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■オープニング本文 ●前口上 さてさて、泰儀を気ままに雑技旅している孤児8人たちの香鈴雑技団。 これまでの経緯は知っていても知らなくても大丈夫。 なぜなら気ままに旅をしているのだから。 行く先々の風景や人々、奇天烈な話やほんわりする話を一緒に楽しめばいいだけ。 それじゃ今回は「香鈴、枯れ井戸の章」だよ、お立会い。 ●物語 「すまないね。村の様子がぎすぎすしてて」 香鈴雑技団が次の公演先に向う途中に立ち寄った村で、そんなことを言われた。 「水不足、ですね」 「ええ。そうです」 雑技団のリーダーをしている少年、前然(ゼンゼン)が聞くと村長は素直に頷いた。 「確かに俺たちが旅してる間も、川に水はほとんどなくって集めるのに苦労したよなぁ」 剣舞上手の少年、兵馬(ヒョウマ)が思い出しながら言う。 「呑気ね。村一つとなるとたくさんの水がいるに決まってるじゃない」 ツン、と口を挟んだのは、紫星(シセイ)という少女。 「でも村には井戸が……」 「井戸もほとんどが枯れてしまっています」 針子の少女、皆美(みなみ)がおずおずと言ったところで村長が苦笑した。それだけ長いこと降雨に恵まれず乾燥した日が続いているのだ。 「山に行けば雪があるはずです」 ここで、道化の少年、陳新(チンシン)がスパッと言う。 「もちろん、例年なら荷車を出して山に残雪をかき集めに行くだが……」 「行くんだが?」 言い淀んだ村長の語尾を歌姫の少女、在恋(ザイレン)が身を前屈みにしておうむ返しした。その隣では怪力自慢の少年、闘国(トウゴク)も首を傾げている。 「よりによって、アヤカシが山に行く道に陣取っておる」 「アヤカシかよっ!」 村長の溜息を聞いて軽業の少女、烈花(レッカ)が義憤に拳を固める。 「前然さま……」 この様子を見て、雑技団の出資者から後見人として付けられている初老男性、記利里(キリリ)が前然を見た。 「ああ。……困ってるんなら、俺たちが開拓者を雇います。俺たちの兄さん姉さんみたいな存在だから遠慮は要らないよ」 「おお。村でも退治のため開拓者を、と話がちょうどまとまったところ。せっかくなので君たちと親しい開拓者に頼もう。もちろん、賃金はこちらが出す」 ところが。 ――ぎゃあああっ! 前然と村長との話がまとまったところで、屋外から悲鳴が響いた。 「烈華、行くぞっ!」 「当然だゼ」 前然と烈華の反応は早かった。 すぐに外に出ると、何と井戸から大きなネズミが出て来ているではないか。 「足を止める。詰めろ」 「任せろ」 前然の投げナイフが、住民を威嚇していた大ネズミに刺さる。この隙に烈華が全力疾走で接近し、肘鉄。 「ちょっと。こっちにもいるわよっ」 「ガッ!」 もう一匹は窓から紫星が弓で狙い、その隙に詰めた闘国が棍で大ネズミを叩き伏せていた。 「くそっ。オレも志体持ちなら……」 「いや、今回はアヤカシじゃなくケモノみたいだな」 窓から見ていた兵馬が悔しがり、陳新が冷静に言うのだった。 「いや、待てっ!」 地下から凄まじいケモノの断末魔と暴れるが響いた。注意を促した前然もびくっと警戒したまま騒動の音が収まるまで固まっている。 「これは地下の水脈に何かいるようですね。ケモノが逃げているということは、アヤカシの可能性も考慮に入れないと」 「よっし。そんなら……」 「地下はダメですよ、兵馬さま。地の利がなさすぎで熟練開拓者でも命を落としかねません」 記利里は呟きつつ、余計な一言をいった兵馬を抑えるのだった。 「山道に陣取るアヤカシと地下の何かを何とかしなきゃならないのか……」 前然は溜息をついて「俺たちも手伝わなくちゃならないかもな」などと呟くのだった。 ともかく、残雪のある山へ行く道にいるアヤカシ「亡霊泰拳士」約五体と、村の地下に潜む何か――この後の音源調査で、大土竜のようなアヤカシ一体ではないかと目されている――の退治をしてもらえる開拓者が募られるのだった。 |
