロネーシュ・ロンコワ(ib6645)だ。 「うんっ! 千理さんとバロネーシュさんだね、よろしくっ」 「……知る限り、助力します」 古い仲間ともみくちゃになりながら見上げるコクリに、うむと会釈する千理と言い切るバロネーシュだった。 そしてもう一人。 「ア、アリエルです……よろしくお願いします……」 びく、と内股で身を震わしつつ通路の影に隠れ気味にしていたオッズアイの小さな少女がいた。 アリエル・プレスコット(ib9825)、いつも行動を共にしていた友人はいないが、なんとか自己紹介はできた。 「うんっ。よろしくっ☆」 「あ……」 ウインクしたコクリに表情を変えるアリエル。 「それが、今回の手掛かりですね?」 コクリの手にぶら下がっていた瓢箪に吸い寄せられるように、銀髪をなびかせアリエルは食堂に入っていく。そして、「ちょっと、失礼します」と受け取り栓を抜くとくんくん鼻を利かせたり指で受けた油をぺろっと舌で確認したりして……。 「これはオリーブオイル……!」 アル=カマル出身のアリエルは断言した。 「失礼……。ああ、これは」 同じくバロネーシュも確認する。 「色・香り等からオリーブオイルに違いなく。……それも上等な品目」 「バロネーシュさん、それってどういうこと?」 断言したバロネーシュを見上げ、首を傾げるコクリだった。 ● 場所は変わって、神楽の都の一角にあるアル=カマル街。 「一番は実際に見てみることですかね」 バロネーシュを先頭に、雑多な商品並べ店を広げている通りを歩く。あまりに並べている物が多いので道が狭くなっているほどだ。隙間があれば、ウードを抱えた吟遊詩人が歌ったり、薄衣を纏いひらめかせ踊るジプシーがいたりする。 「そういえば、アル=カマルではオリーブオイルはどの様に流通したのでしょう?」 続いて歩くアルネイスが聞いてみる。 「えーっと?」 アリエルが首を捻った。 「ほら、元々オリーブの木が自生してたのか、とか。……それに、これは本当にオリーブの葉なのかとか」 「それは……あ、その紋章、オリーブの葉をモチーフにしたものに間違いないと思います」 アルネイスがひらりん、と難破船で発見された紋章の写しを見せるとアリエルは太鼓判を押した。 「それにしても、こんなのジルベリアでも見たことないわ。大丈夫なの?」 「大丈夫……です」 うろんな目付きをするのはベアトリーチェだ。アリエルはさらした細い肩を縮めて両手を胸の前で組んで必死に訴える。 「へええっ。同じ銀髪でも、波打ってるのと真っ直ぐじゃ随分印象が違うんだね〜」 二人の言い合いを見てコクリがにこやかに言った。装着したヘッドドレスが似ているのもある。ともかく、ツン、と顔を背けて照れるベアトリーチェに、俯いて小さくなって恥じ入るアリエル。 「そういえばコクリが警備した難破船にあった美術品も未知の文明レベルだったのよね?」 はっ、と思い直してベアトリーチェがコクリに聞いた。コクリ、頷く。 「ジルベリアでなし、アル=カマルでなし。……でもなんだか神秘的な感じなのかしらね?」 「オリーブオイルを扱う新しい儀があるかもしれないよねっ」 顎に手を添え考えるベアトリーチェの横から、香澄が身を乗り出して言う。 「うに。そうかもにゃ〜。オリーブが育つってことはやっぱり温かい所なのかにゃ?」 さらにその香澄には千佳が抱き付きつく。お気楽に想像してみたり。 「だろうね。アル=カマルにあるという事は新たな儀の気候はアル=カマルに似ているのだろうな」 その千佳のねこみみ頭巾に、ぽふりと載せられる手。千理だ。落ち着いた表情のまま静かに言った。「つまり、空気が乾燥し、雨が降りにくい」とも。 「まだ、アル=カマルと新たな儀が開通してて交易しているという線は残ってますけどね〜」 「それは無いです。嵐の門でつながったのは天儀が最初のはずですから」 アルネイスが話を整理し、アリエルが必死に声を出してその可能性を否定している。 この時。 「ふふっ」 「な、何ですか、コクリさん?」 「ううん。何でもないよっ☆」 笑ったコクリは、アリエルと仲良くなれたのが嬉しかったようで。くるっと気分良く回ってみせる。 