【遊島】かんみのみ
マスター名:西尾厚哉
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/12/20 03:39



■オープニング本文

「何か里のうまいもん、お土産に持って帰るよ。ニーナ姉は甘いもんすきだよな?」
 ジルベリアのヴォルフ伯爵の元にいた神西桃火(iz0092)と弟の白火が一度天儀の実家に戻る。
「大好きよ。もちろん」
 ヴォルフ伯爵の娘、ニーナは顔をほころばせた。
「レナの誕生日が近いのよ。誕生日当日よりあとになるけど、パーティがあるわ。それまでに戻って来て? 一緒にパーティに行きましょ?」
「やたーっ! ぱーちー! うまいもんー! あたし、レナ姉にも土産持って帰るー!」
「やめろ、桃火、恥ずかしい」
 兄の橙火が思わず言い、弟の白火もこくこくと頷いた。


 さて、それで。
 2人は父母に会い、パンプキンパイの土産を渡し、数日家にいたところで再びジルベリアへの帰途につく。
 その前に土産だ。
 雛あられも買ったし、月餅も買った。季節はちょっとずれているけれど、月見団子も。
 甘味じゃないけど栗ごはんのお握り。(これは恐らく桃火の腹減り対策かもしれない)
「なにか、いんぱくと、に欠ける」
 そんなことを呟きながら歩き、覚えのある姿を見て桃火は「うきゃっ」と走り寄る。
「コマメー!」
 うわわわわ、と白火は恐怖を感じる。
「小豆(あずき)だ!」
 いかつい顔がギロリとこちらを向いた。
 天儀とジルベリアを往復する商船の船長、小豆銀介だ。
 小粒な名前の割には巨体の持ち主。
「あらン、白ちゃんじゃないの。どしたの、あんた達。帰ってきたの?」
 再び白火は恐怖を感じる。
 やだやだやだやだ、小豆って男の子好きだからいやだっ…!
「せんちょー、またジルベリアに行くのか? 乗せてくれ」
 と、桃火。
「うるせぇ、ジルベリアより遊島が先だ」
「なに、遊島って」
「新しい島が見つかったんだよ。商売のネタを探しに行く」
「うまいもんがあるのか」
「だからそれを探しに行くんだよ!」
「甘いもんがあるか?」
「おーまーえーはー話を聞いてるかあああ!」
 小豆は桃火の頭を掴んでぐりぐりと振り回す。
 白火は恐怖の次に不安を感じる。
 桃〜… まっすぐジルベリアに行こうよぅ…

「あたし達も連れてけ! 甘いもん見つけて帰るっ!」

 やっぱりっ…!

 白火はがっくりと肩を落とした。


■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
レティシア(ib4475
13歳・女・吟
春吹 桜花(ib5775
17歳・女・志
クロウ・カルガギラ(ib6817
19歳・男・砂
八甲田・獅緒(ib9764
10歳・女・武
イルファーン・ラナウト(ic0742
32歳・男・砲


■リプレイ本文

「ひゃほ〜! レティシア〜っ!」
 船に乗り込んだレティシア(ib4475)を見つけて神西桃火が飛びつく。
「きゃっ!」
 後ろに倒れ込みそうになる2人をクロウ・カルガギラ(ib6817)が「おっと!」と受け止めた。
 白火が彼の姿を見て顔をほころばせる。
「クロウさん! あ! イルファーンさんも!」
 よお、とイルファーン・ラナウト(ic0742)が白火の頭をぐりぐり撫でた。
「桃火さんっ、くっ…苦しいですっ…」
 桃火に頬を押しつけられているレティシアが叫ぶ。
「はいはい、船が動くと危ないでやんすよ〜」
 春吹 桜花(ib5775)が笑って桃火を引き離した。
 コホコホと咳込みつつも、元気な桃白の様子に少し安心するレティシア。
 前に一緒にいた時は命を省みない兄の様子に心を痛めていた様子だったけれど。
「野郎ども!」
 船室から小豆銀介が顔を出した。
「そろそろ出航だ! 配置に…」
 野太い声で言いかけて、羅喉丸(ia0347)、クロウ、イルファーンの姿を目にするなり
「…ついてちょーだいね」
「は、配置って…?」
 八甲田・獅緒(ib9764)が小さな声で言う。この船は確か商船。
「言ってみたかっただけだと思います…」
 白火がそれに答えた。


