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■オープニング本文 ●東房の片隅で 熱い茶を一口啜ると、雪がちらつき始めた庭へと目を遣った。 「1年が終わって新しい1年がやって来る‥‥。毎年繰り返されている事ですが、こうして新しい年を迎えるのは感慨深いものですね。新しい1年、皆が幸せに穏やかに暮らす事が出来るよう、私は祈らずにはいられません」 彼の呟きに、茶菓子の用意をしていた僧がくすりと笑う。 「そのお言葉も、毎年のことでございますね」 「そうでしたか?」 首を傾げた青年に、僧は頷いた。 「ええ。天祥様のそのお言葉を聞かねば、年が明けた気が致しません」 「‥‥。そんなに?」 いつもと変わらぬ年末年始の光景。 ‥‥になるはずだった。 「心配せずに親孝行をして来て下さい」 「しかし」 何度も頭を下げる僧を安心させるように、天祥はにこやかに笑ってみせた。 僧の老いた母が体調を崩したということで、急遽、里に戻る事になったのだ。 由緒ある古刹とはいえ、預かる天祥自身が慎ましやかな生活を好んでいる為、下働きの下男が数名と天祥が身の回りを任せている僧だけという寂しい寺である。 くわえて、年末年始ということで下男達にも休暇を与え、寂しいを通り越して人の気配が途絶えた寺と化している。 「お1人となりますと不用心ですし、せめて下男を呼び戻されては」 「家族との一時を邪魔したくはありません。本当に心配性ですね。大丈夫ですよ、1人でも」 楽しげに笑う天祥とは対照的に、僧の顔色は悪い。 親の事はもちろん心配だ。しかし、天祥を1人で寺に残す事も激しく不安だ。 なにしろ、彼は湯を沸かす事も出来ない生活不能力者なのだ。 (戻って来た時に寺が無かったら‥‥。い、いや、いくら天祥様でもそこまでは‥‥でも、行き倒れている可能性も‥‥) 怖い想像に、どんどん血の気がひいていく。 「あ、あの、天祥様っ」 はいと穏やかに問い返す天祥に、彼は縋りつくようにして懇願した。 「ギルドに! 私の代わりに開拓者に依頼して頂けませんかっ!?」 それは、断るという選択肢を叩き折る程に悲痛な叫びであったという。 ●初めての 家族の記憶はない。 物心つく前から側にいたのは寺の者達だけ。 皆、とても大切にしてくれたから、家族がいないと嘆く事はなかった。 それでも1年のうちの何日か‥‥彼らには自分が入り込む事が出来ない大切な人達がいる事を思い出す時があった。 「けれど、今年は‥‥」 開拓者ギルドに出した依頼。 寺の者がいない間、彼らに代わって自分の側にいてくれる開拓者達と、どんな年明けを迎える事になるのだろうか。 ほんの少し浮き立つ心に、天祥は顔を綻ばせたのだった。 |
■参加者一覧
香椎 梓(ia0253)
19歳・男・志
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
橘 天花(ia1196)
15歳・女・巫
海月弥生(ia5351)
27歳・女・弓
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
セフィール・アズブラウ(ib6196)
16歳・女・砲
二式丸(ib9801)
16歳・男・武
オリヴィエ・フェイユ(ib9978)
14歳・男・魔 |
