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■オープニング本文 ――ちょいん・ちょちょちょん! 神楽の都の広間に激しく弦楽器をかき乱す音が響いていた。 ♪駆け抜けろ! 不安投げ捨て 抱き締めろ! 愛であの娘を 悪くない! お前はいつも 恥じることなく 走り出せ〜♪ 叫ぶように歌ってから、ダン・ダン・ダカダカダン、と手にした木刀で樽を叩く。 たん・たん・たたんっと音がするのは、リズムに合わせて拍手をする人がいるから。それを遠巻きに見る人は天儀では耳慣れない音楽に眉をしかめ通り過ぎる。 やがて、演奏が終わった。 ふうっ、と身を起こしたのは、ミラーシ座長で浪志組のクジュト・ラブア(iz0230)だった。 「ねえ。私、お母さんに怒られちゃったの。でね、お母さん、悲しんで。……私が悪いのかな?」 ウード「地平線の夢」を下ろしたクジュトの前に少女が出てきてそんなことを言う。 「キミがお母さんに謝って反省したのなら、もう悪くない。だから顔を上げて笑顔を見せて。そうするともっと奇麗になれますよ」 クジュトが屈んで少女の頭をくしゃっとなでてやると、それまで曇りがちだった彼女の顔に笑顔が輝いた。 「クジュトさん?」 次に、少年剣士が現れた。 「豊さん、どうしました?」 「微妙な頼まれごとがありまして」 その少年――実は若く見えるだけで、実際は青年といっていい年齢の浪志組隊士、市場豊だった。 豊、ちょいと指を曲げてクジュトを路地裏に呼ぶと用件を話し出す。 「ギルド職員からこっそり頼まれたんですが、最近夜のうどん屋台を夜な夜な訪れて、たいてい喧嘩をして周囲に迷惑を掛けるごろつきを何とかして欲しいそうです」 「待って。それはギルドに依頼があったのではないのですか?」 喋るのを止めて割り込むクジュト。 「一店だけじゃ依頼するまでの金額にならないそうです。以前は新人開拓者用の依頼として金銭補助をしたのですが、何度もはできないそうで」 このあたりは過去の報告書「新人歓迎!うろんな夜」に詳しいが、今回の話には密接に関係しないので端折る。 「でも、『浪志組の巡廻の途中でたまたま騒動に出くわした』という形なら、浪志組で……」 「報酬は?」 クジュト、厳しめに聞いた。 「ギルドの職員は、何か困ったことがあったら……」 「報酬は!」 「できるだけ融通してやると、言ってました!」 厳しく繰り返したクジュトに負けず、豊は言い切った。 「それをやると際限なくなりますよ?」 「でも、『うろん』の赤暖簾を下げたあの屋台のおやっさん、義理人情に厚いそうです。一人で、通りで一店のみでやってるからいろいろ苦労もあるようですし、もしかしたら我々の巡邏の休憩場所にしてもらえるかも……」 はあっ、と溜息をつくクジュト。 「仕方ありません。今晩にも寄って、ごろつきが暴れれば懲らしめて、とにかく二度とこんなことがないような手を考えましょう。……もしかしたら、今の神楽の都で一店舗だけぽつんとやっているのがまずいのかもしれません」 というわけでその晩、場所は伏せるが神楽の都の通りでぽつねんと屋台を出すうどん屋「うろんや」にうどんを食べに行き、護衛兼今後の安全策について話し合ってもらえる人、求ム。 |
■参加者一覧
鴇ノ宮 風葉(ia0799)
18歳・女・魔
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
サラファ・トゥール(ib6650)
17歳・女・ジ
柏木 煉之丞(ib7974)
25歳・男・志
鴇ノ宮 瑠璃(ib9871)
15歳・女・吟 |
