|
■オープニング本文 神楽の都の、夜。 月が明るい晩だった。 「くそっ!」 浪志組屯所の片隅で、どだん、と壁に拳を打ち付けている姿があった。 振り乱す蜂蜜色の金髪。長い耳。 浪志組隊士のエルフ、クジュト・ラブア(iz0230)だった。 「どうしたい。こんな夜更けに」 この一幕に、すい、と影からやって来た者がいた。勝手にクジュトをボス扱いしている元ならず者の回雷(カイライ)だった。 「回雷さんですか。……何でもありません。世の中うまく行かないようで、やりたいこともできずに焦っているだけです」 「分かってんならなぜ焦る?」 回雷、様子がおかしいと突っかかってみる。 「焦っていると分かって焦らずにいるなんてほど、私はできた人物じゃないからですよ」 明らかにいつものクジュトではない。 「じゃあ、何を焦ってるんだ?」 「浪志組に身を置いて、自由が利かなくなったから」 これはどうだろう、と回雷はいぶかしんだ。 「ま、いい。気晴らしに巡邏にでも出ようや」 回雷、当番でもないのに勝手に巡廻に出ようと誘った。閉塞感を嫌ったクジュトは首を一つ縦に振って快諾した。浪志組、ことほど左様に自由な面があった。いや、クジュトは諜報部門を受け持っているので特に自由が利くのだが。 (ゆえに、『自由が利かなくなった』はない) 回雷、そんなことを思いつつ、適当に巡邏に付き合える者に声を掛けた。 「実はですね」 そして出掛けると、詰めていた息を吐き出すようにクジュトは言葉を紡ぎ始めるのだった。 「一般の人に剣を教える稽古に出たいんですよ。……ここの前の持ち主、涼海さんと雀ばあさんの願いもありましたし」 ああ、そのことかと得心する回雷だった。 「でも、浪志組は剣の一流派ではない。普通の道場の出稽古の指南とは訳が違う。このへんの問題をどう解決するか……。それに、浪志組で一緒に来てくれる人がいるかどうかも」 何せ私は天儀の剣術はからきしですからね、とも付け加える。 「ふうむ」 回雷が唸ったところで、遠く南方からけたたましい音が響いた。牛車か何かが東から西へ爆走しているようだが。 と、その爆音が止まる。 そして。 「うわあっ、骸骨だっ!」 「刀で襲ってきよる!」 「どうしてアヤカシが突然町中に?」 「闇のような煙を纏っておるぞっ!」 「合計六匹も。助けてく……ぎゃあああっ!」 やがて夜の街に響く悲鳴。再び響き始めた爆音はそのまま西方へと消えていた。しかし、アヤカシは南方に居座り暴れ続けているようだ。 「大通りのあたり、ですか。……皆さん、行きます。浪志組出動ですっ!」 クジュトはそう声を上げると回雷に屯所への伝令を託し、仲間を連れて現場へと駆け出すのだった。 |
■参加者一覧
巴 渓(ia1334)
25歳・女・泰
露羽(ia5413)
23歳・男・シ
鞍馬 雪斗(ia5470)
21歳・男・巫
日御碕・神無(ib0851)
19歳・女・サ
柏木 煉之丞(ib7974)
25歳・男・志
藤田 千歳(ib8121)
18歳・男・志 |
