迷子の迷子の・・・・
マスター名:野田銀次
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/09/14 19:39



■オープニング本文

●不気味なる森
「御夜ー! 御夜ー!」
 風が木の葉をかすめる音しか聞こえない静かな夜更け。
 夜空には美しい月が輝いていたが、その眼下に広がる森の中は不気味に薄暗かった。木々の間から漏れる光などほとんどない。
 灯篭の明かりがなければ、自らの足下の安全を確かめるので精一杯だ。
「もうよそう、女将さん。そろそろアヤカシが出るって噂の場所だ。これ以上は危ない」
 そんな森の奥深く、薄気味悪い森の雰囲気とは合い入れない派手な装いの着物を纏った女と、こちらは至って普通の地味な羽織を纏った男が、恐怖に足を震わせながら歩いていた。
「何を言うの樹さん! 御夜はこの恐ろしい森の中でひとりぼっちなのよ、放ってなんかおけないわ!」
 声を荒げて叫ぶ女の名は加奈代。この森の近くにある宿場町で一番の規模を誇る宿屋の女将だ。
 彼女がこの森に足を踏み入れた理由は、彼女が先ほどから声が枯れるほどに叫び続けている、御夜という名の少女にある。
 御夜は加奈代の一人娘で、いずれは宿屋の跡取りとなる女将見習いだ。
 夫を早くに亡くした加奈代は、唯一の家族である御夜を他の何よりも愛していた。
 そんな愛娘の御夜が、この森にふらっと足を踏み入れてから帰って来ないのだ。
 この森はとても広く、整備された道も無い。さらにはアヤカシまで出没するという恐ろしい森だ。
 そんな森で迷子になってしまっては、森の知識も備えも持たない娘が一人で帰ってくることなど不可能に近い。
 心配で居ても立ってもいられなくなった加奈代は、従業員の樹が止めるのも聞かずに森へやって来たのだ。
「開拓者を呼ぼう、女将さん。女将さんの気持ちは分かるが、俺達が闇雲に探し回っても意味がない。俺もここより深い場所の知識は無いんだ」
「でも・・・・!」
 言葉に詰まった加奈代はしばらくの間じっと押し黙っていたが、やがて大きく深呼吸をすると、先ほどまでの取り乱した様子をぬぐい去ったような毅然とした表情を見せ、樹と共に宿屋へと引き返していった。
 その目はもう娘を失う恐怖に怯えたものではなく、町一番と謳われる宿屋を取りまとめる女将の威厳を纏っていた。
「依頼文の用意をします。報酬額に糸目はつけません、御夜を・・・・必ず連れて帰って貰いましょう」
「はい、女将さん」
 不気味な森の美しく照らす朝日は、もうすぐそこまで迫っている。


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
犬神・彼方(ia0218
25歳・女・陰
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
菘(ia3918
16歳・女・サ
正木 鏡太郎(ia4731
19歳・男・サ
シャルロット(ia4981
13歳・女・サ


■リプレイ本文

●迷子探索隊
 鬱蒼と茂る森の中。
 日の光も届かない、薄暗いこの森に開拓者達が入り込んだのは、その日の明け方早くだった。
 森に迷い込んだ少女、御夜を探し出すためだ。
 一行が森に入ってからもう随分時間が経ち、日も大分高い位置まで昇っている。
 既に一度怪狼の襲撃を受けた一行は、群れのリーダーを倒す事でそれを退け、一時の休息を取っている最中だった。
