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■オープニング本文 『ニンゲンよ。ソナタ達は我らが仔の行方を知らぬと言う』 刀のようなものを全身に生やした、人の背丈の倍ほどもある巨大な狼が口を開けば、人の言葉が躍り出た。 「ひっ‥‥」 森の主。その話は、子供の頃から聞いてはいたけれど。 実際に目の当たりにした衝撃は大きく、村長すらも思わず一歩後ずさる。 「そうだ‥‥! 我々は、お前達の仔など興味はない‥‥!」 『ウソだ!』 森の主が一声吠えれば、轟とそれが風の如く感じられる。 『我々は見たのだ! ニンゲンが、我らが仔を襲うところを‥‥!』 周りにも、人の背丈ほどの同じような狼が現れつつあった。 村人達を守るように立ちながら、村長がじりじりと後ろに下がる。 『我らが仔を知らぬと言うなら、お主らを子ども以外、皆殺しにしても探す』 巨体に似合わず足音すら立てず、森の主が一歩前に出た瞬間。 「皆の者! わしの家に逃げ込め!」 一瞬の村長の転身に、森の主の反応が遅れた。 『クッ‥‥!』 慌てて駆け寄った瞬間、扉が音を立てて閉まる。 つっかい棒で扉をふさぐ音。 『ニンゲンども‥‥! こうなったら、出て来次第殺してやる‥‥!』 森の主の言葉に応じ、狼たちが一斉に吠えた。 「理穴の、ある魔の森に近い村を、刀のような棘を持つ狼のケモノ達が占拠しているそうです」 子どもだけは殺さないというケモノ達の習性を利用し、村で一番腕の立つ子どもに、書簡を持たせて理穴の都、奏生の開拓者ギルドまで走らせたのだという。 子どもは、無事に開拓者ギルドに保護された。 「『森の主』と呼ばれているのは人間並みの知性を持つケモノでしょう。その他は普通の狼とは、剣以外には変わらないケモノだそうです」 開拓者ギルドの女性は冷静に告げる。 「『森の主』の目的は、自分達の仔を探すことのようです。しかし、この村の人間が、そのケモノ‥‥仮に刀狼としましょう。刀狼の仔に手を出したということはないそうです」 考えられるとすれば、森で迷子になっているか、魔の森のアヤカシに襲われたということ。 「この近くには、よく骸骨型のアヤカシが出るそうです。知性を持つ『森の主』ならともかく、ただの刀狼には、人間との区別はつかないでしょう」 だから開拓者達に願いたいのは、森を探索して刀狼の仔を探すこと。 『森の主』を倒してしまえば、彼を長とする刀狼達から、手ひどい報復があるだろうから。 「刀狼の仔も、無事であれば餌に釣られたりもするでしょうし、襲われれば悲鳴を上げるでしょう。まだ若い仔狼ですから、痕跡を残さずに歩く術にも長けてはいないと思います」 また、森の中を一匹彷徨う仔狼がいれば、アヤカシが狙うこともあるだろう。 アヤカシを見つけ、それを追っても見つかるかもしれない。 「いくら子どもだけは襲われないとはいえ、立てこもるにも限界があります。どうか、仔狼を見つけ、村を救ってください」 そう言って、女性は開拓者達に頭を下げた。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
各務原 義視(ia4917)
19歳・男・陰
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
トカキ=ウィンメルト(ib0323)
20歳・男・シ
羽喰 琥珀(ib3263)
12歳・男・志
大泉 八雲(ib4604)
27歳・男・サ
アル・アレティーノ(ib5404)
25歳・女・砲
籠月 ささぐ(ib6020)
12歳・男・騎 |
