【浪志】らいぶミラーシ
マスター名:瀬川潮
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/02/03 17:09



■オープニング本文

 神楽の都の、珈琲茶屋・南那亭にて。
「あれっ。クジュトさんて、楽器をするんですか?」
 南那亭めいど☆の深夜真世(iz0135)が、珈琲を飲んでいるクジュト・ラブア(iz0230)に聞いた。
「ええ。吟遊詩人をしてますからね」
 とんとんとテーブルを人差指で叩いてリズムを取ったり三味線の撥を手慰みに弄っていたクジュトは上の空で答える。上機嫌というより何か考え事をしているようだった。
「普段は街角とかで演奏するんですか? ふんふん♪って歌い出したらだんだん人が集まってきて、そんでもってその人だかりに『何だ何だ?』って興味を引かれた人が集まって、最後には人が集まりすぎて『逃げるんだよ、お嬢さん』みたいな感じになって〜」
 きゃ〜、と妄想爆発させて一人で盛り上がる真世。相変わらず脳天バンザイ娘である。
「そんなことはないですよ。人々は皆日々忙しいものです。日中街角でする時は、あまり皆さんの邪魔にならないようひっそりとやってます」
 そのひっそりがいいんですよ、その街の人の心と繋がったような気がして、などと淡いのあることを言うクジュトだが、すぐに後悔した。
「あ、いらっしゃいませ〜。珈琲茶屋・南那亭にようこそ♪」
 真世、聞いてない。
 クジュトとしてはせっかく心と心の対話ができると思ったのだが、期待は外れたようだった。
 と、その目が見開かれた。
「こんにちは、クジュトさん」
 真世が接客したのはもふら面の男だった。「んも〜。またそのお面すか?」、「えっへっへ。可愛いからいいでしょう?」、「うんまあ、可愛いからいいですけどね」とか真世と会話している。
「もの字さん、意外と人当たりがいいのですね?」
「いい娘さんですからね。一度聞いただけで二度とお面を取れとは言わないし、変な目でも見ないですし」
「だったら最初から取ればいいでしょうに」
「いろいろと都合がいいんですよ、これはこれで。……それはともかく、今日はどうしたんです? あっしをこんなところに呼び出して」
 夜じゃダメでしたかい? と首を傾げるもふら面の男。
「そのお面と同じことですよ。あの酒場も都合がいいようで、工夫しないと都合が悪くなる。……それより、ミラーシ座で大規模な吟遊詩人の舞台をしたいと考えてます。昼日中の町中で」
「そりゃまたどういう風の吹き回しで?」
「住民がどれだけこちらに注目してくれるか確認したいんですよ。浪志組で陽動なんかに使えるかもしれません。もの字さんには開拓者の手配と、住民の動向の確認などをお願いしたいんです」
 つまり、楽師が路上で賑やかにやれば隠れ家に潜む悪人に足音などを聞かれず接近できるし、住民を引き付けておけば討ち入りなどに巻き込まれる可能性も減るというわけだ。
「そりゃ、どの程度効果があるか確認しておけば使う時もくるかもですね。……ですが、どうして今なんです?」
「新年ですし、ぱーっとやりたいんですよ」
 クジュト、立ち上がり晴れやかに言うとマフラーをひらめかせた。背後で陽光がキラリと跳ねている。
(クジュトの旦那も派手好きですねぇ)
 もふら面の男は、御託はともかくクジュト自身がぱーっと派手にやりたいのだなと理解し、妙に納得するのだった。

 そんなわけで、神楽の都の往来で拡声効果のある宝珠を用いてする大規模な演奏会に出演する人を求ム。


■参加者一覧
レートフェティ(ib0123
19歳・女・吟
ニーナ・サヴィン(ib0168
19歳・女・吟
リスティア・サヴィン(ib0242
22歳・女・吟
羽喰 琥珀(ib3263
12歳・男・志
Kyrie(ib5916
23歳・男・陰
サラファ・トゥール(ib6650
17歳・女・ジ


