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■オープニング本文 ※注意 このシナリオはIF世界を舞台とした初夢シナリオです。 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。 ●これまでのお話 シエラ・ラパアナは超時空船――オォラシップ「グラン・ラガン」の若き女性艦長である。 どこから来たのかどこへ行くのかは誰も知らないが、西暦で数えられる世界の歴史が捻じ曲がりそうなのを感知。このねじれ解消に奔走している。 もっとも、西暦1945年4月にあった戦艦大和の海上特攻への手向けや同年8月の呉軍港空襲から空母を守るなどその行動はささやかなものでしかなかったが、呉軍港空襲の後、人外――帝国陸海軍はこれを妖禍使(あやかし)と命名した――が呉市街で暴れているのを感知。 「この世界の者ではない何者かが、歴史を捻じ曲げようとしている」 大幅な歴史の変更に一連の戦いの転換点を見た。 「超時空渡航者が大幅な世界干渉をするのはご法度。このままでは私に大幅干渉の嫌疑がかけられる。異変現象を鎮圧しつつ、一連の騒動の黒幕を探す」 シエラの決意である。 黒幕探しはシエラが直接指揮を執るため、異変の鎮圧は別の者に頼る必要がでてくる。 「敵は、帝国陸海軍の命名するところの『妖禍使(あやかし)』(以下、あやかし)。退治は天儀暦で数えられる世界にいる同様の存在『アヤカシ』の退治に精通している開拓者に頼むのが適任であろう」 シエラは、呉市街地の新たな展開に、またも開拓者を雇う決意をした。 そして、地底へと妖禍使退治に向かった開拓者たちは見た。 密かに新型戦艦が建造され、地底湖に潜行していくところを。 その後、地上。 シエラ・ラパァナは見る。 海から、開拓者たちの見た新型戦艦が姿を現し、空へと浮上する姿を――。 ●グラン・ラガンにて 「よし、開拓者が到着したか。早速、この先にいる敵万能戦艦を撃沈して欲しい」 シエラ・ラパァナは到着した開拓者を振り返り今回の目的を話した。 「しかし、海上だぞ? その万能戦艦は潜水能力を持つと聞く」 海中に逃げられたらお終いだぞ、とある開拓者は意見した。 「それについては帝国陸海軍から、陸地に追い込み沈める許可を得ている。あとの情報操作は帝国軍に任せるしかない。我々は確実に陸地に追い込み敵の撃破を見届けるように戦えばいい」 この点については、敵右舷に攻撃を集中すれば陸地側へと簡単に追い立てることができそうだ。 「シエラ艦長、敵に補足されました!」 「敵戦艦、艦底部から戦闘機を射出しています。……ああっ! あれはオーバーテクノロジーの有翼可変戦闘機!」 「なんだって!」 次々入る報告に、シエラ艦長が声を荒げた。こちらの開拓者はグライダーや龍、陸戦用のアーマーなどをそろえているだけだ。空陸とも戦える可変有翼戦闘機に対して不利になるだろう。 「くそっ。こうなればこちらも真オォラ力を解放するしかないか。……誰か、歌はうたえぬか?」 数名が挙手する。 「よし。今から私がグラン・ラガンを覆う雲『龍の巣』を解除し手本を見せる。皆、甲板へ」 移動すると、グラン・ラガンを隠していた雲が晴れた。 そして、シエラが歌う。 するとっ! 「ああっ。俺の龍が!」 「私のグライダーが!」 何と、開拓者の連れて来た朋友が有翼可変戦闘機や合体変形戦闘ユニットに姿を変えているではないかっ! 「これが真のオォラ力だ。誰かがこの甲板で歌っていれば、この歌声が届く限り、オォラ力を消費することなく存分に戦うことができる。ただし!」 ここで改めてシエラが語気を強めた。 「敵の攻撃を喰らうとオォラ力が減少するのは今までと変わらんぞ。また、私の補助によって生じる真オォラ力を解放する歌は、歌い手のオォラ力を消費する。誰か戻ってくるなどして交代で歌い、できるだけ長く戦えっ」 こくりと頷く開拓者たち。 その背後ではもう、敵の可変戦闘機が迫っている。 「よし、総員出撃! 生きて帰れとは言わん、死んで来いっ!!」 ばっ、とマントを翻し腕を差し出すシエラ。 最終決戦への出撃である。 |