■リプレイ本文 理穴の都、奏生の開拓者ギルドに、開拓者達が現れる。 「怒れる森の主‥‥このままだと村が一つ壊滅、そして森の主へ討伐隊が派遣されて‥‥むむっ、そんな暗い未来は却下です却下!」 ペケ(ia5365)がぶんぶんと首を振る。 「仔狼を救出して誤解を解けさえすれば、誰も不幸になりません。ここが運命の分岐点。ペケ頑張りますよ!」 そして、ぐっと拳を握り締める。 「子を奪われた怒りの矛先が近くの集落に‥‥ですか」 なんというか不運ですね、と呟いたのはトカキ=ウィンメルト(ib0323)。 「かわいそうな、おじいちゃんたちと、おおかみちゃんたち」 籠月 ささぐ(ib6020)が静かに言った。 「どっちも、ふあんなんだよね。がんばって、さがそ」 開拓者達が頷いたところに、羽喰 琥珀(ib3263)が顔を出す。 「えっと‥‥とりあえず、範囲は絞れそうだな」 ギルドの支部に駆け込んだ子どもに話を聞いていた琥珀が、地図を広げた。 「この辺は大人に入っちゃいけないって言われてて‥‥で、この辺とかこの辺で、アヤカシを見たことがある人がいるらしいぜ」 「仔狼が襲われた場所はわからないようだが、地図は描いてもらえた」 羅喉丸(ia0347)が子どもの描いた簡単な地図を出し、正確な地図と照らし合わせる。 「怒ってる相手って厄介なんですよ。聞く耳持ちませんからね」 ふぅ、と各務原 義視(ia4917)がため息をつく。 「ケモノといえども、仔を思う気持ちは人と変わりないのでしょう‥‥冷静な判断が出来なくなっている事を責める事はできません‥‥」 静かに柊沢 霞澄(ia0067)が口を開く。 「んーこりゃさっさと探し出さないとヤバいねー」 アル・アレティーノ(ib5404)が頭を掻く。 「森の主ってのも根は悪いわけじゃないみたいだし、早く誤解解かないとね」 「誤解を解く為にも早く仔狼を探し出して安心させてあげたいと思います‥‥」 アルと霞澄がちらりと視線を交わし合い、頷く。 「迷子に限らず、独りってのは心細いもんだ。さっさと見つけてやらねぇとな」 大泉 八雲(ib4604)がグニェーフソードの柄を握り、ゆらりと立ち上がる。 「仲間に怪我が無けりゃぁ、それで御の字よぅ」 おどおどとやってきた子どもを安心させるようにニカと笑えば、子どももほっとしたように笑みを見せる。「まかせといて!」とささぐが胸を叩けば、うんと頷く。 「まずは五班に分かれて森の中を探索って感じだな」 元気よく水鏡 絵梨乃(ia0191)が言えば、仲間達が頷いて。 「まぁ、ちゃっと見つけて万事解決と行きましょうか」 トカキが宝珠を埋め込まれた杖を手に取り、立ち上がる。 人命がかかっているから、近くの村で預かってもらうからと、琥珀が何とか借りた開拓者ギルドの馬へとまたがって。 能力者達は一路、目的の森へと駆ける。 一日目。 「さがしましょ!」 てくてくと怯える様子もなく歩いていくのは、ささぐ。茂みよりも仔狼が歩きやすそうなところを探していくささぐの後ろで、義視が狼の目の高さまでしゃがんでみる。 「しゃがむと上からじゃ見えないところが見えるけれど、さてどこに入り込んだかな?」 さらに地面の足跡を探してみる。狼の足跡が入り乱れてはいるが、小さな足跡がいくらか見えた。 「こっちにいそうですね、行ってみましょう」 「わかったよ!」 立ち上がった義視とささぐは改めて歩き出す。 「余計な面倒は起こしたくないし、なるべく狼達に見つからないように探さないと」 アルが足音を潜め、獣道を探す。 「こいつで誘き出せないかな?」 琥珀が取り出したのは、道端で掴まえた小さなネズミ。 「うーん、アヤカシを?」 