「子供が無茶したら駄目だぁよ。ま、それでも同じ開拓者だもんなぁ。ほどほどに頑張りなぁよ」
 包帯と薬草を取り出した犬神・彼方(ia0218)は、先の戦闘で軽い怪我を負ったシャルロット(ia4981)の応急処置をしながらあやす様にそう言った。
 シャルロットは小さく頷き、大人しく負傷した腕を差し出している。
「さてと、シャルロットの手当てが済んで一息ついたら再出発だね。道の分岐も減ってきたし、そろそろ何か新しい手がかりがあってもいいと思うんだけど‥‥」
 持参した古酒を片手に呟いた水鏡絵梨乃(ia0191)に、真っ先に同意したのは天河ふしぎ(ia1037)だった。
「そうだね、行き先も絞り込めるし、ここらが正念場って感じだね」
 御夜の捜索は、森の入り口付近に微かに残っていた足跡を辿る事を主な手掛かりとしていたが、その足跡も薄れ始め、新たな手掛かりとなる物が必要になってきていた。
 二人があれこれと思案を巡らせている内にシャルロットの手当ても終わり、それからもう少しだけ休息を取ると、一行は再び腰を上げて歩みを進めた。
 木々の間をうねる様に存在している獣道を、道中で発見された足跡から割り出した方角に向かって進みながら、注意深く辺りを観察する。
「オォ―――イ‥‥‥御夜サンヤ―――イ‥‥‥」
 唐突に声を発したのは正木鏡太郎(ia4731)だった。
 そのどこか不気味な声色に思わずぎょっとしつつ、他の仲間たちも呼びかけを試みた。
「おぉ〜い! 御夜ぉ〜〜!」
「御夜ぉ! いなぁいかぁ?」
 斉藤晃(ia3071)と犬神も名前を呼びかけつつの探索を考えていたため、すぐに正木に続いて声を出した。
 しかし、当然この声を聞いている可能性があるのは御夜だけではない。
 柳生右京(ia0970)と菘(ia3918)は声を聞いたアヤカシが寄って来る可能性を考え、神経を研ぎ澄ませて周囲を警戒している。
「怪狼は退けましたけど‥‥早々何度も続けられないですね」
 円状の陣形を組んで進む一行の後方を警戒しながら、菘は呟くように言い、手にした長巻を強く握り締めた。
 一方で柳生はあまり身構えることなく、静かに辺りを見回している。
「何度現れても同じだ。全て切り伏せるのみ」
 そうして一行は少しずつだが森の奥へと進んで行き、天河が見つけた、御夜が身を潜めていたのではないかと思われる草陰と、そこから伸びる新しい足跡などを追って、徐々に御夜の向かった先を絞り込んでいった。
「足跡がまだ新しいな。これなら‥‥」
 水鏡がそう言うのと入れ替わるように、一行の耳を甲高い悲鳴が貫いた。まだ幼い娘の声だった。
「御夜や! 近いぞ!」
 斉藤の声をきっかけに、一行は一斉に声のした方へ走り出した。
 今の悲鳴が何によるものにせよ、御夜にとって良くない事が起きたのは確かだ。
 そして声の大きさからして、御夜は彼らの近くにいる。
 ならば迷うことはない。一心に駆け抜けるのみ。
「この先だ、もうすぐそこ!」
 走りながら心眼を使用し、自分達の目と鼻の先に生命反応があることを天河は仲間達に伝えた。
 周囲への警戒を強めながら、一行は御夜の声が発せられた場所へ駆け込んだ。
「いた、御夜だ!」
 最初に御夜を発見したのは水鏡だった。
 草木の少ない開けた場所の一番奥、二本の木の間に張られた巨大な蜘蛛の巣に、宿屋の女将から聞いた通りの容姿をした娘、御夜が捕らわれていた。
「助けて! 動けないの!」
 御夜も一行を見つけたようで、必死にもがきながら助けを求めている。