■参加者一覧 / 羅喉丸(ia0347) / 天河 ふしぎ(ia1037) / 礼野 真夢紀(ia1144) / 巴 渓(ia1334) / 新咲 香澄(ia6036) / からす(ia6525) / 村雨 紫狼(ia9073) / シルフィリア・オーク(ib0350) / ティア・ユスティース(ib0353) / ミーファ(ib0355) / 无(ib1198) / アナス・ディアズイ(ib5668) / ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905) / ナキ=シャラーラ(ib7034) / にとろ(ib7839) / 岳(ib8608) |
■リプレイ本文 ● 「スクランブルだ、急げっ! オーバーテクノロジーの有翼可変戦闘機『ワルキューレ』はこの時代の零式などと違い、一気に来るぞっ! ……歌い手はどうしたっ。真オォラ力で真の朋友の力が解放されると、途切れても元の姿には戻らずオォラ力が自然減少するぞっ」 グラン・ラガンの甲板でシエラ・ラパアナの声が響く。甲板では発進の準備に人が行き交い声や足音が入り乱れている。 「準備できました」 「風天が……。私に先発しろというのか? よし!」 朋友の駿龍「風天」の変化した姿に唖然としていた无(ib1198)は、甲板員の指示に従いコクピットに収まった。 「隻腕の機械だね……。隻腕を持つ、前進翼の戦闘機」 「ピピッ……。ハイ、ソノ通リデス」 機体下部の単腕が特徴と見た无の呟きに、計器横のスピーカーから電子音で返事があった。 「では射出します。グッド・ラック」 「ピピッ。発進」 「うおっ!」 无が操縦桿を握った時、外から甲板員のゴーサインが出た。そして風天が独自判断で発進する。ガツン、とくる射出と加速にぐっと顔をしかめ耐える无だがすぐに落ち着いた。 「私の役目は……。確認、装備は?」 「ピピッ。SHARP、ESM等各種格納型偵察装備、空間受動感知器、『隻腕』」 「戦術偵察機……ね」 風天改め隻腕の説明に、ふうんと小さな丸い鼻眼鏡の奥にあるつり目が細められる。すぐにいつもの知的な輝きを取り戻した。 「なら、役目を全うするまでか……」 きゅん、と機体がまるで一瞬墜落したかのように曲がり敵戦闘機との想定遭遇ルートから外れる。前進翼ならでは高速運動性だ。このまま迂回しての敵戦艦接触を狙う。 一方、グラン・ラガンの甲板。「カタパルト戻せっ!」などまだまだ忙しい。 そんな中で。 「よしっ。まずは僕が」 「頼んだぞ。真オォラ要員、配置につけっ!」 天河 ふしぎ(ia1037)がマイクを持つと黒いセーラー服の大きな襟をなびかせステージへ急いだ。間髪入れずにバックに指示を出すシエラ。ばたばたと艦内からエレキやドラムのメンバーが駆け出しステージに着いた。 「よし、行くよっ。ワン、トゥ、ワントゥスリーフォー」 そろったバックバンドをくるっと振り向いてから、軽やかなステップで正面を向くふしぎ。 ――ズッギャ〜ン! そして爆音と共にスパッと決まるイントロ。ふしぎが瞳を伏せてすうっと息を吸う。 「ドリーム・フライ!」 ♪急げ加速だ風を切れ ステキな夢が消えない・ように 雲が流れる青い空は キミとボクとのデート・コース…… 顔を上げ瞳を見開く。ふしぎがタイトルを叫んでから曲に入った。両手で抱き締めるようにマイクを包んだと思うと左手を広げたり。そしてダダン・ダダダダ、と激しく刻まれるビートに乗って次々飛び立っていく開拓者たち。 「へえっ。乗ってるじゃない、ふしぎさん」 にやりと背中越しに振り向くのは新咲 香澄(ia6036)。いま、いつもの滑空艇から鈍色に輝く有翼可変爆撃機に姿を変えたシャウラのコクピットに収まる。 「さて、呉軍港ではお世話になったねっ! 今回も頑張らせてもらうよっ!」 ゴー、と甲板要員が親指を突き出し急加速。爆煙を引いて一気に空の風となる。 「シエラ艦長、歌い手はステージでないとダメなのですか?」 香澄を見上げていたシエラに声を掛けたのは、黒曜石のように青黒く輝く黒髪の吟遊詩人、ティア・ユスティース(ib0353)だ。後ろには同じく金髪の吟遊詩人、ミーファ(ib0355)がいる。 「そんなことはない。……ふふっ、いい相棒に恵まれているようだな。見ろ、主人に言われるまでもなく、二頭の龍は大きな反響板を備える重装音楽戦タイプと機動音楽戦タイプのワルキューレに変化しているようだな。アレに乗っていれば戦いながら歌える」 「フォルトっ!」 「ミューズまで……」 シエラの言葉に改めて甲龍・フォルトと駿龍・ミューズを見るティアとミーファ。他の機体と違い、流れるような流線型を描く翼が何枚もついている。自分達への思い遣りに感激した二人は思わず互いに視線を合わせ、掲げた手をしっかりと組む。 「いいか。