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■オープニング本文 ●定型前口上 さぁてさて、泰儀をぶらりと雑技旅する孤児8人たちの香鈴雑技団。 これまでの経緯は知っていても知らなくても大丈夫。 なぜなら気ままに旅をしているのだから。 行く先々の風景や人々、奇天烈な話やほんわりする話を一緒に楽しめばいいだけ。 それじゃ今回は「香鈴、悲しき泰拳靴」の章だよ、お立会い。 ●物語 「まさかあんたたち、この村に泰拳士の修行に来たって言うんじゃないだろうね?」 香鈴雑技団の一行がある村を訪れた時、村人からそんなことを言われた。 「いえ、私達は雑技団ですから……」 予想もしなかったことを聞かれた歌姫の在恋(ザイレン)がどぎまぎしながら返事した。 「何? 雑技団? だったら証拠を……」 というわけで、ちょいと在恋の歌に合わせて道化の陳新(チンシン)がお手玉して元気少年の兵馬(ヒョウマ)が演舞で登場。力持ちの闘国(トウゴク)に支えられた軽業師の烈華(レッカ)がくるくる回って横切って、針子の皆美(みなみ)が持つ鍋のふたにリーダーの前然(ゼンゼン)がナイフを投げて見事ど真ん中。 「ご理解いただけたかしら?」 最後に、黒猫の集星(シュウセイ)を抱いた良家のお嬢様、紫星(シセイ)がごあいさつ。 「いやあ、疑ってすまんかった」 おひねりを渡しつつ、先ほどの村人は顔を輝かせ謝っていた。心底、即興の雑技に心を打たれたらしい。結成前から評判の良い手法で、十八番といっていい出し物だった。 「でも、どうして修行する泰拳士にこだわるんです?」 今なら、と陳新が聞いてみた。 「実はの」 すっかり彼らが好きになったこの村人は、野次馬に集まったほかの村人達と顔を合わせ頷くと理由を話し始めた。 曰く、この村の奥には伝説の修行場があるらしい。 何でもその山中の広間には小さな温泉がいくつかわいているそうだが、それはただの温泉なのでまあそれとして。 問題は、そこで大昔にさる泰国拳法流派が秘伝の荒行「雨蜂」をしたのだという。 「雨蜂?」 「そう」 耳慣れない単語を繰り返して聞いた陳新に、村人は青ざめつつ説明する。 何でも、口減らしの秘法という。 その修行場で多くの門下生が一種の催眠状態となり、全員が死ぬか力尽きるまで戦うらしい。 「実際には、大地から噴出す特殊な空気で長くいると気を失うらしい大変危険な場所。ある程度まで戦い、生き抜いて気絶した者だけが下山できるという」 無茶な話である。 「もっとも、伝説なんじゃが……」 別の者が口を挟んできた。 「今では、そこに泰拳士の履く靴のアヤカシが出おる。伝説ではなく実際にあった話とされるゆえんじゃの」 そう結ぶが、話には続きがある。 「で、そういった噂を聞きつけて、腕試しに来る泰拳士がその場所の手前にあるこの村を訪れることが多い。あんたらを勘違いした理由じゃが……」 「本当は、討伐を依頼していた開拓者が予定より早く到着したのかと期待もしたんだがね?」 「まあ、子どもだらけだったんで開拓者はないじゃろうと」 口々に話す村人。 「待ってください」 ここで陳新が止めた。 「開拓者を……アヤカシ退治のために雇った開拓者が、すぐ来るんですか?」 「ああ。そのはずじゃ」 この言葉に、わあっと顔を輝かせる雑技団だった。 時は遡り、開拓者ギルド。 泰国でのアヤカシ退治の依頼が張り出されていた。 敵アヤカシは、「雨蜂」の伝説の修行場。大昔にここで「雨蜂」をして亡くなった者が着用していた大量の拳法靴が襲ってくるという。その流派は足技重視の速度重視で、靴のアヤカシも素早い攻撃を繰り出してくるらしい。普段は土に同化し人が来れば奇襲を仕掛けてくるという。 戦場は、通常の平地の荒野と考えるとそれに近い。 注意点として、あまり長く戦っていると周囲から染み出す空気に含まれる成分で気を失うということ。 香鈴雑技団は、開拓者の到着を待っている。 |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