■リプレイ本文


 ここは、神楽の都のちょっとした広場。
 人々は行き交い、或いは立ち話をしたり。
 ざわざわ。
 くすくす。
「きゃははっ」
 時折、はしゃいだ子どもたちが走り回って歓声を上げています。
――ごとん、ごとん。
 何を積んで運んでいるのでしょうか。馬が荷車を引いて行きました。
「はっくしょん!」
 あらあら。噂話でもされたのでしょうかね。誰かがくしゃみをしましたよ。
 そんな街のざわめきの中にも、一瞬の静寂はあります。
――ひゅっ、ひゅひゅっ♪
 その静寂に、いかにも楽しげな口笛の音が響きました。
「ん?」
「へえっ」
 小さな口笛の音に気付いた人は、皆見返ります。
「ふふっ♪」
 人々の視線を受け微笑し、口笛を続けたのはニーナ・サヴィン(ib0168)です。
 揺れる金色の髪。ちらと流し見る橙の瞳。そしてくるりと回ってなびく袖にひらひら衣装。気分の良さそうな通行人のように、明るく弾むように吹いています。
――ひゅ〜っ、ひゅ〜っ♪
 おや。反対側からも口笛が。
「あれっ」
「ほぅ」
 今度はしっとりやさしめな響き。気付いた人が今度はそっちを見ます。
「くすっ♪」
 控えめに目尻を緩めるのは、レートフェティ(ib0123)。
 ハニーブロンドの色をした上品なジルベリア風のローブドレス姿が眼に鮮やかです。手を伸ばし広場全体を示すように広くゆっくりめぐらせながら、和むような口笛を。
――キュキュッ♪
 さらに中央から短く切れのある口笛。
「何だ」
「わあっ」
 はっとするような清らかな音は、何かを期待させるよう。
「ふっ」
 貴族の礼のように、長身細身のKyrie(ib5916)(以下、キリエ)が立ち姿を決めています。
 襟元をドリームストーンできりっと留めて、黒い衣装に白い肌。先ほどまでは広場に座る住民として見られていましたが、すらりと立つと恭しく一礼。続けて小気味良い口笛を紡ぐのです。
「へえっ。口笛吹いてる人、多いなぁ」
「わ。何か始まるの?」
 住民たちは何かに期待するようにそわそわしはじめました。ニーナ、レートフェティ、キリエの三人は視線で「頃合いかも」と頷き合うと中央に向って歩き出すのです。
 そんな、賑わいの予感よは別の場所。
 建物の影に、ふるんとトラ尻尾が揺れています。
「よし。クジュト、やろう。そしたら後は、ティアとサラファの出番だぜ?」
 陰に潜んでいたのは、羽喰 琥珀(ib3263)です。トラ耳のあるツンツン短髪の頭でくるっと振り返ると、同じく身を潜めていたクジュト・ラブア(iz0230)たちに言うのです。
「まっかせといて。なんか久しぶりに 吟遊詩人として動けそうで楽しみにしてたんだからっ」
 いつものように白いセイントローブに身を包んだリスティア・バルテス(ib0242)(以下、ティア)が、堂々と胸を張って笑顔で答えます。
「久々に思う存分踊ることができそうです」
 ティアの横に控えていた黒い肌のエルフ、サラファ・トゥール(ib6650)も出番が待ち遠しそう。銀色の長髪をオーロラのヴェールとともに束ねて纏めた頭上で、掲げた両手の甲を合わせるようなポーズを取って肩の力を抜いています。いつでも踊り出せそうですね。
「三人が集まってきました。さあ、行きましょう!」
 女形姿のクジュトが言うと、頷いた琥珀と共に飛び出すのでした。
 琥珀の用意してきた、特製の幟旗を手にして。