歌い手だけはオォラ力を消費するので長くはもたない。誰かが歌い継ぐことになるが、二人はしばらく歌声を温存し、敵戦艦に出来るだけ接近するのだ。そこまで駒を進めて、改めて大規模攻勢に出る。頼むぞ」 期待を掛けるシエラに、こくと頷くティアとミーファだった。 ● もちろん、他の開拓者も次々と飛び立っている。 「よし。行こう、舞華」 元滑空艇「舞華」のコクピットに収まったからす(ia6525)が、甲板員に親指を立てて合図した。いま、カタパルト射出。有翼可変戦闘機の垂直尾翼にはちゃんと滑空艇の翼にも描かれていたからすのゆるい感じの似顔絵が描かれている。 「まあっ、鈴麗。甘えん坊さんのあなたが……」 口をあんぐりと開けて駿龍「鈴麗」の変身したワルキューレを見るのは、礼野 真夢紀(ia1144)。朋友はちゃんと、勇ましく銀色の機体に姿を変えていた。 「ですが、ちょっと体が大きくないですか?」 実際、他の機体より厚みがある。運動性は低そうだ。 「まゆちゃん。不安なら援護してあげるから、急いで一緒に行きましょう」 きりりと長髪を後ろで束ねて走ってきたシルフィリア・オーク(ib0350)が励ます。この一言で真夢紀の不安は吹き飛んだ。いつも一緒の、頼りになる姉の友人がいる。これ以上の安心感はない。 「よし。それじゃ、シルフィリア・オークと駿龍・ウィンド、出るよっ」 ぴしりと言ったシルフィリアに、ゴーサインを出す甲板要員。彼女のワルキューレはすでにスタンバイしている。すぐに発進し、きりもみから急上昇。すでにここまで来ていた敵の射撃をかわしつつ、真夢紀の安全な離陸のため囮となった。 「間に合わん。こっちは通常離陸させてもらう」 甲板で叫んだのは、羅喉丸(ia0347)。甲龍の頑鉄は有翼可変戦闘機というより鋼の龍の形をしている。 「拠点防衛に必要なのは速度じゃない。旋回能力と格闘能力だ」 羅喉丸、コクピットに納まるとそのまま上昇。グラン・ラガン付近の制空権確保に特化した機体でシルフィリアを追った敵機にバルカンをばら撒く。下では真夢紀が無事に離陸し、これに戻ってきたシルフィリアもついて敵戦艦へと向っていった。 そして、格闘能力重視は羅喉丸だけではないっ! 「おっ。俺のほかにも駆鎧で来たのがいるな」 「戦う場所が変わっても、戦う方法は変わりません」 戦闘服姿で仁王立ちしつつ、似た者を見つけニヤリとするのは巴 渓(ia1334)。その視線の先にいたアナス・ディアズイ(ib5668)は落ち着き払ったまま、朋友のアーマー「ゴールヌイ」を見上げる。他の機体とは違い、すでに人型形態をとって甲板に立っている。手には雄々しく菱形の盾が握られた、拠点防衛用機体だ。 「そりゃそうだな。……それじゃ、俺も」 渓の見上げる先には、白いフレームに赤い装甲の人型形態の機体がそそり立っていた。その名も「覇王神騎ゴッドカイザー」ここにあり。 早速それぞれ搭乗する渓とアナス。 「新型機のお披露目には派手でいい……。カイザァァウイィィングッ!!」 ずっぎゃ〜ん! とエレキのビートが走る。 そして、カイザーとゴールヌイの背中の翼が開いた。すぐに飛翔。アナスはどん! と前に加速して出て敵のバルカンを盾で防ぎ、垂直気味に出た渓が射撃後すり抜け離脱しようとする敵戦闘機をトマホークでぶった斬る! 「今なら出れますっ!」 「あのデカブツを潰しゃいいんだな? 任せとけ!」 甲板員の叫びに呼応しごごご、と後部エレベーターから姿を現したのは、白く燃える頭部の鬼火玉に同じく白い全身タイツのマッチョボディ。鬼火玉「近藤・ル・マン」が真の姿は「グレート近藤」だっ! 「行くぜ近藤!」 コクピットのナキ=シャラーラ(ib7034)が叫ぶと、ばふぅ、と近藤の背中から白い炎の翼が噴出。そのまま空へ飛んだぞっ。 「こちらもいけます。パイロット、よろしいか?」 「もちろんだよっ。あたいとダイちゃんの力見せてやる!」 エレベーターからまたトンデモなのが姿を現したっ。 今度は直立する一本の白い巨大大根だ! 「これがあたいの大根王! 『ダイちゃん』!」 密閉コクピット内で操縦するは元気でちっちゃな女の子、ルゥミ・ケイユカイネン (ib5905)。つぶらな青い瞳は、縦のままずぎゅーんと発進する巨大大根の理不尽さとか物理法則無視っぷりとかにひとかけらの遠慮もないッ。これぞ戦う女の子っ。ダイちゃんもルゥミのノリの良さが分かるのか、白い地肌に浮かぶ顔がい〜い笑顔になっている。特に口の両端の上がりっぷりがもう、なぜにそんなに気分が良いのかと突っ込みたくなるほどに。 