【AP】チョコ☆サキュ+
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: イベント
相棒
難易度: 普通
参加人数: 35人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/04/23 19:15



■オープニング本文

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 チョコレート・ハウスは空の上。
「あれ?」
 夜、中型飛空船「チョコレート・ハウス」の艦長室にいたコクリ・コクル(iz0150)はうつぶせていた机から頭を起こした。
「いけない、航海日誌をつけてるうちに眠っちゃったのか……」
 目をごしごしこすると、寝る前につけていた日誌の文面に目を落とします。
 そこに書かれているのは、平穏な日常。
 順調な航海。
 まったくの平和です。
「ふふっ」
 ちょっとコクリが微笑んだのは、その日常の中で一緒に護衛について来てくれた開拓者と楽しく遊んだ記憶が蘇ったから。甲板で並んで雲を眺めながら風に洗われたこと、艦載滑空艇で空の散歩をしたこと、そしておやつにチョコを食べながら珈琲を飲んで会話したこと。すべてが楽しく、宝物のような思い出だ。
 と、ここで至福そうだったコクリの顔が深刻な面持ちとなった。
「く、あれ? 何か体に力が入らない。視界もピンクに霞んでる……」
 まさか、新手のアヤカシの攻撃? などと思いを巡らす。
 思い当たるのは以前チョコレート・ハウスに入り込まれたアヤカシ「夢魔」(別名、サキュバス)だ。あの時は仲間の警戒もあり被害もなく逃げ去って行ったのだが、今回はまた一味違う攻撃を仕掛けているような気がする。
「まさかこのピンク色の霞って、霍乱瘴気の一種?」
 みんなは無事かな、と思いつつ立ち上がる。
 ほっとしたのはこの淡いピンク色の霞の効果が、心をドキドキさせたり肌を上気させたり、戦闘行動のような力のこもった動きや集中力を阻害する働き程度しかないと分かったから。
「とはいえ、気力を振り絞れば何とかなるかな」
 く、と立ち上がったところで、身につけていたペンデュラムのペンダントが何故か外れて床に落ちた。先日立ち寄った町で、占い師から「この先の航海の無事を」と強引に押し付けられたものだった。
「え?」
 驚いたことに、拾うとペンデュラムは激しく輝きコクリの手に巻きついた。
 そして、誘われるように日誌を開く。
 すると勝手に手がページを開き、文字を次々と指差していくのだ。
「あ……。『みっこうしゃは、さきゅばすぷらす。きすでしのねむりにさそう。たおすにはさきにきすでくちびるをうばうべし』?」
 ここまで指差したところで、コクリの手に巻きついていたペンデュラムがぱきん、と粉々になってしまった。役目は終わったといわんばかりだ。
「大変だ。みんなに知らせなくちゃ! ……うう」
 桃色瘴気のおかげで微妙に力が入らず内股気味に歩きながら艦長室を出るコクリだった。


■参加者一覧
/ 水鏡 絵梨乃(ia0191) / 鷲尾天斗(ia0371) / 鴇ノ宮 風葉(ia0799) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 新咲 香澄(ia6036) / ブラッディ・D(ia6200) / 雲母(ia6295) / からす(ia6525) / 村雨 紫狼(ia9073) / 以心 伝助(ia9077) / 劫光(ia9510) / 向井・奏(ia9817) / 紺屋雪花(ia9930) / 猫宮・千佳(ib0045) / アグネス・ユーリ(ib0058) / リディエール(ib0241) / 御陰 桜(ib0271) / 十野間 月与(ib0343) / アリシア・ヴェーラー(ib0809) / 无(ib1198) / 真名(ib1222) / 朽葉・生(ib2229) / シャルロット・S・S(ib2621) / 狸毬(ib3210) / 十野間 修(ib3415) / ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918) / リンスガルト・ギーベリ(ib5184) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / ファムニス・ピサレット(ib5896) / フランヴェル・ギーベリ(ib5897) / アムルタート(ib6632) / ナキ=シャラーラ(ib7034) / リュシオル・スリジエ(ib7288) / 華角 牡丹(ib8144) / ミーリエ・ピサレット(ib8851


■リプレイ本文


「あ……」
 娯楽室で座っていた朽葉・生(ib2229)が、突然白い頬を赤らめた。
「あらん? 生ちゃん、突然色気づいてどうシたの?」
 同席していた御陰 桜(ib0271)がいつものように色っぽく突っ込む。生の方は恥らうが、まさか体が火照ってるとはいえない。
「にゃっ、そういえば何だか体が火照るにゃ♪」
 一緒に楽しく話をしていた猫宮・千佳(ib0045)は、天真爛漫であまり恥じらいもないのであっさりと自らの体の変化を口にする。
「ん? そういえば何か変だね」
 同じく新咲 香澄(ia6036)も思わぬどきどきに戸惑いつつも、強い意思で自らを律しながら周囲を確認した。
 すると、だんだんと淡いピンク色の霞が充満してくるのが分かった。
「この瘴気……」
 思わず呟いたのは桜だった。
「ヒトの縄張りで無粋な真似シてくれるじゃない」
 驚いた風だった瞳は怒りに満ちていた。
「一体何?」
「これって、『夢魔+』っていうアヤカシの攻撃よ」
 聞いた香澄に立ち上がって答える桜。
「どうして桜さんがそんなことを……」
「ナイショなんだけど実はあたし夢魔なのよねぇ♪」
 なんというカミングアウト。
 実は桜、夢魔だったらしい。
「安心して。あたしは仲良くなったコをもふってぽや〜んとなってる内に少し力が抜ける程度の生気を貰ってるくらいよ♪ ……因みにコクリちゃんの生気はふる〜てぃでとっても美味しいのよ♪」
 うふふっ、と妖しい笑みを残し桃色瘴気の中を平然と動いた。
「あ、あれ? 体が……」
「夢魔+の弱点はキスされることよ。見つけたら先にキスして楽シんでね♪」
 桃色正気の影響で体に力の入らない三人。桜は敵の弱点をバラしておいてから娯楽室を出るのだった。
「き、キキキキス、ですか!? しかも自分から先に!?」
 思わず真っ赤になったわたわたと狼狽する生。
「あっ! とにかくコクりちゃんの元へ一目散だよっ!」
 ここで香澄、何かひらめいたようだ。
「そうにゃ。コクリちゃんが心配にゃ♪」
 千佳も気付いた!
 とにかく生も一緒に艦長室に急ぐのだった。

