【翠砂】偵察野郎A小隊
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/07/16 18:44



■オープニング本文

●熱き砂塵
 エルズィジャン・オアシスを中心とする戦いが始まった。
 アヤカシはオアシス――もっと言えば、オアシスにあった遺跡の内部から出土したという「何か」を狙っている。
 王宮軍と遊牧民強硬派の確執も強く、足並みも中々揃わない状況が続いている。もちろん、アヤカシはそれを喜びこそすれ遠慮する理由などはなく、魔の森から次々と援軍を繰り出しているという。
 おそらくは、激しく苦しい戦いになるだろう。
 しかし、何も主戦力同士の大規模な野戦ばかりが戦いの全てではない。熱き砂塵の吹きすさぶその向こう、合戦の影でもまた静かな戦いが繰り広げられようとしていた。

●俺たちの時代が来たッ!
「なんだと?」
 合戦の最中、ひと際大きな声を上げた男がいた。
「いや。だから、遠くの砂漠に朽ち果てた船を見たんだって」
 上空援護の航空隊として作戦参加した男が説明する。
「こっちは目の前のアヤカシ退治で手一杯だったから、砂丘に隠れるように佇んでいるのをちらっと見ただけだったけどさ」
「よし。その偵察任務、俺たちがもらった!」
 親指を立てた拳を胸に突き立て、最初に大きな声を張った暑苦しい男は言い切った。
 名は、ゴーゼット・マイヤーという。本名ではなく、カッコいいのでそう名乗っている志士だ。
 早速、朽ち果てた走砂船内部の強行偵察作戦を立案。然るべき筋に意見具申して採用を勝ち取った。ついでに作戦運用する小型走砂船一隻とそのクルーの貸与も勝ち取った。
「よーしよし。我が小隊の重要性が周囲に理解されてきたな。偵察は威力よ、武力よ、強行よ!」
 俺の時代が来た、とばかりにがはははは、と高笑いするゴーゼット。
 が、しかし。
「ま、今回ばかりは隠密行動しようがないからな。……しかし、メンバーはどうする? いきなりの正面戦で仲間はどこにいってるか分からないぜ?」
 ここで、ひょろりとしたニヒルな男が口を出した。
 名は、ブランネル・ドルフという。本名ではなく、カッコいいのでそう名乗っている弓術師だ。
「ぐぬぬぬぬ……。貴様が隠密偵察バンザイを唱えないので今回は順調な滑り出しだと思ったのだが、またしてもこのパターンか」
 ぎりり、と歯噛みして悔しがるゴーゼット。相変わらずの熱血男である。
 と、ここへへろへろ弓使いの深夜真世(iz0135)が通りかかった。
「やれやれねー。なんかこう、涼しい風にでも当たりたいもんだわ〜」
 一応合戦では真面目に戦ったらしい。が、もう弱音を吐いている。
――がしり!
「きゃっ!」
 疲れたように肩を落として歩いていると、突然がしりと肩を掴まれた。
 振り向くと、そこにはゴーゼットの暑苦しい顔。
「よし、エンゼル真世は感心だな。こうして出撃の予感を察して集まってくる。……真の偵察戦士はこうでなくてはな。がははははは」
「ええっ! なになに……。って、ゴーゼットさんは北面ぶりでお久し振りなんだけど、一体何の話?」
 びくびくと聞き返す真世。
「言わずもがなだが、どんな不可能偵察も威力で解決」
「しかも何気に神出鬼没の偵察集団」
 ゴーゼットがいい、ブランネルが続く。そして口をそろえて‥‥。
「それが俺たち、『偵察野郎A小隊』」
 ばばん、と親指を立て自らの胸を指し、決めポーズ。
「ほら、エンゼル真世、貴様も身体が覚えているようだな」
「はっ!」
 気付くと、真世も並んで同じポーズを取っていた。ゴーゼットは満足そうに「これで同行決定だな」と満足顔。
「……ううう」
「というわけで他にも偵察野郎A小隊メンバーを、求ム!」
 びしい、とどこぞを指差すゴーゼットに、がっくり落ち込む真世をぽむぽむと慰めるブランネルだった。

 そして、朽ち果てた船内でとんでもない事態となるのであるッ!