ともかく、本格的に交戦が始まるのだった。 ● さて、最前線。 「雑魚の相手はあたいらに任せなっ!」 ぎゅん、と袈裟に切り裂くようにシルフィリア機が戦場を横切った。高速移動からの攻撃「ブラインド・アタック」だ。 「助かるよっ。できるだけ轟天にぶちかましたいからねっ!」 「助勢する」 香澄は振り返って感謝すると、付きまとっていた敵機を弐式加速で振り払う。からすもこれについていく。 「露払いは私達に……。まゆちゃん?」 「きゃあっ!」 シルフィリアは若干動きの重たい真夢紀を気遣い旋回する。 「鈴麗……。私達の攻撃が通用しない?」 涙を浮かべ悔しがる真夢紀。シルフィリアを援護しようとバルカンをばら撒いたものの、妙に効きが悪い。そればかりか敵からの猛攻を受けてしまった。真オォラ力のおかげで被害は軽微だが、シルフィリアに心配されてしまう。それが申し訳ない。 その頃、无は。 「む。敵の第二波か。……偵察の限度だな」 主翼を前進翼から後退翼に切り替え、スラスターのある脚部を出し滞空しながら気流探知や无自身のハイパー技強化による人魂探知で偵察任務をしていた。電子妨害しつつ雲に隠れながらだったが、さすがに敵戦闘機が出で違う角度から見ればあっさりと視認されてしまう。二機が寄って来た。 「囮には手を出さないよ」 高速飛行で囮の一機をやり過ごすと、機体下部の隻腕を出しもう一機を鷲掴み。投げ捨てる反動を利用して高速離脱をするのであった。 「ぬうっ。攻め手が足りぬか……」 グラン・ラガンではシエラが戦況を見つつ歯噛みしていた。 「ふしぎも出ろっ。中間空域の確保急げ。ティアとミーファの音楽戦タイプを楽にしてやれ」 「時も頃合い……X3出る」 ライブを終えたふしぎは、自らの駆鎧「X3『ウィングハート』」に登場し、翼を広げ空へ舞う。 「はいー。そういう事で! ミーア、出番だ」 代わってステージに村雨 紫狼(ia9073)が立つ。 『えー、このままですかー。せっかくミーア無敵城Z計画とか期待したのですー!!』 ミーアさん、Zはさいきょうのロボットに贈られる称号ですよ? 「あー。そういうバトル的要素はみんなに任すんで! ミーア、俺と合体だ!」 『えー!? そ、そんな〜。ミーア、赤ちゃん出来ちゃうのですう☆』 「危ないネタすんな、紫狼!」 ちなみに会話はオォラ力で全員に筒抜けなので、全員から突っ込みを受ける。なぜか問題発言を口にしたミーアではなく紫狼の方に。 「ちがーう! とにかく不思議パワーで融合合体!」 必死に弁明すると、一本の光の柱が天まで届けとばかりに甲板から発せられた。 そしてその閃光が収まると。 「合体、フリフリアイドル伝説ミーア☆」 何と、生身となり人の大きさになったミーア一人が立っていた。ふりん、と腰を振ってアイドルドレスをひらめかすと水平ピースサインでウインク☆。 「あーでも思考のメインは俺だからな」 「気色悪いことすんな!」 またも全員から声だけ突っ込みが。 『ミーアもいるのですー。二重人格的ポジなのです☆』 「エネルギー補給は任せろ、いや任せて☆。さあ銀河に響け、あたし達のヴォイスッ! あたしたちの歌を聴けーーーッ!!」 人差指を高々と上げフリフリスカートのシルエットも手伝い奇麗なAラインで決めてみせるミーア。背後ではステージ効果の花火が派手に火花を散らす。ギュイィ〜ンとエレキのビートが走り出すッ! ♪モーニン、モーニン、ちゃんと起きてる? 寝ぼけ眼にパトリオット 計器がギュンギュン気分は上昇 ほらほら私を捕まえて…… 「甘みのある歌だな」 甲板を狙う敵の前にばさり翼をはためかせ頑鉄で立ちはだかる羅喉丸が微笑する。龍形態の口から大口径バルカンをばら撒き敵を屠っていく。 「ちっ、気分良く歌を聴いてたのによ」 渓は敵戦艦に急行していたが、中間空域で敵に阻まれていた。こんなところで足止めされるかとばかりにゴッドカイザーを振り向かせ……。 「喰らいやがれッ! カイザァァビイィィムッ!」 ぐばりと両腕を力強く開くと胸部に輝く巨大な緑色の宝珠が輝いた。 そして敵まで一直線。ぼふぅ、と爆炎を上げ一機墜ちた。が、それは確認もせず背を向け轟天に急ぐ渓だった。 ● その頃、いつだって寝ぼけ眼のにとろ(ib7839)は。 「……コレはぁ何にゃんすかねぇ?」 機銃がどばばばっ、と着弾し甲板員が退避したり発進作業に走り回っている甲板で、ぼぉんやりと首を捻っていた。 