泰猫、鮎を求めて
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや易
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/06/21 22:50



■オープニング本文

●これまでのあらすじ
 泰国はどこかの地方のどこかの町。
 地域の台所となっている泰猫(たいねこ)飯店という料理屋があった。
 大将は、「太った体は料理人の誇り」と胸を張る太ったおっさん、鈍猫(ドンビョウ)。実はこのふとっちょさん、義理人情には厚いようで。
 あるとき、町の若いチンピラの更生のため、青少年十五人を店で働かせて欲しいと町の世話好きから頼まれるも、当然そんな余裕はなく。旅泰商人の林青(リンセイ)も話に加わりだした結論が、「天儀で砦にこもって悪さをする山賊に困っている村がある。これを開拓者とともに退治して、跡地で商売しろ」。
 瑞鵬(ズイホウ)以下チンピラたちは、開拓者に助けてもらい見事山賊を追い払う。
 そしてこの砦を「山賊砦」と名付けて宿とし、自らを「泰猫隊」(たいねこたい)と名乗り義賊としても活動を始めるのだった。

●山賊砦は元気です
 主要道から外れた村と村を結ぶ山道にある宿屋・山賊砦は、近道をしたい商人や飛脚などからこよなく愛されていた。特に、身分の隔てのない山賊のように自由に気ままに、大らかに過ごすことのできる雰囲気が親しまれていた。大きな焼き鳥「山賊焼き」と大きなおむすび「山賊むすび」も珍しく、「泰ニャン」と名付けられた猫の形をしたむすび「泰ニャンむすび」も可愛がられていた。
「おおぅい、瑞鵬〜!」
 そんなのどかな山中の宿屋に、リーダーを呼ぶ声が響いた。
「大変だ。猫族の団体さんがここに泊まるらしい」
 息を切らせて走ってきた青年は、瑞鵬を捕まえるとそう報告した。
「猫族……。懐かしい響きだな。天儀に来てからも獣人は見たが、犬の獣人だったり兎の獣人だったり……」
 泰国では、獣人の大半は猫の獣人で集落も作っていたため「猫族」として認知されている。が、天儀ではそうでもなかった。土地柄の違いに戸惑ったものだと懐かしそうにする瑞鵬。
「呑気にしないでくれ。……その猫族、鮎の塩焼きが食べたいらしいんだよ」
「あ、なるほどな……。それはまずい」
 瑞鵬、ここでようやく事態の緊急性を理解した。
 ここ山賊砦の弱点は、水系にあった。
 まあ、水は総じて山砦の弱点ではあるが。
「鮎や山女は付近の川で獲れなくもないが量は少ない。山賊焼きに力を入れているのはそういう理由もあるだろ?」
 必死に説明する青年。
 つまり、鶏は飼って日持ちさせることはできるが、魚は鶏ほど管理が容易ではない状態にあり緊急時に対応できないということだ。
「その猫族の団体、何人くらいなんだ?」
「三十人」
 ぶっ、と噴き出す瑞鵬。山賊砦でまかなえる人数ではあるが、どうして猫族だけ30人が団体で移動しているのかがわからない。
「山賊焼きで我慢してもらうしか……」
「いや、川魚が食べたいと言い張ってるんだよ」
「猫族といえば、魚一尾で満足するはずが……」
「ないよね」
 語尾を濁す瑞鵬に、いちいち青年はきっぱりと言う。
「仕方ない……」
 瑞鵬の出した結論は、広域義賊活動で懇意にしている付近の村で、鮎漁をさせてもらい急場を凌ぐという案だった。
「とはいえ、人は余ってないぜ?」
 泰猫隊、人数はいるが、現在は遠い村から盗賊警戒の依頼があり、錐間(きりま)を中心とした防衛部隊を組んで出動している。隊に協力的な村では、いまは田んぼで忙しい。
「仕方ない。開拓者に頼ろう」
 こうして、久し振りに開拓者を呼ぶこととなった。

 なお、開拓者が瑞鵬らと向かって漁をする村の清流では、漁場の保護を目的に鮎の友釣り以外は禁止されている。囮鮎などの用具各種は貸し出される。


■参加者一覧
海月弥生(ia5351
27歳・女・弓
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
プレシア・ベルティーニ(ib3541
18歳・女・陰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
玖雀(ib6816
29歳・男・シ
夢尽(ib9427
17歳・女・砲


