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■オープニング本文 「コクリちゃん、ほんとーーーーーに、すまんかった。この通りじゃ」 珈琲茶屋・南那亭で「ろりぃ隊☆出資財団」の助平親父商人たちがテーブルにつくくらい深く頭を下げていた。前にはコクリ・コクル(iz0150)が座っている。最近ここで取り扱い始めた、みどり牧場産のミルクと、おいしそうなお菓子がお供え物のように盛られている。 「もういいよ。随分アヤカシにやられちゃったのはボクの実力不足なんだし、それに仲間が頼り甲斐があるっていうか、絆を感じられたからいいんだ☆」 頭を下げられたコクリは困ったようにしていたが、自分の言葉に改めてうれしくなり笑顔が戻っていた。手首には前回の依頼の時に仲間から渡された白いリボンが巻かれていた。 「その……。もう、傷は大丈夫かの? 例えば、海に入っても海水が染みないくらい」 「まったく平気だよ? 何か困ったことがあったら言ってよ。海でも戦えるから?」 具合を見るように控えめに言うエロ商人たちに、コクリは元気良く返事した。商人たちを心配させないよう、明るく力こぶを作って見せてヤル気を見せる。 「いやいやっ。お詫びに海でバカンスをプレゼントしようと思ってるんじゃが……」 「あ……。前みたいに、エッチな新作水着をたくさん着るとかは、やだよ?」 途端に顔を赤らめ、下を向いたりちらっと上目遣いで商人の顔色を伺ったりともじもじし始めるコクリ。その様子にエロ親父たちは嬉しそうにしつつわたわたと両手を振る。 「いや、今回はそんな予定はないんじゃ。純粋にコクリちゃんに元気な笑顔を取り戻して欲しいと……」 「そうそう。いつまた忙しくなるか分からないし、まずは常夏の島で休んで次の冒険と活躍に備えて欲しいと……」 「そうだよね。活躍できるだけの実力をつけなくちゃ」 どうやら商人たちは前回の苦しい戦いをさせたことに対して後ろめたさがあるようだった。ところがコクリは真面目なので、バカンスより修行の方に意識がいった。 「ダメよ、コクリちゃん」 新たに口を挟んだのは、同財団の一員の可愛い女の子好きのご婦人で、チョコレート交易船「チョコレート・ハウス」のオーナーでもある対馬涼子だった。 「女の子なんだから、可愛くなくちゃ。強いだけじゃダメよ? それにコクリちゃんはチョコレート・ハウスの艦長さんでしょ? チョコレート販売促進もあるから、ちゃんと可愛くなってくること」 でないと、八幡島副艦長や乗組員ががっかりするわよ? とコクリの鼻の頭をちょんと爪先でつつく。 「はぁい。分かったよ、対馬さん」 不承不承頷くコクリ。 「それに、いま尖月島には闘技場にもステージにも使える正方形の浮き桟橋が完成したばかりらしい。そこで海に落し合いの試合をしてもいいんじゃないか?」 「椰子の実がたくさんあるから椰子の実ジュースも飲み放題だし」 「あら、女の子なんだから太陽で火照ったお肌をマッサージしたあと海に入って冷やして引き締めて、魅力アップでしょう」 「いやいや、可愛い新作水着を着るのも……」 「イルカと一緒に泳げば特訓にもなるし……」 「奇麗な花も咲いてるから、それを探しに密林を散歩しても笑顔に磨きがかかろう」 「下が海の高床式別荘の濡れ縁に座って夜の星を眺めても……」 「わーっ。分かったから。行って来るからみんな落ち着いてよぅ」 というわけで、すでに海水浴シーズン真っ只中の常夏の島、泰国は南那の尖月島でコクリと一緒に一泊合宿に参加してもらえる人、求ム。 |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224)
18歳・女・志
ネオン・L・メサイア(ia8051)
26歳・女・シ
猫宮・千佳(ib0045)
15歳・女・魔
御陰 桜(ib0271)
19歳・女・シ
シャルロット・S・S(ib2621)
