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■オープニング本文 ※このシナリオは【混夢】IFシナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 洋行の画家、下駄路 某吾(iz0163)は米国某州のナーカムという町に下宿していた。 「ほう。フェザートップ館という幽霊屋敷があるのか?」 ある酒場で、探偵を自称する男にそういう話を聞いた。顔が青ざめている。 「ああ。そこに調べに行った者は誰も帰って来ることはないという。……ただし」 探偵は周りを気にしつつ、声を潜めた。 「俺たちや、あの幽霊館を調べに行った者は何度も帰ってきている」 「幽霊はいたのかい?」 下駄路は聞いてみた。 「いる。……記者どもはみな、ここで心霊写真を撮って余所で儲けている。俺も見た。しかしっ!」 探偵、ちょっとだけ声を強めた。 「ここの住民は、この町があの館の主人、フェザートップ家の黒魔術でこの町が存続していると信じてやがる。……昔、フェザートップ家に生け贄を捧げるという風習があったらしい。それを怠った年は大火や大津波や……いいか、良く聞け」 ごくり、と生唾を飲み込んで探偵が間を置いた。 「一度は『名状しがたきもの』が夜の町中を徘徊して、一夜にして無人の町となったそうだ。……原因は、館の住民がまず全員が流行り病で亡くなってからのことだ」 「おい。それじゃどうしてこの町に人がいるんだ?」 下駄路、眉唾な話に突っ込んだ。 「伝説では、どこからか来た誰かがフェザートップ館に住み着いて安全な夜となり、また人が余所から流れてきたということらしい」 はは、と聞き捨てる下駄路。 「ともかく、この町の住民はみな、あの館によそ者が近付いて、館を壊さない限り調べてもらって、そして帰ってこなくなることを望んでいるんだ。……町が無事であるための、生け贄としてな」 探偵の迫真の表情に、ごくりと生唾を飲み込む下駄路だった。 後日、下駄路がまたあの酒場を訪れた時のことだ。 「探偵さんが、『俺になにかあればこれを渡してくれ』と」 酒場の主から、カメラを渡された。 「あんたが探偵の意思を継ぐなら、猛者を集めてやる」 「アンタはこの町の者だろう。どうしてよそ者に親切にする? 次は、俺を生け贄にしたいってか?」 下駄路、カメラを受け取りつつ挑戦的に主を睨んだ。 「まさか。……本当は、フェザートップ家の呪縛から解いてほしいんですよ。あの館を壊して世界全てが壊れることのないような手段で」 「世界が……壊れるのか?」 「分かりませんが、あの館はもしかしたら、この世界を守っているのかもしれませんからね。……いま、フェザートップ家の主と住民がいなくなっても、『名状しがたきもの』が夜を徘徊していませんので」 ぎらり、と下駄路を見る主。 「実際、誰かに謎を解いてほしいのです。館を壊して全てを壊すことにならないような手段で」 後から聞くと、過去に一度館の一家が流行り病で死んだのは、別の誰かの呪いだったのではないかといわれているらしい。 「次は、アンタに期待を掛ける。仲間はこちらからここに来る客に声を掛けて集めることができるが、どうだ?」 「まあ洋行帰りの土産話にゃ、ちょうどいいかもな」 下駄路、この依頼を受けた。 というわけで、戦闘能力のまったくない下駄路と共に幽霊屋敷、フェザートップ館を探索してくれる人、求ム。 |
■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
鞍馬 雪斗(ia5470)
21歳・男・巫
新咲 香澄(ia6036)
17歳・女・陰