■リプレイ本文


「うきゅ〜♪ さっかなっつり〜☆」
 河原に狐獣人、プレシア・ベルティーニ(ib3541)のお気楽な声が響いていた。
「友釣りは初体験だけど、鮎を大量Getしちゃうんだからっ!」
 一方、乙女ちっくで元気な声は華やかシノビ、ルンルン・パムポップン(ib0234)。
「……みんな元気ね〜」
 鮎が逃げなければいいけど、と呟きつつ長い金髪をさらりと流したのは、弓術師の海月弥生(ia5351)。
「なんだ? 元気ねぇじゃねぇか」
「色々切羽詰った依頼ばかり受けてたから息抜きに来たのよねぇ」
 気にして寄って来た長身のシノビ、玖雀(ib6816)に、やはり溜息混じりに答える弥生。
「おいおい、息抜きって…‥。これも依頼だろ」
「何しろ数えただけでも、死ぬ寸前まで陥ったのが幾つかあるからねえ。その間際の感覚から離れたいのよねえ」
 突っ込む玖雀に、表情を崩して微笑する弥生。
「あー……。そりゃ、お大事にな」
「ほぅ?」
 ここで新たに砲術師の夢尽(ib9427)がやって来た。
「死ぬ寸前まで陥った……。あんた、男らしい……いや、凄いな」
 口調に男らしさはあるが、女性である。男らしさにあこがれてるのか、弥生に掛ける言葉にしては少々不適切な部分が……。
「ありがと。心行くまで堪能して緊張を解し体を休める様にしたいわね」
 弥生、初夏の爽やかな風景を見るように体を翻しつつ余裕のある対応。
「ふむ。さもありなん」
 夢尽も「春を詠む歌人」と呼ばれるところを見せ、弥生と同じように豊かな自然を眩しそうに眺めるのだった。
「泰猫の、久しいのう!」
 そんな穏やかな場面に、賑々しくリンスガルト・ギーベリ(ib5184)が登場した。
「おおっ。泰ニャンの絵師さん」
「猫族の方々に満足してもらう為、全力を尽くす! 安心するがよいぞ!」
 すでにリンスは泰猫隊でお馴染みで、すぐにわいわい盛り上がる。
「って、リンスの絵師さん。なんでゆっくりのご登場で?」
「うむ。水没しても良いように水着を……いや、なんでもないっ!」
 くだらないことを聞くでない、とむきーしたり。
「それはそうと、鮎は好きでよく食うが釣り自体はとんとやったことがない」
 はっと気付いて夢尽が振り向く。特に塩焼きはうまいな、と笑顔を見せつつ竿をしごき始めた。
「そうだな。時間も限られるし、すぐに釣ろう。まず友釣りは……」
「鮎さんが自分の場所! って決めちゃうんだよね。そこに他の鮎が来たら怒ってど〜ん! って体当たりするから針に引っかかっちゃうんだよね〜」
 泰猫隊の瑞鵬が説明しようとしたところ、ふみゅ、とプレシアが首を突っ込んできた。
「おまえ、何をまともなことを……」
「仲良くすれば良いのにね〜☆」
「ね〜。……って、はっ!」
 プレシアのまともっぷりに驚く玖雀だったが、すぐにルンルンと友釣り自体を否定するようなことを言い始めたのを見てがくりと肩を落とす。と、同時にルンルンが何かひらめきましたよ?
「字が間違っちゃってます、それなら強敵と書いて強敵(とも)釣りが正しいんだからっ!」
 ぐ、と握りこぶしを胸に固めて主張するルンルン。
「きっと水の中では、『俺のシマにのこのこやってくるとはな……今日こそ決着付けてやるぜ』って美形番長さんな若鮎さんが凄んで、私の鮎と夕日をバックに殴りあって、やがて見つめあい……きゃっ」
 染めた頬を両手で包むが、放っておこう。
「俺は殆ど自給自足みたいな生活してっからな、釣りも料理もお手のものだ」
 改めて、玖雀がさらっと言いつつ囮鮎に仕掛けを取り付けていた。
「妾は未経験じゃのう、釣り好きの親友なら何か知っているのじゃろうが生憎と別の依頼に出掛けておって聞けなんだ」
「あら。じゃ、教えてあげるわ」
 リンスには弥生が教え始めた。どうやら弥生の故郷では夏の風物詩らしく経験があるようだ。