16歳・女・騎
龍水仙 凪沙(ib5119)
19歳・女・陰
愛染 有人(ib8593)
15歳・男・砲 |
■リプレイ本文 ● 「コクリちゃんとお揃いにゃ〜♪」 突然、黄色いフリル付き水着の猫宮・千佳(ib0045)が猫のような笑顔でコクリ・コクル(iz0150)に飛びついた。 「わ〜っ。ボクは着替え中〜っ!」 尖月島の更衣室はすでに夏色たっぷり。 「じゃ、お着替え手伝ってあげるにゃ♪」 コクリから黄緑のワンピース水着を奪うと紐ショーツをずり下げ水着に足を通させる。 「にゅふふ〜♪」 「うう」 ずず〜、と水着を上げヒップを包んでやり肩紐を引っ掛ける。改めてコクリに抱き付く千佳。お揃いの、腰に短い二段フリルのある水着少女の完成だ。 「あ、あの……目一杯楽しみましょうね、コクリ様……♪」 そこへ、おど……と雪ノ下 真沙羅(ia0224)がやって来た。同時にネオン・L・メサイア(ia8051)も寄り添うように登場。 「あ、勿論ネオン様も……♪」 「そうだな。たっぷりと此の一時を堪能させてもらおう。ふふふふふっ」 「う……うん」 コクリが恥じ入ったのは、真沙羅とネオンの二人があまりにも堂々としていたため。片や胸を張り大きさ強調。片や腰を引いて谷間強調。 「にゃ、お姉さんたちもお揃いにゃね♪」 千佳が気付いたとおり、ネオンが黒ビキニで真沙羅が白ビキニ。 「その……。こぼれたり、しないの?」 コクリはそっちが気になる様子。明らかに胸の大きさに比べて布地が小さいのだ。 「去年からまた胸が大きくなってて……新しく買ったもの、ですが……」 「そうなればこうしてやればいいのさ」 また大きくなった胸を気にする真沙羅。その後から両手で胸を包んでやるネオンに短く悲鳴を上げる。 「ボクはこぼれないだろうけど……何か、きついかも」 ひょこ、と真沙羅の背後から出てきたのは、彼女の人妖「魅愛」。金糸の髪に紅玉の瞳に白磁の肌で、青いワンピース水着に身を包んでいた。きついというのは、やっぱり胸みたいで。ぎゅう。 この様子に、じっと我が胸を見るコクリ。 「気にしない気にしない。出発前に出資者のおじーちゃんたちにお披露目したら興奮してたからね〜」 どし〜ん、と龍水仙 凪沙(ib5119)がコクリに抱きついてくる。薄い胸に「なぎさ」と書いた白布があるブルーワンピース姿は、もちろん世界が違えば「スク水」と呼ばれるもの。年齢の割にえらく違和感がない。やはり健全元気な悪戯っぽい笑顔と薄い胸がロリ以下略。 ここで、外から声がした。 「うー……みー……ですの〜〜〜!」 シャルロット・S・S(ib2621)(以下、シャル)の声である。 「じゃ、行こう」 海に駆け出す5人だった。 ● 「あっ。コクリちゃんですの〜♪」 波打ち際でシャルが振り返ると、一気に走って戻ってきた。かけっこは得意なのだが……。 「シャルさん、危ないっ」 やっぱり転びそうになるシャル。コクリが駆け寄り抱きついて、どぼ〜ん。 「今回もよろしくお願いしますですの」 「ちょっとシャルさん、ずれてるよっ!」 シャルの着る黒のセパレーツのトップがめくれているがまあ、コクリに抱きついているので見えはしない。というか、やっぱりぺったんこなのでずれやすいようで。 はい、これでよし、とコクリが整えた向こうでは……。 「桃、あの旗を先に取った方が勝ちだからね♪」 『わんっ!』 御陰 桜(ib0271)がコクリたちの方に立つ旗を指差し、たゆゆんと揺れる胸を下にしてうつぶせになっていた。彼女の朋友、忍犬の「桃(もも)♀」も「頑張ります!」のしゃぎっぷりで伏せをする。 そして、用意ドン! 「おおっ。速いねぇ。って、ちょっとーっ!」 のんびり眺めていた凪沙が、わーっと下がる。 ――ずざ〜っ! 「わんっ!」 「なかなかヤるわね、桃」 滑り込んだ結果、旗は桃が咥えていた。桜の滑り込みは胸が砂にめり込んだ分、届かなかったようで。そのかわり桃を抱き締め嬉しそう。 