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■オープニング本文 ここは天儀で最も面積の広い国である武天の片田舎の、小さな小さな農村の集落。 「もうすぐ節分だね〜」 「うんっ。楽しみだよね」 集会所の庭で雪兎とか作って遊ぶ幼い女の子たちがきゃいきゃい楽しそうに話している。 「けっ。節分っていっても煎り大豆の豆を投げるだけだろ?」 「そんな迫力のないことより、雪合戦しようぜ?」 同じくここで遊ぶ幼い男の子たちは、どうも体を思う存分動かして遊ぶ方が好きみたいで。 ここで、お兄さん的な男の子が顔を上げた。 「んなことないぜ? 節分の豆まきは一家が幸せになるように豆を投げるんだ。そして父さん母さんたちに怪我とか病気とかないようにする。俺たちが家族を守ってやれるんだから、俺は楽しみだけどな」 お兄さん的存在らしいことを言うと、また女の子たちの様子を見守るのだった。 「そっか。……なら、ばーんと豆撒いて、オレたちが家族を守るんだ!」 「ねぇ。節分、ちゃんとやるからボクたちとも遊んでよ?」 「ははっ、しょうがないな」 元気な男の子二人も考えを改めた様子。お兄さん的な男の子は女の子たちに「ちょっと行ってくる」と立ち上がる。すると、女の子たちは「じゃあ私も〜」などとついて行く。どうやらみんなで仲良く雪合戦をすることになったようだ。 そんな様子を見守る、集会所の中の大人たち。 「……あんなにいい子たちに育ったんじゃ。絶対に守らにゃならん」 「おおよ。まだアヤカシの鬼を見掛けたのは山一つ向こうで通例なら手前の山まで来ないよう祈るだけじゃが、節分ごろに鬼に近寄ってこられるわけにはいかん」 「爺さんの話じゃ、随分前には山一つを一気に越えて来たって話も残ってるくらいじゃからの」 「しかも目撃は一匹じゃが、小さくても鎧を着たり着てなかったり、豚の顔じゃったりとばらばらじゃ。相当数が広域に単独で動いとる可能性もある。早めに手を打つのが吉じゃ」 「しかし、開拓者に頼むのはええが、金がのぅ」 集まった人々は口々に話しては、う〜んと唸ってしまう。 過去にもこの集落は開拓者を雇ったことはあるが、その時鬼アヤカシどもは一塊で動いていた。少ない開拓者で効率的に退治することができたのだが、今回アヤカシの鬼どもは単独行動で広域に散っているようなのだ。どうしても頭数が必要となってくる。 「……まあ、早めに開拓者に頼むで結論が出ておる。この予算でどれだれ人員が集まりそうか開拓者ギルドに相談してみてはどうか?」 ともかく、節分ごろに鬼アヤカシが山一つを一気に越えて襲ってくるという最悪事態を事前に防ぐための依頼を持ちかけるのだった。 そして開拓者ギルド。 ある職員が依頼書を作成していた。 「目撃したアヤカシは鬼で、小さいのは武装と非武装、そして豚みたいな顔で太っているのもいる、か……」 何やら考え込んでいる。 「それなら、駆け出しの開拓者の経験の場としてウチの予算を使ってしまおう。ひどいことになって私の首が飛ぶなんてこともないはずだし」 さらさらっと筆を運び、報酬を一段階上げた。 そして、「駆け出しの開拓者の経験の場にしてください」の一文を添える。 「これで、集落も新人の開拓者もギルドも私も、全員が幸せになれるはずっ!」 ぱんぱん、と張り出した依頼に願を掛けるギルド職員であった。 |
■参加者一覧
サニーレイン=ハレサメ(ib5382)
11歳・女・吟
巌 技藝(ib8056)
18歳・女・泰
向井・操(ib8606)
19歳・女・サ
桃白 オリカ(ib8621)
14歳・女・志
ルカ・ジョルジェット(ib8687)