■リプレイ本文 ●孤独 その寺に到着したのは、夜も更けた時刻だった。 アヤカシの害が多い東房では、日が暮れてから出歩く者は少ない。深夜ともなれば夜廻りか、陽の下を歩く事が出来ない者達が足早に過ぎて行くぐらいだ。 しかし、そんな土地柄的、時間的事情を差し引いても、寺は静か過ぎるような気がした。 「ここ、なのか?」 呟きながら、二式丸(ib9801)は木扉を押してみる。それは、呆気なく開いて彼らを中へと招き入れた。 「本当に、ここで、あってるのか?」 「大丈夫です! 多分‥‥私の記憶が確かなら‥‥でも、あの時は明るかったので‥‥」 胸を張った橘天花(ia1196)の言葉が、段々と小さくなっていくのは何故だろうか。 ‥‥と思ったが、あえて聞かぬのが二式丸の優しさである。「そうか」と小さく相槌を打って、寺の中へと足を踏み入れる。 「なんだか、音さえも吸い込まれて行くような静けさですね。人が住んでいるとは思えません」 灯りもなく、人の気配もなく、ただ木々が寒風に揺れているだけの境内を見回して、オリヴィエ・フェイユ(ib9978)はきゅっと眉を寄せた。 「寂しい‥‥」 不意に胸に迫って来た感情が口をついて出る。 慌てて、オリヴィエは足を止める仲間達を振り返った。 「あの、今のはその‥‥」 分かってる。 くすりと笑って、オリヴィエの頭に手を置いたのは海月弥生(ia5351)だ。 「あたし達の役目は、ここを賑やかにすること。そうでしょ?」 「‥‥はい」 仲間の温かさがほんのりと伝わって来る。その温もりが心に兆した寂しさを拭ってくれるような気がして、オリヴィエは安堵の表情を浮かべ、弥生に頷き返した。 「ですが」 彼らの傍らに音もなく歩み寄って来たセフィール・アズブラウ(ib6196)が言う。 「依頼人は、この寺で新年を過ごす人が何かしでかさないかと心配している様子。‥‥その天祥様とやらは信頼されていないのでしょうか」 抑揚無く語られた言葉に、彼らは考え込んだ。 確かに、依頼の内容は天祥と共に新年を寿ぐ事と、彼が問題を起こさないかと心配だから面倒を見てくれという二面を持つ。 「天祥様は落ち着いた、お優しい方ですよ。何かしでかすだなんて、依頼人さんの誤解です」 清々しく言い切った天花に、二式丸は視線を泳がせた。 依頼で長く同じ場所にいた彼は、色んな話を伝え聞いているのだ。 「ま、まぁ、とにかく、天祥さんを構いつつ、年越しを過ごせば良いのよね。大丈夫よ、きっと」 場を取り纏めるように弥生が明るく仲間達を見回したその時に、柚乃(ia0638)が小さく声を上げた。 「どうかしましたか?」 尋ねたフレイア(ib0257)に、柚乃は暗い回廊の片隅で、柱に身を預けて佇む人影を指差す。どこか寂しそうな面持ちに声を掛けるのが躊躇われて、フレイアと柚乃は互いに顔を見合わせたのだが‥‥。 「あら、天祥じゃない!」 柚乃の肩口から顔を出した管狐の伊邪那の素っ頓狂な声が、静かな境内に響き渡った。 「皆様、お着きだったのですね。お出迎えもせずに申し訳ありません」 ゆっくりと視線を巡らせて、天祥は微笑みを浮かべた。 「いえ、こちらこそ勝手に入らせて頂きまして」 ばつが悪そうに言葉尻を濁し頭を下げたフレイアに笑みを深め、一歩踏み出した天祥の顔に、勢いよく飛び付いた伊邪那が激突する。小さな、しかし歴とした朋友である管狐の一撃に、天祥はそのまま背後へと倒れ込んでしまった。 「‥‥‥‥」 突然の事に、言葉もなく立ち尽くす。 いや、ある程度の予測はしていた。しかし、さすがに管狐と正面衝突してひっくり返るのは想定外だ。 「‥‥天祥様、お怪我は?」 真っ先に我に返ったのは、「起こり得る事態」について最も正確に予見していた二式丸だ。なんとなくだが察していた分、衝撃が少なかったらしい。倒れた天祥を抱き起こして、怪我の有無を確かめる。 