■リプレイ本文 ● 神楽の都の空に、一番星。いや、次々と星たちが瞬き始めていた。 「……まぁ、引き受けてばかりでは際限がないが」 柏木 煉之丞(ib7974)がじゃり、とブーツの音をさせつつ歩き、飄々とだれに言うでもなく呟いていた。 「それもありますが、開拓者ギルドから便利屋と見られるわけにはいきませんからね」 やはりブーツで並んで歩くクジュト・ラブア(iz0230)が言う。 二人で浪士組の市中警邏をしつつ、例の屋台「うろんや」を目指していた。 特に、事もない。 「ん?」 クジュト、ここで足を止めた。 白壁の向こうで、のんびり暗くなる夜空を眺めていた人物がいたのだ。 ひらひらした軽装から覗く肌は黒く、銀色の髪は華やかにきらめく布を混ぜ込みつつ後で束ねている。 「クジュト、遅かったね」 ミラーシ座のサラファ・トゥール(ib6650)だ。 「思うんですが、いっそ『うろんや』を本当に浪士組の休憩所に使える様お店の御亭主に相談を持ちかけてはいかがですか?」 再び歩き出すとサラファが口にした。 「そうさなぁ。ひとまず浪志組の巡回路に組み込むのが無難に思えるなぁ……」 煉之丞も、ぼんやりと一言。 「ただ、張り付くわけにはいかないのでやはり限界があるんですよねぇ」 ほふぅ、と溜息を吐くクジュト。 やがて赤提灯の下がった屋台が見えてきた。 そしていい匂いも。 「うろんや」である。 ● 時は遡る。 「うろんや」が屋台を引いて来て、暖簾を掛けたところで来客があった。 「いらっしぇい」 「かけ」 店主の貞吉が弾みの良い声を掛けると、ぼそりとそれだけ声が返ってきた。二人組である。堅気風ではない。 「そちらさんは?」 「連れがまとめて注文してくれた」 それだけ言って二人とも席に着いた。 と、同時にまた男性二人組が暖簾をくぐった。これまた堅気っぽくないような様子。 「いらっしぇい」 「きつね」 貞吉が聞くと、やはり二人分頼んで静かに席に着く。 が。 この二人組たち、席を一つ空けて座るがどうも険悪な様子で。ちなみに最初の二人組が真ん中に座ったのでこうなった。 さてこの時、暖簾の外。 「瑠璃。あんたそれでよくジルベリアからここまで来れたわねぇ」 「風葉がいるところには一直線ですわ」 何やら賑やかなのが近寄っている。鴇ノ宮 風葉(ia0799)と鴇ノ宮 瑠璃(ib9871)だ。 「あら。いい匂いがしますわね」 うろんやの近くで立ち止まったぞ? 「うどんね……。ちょうどいいじゃない。夕飯はここで済ませて帰るわよ」 「やはり、風葉とともにあれば運命が導いてくれますわね」 なによそれ方向音痴のいいわけにしてももっと気の利いたこと言いなさいよ、とか言いつつ暖簾をくぐる風葉。 「うどん……っていうんですの?」 きょとん、としつつ瑠璃も続く。金髪ツインテールが躍らせ珍しそうにきょろきょろしている。 「いらっしぇい。何にしましょ?」 「じゃ、あたしはエビ天で」 「わたくしも風葉と同じでいいですわ」 元気良く言う風葉に、こくと頷く瑠璃。 「……あんだっつーのよ」 ここで密かにぼやく風葉。先客四人がちらっとこちらを見て眉を顰めたのだ。 一体どういうことだろう。 ともかく、先客四人のうどんは出た。一味をかけてずるずると味わい始める。 ● 「おじさーん、また食べに来たよお」 この時、また暖簾をくぐるものが。 ウサギの耳の垂れる獣人、龍水仙 凪沙(ib5119)だ。 「お。姉さんまた来たね。いらっしゃい」 「それじゃ、今日はかき揚げとおもちと天ぷらを入れて」 「あいよ」 「!」 凪沙と貞吉のやり取りに先客四人がうどんをすする手を止めた。「マジか、こいつ……」といった視線で二組の真ん中に座った凪沙をまじまじと見る。 