■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
九法 慧介(ia2194)
20歳・男・シ
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
琥龍 蒼羅(ib0214)
18歳・男・シ
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
真名(ib1222)
17歳・女・陰
雪刃(ib5814)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 ● 「凡そでいいですから、村の井戸の位置を教えてください」 各務原 義視(ia4917)が、持参した分厚い革表紙の本をそっと脇に置いて切り出した。 依頼で訪れた村の、村長の家でのことである。 「それはいいですが……」 「ほとんどの井戸が涸れた、という事は涸れてない井戸もありますよね?」 立て続けに村長に聞く義視。 「しかし地下に山ナァ? 水脈が繋がったりしてないんかいナ」 義視の隣に座っている梢・飛鈴(ia0034)がすっとぼけたように言う。 「しかし、これはアレか? 事が済んだら雪を持ってくるのをアタシ等も手伝うんカ?」 「いや、それは俺ら村の男衆の仕事。見くびってもらっちゃ困る。村の危機を救えず何が男か! アヤカシさえいなけりゃ俺らだけで何とかなったんだが」 「それに、雑技の子どもたちにええとこ見せんと笑われてしまうわい。この村の男衆は頼りにならんとか誤解されるわけにはいかん」 にやにやして続ける飛鈴に、血気盛んな村の若い男たちが競って力こぶを見せる。 そして、奥の間で村の幼い子どもに模造刀で格好の良い構えを教えている兵馬や闘国を温かい視線で見た。 ここで、前然と陳新がやって来た。 地図を持ってきた村人について来たのだ。 「やぁ、弟妹達に会うのも久しぶりだね。皆、元気そうで何よりだよ」 にこやかに手を上げて九法 慧介(ia2194)が二人を迎えた。 「手品兄ィ。来てくれて助かった」 「色々話が聞きたいけれど……まずはお仕事かな。地下が少し面倒そうだけど」 前然が隣に座ると慧介は難しそうに顎をさすった。 「水流がどこから来てるか、つまり水源が何処かをまずはお聞かせください」 義視は広げた地図を指差して詳細情報を求めている。 ここで、琥龍 蒼羅(ib0214)が無言で立ち上がった。 「蒼兄ィ?」 慌てて陳新がついていき顔色を伺う。 「心配するな。いつ現われるか分からない以上、ゆっくりしてはいられないからな」 いつものように涼やかな面を引き締めてそれだけ言い、出発までの巡廻に出掛けた。今こうしているうちにも地下の敵が来るかも、という配慮だった。 「うん、さすが」 陳新は感心し、嬉しくなってついていくのだった。 ● この時、多くの開拓者が大まかな打ち合わせは終わったと判断して立ち上がっている。 「ここにいたのね」 「あっ。香辛姉ェ」 真名(ib1222)は、日の当る壁を背に座っていた烈花、在恋、皆美、紫星を発見して目元を優しく緩めた。口元の笑みも控えめなのが彼女らしい。 「皆、久しぶりね。元気だった? こういう状況じゃなかったら良……」 「こうやって香辛姉ェを呼べるくらいだから、まだくたばっちゃいないゼ?」 「んも〜、烈花。そんな言い方しなくても」 一緒に長椅子に座って声を掛ける真名に、元気良く烈花が返しその内容に在恋が呆れる。 ここで銀狐の獣人、雪刃(ib5814)もやって来た。 「慧介に縁のある雑技団からの依頼だというから来た。それに、正体不明のアヤカシと……」 「え? もしかして手品兄ィの恋人さん、とか?」 