「そうそう」 首を傾げるアルに、琥珀は真剣な顔で頷く。 「そうね。じゃあ、アヤカシの足跡を見つけたら放してみようか」 「ん、じゃあとりあえず足跡探しだな!」 頷き合った二人は姿勢を低くし、再びアヤカシの足跡を探しにかかる。 「‥‥この辺、結構枝が折れてるなぁ‥‥」 八雲が呟いて、木の茂った辺りに近づく。 「‥‥っ! これ、血じゃねぇか?」 「本当ですか!?」 霞澄が駆け寄り、血の跡を確かめて「そうですね‥‥」と頷く。 折れた枝や倒れた草は、ここで何らかの争いがあったことを物語る。 「足跡、こっちに続いているようです」 そう指差した霞澄に、八雲は頷く。 「行ってみようぜ」 二人は周囲に目を走らせつつ、歩き出す。 日が暮れそうになった頃、集まった一同は、アルを中心に情報を交換し合う。 「急がないと‥‥!」 「けど、夜の森は危険だ」 絵梨乃に諭され、ペケがぎゅっと拳を握る。 「なるべく急いで休みましょう」 霞澄の言葉に、一同はなるべく安全に、急いで野営をしようと準備を始めた。 「――!」 がさりと動いた音に、見張りをしていた義視が顔を上げる。 急いで隣のささぐを揺り起こす。「ん‥‥」と起き上がったささぐが、すぐさま状況を理解しぱっと目を開けた。 「‥‥?」 皆も起こすか、と目で言ったささぐに、義視が頷く。 がさと音がして、一匹の刀狼が姿を現した時には、既に全員が起き上がっていた。 「あの、刀狼さん。おそらく、仔狼さんはアヤカシから逃げているのだと思います‥‥」 爛々と敵意を向ける刀狼に、霞澄は静かに語りかける。 『ガウッ!』 けれどそれに、刀狼は吠え声で応えた。 「追い払おう‥‥!」 羅喉丸が、血塗られた短刀を、鞘から抜かずに構える。 『ガァッ!』 刀狼が襲い掛かるのをかわし切れず、けれどその鞘は確かに刀狼の横面を張った。 仲間達もそれに倣い、傷つけないよう刀狼を相手取る。ペケががっしりと刀狼の刃を盾で止め、霞澄が精霊を呼び仲間達の傷を癒す。 「グルゥゥゥ‥‥」 憎々しげな眼で開拓者達を睨み付けた刀狼は、次の瞬間踵を返し駆けて行った。 「私達に、もう少し時間を下さい‥‥」 その背中に、ぺこりと霞澄が頭を下げる。 「‥‥夜が明けたら、すぐに探してやろうなぁ」 八雲の言葉に、仲間達が頷いた。 二日目。 「魔の森で遭難とかしゃれにならないですね」 羅喉丸から受け取った布を目印に巻きながら、トカキが呟く。 「‥‥トカキ、あれ」 「ん?」 絵梨乃が声を潜め、トカキの袖を引く。トカキが振り向けば、こちらには気づかず体を揺らして歩いていくアヤカシの姿。 「こっそり後をつけてみよう。巣まで案内してくれるかもしれない」 「了解です」 絵梨乃とトカキは頷き合い、足音を殺して歩き出した。 「この辺り、人間大のモノが通った跡ではないかな?」 羅喉丸が指差せば、ペケがこっくりと頷いた。 「少しだけ、足音がします。近くに、いるんじゃないかな」 「気を付けよう。だが、もしかしたら巣に辿り着けるかもしれないな」 「こっそり行きましょうか、こっそり」 頷き合った羅喉丸とペケは、武器をしっかり構えて歩き出す。 ピィィィィ――――! 笛の音が、森中に響く! 「ち、気づかれたか!」 「人間の匂いに反応したのかもしれないわね!」 琥珀とアルが走り出す。ガシャンガシャンと音を立てて、続くのは五匹ほどのアヤカシ。 「目印のついてない方に走ればみんないるはずだ!」 「オーケー、そこまで連れて行くわよ!」 目印のついている場所は、既に立ち去った場所。幸い、あらかじめ打ち合わせた範囲はかなり探索を完了しており、少し逃げれば合流できそうだ。 「琥珀! アル!」 「!?」 