「完全に目を回していますね」 同じく目を回して地面に転がっていた伊邪那を拾い上げて、香椎梓(ia0253)がふぅと息をついた。 「以前、少し調べさせて頂いた事がありますが、何というか‥‥興味深い方ですね」 途中から艶を増した梓の声に、二式丸が顔を上げる。 おかしな事は何もない。 ないのだが、開拓者としての勘というか本能が危険信号を発している。 ‥‥ような気がする。 「とにかく、中へ運びましょう。このまま寝かせておいて、気がついた時の動揺っぷりを観察したいというのであれば、お邪魔は致しませんが」 セフィールの言葉に我に返った開拓者達は、慌ててそれぞれに動き出した。 ●年明けは波乱とともに 「明けましておめでとうございます、天祥様」 作法に則った完璧な所作で新年の挨拶をした天花に、目覚めたばかりの天祥が何度か瞬きをした。 「年が明けました」 にこやかに告げるのは傍らに控えていた梓だ。 「と申しましても、明けたばかりですからご安心を」 時刻は真夜中を過ぎた頃。 そう告げられて、天祥は安堵の息を吐く。 「よかった。せっかくの機会を無駄にしてしまったのかと思いました」 起き上がった彼に、柚乃が申し訳なさそうに頭を下げた。 「伊邪那がごめんなさい」 抱えていた伊邪那も、主に倣って頭を垂れる。 事情が掴めていない天祥に梓が耳打ちをすると、彼は小さく笑って手を伸ばした。 「お気になさらず。‥‥あなたは大丈夫でしたか?」 伊邪那の頭を撫でる指先を、柚乃はじっと見つめた。 「‥‥伊邪那がお気に入りなんですね」 見上げれば、男にしては色白の頬が赤く染まる。 集まる視線に、更に耳まで赤くして、天祥は観念したかのように呟いた。 「女子のようで‥‥お恥ずかしいのですが‥‥可愛いものとかふわふわしたものが好きで‥‥」 「全っ然、おかしくないですよ!」 笑顔で肯定した天花に、ええと梓が相槌を打つ。 「本当に、可愛らしい方ですね」 やけに吐息が含まれた物言いに、え、と動きを止めたのは数人の大人達。 「何でしょうね。この、聞いてはいけない事を聞いてしまった感は‥‥」 思わず目を逸らしてしまったフレイアの肩を、弥生は軽く叩いた。 「気にしちゃ負けだと思うわ。まあ、お子様の教育上、あまりにもよろしくないようだったら、止めに入るという事で」 こそこそと打ち合わせを重ねていたフレイアと弥生は、深く息を吐き出すと賑やかに騒ぎ始めた仲間達へと向き直った。 「そういえば、お茶もお出ししていませんね。少々お待ち頂けますか」 「あっ! お茶でしたら、わたくしに淹れさせて下さい」 天祥を呼び止めて、天花が熨斗紙で包んだ茶を見せる。「御年賀」と表書きされた熨斗紙に花結びの水引きという、どこに出してもおかしくない年始のご挨拶に、大人達の笑顔が再び固まった。 「‥‥ちょっと、あたし、何も用意してないんだけど!」 「ど、どうしましょう?」 「いえ、本来の目的を思い出して下さい」 焦った様子で顔を突き合わせたフレイアと弥生に、淡々と突っ込みを入れたのはセフィールだ。 「厨房の確認、終わりました。危ないものは手の届かない場所に移動してあります」 「へ、へぇ‥‥」 対幼児の安全策か。 天花とお茶談義に花を咲かせている天祥とセフィールを見比べて、2人は何度目か分からない溜息をついたのであった。 ●宴の準備も波乱とともに 手伝いたいと言う天祥の申し出をさりげなく退けつつ、オリヴィエは厨房を見回した。 危険物と見做されたものは、セフィールの手によって片付けられているので、少々寂しく見える。 