「鬼火玉のストラディバリウスがぁ変わった物ではぁ、あるにゃんすがぁ」 にとろの目の前には、四角い箱型の機械がどどん、と置かれていた。結構でかいがにとろの肩の下辺りまでしかない。どう見ても搭乗型のマシンではないのだが。 「この蓋が乗り口?」 上部が開閉式になっていることを見抜いたにとろであったが、そこはガラス張りだった。 「にゃにゃ? 蓋の裏に説明がぁあるにゃんす」 ふんふん、と書かれたとおり原稿の表面を下にして蓋を閉じ、大きなスタートボタンを押してみる。 ――がしゃ、がこー。 「にゃんと、コレはぁ紙に書かれた物をぉ別の紙にぃ、それも何枚にも写せるぅ便利機械にゃんすねぇー」 下から出てきた紙には、設置した原稿と同じ「あぁ面白い! 夢の直斗神拳道場」という文字が書かれていた。どうやら入門案内書であるらしい。がこー、がこー、とまだまだ紙は出てきている。オーバーテクノロジーのコピー機である。 と、ここで敵の射線が来た。 ばばっ、とストラディバリウスのコピー機に当たるが、今は真オォラ力発動中。少々ではやられない。 そればかりが、がこんと足元のA3用紙補充トレイが出てきたではないか。弁慶の泣き所を痛打するにとろ。 「痛いにゃんす……。にゃ? ここに足を乗せろ? にゃっ!」 ストラディバリウスに促されるまま両足を乗せると、ずどんと垂直上昇した。 「良かったにゃんすー。空飛ぶこぴぃ機ならぁ、戦艦にぃ行けるにゃんすー」 ああ、空に歓喜の語尾が飲まれつつ飛んでいくにとろ。シュール格好まま、きらりんと空に消える。 「やれやれ、これで全員出撃か」 これを見送って安堵の溜息を漏らすシエラ艦長だった。 ● 「それはともかく、中継地点はどうだ?」 シエラ艦長は声を張ってインターセプト組に呼びかける。 「落ち着きました。吟遊詩人形態に移ります」 ティアがフォルトを人型形態に変形させた。霊鎧で守りを固めたように雄々しく反響板を龍の翼のように肩の位置から包み込むように湾曲させ、防御と支援効果を高めている。 「ええ、こっちもいけます」 ミーファもミューズを人型に。こちらは駿龍の翼で回避を高めたようにスタイリッシュに、反響板を腰から広げる。面積が少ない分、良く動きそうだ。 しかし、この紫狼からティア・ミーファ組に歌い継ぐ一瞬の隙を敵に突かれた。 「ん? 歌が途切れると途端に敵の攻撃の効きがよくなるみたいだねっ」 同じ空域で戦うシルフィリアが敵ミサイルを被弾していた。通常のオォラ力効果で機体に損傷はないが、自身の気力――オォラ力ががっつり持っていかれた手応えがある。 が、それは一瞬。 すぐに気が楽になった。 「良かった。どうやら私の鈴麗は攻撃力はほとんどないけど、隣接する味方にオォラ力分割機能搭載みたいなんです」 「まゆちゃん!」 何と、真夢紀の鈴麗が近寄ってきている。鈍重そうな機体は補給機能搭載のためだった様子。人型になっても重そうだが、攻撃が通用せず消沈していた真夢紀の声は使命を見出し明るかった。自然とシルフィリアの顔を明るさを取り戻した。 そして、新手がすぐに迫っているぞッ! 「よ〜し、あんたらの相手はこっちだよっ、ちっとはあたいを燃えさせておくれよっ」 これで乗りに乗ったシルフィリア。ウィンドを人型に変形させるとビームソードを抜き放つ。 「グレイヴソード!」 叫んで一閃。スラリとした機体は見た目どおりキレのある高速接近を見せる。真夢紀を守るのだとばかりに前に出て、右に左に敵をぶった切る。さらにすぐさま戦闘機形態となり、急上昇。戦場をかく乱する。 ――きろりろり〜ん。 この時、ティアとミーファの脳裏に覚醒音が響き、お互いの姿を幻視することができた。 「ミーファっ……」 「ティア……」 視線を合わせ、呼吸を合わせた。 「私の……私達の歌よ、響け〜」 「重力の爆音」が二重奏で響いた。 これぞ音楽専用ワルキューレの威力。周囲の敵が見えない圧力に押し潰されずずんと大量爆発していた。さらにミサイルをばら撒く。不規則な弾道を描き最後に一点に集中着弾するさまは正にサーカス。 続けて、「剣の舞」で歌声を合わせる。ツインユニットだ。 ♪聞こえてますか聞こえています 私の愛はあなたのそばに 遠く離れて別の空でも 真っ直ぐ強く感じられます…… 「そうだ。信じて、自分を貫く」 からすの舞華が高空から急降下バレルロールで香澄の背後につけていた敵に光子バルカンをばら撒く。敵も硬いが、捻ると同時に煌いた光翼ブレードがすれ違いざま真っ二つに敵を料理する。 ずずん、と敵機の爆音を聞きにやりとするからす。次の獲物を探す。 