「桃火殿は『甘いもん』を探したいようだけれど、手伝ってもいいかな」
 下調べにと野草図鑑を開きながら羅喉丸がキラリとした笑みを小豆に向ける。
 それはもう小豆が嫌と言うはずがない。
「もっちろんよぉ。それが商売のネタになるかもだし?」
 女性陣はわいわい。
「お、温泉っ、見つかると嬉しいのですぅ…」
 獅緒はうっとり、
「もふもふがいるでしょうか…」
 レティシアも目に星。
「ねえ、船長はどう呼ぶでやんすか? 銀のあんちゃん? 姉さん?」
 桜花が桃火に尋ねる。
「あたしは時々コマメだな」
 と、桃火。
「それ言うと怒られます」
 白火が慌てて横から口を挟む。
「ま、姉さんでいっかー」
 桜花は笑った。
 そうこうしているうちに島の上空に着く。
 着陸できそうな場所は森から離れているので近いところで船を降下させ、縄梯子で地上に降りることに。
「船長、俺達は待機っすか」
 乗組員が口を尖らせる。
「うるせえ。お前らは船をきちんと守ってろ」
 小豆は答えて縄梯子をばさりと下ろした。乗組員にはかなり厳しいオヤジ風。
 念のため、男性陣が先に降りる。
 縄梯子は地面まで届かず下が空いていたが、これくらいみんな苦なく飛び降りる。
 全員揃って、さあ、行くぞと足を向けかけて
「待たんかい、おのれら!」
 小豆を忘れていた。短く太い足が空中でぷらぷらと地面を探している。
「これは失礼を」
 羅喉丸が腕を伸ばしたが、その途端
「あぶなーい!」
 桃火が羅喉丸にタックル。
「わっ」と羅喉丸は横に逸れ、小豆がずうぅんと地に落ちた。
「おいおい、依頼主だぞ」
 白目をむいてひっくり返っている小豆をイルファーンが覗き込む。
「桃火殿っ」
 羅喉丸が桃火にめっ、とする。
「コマメ重いぞ。グライダーも落ちそうになったぞ」
 桃火は訴える。
「し、死んじゃった…?」
 獅緒が心配そうに小豆を突いた。
「船長はそれくらいじゃ死にませーん」
 縄梯子を手繰り上げながら上から乗組員の声。とっとと船は離れて行く。
 そして小豆はむくりと起き上がった。
「いやん」
 ぽんぽんと腕やお尻を払い
「行くぞ、てめえら!」
 思わず皆で「へい!」と返事をしてしまったのは、安心したせいだと思われる。


「割とあったかいでやんすな」
 周囲を見回しながら桜花が言った。
 降りてからの道筋をレティシアと羅喉丸で地図にしていく。
 時々鳥のさえずりが聞こえる以外はアヤカシも出そうにない長閑な雰囲気。
 しかし足元はそんなに楽ではなく、斜面も多いし段差もある。
 ここでも問題は小豆。
「いやぁん…」
 訴えるような視線を送られるたび、クロウや羅喉丸が手を差し出してやる。
 降りる時はいいが、登る時が大変。ただでさえ重いのに、小豆は背中に大きな荷物を背負っているから余計に重い。イルファーンの力はもちろん、そこに桜花も加わって4人がかりで大きな尻を押す。
 見かねて獅緒が手を貸そうとすると、クロウが手を振って止めた。
「来ないほうがいい。潰されたら大変だし」
「潰すかあ!」
 言った途端に小豆は手を滑らせてクロウを下敷きにした。
「ああっ!」
「あらン…ごめんなさぁい…」
「いいから、早くどいてくれっ! 重いっ!」
 超接近の赤い大顔にクロウは言った。
 その時桃火が叫んだ。
「なんか、甘いにおいっ!」
 確かに。
「大福…?」
 桜花が顔を巡らせる。くんくんと鼻を鳴らして桃火は歩き、そして声をあげた。
「兄さん、姉さん、見てー!」
 皆が走り寄り、そして見た。一角に大福の花が咲いている。いや、正しくは大福のようなぽわんと白く丸いものがひょろりとした茎の上についている。
「野草図鑑にない新種?…」
 羅喉丸は首を傾げる。
「食べられる?」
 桃火は目を煌めかせる。
「ケ、ケモノとか何も齧ってないみたい、危ないかもぉ…」
 大福のひとつに顔を近づけて獅緒が言う。その途端、大福が「くわ!」と口を開いた。
 慌てて身を反らせる獅緒。しかしそれを合図にしたように、他の大福も次々に口を開く。
 甘い匂いはさっきよりも強烈になり、虫たちがやってくる。そして