「何から始めましょうか」 長い髪をひとつにまとめ、愛らしいエプロンドレスに着替えた柚乃に尋ねられて、しばし考え込む。 「僕は、昔、母がよく作ってくれた焼菓子を作ろうと思います」 「私はペリメニ‥‥耳の形を模った肉包みを作ります」 腕捲りをしたフレイアが、用意していた肉を鉢に移した。 ぎょっとする程の量に、呆気に取られたオリヴィエと柚乃に、フレイアは茶目っ気たっぷりに片目を瞑り、声を潜める。 「‥‥それから、クリームと苺をたっぷり乗せたケーキも。お正月と一緒に天祥さんのお誕生日もお祝いしましょう」 悪戯を企む子供のように笑い合って、それぞれの作業に入ろうとしたその時だった。 ガタン! 間近に大きな音が響く。 互いに顔を見合わせて、そっと様子を窺えば、 「天祥様、空気が澄んで星が美しく見えますよ」 腕を伸ばして、天祥を縁側へと誘導する梓の姿が。 「ええ、降って来そうなとはこの事ですね。ゆっくりと星見を楽しむ為に、私も皆様のお手伝いを」 「天祥様は、星も霞んでしまう程美しい瞳をお持ちですね」 そっと、梓は天祥の頬に触れる ごくり。 生唾を呑んだフレイアは、何事かと首を傾げる柚乃とオリヴィエの存在を思い出して厨房の引き戸を閉めた。 「あの、フレイアさん? 今、天祥様が‥‥」 「だだだ駄目です! 子供が見るものじゃありません! ではなくて、梓君が天祥さんの動きを封じている間に、お料理を作ってしまわなければなりません」 言われて納得したのか、自分達の仕事を始めた2人に胸を撫で下ろす。 早速訪れた、お子様の教育によろしくない現場は心臓に悪い。 「‥‥天祥さんは‥‥多分、皆が助けてくれるはず」 大丈夫大丈夫。 自分に言い聞かせて、フレイアも作業へと戻って行く。 そして、引き戸を1枚隔てた縁側では。 「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥」 天祥を挟んで、梓とセフィールが無言の戦いを繰り広げていた。 「あ、あの?」 間の天祥は困惑したように2人を見比べるしか出来ない。 そんな3人の様子を、どこか困惑した眼差しで見つめているのは二式丸だ。 どこの時点で天祥を救いだせばいいのか計っていたのだが、割って入ろうにも入れない雰囲気が漂い始めていた。例えるなら、長年の宿敵が邂逅を果たした瞬間に立ち会っているような。 「天祥様」 表情を崩す事なく、セフィールが天祥を促す。 「天祥様は此処の主なのですから、手伝い等と申されず、どっかり座って居て下さい」 「おや、もう戻られるのですね。では、私も」 梓と睨み合っているわけではなかったようだ。 「勘繰り、過ぎた。‥‥残念」 ぽつり、漏らした呟きは、白い息と共に空へと昇っていった。 ●新しき年の寿ぎに めいめいに杯や茶碗を手にした仲間達を見回して、弥生は首を傾げた。 一部、やつれている者がいるのは何故だろう。しかし、ここは気にしていては先に進めない。時間は限られているのだ。有意義に使わねば。 そんな事を思いながら、くいっと酒を呷る。 「あ、このお酒、美味しい」 「ふふ‥‥、お酒ではなく、般若湯と言うのですよ」 口当たりのよい酒に舌鼓を打つと、天祥が笑って口元に指を当てた。 「この寺の秘密です。内緒にしていて下さいね」 「内緒ですね。分かりました」 くすくすと笑い合っていると、エプロンドレスから少し改まった装いに着替えた柚乃が湯気の立つ雑煮を置いた。正月らしい紅地に白梅の振袖を着た天花も、用意して来たおせちの重を並べる。 「ハゼの甘露煮、黒豆、昆布巻、菊花蕪‥‥少し地味ですけれど、わたくしが作りました! お口汚しかもしれませんが、召し上がって頂けますか?」 