■参加者一覧
海神 江流(ia0800
28歳・男・志
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鞍馬 雪斗(ia5470
21歳・男・巫
アーシャ・エルダー(ib0054
20歳・女・騎
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
アイシャ・プレーヴェ(ib0251
20歳・女・弓
リュシオル・スリジエ(ib7288
10歳・女・陰


■リプレイ本文


「きっもちいいな〜っ!」
「うんっ! きっもちいいよね〜っ!」
 見渡す限りの砂の海。
 そこを行く走砂船の舳先で赤髪をなびかすルオウ(ia2445)が気持ちよさげに言うと、隣にいる深夜真世(iz0135)も目を輝かせていた。
「気持ちのいい暑さですね!」
 さらに小さな男の子……じゃなかった、小さな女の子、リュシオル・スリジエ(ib7288)も隣に立つが、こちらは暑さの方がいいらしい。
「あ。リュリオルちゃん、久しぶ……」
「違うッ!」
 真世が横を向いたところで怒号が飛ぶ。見るとゴーゼットが腕組みして立っていた。
「ちゃんとカッコいい名前で呼ばんか!」
「そうです。僕はジェントルボーイです!」
 主張するゴーゼットに、ぴっ、と五芒星の符を胸の前で構えるリュシオル。そう、彼女はジェントルボーイ。少年の瞳を持つ偵察野郎だ。
 が、真世はそれどころではない。
「きゃん!」
「エンジェル真世さん、お久しぶりです〜!」
 背後から襲い掛かってきたアーシャ・エルダー(ib0054)に抱きつかれ思う存分はぐはぐされている。
「そういや新隊員が多いな。呼び名はどうする?」
 ここでブランネルがやって来る。思案し始めるゴーゼット。
「あたしは、お姉か真世さんと対になるのがいいですね」
 そう言って寄って来たアイシャ・プレーヴェ(ib0251)を見るゴーゼット。アーシャも見比べる。
「双子とは見栄えがしていいな。では、『ツインナイト・アーシャ』、『ツインシュート・アイシャ』と名乗るがいい!」
 わあっ、と真世&アーシャに抱き付くアイシャ。
「それより、打ち合わせ通り四人二組で……ああ、真世は顔が赤いね」
 脱線気味の話を引き戻したのは雪切・透夜(ib0135)。ふと真世の様子に気付くと、ふふっと微笑み彼女の頬に皮の水筒をぴとっ。「きゃん、透夜さん気持ちいい」、「水は中で気化するから冷たいんだよ」などいちゃつき始める。
 しかし、これが命取り。
「よし。貴様は『レディファースト・透夜』だ。長いから『レディ・透夜』でいいだろう。偵察野郎は長い名前が嫌いだ」
「……どうしてそうなる」
 ふふんとそっぽを向くゴーゼット。脱力するレディ透夜。
「まあ、特攻じゃなくて助かった……うん 色んな意味で」
 こっそりつぶやくのは鞍馬 雪斗(ia5470)。途端に「ん?」と視線が集まりぎくっとする。
「あ……どうせ呼ぶならロゼと呼んでくれ……その方が自分は馴染みあるのでね」
 ぎくりとして先に自己申告する雪斗。透夜の二の舞にはなりたくない。
 が、ここでゴーゼットが皆を集めた。「体よく逃げてない?」、「もうちょっと捻ったのが」などとごにょごにょ漏れ聞こえる。
「おい……?」
「全会一致ではないが、可決」
 輪になって全員協議をしていた中からゴーゼットが振り向きOKを出した。ほっとするロゼ・ラブ・雪斗。
「……何か余計なものがついてないか?」
 それはそれとして、この長い前振りに呆れている者もいる。
「潜って調べて生きて帰って報告して家帰って風呂入って湯上りに冷茶でもいただくあたりまでが偵察だからな……やれやれ、今日は長丁場になりそうだ」
 海神 江流(ia0800)がのんびり座ってそっぽを向いていた。
「よし、貴様は……」
「うみがみえる。……『オーシャン』とでも」
 というわけで、『L・ザ・オーシャン』になった。江流はまるで細波に身を任せるように無抵抗だったり。
「あれ? 雪ちゃんどうしたの?」
 ここで、真世がルオウの猫又に気付いた。
「そんな訳のわからない人たちに付き合おうというボンや真世には呆れてるんで話しかけないでくれます? ……ボンはどうするかって? もう『ボール・ライトニング』とかそんな感じでいいんじゃないですか?」
「おい、雪」
「というわけで、『ボール・ライトニング・ルオウ』。略して『BL・ルオウ』だ。これでようやく何気に神出鬼没の偵察集団……」
 ルオウが抗議するもアドリブつきでゴーゼットが押し切った。そして。
「それが俺たち、『偵察野郎A小隊』」
 ばばん、と親指で自らの胸を指し決めポーズに付き合わされる一同だった。
 やがて、調査する朽ち果てた走砂船に接舷することになる。