23歳・男・砲
アナ・ダールストレーム(ib8823)
35歳・女・志 |
■リプレイ本文 ● 「へええ……」 集落で、子どもたちが建物の影に隠れてそんな声を漏らしていた。 「それじゃ、よろしゅうたのんます」 子どもたちの視線の先では、集落の大人たちが開拓者6人と話している。 「あの女の人、強そうだなぁ」 男の子がそう言ったのは、修羅族の泰拳士、巌 技藝(ib8056)。一番背が高く、それでいて引き締まった体に豊かな胸元は実に女性らしい。 「あたい達も合戦でたくさん鬼を倒した後だ。任せとくんな!」 集落の大人に堂々言う技藝の瞳が輝いているのは、その合戦で何か足りないと思ったから。その、足りない何かをここで掴みたいと感じている。 「あのお姉さん、かわいい」 女の子が見たのは、桃白 オリカ(ib8621)。猫の獣人で、桃色の長髪と白い肌にあわせたような白桃のような衣装が可愛らしい。特に耳に飾った桃一輪が目を引く。 「あ」 見ていた女の子が赤くなったのは、ふと視線に気付いたオリカと目があったから。オリカは、にこっと甘みのある口元を緩め微笑した。 「都の人はかっこいいなぁ」 年配のお兄さん的な男の子がそう言って憧れの視線を送っていた先は、ルカ・ジョルジェット(ib8687)。細く黒で統一したスタイリッシュな出で立ちだ。 「ん〜?」 そのルカ。隠れて見ている子どもたちに気付くと、左目だけを大きくしたあと帽子を目深に被って顔を隠した。「あまり人の顔をじろじろ見るもんじゃないよ〜」というところか。 「ふぅん」 ここで、開拓者の集団から背の高い女性が子どもたちの方に歩み寄った。 砂迅騎のアナ・ダールストレーム(ib8823)だ。長い銀髪に、南国出身者らしいひらひらした衣装で、長い足を踏み換える姿が色っぽい。 「こんにちは。仲が良いようだわね」 ぽふりと頭を撫でてやる。 「友達とは仲良く。バラバラになってはダメよ」 思いを込めて言う。人生で何かあったのかもしれない。 「わ。子どももいる〜」 別の女の子は、アナに続いてやってきた背の低い少女開拓者を見て目を丸めていた。 吟遊詩人のサニーレイン(ib5382)である。 「……」 そのサニーレイン、無言。 「むきー、子どもの癖に生意気な」 とは、言わない。 言いかけたのだが、出掛けに朋友の土偶ゴーレムから「サニー、たまには私に頼らず依頼を遂行してみたまえ」とかキリッとして言われ「むきー、土偶の癖に生意気な」とか思ったりしたのを思い出したからだ。 「初めて相棒なしで、依頼を受けた」 ぼそりと、それだけ。 その背後に、腰まで伸ばした金髪をなびかせ立つ姿があった。 サムライの向井・操(ib8606)だ。ところどころ髪の毛がハネているのはあくまでチャームポイント。 「子どもたちの親分は誰だ?」 ぶっきらぼうに言うと、一人の男の子が手を上げた。 「武を磨くのだな。……仲間と家族を守るために」 ぴしりと言い放つ。思わず身を引き締めた子どもたち。 操の方は、「行くぞ」と早速山に入ろうとする。「子ども相手に厳しく言い過ぎたか」と後悔もしているのは内緒だ。 が、ここで「待った」。 「山に行くんなら、こっちじゃが」 住民が反対側を指差した。真っ赤になって慌てて戻る操。 「笑える時は笑った方がいいよ〜。生きてるっていう証だからね〜」 ルカが言ったことで、張り詰めた空気が和らいだ。操もホッとする。 ともかく出発である。 ● さて、件の山中。 「鬼退治なんて、まるで節分って感じね」 「そうだね〜。そういうのもまた、一興だよ〜!」 オリカが軽口を叩き、ルカがにこやかに応じる。 いまだ、広域に散っているという鬼アヤカシには遭遇していない。 