よろこんでと天祥が箸を取ると、他の者達もそれに倣う。 「天儀のお正月料理は繊細なものが多いのですね。花を模しているなんて素敵です。ボクの祖国では、クリスマスが一番大きな行事で、お正月はクリスマスの延長といいますか、家族や親戚とゆっくり過ごします」 オリヴィエが振った話題に、弥生も頷く。 「重視する行事は違うけど、大切な人と過ごすのは天儀も同じよ」 「そうですね。寺の者達も、この時期は家族の元へ帰ります」 何気ない天祥の物言いに、梓は僅かに眉を跳ね上げた。 「俺の故郷、というか、引き取られた先では、飲み比べて、食って、歌って、舞って‥‥とても賑やかだった」 その光景を思い出しながら呟いた二式丸に、フレイアが笑う。 「では、今の私達と変わりませんね」 言われて初めて気付いたように、二式丸は目を瞬かせた。そして、緩く口元を引き上げる。 「そうかも、しれない」 「では、わたくし舞います!」 さっと手を挙げたのは天花。 宣言通り舞い始めた天花に慌てるのは大人達。 「ちょっ! 誰!? お子様に般若湯飲ませたの!」 ちょっとした混乱が起きかけたその中で、セフィールは天花が飲んでいた茶碗を皆の前に差し出した。 「落ち着いて下さい。天花さんが飲んでおられたのは、普通のお茶です」 静まり返った仲間達に、天花が舞いを止める。 「わたくしの家は神社ですから、お正月には、わたくしも精霊様に舞を奉納するんですよ」 示し合わせたように、ぽんと手を叩いて、彼らは納得した。 「お正月はどこも同じって事ですね」 舞の伴奏を柚乃が奏で始めて、場は再び和やかな空気が戻って来る。 一頻り騒いで落ち着いた頃に、「そういえば」とオリヴィエが切り出した。 「天儀では除夜の鐘という習慣があると聞きました。何でも、108回も鐘をつくそうですね。此方のお寺でもつかれたのですか?」 「いえ。この寺では、無事に一年が過ぎた事を感謝し、新しい年の加護を精霊に祈るというのが、年越しの行事なのです」 それは、新年に沸く世間から隔離されたかのような、静かな年越しだ。 「いつもはお寺にいる方達も、家族の元に戻っているのですよね?」 それまで黙って話を聞いていた梓が問う。 「天祥様は、ご家族と過ごされないのですか?」 ほんの一瞬、天祥の表情が揺れた。 「私には家族がおりませんので、このように大勢で楽しく迎える新年は初めてです。本当に楽しかった‥‥。皆様、ありがとうございます」 そう言って頭を下げた天祥に、皆、一様に黙り込む。楽しかったという言葉は偽りではないのだろうが、彼がこれまで過ごして来た時間を思うと無性に物悲しさが募る。 「‥‥だから、だったのですね」 胸元を押さえて、オリヴィエはこの寺に足を踏み入れた時に感じた寂しさを思い出す。 そんなオリヴィエの肩に手を置き、笑んで見せると、梓は天祥へと向き直った。 「ならば、お誕生日の祝いも?」 梓の言葉が終わらぬうちに、フレイアが苺の乗ったケーキを運んでくる。 「あの、これは一体‥‥」 「ジルベリアでは、誕生日に皆でケーキを食べるんですよ」 フレイアがにっこり笑えば、セフィールが慣れた手つきで人数分の茶器を置く。 「ケーキには紅茶が合いますので、ご用意致しました」 「1年に1度の、主役になれる日なんです。誕生日というのは。私達は雇われた身ですが、ぜひ、お祝いをさせて頂けませんか?」 戸惑った様子で開拓者達に視線を向けていた天祥は、やがて照れたような笑みを浮かべた。 それは、彼が初めて見せた、年相応の明るい笑顔であった。 |