■リプレイ本文 ● 「……アヤカシが出たか」 藤田 千歳(ib8121)が、遠くの騒ぎに首を巡らせた。 千歳だけではない。巡邏していた浪志組、クジュト・ラブア(iz0230)たちの顔が引き締まる。回雷(カイライ)だけは、屯所への伝令に走るようクジュトから指示が出たが。 「差し出がましいが回雷殿もご一緒してはどうだろう」 しかし、これを柏木 煉之丞(ib7974)が止めた。いつも飄々としているが、言葉は決して軽くない。伝令に走りかけていた回雷はピタリと動きを止めた。 「赴いてなお酷い騒ぎになるほどなら自然と報も届く……というのは楽観的過ぎるかな」 「違いねぇ、とにかく行くぞ! ……ったく、珍走団でもあるまいに」 言葉を重ねる煉之丞に、巴 渓(ia1334)が有無を言わさず同行していた仲間を引っ張るべく走り始めた。クジュトは自らの判断を覆すか迷っていたが、回雷が走り始めたので頷くしかなかった。 「日御碕家次女、日御碕・神無。参ります!」 きりりと言い放った日御碕・神無(ib0851)も動く。これにはクジュトも動き始めるしかない。 「神無さんは、迷うこととかあるのですか?」 クジュト、実際にそう口に出したわけではない。神無の横顔をちらりと見て、今夜の巡邏に出掛ける時にそう声を掛けたことを思い出したのだ。 「迷えば、稽古で払います」 紅鳳院流で鍛えた神無はその時、それだけ言うのだった。 その彼女をいま、クジュトが見詰めている。 「いかなる状況だとしても、無辜の民が危険にさらされている以上は戦うのみです!」 「そうですね」 力強い神無の言葉に、クジュトの迷いも晴れたようだ。 「現場に急ごう」 しんがりに付いた千歳も、ようやく気持ちが切り替わった様子のクジュトを見て走り始めた。相変わらず表情は少ないが、安心した様子である。 「今宵の酒はお預けか」 同じくしんがりの煉之丞も、やれやれと呟いてから走るのだった。 時を同じくして別の場所。 「この夜更けに……騒がしいな?」 さらりと長髪を耳の後ろ、肩の後ろに跳ね上げやれやれといった表情で振り返る人物がいた。 「タロットの少年」こと、鞍馬 雪斗(ia5470)である。 嫌な予感がしたのだろう、ピラッと手にしたタロットから一枚引いてみる。事があると手に馴染んだタロットで簡易の占いをしてみるのはもう職業病に近いと言うほかない。 「……戦車の正位置……騒動、争い……いや、まさかな……」 「おや」 ふー、と頭を左右に振った雪斗の横に、シノビ装束の人物が並んだ。 「急ぎましょう」 シノビ装束は、露羽(ia5413)だった。短く雪斗に挨拶すると、長い黒髪をなびかせ早駆で先へと消える。 「やれやれ。……気になることは幾つかあるけど、やれる事をやるしかないな」 艶やかな銀髪を躍らせ腰を落とすと、改めて現場に急ぐ雪斗だった。 ● さて、浪志組。 「西へ向かった牛車は後回し、まずは襲われた一般人の救出が優先だ」 叫ぶ渓。篭手、赤龍鱗の拳を固め力強く走る。後に回雷やクジュトが続いている。 「牛車はとにかく、私が引き付けてみます」 神無はむしろ牛車にこだわった。 「分かりました、救出は私に任せてください。皆さんは自由に存分に戦ってください」 「ああ。回雷はフラフラせずクジュトについとけ」 渓と神無の意見の相違をまずいと見たクジュトが間を取る。それと分かって渓が了解の意思を示した。 「回雷殿、クジュト殿、避難と護衛も忘れず頼む」 「アンタはどうすんだ?」 すい、と前に上がって話し掛けてきた千歳に回雷が聞いた。 「俺自身は敵陣に突っ込む」 さらに速度を上げる千歳。引き結んだ唇は多くを語らない。これが彼の決意。 「ラブア殿。姫を使うかい」 下がったクジュトに、煉之丞が武器を投げて渡した。 「?」 「刀『夜宵姫』さ。何、回雷殿を引き留めた詫びではないが」 「姫」に首を傾げていたクジュトは、煉之丞の言葉で得心いった。この間にも走る。騒ぎも近くなる。 そして、大通りと交わるところで。 「いたぞ。先に行くっ!」 