 だがその悲痛な叫びを更なる恐怖に染めるものが、御夜の頭上に迫っていた。罠にかかった獲物に寄ってきた巨大な蜘蛛のアヤカシ、化け蜘蛛である。
 その存在に気づいた御夜は、言い得ぬ恐怖に表情を歪ませ、先ほどよりも大きな悲鳴を森に響かせた。
 だが、そこまでだった。
 化け蜘蛛の牙が御夜を捕らえる事は無く、代わりに化け蜘蛛の巨大な顔に二本の短刀が深々と突き立てられていた。
「君の母様に頼まれて助けに来たよ、もう大丈夫だからね」
 天河は笑顔を見せながらそう言うと、突然の攻撃に驚いて退いた化け蜘蛛を再接近させないように牽制した。
 天河に続き、他の仲間達も次々に御夜の元へ集い、御夜の救出と、仲間を呼んだ化け蜘蛛の撃破に挑んだ。
「御夜は私たちに任せて、皆は化け蜘蛛をお願い!」
 御夜を拘束している化け蜘蛛の巣を引きちぎりながら、水鏡は化け蜘蛛と対峙している仲間達に呼びかけた。
 無防備になっている水鏡の援護には天河と犬神がついている。
「おう!」
「任せておけ」
 まず先手を打ったのは斉藤と柳生の二人だった。
 それぞれ愛用の斧と刀を構え、目の前の化け蜘蛛に突進していった。
 化け蜘蛛の数は全部で三匹。斉藤と柳生はそれぞれ一匹ずつ化け蜘蛛に向かっていき、吐き出される糸を巧みに避けながら攻撃の機会を伺っていた。
 一対一で戦う二人を、背後からもう一匹の化け蜘蛛が狙っていたが、その更に後ろから迫る影があった。
「覚悟ぉ!」
 菘は素早く背後から化け蜘蛛に接近し、長巻で斬り掛かった。
 化け蜘蛛の腹の部分に斬撃が命中し、化け蜘蛛はのたうち回るように暴れた。
 菘は巻き込まれないよう後退して距離をとり、入れ替わるようにして飛び出していったシャルロットが暴れる化け蜘蛛の吐き出す糸や振り回す脚をジグザグに走り回ってやり過ごし、手にした大剣の射程に入るや否や、思い切り振り下ろした。
 シャルロットの一撃は化け蜘蛛の脳天に直撃し、その一瞬動きを止めた化け蜘蛛に菘が再接近して更に一撃を加えると、そのまま化け蜘蛛は倒れ、消滅した。
「援護感謝します、シャルロット」
 化け蜘蛛が消滅するのを確認すると、菘は共に敵を倒した小さな仲間に笑顔を浮かべながら感謝を伝えた。
 シャルロットは表情こそ変えなかったものの、小さな右手の親指を立て、菘に向けて突き出した。
「そぉりゃあああ!」
 そんな余韻を壊すように、斉藤の雄叫びが辺りに響き渡った。
 力強く振り回した斧が化け蜘蛛の糸を絡め取り、その勢いを保ったまま再度振り回した斧の一撃が化け蜘蛛の脚を三本ほど纏めて斬り落とした。
 バランスを崩して倒れ込んだ化け蜘蛛の隙を見逃すことなく、斉藤は化け蜘蛛の正面に回り込んで思い切り斧を振り上げ、両断剣の強烈な一撃を加えた。
 真っ二つになった化け蜘蛛が消滅し、残る一匹となった化け蜘蛛の方へ斉藤が視線を移すと、そちらももう決着が付く寸前であった。
 対峙していた柳生に正木が援護に加わり、二本の刀が化け蜘蛛の体を立て続けに刻んでいる。
「フフフ‥‥今日もイイ斬れ味ダヨ、ユリ子‥‥」
 自身の刀に向けてそう声を掛けながら、正木が化け蜘蛛の顔面に斬撃を当てて視界を潰すと、入れ替わりに飛びかかってきた柳生が化け蜘蛛の頭上で刀を振り上げた。
「少しはタフなようだが、蜘蛛如きが調子に乗るものではないな」
 そのまま落下する勢いも加えつつ放った強打がとどめとなり、最後の化け蜘蛛も消滅した。