 その時、コクリ・コクル(iz0150)は。
「く……。あ、風葉さん」
「ち。……この程度の精神操作で、あたしを縛ろうなんざ甘いのよっ……!」
 壁に手をかけつつ艦内通路を歩いていると、反対から同じようにふらふらと歩く鴇ノ宮 風葉(ia0799)と出会っていた。
「あら、コクリ」
「風葉さん大丈夫? いま実は……」
 風葉に簡単に事情を説明する。
「ふぅん? じゃ、あんたが夢魔+かもしれないわけね?」
「わっ……。敵が自分の弱点を言うわけないじゃない〜」
 ふふん、と悪戯そうに覗き込んだ風葉はそのままコクリの唇を奪おうとしたのだったり。コクリの方は腰砕けに崩れることで回避したが。
「ま、そういうことにしといたげるわ」
「とにかく、たくさんの人に伝えてね?」
 仲間の多い風葉に伝えほっとするコクリ。ともかく火照りで重い腰を引きずりながら二手に分かれる二人だった。

 一方、いつも通りな人たちもいた。
「んー……どうもむらむらするわね」
 くわえた煙管をふかしつつ、組んだ脚をぷらぷらさせながら「優しき覇王」こと雲母(ia6295)が退屈していた。怪しく笑いつつ腰を上げると、ゆらりと徘徊し始めるのだった。
 もちろん別の場所でも。
「……はぅ? なんだか、うずうずするのです。……鴇ちゃんに会いたいのですーっ!」
 どか〜ん、と船室の扉を開けてネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)が姿を現した。すると、愛する風葉の船室へと向かいはじめる。


 そして、コクリ。
「コクリちゃんにゃ〜♪」
「わわっ☆」
 がしーっ、と千佳に抱きつかれ無事に仲間と合流できていた。
「コクリちゃん、知ってる?」
 抱き付く千佳の頭の上では、頬を上気させた香澄が微笑しながら顔を近付けていた。目が妖しく細められている。淡く唇を差し出す。
「し、知ってるけど……」
「あ、コクリちゃんが心配なら、コクリちゃんからボクの唇奪ってもいいんだよ?」
 とかいいつつも、奪うつもり満々だったり。ん、とコクリが頷くように顎を引いた思うと、右手で顎を支え上げさせ、優しく優しく唇を重ねた。
「……」
 真っ赤になって俯くコクリ。香澄はにこにこ。
「にゅ、あたしもコクリちゃんが偽物じゃないか確認にゃ〜♪」
 抱きついた頭の上の様子に気付いた千佳が、俯いていたコクリの唇に、うにゅ☆とにゃんこキス。そのまま香澄にもにゃんこキス。さらに生にも……。
「さ、先にキスしようと思ったのですが……」
「え?」
 真っ赤になって呟いていた生に、全員が反応した。「まさか生さんが」といった視線が集まる。
「あ、いや。誰かがやらなくてはならないのならっ」
「んもう。生さんらしいなぁ」
 わたたとうろたえる生に、くすっと笑ったコクリが抱き付きキスするのだった。どうもコクリ、このメンバーならと開き直った様子。
「あら、楽しそうね」
 ここでアグネス・ユーリ(ib0058)がやって来た。頬が上気して色っぽい歩き方だが、なんかいつもと変わらないようなのは何故?
 ともかく説明するコクリ。
「ふぅん。それじゃ、こんな感じね?」
 コクリの顔を両手で包んでやり、優しくキス。まさかアグネスにまでとコクリは再び力が抜けた。
「あらら。可愛いのね」
 ご馳走様、といわんばかりに頬にチュッ。
「と、とにかく手分けして皆に知らせ……」
 コクリ、キスの嵐にもう立っていられなくなり気を失うのだった。
「とにかく皆に伝達ね」
 背中越しにひらりと手を振ってその場を後にするアグネス。
「こうなったら先手必……会った人に、とにかくキスして回るしかないわぁ」
 仕方なさげに呟く言葉は不穏であるが。


