無窮のレド
マスター名:大林さゆる
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/07/14 02:35



■オープニング本文

 砂漠の風紋が、広がる。
 まるで、自然の芸術のように。

 吟遊詩人ロマラ・ホープ(iz0302)は、ガイドでの道中、奇妙な集落に迷い込んだ。
「昼の砂漠だというのに‥‥この寒気は‥」
 その集落に入ってしばらくすると、手足が痺れてきたのだ。
 広場に行くと、人が倒れていた。そのすぐ近くに、天を見上げているような乙女の彫刻があった。
 いつものロマラならば、彫刻に釘付けになっていたことだろう。
 だが、この集落では異変が起きていることは確かだ。
 倒れている女性に声をかけるが、反応はない。とは言え、気絶しているだけだと分かり、ロマラは女性を抱えて、集落から出ることにした。
 不思議なことに、集落から出ると、寒気はなくなったが、完全に回復した訳ではない。
 助けた女性は気を失ったままだ。
 この集落から1キロ西に小さな村があることを思い出し、そこへと向うことにした。



 村に到着して、宿屋で休憩を取ることにした。
 ロマラは隣の酒場で食事をしていたが、あの集落では『人の姿をした黒い瘴気』を見かけるという話題を聞くことができた。
 集落の片隅にある石碑が崩れると、そこから瘴気が舞い上がったと言うのだ。
 おそらくアヤカシが集落に住み着くようになったのかもしれない。
 広場で見かけた彫刻も気にかかる。
「お客さん、よく無事だったね」
 酒場の女将が、ロマラにそう告げた。
 聞くところによると、数日前から、集落に住んでいた人々が村にやってきていたらしい。
 周辺には大化サソリが砂に潜んでいることもあり、何人か怪我人も出た。
「アズィーム・マウトゥ・アクラブの猛毒で、未だに寝込んでいる人もいるらしいよ」
 アル=カマルにおいて『アズィーム・マウトゥ・アクラブ』とは、大化サソリのことだ。

 助けた女性は一泊すると、なんとか起き上がることができたが、歩くのもやっとだ。
 それでも礼が言いたかったのか、女性は酒場に姿を現した。
 思わず、ロマラは椅子から立ち上がった。
「?! まだ無理をしてはいけません。宿屋で休んでいて下さい」
「‥‥助けて頂いて‥ありがとう‥ございます。‥息子は‥無事でしょうか‥?」
 それを聞いて、ロマラは少し言い淀んだ。
「‥‥お子さんは‥‥」
 そう言いかけた時、酒場の扉から1人の少年が駆け込んできた。
「母さん!」
 そう言いつつ、少年は女性に抱きつく。
「エセル、お前も助けてもらったんだね。良かった‥」
 女性は安堵して気が抜けたのか、倒れそうになったが息子のエセルが母の背中を受け止めた。
「母さん、ごめんよ。いつも心配ばかりかけて‥」
 エセルがそう言うと、母親は静かに目を閉じた。
「母さん?!」
「‥‥また気を失ってしまったようですね。隣の宿屋にお願いしてありますから、お母様を部屋まで連れていきましょう」
 ロマラが微笑むと、エセルは頷いた。
「はい。ご迷惑かけて、本当にすみませんでした。母を助けて下さって、ありがとうございました」
「お礼を言うのはまだ早いですよ。集落にはアヤカシがいるようですし、そこまで行くのにアズィーム・マウトゥ・アクラブがいるらしいですから」
「‥‥だけど、なんで集落にアヤカシが集まったのかな? あの彫刻と関係あるのかな‥‥」
 少年は独り言のように言った。


 シャリ、シャリ、シャリ‥‥。
 トク、トク、トク‥‥。

 ヒダル神の哀しい鳴き声が、木霊していた。


■参加者一覧
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
門・銀姫(ib0465
16歳・女・吟
久郎丸(ic0368
23歳・男・武
リドワーン(ic0545
42歳・男・弓
リズレット(ic0804
16歳・女・砲