 さて、朽ち果てた走砂船の甲板にて。
「ふぅ。……うようよいますね」
「だな。海に沈んだ船は魚の住処になるっていうけど、砂漠で朽ちた船はアヤカシが住み着くもんなのかね……やれやれ」
 射程に優れる大型弓「呪弓『流逆』」の構えを解いて伏せていた瞳を上げたアイシャが言うと、「心眼『集』」での集中を解いて息を吐いた江流が軽く嘆いた。
「行け、アキアカネ!」
 二人の報告を受けてリュシオルが人魂をトンボにして内部突入させた。
「暗いですが……しばらくはいないです」
 カンテラを用意し、口元をカフィーヤで覆いながら突入準備をする。
「本当に何も残ってないのでしょうか。それだったらわざわざ偵察する意味がないと思うのですけど」
「何もなくても偵察する。それが偵察だ、ナイトアーシャ」
 人差指を頬に添えて首を捻るアーシャに、自船に残ったゴーゼットが声を張った。
「真世、日焼け止めはいいかい?」
「うんっ。透夜さんに塗ってもらったから大丈夫」
 自分の日焼け止めの塗り具合を確認していた透夜はj真世に聞く。
「いいから行かんか!」
 その様子に怒鳴るゴーゼット。
「行くぜぃ? アーシャ」
「任せて、BLルオウ。シュートアイシャも、怖くなったらお姉ちゃんが助けてあげるからね。ボーイリュシオルも」
「はいはい。それよりお姉、マッピングよろしくですよ」
「任せてくださいナイトアーシャさん。後方から各種援護をしますっ」
 そんなこんなで、カンテラを持ったルオウとマッピングのアーシャを先頭に、索敵のアイシャと回復・支援のリュシオルが入っていくのだった。

 さて、続いて入ったランタン持ちの江流、盾を前に引き気味に刀を構える透夜、きょろきょろ不安そうな真世、そして広域警戒する雪斗組は。
――死ネ、死ネ、死ネ……。
 前方に、浮遊するボロを纏った頭蓋骨と各種骨の集合体を発見。呪いの言葉と共に骨を投げてきた。
「おっと」
 慣れた風に横踏でかわす江流。後ではきっちり透夜が盾で防ぐ。
 その隙に今度は頭蓋骨が飛んできた。やはりやり過ごす江流。
「噛み付きを狙ってる?」
 止めた透夜は浮遊してカツカツと歯を鳴らり纏いついてくる頭蓋骨を止めるのに苦労する。
「ふぅん。残りはさらに投げてくるねぇ」
 遠近で攻撃を仕掛けてくるのを見て、江流が太刀「阿修羅」とともに踏み込む。
「しまった。江流さんの援護……」
「いいから真世さん、そのまましゃがんで」
 わ、と真世がびっくりしたのは、しゃがんだ頭の上を脚が横切ったから。後方の雪斗の回し蹴りだ。
 がしっ、と大きな音がしたのは、透夜の構える盾に叩きつけるように蹴り潰すことができたから。
「よし、これで止めだ」
 透夜が力なく落ちた頭骨を刀「時雨」で斬り下ろし止めを差す。
「……」
「……どうした、真世さん」
 しゃがんだまま何か言いたそうな真世に気付く雪斗。
「いや。その格好で足を高く上げるのは……」
 無言で膝上高くひらりとした服装の裾を押さえる雪斗だった。
「遊ばれるのを覚悟してましたが……」
 その後では透夜が同情の視線を投げていた。
「……っと、何だか大物さんのお出ましですよ」
 前から江流の声。つり出されず下がってくるのが無理をしない男らしさが光る。
 今度は巨体のマミーだ。再び横踏でかわし4人で包囲する形にする江流。
「忙しいね。真世は次を警戒して」
「うんっ」
「また突っ込まれるのもアレだし……」
 再び攻勢に出る三人。雪斗はウインドカッターに切り替えたが。
 そして。
「そうだ……船に負荷をかけすぎないように……床が抜けるほど腐敗はしてないと思うけど」
 雪斗が気付いて声を掛けた。すでにマミーは倒した後だ。体力があったせいか手こずって、結構どたばたやった。
「どうして私を見るんです、雪斗さんっ!」
「いや……まあ……」
 このやり取りに透夜は苦笑し、江流は知らんふりするのだったり。
 そしてこの時、もう一方で大変なことになっていたッ!


