新月の遺跡
マスター名:大林さゆる
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/01/23 04:12



■オープニング本文

 デタラメだと思っていたものが本物で、
 本物だと思っていたものがデタラメなこともあった。
 無意味なことが、意味があると言う者もいる。
 ならば、自分には何ができる‥?



 アル=カマル、バドル村。
 吟遊詩人ロマラ・ホープ(iz0302)は砂漠のガイド役として、エセルという少年に同行していた。
 エセルはレド集落の族長の末っ子で、後継者として修行の日々が続いていた。
 今回はバドル村の長と面会して、約束の品を届けることになった。
「これがお約束の品です。これは本来、この村にあったものだと父から聞いていました」
 エセルは村長に『バドルの水瓶』を手渡した。
「ご足労、忝い。確かに受け取った。初代のバドルも喜んでいることだろう」
 村長はバドルの血を引く一族で、名をファイロと言った。
「‥‥イリドのことは聞いた。あいつらしいな」
 ファイロは、エセルの兄イリドとは幼馴染だった。イリドは人々を助けるため、アヤカシと闘い、亡くなった。その知らせを聞いたのは、数か月前‥‥エセルはしばらく部屋に籠りきりになっていた。
 見かねて、ロマラがレド集落の族長に『バドルの水瓶』の話をした時、その品をバドル村に届けることを思いついたのだ。
 エセルの一族は、言い伝えに登場するジプシーの女性レドと砂漠の勇士バドルの間に生まれた子供の末裔であった。
 無事に届けることができて、エセルがふうと安堵していた。だが、その笑顔はまだぎこちない。
「これで、イリド兄さんも安心してくれると思います。兄は僕が子供の頃『バドルの水瓶を見つけてオアシスの水が元に戻ったら、ファイロに渡してくれ』と言っていました。あの頃はオアシスの水もたっぷりあって、『水が元に戻ったら』という意味が分かりませんでしたが、今なら分かります」
 開拓者たちの協力もあり、『バドルの水瓶』を発見することができ、そのおかげで干上がっていたオアシスの水が元に戻ったのだ。
「来て早々だが、西の大岩地帯では最近、盗人が出るらしい。帰る時は、十分に気をつけろ」
 ファイロがそう言うと、ロマラは何か閃いたようだ。
「ここから西2キロ辺りに大岩地帯がありますが、その中心部付近に『古代遺跡』があります。もしかしたら、盗人たちの狙いは『レドの壺』かもしれませんね」
「ああ、俺もそれを危惧している。『レドの壺』は、まだ発見されていないからな。『月の建造物に、レドの壺がある』という言い伝えが残っているだけに、盗人たちの間でも噂になっているらしい」
 ファイロは大岩地帯の出入り口で監視を指示して、護衛の青年たちが先日、2人の盗人を捕まえた。その際に、彼らの目的を聞き出していたのだ。
「おそらく、他にも盗人はいるでしょうね」
 ロマラの心配は、的中していた。



 広い砂漠の目印のごとく、大岩地帯があった。
 その地域は行商の道としても知られていたが、古代遺跡は中心部に位置していた。
 商人たちは古代遺跡から離れた道を通り、行き来していたが、最近は盗人も出るということもあり、護衛を雇うこともあった。
 バドル村から西へ2キロ進むと大岩地帯に入る。商人たちは警戒しながら、道を通っていた。遺跡へと進む道もあったが、そこは通らず、行商の道を進んでいく者が多かった。
 だが、数人の盗人は遺跡への道を行き、内部へと入った。中は宝珠の壁で淡い光を放っており、盗人たちでも迷わず奥の祭壇へと進むことができた。
「おい、石碑があるぜ」
「この下にお宝が眠っているっていう話だ」
 盗人たちは力任せに石碑を押し倒し、底にある壺を取ろうとした。
 その時である。
 背後からスケルトン戦士が突然、出現して、盗人たちは悲鳴をあげた。
 それが最後であった。
 盗人たちは逃げる余裕さえなかった。
 スケルトン戦士は2体。
 盾のハカーマニシュ、二刀流のハカーマニシュ。
 石碑の下にある壺を確認すると、ハカーマニシュは不気味に歯軋りをした。