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●面々 ボクは日本から渡米した霊能記者、新咲 香澄(ia6036)だよ。まぁ本職陰陽師で、その能力を使って面白おかしい記事を書いてたりするんだけどね。 「お、来たな」 約束した酒場に行くと、日本人男性が立ち上がった。これが下駄路 某吾(iz0163)さんだね。チェックのベレー帽を被ったボクの格好をじろじろ見てる。 「大きなカメラを持ってるようだな。それじゃ、フィルムは全部アンタに預けよう」 彼はそう言ってボクにフィルムを押し付けてきた。 「プロに任せるぜ? こっちゃ絵描きなんでな」 どうやら、商売敵じゃないみたいだね。上手く付き合えそうだ。 そしてボクたちは幽霊屋敷に向かう。 「きみは、誰?」 酒場に入ろうとしたら、背の低いチェックのベレー帽を被った少女と鉢合わせちまった。後の旦那と合わせ、日本人のようだな。 「さて、な。……名もない探偵だ」 「だったら、ボクは名もない霊能記者ってことになるね」 ほぅ。この酒場でカメラ持ちといえば……。 「下駄路某吾だ。よろしくな」 後の旦那はそれだけ行って酒場を出た。なるほど。もう酒場にゃ入らんでいいかもな。 「……館について助手の双樹にいろいろ調べさせた」 踵を返して歩いて某吾に事前の仕事を伝えると、ベレー帽もついて来た。 「ボクは新咲香澄」 「劫光(ia9510)だ。よろしく頼む」 ふん。三人であの屋敷にということになりそうだ。 「……荒れるね、これは」 辻占いの店じまいの最後にタロットを一枚めくると、「力」の逆位置。 「荒れるって、何が?」 ちょうど通りかかった三人組のうちの少年っぽい少女が聞いてきた。 「さあ……天気は荒れそうだけどね」 「じゃ占ってくれねぇか、美少女占い師さん。俺たちゃいまから幽霊屋敷に行くんだが」 とぼけておくが……いや、この熱血男、正気か? 幽霊屋敷に行くなんて。 「怪しそうなモノは片っ端から調査していくだけだ。占いなんざ不要だろ?」 「確かに不要だね……自分も行けば同じことだ」 筋肉質でぶっきらぼうの男に言われて、立った。 「一緒に来るの?」 「日本人だろう? 見捨てられないね」 ベレー帽の娘に答える。今日は本格的に店じまいだ。 「そうそう……鞍馬 雪斗(ia5470)という」 ま、いいだろとかこの三人が言うのは、今自分の手にしたレミントンM870を頼もしく思ってるからだろうね。 「お嬢ちゃん。こりゃあ午後から激しく雨が降るかもだねぇ」 石畳を行く馬車の御者が、前からそう声を掛けてくる。 僕は天河 ふしぎ(ia1037)。 天河財閥の御曹司である僕が、旅行を計画し単身渡米したのは192X年の事だった。 そして、ほんの気まぐれから立ち寄った港町、リンスマスでフェザートップ館と「ラプラスの箱」の噂を聞き、その晩命からがら……。 「おっと。変わった四人が通りを歩いてるねぇ」 幸い宿帳には『愛 工作』の偽名しか記してない……でも、あんな蛙の様な……。 「よし、着いたよ。ちゃんと裏口だ」 僕は馬車を降りた。 もう、この悪夢を終らせるには、フェザートップ館の謎を解くしかない……。 「ここか……」 あたしはリィムナ・ピサレット(ib5201)。男物の高級スーツを身に纏いギターケースを下げてる姿を見れば分かるとおり、成金の美少女ディレッタント(好事家)だからね。 今回は、このフェザートップ館を調べるよ。早速、お邪魔します。 「こんにちは〜。……化け物蹴散らしてお宝頂くよ♪」 正面扉を開けてするっと中に入る。 ――バタン。 と、館の扉が勝手に閉まった。 