神龍 氷魔 (ib8045)
17歳・男・泰
中書令(ib9408)
20歳・男・吟
鴉乃宮 千理(ib9782)
21歳・女・武
闇夜 紅魔(ib9879)
17歳・男・泰 |
■リプレイ本文 ● 「三ツ兄ィはどう思う?」 「三ツ兄、ですか」 伝説の修行場へ行く途中、三笠 三四郎(ia0163)は香鈴雑技団の烈花にそう問われてかくり、と頭を垂れた。 「早速あだ名を付けられたかイ」 三四郎の後を歩いていた梢・飛鈴(ia0034)がもふらの面を深く被って口だけでニヤリ。 「雑技団のみんな、たまによく分からないあだ名をつけちゃってますからね」 「まあ、今回はマシか」 続くルンルン・パムポップン(ib0234)が楽しそうに、そして琥龍 蒼羅(ib0214)が微笑して言う。ちなみに飛鈴が旋風(かぜ)姉ェ、ルンルンが忍者姉ェ、蒼羅が蒼兄ィと呼ばれていたりする。 「だって、三が三つじゃない」 「ははぁ。三笠に三四郎に、これかな?」 三四郎、武器の三叉戟「毘沙門天」を掲げるが、烈花はくすくす笑っている。 「違うよ。『きっとのんびりしてるから三男あたりじゃないかな』ってみんなで話したンだぜ?」 悪戯っぽくウインクする烈花。開拓者たちから笑い声が巻き起こる。 「中書令と申します。よろしくお願いします」 ここで、中書令(ib9408)が落ち着いた口調で話した。 「数回攻撃を受ける事は覚悟し、敵をこちらの望む位置におびき寄せてはどうでしょう?」 依頼の話に戻す中書令。肌も髪も、額の一角も白い修羅である。見据える瞳だけ、紫。 「俺も同意見だ。うまく特殊な空気の範囲外に誘導できればいいが」 「そうですね。修行に付き合う暇はなさそうです」 蒼羅が言い、三四郎も頷く。 「蠱毒という術がある」 新たに口を開いたのは、鴉乃宮 千理(ib9782)。 「壺の中にあらゆる蟲を入れて争わせ、最期に生き残った……」 「どっちにしてもろくなもんじゃねぇ」 「……見ない格好、ですね」 どうやら呪術に似ているとの説明。前然は「力のある者のみ残る」という手法に吐き気を覚え、闘国は珍しそうに千理をじっと見詰める。 「武僧をしておる。鴉の獣人ゆえ、さらに珍しいかもしれんな。とりあえずお近付きに飴でもひとつ」 一見、影を帯びたように不気味な様子もある千理だが、にこりと飴を配る。「イイ人かも」と烈花。 「まあ、どっちにしても一度は突っ込まなくちゃなんねーんだろ?」 ぱしり、と闇夜 紅魔(ib9879)が両拳を打ち鳴らした。 「コイツでいっちょ腕試しと行くか」 紅魔、赤い短髪の前髪の隙間から紫の瞳でまだ見ぬ敵を想像する。 ここで、ルンルンの気配に烈花が気付いた。 「あれ? 忍者姉って本読むの?」 「えへへー。靴の怨念は、この本で祓っちゃうんだからっ」 まさか今、指南書「パンチ・ブック」を読んでルンルン拳法を編み出しているとは言えない。 「それより急ごうぜ?」 「そうだな。……村人が困っているのなら、叩くのみ」 急かす前然。案内の村人と共に先行していた神龍 氷魔 (ib8045)が、背中越しにクールに言い放つ。 「俺の拳がここでどこまで通用するか、楽しみだ」 青い泰拳袍「獣夜」に身を包んだ氷魔、霊拳「月吼」を見詰めぐっと拳を固めるのだった。 ● 伝説の修行場は思ったよりもひどかった。 「こりゃあ空気も澱むナ」 飛鈴が呆れたとおり、現場はそそり立つ崖で囲まれ空気が横に逃げにくくなっていた。