 時は若干遡る。
「おっしゃーっ!」
 どがしゃーん、と立て付けの悪い扉を蹴りでぶち抜いて、ルオウが船内に姿を現した。強力のなせる業である。
「せっかくだから怪しい血文字とか白骨死体とかあればドキドキなのに〜」
 すすすっと横を縫ってアーシャも入室。このあたり、抜かりない。
「罠がある可能性もあります。警戒していきましょう」
 アイシャは天井に注意していた。
「ん? 壁の向こうから物音が聞こえるような?」
 リュシオルは耳に集中していた。早速人魂を飛ばそうとするが、扉もなく隙間もない。
「います。アヤカシの反応がありますけど……きゃっ!」
――ガターン!
 鏡弦で改めて索敵したアイシャ。悲鳴を上げたのは壁が崩れて大量の砂がなだれ込んで来たから。
 いや、砂の中で何かが仄かに赤く光っているぞ?
「シュライムだっ!」
 殲刀「秋水清光」を切り下げつつ突っ込むルオウ。
「『この先危険』くらい書いておくのがエチケットでしょう!」
 それならずかずか踏み込んだのに、とアーシャが騎士剣「ウーズィ」で突っ込む。
 が。
「ちっくしょう、えらく粘着してくるなっ」
「錬力七を消費し、魔殲甲虫ビートルマグナを召喚! 行けっ! マグナァアッ!」
 何やら叫んでカードのように符を持ち、黄金色のヘラクレスオオカブト型の斬撃符を放つリュシオル。
「お姉」
 アイシャも援護射撃。
 結果。
「まあ、力押し勝負で負けるつもりはねぇしな」
 リュシオルの治癒符、モンシロチョウが消えたところでルオウが元気に言い放つ。3メートル級シュライムだけに苦労もしたが特に問題はない。アイシャはすでにマッピングに余念がなかったり。
 そして探索は続く。
「ん?」
 そんな中、先頭を行くルオウが踏み出した足の手応えに眉を顰めた。アーシャが覗き込む。
「何、またシュライ……きゃ〜っ!」
 どんがらがっしゃん、と世界が暗転する。
 腐った床を踏み抜いたのだ。若干、足元の注意が足りなかったか。

「透夜さん、この音……」
「うん。すぐに合流した方がいいかも」
 遠くでこの音を聞いた真世と、簡単に室内素描していた透夜が顔を見合わせる。明らかに数階層落ちた音だ。
「いやまて……外で何か……」
「龍か何かが羽ばたいてる音がするな。……そういえば、合戦にドラゴンマミーがいたと聞いたが」
 白墨で印をつけていた雪斗が気付き、江流が嫌な予感にそっぽを向く。
――ズズン。
「まずい、戻ろう!」
 透夜の声に走り出す一同だった。

「いたた……。皆さん、無事ですか?」
 体重の軽いリュシオルがぱら……と残骸の落ちてくる底で頭を撫でていた。
「つつつ。まさかこう来るとはなぁ。……アイシャはどうだ?」
 同じく尻餅をついていたルオウが周りを気遣う。
「返事が無い。ただの屍のようだ」
「ちょっとお姉。あたしを殺さないで下さいっ!」
「あはは、冗談だって〜」
 無事に身体を起こしたアイシャに抱き付くアーシャ。
――ズズン。
「なんだぁ?」
「あっ。船体下の砂からドラゴンマミーですっ! 急いで撤退しましょう」
 不意に揺れる中、きょろきょろするルオウにすかさず人魂を船体の隙間から外に出し確認したリュシオルが叫ぶ。
「真世さんが心配ですもんね」
「よーし。戻るわよ、シュートアイシャ!」
 たちまち船内階層を駆け上がる四人。ルオウとアーシャが怒涛の突破力を見せる。すでに偵察行動ではないが、ちゃんと背後でリュシオルがメモしてたり。