 しばらく後。
「金髪の姐さん、大変だったな」
「あら、そうでもないわよ」
 泰猫隊の男たちが弥生に声を掛け労っていた。
 実は弥生が夢尽やルンルンのために囮鮎を選んで仕掛けを作ったりしたのだ。ようやく作業も終わり自分も釣り始めようとしていたのだが。
「よ〜っし、やるぞ〜!」
 たたたたっ、と金色の尻尾がなびきつむじ風のように弥生の横を駆け抜けた。
――ちゃぽ〜ん。
「ううう〜。ちべたいの〜」
 つむじ風の正体はプレシアで、ヤル気と勢いが余って川に突撃。おぞぞぞぞ、と全身鳥肌立ておっ
きな胸を抱きつつ体を縮こまらせていた。
「……なんで水着なんだよ」
「川なら水着なの〜」
 仕方ねぇなぁ、と黒ビキニに着替えていたプレシアを、玖雀が保護者のように手をつないで川の中から連れて戻る。「ふにににっ」としっぽをぷるぷるして水分を飛ばし、その水滴がたくさん玖雀にかかって「だぁーっ!」とか騒いだりも。
「……あの場所はもう駄目ね」
「まあ、他にも良さそうなところはありますし」
 淡々と残念がる弥生と、それをなだめる泰猫隊。
「よ〜し。縁起を担ぐ為にも帽子に眼鏡「邪眼」をかけちゃいますっ」
 新たにルンルンが騒いでいた。そっちを見る弥生たち。
「なんでも伝説の鮎の精霊さんの格好らしいですよ、魚神さんとかなんとか」
 弥生の視線に気付いて、ぶんぶん手を振り解説するルンルン。
「意味不明ね」
「釣りの精霊さんの目にかかれば……って、見えにくいのです」
 冷ややかな視線とつぶやきに気付かないルンルンはそのまま水辺に行き、竹筒を川に刺し、超越聴覚も駆使して魚の泳ぐ音を調べ始めた。が、いきなり眼鏡「邪眼」を外す始末だったり。
「あの場所も、もう駄目ですかねぇ」
「……アイデアは悪くないかもよ?」
 くすりと微笑して理解を示す弥生。そして彼女もようやくポイントを定めるべく動き始めるのだった。
「行け! 見事大物を捕えて来るのじゃ!」
 歩く途中で、リンスが賑やかに囮鮎を出撃させている姿を見て苦笑する弥生。
「私だって負けないもの。いっけー、トロピカルナミヒラボンペイちゃん!」
 一体何の勝負をしているのか、ルンルンも負けじと囮鮎を出撃。何やら意味不明な愛称がついているのはただの気合いである。

 さて、別の場所。
「寡聞ながら調べたところでは……」
 夢尽が淵っぽい、コケの多そうな場所を狙っていた。
「ふむ……」
 そのまま岩の上に胡坐をかいてのんびりする。
 ふと、水面に目を落とすと葉っぱが淵の旋回する流れに巻き込まれ同じ場所を巡っていた。
(堂々巡りか……)
 そんな思いにとらわれ視線を上げる。空は青く、雲は大らかに流れていた。
(家を離れて、良かった)
 開拓者になって家を出て、自由と責任を感じている。新たな出会いがあった。新たな冒険があった。思わず笑みがこぼれる。
「……あ、姐さん。囮鮎は時には思うところに誘導した方がいいですぜ?」
「む、そうか」
 突然、泰猫隊の男に声を掛けられびっくりした。慌てて動かしてみる。
「それよりどうだ? 山で旅館の商いをするのは」
「どう、とは?」
 つい聞いてみたら、逆に問われた。
「いや、俺は山に暮らしたことがない。だから、山に暮らすというのは……」
「仲間が、しみじみ感じられますねぇ。……あっしらも泰国の都会にいましたが、ここじゃ他人同士じゃいられない」
「世界が狭くなって窮屈ではないか?」
 身を窮屈そうに縮めて聞いてみた。
「自然は広いですし、こうして遠出もする。自由でいいですぜ?」
「そうか……。おっ!」
 晴れやかに夢尽が言ったところで、当たりが来た。友釣りは二匹を上げる分、引きが激しい。目を輝かせて腕に力を入れる彼女の生き生きした表情は、新たな世界を満喫している姿そのものだった。