 さて、コクリたちは食堂に移動した。
 ここで、からす(ia6525)と无(ib1198)を発見。早速アヤカシの攻撃であることを説明する。
「分かった。……しかし、暇潰しに遊びにきたらコレである」
 からすは、この状況下にあっても動じない様子。 お茶を飲みつつ振舞いつつのんびりしている。
「艦長。夢魔+はいいのですが『+』って何です?」
 无は連れていた尾無狐とともに突っ込む。
「いや、ボクだって分からないんだけど……」
 そう言うコクリは内股でもじもじしながら頬を染めて上目遣い。
「まぁ気をつけますよ、とはいえどうしたものか」
 ふむ、と思案にふける无。朴念仁なので普段と変わらず動じない。
 この時、食堂の近くを通り掛かる人影があった。
「……夢魔でありんすか。桃色瘴気とはよく言ったものでありんすなぁ」
 華角 牡丹(ib8144)である。
 しゃん、と独特の佇まいで歩く姿はさすが花魁さん、ついでに通り掛かりに重要な会話を聞きかじってしまうのもすでに職業病のようで。
 しゃなりと歩を進め去ろうとしたところ、コクリとばったり会った。
「おや、コクリはん。……世の中、おかしなこともありんすなぁ。先にあちらでお見掛け……」
 優雅に、声をわざと大きくして離しかけた。
「何だって?」
 これに食堂の香澄・千佳・生が反応した。
 コクリは、遅れた。
「お、コクリたん!? どうした、熱でもあるのか?」
 食堂にやってきた村雨 紫狼(ia9073)に話し掛けられたからである。
「紫狼さん、実は……」
「はあ、サキュバスだって? 前もあったから今回も?」
 コクリは、敵の弱点はキスされることだからと伝えたところで短い悲鳴を上げた。
「まあとにかくだ……と! 淫魔だか知らねーが、体調の悪い女の子が夜中に出歩くのは感心しねぇな!」
 紫狼、ひょいとコクリをお姫様抱っこするとそのままひょ〜い、と軽やかにその場から駆け出したのだ。
「にゃっ! コクリちゃんがさらわれたにゃ」
 ききき、と止まる千佳。これで香澄と生も動きが止まった。
「……む、残念おすなぁ。次は逃げられないようかける言葉を変えるどす」
 牡丹の方も、この騒ぎで偽コクリに逃げられていた。
「二兎を追う者一兎も得ず」
「桃色瘴気……桃色正気……。艦内図書室で調べてみますかね」
 ずずずとお茶を飲むからすに、ぽりぽりと頭をかきつつ移動する无だった。


 その頃、アグネスは。
「あら、あれは」
 無防備に歩く背中を発見。
 きょろ、とツインテールの髪を揺らし横を見る姿は、真名(ib1222)だった。
 早速、死角から妙に慣れた動きで背中を抱く。
「きゃっ! アグネ……んん……」
 言葉は途中で消えた。
 唇を奪われていたのだ。
 右後ろにのけぞり気味だったが、ゆっくりと自然な姿勢へと変えてやるアグネス。もちろんキスしたまま。間違いなくこちらから奪ったが倒れない。本物の真名である。
「!? わ、私、初めて……」
 長い長いキスの後、それだけ言って崩れる真名。両足をくの字に流してぺたりとへたり込む姿が色っぽい。
「ごめんねぇ、でも違ってよかった♪」
 アグネス、にまっ、と微笑み今度は頬にチュッ☆。
「い、一体……」
 事情も分からずこれである。真っ赤になって動転するのも仕方ない。アグネスはここでようやく説明。
「え? キ、キス? いや……その……幾ら倒す為、って言ったってキスは」
「あら、いつもおすましの真名もこうなると可愛いのね」
 指をモジモジさせて顔を赤らめてる真名。これを撫でるアグネス。
「してもいいのよ? 皆にも伝えてね」
 それだけ言って次の獲物……ではなく、次に伝える人を探すのだった。

「サキュバスか……面白え! 出くわしたらぶちゅっとかましてやるぜ!」
 別の場所では、ナキ=シャラーラ(ib7034)がコクリを見失っていた千佳と話していた。
「にゅ、その意気にゃ!」
 にゃんこキスをする千佳に、少しノリの悪い様子を見せるナキ。
「だが同じ位危険な奴が船内に居るからな。そっちを退治するぜ!」
 ナキは拳を固めて言うと、早速実行に移るのだった。

「サキュバス……。以前、取り逃がしてしまいましたからね」
 また別の場所では、ファムニス・ピサレット(ib5896)が拳を胸に抱きながら決心していた。やはりコクリを見失って手分けして探している生に出会い、事情を聞いたばかりである。
「いいい、一応……」
 生、真っ赤になりつつ先にファムニスに軽くキスをする。夢魔でないことが分かりほっとしつつも、はふー、とこれだけで激しく消耗した感じだったり。
「倒したいですが、その前にあの人がコクリさんに何かしに行きそうなので止めます! 流石にコクリさんはダメです!」
 ここだけは逞しく顔を上げて言い切るファムニス。恋する乙女は頑張るのである。生も「ダメ」に協調しこくこくと頷いている。

 さて、その危険な奴ことフランヴェル・ギーベリ(ib5897)(以下、フラン)はというと。
「長い髪と白いドレスが素敵です。僕の手をどうぞ」
 男装した短髪の少年的少女、リュシオル・スリジエ(ib7288)とダンスしていてた。フランは珍しく女性の格好をしている。そして言葉は発しない。
「夢のようです。こうして憧れの人とダンスができるなんて」
 狭い船室でオルゴールの音に乗り、自分より背の高いフランの腰に手を回し抱き寄せエスコートし、体を揺らせたりそのままくるりと回ったり。
 そして、一際抱き寄せキスへの雰囲気を盛り上げる。
 が、オルゴールの音は長くは続かない。あっという間にお願いした約束の時間は終わった。
「ふふ、タイムリミットだ……」
 フラン、ここで初めて言葉を発すると抱擁を抜け出しドレスを脱いだ。下はこるせっと姿だが、すぐにシャツとスラックスを着用する。
「楽しかったよ」
 狼狽するリュシオルに、キス。リュシオルは気絶し、フランはこれをお姫様抱っこする。
 フラン、別に夢魔というわけではないが、これでまずは一人を美味しく頂いた計算。
「お。ここで会ったが百年目だぜ!」
 ここでナキが部屋に戻ってきた。さあ、危険な奴退治だ!
 が。
「ナキ……会えて嬉しいよ」
「う……」
 先の勢いはどこへやら。金色の瞳に射すくめられあっさり抱き寄せられる。
「こうなると可愛いね」
 ねっとりとキスされ抵抗は徐々に失われ、ああ、あまりの大人な刺激に気絶するのだった。