「ふぅん。銀色で白くて、奇麗な感じが手品兄ィの好みなのね」 「誰もそんなことはいってないぞ?」 勝手に勘違いして皆美が盛り上がり、紫星がツンとしながらもじっくり見ている。 それでも雪刃は動じず淡々と対応する。「違うのかー」とか残念がる皆美たち。見守る真名は「そういう話が好きなのね」と苦笑している。 そして、さらに騒がしくなる。 「話は聞かせてもらったー!! そう、美少女あらば地の果て世界の果て空の果てーーっ! 紳士イヤーは乙女の嘆きに即・反・応っ。紫星たん皆美たん在恋たん烈花たんんんっ美少女雑技団よーっ!」 どか〜ん、という感じに村雨 紫狼(ia9073)が登場した。早速、紫星の頭にぽふりと手を乗せようとしたところで逃げられツンされた。 「アタシらは、そんなんじゃないよ……」 代わりに烈花が言う。どこか寂しそうだ。「ん?」と思う紫狼だったが、しかし。 「おっきな鼠でたりで、大変だったって聞いてたけど、みんな元気そうでよかった」 賑やかに華やかにルンルン・パムポップン(ib0234)もやって来て皆美にむぎゅり。 「おい、作戦が決まったぜ」 さらに前然が皆を呼ぶのだった。 ● 場面は、山道。 こちらは山道に陣取る亡霊泰拳士を討伐する面々が走っている。 「村人達の頼み通り二手に分かれたがさて……、どう出て来るか」 「土竜が出てくる前に片付けられればラク、ってナ」 蒼羅の呟きに、飛鈴が答える。村人が安心するようこちらには開拓者五人できたが、時間差各個撃破をする気満々である。 「前然、何かあったらこれを」 「これはすごいね手品兄ィ。素直そうだ」 「何かの足しになれば幸い幸い」 慧介は走りながら前然に手裏剣「鶴」を貸した。こういうのが好きな前然は品の良さが分かる。それが慧介も嬉しい。 「紫星はこれを使うといい」 「蒼兄ィ、これって確か将軍様にあやかった……」 「そのくらい使いこなせないとな」 蒼羅が紫星に貸したのは、戦弓「夏侯妙才」。腕利きの持つべき弓に紫星は息を飲んだ。蒼羅、良い武器を持たせることで自覚を持たせたいようだ。 そして、不満な人。 「なあ、芸人が顔見せでインパクト負けしてんなってYO☆。芸が上手いだけじゃお客は集まらねーからな、テンションアゲてけってな!」 「アタシたちのいた下町じゃ、それじゃ生き残れないのサ。旅に出てからもトラブルはあったしな」 「……トラブルぐれー任せろ。速攻で倒してやんよ」 紫狼の言葉に、どこか大人びた烈花の返事。これで幼女好きのハートにやるかたない怒りの炎が点火した。真顔で紫狼が拳を固める。 この時、真名の声が響いた。 「いたっ。この先の広くなった場所。……狭くなる場所にたむろして通せんぼしてるわ」 人魂を小鳥にして空から索敵した結果を話す。 「闘国はすぐに戻って知らせて。走るのも大切だから」 真名、闘国にわざと苦手な作業をさせて鍛える。 ここで、胸の中のわだかまりを一気に爆発させる男がいたッ! 「全世界の妹たちのお兄ちゃん☆こと村雨 紫狼推っ参ンんんっ!」 「な、何?」 「まだ気付かれてないのに敵を呼ぶのか?」 紫狼の渾身の咆哮に――というか、その内容に紫星が目をむき、前然が戦略的にどうかと突っ込む。 「今回は変の行動でいい。前に出張るのはアタシ達にやらせとケ」 「旋風(かぜ)姉ェ」 飛鈴が泰拳袍「獣夜」をひらめかせ死角となっていた坂道を一気に上る。雑技団に前に出るなと言ったが、烈花が見送るように反応できないほど早かった。ちなみに「変」は紫狼のことで変態紳士からとったらしい。 坂を上った飛鈴はすぐさま焙烙玉を投げる。前方に亡霊泰拳士五体が迫っていたのだ。 が、これは敵もさるもの。泰拳士的な動きでかわす。 にまり、とする飛鈴。真の狙いは敵の分断だったから。そのまま体勢を崩した敵に破軍で溜めた極神点穴。 「やるナ。酔拳使いカ?」 