後ろからの声に、琥珀とアルが一緒に振り向く。アヤカシの後ろから姿を現したのは、絵梨乃。 「大丈夫ですか?」 続いてトカキが、やや後方に杖を持って顔を出す。 「絵梨乃、トカキ!」 「アヤカシを追ってきたら急に走り出してびっくりしたぞ!」 「うん、助かったわ」 ほっとアルが笑みを浮かべる。背後から現れた二人に、アヤカシが振り返る。 そこに琥珀が居合で刀を抜き放ち、斬りかかる。トカキが杖から吹雪を巻き起こし、アヤカシ達を吹雪に包む。 アルが銃の引き金を引けば、アヤカシの体がのけぞった。絵梨乃が殴り掛かってきたアヤカシに、転反攻で対抗し蹴りを入れる。 再び、今度は絵梨乃が笛を吹き鳴らした。 「大丈夫か!?」 「うん、大丈夫そうですね!」 羅喉丸が彷徨う刃を引き抜いて顔を出し、ペケが笑みを浮かべて拳鎧を鳴らして飛び出す。 「おう!」 「何とか!」 琥珀がアヤカシに斬りつけた刀を鞘へと戻す。アルが装填を即座に終え、素早く銃弾を叩き込む。斜めに撃ったはずの弾丸は急カーブを描き、アヤカシへと突き刺さる。 「あやかしちゃん‥‥ぼくはきみを、たたかなくちゃいけない」 茂みを盾で突っ切って飛び出したのは、ささぐ。その後ろから義視が、呪縛の符を握り、小さな式をアヤカシの手足に組み付かせる。 「っ!」 迫ったアヤカシの骨に、絵梨乃が体を斜めに傾け、蹴りで反撃する。けれどもう一撃は避けきれず、血が舞った。 トカキがブリザーストームを呼んだため、一体の攻撃は琥珀を掠めもしない。もう一撃は雁金で華麗にカウンターを決めた。 けれどもう一撃、受けきれずに視界が歪む。 けれどそこに、聞こえる優しい声。 「皆さん、遅くなりました‥‥」 ふわりと淡く輝くのは、霞澄の姿。琥珀と絵梨乃の傷が、次々に癒えていく。 「任せてもらおうかぁっ」 強力を使って筋力を高めた八雲が、大きく咆哮を上げた。 「ふっ‥‥!」 羅喉丸が気功波を飛ばす。アヤカシの一体が、崩れて塵へと還る。 「行きますよ! 一体以外は逃がしません!」 ペケが真っ直ぐに拳を突き出し、アヤカシの頭を半分砕く。 「問答無用でいきます」 義視が九尾の狐を呼び出し、突撃させる。アヤカシの腹が食いちぎられる。 そこにがっしりと盾を構えたささぐが飛び込み、超至近距離からの突撃をかます。たまらずアヤカシがばったりと倒れ、塵になる。 琥珀が居合を逆走させるような斬撃と共に、刀を鞘へと納める。その後ろからアルの 銃弾が飛んで、肋骨を三本まとめて砕く。 アヤカシの攻撃が集まるのを、八雲はがっしりと受け止めた。 「精霊さん、皆さんの怪我を癒して‥‥」 それでも負った傷、負った毒には、すぐさま霞澄の解毒や閃癒が飛ぶ。八雲が「ありがてぇ」と笑って、巨大な剣で敵を殴り返す。 絵梨乃がその横から鋭い蹴りを入れれば、背骨を折られたアヤカシが吹き飛び、消える。トカキが再びブリザーストームを吹き荒れさせ、力を奪っていく。 ペケの拳が、義視の狐が、アヤカシの一体を打ち砕く。 「一体残して後を追おう!」 琥珀の言葉に応じ、皆が武器を止める。攻撃から逃れたアヤカシがふらふらと歩くのを、開拓者達は急いで追う。 アヤカシが入っていくのは、やや奥行きがありそうな洞窟。まだ探索していなかった場所の、一角。 『キャイン! キャイン!』 小さな吠え声が、聞こえる。 「仔狼さん!」 反射的に素早さを上げ、飛び込んだのはペケ。 そのままアヤカシにぶつかるように拳を叩き込む。 アヤカシが骨を振り下ろせば、それは深くペケの体に傷を刻むかと思われた。 「ひとさらいは、めっ!」 けれどそこに、一陣の風となったささぐが飛び込む。 「そんなことするから、たたかれるんだよ!」 