「おおっ、なんだなんだ?」
 三方から広場の片隅に一人、そしてまた一人と近寄ったニーナ、レートフェティ、キリエ。三人が集まった時、広場に運良く居合わせた人々は目を剥きました。
――タン、タン、タン、バッ!
 琥珀とクジュトが走り回って幟旗を掲げ、背後の壁に一座の紋をデザインした旗を広々と掛けたのです。予め岩を配置し幟旗を立てやすくしたりなどしていたので、一夜城のようにあっという間に一座の舞台が出来上がりました。
「やっぱ一座にゃ印がないと締まらねーしなー」
「名前もニーナさんの案からですし、みんなでここまで来たという感じです」
 へへん、と出来栄えを見る琥珀に、にっこり感心するクジュト。
 旗には、 長い三枚の花弁が特徴の可憐な待雪草の斜め上に小さいながらも賑やかに咲く桜草があしらわれた紋が染められています。
「希望を抱き運命を拓く、ってな」
 ひらめく旗を見返りながら琥珀は呟いたり。見事に決まった、と瞳は会心の輝きを放っています。
 ここで、ティアとサラファも出てきました。
「ふうん。拡声効果のある宝珠って、指輪型なのねー」
 きゅきゅっ、とヴァイオリンを軽やかに弾きながらティアが真っ直ぐにステップ・イン。
「今日はよろしくお願いいたします」
 その横からサラファがくるり、くるりと回りながら前に出ます。後ろで束ねた長い銀髪とヴェールもくるんくるんと派手に回って胸をすくようです。
 この様子にクジュトがしゃんしゃん手拍子。
 広場からも釣られてしゃんしゃん手拍子が返ってきました。
「よし。ニーナさん、レートフェティさん、キリエさん、今の内に」
 クジュトが口笛で流れを作った三人に楽器を持ったりなど準備の手伝いをします。この間に、琥珀は大きなものや椅子などを設置。息もぴったり。広場の人たちはティアの音色とサラファの踊りに目を奪われています。
 円弧の動き。ひらひらした踊り。
 サラファはしゃんと精霊鈴輪を鳴らし、とたんとパッションサンダルの音を鳴らします。時に仰向けになるように胸をそらして笑顔。色っぽいを飛び越えて倒錯的にも見えるのはバイラオーラのせいもあります。
 そして。
――きゅ、きゅ〜ん……。
 やがて夢見るような表情でヴァイオリンを弾いていたティアが、最後の小節を弾き終えました。サラファはか細い喉を目一杯伸ばし顎を上げ、天に突き上げた右手の平を見るように決めポーズ。きりきりと激しかった舞いが、ピタリと終わりました。
「すご〜い」
「へえっ。こんな催しもあるんだね〜」
 ぱちぱちと広場に拍手は絶えません。
「皆さんこんにちは。ミラーシ座から、天儀と異国の音楽、踊りをお届けします。お時間のある方はぜひ、立ち止まって楽しんでいってください」
――とととと、とん。
 クジュトの挨拶に合わせ、琥珀が持参したアル=カマルの太鼓「ジャンベ」を軽やかに打ち鳴らして雰囲気作り。突然神楽の都に現れた、馴染みの薄い衣装による見慣れない踊り、聞き覚えのない音楽、そして日ごろ見かけない催しに多くの人が足を止め好奇の目を向けます。
「では」
 最初の曲は新春らしく、さくらを愛でる緩やかな曲調の童謡。
 琥珀が横笛で演奏し、クジュトが桜の枝の造花を持って天儀風にしっとり舞います。さすがにお座敷演芸出身者ですね。
 さあ、ここからは見所の目白押しですよ。


「ではティアさん、お願いします」
「まっかせて」
 まずはキリエが出ました。
 オルガネット「フォルテッシモ」で大らかに響き奥行きのある伴奏をしてみせます。
 丁寧に、ゆっくり。
 ちら、と客を見るキリエ。好奇心に目を丸めている顔を見て満足し、また長い伴奏を。まるで楽器紹介をしているみたいですね。
 そして、ついに大きく息を吸い込んだのです。
「Ah〜〜i……」
 異国単語の、異国の発音。
 演奏しながら神教会の典礼曲を歌います。
 テノールを生かして荘厳にして重厚、それでいて優しさや柔らかさ――神の愛を感じさせる聖歌を朗々と。歌の言葉は通じなくても、キリエの歌声と表情で神々しいものだと伝わっているようです。
(ん、いいわね)
 ひっそり教会で司祭経験のあるティアも、そっとキリエを際立たせるように伴奏するのです。