 便乗被害はそこだけではなかった。
「ヒャッハー! マイ主殿の唇争奪戦ダァー!」
 世紀末もかくやのノリで桃色瘴気の中を疾走するのは、向井・奏(ia9817)。瞳がすでに危ない感じだが、マイ主殿って、誰?
 別の場所でも。
「面白そうだねー、たまには主に甘えに行こうかなー」
 狸っ娘の狸毬(ib3210)も何だか状況を楽しんでいるようで。
「それより、香澄さんはキスしてみたのかなー?」
 狸毬がにままん、といやらしい目付きで説明した香澄に聞いてみる。どうやら冷やかしとか大好きみたいで。
「もちろん、合法的にコクリちゃんの唇を奪える機会を逃すわけないじゃない」
 堂々と言い放つ香澄。あああ、でもそれだと何か夢魔+そっちのけのような響きが……。
「たぬきち、エロ狸、としてはお役目を与えられたようなものかなー」
 むふふん、と拳を固めるたぬきち。何かにんまりと頬を緩めつつ、主を探して三千里に出掛けるのだった。

 さて、そのマイ主殿だったり主だったりする風葉は。
「ふーちゃん、今日は一段と可愛いな」
 クスっ、と笑う水鏡 絵梨乃(ia0191)と出くわしていた。
「あによ、絵梨乃。何でアンタは平気そーなのよ」
「桃色瘴気か……ボクにとっては非常に動きやすい空間かもしれない」
 ボクの時代が来た、とばかりに気持ち良さそうにする絵梨乃。
「まあちょうどいいわ。今からあたしが気力振り絞って瘴索結界張るから、アンタが……」
 この時だったッ!
「ヒッャハー!」
 どか〜ん!
 風葉が身を支えるため手を添えていた近くの扉がけたたましく蹴り開けられたのだ!
「マイ主殿の唇、もらったでゴザルよヒャッハー!」
 出てきたのはもちろん危ない目つきの奏である。
「ヒャッハー!」
「ちよっとあんた、隣にいるモヒカンは誰よ? それが夢魔+じゃない?」
「知らぬ、存ぜぬ、こだわらぬ!」
 続けて出てきた世紀末的なモヒカン男のことはそっちのけで風葉に迫る奏。もちろん風葉はかわそうとする。
「って、絵梨乃。あんた何私を羽交い絞めしてんのよ?」
「いや、ふーちゃんがキスの餌食になるところを見るのも楽しいかな〜と」
「痛いでゴザルが天国でゴザル、ヒャッハー!」
 絵梨乃に羽交い絞めされた風葉は跳躍すると背中を絵梨乃に預けたまま奏を首4の字で止める。奏はたっぷりとホールドされつつも風葉の太股の感触を楽しんでいるようだが。
「あらあらうふふ……楽しそう」
 ここで、メイド服姿のアリシア・ヴェーラー(ib0809)が登場。
「楽しくないわよ。っていうか、妙にやらしい目付きをするんじゃないっ」
「いやー、皆頑張ってますねぇ。では、いただきまーす♪」
 ぐぐぐ、と三人固まってる様子をにこにこ見つつこの体勢のまま抜け駆けしようとする発情メイドさん、アリシア。
 しかし、奏はシノビ。
「縄抜けも太股抜けも得意でゴザルよヒャッハー」
「ああもう、なんですか私の幸せな一時を、邪魔するなら容赦はしませんよ!」
 それまで堪能していた太股から抜けた奏。アリシアは標的を変えたぞっ。
「ぁむっ……んぅ……ん…っ…はむ…ちゅ…っ」
 ねっとりと長ったらしい、明らかに何かを絡めているようなキス。手もお留守じゃないようで、奏を美味しく頂いてる様子。
「くっ。待て、モヒカン」
「よう、だるいな」
 風葉は夢魔+と思しき逃げるモヒカンを追跡しようとしたが、どだんと壁に手を付く細い腕に行く手を阻まれた。
 見ると、ブラッディ・D(ia6200)がいた。ふい〜っ、と煙を吐き出すと煙草を捨てて踏みつけ火を消した。
「風葉の唇は誰のものーってな」
「あたしのものに決まってるじゃない!」
「そうか? なぁ、俺の唇って柔らかくて気持ちいいらしいぜ? 風葉に試してみてほしいな。……ね?」
 ブラッディ、風葉を壁に追い詰めると妖しく顔を寄せ自分の胸を押し当て風葉に迫る。慌てて身をかわすも倒れこんでしまう風葉。もちろんブラッディはマウントポジションに。
「試して欲しいといいつつ押し倒すんじゃ……」
 ぶちゅり、ねちゃり。
「あ〜っ! 次は拙者でゴザル」
「皆、積極的だな〜」
 続いて奏に唇を奪われる様子をたっぷり堪能する絵梨乃だった。