地面は荒野で、ところどころで温泉が湧いている。妙な水蒸気も出ており、草木は枯れている。 「修行にも弔うにも良さそうさなぁ。しかしながらアヤカシというのを忘れちゃいかん。捕らわれた魂を解放してもらおうか」 千理が大薙刀「岩融」を手に駆け出した。 ――ぺペン。 琵琶「青山」の音がした。 「皆さん、脱出も考えてください」 中書令が「天鵞絨の逢引」を奏で抵抗支援をする。 「ああ、誘導もだな」 「細かいところは皆さんにお任せします」 蒼羅と三四郎も続く。 「あんまりバラけないで戦った方がいいゼ。アタシみたいに纏めて叩けるなら、別だけどナ」 飛鈴は単独で深く突入すべく急ぐ。 「しかし前然、どういう風の吹き回しだ?」 「……いざという時に仲間を守る力をつけるためだ」 烈花が前然に聞きつつ前進し、前然、闘国も続く。 「ん?」 「ほー」 この様子に、氷魔が振り向き紅魔が「気に入った」といわんばかりににやりとした。 その時。 「はっ! みんな、来ます」 超越感覚で周囲を探っていたルンルンが叫んだ。 ――ぼごっ。 ここで、土の中から泰国拳法をする者がよく履いている靴一組が現れた。 そのまま靴の裏で右足が蹴上げてくるッ! 「なかなかいい蹴りだガ」 飛鈴、いなしながら交わす。即反撃しないのは、まとめての殲滅を狙うため。が、空気が悪くずっと戦闘区域にいられないことも感じ取っている。 「……腕そのものを磨くより平常心を保つ稽古って感じがするな、こりゃ」 続く足払いのようなローキックを交わしながら呟く飛鈴だった。 もちろん、ルンルンも襲われている。 「その手は、喰わないんだからっ」 突きのような蹴りを下がって避ける。 「……動いた先の土から敵が出ているようですね。前然くんたち三人は離れないように」 超越感覚で背後の三人がばらけそうな雰囲気を読み取って中書令が釘を刺しておいた。 「押忍!」 千理は奉拳してから大薙刀を構えていた。 「わざわざ……」 「道場に入るのと同じさ。礼儀は大事だ」 呆れる前然に不敵な笑いの千理。とにかく戦う。 一方、三四郎。 「自信のある人は続いて。手前側から誘き出しに行きましょう」 「今更言うまでもない事かも知れんが、無理はしないようにな」 突っ込む三四郎に、ぽん、と闘国の肩を叩いて続く蒼羅。 ここで位置関係を見てみよう。 前方に三四郎と蒼羅が突っ込んだ。この後に氷魔と紅魔の修羅泰拳士二人と琵琶を抱えた修羅吟遊詩人の中書令が続く。さらに後に雑技団の三人と千理。 右には、単独で飛鈴が突出。 同じく左にはルンルンが突っ込んでいる。 「あんま、敵はおらんのかイ」 右の飛鈴は敵の出現を待ちつつ、稽古をしているようだった。 「囲まれんよう端で戦うんが定石かと思ったガ」 とかいいつつ、2体を相手に敵の蹴りを肘で打点をずらすようにして払い踏み込んで膝を打ち込んだり、脚で相手の蹴り脚をすくい上げるように弾き踏み込んで肘を打ち込んだり。 普段は足技中心だが、肘や膝を使って稽古をしている。 「……しかし、ご丁寧な」 飛鈴が感心しつつ呆れるのは、靴の動きで敵の身体全体がぼんやり見えるようで、ないはずの敵のどてっぱらに肘を打ち込むとわざわざ靴もたたらを踏んでくれることだ。 「ま、いい稽古にはなるガ」 と、ここで三体目が土から出てきた。さすがに攻撃も食らったこともあり、ド派手に崩震脚を見舞い三体ともひっくり返す。 「ん……」 この時、中央で周囲を観察していた中書令が敵の様子に気付いた。 飛鈴の戦いを見たあと、蒼羅たちを見る。 「俺の刀とどちらが速いか、だ!」 蒼羅、突然土から現れた靴の蹴りに紙一重の抜刀術、雪折で迎えうつ。 ――ばさあっ! 見事、蒼羅の斬竜刀「天墜」がその大きさにもかかわらず素早く鞘走り迎撃した。 が、中書令が注目したのはそこではない。 