「ふーん……天儀には鬼退治っていう文化があるのね。面白そう」 アナがクールを装いつつ目を細めて好戦的に言うのは、もしかしたら自身が修羅族だからかもしれない。もっとも、その特徴である額の角は布を巻いて隠しているのだが。 「さて、私は今回が初の依頼なのよね。張り切って頑張らなくちゃね♪」 そんなアナにオリカが明るく言う。 「そうね。苦しい懐事情の中、呼んでくれた村の人々の為に最善を尽くしたいものね」 技藝は視界を遮る枝葉を八尺棍で捌きつつ、右前方を警戒しつつ頷いた。 改めて開拓者の陣容を見てみよう。 橙色の布を要所にあしらい可憐さを醸す軽鎧で固めたサムライ・操が先行する。 その左には、先が桃色の白い尻尾を揺らしつつ左翼を警戒する志士・オリカ。 右は長身の泰拳士・技藝が固める。 二列目やや前に、魔槍砲「瞬輝」とシャムシール「アサド」を用意した砂迅騎・アナ。 その後ろに、雪の山道をぴょんこぴょんこ可愛らしい歩調で続く吟遊詩人・サニーレイン。 最後尾に、楽しいことには首出すぜ的な様相の砲術士・ルカが続いている。 前方に警戒と戦力を固めた攻撃的布陣である。 ゆえに、前方の操は後ろも気にする。 「ルカ殿、後ろに異常はないか?」 「シニョーラ向井、心配はご無用だよ〜。ミーは基本、遠距離攻撃だから無理はしないさ〜」 ルカの軽〜い返事に、「大丈夫かな」という操の視線。 このやり取りの中間で、右に左に首を振って見ていたサニーレインが「そういえば集まったのは、経験の少ない、開拓者ばかり」とか呟いてぽむと手を叩いていた。 「ふふふ。この、サニーレイン先輩に、頼ってもいいのよ?」 にまりと笑み。 ここで、きっ、とオリカが険しい表情で振り返った。 「嘘です。ぶっちゃけ、私が一番、腕っ節が弱い。ので」 「こっちから敵!」 オリカ、甘い表情が目立つが瞳に意志の強さが宿る。それだけ伝えてすぐさま身軽に敵へと動く。一方、虚栄で胸を張っていたサニーレインはほっとする。 「猫獣人である私の足についてこられるかしら?」 ざざざ、と敵へ向うオリカ。 対する小鬼は、四匹。 「シニョーラ桃白、そりゃ無茶じゃない〜?」 ルカのマスケット「バイエン」が火を噴く。オリカの動きに注目していた敵に見事に命中した。 「お〜?」 しかも小鬼は一発で瘴気に返った。これに気を良くするルカ。 ここからの展開は早い。 「ギッ!」 敵小隊長らしき小鬼がルカの方にも部下を向わせようとする。 「桃白殿、一人で突出しすぎるな!」 華やかに上下するオリカのスカートの裾と猫尻尾を追いかける操が叫ぶ。 と、その姿が気紛れに右にそれた。 フェイントである。 「味なことするねぇ。じゃ、遠慮なくもらうよっ!」 狼狽した操を追い抜き、ぎらりと輝く大きな曲刀を振りかぶったアナが向って左手の小鬼に踊りかかった。敵は戸惑った分、反応が遅れこの一撃をもろに食らった。 「ほら、こっちよ♪」 オリカの方は、向って右手の小鬼――さすがにオリカの動きに反応はしたが完全に体勢が崩れている――に、怪しげな刻印のある剣で切りつけた。 「くたばれっ!」 「しつっこいなもー!」 練力と精霊力を身体の中に集積させるダナブ・アサドで激しく止めを差すアナに、刀身に炎を纏わせる炎魂縛武で叩き伏せるオリカだった。 一方、分派した敵。 「ちょっとそりゃないよ、シニョーレ〜」 さすがに破壊力のあるバイエンの反動は物凄い。単動作で次弾を込めるルカだが肉薄する小鬼に肝を冷やす。敵の得物が槍なのも不幸な組み合わせだ。 そして銃を構え直すも、これは間に合わない。 わっ、と肩をすくめるルカだったが、迫っていた小鬼は横にぶっ飛ばされていた。 