■リプレイ本文

 砂漠の地、アル=カマル。
 開拓者たちは『集落』から避難してきた人々から話を聞くため、村の中を巡回していた。
 菊池 志郎(ia5584)は道端で座り込んでいる女性から猛毒で苦しんでいる人がいると聞き、宿屋へと向った。2階の部屋へと案内されたが、ジプシーの女性が横たわっていた。
「もう大丈夫ですよ」
 志郎が『解毒』を活性化させると、女性の顔付きが徐々に良くなってきた。
「毒が消えたとは言え、しばらく安静にしていて下さい」
 志郎はそう言った後、女性を安心させるため、すぐに部屋から出ることにした。
 別室では、少年とリドワーン(ic0545)が話し込んでいた。
「僕がエセルですが、集落から『書物』を持ち出したこと、よく分かりましたね」
 エセルが感心したように言うと、リドワーンは両腕を組んで壁に背をつけていた。
「‥‥単なる俺の勘だったが、やはりあったのか」
「この書物には、この地に伝わる言い伝えが書かれているんです。僕は砂漠のガイドになりたくて、各地を転々としていました。久し振りに集落に戻ってみたら、住んでいた人達が倒れていたんです」
「一般人では瘴気に対する術がないからな」
 リドワーンの言葉に、エセルは少し項垂れていた。
「集落の中では歩くのが精一杯で、書物を持ち出すくらいしかできなくて‥‥」
「‥‥そうか」
 ただ、そう告げるリドワーン。
「姉さんはジプシーなんですが、僕を守るためにアズィーム・マウトゥ・アクラブと闘って‥」
 そこまで言うと、エセルは黙り込んでしまった。
 すると、ドアを軽く叩く音がして、志郎が入ってきた。
「お姉さんなら大丈夫ですよ。毒を受けた人がいると聞いて解毒しましたが、エセルさんのお姉さんだったんですね」
 志郎がそう告げると、エセルは彼の手を握り締めた。
「この村には解毒できる医者がいなかったので、どうしようかと思っていたのですが、本当にありがとうございます」
 エセルは何度も礼を述べた。それだけうれしかったのだろう。
「お役に立てて良かったです。集落には石碑や彫刻があると聞きましたが、何か言い伝えがあるんでしょうか?」
 志郎がそう言うと、リドワーンは無言でエセルを見遣った。
「持ちだした書物には詳しく書かれていますが、大まかな話なら、僕でも知っています」


 昔々、レドとラファという姉妹がいた。
 二人はとても仲が良かったが、年頃になると、恋をした。
 二人が恋した男は、同じであった。
 三角関係になり、結局は妹のレドが男性と恋仲になった。
 姉のラファは、哀しみのあまり、地に落ちたと言う。


 エセルが教えてくれた言い伝えは、集落に住む者ならば、ほとんど知っていたが、詳しいことまで知る者はいなかった。
「集落を調査するなら、この『書物』をお貸しします」
 そう言って、エセルはリドワーンに手渡した。
「調査が終わったら、この書物は返す。手がかりさえ分かれば良いからな」
「エセルさん、ご協力ありがとうございます」
 志郎が礼を言うと、エセルは照れ笑いを浮かべた。
「まさか持ちだした書物が役に立つなんて思ってもみなかったので、驚きました」
「エセルさんはお姉さんとお母さんの傍にいてあげて下さい」
 志郎の優しさに、エセルは満悦の笑みで応じた。