何と、斬られたと同時に反対の靴が蒼羅を蹴っていたのだ。銀杏を併用してもさすがにこれは間に合わず。明らかに、一組の靴ではなく片側ずつの靴、といった動きである。 半面、稽古をしているような飛鈴が戦っている靴は、一組の靴、というより誰かが履いているような動きをしている。つまり、片方の靴をはじけば反対の靴もたたらを踏む。 「……敵の手に乗っていたほうが得かも知れませんね」 中書令、抵抗の支援演奏から攻撃の演奏、重力の爆音に切り替えるのだった。 ● この時、左方面。 「ジュゲームジュゲームパムポップン……」 華やかシノビ、ルンルンが左手の霊杖「カドゥケウス」を高くかざしくるりん☆と指と器用に使いひと回転させていた。ルンルン、三体の敵に囲まれている。 「ルンルン拳法スーパー烈風拳っ」 高らかに叫ぶと風を呼んだっ。風は真空の刃となって泰拳靴を容赦なく切り刻む。が、一足が倒れず突っ込んできたぞ? しかし、ルンルンも高々と右手の分厚いパンチ・ブックを掲げている。真っ向から迎撃するつもりだッ! 「くらえ、ルンルン拳法本技−大角☆(だいかどきらっ)」 ついに出たッ! さっき読んで思いついたとは口が裂けても言えない出来立てほやほやのルンルン拳法だッ! 本の角の一撃を食らい、最後の一足も力尽きるのだった。 「本当に本で払ってるな、忍者姉ェ」 「ほら烈花、来たぞ」 ルンルンのトドメに目を引かれていた烈花を、前然が投げナイフでかばう。しかし、改めて別の敵が来るっ! 瞬間、二人の間から大薙刀「岩融」がぬっと現れた。 「破ぁ!」 どどん、と精霊の幻影が浮かぶと敵は吹っ飛んだ。千理だ! これが武僧の「荒童子」。もう一体には……。 「さっさと逝きな。閻魔さんが首長くして待っとる」 千理、続けて中段薙ぎ払い、勢いで回転ジャンプをすると回転の勢いで叩っ斬った! 一連の動きの何と美しく無駄のないことか。 「やるね」 烈花も思わず唸る。敵に寄られていた中書令を守りに行っていた闘国もここで戻って来る。 「……連携もいいが、一人で戦えないと意味がない」 思わず呟いた前然の言葉には焦りがあった。 ――ぱん、ぱん、ぱん……。 この時、中間地点では小気味いい音が響いていた。 「よーし、分かった。まず一発、ぶち込んでみろ!」 双虎拳で守り重視の構えを見せつつ、手数の応酬をしていた紅魔が構えを解いていた。すかさず蹴ってくる泰拳靴。 「へへっ、いい一発じゃねぇか! ……そいじゃ、こっちからもいくぜっ!」 相手の蹴りに身体をくの字に折った紅魔だったが、ここは耐える。そして見えない敵体幹部に一気に空気撃。手合わせする敵のペースに合わせたせいか、敵は避けない。それどころか靴は一組として一緒に転倒する。 「おまえ、武運がなかったな」 良く考えたら修行でも負けたんだよなぁ、と思いつつも、この隙にきっちり一足ずつ骨法起承拳で止めを刺す紅魔。生命波動がある身ならではの戦い方である。 その隣では、つむじ風が舞っていた。 「どこを狙っている……」 背転飛びからすとん、と着地した氷魔が息も乱さず構え直していた。地昇転身で敵の攻撃をかわしたのである。 「こっちだ!」 間髪入れず疾風脚。地昇転身で開いた間合いを一気に詰めて霊拳「月吼」の拳を見えない胴体部に食らわす。もちろんこれでダメージはないが、まるでダメージを受けたかのように泰拳靴は千鳥足。 「満足のいく闘いはできたか?」 弔いにそれだけ聞いて、正拳突きを瓦割りのように二発。両靴はこれでぐったりする。 そして、その前方。 「足の部分を食い止めても靴は止まるんですね……」 三四郎が敵の脛の部分に三叉戟をかざして蹴りを止めようとしたところ、脛の実体はないのに蹴りが止まったことに驚いていた。 「敵に数回の攻撃をさせてから倒す……。