 さて、逃げた夢魔+。
 ぴた、と止まりにやり。モヒカン姿からコクリの姿となり、分厚く桃色瘴気を散布した。
 そこには紺屋雪花(ia9930)が壁伝いに歩いていた。
「ん……」
 分厚に桃色瘴気に巻かれ、少女の足取りはさらに妖しくなっている。
 そんな桃色に霞んだ視界に、小さな少年の影が現れた。
 その姿は、まぬけそうな面をした朱色の髪に紫の眼をした少年に変わる。
「あ……」
 雪花が身を隠し探していた、幼馴染の少年の成長した姿に他ならなかった。
「まさかこの船に乗ってるなんて。……探したんだよ?」
 喜び手を伸ばす雪花。
「ボクも探してたよ。こんなに奇麗になってるなんて」
 ん? と違和感に包まれる雪花。
「その……また一緒に大好物の人参を食べたいな。……友人として」
「何言ってるの、ボクたちは恋人同士でしょ? 恋人同士として、大好物の人参を……」
 かまをかけた雪花、見事にはまったのでごごごと様子を変えたぞっ!
「そうだな。……こんな俺と恋人同士なんだ。覚悟はしてるよな?」
 するりとミニスカ忍び装束胸の詰め物入りを滑らせ脱ぐ雪花。
 落ち着いた栗色の短髪、意思の強そうな悪戯に光る瞳――そう、彼女の素顔はドS高飛車超美少年だったのだ。
 そのままぶちゅりと唇を奪うと、夢魔+は瘴気となって消えるのだった。
「ごほっ。桃色瘴気になるなんて何て質の悪い……」
「雪花さん、夢魔+を倒してくれたんだ?」
 肩膝をついた雪花に、背後から忍び寄ってきたコクリが抱きついて来た。
「ああ」
「ありがとう」
 むちゅ、とコクリがキスをする。
 すると、雪花はそのまま崩れ永遠の眠りに就くのだった。


 その頃、本物のコクリ。
「熱で浮かされた女の子に悪戯しようなんざ、紳士の風上にもおけねー!」
 紫狼にお姫様抱っこされたままどこかに連れ去られていた。
「ダメだよ、紫狼さん。ボク、艦長として守られてるだけじゃダメなんだ」
「任せろ、俺もこのバカ騒ぎを一緒に止めてやるぜコクリちゃん!」
 あああ、何を言っても通用しそうにない。
「んもう。仕方ない」
「うおっ!」
 コクリ、んっと両足を跳ね上げると上体を捻りつつ紫狼の首根っこに絡めたぞ。紫狼は目のまん前に迫る真っ白な太股に釘付けとなり回避行動が取れない。
 そのままコクリの太股に挟まれ柔らかさに包まれつつ、どだんと投げられた。
「ゴメンね」
 額へのキスを感じながら、ここで気力0となり気絶する紫狼だった。

 それはそれとして、騒ぎを全く知らない者もいた。
「ん……」
「あ。起きた? 兄ロリ」
 鷲尾天斗(ia0371)が船室のベッドで目覚めた時、心臓が止まるかと思うくらい愕然とした。
「イヤイヤイヤ、ちょっと待て!なんでお前がここに居るんですか!?」
 何と、義妹のアムルタート(ib6632)がベッドの中にいたのだ。
「夢魔+ってアヤカシが潜伏してる情報を持ってきたんだよ」
 というわけで、行きがかり上一緒に添い寝したままでキスの情報を得る。
「よし、出てけ。お前に俺のドリーミーでハッピータイムを邪魔する権利なぞ無い!」
 キリッと言い放つ天斗。
「兄ロリ〜。この船にロリっ娘がたくさん乗ってるからって……」
 全くガチロリだからって見境なさすぎるんだよ、な感じでやれやれと溜息をつくアムルタート。
「はぁ〜。やれやれだなァ」
 ここで、船室に天斗が戻ってきた。
「は?」
 固まるアムルタート。天斗が二人と言うことは、どちらかが夢魔+ということだ。判別するにはキスしかないぞ?
「オイオイオイ! なァンで俺が来るんですかァ!? このままじゃ、アムルとキス……」
 義妹といちゃらぶな天斗はドン引き。が、最後のは失言だ!
「なっ! 私はもっと優しい感じなカッコいい人がいいの! 兄ロリは大人しく幼女とラブってればいいんだよ!」
「俺だって大人しく幼女とラブりたいわぁ!」
「俺はもっとろりぃできゅあな美少女の方がイイわァ! 何が悲しゅうて妹とラブラブせなあかんの!」
 ……何と言うか、問題発言がダブルで飛び交ってるんですけど。
「兄ロリ〜?」
 そして混乱に拍車を掛けるように、今度は船室にアムルタートがやって来た。当然どっちかが贋物で。
「アァ! チェンジだバカヤロォ!」
「ちょっと待ってて! 今この兄ロリぶちのめすから!」
 ああもう何この状況。天斗はトラウマ級のメンチ切って威嚇するがキスはせず。アムルもまさか義兄の唇は奪いたくなく。
「とにかく逃げるぞ!」
「仕方ないなぁ」
 手出しをできない相手というのは面倒そうで、逃げを打つ二人だった。


 一方、ラブラブな二人も。
「ああ」
 艦内通路の壁面に背中を預けていた十野間 修(ib3415)が、近寄る足音に顔を上げ、目元を緩めた。
「ん……」
 そこにいた十野間 月与(ib0343)は、自らの両手を組み合わせ優しく小首を傾げるのだった。
 言葉は要らない。
 船室は男女別なので申し合わせていたこととはいえ、待っていてくれたこと、来てくれたことが共に嬉しい。
 一緒に通路を歩いていると「ヒャッハー!」など聞こえてくるがそれはそれ。しっとりと二人きりを楽しむ。
 やがて、甲板に。
「星が奇麗ですね」
 用意したお茶を二人分入れつつ、月与が言う。「ああ」と修。しばしお茶で体を温めつつ夜空を見上げる。
――ぴゅう。
 甲板は風が強く、寒い。
 月与は乙女心から、バラージドレスをまとっていた。夜空の舞姫のように。
「寒いですか?」
「はい……。いえ、今は温かい……」
 修。エスコートしようと執事服だった。その上着に包むように月与を抱き寄せる。
 見上げる、月与。
 改めて正面から抱きなおす修。妻のたわわな胸が、張りのある腰が震えるのが分かる。寒いのではない、おびえでもない。思わず手が妖しく妻肌を撫でてしまう。
 もう、という吐息を隠しつつ夫のおいたにお灸をすえようと身を摺り寄せる月与。頬を染めつつ唇を奪おうと……。
「あ」
 吐息が漏れた。
 首筋への甘い口付にびくんと震え、甘い声を上げた隙を突かれ、唇を奪われていた。
 長い、長い口付けとなる――。