渓、逃げてくる住民の背後にいる狂骨を見て瞬脚。拳を固めて目いっぱい踏み込んで……。 「食らえっ!」 なびく赤いマフラーに、前傾姿勢で伸ばされ敵を砕く赤龍鱗。にいっ、と微笑したのは一撃で粉砕したから。 が、その顔が引き締まった。 「黒い煙……非実体型妖魔か?」 狂骨は砕けて瘴気に戻ったが、 残った黒い霧に纏いつかれた。吸血攻撃を食らい思わず大きく後ろに下がる。 「アヤカシ相手に名乗りは必要ないだろう……そのまま斬り捨てる」 その横を千歳が抜けた。 鯉口を切った愛刀「虎徹」を腰溜めにしたまま、さらに迫っていた吸血霧入り狂骨へと突っ込む。無論、狂骨は刀を手に無防備な千歳に向かって大きく振りかぶる。 が、狂骨の渾身の一撃は大地を耕すだけだった。 千歳は居合で抜き放った刀身を、すでに落とした腰の正面にピシリと伸ばし走り抜けていた。先ほどまで燃えていた炎魂縛武の炎は収まりつつある。敵の上からの一撃を一気に駆け抜けることでかわして斬り付けたのだ。 「む?」 千歳。一撃で仕留めるが、すぐに面を厳しくした。吸血霧に血を吸われたのだ。 「おっと、逃げるなら浪志組のほうにな。……日御碕殿、牛車の走り去った方向にも一匹……逃げてる人も多いね」 一方、民を守るように最後尾に立った煉之丞は刀「蒼天花」を抜刀していた。素早く巻き打ちして寄って来た敵を牽制する。その間にも心眼で感じた敵の分布を神無に伝える。 「では。……回雷、ここは任せます」 「思えばクジュトさんと同じ戦地に立つのはこれがはじめてという事になりますね。腕の程見せてもらいます!」 クジュトが動き、神無が追う。回雷は不満そうにこちらに逃げてきた住民についてやっている。 「ま、これがクジュトの言う不自由って奴だ、回雷!」 振り返り、へ、と笑う渓が気功波で吸血霧を狙うが、敵はこれを避けた。「む?」と顔をしかける渓。何故か外れた。明らかにおかしい。そういう特性なのだろうか? 「……本当に不自由だな」 回避が高いと見た千歳はあえて刃を鞘に戻す。吸血霧がまたも取り付こうとしたところ、黒い霧の中に見える浮遊球体目掛け居合一閃! 当れば脆いようで、これで片付けた。 「ラブア殿たちが向かった逆にも逃げてるな」 「なんだと?」 心眼でさらに索敵しつつ、吸血霧から住民を守る位置に立ち牽制する煉之丞が呟くと、回雷が吠えた。 「心配無用。誰か来たようで」 目の前の敵に集中するよう回雷に言う煉之丞だった。 ● その頃、早駆で急ぐ露羽。 「うわあっ、助けてくれぇ」 狂骨に追われ逃げていた住民が躓いて倒れた様子を見て、いつも穏やかな表情をほんの少しだけ険しくしていた。 刹那、放たれる刹手裏剣。 命中するも致命傷を与えることはないが……。 「よし」 小さく微笑する。 剣を振りかぶっていた狂骨がその攻撃を中止したから。 もちろん、狂骨は改めて振りかぶるが……。 ――がしゃっ! 狂骨はそのまま上下半身泣き別れになった。 あれだけ間合いが離れていたのに、刀「血雨」を構えた露羽に一瞬で詰められていたのだ。速度の乗った一撃は重く、切れも良かった。 ただ、露羽はすぐにはっと息を飲む。 残った吸血霧に取り付かれたのだ。 この吸血霧、黒い霧の部分に攻撃が当ってもピンピンしている。狂骨の肋骨内部に入っていたにもかかわらず、狂骨が倒されても残っていた理由である。 「ええい、めんどくせえ。これで終りだ!」 「おい、霧の内部に目をこらせ!」 遠くから、拳で止めをさした渓の声と、大通りまで出てきた千歳の声が聞こえた。