 そしてこちらも絶好調。
「よっ、と。……必要数を満たすよう、しっかり釣らねぇとな」
 玖雀が鮎を川からぶっこ抜きして玉網でキャッチしていた。
 が、凛々しい涼やかな笑顔はすぐに曇り空のようになった。
「あうう〜、お腹減って力が出ないの〜」
 比較的近い場所にいるプレシアが、しゅぅん、と狐耳と狐尻尾をたらしてへたり込んでいたのだ。これを見た玖雀が慌てて近寄る。
「おいっ、何を魚籠に手を伸ばしてやがる。……踊り食いとか考えるんじゃねぇぞ!?」
「ほみ? 踊り食い?」
 ぐきゅる〜と鳴るお腹を抱えつつ無意識のうちに釣った鮎の入った魚籠に手を伸ばしていたプレシアが、「踊り食い」の単語にぴぴんと耳と尻尾を立てて反応しましたよ?
「だーっ、よせっ。ほら、これでも食っとけ」
 慌てて携帯汁粉を差し出し事なきを得る玖雀だった。
「ふにっ! 元気いっぱいだよ〜!!」
 この後、プレシアも頑張って結構釣り上げた。

 もちろん、苦戦している者もいる。
「……どうやら、妾は余り釣りの武運には恵まれぬようじゃの」
 リンスが呟く。
 釣れない。
「ふぁあああああ〜……」
「リンスの姐さぁ〜ん」
 突然呼ばれてあむっ、と口を閉じるリンス。
「どうしたんです? 真っ赤ですよ?」
「い、今のはでっかい欠伸ではないぞ?」
「それより、そろそろ昼食の用意をしますぜ?」
 寄って来た泰猫隊の面々に言い訳するが、彼らはリンスの名誉を重んじ見なかった振りを通すつもりだ。
「ふっ、今のは欠伸ではない。我が家に伝わる、心身に気合いを入れる為の動作よ」
「ほうほう、家伝の」
 士道を使って説明したのが、まずかった。あまりにも立派だったので泰猫隊が食いついた。
「……その、龍の咆哮に由来しておるのじゃ、本当じゃぞ?」
 とたんに茹蛸のように真っ赤になり、視線をしきりに上下ににがしながらもじもじと説明しきったが、泰猫隊もそれと気付いたようでニヤニヤしはじめたり。
 と、ここで当たりが来た!
「姐さんっ」
「おおっ! どんどん釣るのじゃ! 仲間にも沢山食べそうな者がいるしのぅ」
 ぐぐい、と竿を引くリンス。いつもの生き生きした彼女に戻ったようで、めでたしめでたし。


「よぉ〜し、ごはん〜♪」
 昼の河原に、プレシアのひと際元気な声が響く。
「夜は塩焼きだけでなく、鮎のご馳走三昧なんてどうかしら?」
 焚き火を前にした弥生が慣れた手つきで鮎を焼きつつ玖雀を見た。弥生、さらっと言ったがどういうつもりだろう?
「そーだな、吸物なんかも作れねぇかな?」
「ふむ。あんた、主……」
 懐から苦無「鍋木」を取り出し下処理をしていた玖雀が、「塩と醤油で軽く味整えれば完成だし」などぶつくさ言ってたので夢尽が呟く。
「おい、誰だ主婦みたいっつった奴……っ!」
「……気にしてたのか」
 怒る玖雀に謝ろうとした夢尽だったが、まんざらでもないように赤面しているようなのでやめておいたり。
「うむ、うまいのぅ」
「美味しいの〜♪」
 リンスとプレシアは塩焼きだけでも幸せそう。はもはも、もっきゅもっきゅととにかく平らげる。
「真っ黒なのです」
 横ではルンルンが、とほー。自分の焼いた鮎が真っ黒の墨になったようだ。たくさん釣ったのだが、ここではあまり役に立たないようで。
「はいはい。これがもういいわよ?」
 弥生が加減の良いものを回す。
「うむ、やはり塩焼きはうまいな!」
「身がホロっとして、幸せです……ただ、ちょっと食べるとこが少ないのです」
 ぱくついて満足そうな夢尽。ルンルンはしょんぼりしつつ2匹目に。
「姐さん、それは何で?」
 騒ぎの横で、リンスが食事前まで筆を運んでいた紙に泰猫隊が気付いた。
「秘密じゃ」
 リンスは真っ赤にして隠すのだったり。