 そして船室でも秘め事が。
「はっ!」
 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)が目覚めると、白シャツに白のドロワーズ姿の小さな体は荒縄でベッドに縛り付けられていた。
「あ、リンスちゃんお目覚め? 実はね〜」
 同室で大親友のリィムナ・ピサレット(ib5201)の仕業らしい。どうやら夢魔+が出て、騙されないように縛り付けたのだとか。
「部屋を閉め切ったなら縛り付ける必要は……ひゃんっ!」
「折角だし、遊ぼ〜!」
 ああ、リィムナ。桃色瘴気にあてられるだけあてられているようで。リンスのシャツをはだけフローズで作っておいた氷の小片を直接肌に這わせている。
 首筋、胸元、お腹……。
「やめ……あう、ひあっ……冷たいのじゃっ」
「じゃ、温めてあげる」
 肌を這う水滴をちゅちゅっ☆と吸い取ると、肌を重ねるリィムナ。
「リンスちゃん、大好き♪」
「う……。わ、妾も……好き、じゃ……」

 リンスとリィムナの船室の前では、以心 伝助(ia9077)が真っ赤になってふらふらとあやうい足取りで歩いていた。
「と、とんでもないことになったっす」
 アヤカシを探すため超越感覚を使っていたものだから、扉越しに二人の会話を聞いてしまったのだ。しかも声だけなので、ほわほわと裸体の少女二人が絡み合いイケナイことをしているという、実際よりさらに危ない光景が脳裏に再生されていたりなんかして。
「あら。ちょっと生気補充させてくれないかシら? 夢魔+はどうやら何匹もいるみたいなのよねー」
 ここで桜が登場。ぺろりと唇を舐めたのは、アムルタート姿の夢魔を一匹ご馳走になったから。うふん、と胸元を晒しつつ伝助を誘惑する。
「全部食べちゃうわけじゃないから、いいでショ?」
「い、いや、恋人でもない方とみだりに……」
 ぶちゅ。
「ご馳走様♪」
 ああ。それでいいのか伝助さん。
「こ、こんなことでいいわけないっす……ん?」
 意志薄弱なところを見せるが、新たな人物に顔を上げた。
「あら。伝助は本物かしら?」
 アグネスだった。色香を纏い、すでにずいと懐に入られている。回避不能。
「……くっ。いつもいつもやられっ放しは悔しいっすから」
 どうやらいつも友人としてからかわれているようで。だが今日こそはっ!
――ちゅっ☆
 やった! 伝助の方からキスをしたッ!
 一瞬、意外そうな顔をするアグネスだったがすぐにいつもの笑みに戻った。
「ご馳走様」
 アグネスの言葉にはっ、と我に返る伝助。
「伝助もやるようになったわね〜」
 嬉しいわ、などとむしろ勝ち誇ってその場を後にするアグネスだった。
 伝助、頭を抱えてその場にうずくまる。


 アグネスの探索? はまだまだ続く。
「あら、船室にいたのね。……一人酒?」
 ベッドに腰掛けグラスを傾けていたリディエール(ib0241)を見つけ、隣に座る。
「あわわ……」
 リディエールはすでに顔を真っ赤にしていた。んもう。片思いの男性を想いつつお酒なんか飲んでるからですよ?
「ぴ、びんく瘴気には気付いてたのですが……」
「いいのよ。これで夢魔+かどうか分かるから」
 猫のように身を寄せ、しなだれかかるアグネス。いつも落ち着いて見えるリディエールであるが、実はハプニングにはめっぽう弱かったり。
「ややや、その、私たち女同士ですし……! 私には心に想う方が……っ」
 ちゅっ☆
「気をつけてね」
 おでこに追加でキスしてその場を後にするアグネス。
 リディエールの方は、力尽きたようにベッドに横たわってほふぅ、と天井を仰いでいた。
 と、ベッドの脇に人影を感じた。あの人のような気がする。
「もうどうにでもなれ……」
 ヤケを起こして自分からキスするリディエール。
 が、想い人は桃色瘴気になって消える。くすん、と再びベッドに体を投げ枕を可愛らしく抱くのだった。

 そういえば、危険な奴はどうなった?
「あの……フランさん? ですか」
 颯爽と歩くフランを見つけたファムニスが呼び止めた。そして先手を打たれる前にしがみつき、ふにふにといつもしてるように体を確認。
「ファムニス、いきなり大胆だね。可愛らしいサキュバスだ……」
 フランも負けずにキス。というか、何この夢魔予備軍の多さは。
 この隙に、フランの背後に近寄る影があった。
「ふあっ!? こ、この技は……ミーリエ! 流石、だねっ……んっ」
 黒のゴスロリワンピ姿のミーリエ・ピサレット(ib8851)である。羽根ペンの羽根でフランの弱点を攻め、振り向いたところをすかさず濃厚なキスで仕留める。
「んふふっ♪」
 そしてファムニスとミーリエは小悪魔のように笑い合うと、フランを部屋に連れ込むのだった。
 その後、フランはナキとリュシオルをくわえた四人にあれやこれやされたとか。