ペケとアヤカシの間に突っ込み盾を構えれば、勢いよく骨が当たって音を立てた。 そこに咆哮を上げながら、八雲が巨大な剣を担いで迫る。奥から出てきたもう一体の攻撃を、がっしりと剣で受け止めて。 「っと!」 さらにもう一体。狙われかけたのは――うずくまる仔狼! だが、絵梨乃が瞬時に駆け寄り、仔狼をひょいと抱き上げてアヤカシを蹴り上げる。 「大丈夫、ボクはお前の味方だ」 じたばたする仔狼に、微笑みかけて。 アヤカシの反撃が彼女を襲う。けれど酒を飲んだ彼女には、怖いものなどない。 防御力と引き換えに回避力を大幅に高めた絵梨乃は鮮やかに回避。 「炎よ!」 ここならば延焼の心配もないと、トカキが思いっきりアヤカシの一体を燃やす。 「行け!」 燃えかけたアヤカシへと、掌を突き出して気功波を飛ばすのは羅喉丸。 たまらず、アヤカシの一体が消え去る。 義視の呼んだ白狐が、もう一体を食い荒らす。ささぐの盾が、アヤカシの脳天を砕いて消し飛ばす。 アルの銃弾が勢いよくアヤカシの顎関節を砕く。落ちた下顎が消えていくのに合わせ、琥珀が居合で斬りかかる。 倒れたアヤカシは、黒い霧になって消えた。 傷ついた体で牙を剥きだす仔狼にトカキがプリスターを飛ばして癒してやれば、きょとんと仔狼が首を傾げた。 「‥‥毛の生えた生き物は苦手なんですよ、俺」 とことこと近づきかけた仔狼から、さっとトカキが遠ざかる。 「お前の仲間が心配していたぞ」 絵梨乃が微笑みかければ、守ってくれたことが分かったのか、その手をぺろりと仔狼がなめた。 「さて。この仔を主のところに帰してあげないとね」 大人しくなったところを、さらにアルが撫でてみる。きゅんきゅんと仔狼が鳴いた。 「では、行きましょうか」 霞澄が、にこりと微笑む。 「ソナタは‥‥!」 低い声で唸るように言った森の主が、目を見開く。 「キャウン‥‥!」 ころころと転がるように、仔狼が森の主へと駆け寄り、体をすりつける。 「‥‥そうか。ソナタ達が、助けてくれたのか」 「勘違いだけじゃすまないとこだったんだぜ? ちゃんと村に償いしろよー」 「ほら、お前からもちゃんと説明しろって」と琥珀が仔狼を促す。きゅんきゅんと鳴いていた仔狼の声に耳を澄ませた森の主は、やがて大きく頷いた。 「すまない、ワタシの早すぎる判断が、ソナタ達を喰らうところだった」 大きな大きな体。けれどすまなさそうにすくめるところは、可愛らしくすらあって。 「‥‥お互いの理解が深まれば、人とケモノはもっと歩み寄れる‥‥そう信じたいですよねぇっと!?」 そう言ってにっこり笑おうとしたところで、褌がはらりと落ちそうになる。 きゃっと叫んで押さえるペケ。村人達が、緊張が解けたように笑う。 「きゅうに、こども、いなくなったら、ふあんだよね‥‥でも、にんげんちゃんも、ふあんだったのです」 今まで上手に暮らせてたなら、今後も上手に暮らせるよね、と。 「だから、なかなおり、しよう。こんごはもっと、しんらいできるおつきあい、できたらいいね!」 ささぐがにっこり笑って、村長と森の主の手と前足をつながせる。 「今後は色んなすれ違いでこんなことになっちゃったけど、これからも仲良くやってほしいね」 アルがそう微笑めば、「約束シヨウ。これからはソナタ達ニンゲンをもう少し信頼する、と」と森の主が頷く。 「ありがとうございました、開拓者の皆さん!」 村長が、村の人達が、報酬を渡して頭を下げる。 その笑顔が、守れたという実感が、開拓者達には何よりの報酬だった。 「しかしあの仔狼、もふもふだったなー‥‥もうちょっと抱いとけばよかった」 そんな、想いはあったかもしれないけれど‥‥? |