 戦いが終わる頃には既に御夜は巣から救出されており、森の中で負ったであろう擦り傷などの手当を犬神が行っているところだった。
 御夜は酷く疲れている様子だったが特別大きなけがなどがあるわけでもなく、犬神の用意した包帯と薬草で手当は事足りていた。
 正木が用意した岩清水を差し出した水を一気に飲み干す御夜を見守りながら、斉藤が森へ入った理由を聞くと、どうやら女将との些細な喧嘩が原因で家を飛び出し森に入ったものの、道に迷って帰れなくなってしまったとのこと。事前に女将から聞いていた通りの理由だった。
「とにかく無事で何よりや。これからすぐに帰るか? それとも帰りづらいか?」
 斉藤の問いに、御夜は迷うことなく答えた。
「怒ったお母さんも怖いけど‥‥アヤカシはもっと怖い」
 それを帰還の意志と受け取った一行は、一刻も早く御夜を森の外へ連れ出すことを決め、帰路についた。
 帰りの道中は御夜を水鏡がおぶり、それを囲むようにして円陣を組んで進んだ。
 日はそろそろ落ち始めようかという時刻。完全に日が落ちてしまう前には帰りたいと考えていた一行には、あまり余裕のある時間とは言えなかった。
 御夜に負担の掛からないよう気を使いながら出来る限り急ぎ、アヤカシと遭遇しないように願いながら歩みを進める。
 だが一行の願いはどうにも魔の存在には通じなかったようで、あともう一息で森を出られるというところでそれは起きてしまった。
「鳥の鳴き声が急に止んだ‥‥天河さん、心眼を」
 まず最初に菘が空気の変化に気づき、天河に心眼の使用を頼んだ。
 天河はすぐに心眼を使用し、周囲に迫っているものの存在を調べた。
「森を見通せ心の目‥‥みんなお見通しなんだからなっ!」
 決め台詞の様にそう言いながら辺りを調べる天河は、迫りくる敵意が確かに存在することを確認すると、急いで仲間達に伝えた。
 敵は正面と後方から挟み込むように接近しており、数もそれなりにいるとのこと。
 正面の敵を退けて道を確保し次第、そのまま逃げきろうと全員が腹を決めるのと同時に、アヤカシ達は計ったかのようにその姿を現した。
 正面からは化猪が四匹、後方からは無数の怪狼。
 まずは正面の化猪を何とかしなければならないと、前衛を担当していた柳生と斉藤、正木の三人は突進してくる化猪の導線を御夜と水鏡から逸らすために左右に散った。
 斉藤は猛然と突進してくる化猪を真横に跳んで避け、大木に正面から衝突した隙をついて、その横腹に両断剣を容赦なく叩きつけた。
「急がなあかんな、こりゃあ」
 御夜は水鏡におぶられ、更にそれを守るように犬神と天河が怪狼を退けている守りの体制をしっかりと取っているが、この状況下に置かれた御夜の心境を考えると、うかうかしてはいられない。
 普通の娘にすぎない彼女にとって、この状況こそが心の負担となってしまうのだ。
「好き勝手はぁさせられんなぁ」
 犬神の長槍が怪狼を一突きに刺し貫き、水鏡と御夜に迫る脅威を退けたが、数の多さだけはどうにもならないところもあり、打ち漏らした怪狼が一匹、水鏡と御夜の方へ向かって行った。
「大丈夫、ボクが御夜には指一本触れさせないよ」
 怯える御夜を宥めながら、水鏡は背後から迫る怪狼を酔拳と背拳の合わせ技で蹴散らした。捜索開始時から常用していた古酒のお陰で程よく酔っていたため、酔拳の力を余すことなく発揮している。
「送り狼なんて、やらせない!」
 後方の菘とシャルロットは次々に迫る怪狼を薙払うように退けている。
 前衛が化猪を倒し、道を開くまでは、何としても後方からの敵を食い止めなければならない。