「ありがとっ、からすさん。これで爆撃ルートに乗れるよ」 うるさい追っ手をこれで振り切った香澄はシャウラでぐぅ〜んと急上昇。歯を食いしばりGに耐えていたが、やがてふっと表情が緩んだ。 「もらった。くらえ急降下爆撃」 太陽を背に、一気に墜ちる。 「気付いてももう遅い」 香澄の突っ込み速度に轟天からの対空砲火は後手後手に回っている。ばら撒く機銃は香澄の速度についていけてない。 が、煙突状の部分からミサイルが飛んできた。サーカス弾道の誘導ミサイル群だ。いや、直進弾も混ぜてある。巧緻である。 「やるねっ。でも……」 機銃をばら撒きながら捻って直進弾をかわすッ。誘導の方はこの場面では役に立たない。置いてけぼりだ。 ♪私は歌う どこかの空で 戦う貴方に届いてと 貴方は叫ぶ 心に感じる 信じるものを守るため 「これがボクの全力、白狐だよっ!」 ティアとミーファの歌声を感じつつ、接触前とすれ違いざまに白狐を連発。ハイパー技で巨大化した九尾の白狐が戯れるように凶暴な牙を剥き、艦上施設を食いちぎって消えた。香澄の方は無傷である。 「やった! 第三艦橋と煙突状のミサイル発射口を潰したかッ!」 シエラ艦長の歓声が聞こえる。 「なら、俺は腹から攻めるぜ!」 敵艦底部では、ついにここまで到達した渓のゴッドカイザーがいた。すいっと右死角側にいったん消えると……。 「艦載機射出口を叩き潰してやる。敵戦力の食い止めと敵艦へのダメージ、二兎追わせて貰うさ!」 射出口から出てきた敵戦闘機にがっしゃーーっと肩ごと体当たりしつつ侵入成功。艦内で立ち塞がる人型の敵機とはトマホーク片手に格闘戦を展開する。 「よし。これは時間の問題だろう」 上と下の爆炎を見てからすが頷く。囮としてアクロバット飛行を繰り返し、敵三連主砲群などの砲撃を一手に引き付け無理をしていたのでいったん距離を置き始める。 その時だった! 敵艦・轟天が進路変更し、艦首をグラン・ラガンに向けようとしていたのだ。 ● 「……気をつけろ。敵艦首の大穴は、真の主砲だ」 轟天の様子に、中間空域まで戻っていた无が偵察で得た情報を叫ぶ。 そして、圧倒的なエネルギーの光条が空を一直線に切り裂くのだった。 「きゃあっ!」 「ああっ!」 ティアとミーファの悲鳴が響く。 「艦首下げろっ!」 グラン・ラガンで指示を出すシエラ。しかし、直撃は避けたものの大被害があった。 「次に直撃されたらひとたまりもありませんっ!」 「そんなことは分かってる。それより、歌声、どうした?」 声を張るシエラ。運よく敵の轟天砲に巻き込まれた味方機はいなかったが、ティアとミーファは態勢を立て直している。甲板にいた紫狼とミーアは今の衝撃で振り落とされ空の藻屑と消えていた。 「聞き心地は保証できませんので、そこはご容赦を」 この危機に、今まで歌い手を守る盾となっていたアナスが改めて身を挺すようにゴールヌイをグラン・ラガンの前に出した。 そして、自ら作詞した歌をうたい始める。 ♪我らの声よ、全てを祓う力を 我らが歌よ、護りとなりて全てを救い給え 風よ、滅びの振り子に抗う我らを奏でよ! 海よ、打ち寄せる絶望の波を砕く我らを数えよ! 「大丈夫ですか。ティアさん、ミーアさん」 「もう一発来たよっ!」 真夢紀が味方機にオォラ力補充をしている中間空域で、シルフィリアが叫んで振り向く。 二発目の轟天砲が来たのだ。しかも今度は戦場霍乱ではなく、グラン・ラガン狙いで。 そして、中間空域を無視して伸びる閃光。 「回避しろっ」 「無理です、艦長。しばらく直進のみしかできません」 ああ、万事休す。 「龍の姿はあくまで巡航形態。見せてやろう、修練の果てに我が五体に宿りし力を」 その時、羅喉丸が頑鉄を人型の戦闘形態に変形して轟天砲の前に体を入れたっ! 「破軍! そして天地に満ちる精霊の力も借り、今、渾身の……玄亀鉄山靠!」 羅喉丸、必殺の体当たりで相殺を狙うッ! 「おおっ。砲撃が……」 何と、光の百合が咲いたように轟天砲の光条が四散し背後に流れた。グランは無傷。守られた。 しかし、今の羅喉丸の技はハイパー技ではなくハイパー化。全オォラ力を使い果たし……いや、墜落しかけていたがまた態勢を立て直した。さすが気力の塊である。 「無茶はするものじゃないな」 無事だったことにきょとんとする羅喉丸だが、すぐにまた戦慄する。 「もう一発来たな……。歌は私が次ぐが……」 ♪陽炎は 黄泉に待たむと みちしるべ…… 无が尺八などに変わった演奏にのせて古き伝承をうたう。