 古代遺跡の辺りを警護していた青年たちが、バドル村へと急いで戻ってきた。
「なんだって?! ハカーマニシュが遺跡の内部にいただと?!」
 村長ファイロは伝令を聞き、驚きを隠せなかった。ロマラは直に気が付いた。
「遺跡の祭壇には石碑があります。誰かが無理やり、石碑を倒したのかもしれません。ハカーマニシュは、なかなか手強いアヤカシです。ギルドで開拓者を集めてみます」
 ロマラがそう言うと、エセルも頷く。
「ハカーマニシュが相手だと、僕では倒せません。開拓者さんが集まるように、僕も声をかけてみます」
 果たして、『レドの壺』は本当に存在するのだろうか?
 それが本物ならば、エセルの人生も変わるかもしれない。
 未来への選択が迫られていた。


■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
春原・歩(ib0850
17歳・女・巫
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
エレナ(ib6205
22歳・女・騎
イルファーン・ラナウト(ic0742
32歳・男・砲
リト・フェイユ(ic1121
17歳・女・魔


■リプレイ本文

 開拓者たちは、ロマラ・ホープ(iz0302)の案内で、バドル村の西にある大岩地帯の中心部に向かっていた。
 『月の建造物』と呼ばれる古代遺跡までの道案内を頼んだのは、イルファーン・ラナウト(ic0742)だ。
「やはり伝説の壺は遺跡内部にあるのか。なかなか面白そうじゃねぇか」
 見渡すと砂漠が広がっていたが、大岩地帯は地元では目印として、行商の道が続いていた。途中、遺跡へと続く道に曲がり、さらに進んでいく。
「僕としても興味があるよ。正義の空賊としては見過ごせないね」
 天河 ふしぎ(ia1037)は、ロマラとエセルから言い伝えを聞きながら歩いていた。
「レドとバドルは結婚して、その子供に贈った品が『レドの壺』‥お祝いの品というのは建前で、災いを防ぐために壺を子供に贈ったということなんだね」
「そうです。レドにはラファという姉がいたのですが、ラファは当時、嫉妬深い女性だったようです」
 ロマラがそう言うと、エセルが話を続けた。
「言い伝えではラファはそのように書かれていますが、本当は哀しかったのかも。『バドルの水瓶』を発見してからは、ラファが夢に出てくることはなくなりました」
 そう言いつつ、エセルは懐から一族に伝わる書物を取り出した。
「この書物には、言い伝えに関することが載っていますが、この本から今回の依頼に関する情報を調べるのに時間がかかっていて、まだ手がかりが見つかっていません」
 それを聞いて、リト・フェイユ(ic1121)はエセルに声をかけた。
「よろしければ、その書物、お借りしても良いでしょうか。『フィフロス』を使えば、何か情報が得られるかもしれません」
「ぜひ、お願いします。その術が使えるなら、この書物から関連する情報を読み取ることができると思います」
 そう言って、エセルはリトに書物を手渡した。
「では、調べてみます」
 リトは書物に触れ『フィフロス』を使った。
 本が輝くと、レドとラファに関連する項目がいろいろと見つかった。さらに情報を絞り込むため、遺跡の壁画、祭壇、石碑の位置も確認してみた。
「‥‥祭壇の東側に壁画があって、その先に通路があります。『レドの血を引く者、東の通路へ行き、壺を水で満たせ』と書かれています。念の為、水も持ってきましたが、壺に水を注げば、何かが起こるらしいです。『さらなる道が開ける』とも載っています」
「つまり、レドの血を引くエセルなら壺を取っても良いとも読み取れるな。『さらなる道』‥地下通路か?」
 イルファーンの推測が当たっているならば、おそらくは‥‥。
 エレナ(ib6205)は、なるほどと思っていた。
「イルファーン殿の読みが当たっているならば、エセル殿以外の者が壺に触れたら、罠が作動する恐れもありますね」
「先に入った盗人の痕跡を辿れば、ある程度は石碑の罠も回避できるかもね。書物から情報も得られたから、罠の場所も分かるはずだし」
 天河の言う通り、罠の危険もある。
 皆の話を聞きながら、春原・歩(ib0850)が頷いていた。出発前に依頼人のロマラとエセルに挨拶していたこともあり、すっかり打ち解けていた。
「壺を回収するにしても、手順があって、レドの血を引く者に『渡す』のが目的の一つだったね。情報を調べるのって大事だよね。何も知らずに壺に触ったら、罠が作動するらしいから」
 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)は石碑を元の場所に戻すため、準備していた。
「いずれにしろ、アヤカシ退治をしてから石碑を元に戻すのが先決じゃ」
 遺跡周辺を見回りしていた青年たちから、使い古した杖と石を遺跡の入口に運ぶよう指示していたのは、リンスガルトだった。
 辿り着いた頃には、入り口付近に準備していたものがすでに置かれており、村の青年たちは天幕から出てきて、一礼した。丸太はなかったため、杖で代用することにした。