 そして夜、山賊砦。
「いい匂いがするにゃ!」
「鮎はまだかにゃ!」
「我ら猫族は鮎を所望にゃ!」
「たっぷり所望にゃ!」
「我々の胃袋はあと十年戦えるにゃ!」
 とにかく猫族の団体客がうるさい。大きな焚き火と鮎の焼けるにおいに包まれ、すでにテンションが上がるだけ上がりまくっている。
「すまない、夢尽さん。そっちに長椅子並べてくれ」
「気にするな。体を動かすのは好きなんだ。……それが『仕事』となるとやりがいもついてくる」
 瑞鵬に指示されすぐに動く夢尽。
 ここ山賊砦は、男が前面に出て働く旅館。今まで知っている家事仕事とは違う雰囲気に夢尽はむしろ気持ち良さを感じている。ちなみに、玖雀も厨房で働いている。
「鮎三昧でもてなすぜ?」
 炊き込みご飯や吸い物作りを手伝っていた。
「おおっ。うまいにゃ!」
「町中で食べるよりうまいにゃ!」
「やっぱりご当地で食べるのは雰囲気あって良いのにゃ!」
「山賊風で礼儀を気にせず下品に食べられるのがいいにゃね!」
「鮎の塩焼きは下品に食べるのがうまいにゃ」
「神楽の都の座敷で食っても味気にゃイからにゃ〜」
 猫族、猫笑顔で大満足。口の端に飾り塩やらつけまくりだが、うまそうにぺろりと舐めて極楽な感じである。
「さぁさ、あんたらも食ってくれ。依頼はあくまで釣りの手伝いだったからな」
 瑞鵬に言われ席に着く開拓者たち。猫族もすっかりいい気分でこれを歓迎している。
「ほぅ、あんたたちも釣ったかにゃ?」
「これを川に突っ込んで泳ぐ音を探っちゃったのです」
「おおー」
 ルンルンの珍しい土産話に、猫族は感心しきり。
「清流のせせらぎも心地好さを奏でたわよね」
 弥生も満足そうに土産話。っていうか、鮎三昧を自分でも堪能中。昼の発言はこれが目的だったか。
「これは今日の記念として砦に寄贈するぞ!」
 リンスは、昼食前に描いていた絵をばばん、と泰猫隊に渡した。
「これは……」
 描かれていたのは、へにょん、と主線ブレまくりの人物が河原でわらわらと釣りをしている風景だった。
「あの……。これって全員『泰ニャン』になっているんですが」
「な! 可愛いからいいじゃろう!」
 シュールな絵を可愛いといいはりむきーするリンス。もちろん、隊猫隊はこれを飾る。後の話になるが、評判は悪くなかったという。ここまで旅して疲れた客には、ちょうどいい緩さの絵だったらしい。
 そして。

「ん……」
 焚き火は小さくなっていた。弥生が気分良さそうにうとうとしている。
「平和な依頼だったな」
 夢尽も美味しく鮎料理をいただき、のんびりしている。ルンルンとリンスはその横ですうすうすやすや。
「よし、気に入った。我らもここで働くことにしたにゃ!」
「は?」
 そんな平和な風景の横では、猫族の頭と瑞鵬がそんなやり取りをしていたり。
 さらに場所は移る。
「一人で飲むのも味気ねぇ。プレシア、晩酌に付き合うか?」
 玖雀が、お気楽にそんなことを口にした。
「ほみ? お酒〜? ボク呑んだ事無いんだよ〜」
 くぴっ、と飲むプレシア。もひとつ、くぴぴっ☆。
 この後、とんでもないことになる。
「ふにぃ、暑いのぉ〜」
「うわ、馬鹿やめろ! 脱ぐんじゃない〜っ!」
 この騒ぎに弥生が目を覚まし、遠く二人を見る。
「……何だ。水着ならいいわね」
「お腹空いたの〜」
「こら、齧るな。俺は食いもんじゃねぇっつーの!」
 そんなこんなで、美味しく食べて満足したプレシア……じゃなかった。開拓者も猫族も美味しく鮎料理を食べて満足した一日となった。