「だ……大丈夫です?」 「ま、真沙羅さん柔らかいから」 真沙羅が心配そうに自分の胸元を見たのは、下がった凪沙を胸で受け止めていたから。 ここで愛染 有人(ib8593)が朋友の人妖「颯」とからくり「楓」を伴いやって来た。 「ほら、あると様もあのくらいしてほしいですわね」 「無茶言うなぁぁ〜」 有人、いきなりテンションが高い。 「うむ? その格好……」 「これはすり替えられて……」 ネオンに見詰められびくっと腰を引く有人。その姿はパレオが巻かれた白いワンピース水着だった。 それも、女性物のッ! 「有人さん、似合ってるけどそういう趣味が……」 「違う〜っ! だから水着はちゃぁんと自分で用意したはずっ」 寄って来たコクリに突っ込まれ言い訳する有人。 「この程度を読めない颯ではございませんの」 「姫ならば問題はないでしょう」 ほほほほ、と手の甲を口元に当てて笑う颯。実は彼女が女性用水着に摩り替えていたのだ。これに同調して楓も静かに言う。 「かぁ〜えぇ〜でぇぇ〜……!!」 「まあ、悪戯しなければ問題ないにゃ」 「……女性陣の輪に何の違和感も無く馴染んでしまうのはどうなんでしょう?」 あっさり条件付きで受け入れられた主人をぐりぐりと肘でつつく颯だった。 「まあ、それはともかく……」 「海だー! 泳ぐぞー! 遊ぶぞー!」 コクリが言って横を見ると、復活した凪沙が元気良く笑顔で拳を上げる。 ● 「でも、シャルは騎士なのでちゃんと真面目に特訓もしますの」 さっきコクリに抱き付き一通り満足したシャルがアーマー「レーヴェ」を展開していた。 早速ひらりと搭乗すると一気に動かした。 「レーヴェ弐式、行きますのーー」 がしょんがしょんと歩行する。 いや、だんだん速度が上がっているぞ? 「迫激突じゃなくても、かけっこはできるんですの〜っ!」 がこんがこんと速度が上がると共に激しくなる振動もなんのその。瞳を輝かせ熱血するシャル。移動自慢の騎士としては、アーマー搭乗時も移動力にこだわるのだ。 「うに。あたしたちも修行するにゃ」 これを見て千佳がひらめいた様子。 「うむ。良い場所だな、コクリ」 「でしょ? よかっ……。わわ、千佳さんっ!」 ぐるり海岸線を眺めていたネオンの横にいたコクリの腕を取り駆け出す千佳。 「みんなで鬼ごっこするにゃ! 百乃も来るにゃよ〜っ☆」 『妾もにゃかっ!』 千佳の猫又「百乃」は、ふーやれやれと木陰を探そうとしていたところ、ひょいと千佳にさらわれてしまう。 「ん、桜鎧は水に浸かってノンビリしてるねっ! それじゃ桜さん、私たちも行こうっ」 「そうねぇ、せっかくの凪沙ちゃんのお誘いだし。……桃、行きまシょ」 『わんっ♪』 こうして凪沙と桜も駆け出す。先行するのは忍犬の桃だが。 「それじゃ我らは海だな、真沙羅。……ちょうどアルフも気持ち良さそうに水浴びしてるしな」 というわけでネオンは真沙羅を連れて、自身の甲龍「アルフ・メサイア」が凪沙の甲龍「桜鎧」といっしょにぱしゃぱしゃやっているところを目指す。 「にゅふ、あたしが鬼にゃね。全力で捕まえちゃうにゃよ〜♪」 『妾はゆっくりしていたいのにゃが……ええい、どうとでもなれにゃー!』 そして鬼に決まった千佳から、百乃を先頭に逃げる一同。 あははうふふとたちまち嬌声が響くビーチにしかし、ぽつねんと佇む者もいた。 ● 「そうだ。特訓……」 有人であった。ぼけっとしている。 「あら。まだ着替えの時の嬉しさから立ち直ってないんですの?」 颯に突っ込まれ、たちまちぽんって赤くなる有人。 ちょっとお一人様だった男性更衣室の様子を巻き戻してみよう。ほわほわとその時を思い出す有人。 「ほら、もうあると様の用意した水着はありませんのよ?」 うりうり、とパレオ付き白ワンピをひらひら突きつける颯。「くっ」と悔しさをかみ殺しつつ着用する有人の動きはなんかもう腰をくねらせ女性そのものだったり。 「あ、尻尾が出るデザインなんだ」 そんなことで正気に帰る有人。