 遺跡の入口はすでに開いており、外側は石作りになっていた。内部は宝珠で輝き、祭壇までは一直線の通路が続いていた。祭壇の入口には盾のハカーマニシュがおり、その背後に、二刀流のハカーマニシュが攻撃体勢で待ち構えていた。
「妾たちを足止めするつもりか。まずは盾の方を倒さねば、先へはいけぬようじゃ」
 リンスガルトは間合いを取り、周囲にも警戒。思っていた通り、盗人が柱の陰に隠れているのが見えた。
(盗人め、やはり壺を狙って付いてきたか)
 仲間たちに、目配せするリンスガルト。
 リトは『アクセラレート』をリンスガルトに施し、仲間を援護する。
「エセル、ロマラ、俺達の後ろにいろ、良いな」
 イルファーンはそう言うと、火縄銃「崩落」を構え『クイックカーブ』を放った。弾が壁に向ったと思いきや、カーブを描いて盾のハカーマニシュの頭を貫いた。突然の攻撃に、ハカーマニシュは一瞬だけ怯んだ。
「隙あり!」
 リンスガルトの身体は『泰練気法・壱』で赤く染まり、『玄亀鉄山靠』の衝撃波を盾のハカーマニシュに叩き込んだ。盾が転げ落ち倒れると、二刀流のハカーマニシュが攻め込んできた。
「遠慮せず、参ります」
 エレナはそう言い放ち、騎士盾「ホネスティ」を投げ捨て、ジルベリア風の片手剣ドラグヴァンデルを両手で持ち、ハカーマニシュの脚に叩き付けた。相打ちとなり、エレナの鎧の隙間にハカーマニシュのレイピアが突き刺さり、血が飛び散る。それでも尚、エレナは剣を構えたまま、次の攻撃を見計らっていた。
「僕が相手だ!」
 天河が霊剣「御雷」で『隠逸華』による三連続の突きを繰り出す。二刀流のハカーマニシュは弐連撃をしかけてきたが、天河の攻撃の方が速かった。
「遅いっ、攻撃が止まっているように見えるよ!」
 天河は弐連撃で軽い怪我をしたが、歩の『神楽舞「武」』で攻撃力が上昇していたことあり、技は見事に決まった。
 ハカーマニシュたちは形勢を立て直すため、入口から離れて祭壇の間へと入った。それを見逃すイルファーンではない。
「そっちに行けば、狙い易いんだがね」
 火縄銃からイルファーンの『螺旋弾』が放たれ、盾を持っているハカーマニシュの腕が砕け散った。
「一気にいくよ!」
 天河の気迫に満ちた『秋水』が閃光のように煌く。
「どうやら痛みを感じておらぬようじゃ」
 リンスガルトは『八極天陣』を駆使して動き回り、殲刀「秋水清光」で攻撃するが、ハカーマニシュたちは身体がボロボロになっても立ち向かってくるのだ。怪我人が何人か出たこともあり、歩は『閃癒』の光で、仲間たちの傷を癒していく。
 イルファーンが『弐式強弾撃』を放ち、リトは『ウィンドカッター』でハカーマニシュの足元を狙い、真空の刃で斬り裂く。
 リンスガルトはハカーマニシュたちの連携を崩すように脚絆「瞬風」で翻弄し、天河が宝珠銃「レリックバスター」による『ウィマラサース』の銃術で敵を震撼させた。
 ハカーマニシュとの攻防戦はおよそ10分。スケルトンの身体が崩れ去ると、その姿は音もなく消えていった。