 そして、甲板に出た四人。
「うわっ!」
 空に雄々しく滞空するドラゴンマミーが瘴気ブレス攻撃に入っていた。
「まずいな、これは」
 すでに逃げる準備万端で待っていた走砂戦でブランネルと真世が弓を放ちながらも状況の悪さに顔をしかめていた。
「あっ。透夜さん」
 真世は、再び朽ち果てた船の甲板に飛び移った恋人を心配した。着地まぎわに「大丈夫だから」と笑みを返す透夜。
 そして、ドラゴンマミーの瘴気ブレス。
「透夜さんっ!」
 カッ、と、光った。
 大技に対し、それを一身に受ける形を取って騎士の防御術「スィエーヴィル・シルト」を展開する。前に出て後には行かさないという、決意。
「騎士の役割は剣にして盾。討ち倒すだけの存在じゃないッ」
「透夜っ! ……俺とやろってのかよ?」
 一体狙いの技であることもあり、見事受け切った。盾を下げた顔に浮かぶ「どうだ!」の色。すぐさまルオウが仲間をかばう様に前に出て蜻蛉の構え。しかも剣気で凄み一瞬ドラゴンマミーを怯ませる。凄い気合いだ。続けて背後からは援護の矢。信じる仲間の援護に笑みを見せる透夜。ローブを翻し四人とともに船に戻る。
「良くやった、レディ、BLっ。よ〜しッ、捲れ〜ッ!」
 響くゴーゼットの撤収合図。走り出す船。
 たがドラゴンマミーは追って来ているぞッ!
「くっ。次は毒ブレスか……。皆、翼を狙えっ」
「オーシャンの言う通りだっ!」
 江流が抵抗にご利益のある太刀「阿修羅」の宝珠に頼り雷鳴剣を飛ばす。ゴーゼットも弓で続く。
「真世、僕の後ろで」
「うんっ。今度は私が透夜さんのためにっ」
 透夜ま真世を盾でかばい、後から真世が弓を撃つ。
「Σっ! これ大きすぎますよ!」
 ついにアイシャも大車輪の射撃。風撃の弾道で顔を狙いまずは敵を牽制し……。
「殺意を込めて心の力にて敵を撃つ……『朧月』!」
 ぼんやりぶれる上、威力の乗った一撃がドラゴンマミーに刺さる。
「つまらないモノだけども……お釣りは取っときな!」
 ついでに焙烙玉を鼻先目掛け投げる江流。直撃は無理だったが派手な爆発はいい牽制になった。
「あっ。斬撃符の射程外に。だったら」
「ボーイ、やるなっ」
 戦弓「夏侯妙才」に換装するリュシオルに感心するゴーゼット。
「それでいいっ! 接近戦は沈没を意味する……絶対に近寄らせない」
 船内とは一転、オレイカルコスを構えとにかくウインドカッターを撃ちまくる雪斗。
「しかし回復してるな、ありゃ」
 観察していたルオウが溜息を吐く。
 が。
「逃げた?」
 透夜が呟き、構えた盾を下ろした。合戦でとにかく突っ込んできたドラゴンマミーと違う動き。
「まあ、報告すればいいだろう。皆、ご苦労である」
 ゴーゼットのがはは笑い。任務完了だ。
「それじゃ真世さん、甘味巡りを」
「甘味も楽しみですが、砂だらけでしょうし、お風呂も入りたいですね」
「ああん、アーシャさん。って、リュシオルちゃんここで脱ごうとしちゃだめ〜っ!」
 ふうっ、という溜息のあと賑わう。 
 ともかく任務は完了。
「今回も偵察もまた、威力が光ったな」
 舳先できらりん☆と笑みを見せるゴーゼット。ルオウも横できらりん☆。

 敵の動きは看破できなかったが、伏兵との想定の上、掃討の別働隊が組まれたという。