 二人はひたすらにその一心でそれぞれの武器を振るい、また新たな怪狼を斬り刻んだ。
「一気に仕止める‥‥」
 そんな後方の意志を感じとってか、柳生も速攻で勝負をつけに掛かった。
 突進いてくる化猪を回避し、後方に回り込んで両断剣で仕留めた。
「良い度胸をしていますね‥‥子の行く道を塞ぐ等とは‥‥」
 正木も木々を盾にして突進攻撃をやり過ごし、化猪の背に強烈な一撃を浴びせた。
 化猪の単純な動きに救われてか、斉藤が更にもう一匹の化猪を撃破するまではさほどの時間は掛からなかった。
 前衛が道が開けたことを仲間達に伝えると、一行は追ってくる怪狼をやりすごしながら一気に森を駆け抜けた。
 森の出口が近くなるにつれ怪狼の数も減り、一行が森の外へ出る頃には一匹も追ってくることはなかった。
 日はまだ山のてっぺんから半分ほど顔を出している。
 なんとか日が落ちるまでには帰れそうだと胸を撫で下ろしながら、一行は女将の待つ宿へ向かった。

●子は宝
 宿屋へ無事に帰りついた一行は、愛娘の帰りを今か今かと待っていた女将に盛大に迎え入れられた。
 親子喧嘩はどこへやら、娘の顔を見るや否やその存在を確かめるように強く抱擁していた。二人共もう喧嘩のことなどまったく気にしている様子も無い。
 親子の再会を祝福しつつ、開拓者一行は約束通り女将の経営する宿屋に特別いい部屋を用意して貰い、皆ゆっくりと羽を伸ばした。
 水鏡は犬神、菘、そして御夜を誘って風呂に向かった。
 からかいなのか本気なのか、天河も風呂に誘われたが、当然ながら天河は「ぼっ、僕は男だっ!」と突っぱね、男湯に向かっていった。
「‥‥斬らねば癒されぬ渇きか。だが、今はそれでいい」
 皆で同じ時間を共有している者も居れば、一人の時間を過ごしている者も居る。
 柳生は一人、部屋の窓から夜空を見上げつつ、宿で用意してもらった酒を呷っていた。
 この酒が中々に美味であるという話を聞いた斉藤は女将に頼んで同じものを用意して貰い、風呂から上がってきた天河と犬神、そして何故か居合わせた正木と、更に女将を加えた面子で晩酌を始めた。
「客でもなく知り合いでもないもんやから、聞くぐらいはできるちゅうもんや」
 斉藤が今回の一件について女将に尋ねると、女将は静かに語り始めた。
「自分が情けないです。仕事の疲れが溜まっていたとはいえ、大事な娘を必要以上に叱ってしまって‥‥今にしてみれば八つ当たりみたいなものでした。大事なもの程、失くしてからその大切さに気付くものなのだと、改めて思い知らされました。私にとって、御夜は何よりも大切な宝です。この度は本当に、ありがとうございました」
 改めて礼を言われた事で、今回の依頼がいかに重大な事だったのかを再度実感しつつ、斉藤らは遅くまで杯を交わした。
 その後も宿屋は水鏡と犬神が御夜と菘を巻き込んで夜更けまで大騒ぎしながら遊んでいたりと、賑やかな時間は続き、夜も更けきった時間になってようやく全員が床につくと、宿屋は一気に静まり返った。
 そんな中、宿屋に着くや否や眠りこけてしまっていたシャルロットがそっと目を覚まし、ゆっくりと窓辺にやってくると、夜空を見上げて静かに呟いた。
「‥‥‥ぱぱ‥‥‥がんばったよ‥‥‥」
 親と共に同じ場所、同じ時間を共に過ごす子供も居れば、一人修羅の道を歩む子供も居る。
 どんな子供であれ、未来の世を担う宝である事には変りは無い。
 宝を守り、宝を育てながら、開拓者達はまた新たな道へと進んで行くのだった。