 久郎丸(ic0368)は戸惑っていた。
「何故、だ。寄ってくる者が、いる。お、俺は‥‥」
 村の子供たちが、無邪気な笑顔で久郎丸に近づき、大人たちも微笑ましく見守っていたのだ。
 アル=カマルには固有の獣人もいるせいもあるが、人々は久郎丸を異国の獣人だと思っていた。
「そう、なのか? ここでは、様々な獣人がいると、聞いていたが‥」
「そうだよ。おじちゃんは獣人でしょ?」
 10才くらいの少年がそう答えた。集落について訪ねてみると、少年は心配そうだった。それに気付き、久郎丸は懸命に告げた。
「心配‥するな。集落のアヤカシは、倒す。オアシスの‥水が、干上がった、のか。この村にいれば、大丈夫、だ」
 久郎丸が考え込んでいると、リドワーンがやってきた。
「エセルという少年から『書物』を借りた。これに詳しいことが書かれているそうだ」
 アル=シャムス大陸においては、どの種族も等しいという教えもあったが、稀に例外もあることをリドワーンは身を持って知っていた。
 だが、少なくとも、この地の民たちは『教え』が当たり前であるようにも感じられた。
「俺も‥石碑について、聞いて‥みた。この地では『始末の石碑』と、呼ばれている‥らしいが‥」
 久郎丸がそう告げると、志郎が宿屋から出てきた。
「リドワーンさん、久郎丸さん、酒場に集まる時間です」
 三人は、他の開拓者たちに報告するため、酒場へと入った。



 志郎たちが宿屋にいた頃、リズレット(ic0804)はロマラ・ホープ(iz0302)と酒場の真ん中にある席で話をしていた。
「集落から避難してきた人たちに彫刻について聞きましたが、『レドの乙女』というらしいです。何か心当たりはありませんか?」
 リズレットがそう問いかけると、ロマラは思い出したように答えた。
「あの集落にあった彫刻と似たものを見たことがあります。実際に見たのではなく、開拓者がスケッチしたものですが、遺跡の中に『天を見上げる乙女』の彫刻があったそうです」
「遺跡で発見された彫刻は、『ラファの乙女』かもしれませんね」
 リズレットも、人々から集落の言い伝え『レドとラファ』について聞くことができた。
 避難してきた民たちを和ませるため、門・銀姫(ib0465)が酒場の入り口付近で『口笛』を吹き、皆を楽しませてくれたこともあり、一人、また一人と集落について話をしてくれるようになったのだ。
「言い伝えには、恋物語もあるんだね〜♪ ラファが『地に落ちた』というのが気になるよ〜♪」
 竜哉(ia8037)は奥の席で、人々から聞いた情報を頼りに、集落内部の地図を作成していた。
「アヤカシが出現したのが6日前か。彫刻は中心部、石碑は北側‥これで良いかな」
 地図を書きながら、同席している青年に尋ねると、彼は頷いていた。
「なかなかの出来栄えだな。この地図があれば、集落内部で迷うことはないはずだ」
「黒い瘴気を退治すれば、調査する時間もできるからね」
 竜哉が地図を書き終えて、しばらくすると志郎たちが酒場に入ってきた。
「出発は明日、日が昇ってからの方が良いだろう。夜の砂漠は寒いからな」
 リドワーンは、砂漠の厳しさも熟知していた。
「アル=シャムス大陸は昼と夜、まるで違う顔のような、正反対の世界なんですね」
 リズレットは実際にアル=カマルへ来るのは初めてであった。
「それじゃ、出発は明日だね〜♪」
 銀姫が言うと、開拓者たちは明日に備えて宿屋で休むことにした。
 ロマラはエセルと彼の家族のことが心配だと言い、村に残ることになった。
 それぞれが集めた情報を纏めることができたこともあり、出発の準備も整えることができた。