「……舞うが如き」 「シニョーラ巌〜」 ほっと表情を明るくするルカ。その視線の先に、雄々しく仁王立ちする姿があった。 技藝だ。 手にするは八尺棍「雷同烈虎」。今、腰を落とし追撃の構え。 「そして敵すら魅了する女拳士にっ!」 ぐるんとまず棍を振ったのは羚羊の様な脚を踏み込みながらの予備動作。どだん、と大地を踏みしめたと同時に頭上を華麗に舞っていた棍が一転力強く押し出されるッ! 「よしっ。ブーツに巻いた荒縄はいいな」 もう敵は眼中になく、自身の踏み込みの手応えを気にしている。もちろん小鬼は瘴気と化していた。 「……出番がなかったな」 「希に、よくあること」 あっさり終わった戦闘にあっけにとられる操。やはり何もしなかったサニーレインは経験則を語り慰める。 ● 捜索は続く。 さらに奥まで行った所で。 「ぴこーんぴこーん、襲撃警報。ですよ」 「心眼では何も感じないよ、サニーレインさん」 サニーレインが超越感覚で聞こえた方向を見る。志士のオリカも心眼をしてみるが反応が無いので猫のように首を傾げている。索敵距離の差であるが。 ちょうど右手に急斜面があり、道は随分向こうで右に曲がっているため死角になっている。サニーレインによるとそこから一体が近寄っているらしい。 「そんじゃ、いいところ見せるよ〜」 ルカが長銃で溜める。威力を高める「強弾撃」だ。 「来たっ!」 仲間の声と共に、ルカの銃声が響く。 が、やって来たのは豚鬼だった。命中するが今度は一発で倒れない。 「そりゃないぜシニョーレ〜」 「ぴこーん。上から。ですよ」 敵の体力に唖然とするルカに、さらに敵の音を聞き分けたサニーレイン。 「何てことだ。皆に余計な傷を負わせる訳にはいかん」 いち早く反応したのは、常に後ろも気にしていた操だった。 敵は何と、右手斜面の上から一気に滑り降り、ルカの背後につけていたのだッ! どうやら大きな銃声で上にいた敵に気付かれたらしい。今度は筋骨粒々で人間の大人サイズの鬼だ。 「前に飛べ、ルカ殿!」 「ひぃっ」 操の咆哮。ルカは思い切りよく前に身を投げた。博打慣れしている。 「くっ!」 操、前に出たが鬼の剣を食らった。 「多少の怪我は覚悟の上だっ!」 鎧で固めた敵に対し、自分の一撃に意識を集中する。 振るうは魔刀「アチャルバルス」。皆の盾になるとの決意が乗った一撃で鬼を斬る。が、地味に敵の装備は硬い。 「ふぁいおーふぁいおー♪」 そんな操に、精霊の鈴をちりんちりんさせ「奴隷戦士の葛藤」を歌い援護するサニーレイン。何気にゆるゆるな踊りつき。無論、操はこれを聴き「絶対に盾にならねば」と俄然力を込める。 「昔の血が騒ぐわね。いっちょやってやろうじゃないの!」 そのサニーレインの横につけたアナが、操の回避に合わせて魔槍砲「瞬輝」を構え、「ヒートパレット」でぶちかました。荒い口調が彼女の調子の良さを物語っている。敵の鎧を砕いた。 「これで止めだっ!」 操の一撃で瘴気に戻った敵。 「前は?」 はっ、と気付いて髪を振り乱し、操は前の豚鬼を見る。 「へーいへい、鬼さんびびってるぅー♪」 今度は片足を後ろに上げてしゃんしゃん「騎士の魂」を歌い踊っているサニーレイン。 その前で……。 「あたいが盾になって敵の足を止める」 「巌さん、ありがとっ」 技藝が豚鬼と相打ちしている間に、身を屈め技藝の横をするすると抜け出たオリカが死鼠の短刀を突き立てた。 これで勝負あり。 「ミーはいいところないね〜」 「戦闘で物音は立つだろう。ルカ殿に非はない。……さ、行こう」 「向井さん、そっちは帰る道ですよ?」 「う……」 ぱたぱた埃を払って立ち上がるルカを慰める操。先を急ごうとしたが逆だったようで、もう戦闘の高ぶりが収まって普段の口調に戻ったアナから突っ込まれた。