いかがなものか。 「手伝って差し上げますわ。ほら、楓も」 「尻尾……もふもふでさらさらでふわふわな姫の尻尾……」 「カラクリのくせに意気を荒げるなぁ〜っ!」 余程この赤毛一角獣人の尻尾はさわり心地がいいのであろう。カラクリもうっとりハァハァで、もふられた有人の方も弱点なのか真っ赤になってふらふら腰砕けだったり。 そんな、無駄……もとい、至福タイムの数刻後。 「はぁ、はぁ……。さぁって、それじゃぁ次は颯の番だね」 「えっ!? いや……颯はそのぉ……」 大きな羽妖精用の、胸のおっきな黒ビキニを握ってハァハァと意気を荒げる有人の意気込みにビビる颯。 「じゃぁ頭突きにする?」 「その二択はあんまりですの!」 「そんなことより姫。私の特訓でしたね?」 はっと我に帰る有人。そう、この機会にカラクリが泳げるのかを確認するつもりだったのだ。 が。 「姫、泳ぐとはどうするのでしょうか?」 ちゃんちゃん。 とりあえず、水に浸かっても大丈夫みたいであるが水泳は教育が必要みたいだ。 「ちょっとどいて〜っ!」 ここで桜の叫び声。 振り向いた有人に、『わんっ』と桃が飛びつく。続いてどし〜んと桜が突っ込んできて、コクリ、千佳、凪沙も突っ込んできてごち〜ん☆。最後に千佳の頭から百乃がぽ〜んと振り飛ばされ、ばしゃりと水没した。 「水の中には逃げちゃダメだったはずですの〜っ!」 背後では、ぱかっとレーヴェのハッチを開けて身を乗り出したシャルがぷんすか怒っていた。どうやらアーマーに乗ったままシャルが鬼をしていたようで。 「誰も聞いてないですの」 ふよふよ浮いていた颯が、ぷか〜っと浮いている5人を見下ろして言うのだった。 ● さて、沖では。 「ふーっ。……なあ真沙羅。アルフの乗り心地はどうだ?」 ぷか〜、と仰向けで波に浮かぶネオンが朋友のアルフの方を向いた。アルフもぷか〜、と浮いている。水は苦手で泳ぐことはできないが、何とか浮かぶことはできるらしい。 「ネオン様、ゆっくりゆったり……です……」 真沙羅の方は、アルフの背中におっきな胸を引っ掛けるようにしてうつ伏せになってぷかぷかゆらゆら極楽気分。 「そっちも気持ち良さそうだねー♪」 真沙羅の影からひょこっ、と魅愛が顔を出した。 「ん? 来るか、魅愛」 片目をつぶったまま声を掛けると、魅愛は真に受けてひょいっと仰向けに浮かぶネオンに飛び移る。 と、ここで。 「ふぅ〜♪ 気持ち良いな、真沙羅、アルフ……っと、コラコラ、魅愛」 「ネオンに抱っこー♪ えへ、お胸気持ちいぃー♪」 なんと、魅愛が無防備なネオンのおっきな胸をむにむにして頬ずりしたり谷間に挟まれているではないかっ! もちろん、ネオンを大切に思う真沙羅は黙っていない。 「……って、魅愛!? ね、ネオン様に何を……きゃーっ!?」 そしてどぢっ娘属性なのも黙っていないッ。魅愛がネオンに甘えてるのに嫉妬し割って入ろうとしたところ、見事にどぼ〜んと海に転落。 「真沙羅ったら何焼きもち焼いて……わきゃーっ!?」 ああ。朋友は主人に似るのか? 魅愛もあっさり海にどぼ〜ん。 ただし、こちらには理由があった。 ――ぷはあっ! 「……ぁ、ね、ネオン様……はふ、ありがとうございます……♪」 「大丈夫か、真沙羅? 慌てるからだぞ。ふふっ、可愛い奴め」 見詰めるネオンの瞳はどこまでも優しく、そんな様子に真沙羅は胸の奥に幸せを感じ、嬉しさで頬を染めるのだった。そんな真沙羅をネオンは思わずだきゅり。 「って、ボクは〜っ」 忘れ去られ波間でばしゃばしゃともがく魅愛だったり。 ● さて、浜辺。 「もちろん海に来たのですから泳がねばなりませんの! これは決まり事ですの」 ぐ、と熱血した後も元気なシャルが主張する。汗ダラダラで早く海に浸かりたいのだ。 「じゃ、海鮮バーベキューしましょ。食材は現地調達!」 「夕飯の為にいっぱいお魚獲るにゃ♪」 びしりと指差す凪沙に、にゃふぅと右手を突き上げ飛び上がる千佳。 