「?」 「あいよ。そちら二人さん、エビ天うどんお待ち」 首を捻る凪沙。この間に風葉と瑠璃にうどんが出た。 「お、温かそーねー。いただきま〜す」 ずるるっ、と食する風葉。 と、その動きが止まったぞ。目が横に流れる。 そこでは割り箸を割ったままの姿勢で瑠璃が目を大きく見開いていた。 「そんな大きな音を立てて食べるのですか?」 「そーよ。熱々をずるずるやる。これがうどんを食べる時の礼儀よ。ねぇ?」 問われて逆側にずらり並ぶ客を見やる風葉。先客四人と凪沙が大きく頷く。 「分かった、瑠璃? ……って、ちょっと! 何ぴとってくっついてんの!」 「熱々……風葉が寒いのなら、わたくしが温めて差し上げますわ」 ちょっとー、とか騒がしい端の席はともかく、凪沙のうどんも出た。凪沙、うきうきで受け取ると早速一味をかけ熱々をずるずるするのだったり。 そしてここで、事件は勃発した。 ――ごとん。 先客四人が同時に食べ終えたのだ。 「お代わり。……今度はきつね」 「こっちもお代わりだ。……かけ」 なんと、最初の注文と逆を頼んだぞ! 刹那。 ――がたたっ! 「てめっ。かけを食うんなら最初に食いやがれ」 「てやんでえ。かけは最後の仕上げだろっ!」 うどんを大人しく食べる凪沙を挟んで立ち上がり、怒鳴り睨みあうのだった。 ● この時、クジュトたち。 「ん? もう満席のようですね」 「店主が人情に篤いなら、我々にも得ではあるはず。人情ある者は慕われる、人が寄る故。と……あまり損得ばかり考えるべきではないだろうが、まぁ、俺はここで消えておこう」 屋台を見るクジュトの隣で朗々と語る煉之丞。 「錬之丞さん?」 すっと二人から離れる煉之丞を気にするサラファ。 ――ピュッ! この時、屋台から口笛が鳴った。 「サラファ、ゴロツキですっ!」 叫ぶクジュト。ここから展開が早い。 屋台では、凪沙がもちをうに〜んと伸ばし幸せそうに食べている。 その両脇で匕首を出したり符やオカリナを出して構えるゴロツキ四人。両陣営の匕首を持った二人が接近し、符とオカリナをもったゴロツキがそれぞれ屋台の外に出て距離を取ったぞ! もちろん凪沙は動かない。 カウンターの端では、ぴとっと風葉にくっついていた瑠璃の緑色の瞳が不機嫌そうになっている。 ――ひゅひゅっ♪ 瑠璃、周りに響くように口笛を吹き月のフルートを取り出そうとする。 さらに瑠璃の横、風葉の機嫌が傾くだけ傾いていた。 「……っさいわねぇ。食事くらい静かに出来ない訳?」 霊杖「カドゥケウス」をその気もなさそうに掲げてアイヴィーバインド。地面から蔦が伸びてきて匕首同士でやり合おうとしていた一人をがんじがらめにする。 そして屋台の外。 「届きます。クジュトはそっちを」 細身のサラファが、これぞジプシーの俊敏さで一歩目を踏み出していた。 軽やかにひらめくバラージドレス「サワード」。漆黒の舞いもさながらに屋台前に跳んで出た。 「食事は他のお客様のご迷惑にならない様になさい」 ――ヒュン! 残りの距離を、獄界の鎖が走った。 黒い鎖はそのまま対峙するもう一人を利き手に絡んだ。マノラティだ。 「何だ、こいつら?」 オカリナを手に外に引いた一人はこの様子を見て、攻撃対象を変えて演奏を始めた。まどろみを誘う曲調が流れる。夜の子守唄だッ! 「夜の子守唄?」 一番遅れたクジュトは霊鎧の歌を合わせる。ブレスレット・ベルの音が響く。 「影響、ないですわね。……ここにありしは麗しの乙女達。心に獣を宿せし卑しきものに、不埒な心で迫られて……」 瑠璃、味方から寝てしまうものがいないと見て取るとフルートと口上を使い分けてごろつきをコケにする。曲調は、奴隷戦士の葛藤。 