「ハカーマニシュは倒せたようだけど、まだ他にもアヤカシがいるかもしれないね」
 歩は万が一のため、祭壇の間に入ると『瘴索結界』を使った。祭壇の北側には石碑が二つ倒れていたが、その下には壺があった。特に瘴気は感じられなかったが、歩はロマラから聞いた話を思い出した。
「石碑の下にある壺は偽物だったよね。言い伝えでは石碑の下にある壺に石を投げて元に戻すように書かれてたね」
 リンスガルトが準備しておいた石を壺に投げ入れると、風化して消滅した。石碑は1メートルほどの高さで、体力がある者ならば持ち上げることができる重さだった。
「これで偽物の壺だと確認ができるとはな。盗人め、偽物とは知らず、石碑を倒して壺を取ろうとしたようじゃ」
 余談であるが、石だけを遺跡内部に持ち運び、使い古した杖は遺跡の外で見張りをしていた村の青年たちが盗人を捕まえるのに利用していた。
 壺が消えたことを確認すると、右の石碑はエレナが元の場所に戻し、左の石碑は天河が持ち上げ、立て直した。
「本物は別の場所にあるはずです」
 リトはそう言って、東側の壁画を見た。男女が向かい合う絵の下に、一人通れるほどの通路の入口があった。
 天河を先頭に、一人ずつ通路へと入っていく。エセルとロマラは中衛辺りで、最後にイルファーンが入ると、入口は塞がれてしまった。
「後戻りはできないらしいな。要するに前へ進むように促している訳だな」
「‥‥この先に、何が‥」
 エセルが慎重な面持ちで言うと、歩が励ますように微笑んだ。
「確か、通路を抜けると大広間があるはずだよ。そこまでの辛抱だからね」
 一時間ほど通路を進むと、広い空間に出た。
「ここが大広間‥手順通りに本物の『レドの壺』を台座に置きましょう」
 ロマラはそう言って、エセルを大広間の北側へと連れて行った。そこには古ぼけた壺があった。
「エセルくん、この壺を中央にある台座の窪みに置いて下さい」
「‥‥はい」
 エセルは躊躇いつつも、壺を持ち、台座の窪みにはめ込んだ。すると、イルファーンの予想通り、エセルが壺を取ったことで、東側の床が開き、さらに通路が続いていた。
「通路が開いたら、『レドの壺』はエセルが持って、さらに通路を進むと、外に出ることができるかもな」
「言い伝えの書物にも、そのように書かれていました。先を急ぎましょう」
 リトの言葉に、天河が応えた。
「ここから先も僕が先頭で行くよ。外に出たら、アヤカシか盗人がいるかもしれないしね」
「それは助かります」
 ロマラが礼を言うと、天河たちは床下の通路へと進み、エセルは『レドの壺』を持って、すぐさま皆の後を追った。全員が通路に入っても、入口が塞がれることはなかった。
 通路は宝珠で作られていて灯には困らなかったが、半日近く続くほどの長さだった。ようやく上へと昇る階段があった。
「月の導きで、さて、どうでるか」
 イルファーンの呟きに、天河たちは警戒しながら階段を昇った。出口は塞がれていたが、天河は扉の鍵があることに気付いた。エセルが『レドの壺』を持っていたせいか、しばらくすると鍵が消滅した。
「‥‥一か八か、開けてみるよ」
 天河がゆっくりと扉を開けた。すると、どこかの屋敷の地下室であった。
「これはレドの印かな? 壺と同じ印が壁に刻まれているよ」
 見ると、新月を表す印が壁にいくつも刻まれていた。
「ここが目的地でしょうか?」
 リトが辺りを見渡すと、南側に台座があった。
「エセルさん、レドの壺を台座の上に置いてみて下さい」
「はい、やってみます」
 エセルが台座に壺を置き、リトが水を注いだ。すると、壺が七色に輝き、光が収まると真っ白な壺へと変わった。
「まるで新品みたいだね」
 歩は綺麗だなと見とれていたが、足音に気づき、『瘴索結界』を使った。
「アヤカシではないようだけど、誰かがこっちに近づいてくるよ」
 緊張が走る。足音が止まり、扉が開く音がした。と同時に、光が差し込んでくる。
「ここまで来るとはたいしたもんだな」
 その声は、バドル村の長ファイロであった。
「ファイロさん、これはどういうことですか?!」
 エセルが問い詰めると、ファイロはうれしそうに言った。
「開拓者たちのおかげで、ようやく本物の『レドの壺』が見つかったようだな。俺はレドの血は引いていないから、本物には触れないんだよ」
「ああ、そういうことか。なるほどな」
 事の次第に気づき、イルファーンは久し振りに豪快に笑っていた。