 翌日。日が昇り、開拓者たちは集落へと向かうため、砂漠の道程を進んでいった。
「昼前までには辿り着きたいね〜♪」
 銀姫はそう言いつつも、周囲の動きに警戒していた。大化サソリが潜んでいるからだ。
「こっちに向かってくる音が聞こえてくるよ〜♪」
 異変に気付いたのは『超越聴覚』を使っていた銀姫だった。
 砂が隆起して、体長4メートルほどのサソリが出没したが、すでに『鏡弦』で大体の位置を把握していたリドワーンがすぐさま射程距離内から火炎弓「煉獄」を構え、尾を狙う。命中して尾の動きが鈍くなり、竜哉が霊剣「迦具土」で斬り落とす。尾が飛び散り、瘴気と化した。 
「これを‥倒せば、先へ、行ける‥」
 久郎丸は念珠「翡翠連」を握り『一喝』した。その隙に、リズレットがマスケット「魔弾」でサソリの尾に狙いを定めて『クイックカーブ』を放った。
「手応え、ありました」
 その言葉で反射的に志郎は銀姫を守るように立ちはだかり、『雷鳴剣』を繰り出した。その衝撃でサソリが仰向けに転がり、久郎丸が雷槍「ケラノウス」で腹部を切り裂く。
「まだ、倒れない‥か」
「‥‥ならば」
 リドワーンが『影撃』で装甲の節目を狙うと、それが止めになり、巨大なサソリは霧のように消え去った。
「次は集落のアヤカシですね」
 志郎が集落の方角へと懐中時計「ド・マリニー」を向けた。
「瘴気の流れが激しくなっています。どうやら集落全体が瘴気に包まれているようです」
「その中に、神を語るアヤカシがいるんだね〜♪」
 銀姫は集落の外、入り口付近から『超越聴覚』を使ってみたが、何も聞こえないことが不自然だと感じた。
 そのことを皆に告げると、竜哉が歩き始めた。
「やはり集落の中に入らないと、ヒダル神とは対面できないようだね」
 そう言った後、竜哉は集落に入り、志郎は懐中時計で瘴気の流れを計りながら、ゆっくりと歩いた。

 集落の中心部にある広場に辿りつくと、空腹感が押し寄せてきた。
 携帯していた食料を取り出し、志郎は食べてみたが、少しずつ空腹状態となり、アヤカシの正体を確信した。
「この地にもヒダル神がいるらしいですね。懐中時計が尋常ではない流れを感知しています」
 志郎が『レドの乙女』と呼ばれる彫刻の近くで、瘴気の流れを調べることができる懐中時計を掲げた。
「‥‥人影の瘴気が浮遊しているな」
 竜哉は『戦陣「龍撃震」』を活性化させ、霊剣を抜き、攻撃体勢に入った。
 続いてリドワーンが『心毒翔』を射ると、悲鳴を上げながらヒダル神が一体、地に落ちた。
「毒をもって毒を制す‥効果ありか」
 矢じりが突き刺さり、ヒダル神は浮遊する余力もなくなっていた。竜哉の『暗蠍刹』が炸裂すると、ヒダル神は解き放たれたように絶え果てた。
「もう一体、居ますね。‥‥狙ってみます」
 リズレットは『ターゲットスコープ』を使い、瞳にスコープが映ると、浮遊しているヒダル神をマスケットで撃ち抜いた。アヤカシは奇声を発して、またもや落下していく。
 久郎丸が『荒童子』で精霊を具現化させ、攻撃を仕掛けた。志郎が『雷鳴剣』で援護に入り、銀姫は『重力の爆音』を奏でた。ヒダル神は悲鳴をあげることもできずに撃沈した。
 少し経つと、集落を包んでいた瘴気の流れが薄くなってきた。
「まだ何かあるかもしれないな。石碑を調べてみようか」
 竜哉は念の為、短銃も装備して、皆と共に集落の北へと向った。