俺の普段の戦い方と大差無い」 蒼羅も、敵のペースに乗ることでスムーズに戦えていた。 が、好事魔多し。 避ける、攻めるをしつつも微妙に戦線が移動していた。 やがて、その時が来たッ! ● ――ぼこ、ぼこぼこぼこっ! 「何だ?」 思わず息を飲む蒼羅。 何と、一度に今までの比ではないくらい泰拳靴が現れたのだ。その数、二十足前後。 「ここが一番の激戦区だったということか? とにかく一度引こう」 「うむ」 手筈を思い出す三四郎に、素早く目的を変える蒼羅。 「そこにおったんカイ」 これを見て、当たりの戦場を探していた飛鈴が右から寄って来た。 「何となく何となくピピンと予感してましたっ!」 左からは、超越感覚で察したルンルンが。 この二人を見て、中央中盤からするっと上がってくる者が。 「こりゃ、引くんじゃなくて行くしかねぇだろ!」 紅魔だ。 目の前で炸裂する飛鈴の崩震脚とルンルンの風神の両範囲攻撃の威力を見てアツくなったッ! 「それが相手の満足にもなるかもな……」 クールに言って氷魔も突っ込む。 「仕方ない。確実に二対一で対処しましょう」 「遠距離のない泰拳士なら、同時に仕掛けて来られるのは数体程度。冷静に対応すれば問題は無い」 三四郎、改めて下がる行動から前線に突っ込む。蒼羅の指摘にも頷く。 「千理さんっ」 激しい戦いの中、中書令が声を荒げた。 「分かってるよ。……さ。無茶は禁物だね」 中書令の視線を受けた千理は、雑技の三人を引き連れ下がる。 「ん……。おい、千ッ!」 この時、前線のちょうど撤退方向を向いていた飛鈴が異変に気付いた。千理を呼ぶ。 「気付いたよ。任せておきな」 千理、三人から離れたッ。 ――ひゅん。 主戦場に、開拓者支援の矢が飛んだ。撃ったのは、ついてこないはずの紫星だった。 しかし、彼女は離れた場所からわいた泰拳靴に狙われている。 明らかに間に合わない距離。 ところがッ! 「あそこまで行くまでもないね。……だって、こんなデカブツを誰が運ぶっていうんだい?」 黒翼ばさあ、としつつはっはっはと笑う千理は、なんとファイアロックピストルを構えていた。 ――ドゥン。 この一撃で片足をやり、もう片足は気付いた紫星の至近距離射撃と千理の追撃で仕留めた。 「私も用意してましたけど」 三四郎は撤退する三人と二人を確認すると、咆哮から回転切り。終止武器のリーチを生かした立ち回りを披露していた。 「狙い通り……か」 氷魔は、やはり地昇転身で誘い避けをしておいて疾風脚。 中書令は場面を見つつ重力の爆音を食らわせていた。 「……だが、俺たちもそろそろかもしれん」 しばらく乱闘が続いたところで、蒼羅が呼びかける。斬竜刀の長さを生かして両足斬りをしたところだ。 「じゃ、もう誘き寄せはいいな?」 「そういうこっタ」 「最後にもう一つ」 広範囲に動きつつ戦い敵を誘っていた紅魔が振り向くと、極神点穴を食らわせていた飛鈴が同意。夜で時を一瞬止めてトドメを刺していたルンルンもこれで満足したようだ。 そして、撤退戦で残党を潰し戦闘を終えた。礼をする千理。 ほぼ、アヤカシを一掃。大きな戦果を挙げた。 ● そして、村で。 「三人に稽古をつけることはあまりできませんでしたので」 中書令が琵琶を弾きつつ呟いていた。 「あそこで弱いの相手よりいいダロ」 同じく呟く飛鈴は、前然に稽古をつけていた。紅魔と氷魔の二人の泰拳士で烈花と闘国をみっちりしごく。 「どうしてあそこに来たんだ?」 「あ、あたしだけ除け者っていうのが……」 蒼羅は、弓使いだからと外れされたにも関わらずやって来た紫星にお説教。 「なあ、演舞しようぜ?」 兵馬は長物を持つ三四郎と千理を捕まえねだっていたり。 「温泉入りたかったです……」 残念がるルンルンは、在恋や皆美と美味しくお茶を飲んでましたとさ。 |