 開拓者たちが辿りついた場所は、バドル村の長ファイロの屋敷にある地下室だった。
「遺跡と村は地下通路で繋がっていたのか」
 イルファーンが興味深そうに言うと、ファイロが答えた。
「君たちが通ってきた通路は『月光の道』と呼ばれていて、幸福になるとも言われている」
「レドとバドルは恋人同士だったそうですから、縁結びの道とも考えられますね」
 リトは王子様との出会いを思い返していた。
「なんだかロマンチックだね」
 歩がそう言うと、エセルは少し照れていた。
「僕はレドの壺に、そんな意味もあったことも知らず‥‥」
 と言い淀むエセル。彼も年頃になったのだろう。
 その様子にロマラは優しげな眼差しを向けて、皆に告げた。
「今回は皆さんのご協力のおかげで、本物の壺が見つかり、それだけでなく、バドル村の地下室まで到着することができました。本当にありがとうございます」
 すると、エセルも我に返って礼を告げた。
「僕一人では、きっと壺を見つけることはできなかったと思います。感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございます」
 イルファーンが顎に手を当て、こう言った。
「俺は自分の意思で依頼に参加しただけだ。本物の宝が見つかって、何よりじゃねぇか」
「そうだよ。私も協力したいから、できるだけのことをしただけなんだからね」
 歩はそう言いながら、エセルに握手を求めた。初めは恥ずかしそうなエセルだったが、そっと歩の手を握り締めた。
「良かったね。無事に辿り着けて」
 そう言いながらエセルに握手する歩。
「ハカーマニシュは倒したし、偽物の壺も消えて石碑も元に戻したから、遺跡周辺で盗人がでるのも少なくなるかもね」
 天河がそう言うと、ロマラが少し考え込んでいた。
「後は依頼を達成した証拠があれば‥‥」
「それなら、私が調査した内容や言い伝えの内容をまとめて書いておきました」
 リトは時間を見つけて、調べたことを携帯ペンセットで書き記していたのだ。ロマラが見ると、古代遺跡の内部や地図、今回の依頼に関わる言い伝えのことが書かれていた。
「これなら、資料としても役に立ちます。ギルドに持っていけば、依頼達成の証にもなるはずです」
 ロマラの言う通り、リトが作成した資料はギルドで保存することになった。
 本物の『レドの壺』を発見して、エセルに渡すことができたこともあり、依頼の目的は全て達成することができた。
「妾が用意したものが、別のことで役に立ったようじゃ」
 リンスガルトは石碑が重過ぎたならば杖と石を使って持ち上げることも考えていたが、石を持ってきたことで、偽物の壺であることも確認できた。そのことも、資料に書かれていた。

 開拓者たちの協力により、エセルは本物の壺を手に入れることができた。
 それは、彼の心にあった未来への扉を開くものでもあった。
 そのことに気付いた時、少年は少しずつ進んでいくのだろう。
 希望へと‥‥。