が、次の一発はどうしようもない。 「させませんっ!」 ここで凜とした声が響く。 真夢紀だっ。 「まゆ……ちゃん」 友の今日一番頼もしい声を聞きつつ、真夢紀の鈴麗を見るシルフィリア。 鈍重だった姿はさらに大きくなり、悪魔を連想させる真黒の人型機体に変形――いや、進化していたのだ! 「あたしはここまでです。すいません」 そして青白い光線を空中より出した三枚の盾で轟天砲を防ぐっ。 しかし、これは明らかなオーバーパワー。通常なら発動したが最後、気力大量消費で天儀の世界に強制送還されてしまうハイパー化だ。 真夢紀、三発目の轟天砲からグランを守り、ここで消滅。 これで開拓者達は――いや、全員が熱くなった。 ● 「グラン・ラガン、全速前進。接舷攻撃を仕掛けるっ!」 「艦長、そんな」 「舵が切れないなら突っ込むまでだ」 無茶なとクルーは思うが、戦う開拓者達も思いは一緒だった。 「艦首に攻撃を集中させてっ。今度はボクが囮になるっ」 シャウラの香澄が敵の対空砲を誘う。とはいえ急降下、急上昇を繰り返して的は絞らせない。 「もう一発? ……まさか六連発があるか?」 无がこの隙に轟天の横をすり抜けながらソニックブームを放つハイパー技「デッドリードライブ」で対空砲を叩くが、光った艦首砲を気にして振り返っている。 「墜とさせはせんよ」 からす、人型可変でアーマー「鳥籠」になるとスパイクシールドを展開。迫突撃で攻防一体攻撃をぶちかます。 ――ズドォォン! この一撃でわずかに艦首をそらした轟天。主砲は発射したが角度のずれで大幅に射線がズレた。 その、瞬間。 ――きろきろり〜ん。 「なるほど」 「おぉよ!」 「そうだね」 覚醒音が響き、からす、渓、香澄が同時に敵の弱点と攻略法に気付いたのだッ! 「ようし。……でも、ちょっと隙が欲しい」 ふしぎもちゃんと共有している。 が、攻め手が足りない。護衛の敵艦載機は主砲決戦と見て戻って守りを固めているのだ。 この時。 「必殺、近藤キック!」 白い機体が高速で飛んできて敵戦闘機に流星脚を見舞う。ぼぐぅ、と炎と化す敵機。 「飛び道具はねえが運動性はあるんだぜ」 白いタイツは正義の証。ナキと近藤、ただいま参上。 「あたいは砲術士だからねっ」 さらに直立浮遊巨大大根メカ、大根王のルゥミもやって来た。 って、ルゥミさん。頭上の葉を伸ばして回転する薙ぎ払い攻撃に砲術士らしさはあるんでしょうか? と、敵は大根王の下部に回り込み始めている。そこなら確かに葉っぱは届かない死角だ。 「ダイちゃん!」 何と、大根の先の毛を射出して下の敵を撃退したではないか。コクピットでは「ふふん」とルゥミがつるぺたな胸を張っている。確かに砲術士の強みである。 これで制空権も確保した。しかし、もう一つの問題が。 轟天の艦首がまた輝きだしたのである。 轟天砲、五発目だ。 ここで、きらりん☆と光り超高高度から戦艦に落下する機体がっ! 「うにゃぁぁぁ〜!? え〜とぉぉ必殺ぅぅメガトンこぴぃ機ぷれすぅぅぅ〜!!」 にとろのコピー機だ。コピー機といってもそんじょそこらの開発社製以外の類似機体ではなく、正真正銘のコピー機なのでよろしく。 ともかく、無駄な行動が一切ない分速いし鋭いッ! がすーっ、と自爆スープレックスよろしく艦首にハイパー技で脳天逆落としするにとろ。ハイパー技なので破壊力抜群で、それでいて自機に損傷はない。 これでまたも射線がそれて発射された光条はグランにかすりもしない。手柄である。 「よし、月は出ているね……僕に、力を」 完全にフリーとなったふしぎが、背中に4枚の白き翼を生やしたX3で力を溜めている。 「あの時見た戦艦との決着、ここで付ける……。歴史を護って過去未来、正しい歴史の守り神なんだからなっ!」 そしてッ! 「ムーンプリズム力(ちから)充填率120%……必殺のムーンキャノンだぁぁぁっ!」 マスケット「アーマーキラー」の変じた巨大銃を肩に構え、月からの力をX状の翼に受けて、大光量の射撃を轟天砲射出口にぶちかました。 「そう。全てを司る第一艦橋と轟天砲発射口を潰せば終わるよ……」 共有した意識を口にするからす。 ムーンキャノンは轟天砲破壊には至らなかったが、次の一発までの時間は確実に稼いでいた。 「行くぜ、内部破壊だ!」 敵機射出口を潰し出てきた渓が、今度は轟天砲を内部破壊すべく発射口から奥深くへと侵入した。 「もちろん、撃たせないよっ!」 香澄はここが勝負とハイパー化。ついにここで人型決戦兵器形状に変化した。 「さぁ、最後の力をみせてやるっ!