「でも、アリエルさんがそういうなら、きっと未知の儀があるってことだよねっ」 香澄が嬉しそうに話をまとめた。彼女の場合は大冒険できるという喜びだ。 「……じゃあ、見てみるのはこの店で」 それはともかく、バロネーシュがさらりとショートボブを揺らして振り返った。 「これらはどれもオリーブオイルです」 「ぎょうさんありはるんやなぁ」 数種類を並べている露天で説明するバロネーシュ。蒼は五つくらい並ぶ壷を見て、早速しゃがみこんでへええっ、と顔を寄せていた。 「バロネーシュさん、物知りだね」 「これでも故郷では広く土地を見ていましたので」 感心するコクリにさらりと言うバロネーシュ。ついでに、コクリの持っていたオリーブオイルを店主に見てもらった。 「やや劣化してそうだが、それでこれなら上等品」 「ほら。上等な品目であれば、現地の生産技術は成熟しているということで、オリーブオイルの使用頻度は高い土地柄である、と言えそうです」 店主の言葉に頷き、自己の見解を話すバロネーシュ。 「特産、だね!」 「使用方法は?」 色めき立つコクリの背後から両手で抱き、妹を落ち着かせるお姉さんのようにアルネイスが聞いた。 「料理や美容だな」 「お店の方の仰るとおりです。……その、私も……人に薦められてスプーン一杯を毎日飲む様にしたんですが……それ以来……その、お通じがすごく……良くなりまして」 え? と全員がアリエルを振り返った。あまりの食いつきの良さに真っ赤になり慌ててしまう。いい情報だったらしい。 「そのっ、ほかにも化粧落としや化粧水として……塗って一晩経てばお肌しっとりですよ」 「えええっ!?」 さらに全員に詰め寄られる。ひ〜っとちっちゃくなるアリエル。さらにいい情報だったらしい。 「早速試してみまひょ」 いち早かったのは蒼だ。臭いをかいでちょいと舐めてみて、そして肌に付けて伸ばしてみる。 すると。 「如何に女性を取り込むか、これが大切やねぇ〜。気張ってやりますぇ〜」 しばらくの沈黙の後、ばさりと扇子を広げて口元を隠しヤル気を見せる蒼だった。 「蒼さん、気に入ったんだね」 苦笑するコクリ。蒼の様子を見て、品の良さが手に取るように分かるのだ。 「ふぅん……どうせならこのオリーブオイルは発見したコクリの手柄にしておきたいわよね」 「天儀で広める前に、他の業者に邪魔されるのも嫌だよね。……行こう、コクリちゃん。もちろんリチェさんも」 ベアトリーチェがきっぱり言うと、香澄も賛同。早速、香澄はコクリとベアトリーチェの手を取って通りの雑踏を縫いだす。 「おやおや。……店主、これの輸入業者は?」 バロネーシュは三人が行くべきところを聞き出すと、急いで後を追う。 「あたしも行くにゃ〜っ」 「あらあら、千佳さんも行ってらっしゃい。……それじゃ、女性ターゲットは決まりですね♪ 残った人で料理も考えててみましょう」 にゃ〜っと駆け出した千佳を見送ってアルネイスが振り向いてにっこり。蒼と千理、アリエルは頷いて行動開始する。 ● 「ん? 確かにオリーブオイルはこっちに運んでるが、あくまでこっちのアル=カマル人のためだしなぁ」 「そうですか」 バロネーシュが教えられた商人は、商売っ気がなかった。 「こっちで大々的に売らないの?」 「文化が違うからな。こっちの商人が試しに広く売ったこともあったみたいだったけど、それが理由で失敗したらしい」 ちなみに、今は神楽の都で商売になっている珈琲は、眠気覚ましの効果を軸に文化融合の喫茶店形式で安価販売することで今の地位を築いた。チョコレートは、ジルベリアの贈り物の習慣に乗っかり広める形で万商店から流行する形となった。いずれも最初は、オリーブオイルと同じく脚光が当たっていなかったのだ。 「ねえ、オリーブオイルの交易の独占をボクたちと狙ってみない?」 「はぁ?」 香澄、正面から切り込んだ。商人は「今言ったこと聞いてたか?」という様子だ。 「ほら、コクリ。ここで可愛くおねだりなさい」 「ええっ! ボクよりりちぇさんの方が……」 横ではそんな展開がもじもじとなされていたり。 「うに、オリーブマッサージ……美容にいいって聞いたから、流行るかもにゃよ?」 