 もちろん、標的として大変な人も。
「最近どうも、戦闘もしてないし……溜まってるのかしらねぇ」
 妖しい笑みを浮かべつつ、雲母がずずいと風葉に身を寄せていた。
「まーたーかー」
「そういわれてもなぁ」
「そういわれてもねぇ」
 じたばたする風葉に、やっぱり背後から羽交い絞めにする絵梨乃と横であらあらうふふなメイドさん。
「接吻一つで、腰抜けさせてやるわ」
 赤い舌が艶かしく動いて唇を塗らす。それがアップで迫るのだ。
――むちゅっ☆
「んんんんんっ」
 風葉が喉の奥で悲鳴を上げているのは、雲母の両手がお留守ではないから。どこをどうというのは伏せる。具体的には風葉さんのお尻や腰に聞いて下さい。
「ぷはあっ」
「それじゃ、次は私が」
 ねっとりと嬲るようキスから開放されるや否や、今度は発情キス魔と化したアリシアが風葉の頬を両手で包んで自分の方に向かせてねっとりねちねちぶっちゅぅ。
「はうっ! 鴇ちゃん!」
 ここでネプが登場。何をしていたのか、すでに何もかもが手遅れだ。
「はぅ〜っ! 鴇ちゃんのキス〜っ!」
「に、逃げろ〜っ」
「何故そうなるっ!」
 爆発するネプに、逃走する一同。先頭を逃げてる風葉はすでに何が何やら状態だったり。

 時は少し遡る。
「ドキドキ高鳴る胸騒ぎの予感……まさか、これって恋?」
 艦内通路で、天河 ふしぎ(ia1037)が一人立ち尽くしていた。きゅんって切なくなる胸に右拳を置き、左手を広げて自分の思いを口にする。
「何か嫌な予感がする……コクリを、コクリを護らなくちゃ。でも、これって、ひょっとして……」
 自分でもどうしようもない衝動の中、一人の少女の顔が浮かんだ。
「とにかく船長室にっ!」
 全力ダッシュするふしぎ。
 が、ここは桃色瘴気が大量散布されている。
 曲がり角で突然出てきた人影を避けることはできなかった。
――どし〜ん。
「いったた☆ あれ? ふしぎさん」
「わわ、コクリ、大じょ……」
 相手は、コクリだった。
 途端に見詰め合うコクリとふしぎ。ぽわわん、と桃色瘴気が集まり何だか背後に薔薇の幻影が咲いたり。
「こっ、コクリ」
 助け起こそうと伸ばした手が、コクリの伸ばした手と合わさった。途端に伝わり合う二人のドキドキ。
「ふ、ふしぎさん?」
「こっ、コクリ、僕君が好きだっ!」
 戸惑うコクリを、同じく戸惑うふしぎが押し倒した。思い切った行動で、コクリは力なく髪を振り乱しうるんだ瞳で見上げるだけ。
「コクリ……」
 ちゅっ☆
 んんん、ともぞもぞしながら求め合う二人。
 その時だった!
「ちょっとそこどいてっ!」
 どどどど、と風葉が追っ手を引き連れやって来て、嵐のように過ぎ去った。
「ふしぎさんも覚悟するです〜っ」
「わわわっ。僕は関係ないんだからなっ!」
 ああ、ふしぎ。ネプの剣幕に押され一緒に逃げていたり。
「コクリ、騒がせてすまないな」
 絵梨乃はちゅっとコクリにキスして皆を追うのだった。


 このころ、開拓者はほぼ夢魔+を一掃していた。
「口付けでありんすか……。口付けは惚れた人とと決めとりんすから……」
 牡丹は紫狼に口説かれつつ、のらりくらりとかわしていた。すでに言動からしてこの紫狼が贋物で夢魔+であることは理解している。どうやら紫狼の日ごろの行いは真贋の判別に大いに役立っているようだぞ!
「あら。牡丹ちゃん、困ってるみたいね」
 ここで、縄張りを夢魔+に荒らされ怒っている桜が登場。
「おおっ。桜ちゃんじゃねーか。……ちょうどいい。口付けは怖いものじゃないってことをこの花魁さんに見せてやるのを手伝ってくれねーか?」
 早速キスをねだる紫狼の唇を、指先一本で止めてみせる。途端にぼうっ、とする紫狼。いや、夢魔+。桜、夜春を使ったらしい。
「でぃ〜ぷなきすをシてあ・げ・る♪」
 ぶちゅ。
 ピンクのポニーテールを揺らし、唇を奪った。たちまち桃色瘴気に返り始める。
「お前、同類か?」
 はっ、と桜の目が見開かれた。
 横を見ると、夢魔の一言に牡丹の目が見開かれていた。いままで依頼を共にしたことのある仲間には冗談めかして言ったが、敵の最期の言葉として出るとその意味合いは重たかった。
 途端に駆け出す桜。
 うっすらと瞳に涙が浮いていた。
「あれっ? 桜さん」
「にゃ?」
「桜さん……」
 最初に打ち明けた香澄・千佳・生とすれ違う。それでも止まらない桜。「さよならしなきゃ……」とだけ、三人に聞こえた。
 そして、船外に身を投げる。
「バイバイ……」
「そんなっ」
 桜を追った三人は身投げをとめることができず空しく見送るだけだった。
 涙が最後に、桜の花びらの様に宙を舞っていたという。