笑いが巻き起こる。照れる操。 「それよりダールストレームさん、何してるんですか?」 「こうしてリボンを木の枝に結んで印にしておけば、後日村人に目安にしてもらえるしアヤカシも寄って来なくなるかもでしょう?」 用意してきたリボンを枝にくくりつけながらアナがオリカに答えた。 「そういえば、あんたの武器は見た目にあわねぇな」 技藝が突っ込んだのは、オリカの剣。 「のろいの、けんに、ぶきみな、けん。どちらもふきつ」 ぼそりと解説するサニーレイン。 「だって、たまたま手に入ったし、気がついたらいつのまにか手に馴染んじゃったのよね」 困った風に血約の剣を見るオリカ。 「たまたまに、いつのまにかなら、しかたない。うん」 「でしょ〜。……それで巌さん、怪我は大丈夫かしら」 「あたいには生命波動がある。回復役がいないし、便利なもんさ」 きゃいきゃいと不気味な剣などの話題で盛り上がりつつ、小休止する一行だった。 ● そしてその後、別の場所。 「むきゃー助けてー!」 「危機は早々に潰すに限る。悪いが鬼ども、狩らせて貰うぞ!」 小鬼に狙われ必死に逃げるサニーレイン。これを操が叩き伏せる。その横を射線が行き、別の小鬼を屠る。 「少しはいいとこ見せられたかね〜」 ルカの呟きに操がにやりと返す。 「油断は禁物……かな?」 「よしっ、狙えっ」 オリカは敵小鬼のリーダーの攻撃を慎重に下がりつつかわした。ここで紫色のポニーテールが風を巻き込むように舞った。技藝が鋭い踏み込みで棍を横薙ぎに振るっていたのだ。敵は何とかこれをかわすが、当然足は止まる。 「いいね、戦いやすいぜっ!」 口調もノッてるアナがシャムシールで止め。 これで今回の遭遇戦もひと段落。アナも技藝もオリカも、操もルカもサニーレインも会心の笑みでお互いに視線を交し合うのだった。 「ほうほう、そんなにいましたか」 「そしてそして、それをことごとく」 「いやいや、さすが」 夜。 6人は合計20体未満の鬼を倒して帰還した。 満足行く成果に村人達は盛り上がっている。 俄然、用意していた感謝の宴も笑顔と手柄話とでドンチャン騒ぎ。わあっ、と歓声が上がったのは、アナがアル=カマルの舞踏を披露したから。しなやかな体と動きが美しい。 「姉さん方、まあ飲んでくれ」 「あ、私は酒は一応飲めるが酔い安くてな……あまり飲めんのだ」 「お酒は飲めません。ので、ご飯を頂きます。しこたま」 「じゃあ私も〜」 村人の酌に、操が戦いでは見せなかった弱腰を見せ、サニーレインは大盛りでご飯をもきゅもきゅ。村の女の子も横に来て習ってもきゅもきゅ。 「お姉ちゃんも戦ったんかい。こんな可愛いのに?」 「私だってやるときはやるんだからね!」 「シニョーラ向井は見た目じゃないよ〜」 サニーレインに負けないほどよく食べるオリカも村人に聞かれていたが、無邪気な猫のように答える。その横では代わりに酌を受けたルカがこっそり肩をすくめ、彼女の呪いの武器持ちっぷりを思い出している。 「あんた、やるねぇ。お疲れ様。……よし。今度はあたいがささやかながら」 舞い終えて座に着いたアナと入れ替わりに、今度は技藝が立ち上がる。彼女も舞踏の女神の名に負けぬ美しき舞姫でありたいと自らを鍛えている。 「おお〜。これまた美しい」 すっ、と舞に入った技藝に拍手が集中する。 そんな中、サニーレインが何かに気付きましたよ。 「おや、これは豆。節分の」 そんな様子に、隣の女の子が「うんっ。お姉ちゃんにあげる」と。 「帰って、生意気言った土偶に、ぶつけます」 戦闘中「あったれー」と言いつつ敵に投げた剣が当たった自信に、むふふと笑みを浮かべている。 |