何と、これを寸前で体を捻ってかわされた。酔拳使いと知らなかった分意表をつかれたのだが、むしろ飛鈴はこれを喜んでアーマードヒットの拳を固めている。泰拳士のハートに火がついたようだ。 ● 「むっ!」 慧介も飛鈴に続いて思い切りよく先行している。焙烙玉を避けて散り散りになった敵の一体と対峙する。運悪く敵の先手を取られたが、曲刀を虚心でひらりとかわす。 「しまった!」 しかし、咆哮効果の切れた敵は後方の前然に狙いを変えていたのだ。 「間に合えっ」 殲刀「秋水清光」を構え直す慧介。距離があっても瞬風波で狙える。が、敵の直線上に味方も多い。軸線を大きくずらす暇はない。 と、ここで前然が「鶴」を投げていた。敵は動きよく、これを大きく外してかわした。 「いい攻撃だ」 敵と味方をしっかり見ていた慧介は、飛んできた手裏剣を敵と逆にちょっとずらすだけでかわし、心置きなく瞬風波を放った。味方を巻き込むことなく敵の足を止める。 「本気出すがビビんなよ」 後方では紫狼が咆哮で接近した敵一体に的を絞っていた。背後の子どもたちに言い聞かせて二本の殲刀「朱天」を抜き放った。二天一流、二刀流の型である。さらには多大な煉力を武器に集中させた。「鬼切」と呼ばれるド派手な技だ。初太刀はかわされるが……。 ――ザシッ! 「雑技団に戦闘はさせないぜ」 余剰練力を放出する太刀で敵を斬って止め、睨む。 しかし、もう二体が接近していぞッ! 「壁になる必要があるな」 引いて様子を見ていた蒼羅がここで動いたっ。長〜い刀身を誇る斬竜刀「天墜」はまだ鯉口を斬っただけ。腰溜めに突っ込む。 ――ドシッ! 敵の棍を受けたが、これは覚悟の上。攻撃を受けても駆け抜ける覚悟は常にしている。こだわる理由は……。 「その鎧ごと……」 抜刀術、雪折で敵がまとう戦闘装甲の脇を斬ってから、今度は力いっぱい振りかぶる。瞬間、梅の清廉な香りが周囲を満たした。敵は攻撃を受けても怯まない分、すぐに振り向いてきた。 「断ち斬る」 この男にしては珍しく、最上段から思い切り振り下ろした。敵の鉢金と鎧を真っ二つにする威力を見せるのだった。 もう一体が遅れてきたのには、訳があった。 「なかなか硬いわね」 いま「天狗礫」をその敵に投げた真名が陰陽の技「毒蟲」で召喚した蜂で戦闘序盤に刺していたから。毒は相手の四肢を痺れさせ動きを鈍らせていたのだ。 「何? かわされた」 「だったら……」 大物を持つ紫星の射撃は、さすがに注意されて避けられた。この隙に真名が改めて霊符「文殊」を構え直した。 「止めるから狙って」 真名、何と冷気を纏う白銀の龍のような式を召還しした。凍てつくブレスを一直線に放つ。止めるも何も威力がある。 「あっ! よし。香辛姉、やったわ」 さらに動きを止めた敵。矢が当たりそれが止めとなって、さすがの紫星も手放しで喜んだ。 一方、最前線。 「楽しかったガ」 裏一重で敵の突きをかわし、技を違えど貴様のできることはこちらもできることを示すとさらに自分が上であるかを示すッ。 「ここまで、かいナ」 何と、敵の攻撃してきた掴んで顎先を蹴飛ばした。さらに仰け反る敵にのしかかるように極神点穴。 これで敵の戦闘装甲はからん、と地に転がり動かなくなった。怒涛の攻めである。 「……こっちも終わったよ」 「村にこっちは片付いたって伝令、頼むぜ」 近くでは、慧介がパチンと刀を納めていた。紫狼もぱんぱんと埃を払い、雑技団に頷いていた。 ● この時、村では。 「『大土竜』の読みが『おおもぐら』ではなく『おおどりゅう』とは……」 義視が呆れていた。 ギルドの依頼の張り出しは文面であり、漢字で書くと発音までは伝わらない。そして「どりゅう」の正体は両生類のツチノコみたいな存在だという。この村の井戸の取水層に大土竜が地下道を掘って生活することでより効率的に地下取水ができるという関係にあるらしい。