「どうやら、この穴から瘴気が発生しているようです」
 志郎は懐中時計を手に持ち、穴を覗いてみると、壺が置かれていた。
「この壺、見たことあるよ〜♪」
 銀姫は数ヶ月前に発見された『遺跡』を思い出した。
「遺跡にあった彫刻が『ラファ』なら、集落の彫刻は『レド』なんだね〜♪」
「リゼも、その可能性を考えていました」
 リズレットも村でロマラから『遺跡』のことを聞いて、似たようなことを思っていた。
「石碑を穴の上に戻してみるか。書物には『穴を封じるため、石碑を立てた』と書かれている」
 リドワーンがそう言うと、久郎丸は石碑を持ち上げ、穴を塞ぐように立て直した。
「おそらく、ラファの魂を慰めるため、この石碑がある‥のか」
 石碑の前にて、久郎丸は鎮魂の祈りを捧げた。そして、ふとあることを思い出した。
「集落の‥南に、オアシスがあるはずだが‥干上がっている、らしい」
「生き残っている人がいるかもしれないから、オアシスにも行ってみようか」
 竜哉は逃げ遅れた人がいることも考えていた。
 集落と干上がったオアシスの間に、男性が一人倒れていた。
 竜哉が声をかけてみるが、反応がない。男性は両腕と右脚に包帯を巻いていたが、血が滲んでいた。
「まだ、息はあるようです」
 志郎は『神風恩寵』を使い、男性の傷を回復させた。
「大丈夫ですか?」
 リズレットの声が聞こえたのか、男性が目を開けた。
「‥‥おまえ、こそ、無事か‥?」
 どうやら男性はリズレットを誰かと勘違いしているらしい。無理もない。なんとか集落から出ることができたが、大化サソリの攻撃で重傷となり、自力でここまで辿り着いたのだ。
 幸い、志郎の治癒で怪我は治ったが、意識はまだ朦朧としていた。話ができる状態ではなかった。
「この人を村まで連れて行こう。そろそろ夕方だ」
 竜哉はそう言いながら、男性を助け起こした。


 村に到着した一行は助けた男性を宿屋で休ませることにした。
「お兄ちゃん!」
 14才前後の少女が駆けつけてきた。
「兄を助けて下さって、とてもうれしいです。ありがとうございます」
 少女が一礼すると、リズレットが穏やかに微笑む。
「お兄様が無事で良かったですね」
 その後、酒場に居た族長に『書物』を見せると、彼は目を見張った。
「これは‥わしの部屋にあったものだ」
「エセルという少年が持ち出した」
 リドワーンの言葉に、族長は目頭が熱くなった。
「‥‥エセルが‥この書物を‥我が集落に代々伝わるものなのだ」
 族長の話から、エセルは族長の末っ子だと判明した。
「そう言うことなら、族長に返した方が良いか」
 リドワーンが『書物』を手渡すと、族長は大切そうに手元に置いた。
「集落の彫刻も調べてみましたが、特に欠けた部分はなくて、保存状態も良かったです」
 リズレットの言葉を聞いて、族長は安心したように溜息をついた。
「この度は御足労、感謝いたす」
「‥‥石碑は、元の場所に、戻して‥おいた」
 久郎丸はそう言いつつも、集落に住んでいた人々は今後どうするのか、気になっていた。
「それはありがたい。わし達は、オアシスの水が元に戻るまで、この村に滞在することになった」
「そうなの‥か。それを聞いて、安心‥した」
 ふと久郎丸は呟いたが、族長には聴こえていたようだ。
「親身になってくれて‥‥この御恩は一生、忘れませんぞ」


 翌日。
 竜哉が作成した地図は、集落を調査した証としてギルドに納めることにした。
「今回、調査した集落と、数か月前に発見された遺跡というのは『レドとラファ』伝説と関わりがあるかもしれないね」
「集落の調査ができたのも、皆のおかげなんだね〜♪」
 銀姫がそう言うと、リズレットは可愛らしく首を傾げていた。
「恋の言い伝え、なんだか哀しい結末でしたね。姉妹で同じ男性を好きになってしまったら、リゼは‥‥」
 古来から、延々と恋物語は続いていく。

 今も、誰かが誰かに恋をして、様々な人と関わりあっていく。
 どの時代でも、いろんな形の恋愛があるのであろう。