『妾は濡れるのは……』 「百乃も一緒にゃ♪」 『みにゃぁ!?』 ああ。こっそり逃げ出そうとした百乃、脱出失敗。 「コクリちゃんも一緒に泳ぎましょ〜っ!」 「シャルさんっ、いきなり海に向かって駆け出したら……」 この隙にシャルがコクリの手を取ってイルカと泳ぐのだとばかりに駆け出すが……。 「わ〜っ!」 どぼ〜ん。 波に負けて仲良く転倒。 「はっ!」 しかし、すぐさまざばばと身を起こすシャル。 「海底に貝がありましたのっ! 海鮮バーベキュー……腕がなりますのー!」 どひゅん、とレーヴェまで戻ると愛用の槍「槍烏賊」を振り上げて気合を入れくりながら戻ってきた。 「何この目まぐるしい展開……」 「コクリちゃん、特訓でしょ? 水泳は全身運動だし、素潜りは肺活量を鍛えられるよ!」 呆けていたコクリは今度は凪沙に手を取られ、深みにどぷ〜ん。 「んー」 「ん?」 凪沙が指差す方を見ると、タコがいた。 (潜伏中の詠唱と一緒だね) そのままもご、と口の中で何か言うと人魂。エビを作り出して囮にして岩場の隙間から誘い出したところを今度は呪縛符。タコをうにうにした触手で足止めする姿は何かもう不気味な感じ。そのまま凪沙は銛で一突き。 「ぷはー。とったどー!」 続いてぷはー、と上がってきたコクリと抱き合って喜び合う凪沙。 「こっちも取れたにゃ☆」 続いて千佳が顔を出す。手にした百乃に怒ったウツボがびちびちと絡み付いていた。 『うぅ、酷い目にあったにゃ』 百乃はぐったりして目はうつろだったり。ひげはへにゃ。 「こっちも大漁ですのっ!」 さらに顔を出したシャル。掲げる槍烏賊には、魚が三匹連なって刺さり、魚三兄弟♪ 状態。しかもどどんと大物。 「わあっ! さっすがシャルさん」 わいわいきゃいきゃいと元気に喜び合うのだった。 「あると様は、これでいいですわね」 運よく取れた小さな魚を持っていた楓。颯はその手から肴を奪うと有人の角にぐさっと差してしまう。まるで角を銛にしてとったようになってしまった。 「は〜や〜て〜っ!」 「ああっ……。その角で突くのはもしや颯だけですのッ?」 容赦なく颯をつんつんする有人だった。 ● その後。 「ふ〜っ」 さすがに特訓というか、遊びつかれたコクリがべしゃり、と浮き桟橋に上がると、先客がいた。 「あらん。お疲れ?」 桜がいた。 ぴんくとくろの横縞びきに姿が眩しい。 「休むんなら、日焼け止めをぬってアゲル」 「そういえばぬりぬりしてたよね? きゃっ!」 んふふ、とヨコシマにぴんくとくろな笑みを浮かべて肌を撫でる桜の手つきに、コクリは身をよじる。 「ほーら、ほーら……ん?」 「あはははっ。やっほーっ! ……ほら桜鎧、もう一往復行くよ!」 なんと、うさ耳をなびかせ凪沙が板切れ乗って甲龍「桜鎧」に引っ張ってもらっていたのだ。ばざざざ、と波と風を切ってとにかく気持ち良さそう。コクリをいたぶ……塗ってアゲル桜の手も止まってしまった。 「あっ! コクリちゃん、イルカさんですのっ。イルカさんと一緒に泳ぎにゴーですのー!」 「シャルさん〜っ」 すっかり桜のテクニックにへにょへにょになっていたコクリはあっさりシャルに抱きつかれきゃいきゃいされて、どぶ〜んと海に連れ去られたり。目指すは遠くに見えたイルカの群れだ。 「行くにゃ♪」 『にゃがーっ』 「桃っ」 『わんっ』 千佳は百乃を連れて、桜は桃を連れてどぼ〜ん☆。 「イルカさん〜」 「コクリちゃん、やってみて。下半身の筋肉が鍛えられるし、バランス感覚も上昇するよ?」 イルカと喜びつつ、シャルと泳いでいたコクリはここで凪沙と一緒に板の上に。さあ、スピードが出るぞ。 「コクリちゃん、待つにゃ。よ〜し、にゃ♪」 千佳はイルカに乗ってコクリを追う。百乃は何とかしがみついたまま、おひげへにょん。 「シャルも負けないです〜」 シャルもイルカに跨ったぞ? 「あると様?」 「わ〜っ!」 有人の方はいたずらイルカに下から掬い上げられ背に乗せられた様子。