露羽は暗視を使っているので、助言をもらえば敵の弱点などお見通し。夜間で黒い霧という見えにくい状況だったが、あっさりと霧内部の小さな球体を発見した。 が、今は腰を抜かした住民が近くにいる。新たな霧狂骨もやって来た。住民を見捨てることはできない! 「引け!」 はっ、と身を正す露羽。背後からの少々粗野な言葉に振り向くと、ついて来ていた雪斗がいた。いや、すでに瞬脚で迫っていた足を止め、スリットの深い服から両太股を晒しつつ力強く大地を踏みしめて短剣「アゾット」を構えているではないか。アゾットといえば、呪術武器! 「せっかちですね」 それと分かり、住民を抱きかかえ瞬脚で横に逃げる露羽。判断が光る。 「応えよ、氷雨の御子……舞い飛べ、季節外れの吹雪!」 短い詠唱でいま、アゾットを構える雪斗の前から前方広範囲の吹雪が唸ったッ! 白い嵐は黒い霧を払ったわけではない。きっちりと打撃を与え吸血霧2体を瘴気に返したのだ。 「先に吸血霧が消えるとは、ね」 肋骨の中の吸血霧が消え、狂骨が残った。露羽が再び戦場に舞い戻ると切りつけ、これでこの方面の敵は一掃した。 「それにしても、もう少し待ってもよかったのでは?」 「キミ、ちゃんと逃げたろ? ……ふむ、怪我は……軽微。念のため……」 言葉とは裏腹に涼しそうにいう露羽に、きわめて能率的に返す雪斗。手早く住民に近寄るとレ・リカルで手当てを始めていた。 そして、神無とクジュト。 「はぁあああああ!!」 太刀「獅子王」を構えて裂ぱくの気合と共に神無が咆哮をかましている。これで逃げる住民を追う霧狂骨の足が鈍った。 「魔槍砲なら突くのですが」 クジュト、この隙に寄せて長脇差で切りつけた。 ガシッ、と受けられるも、クジュトの表情は変わらない。いや、してやったりだ。 「神無さんっ!」 「地断撃といきたいところですが!」 呼ばれて神無が走る。手には黄金色に煌く豪奢な太刀。これが月光を受けて翻ったッ! ――グシャッ! 渾身のスマッシュは武器の重さも相まって、敵を見事に一撃で砕いた。 しかしッ! 「くっ。……トドメ、願いますっ!」 残った吸血霧に血を吸われつつもクジュトのために身を半身にする。 「なぜ私っ!」 長脇差でなんとか中心球体に当てるクジュト。弱点を突けばクジュトでも屠ることができた。 「旗頭はクジュトさんだからですよ」 お見事、と笑顔を見せる神無だった。 しかし、ここで「やはりか!」と開拓者たちの呟く事態となる! ● ――ドガガガガッ! 何と、最初に遠く聞くだけだった爆音が西方面から近付いているではないかッ! 「……これ以上……何か起こらなければ……と思ったが」 「クジュトさん!? 奇遇ですね……などと言っている場合ではありませんか」 雪斗と露羽がクジュトに寄って来ていた。 「露羽さんっ。……そちらのお嬢さんは?」 「クジュト、こいつぁアヤカシだぜ?」 知人との再会に明るくなるクジュト。これをさらに寄ってきた渓が声を掛け引き締める。露羽のそばにいた雪斗は溜息を吐いていたが、これは余談。 そう。 もう随分敵は近寄っていた。 目の前から迫っているのはアヤカシ「朧車」である。こいつが先の霧狂骨六体を運んできたのだ。 「外に出るな。まだ終わっちゃいない」 目端の利く煉之丞が周囲に声を掛け野次馬を牽制した。これは大きかった。 「誰一人犠牲にはさせない。天下万民の為、全てを護る。浪志組は、その為の刃だ」 「千歳さん。……私もっ!」 果敢に立ち向かっていく千歳。何度も戦った仲間に一人突貫させるものかとクジュトも続く。 「あ、おい。