ぶっ潰れろーっ!」 白狐のオォラを纏い、ぐばりと口を開け暴走化。第一艦橋を齧りとって、いつもの白狐が消え去るように存在がなくなった。 そして、轟天砲内部。 「全ての力を凝縮した破壊光球を発射だ! カイザァァッ! サアアンシャアァイイインッ!!」 胸の宝珠が異常なほど煌きハイパー化したっ。そのまま砲身奥にある轟天エンジンに向けて特大破壊光球をぶっ放す。 「何っ!」 しかし、ここで管制は第二艦橋に。轟天砲も六発目が発射となる。 どうなるっ! ● ――ズズゥン。 見事、砲身内で大爆発。渓はもちろんハイパー化で消滅している。 「やった!」 重なる声。 だがまだ轟天は落ちていない。黒煙をもくもくと巻き上げながらも三連主砲をグラン・ラガンに集中している。 ここで、声がした。 「諦めたらそこで終わり……。諦めない限り、歌は……想いは……きっと皆の心に届く。最後まで歌い続けましょう」 「私達は歌う……希望の歌を。私達は奏でる……明るい明日を。全ての世界の生きとし生けるすべてのモノへ……」 ティアとミーファだ。吟遊詩人ユニット、未だ健在。 そして、二人の声が合わさる。 「届け、輝ける一筋の光明、希望の旋律よ」 改めて、ピアノの奇麗な旋律が流れた。 ♪風よ、滅びの振り子に抗う我らを奏でよ 海よ、打ち寄せる絶望の波を砕く我らを数えよ 我らよ。絶望に歪められた世界をこじ開けよ 己の心の声を信じ、叫び、揺るがぬ意志で、 新たな世界に我らを紡げ アナスの歌だ。 勇ましい曲調から世界を包むような優しい旋律に変わっている。 敵からの三連主砲。 「させませんっ」 これは突っ込むグランの前にいるアナスが盾で防いだ。もちろんアナスも歌っている。 「まだだ。まだ、俺の命はある」 羅喉丸も砲撃を防ぐ。やはりハミングで歌に付き合っている。 「いい歌だね」 からすも戻って盾となる。もちろん歌っている。 それだけではない。 シルフィリアも。 にとろも。 シエラも乗組員も。 全員の歌が響く。 そして、突っ込むグラン・ラガン。このまま体当たりで止めを差すつもりだ。 もちろん、これに気付いて轟天は逃げようとする。 「させないよっ」 「よぅし、ぶちかますぜ!」 きろりろり〜ん、とルゥミとナキが覚醒して目を合わせる。 「攻撃も移動もできないけど超硬質に。大根棒!」 「こっちはゴールデン近藤だぜ!」 おおっ、ダブルハイパー化だ。 顔が必死の形相になった大根王改め大根棒を、いま、白いタイツ姿から雄々しく金色に輝く姿に変化したゴールデン近藤ががしりつ掴む。 そのまま大根棒を振りかぶりつつ急上昇。 太陽を背にすると、勢いよく急降下だ。対空砲火は全てグランに行っている。しかもそれは開拓者が壁となって防いでいる。大チャンスだ。 「『大根棒・護国芙蓉落とし』だぜ!」 渾身の一撃! 見事、第二艦橋をぶち壊す。 そして姿を消す大根棒とゴールデン近藤。ありがとう、そしてさようなら。キミの有志は決して色褪せることはないだろう。 「やるにゃんすね〜」 敵甲板で、先ほどの突撃でぶっちらかった入会案内コピーを集めていたにとろが歴史の証人である。 「にゃっ!」 そして振り返り目を見開いた。 グラン・ラガンと残りの開拓者が一つの光の球となって突っ込んできたのである。 もう、全ての艦橋を破壊された轟天にこれを避ける術はない。各個に砲撃して止めようとするが、オォラ力の巨大砲丸となったグラン・ラガンに対しては豆鉄砲でしかない。 そして――。 ● 『マスター。どちらも大きな光になって消えてしまったです』 大きな光から離れた場所に、アイドル衣装のミーアが妖精の羽根をつけて浮かんでいた。最初にグラン・ラガンが轟天砲を受けたとき甲板から放り出されていたのが幸いしたのだ。 「ああ。シエラが消えた以上、俺達ももうすぐ消えることになるがな……」 『なんだか、さみしいのです』 くすん、と鼻をすするミーア。まさか全員消滅することになるとは思わなかったのだ。 「どのみち、この世界にはいちゃいけない存在なんだよ。……さ、俺達も帰るぞ。天儀に帰って……」 『また、あ〜んなことやこ〜んなことをするですねっ!』 「まーそーいうこったなー」 いつもの調子に戻った紫狼の意識にミーアはほっとしつつ、スカートの裾を翻し消えるのだった。 時に西暦1945年8月15日、大日本帝国は連合国のポツダム宣言受諾を国民に向け放送。長かった戦争が、そして誰に知られることもないであろう戦いが、終結した。 シエラ・ラパアナの行方は誰も知らない。 |