これが、枯渇で死んでアヤカシ化したらしい。 「アヤカシが水流をせき止めそこから遠い井戸が枯れている、したがってまだ枯れていない井戸の付近にアヤカシがいると見ていましたが……」 うーん、と空を見て唸る義見。 「どのみち、まだ枯れてない井戸の近くにいそうですね」 やれやれ、とまた呆れるのだった。 「井戸が枯れてるのがアヤカシのせいなら井戸からアヤカシのいるところにつながってるだろうから、肉でも荒縄の先につないで井戸に垂らしてみるとかどうだろう?」 雪刃が閃き義視に言う。 「雪刃さんの意見を試してみましょう。私も人魂で探ってみます。……それより、ルンルンは?」 「すでにいろいろやってます。『水不足にアヤカシで、村人さんも大変だもの、正義の忍法でシュシュット解決なのです!』って、山に行った人の帰りも待たずに」 陳新が説明した。 「やれやれ」 「ま、いつ来るかわからないものをただ待つのも時間の無駄だからね」 溜息を吐く義視に、一刻も早く討伐は自分の考えでもあることを話す雪刃だった。 時は若干遡る。 「村の見張りはニンジャの耳にお任せなのです」 ルンルンは独自に、大鼠が出たという井戸周辺で聞き込みをしていた。結果、爪と思われていた大鼠の傷が牙であるかも知れないことを聞いていたが、これはあまり彼女の役には立たなかった。 それはそれとして、超越聴覚を使って井戸の底の物音を探ったり、落ち葉を集めて火を焚いたりしていた。 ここに、義視と雪刃がやって来た。 「何やってるの、ルンルン?」 むしろ期待を込めて問う義視。 「ルンルン忍法煙遁の術改なのです!」 えへんと大きな胸を張って答えるルンルン。ぱたぱたと大きな団扇で焚き火を扇いでいる。 「いや、煙は下にはいかないから」 ともかく本命の井戸に移る。 ● そして移動後。 「あっ。……ニンジャの耳からは、逃れられないんだからっ!」 早速ルンルンが反応した。 「どうする。咆哮か、そのエサか……」 「一応、下ろしてみる」 振り返る義視に、井戸に近付き肉を投じる雪刃。 その時だった! 「雪刃さん、近いですよっ!」 「わっ!」 ルンルンが叫ぶと同時に、ごごご、と井戸が振動した。 そして井戸から同直径の細長い物体がどっぱーんと這い出した。不気味なくらい地肌が白いッ! ――どさり。 「くっ!」 「義視さんっ!」 運悪く人魂をやろうとしていた義視が敵の初撃を受け、さらに潰された。雪刃は下がりながら咆哮でとにかく敵の狙いを義視から外すっ。 「モグラなら光は苦手なはずだもの!」 風魔閃光手裏剣で輝きとともに手裏剣「八握剣」を放つルンルン。が、命中した手裏剣はともかく閃光は正対してない分利きは弱い。 「先手は取り返す……」 一方、狙われ食らい付かれた雪刃は銀狼の耳をピンと立て、白い雪のような刀身の大太刀「殲滅夜叉」に炎を纏わせていた。柳生新陰流の「焔陰」だ。同時に隼襲で反撃の準備を整える。 「ルンルン、雪刃さん、即決で」 義視、無事だった。立ち上がるとおどろおどろしい「何か」を召喚。その「何か」は瞬時に大土竜に呪いを掛けると姿を消した。がふっ、とのたうつ敵。 「言われるまでもなく」 白く長い髪と、ふさふさのしっぽが跳ねた。ついに動いた雪刃の太刀は、迫ってくる大土竜の口を裂いた。同時に牙を受けるが、それがどうしたとさらに攻める。 しかし、敵の攻撃手段は牙だけではない。 「あっ。光ある所に影有り……くらえ必殺、ルンルン忍法くりてぃかるひっと!」 ルンルンが気付いた。夜で時を一瞬止め、捻ったしっぽでの横檄を止めた。この隙に名刀「エル・ティソナ」で敵の体を裂く。 「まだまだ行けます」 義視は「黄泉より這い出る者」を連発。 やがて、一軒家くらいの長さはあろうかという図太い蛇状のアヤカシを倒すのだった。 この後、山に行った開拓者が帰還し、村の男衆が威勢よく大八車を引いて山にかっ飛んで行ったという。 |