「また、ですか?」
 无は艦内図書館で本を調べつつ、呆れた声を出していた。
 また、女性に言い寄られていたのである。
「私は本の妖精です。きょうは、いつも本を大切にしてくださる貴方にお礼を言いに来ました」
「何?」
 これまで女性の誘惑に微塵も興味を示さなかった无だが、これには目の色を変えた。
 見れば確かに羽妖精のような印象がある。本当に本の妖精かもしれない。というか、本の妖精であってほしいと願っている。
「いや、こちらこそいつも良い知識を授けてくださっている。ぜひ、お礼を」
「いえ、それには及びません。こちらこそいつものお礼を……」
――ちゅっ☆
 无、ここで永遠の眠りに就いてしまった。
「ふふふふふっ」
 夢魔+は堅物をおとしていい気になった。
 そのままるんるんと図書室を出たのが運のつき。
「ついて来るんじゃねぇよ、アムル!」 
「兄ロリが取り返しの付かないことをするかもでしょ?」
「俺は取り返しのつくことなんかしたことはねぇ」
 天斗とアムルが仲良く? 歩いていたのだ。
「あら。仲のよろしいこと」
「うるさいなぁ! きみ夢魔でしょ唇奪っちゃうぞこらあ!」
――ぶちゅ☆
「アムルはいつものように放浪してればいいじゃない」
「兄ロリが私についてくるんでしょ?」
 夢魔+はあっさり瘴気に返ったが、二人は正気に返ることなく言い合いつつ歩き去るのだったり。


「如何かな?」
 このころ、からすは天斗をおもてなししていた。
「頂こう」
 天斗、おもむろに湯飲みを手にしたかと思うと、ばっとからすの唇を狙ったッ!
 と、大鉄扇で山猟撃。びらりと広げてキスを防ぐ。
「何故見破った?」
「語るに堕ちたな」
 明快な言動一致で本人臭かったが、不意打ち対策のしっかりしていたからすが一枚上手。狼狽する偽天斗にキスしてやる。
――ちゅー。
 ぽふん、と桃色瘴気に返る天斗。
 そして。
「あ。兄ロリ見なかった?」
「……まあ、お茶でも」
 続いてやって来たアムルタートにやれやれといった感じでお茶を勧める。
「それより、どう?」
 妖しくも淡い表情で迫るアムルタート。
――ぢゅーー。
「どうして?」
「私に恋人はいないもの。恋愛感情がない」
 ちゅぽん、とやたらねっとりしたキスをしたからすが、漆黒の両お下げを揺らしつつ笑った。瞳の赤色が一際目立つ。敵は消えた。
「ん? ようやく桃色瘴気が晴れてきた。いまので終りか」
 からす、これで一件落着と改めて茶を飲む。

 が、しかし。
「一番捕まらなさそうなのが出てきたな」
 甲板でれる風景を見ながら一杯やってた劫光(ia9510)がぼそっと呟いた。
「あら、意外ね。私のスキルを見破るなんて」
 すっと姿を現したのはアグネスだった。
「どうしたの? 劫光らしくないじゃない。それとも、夢魔なの?」
 隣に座るアグネス。ぴとっ、と身を寄せて耳元でささやく。
「キスする時はこっちから、って言わなかったか?」
 言って抱き寄せる劫光。
(一発かましてくれば本物だが……)
 そう、打算する。
 ところが、アグネスは「そうなの?」と意地悪く切り返してくる。この反応も本人っぽい。
「く……。お前が好きだっ!」
 劫光、内心敗北を認めた。返す言葉がないので、不意打ちでのしかかった。
「それでいいじゃない」
 アグネスは無防備だった。彼女もまた、最初の接近の失敗で負けを認めていたのだ。
「……風が気配を教えてくれた」
「そう。……参考にするわ」
 唇を奪うのをやめ、最初の話題に戻す劫光。アグネスはふっと微笑し、軽くキスするのだった。
 なんというか、もう夢魔+は全滅しているのではあるが。


「あ……」
 通路に取り残されていたコクリは、新たな人物に手を取られていた。
「コクリちゃん、大丈夫でしたか?」
 小さな騎士、シャルロット・S・S(ib2621)だ。立ち上がったコクリを早速抱き締める。
「あれ、シャルさん? 胸、小さくなった?」
「これからは騎士、シャルロットが御守り致します」
 真っ赤になりつつ確認するコクリだが、シャルは動じることなく言い切る。語尾もいつもと違う。
 というか、今回男装なんですが。
「男性として迎えに来ました」
 そう言って微笑するシャル。コクリを口説き落とす気満々だ。
「えーっ!」
「ふふ、相変わらず可愛いよ」
 狼狽するコクリを無視して、ぐいっと密着するくらい抱き寄せるシャル。おかげで互いの足と足を跨ぐ格好になって以下自粛。
「ほ、本当に……」
「ボクの心はキミのモノだよ。さあ、夢の世界に……」
 シャルの言葉にうっとりと瞳を翳らせるコクリ。んちゅ、と口付けを交わす。
「ん……ん…」
 長い、長い口付け。もしかしたら、本当にすべてが夢のような……。
――どか〜ん!
 ここで、大音響が響いたッ!
「はう〜っ!」
「何でロギなんかだすのよっ、ネプ君っ!」
 どこかで響く声。
 どうやらネプが艦内でロギを展開したらしい。途端にきしむチョコレート・ハウス。
 いや、それだけではない。
「いまので制御装置が、破壊された?」
 傾き失速する感覚にひとりごちるコクリ。
「分かったわよ。はい、ネプ君、目をつぶって」
「はう〜。嬉しいのですっ」
 どうやらどこかでネプと風葉はキスしたようだが、状況はそれどころではない。
「シャルが守ってみせます」
「いや、それ以前に夢であってほしいんだけど……」
 果たして、どうなる。
 全ての真相は藪の中……いや、皆さんの夢の中だッ!