「……こうでなくっちゃねー♪」 扉の内側に掛かっていた鏡に、あたしの不敵な笑みが映ってる。その下に『時が来れば』という張り紙。 さ、どうしてくれよー。 ●本編 「……これがフェザートップ邸、か」 幽霊館の前で劫光が見上げた。 門扉から狭い庭が続く先の、二階建ての大きな屋敷。いや、時間の狂った時計塔があるから三階建てともいえる。 ――ガシャコン。 隣で雪斗が銃身の長い散弾銃のアクション確認と安全装置の解除をしていた。 「屋内での取り回しはどうかな?」 「護身用には、でかすぎるけどね……やっぱりこういう場所じゃ、信頼できるモノは必要だよ」 香澄がカメラのレンズを拭きながら聞くと、雪斗が微笑していた。 「行くぜ?」 下駄路の合図で門扉をくぐる。まだ午後なのに分厚く空に覆い被さる黒い雲で、あたりはすっかり暗い。 玄関の重々しい両扉を開き入ると、広いエントランスがあった。巨大なシャンデリアも下がっている。 ――バタン! 背後で扉が閉まった。『時が来れば』の張り紙もある。 「どういうこった?」 劫光が扉に手をかけると普通に開いた。が、顔を外に出してみて驚く。 「お?」 何と、広間があるのだ。振り向くとやはり広間がある。出られないようだ。 と、同時に白く透き通った亡霊が扉の鍵穴からわいて出てきた。 ――ほほほほほほ。 ふわさ、と広がる白いドレスに長い髪。4人は頭痛を覚えた。 「くたばれっ」 ――どぅん! 唸る雪斗の散弾銃。が、透過した。 「決定的瞬間! 片っ端から写真とるよっ」 「ウン・バク・タラク・キリク・アク!」 香澄が沈み込んであおり気味にシャッターを切り、その上を劫光の霊剣「御雷」が薙いだ。青白い龍の幻影がまといついていた一撃は、『霊青打』というらしい。背筋を凍らす悲鳴を残し、亡霊女性は口をあんぐりあけたまま霧のように消滅した。 「今のは?」 「気にすんな」 謎の掛け声を聞いた下駄路に、劫光はにやりとするだけ。 ――ぱちぱち……。 「誰だ」 背後からの拍手に香澄が振り向くと、二階階段の上部踊り場からギターケースを提げた男装少女がいた。 「やるねっ。……あたしはリィムナ。ちょっと二階で手伝って欲しいことがあるんだけど」 ――ボーン。 「待った。そこの扉から爛れたバケモノがっ!」 リィムナのいる踊り場の下で大きな時計が鳴り、広間の奥の二つの部屋からグールが出てきて襲ってきたのだ。 「こういう相手には利くだろう」 ――ごぅん。 雪斗、右からのグールを散弾銃の一撃で黙らせた。 「下駄路さんっ、符ってわかるよね!」 左では香澄が陰陽術。黒い壁がグールの突撃を塞いだ。一発で崩れるが時間は稼いだ。 「僕が斬るっ!」 ここで、敵の背後から声がした。霊剣「御雷」で斬る。グールはずずん、と崩れ姿を消した。 「やあ、僕は天河ふしぎ」 「へええっ。もう一人いたんだ」 倒した少年が自己紹介しようとしたところで、上から無邪気に髪をたらしてリィムナが覗き込んできた。「……誤射するところだったな」 ふー、と雪斗が溜息を吐く。 そして、下駄路が口を開いた時だったッ! ● 「ともかく、リィムナを手伝って二階を……」 ――ガコォン! 何と、天井の巨大シャンデリアが落下した。 飛び散る破片。そしてその衝撃で広間の隙間という隙間から亡霊がわいて出たではないかっ。その数、半端ではない。 「逃げろっ!」 叫ぶ下駄路。味方同士の乱射の末の全滅は避けたい。 「ふうっ……」 下駄路と香澄は広間奥の一室に逃げ込んで扉を後ろ手で閉めて難を逃れていたが、また一難。目の前から壁に掛かっていた斧や盾、棚の花瓶などが飛んできていた。騒霊だ。 「下駄路さん、危ないっ!」 陰陽符「玉藻御前」を掲げる香澄。またも結界呪符でこれを防ぐ。 