千佳、そちらで攻める。 「オイルマッサージも馴染みがないようだったぞ?」 「だったら流行らせるにゃ。というわけで、コクリちゃんお手伝いお願いにゃ♪ そこに横になってくれるにゃー?」 「えええっ!」 コクリの腰が引けるのも無理はない。ここは人通りも激しい往来だ。 「いいからいいから」 「千佳さぁん〜」 哀れ、半裸にされるコクリ。白い肌が白日にさらされ押し倒される。にゅふふ、と横目でコクリを見つつどろりとオイルを手に取る千佳。 「ぬるぬるだけどコクリちゃん気持ちいいにゃ?」 「ひっ。んっ」 「コクリ? ここは分かるわね?」 うつ伏せで台に寝かされ、ほぼ裸のまま通りの人に見せるようにぬ〜りぬ〜りされている。幸せそうな千佳。コクリがびくっ、びくっと反応しつつも上体を上げないのは、ぺったんこながら胸が見えてしまうから。必死に我慢する耳元に、りちぇさんの悪魔の囁き。 「うんっ……きも、きもちいい……」 すでにコクリの頬は真っ赤で、体中もほんのり上気してきた。当然、オイルのおかげで肌はつるつるに見える。 「コクリちゃん、いいにゃよ?」 「うん……」 マッサージ後、胸に抱くようにしてタオルを持ち大切なところを隠し身を起こし、足をくの字にそろえて横に流すコクリ。真っ赤に照れて俯いて、睫毛を震わせながら憂いを帯びた瞳をしている。 「コクリ?」 「す、すごくきもち、よかった」 ベアトリーチェに促され、最後の言葉。直後、オイルが売れまくった。「次はりちぇさんだね」、「な、何をいってるのカスミ、あなたはっ!」などとりちぇさんが脱がされそうになってたり。 そして。 「ね? だから……」 香澄、商人に向き直る。 「お願い」 「お願いする……わ」 まだ半裸のままのコクリと、香澄に服の襟元を乱されたベアトリーチェがそろって可愛らしくおねだりした。 「若いって、いいわね」 年長のバロネーシュが、お姉さんのようにコクリとベアトリーチェを抱いてやったのは、もちろん可愛いおねだり一発で商人が首を縦に振ったから。 ● 一方、料理組。 「ほい、お待ちどう」 まずはアル=カマルの串焼き肉を食べてみることにした。 「これがケバブです」 「やはり肉に合うな」 アリエルが紹介し、早速口にした千理がうんうん頷いている。 「そういえば千理はんの体から、甘味の臭いがしてましたえ?」 「必需品じゃ」 意地悪そうに蒼が言うと、悪びれるでもなく懐からキャンディボックスやらを出してみせる。甘味倉庫的な人物であるが、ケバブに考察している当たり、菓子ばかりでなく食べ物全般が好きなようで。 「確かに天儀の焼き鳥などとは違いますね。こちらでは塩かタレですが……」 「オリーブオイルで焼いてますえ」 アルネイスが違いを言うと、蒼が頷く。 「ただどちらもうまいね、うん」 千理、もぐもぐやりながら言う。普段のクールさはどこいった。 「だったら、天儀の方に2つを食べ比べて貰いたいですね」 実は主婦のアルネイス、そう提案する。 「それはいいですね。身近なものと一緒なら食べてもらえるし、良さも分かってもらえそう」 アリエル、故郷の味とこちらの味が一度に味わえる演出に喜ぶ。 「使い方、食べ方、料理、そう言ったレシピと一緒に売り出したらえぇおもうぇ? ついでにお店はいかがやろか? 料理と販売の店」 「例えば豆腐に刻んだ塩漬けハーブとオリーブオイルをかけてみれば見た目オシャレじゃろ?」 蒼のアイデアに、千理が乗る。 「豆腐はうちもええんやないか思いますし、おいもさんやったら、少々匂い強ぉてもいけるよて、揚げてみまひょか?」 きゃいきゃいと盛り上がる蒼。が、「りょ、料理は誰かにお任せや!」とか。 「凝った物を作るのではなく、単純に油としての品質を全面に出す形でもいけますね、この品質なら」 アルネイスは落ち着いてそう判断もする。 「バロネーシュさんも言ってましたが、麺類にもいいですよ?」 アリエルも補足する。 「いずれにせよ、いい話になりそうだね」 楽しそうに千理は言うのだった。 ともかく、アル=カマル方面の一部商人たちの協力を得ることに成功。今後色々活用できそうだ。 |