「それじゃ、次は明るく楽しく」
 にっこり言うのはレートフェティ。リュート「ローズガーデン」からトランペット「ミュージックブラスト」 に持ち替えてます。これにはメンバー皆が、「へえっ」と意外そうな顔をします。
――パラパラッ……。
 日ごろは口調もかわいらしいレートフェティが吹き始めたのは、楽器を下に向けて控えめな、それでいて小刻みで心弾むような楽しい音楽でした。彼女らしい可愛らしい演奏に、メンバーも肩を揺らし始めます。もちろん、聴衆たちも。
(久しぶりのミラーシ座で、こう、旗も揚がるとわくわくするというか……)
 音は可愛らしい半面、奏者は忙しい曲です。その中で、レートフェティはそんな思いを抱きます。広場では、ぱん、ぱんと一拍子置いた手拍子が巻き起こってます。心地良いリズムですよね。
(清誠塾の子たちにも聴かせてあげたかったな……)
 そんな思いも込めているのですから、人々の心にもその温もりが届くようです。

「ねぇクジュトさん。合わせて踊ってみせて?」
「アドリブですか? 参りましたね」
「いいからっ」
 今度はニーナがウインクしてから、男装に戻ったクジュトを前に出すのです。そしてクーナハープをゆっくり奏でます。
「私の曲を聞いてクジュトさんがどんな舞を見せるのか興味あるわ♪」
 紡がれたのはジルべリアの牧歌。豊かな曲調。大らかな調べ。
 クジュトは、はっとしたように顔を上げました。ニーナは夢見るように旋律を奏でています。
「おおっ」
 聴衆が、驚きの声を上げて目を見開き、前のめりになりました。
 クジュトは大きく体を使って、時に遠くを透かし見るように。そんな動きをゆっくりと。
 ニーナの方は、ジルベリアの広く雄大な大地を懐かしむような瞳で、丁寧に。
 二人の見たものは違えど、聴衆にはその趣が伝わったようです。もしかしたら、穂先が波のようになびく広い穀倉地帯を連想したのでしょうか。見た物は違えど思いは繋がったようです。

「次はあたしの歌をきけーい♪」
 ウード「地平線の夢」を構えたティアが赤毛を振り乱し元気良く人差指を上げましたよ?
 弦を一つ弾いて、音質を聴いてもらってから、本格的に。ぽろんぽろんと短く弾むように、楽しく明るく。
 

晴れの時だけじゃない 雨の日だってある様に
ちょっぴり悲しい時 落ち込む時
思わず涙、そんな日もあるけれど

 広場全体を見渡し軽快に歌っていくティア。皆、曲に合わせリズムを取っています。
 と、ここでわざとストップ。音もぽろろんと元気をなくします。
 そして!


でも平気
止まない雨なんてない様に 涙なんて時期止まる
だって私にはいつだって 大切な友達たくさんいっぱい

 思わず義妹のニーナを見ます。今日は事前にきゃいきゃいとじゃれあいながら曲の運びの打ち合わせをしました。そしてクジュトも見ます。「あまよみ」で天気を見た結果から、この演出を打ち合わせしました。「ここから入るでしょ?」と目でサイン。クジュトも頷き、歌声を合わせます。ニーナも縦笛のツィンクで音を合わせます。くすっ、と笑ってレートフェティもパンの葦笛で合流。琥珀は陽州の片面太鼓「パーランクー」を叩いて軽やかに。キリエもこっそり自然にリュートで続いています。


ほら泣いてるなんてもったいないわ
手をとってステップ踏んで今日を生きて行きましょう♪

 クジュトに合わせサラファも出てきて、ステップステップ。
 歌詞は終わっちゃいましたが、サービスでもう一度メロディだけ繰り返し。
 おやおや。
 これで聴衆も「自分も歌ったり体を動かしたいな」な雰囲気になったようですね。