「万が一のために符もいっぱいもってきたけど……」 「ちょいと数が多いな。奥に逃げるぞ?」 結界が崩される隙に香澄は写真を撮り、下駄路はさらに奥の扉を開けていた。 一方、二階。 「下で亡霊なら上でも亡霊か」 霊剣が翻り、呪詛を上げながら襲い掛かってきていた亡霊が消えた。 劫光の一撃である。 「助かるよ。あたしの武器は『限られる』から」 リィムナも一緒。 「とにかく、書斎だよ。あたしみたいな魔術書蒐集家には宝物庫に等しいからねー」 足取りも軽やかに先を急ぐリィムナに劫光がついて行く。 すると、それっぽい立派な扉があった。 「何があるか分からん。慎重に行くぞ」 ――グオゥ! 開けると同時に人狼が部屋から飛び出してきて襲いかかってきた。 「うわっ」 突きを繰り出すも何故か通用せず、手痛い反撃を食らう劫光。 そして人狼は、次の獲物を求め、キッ、とリィムナを振り返る。 リィムナはその時、ギターケースを開けていた。 中から出てきたものは……。 「レッツパァリィィィ!」 ドラムマガジン装填のトミーガンだっ! 容赦なくダダダダ……と乱射しまくる。 「弾丸は古い教会の銀十字を鋳潰して作った純銀製だよ?」 「グアアアッ」 きっちり人狼をふっ飛ばす。 「準備なしで幽霊屋敷に来る訳ない♪」 「……同じくだな」 むくり、とゾンビよろしく何かが起き上がった。 「わっ」 「……防弾チョッキだ。これくらいはなんて事ない」 劫光も準備がよろしいようで。 さらに二階にはもう一組いた。 「裏庭に、変な植物があってね。蔦が斧や鍬に絡んでいるんだ」 「……明らかに近寄らない方がいいな」 ふしぎと雪斗が話していた。 場所は、二階寝室内。 「本がある」 「こっちには妙に大きな暖炉が……」 それぞれ調べる二人だったが。 「わっ!」 二人の悲鳴が同時に響いた。 「本から亡霊が……はっ! ふしぎちゃん!」 「わぁぁ〜……」 雪斗が亡霊に襲われ、暖炉を調べていたふしぎが何者かに暖炉内に引きこまれ姿を消したのだッ。 ――ゴゥン、ゴゥン! 「っ……流石に銀弾じゃないから霊魂には……」 散弾銃は効果がないようだ。実体のない敵にはふしぎに期待したいが、すでに連れ去られている。 仕方なく奥の部屋に逃げる雪斗だった。 ● 「どうするんだ?」 戦闘の終わった一室で、下駄路が香澄に聞いていた。香澄は符を指に挟んで手刀の形を作っていた。 「こう、カメラを叩く」 ガスン。 瓦割りのようにカメラを叩くと、何故かカメラは壊れず符が青白く光った。 「現像終わり。……わああっ、女性の怨霊が写ってる。成仏するといいよ」 香澄はおもむろにこの部屋に符を張って除霊なんかしていたり。 「ん? この写真……」 その隙に、写真に見入っていた下駄路が声を上げた。香澄が寄ると、写真の一部を指差す。 「ほら、天井のこの部分。白い霊気が漏れてないか?」 「だねっ」 早速、写真に写っていた天井部分を探ると、二階への隠し扉を発見した。階段もちゃんと下がってきた。 「怪しい雰囲気の女神像があるね……」 上がった場所は、窓も扉もない部屋だった。そのくせ入ると蝋燭がひとりでに点いたではないか。 「左肩口から左胸、左の腰までが欠けててないな。……背中の翼も左がない」 下駄路が花瓶程度の大きさの女神像に近寄った時だった! 「うわぁ、なんか魑魅魍魎がっ!」 叫んだ香澄の言葉の通り、骸骨やら人魂やらが周囲に湧き出した。 符を構え火炎獣を呼び出す香澄に、前の部屋で入手した銀のナイフで応戦する下駄路。 しかし、いくら倒そうが敵がわいて出る。 「もしかして、女神像の欠片がいるとかか……がふっ!」 「この部屋、重要そうだよ。