「ないことはないわよっ!」 ついに、キッ、と振り返った凪沙。先の夜の子守唄か背後のドタバタで、美味しく味わっていたうどんのつゆがこぼれたのだ。 「くそっ」 ちなみにこの時、凪沙の背後で一人の敵がずるずると横移動していた。利き腕を鎖で絡めることに成功したサラファにぐいぐいと引き寄せられたのだ。もう一人は残ったままだが、風葉が術の影響がある内に荒縄で縛っていたり。 「喧嘩ならよそでやんなさい。明日からここのうどんが食べられなくなってもいいの?」 凪沙の怒りの声が改めて響く。五行呪星符を構えているぞっ。 「ぎゃっ!」 瞬間、外にいた吟遊詩人は悲鳴を上げた。 どでかい龍が突然現れて彼を頭から食おうとしたのだ。 しかし、これは幻影。凪沙の大龍符だった。 「まったく……」 同時に風葉のかざした手の平から氷の刃が走る。呪殺符「兇骨」や帽子を外し手加減しての一撃は、うまく威嚇効果程度のダメージで敵の戦意を削った。 「こちらもうまくいきました」 サラファもうまく敵をたたきのめし荒縄で縛ることに成功している。 これで、ざわついた屋台が落ち着いた。 いや、もう一人。 クジュトが全体支援に回ったため、一人陰陽師がノーマークで逃げ出していたのだ。 「……逃げられましたかね?」 「あの状況では仕方ありません」 志体持ち同士の戦いの厄介さをかみ締めながら、クジュトがサラファの声に応じた時だった。 「ラブア殿、鼠は心配することなかれ」 なんと、路地から煉之丞が出てきた。陰陽師を後手に押さえつけている。 「煉之丞さん、助かりました」 「下っ端のごろつきなれば上がいる。奴らを逃して上に下手な報告をさせるのも拙い。ってね」 クジュトの視線に微笑する。先に一人姿を消していたのはこれあるを期して、だった。 「これで受け流し、籠手払い、流し切り、と……」 鞘に入れたままの刀「蒼天花」を掲げ、流れるように技名を言う煉之丞。実際に流れるような太刀捌きだったのだろう。例えて一陣の風のように。が、今現れた姿は静かで穏やかなこと。飄々とした男である。 ● とりあえず、乱闘騒ぎを起こす前に全員を取り押さえた。 「浪志組です。とりあえず騒ぎは鎮めましたのでご安心ください。……おやじさん、長椅子あったら貸していただけませんかね?」 「そっちにあるのをどうぞ」 クジュトが集まり出した一般客を安心させると、貞吉に聞いた。貞吉は、取り押さえられたほうも客は客なので礼の言葉を口にはせず感謝の視線を投げおいてから顎をしゃくった。 「それじゃ、これから来る客の邪魔になりますからあっちでやりましょう。……その、お二方とウサギの人も、よろしければどうぞ。ぜひ名前も教えてください。一緒に戦った仲ですし」 どうやらならず者四人の取調べをそこでするらしい。戦闘に協力した風葉、瑠璃、凪沙にも声を掛ける。 「龍水仙 凪沙。ここの常連ね」 「通りすがりの大悪党よ。……そっちの四人みたいなチンピラとは格が違うっての」 風葉、めんどくさいなーとか思いつつも、本当にぞろぞろと客がやって来ていたので席を譲るためにも移動した。 「何だと? ここのうまいうどんをわざわざ天ぷらで食うような奴に格がどうとか……」 ――ピュルリ♪ 「乙女襲いし男ども、醜く逆に倒されて……」 風葉に突っかかるゴロツキに、またも瑠璃が四人の評判を下げる歌を奏でる。 「バカ野郎。せっかくの奇麗な旋律にしょうもない歌詞を乗っけて……」 「このうどん屋を愛する者としては、店に迷惑を掛けてもらうわけにはいかないわねえ」 今度はゴロツキの吟遊詩人が難癖つけたので、凪沙が呪縛符で主に口元を狙ってがんじがらめ。 「とにかく、私達は来たばかりです。