―― バクン! モッシャモッシャモッシャ…

「ひえ…大福が咀嚼してるでやんす…」
 桜花が呟く。
「食虫植物」
 レティシアが地図に書き込む。
「食えないのかー」
 失望の桃火。
 後ろで小豆がイルファーンの後ろに隠れてぶるぶる震えていた。

 また暫くざくざく歩く。
 スタミナのない白火が遅れがちになったので、クロウが腕を掴んだ。が、何か手触りが違う。
「ん? もふもふ?」
「えっ、もふもふっ?」
 レティシアが振り向き、
「猿」
 2人同時に声を出す。クロウが掴んでいたのは猿の腕だった。
 もしかして猿の群れに囲まれたのではと慌てて周囲を見回す。しかし気配がない。
「お腹空いてるんでやんすかね」
 指を咥えてしょんぼりしている猿を見て桜花がうーんと考える。
「あっしが持っているのは旅むすび1つ。貴重な食料でやんす…ぐぬぬぬ…ええい、決めたでやんす! ほれっ!」
「うきっ」
 意を決して桜花が差し出した旅むすびを猿は目を輝かせてひったくり、貪り食った。
 そしてぺこぺこ頭を下げるとあっという間に行ってしまう。
「…」
 羅喉丸とレティシアが「猿」と地図に書き込む。

 ぐぅ…

「くすん」
 桜花のお腹が鳴る。
「水の音がする。そろそろ野営の準備をしよう」
 クロウが彼女の肩を叩いて言った。

「こ、ここなら比較的安全…かもですぅ」
 木々の間を縫うように流れる小川を見つけて獅緒が言った。
 火を起こし、小豆が背負っていた荷物を開いた。酒やら食料やらを山ほど出てくる。重いはずだ。
「あ、旅むすび!」
 桜花が喜ぶ。
「おう。それ、持ってけ。俺も手に入れるのに苦労したが、猿にやった姉さんの心意気に惚れたぜ」
 小豆はニカリと笑う。何かこういうところは男。
「他も食うなり分けるなりしろよ。帰りは甘いもんをたんと詰めて帰らないといけないからな」
「ほう…?」
 イルファーンが言うと小豆は顔を真っ赤にした。
「な、何よっ! 商売のネタよっ、ネタっ!」
 うきゃっと桃火が小豆に抱きつき、皆は有難くお腹を満たす。
 恵方巻に発泡酒に梅酒に重箱詰めのお弁当…お弁当?
「ねえ、どう? この煮つけ」
 小豆がレティシアと獅緒に尋ねている。…作ったらしい。
「嫁に行けるでやんすな…」
 桜花が思わず呟いた。
 お酒は自然と小豆とイルファーンで盃を交わすことになる。消費しきれなかった物は皆で分けて持ち帰ることに。
「あ、明日は、温泉、見つかるかな…」
 獅緒が呟く。
「きっと見つかるわ」
 と、レティシア。2人はあっという間にすうすうと寝息を立て始める。
 桜花は「旅むすび、旅むすび」と大事にそれを荷物に入れた。
 その時小豆の声がした。
「イルファーン様、彼女はいるのぉ?」
 イルファーンが苦笑しているのが目に見えるようだ。
「ねえ、あたしは脈ありかしら」
「俺は女専門だからなあ」
「いやね、あたしの心は女よ、お・ん・な」
「ふっ…一回くらい試してみるのも悪くないかもな」
「何を試すの?」
 桃火が言う。途端に桜花は「ぐう」と寝てしまう。
「なんで急に寝たふりするっ!?」
 …それは大人の事情だからです。心の中で呟く。
 なお、見張りに立っていた白火は、羅喉丸がはっしと両耳を塞いだので聞こえていなかったそうだ。