ここでの戦いに勝つことができれば……何か手がかりが見つかりそうな気が……」 しかし、最後には火をまとった妖狐が出てきて下駄路と香澄に食いつくのであった。 女神像に二人の血がしぶき、自動点灯した部屋の蝋燭が、消えた――。 そして雪斗。 「もしかして、この絵の女性が持つ花の下に花瓶を置くと……」 別の寝室で、窓際にあった花瓶を肖像画の下に移すと、女性の亡霊が動き花瓶に花を生けたのだ。もちろん、絵画の花は消えていた。 すると、テーブル上で散乱していたチェスが、動き始める。 見ると亡霊二人が対局していた。 「なんだ?」 声を掛けると、二人が襲ってきた。 「……くっ」 応戦しようと散弾銃を構える雪斗だったが、カスン、と空しい音が。 「ついに……」 目を見開いた雪斗。迫る怨霊。 ここで、雪斗の探索は終わる。愛用の武器の弾丸が尽きた絶望感と共に。 「ここは、地下室。……ん?」 ふしぎは謎の植物の鉢植えに絡まれ、暖炉から地下室に落ちていた。すでに鉢植えは倒している。 ――ジリリリン! と、井戸の側にあった電話が鳴ったので出る。電話線は井戸の中から延びていたりする。 「バカめベネディクトは死んだわ!」 地獄の底から響くような声。 いや、そればかりではない。 何かが。 何かが電話線を伝って這い上がってくるような音が聞こえるのだッ! 「わあああっ!」 ふしぎ、逃げた。 上へ、上へ。 「『女王のましますベッドにナイフを』か……」 ぽり、と劫光が頭をかいていた。 「あっ。……見つけた。書斎の置くには秘密の書斎があるのは常識だよねー」 書斎で唯一の発見であるメモと先割れスプーンを手にして頭を悩ませる劫光を尻目に、リィムナが新発見。早速奥に行く。 が。 「ひいいいっ!」 「おい、どうした?」 悲鳴に驚く劫光。リィムナは何を発見したのかすでに錯乱し、狂気の顔つきで走り出ると彼から先割れスプーンを奪い取りどこかへとにかく走るのだった。 時は若干遡る。 ふしぎはどこをどう逃げたか、時計塔の鐘突き堂に立っていた。 ――ぷらん。 足先が目の高さにあるので見上げると、男性の首吊り死体がぶら下がっていた。白衣が風になびく。 そして、狂った時計が深夜零時を指す。 ――ごーん、かーん……。 「もっと世界に、名状しがたき夜を!」 「誰か……を止めろォォ!」 黒いアタッシュケースから大きな真空管を取り出し、謎の心霊機械にガシャっと差し込む影。 ――かーん、ごーん。 「はっ」 正気にかえるふしぎ。 「今のは、幻?」 もしかしたら、隠された屋根裏部屋に真空管の壊れた心霊機械と止まった魔法陣があるかもしれないと思いつつ、新たな世界に飛び立つべく一歩を踏み出す。 身投げ、という事実に気付かぬまま。 先割れスプーンを持って走るリィムナは地下室の井戸に到着していた。 「視える……視える……。そうだ……めをえぐれヴぁいい……」 走っても走っても、狂気を置き去りにすることはできなかったらしい。 そして狂おしい幻視を、狂おしい手段で振りほどこうとする。 何をしたかは、伏せる。 それでも狂おしい何かから逃れられないリィムナは、井戸に身を投じるのだった。 何かから逃れられたかは、藪の中――いや、井戸の中であるが。 「おわっ!」 劫光は人造巨人の一撃をくらって吹っ飛ばされていた。 窓を割り裏庭に落ちた。謎の植物の上だったのでクッションになったが攻撃を受ける。これを凌いで屋敷を出た。 「時が……来たからか?」 とにかく、劫光は脱出できたのだ。 屋敷では、鐘が鳴り終わっていた。 ●終章 読んだか? これが今までの資料だ。探索に行くか行かないかはあんた次第だ。 ん? これを書いた男? ホテルで死んでたらしいよ。 この世のものでない何かを見たような目をしたまま、ね。 |