……ここのうどん、おいしいんですか?」 「うまいに決まってんだろ。……おおい、オヤジ。この一見さんにうどん食わしてやってくんな。いやもう、どうせなら人数分頼むわ。――全部『かけ』で」 クジュトが取り成したところで、別のゴロツキが声を張った。「まあ、最初の奴がいるならかけうどんでいいだろう」とか、四人目のゴロツキも納得のようだ。 「うどん……ですか。煉之丞さんもうどんでいいですか?」 「うどん? ……酒。いや、冗談だ」 サラファに振られて、一瞬きびしめの真顔をする煉之丞。すぐに微笑し普段の飄々とした様子に戻ったが。ゴロツキの陰陽師がびくっ、と反応したところを見ると、逃げた路地裏でしこたま打ち込まれた時この表情だったようで。 ともかく、屋台の横の長椅子に座って全員でうどんを味わう。ゴロツキもすでに縄を解かれている。 「うまい」 「だろ? ここのかけは味わって損はねぇ」 「だからって、人が好きに食うのに口を出すのは……」 味わったクジュトの言葉に胸を張るゴロツキ。が、別のゴロツキが突っ込んでまた険悪に。 「まだやる気があるならいいんですのよ? 私、おうどん気に入りましたし、ずっとさっきの曲で興行して差し上げましょうか?」 「情けないわねえ。ここは具が充実してるから、いつだって誰の嗜好にも寄り添ってくれてるのに争う必要はないじゃない」 瑠璃が斜視し、凪沙が溜息を吐く。 「他人がうどんを味わってるときにごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ」 これにさらに声を荒げる別のゴロツキ。 「あんたらねぇ……」 エンドレスな展開に呆れる風葉。 「あっ! 昼間の歌うたいさん。……ねえっ。もう一回歌って。私、お母さんに謝ったんだよ」 ここで、クジュトに少女が駆け寄って来た。少女の後ろで女性がぺこり。母親らしい。 「そう。それはよかったね」 クジュト、優しく少女の頭を撫でてやると曲を奏ではじめた。 「この土地にも良いリズムがあるもの、ですわね」 ほう、と感心する瑠璃。風葉はうどんをずずず。 「もしよければ、神楽の都で良いリズムをともに奏でましょう。ミラーシ座のクジュトといいます」 「わたくしは鴇ノ宮 瑠璃。一座に入れということですの?」 にこやかに声を掛けたクジュトに、首を捻った瑠璃。うどんも含め、好奇心は満たされている。 「あたしは風葉。……あんたら、もし今日のことで文句があるならいつでも相手したげるからこっちに来なさい?」 「ちょ、そういうわけには……。瑠璃さんも風葉さんも、籍はミラーシ座にありますので文句ならこちらに。あ、そうそう。私は浪志組ですから」 「あんた、あたしがいつ……」 ゴロツキに念押しした風葉に、クジュトが割り込む。どうやら籍だけでも入れることになったようで。 「どうして、うどんを気に入ってるのに店に迷惑を掛けるのですか?」 サラファはヴィヌ・イシュタルを使い粘り強く賊を説得している。話を聞けば、組織としては顔が合うだけで険悪になってしまう間柄らしい。 「それじゃ、慰謝料代わりに店の手伝いをさせるわけにもいかないわねぇ」 「一応、どこの組で上の名前ぐらいは聞いておくかね?」 ずずず、とすすりつつ凪沙が困ったように言う。その横では煉之丞が賊の胸ぐら掴んで絞り上げていたり。 「とにかく、浪志組さんの見回りに組み込むことでいいですかね?」 とかクジュトを見返り許可を求めるサラファ。すでに幟旗に筆で大書しようとしているが。 もちろん頷くクジュト。 こうして、「うろんや」には新たに「浪士組休憩所」の旗が立つようになった。 例のゴロツキは相変わらず来るようだが、随分平和になったらしい。 |