そのまま速度が上がる。 「桃、頑張れ〜♪」 「わぅ……」 桜はすでにイルカに乗って遊んでいた。ついでに桃の水泳特訓に付き合っていたり。っていうか、さすがに犬かきでは辛そうですよ? 「シかたない……」 桜は網を取り出し、これをイルカに引かせる。漁をすることで抵抗を増やし、桃に合わせるつもりだ。 「取れたら分けてアゲるわね♪」 イルカにウインク☆。 それはそれとして、先頭。 「ちょっと、真沙羅さんネオンさん、あぶな〜い!」 「何だ?」 「……あ」 凪沙の声でゆっくり浮いていたネオンと真沙羅はしっかり抱き合って左に避ける。ざざざと右に避けた凪沙とコクリの水上スキー二人乗り組。 「ごめんね〜」 「まったく……わ!」 「きゃ……」 振り向き謝るコクリを見送っていると、不意に水面下から掬い上げられた。 「わっ。おいっ!」 「はうー……」 イルカに強引に背中に乗せられたのだ。そのまま追いついてきた千佳とシャル、そして有人のイルカと並んで風と波を切り、水上スキーを追ってざばんざばんと泳いでいく。 ● そして、夕暮れ。 すでに浮き桟橋の上では海鮮バーベキューがいい匂いで焼けていた。 「こうしていると昔を思い出すようだ。うむ、実に良い」 「ネオン様、あの……」 焼ける食材を見つつ満足そうなネオンに、物欲しそうに真沙羅が寄り添った。ぎゅっと抱いて密着したまま座るネオン。 「ああ。ほら、これなんかいい焼け具合だ」 ふー、と冷ましてやってから、まるでキスをねだるかのように顎を上げて差し出している口に持って行くネオン。あむ、と艶やかな唇に含む真沙羅。にこっと笑顔。 「ふふ、嬉しいです……♪」 「美味いか真沙羅? ふふ、どれ、我にもくれ。あーんっ」 このいちゃらぶっぷりに嫉妬する人妖が一人。 「ボクは? ご飯はお預け? うぅ、そりゃないよー」 「お前が昼間、悪戯するからだぞ? ほら、魅愛。此れがお前とアルフの分だ」 『ガゥ』 二人を守るように翼を広げ包んでいたアルフも嬉しそうだ。 そしてこちらでも。 「桃は今日頑張ったからしっかり食べて元気を補給しなきゃね♪」 『わんっ!』 桃のしっぽの振りっぷりと、「頂きます」と吠えてからのがっつきっぷりが可愛いのだ。 「自分で採ったお魚さんは美味しさ倍増〜ですの!」 味の方は、にこぱ笑顔のシャルをご覧の通り。 そして、有人。 「あると様。焼けましたですの」 「……姫にこれを……」 「なんで……タコばかり?」 「触手がうねうねと……」 つんつんつん、あんあんあんと有人と颯。 「しょうがない、ウツボウツボ……」 「ちょっと凪沙さん、今度はウツボ率がっ」 悪戯好きの凪沙がにんまりと笑みを浮かべつつ加わるがつんつんはしない。あくまで颯たち専用だ。 「うう、コクリちゃん遊んでー♪ 」 ここで有人の前をふよふよ横切ったのは魅愛。真沙羅とネオンのいちゃらぶっぷりにつまんなく思ってコクリを探したのだが……。 「コクリちゃん食べてるにゃー? これあたしが獲った魚にゃ、美味しいにゃよ♪ はい、あーん♪」 「うんっ。美味しー。それじゃ、千佳さんにも、あ〜ん」 コクリと千佳の様子を見て、ががん。 「颯ちゃん、私もまぜて〜っ」 結局、颯と一緒に有人にちょっかい出しに行くのだった。 ● そして、尖月島の夜がふける。 空は降るような満天の星。 「楽しかったけど疲れたね、千佳さん。みんなもぐっすり寝てるよ」 ここは、別荘の屋根の上。んしょ、とコクリがよじ登っていた。 「修行も大事だけど、こうやってゆっくりするのも大事にゃ♪ 何事もバランスにゃ♪」 屋根には千佳がひっくり返って寝ていた。横に転がったコクリと手をつなぐ。 下では、真沙羅とネオンが添い寝して、凪沙とシャルと桜と桃がぐだぐだな感じに絡まって寝て、そして衝立の向こうで有人がほっぺに颯のキックを食らった体勢で寝ていた。 「星が奇麗だよね〜」 「にゃ♪」 満足そうに、コクリが呟き千佳が微笑むのだった。 |