敵の引きつけは俺の役目だぜ?」 伊達に戦歴は長くないんでな! と渓が遅れまじと瞬脚で抜く。 「無茶しますね。はああああっ!」 神無も走りつつ再び気合いを乗せ振りかぶる。 そして大地を振るわせ迸る地断撃! ドカッ、と命中した瞬間、宙に浮く朧車。 「奇襲なら負けんぜ?」 正面から突っ込んだ渓は、もう何が何だかの動きを見せる。 体を捻って蹴りを……いや、見ろ! 青い閃光が龍のように走り雷雲のような鳴き声を轟かせているではないかッ! ――バキッ! 最終的には奇麗に脚を伸ばし、蹴りを見事に入れている。 これが、泰拳士の絶破昇竜脚! 「ちょうどいいな」 一方静かに言うのは千歳。が、精霊の力を借りて自身の武器に雷電を帯びさせる様子は荒ぶっている。 そして、雷の刃として放つ。これが志士の雷鳴剣! 左前の車輪を狙った。 「ならば」 クジュトは右前に回り込んでいた。こういう動きは砂迅騎で鳴らしたころ体に染み付いている。 が。 ――パキン! 何と、長脇差が真っ二つに折れたではないか。 この時、しくじったクジュトの持ち場に影が割り込んだ。 「巡邏中だったんですね、いつもご苦労様です」 露羽だった。きっちりと刀「血雨」で車輪の一部を斬っていた。 「私が何をしていたのかは秘密にさせてくださいね。これでも一応、シノビですから……」 にっこり振り向いた時には、両前輪に不具合を起こした朧車がずざざーっと滑り去っていた。やがて雪斗がブリザーストームで勢いを殺し、殿の煉之丞、回雷がとどめを差さすのだった。 ● 戦い終わって、クジュトは折れた長脇差を見詰めていた。 「気にせず『姫』を使えば良かったのに」 「これなら、折れませんでしたかね?」 寄って声を掛けた煉之丞に、腰に差していた刀「夜宵姫」を抜いたクジュトが問うた。 「さあ? ただ、何もする前に諦観に囚われては甲斐がないさ。為したい事を目指せば良いだけだ」 それより、前に話した「弱気の者のため」についての話を、などと思ったところで騒がしくなった。 「だが、確かに自由はないぜ。……組織の体裁を優先する以上、個人の自由はないんだからな」 渓が、怪我をした一般人を手当てする雪斗に包帯などを渡しておいてからこちらに来た。 「そのくせ、渓さんは自由に流浪してますよね?」 「そう思うんなら、誰かに下駄預けちまいな」 突っ込むクジュトに荒々しく言う渓。 「誰か?」 「東堂さんに一度面識だってあるけど、どうしても腑に落ちないとこがある……」 口にしたところで、雪斗が寄って来た。 「……あまり、良い噂を聞かない……活躍は風に乗っているけども」 個人的には東堂に、いや、浪志組に下駄を預ける気はないと結ぶ雪斗。そのくせ口にするのは、やはり苦しむ民は守りたいから。 「志体持ちの剣術は一般人の剣術とは違う部分も多いし、俺達自身も流派はまちまち」 ふー、と息を吐き出して、ひょいと千歳が話を奪った。 「ならば、隊士達の技を一般人にも使える様に調整し、それを体系化して、俺達で新しい流派を興すのも良いかも知れない」 騒ぎの前、クジュトの言っていた出稽古の問題点に対する答えだった。 「俺は、こう考えてみたが、クジュト殿と回雷殿はいかがだろうか?」 下駄を預かったわけではないが、話の流れ的にそうなってしまった。クジュトも回雷も頷く。 「何かあれば手伝いますし、宣伝もしますよ?」 神無も協力を惜しまない様子。 「何が始まるんですかね?」 「さてさて、どうなることやら」 細い顎に手を当て見守る露羽に、煉之丞が楽しそうに返すのだった。 |