「それじゃ、最後は『春待ちの歌』を聴いてください」
 宝珠の指輪をつけた右手を口のそばに持っていき、レートフェティが言いました。彼女の柔らかい声も、宝珠のおかげでしっかり響きます。そして、発案者のティアにウインク。ティアは、前に陣取るサラファに頷きます。これに頷いたサラファがパッションサンダルを鳴らしてリズムを取りました。
――ととん、とととん!
 虎尻尾を揺らして叩いた琥珀の太鼓ですぱっとレートフェティのリュート、ニーナのガボットリュート、ティアのウード、キリエのセイントホルン、クジュトの琵琶が足並みそろえて入りました。


しんしん しんしん 降る雪の
静けさ 予感に 誘われて
瞼を閉じれば 夢にも見ゆる
煌き香るお花畑、ほら

冬間の白銀一色が
春の目覚めを鮮やかに
春の歓びを匂やかに……

 レートフェティが全身でリズムを取りながら奏で歌います。伴奏は対位法的なリュートで。右に結った長髪を躍らせて振り向いた先にはニーナが歌ってます。


待ち遠しいね 早く早く
でも今此の時があればこその夢

福寿草花の開く頃 温かな風の息吹、ほら……

 しっとりしたレートフェティとはまた違う、弾むような歌声。ニーナは今度は琥珀を見ます。


どんなに厳しい冬・続いても
必ず春は来るよ、ほら
春風に乗る春告草の匂い きっと届くから

 肩を揺らして全身で太鼓を叩く琥珀は、明るく元気良く。そして、キリエを見るのです。


雪は解け
長い冬は 終わりを告げる
さあ、共に歩み
共に歌おう
生きる喜び
生命の讃歌を

 おや。感極まったのかキリエは楽器を置いてバッとコートを脱ぎバラージスーツ姿になりましたよ? カスタネットでリズムを取りつつ生命の躍動を表現するように踊っています。
 そこに、サラファが合わせ、クジュトもやって来ました。


雪は解け、ほら
長い長い冬は 終わりを告げる……

 歌は終わりましたが、ここでニーナが観客の輪にに歩み寄ります。
「ほらほら♪折角の機会なんだし勿体ないと思わない? 手拍子だけでも立派な楽器よ♪」
 ニーナのウインクに誘われ、手拍子が再び巻き起こるのです。
「さあ、もう一回!」
 ここぞとばかりにティアが声を張るのでした。
 というわけで、さあ、合作の歌を皆さんもう一度ご一緒に♪


「これが異国の楽器か〜」
「私も将来吟遊詩人になるっ!」
 楽しかった合唱を終え、一座の予定の公演は終わっても広場の熱気は醒め止みません。
「次こーいう曲やるんだけど、やりたい奴いたら一緒にやろーぜー」
 琥珀が聴衆の輪に入って、個別で歌をうたっています。旗を持っての踊りも披露し始めたり。
「どう? これなら知ってる曲でしょ?」
 レートフェティも広場を回って、主に子どもたちと触れ合っています。
「皆、大好き! ありがとう!」
 ティアは演奏を終えてノリノリで手を振っています。踊ったサラファもにこやかに手を振っています。
「ハッ!」
 キリエは、クジュトと手を取り、時に腰を抱く様に手で支え二人で情熱的なダンスを披露。
「ふふ。最初に会った頃よりずっといい顔するようになったのね♪」
 ニーナはクジュトの様子を見てニコニコ笑顔。後で問い詰めてやろうと思っていたり。

 そして、広場の隅っこ。
「……話題を呼んで結構広範囲から人は集まってますが、用事のある人はやっぱり急ぐ。陽動としては気休め程度ですかね?」
 ミラーシの仲間を遠くで見ながら、一歩引いて影響を調べていたもふら面の男は結論付けました。
「ま、派手で華やかですからいいんですけどね」
 面で表情は見えないが、微妙に肩が揺れています。
 楽しそうににこやかに笑っているのでしょうね。