 翌朝。
「おい」
 見張りに立っていた羅喉丸達のところにイルファーンがやってくる。
 皆でしばし呆然とした。
 山と積まれた見知らぬ木の実の山。その中心で高いびきをかく小豆。
 そして猿の軍団ずらり。
 どうしよう。
 閃光練弾か? と考えたクロウは桃火が荒鷹陣のポーズをとりかけたので慌てて止めた。なんだか余計に猿を刺激しそうだ。…とはいえ殺気はない。
 一匹が桜花の顔を見て駆け寄って来た。昨日の猿だ。
 猿は彼女に黄色い弓なりのものを差し出す。
「なんでやんすか?」
 桜花が尋ねる。
「うきき」
 猿は答える。そして器用に皮を剥くと、食べろと手ぶりする。
 匂いはすごくいいのだが、やっぱり心配。
「ええい、覚悟を決めるでやんす!」
 ぱくりと一口。広がる甘さ、なめらかな舌触り。
「うまーい! 甘いでやんすー!」
 思わず叫ぶ。
「た、食べたい!」
 桃火が叫ぶと猿は喜んで今度は房になった状態で持って来た。
「猿の恩返し」
 と、レティシア。それを聞いて猿全員拍手。
「人語を解すのか」
 羅喉丸が感心したように猿を眺めた。
 そもそも野生動物除けになるはずだった彼の身につけている鎖子黄金甲もなんのその。
 猿たちは羅喉丸の前で星の輝きを見るようにうっとりするのである。
 彼らは他に見たこともないものをたくさん持って来た。
 赤い色の丸いものは「うききー」、イガイガした外殻のものは「うききっきき」、どちらも桜花が刀で切ってみると、甘い香りと共に今まで見たことのない果肉が現れた。
「うききっききはもう少し熟成させたほうが良いかもしれない…」
 などと呟きつつ、羅喉丸がひとつひとつを口にしては記帳していく。
「これ、臭い」
 桃火が顔をしかめたのは「うききき」、匂いはひどいが猿が食べて見せたので恐る恐る口にすると、ねっとりとして、それでいて爽やかな甘さが広がった。
「ねえ、お猿さん、これはどこかに生っているの? 教えてもらえる?」
 レティシアが尋ねると猿はついて来いというように手招きした。皆でそれを追う。
 猿は小高い場所に来て指差した。
「うきき」と「うききー」「うききき」は木の上、
「うききっきき」は地面の尖った草の中、
 他にも「うきーきうきーき」というものも木に生っているし、
「きーうきうきーき」は蔓状で他の木に巻き付いていた。
「お!」
 獅緒が急に叫んで向こうを指差す。
「お、温泉ですぅっ」
 え、と皆が駆け寄る。立ち昇る湯気、ちらちら光る湯の面。
「小豆姉さんを起こして行くでやんすっ!」
 桜花が万歳をして叫んだ。

 果実は小豆の荷袋に山ほど詰めた。
 レティシアと羅喉丸は生っていた場所をしっかり地図に記す。
 温泉は歩いて1時間くらいの場所にあった。木々に囲まれた窪地に湯が沸いている。
 ここでも猿がいて、まったりと湯に浸かっているだけでなく、ふと見れば頭に葉を乗せているやつもいるし、これからちゃぽりと浸かろうとする輩は恥じらいながら前を大葉で押さえている。そして皆の姿を見ても逃げる素振りがない。むしろ、
「うききゃ」
 来いや、というように手招きする。
 これは入るしか、と急いで天蓋を設置して脱衣場所確保。
「あたし、水着持ってきてなーい」
 桃火が言う。
「わ、私もですぅ…こっち見ないでくださいねぇ」
 と、獅緒。
「大丈夫よ、大判手拭い持ってきてるから」
 小豆は言い、天蓋の中に入ろうとしたところでレティシアが「きゃあ」と小さく叫ぶ。
 小豆は男女、どっちで脱げばいいのだろう。
「とりあえず、こっちに来い」
 イルファーンに男性用天蓋に呼ばれ、小豆は「喜んでー!」と走って行った。

「はふぅ…」

 皆で湯に浸かり空を見上げる。静かだ。
 朝風呂だよ、朝風呂。すごく贅沢。
 小豆はもう嬉しくてしようがないようで、女性陣の傍に来れば
「お肌がきれい、何かお手入れしてるの?」
 男性陣の傍に来ては
「ねえ、胸板触っていいかしら?」
 小豆の行動を何か勘違いしたらしく猿たちも真似しに寄って来る。
「やめろ、くすぐったい」
「や、やめろっ」
「やめなさいっ」
「ひ、ひぁあ」
 そのうち、クロウの額にぴきりと青筋がたった。動物的な勘でずざっと温泉の反対側に身を寄せた猿と…小豆。
「クロウさん、クロウさん!」
 白火がクロウにすがる。思わずダナブ・アサドを使いかけたクロウは
「や、ごめん。つい」
 と、片手をあげた。
「でも、もう触らないで」
「はい…」
「うき」
 猿と小豆が頷いた。


 再び訪れる静寂。


 みんなで幸せ満杯。
 猿たちもほんわり。

「ねえ、姉さん」
 桜花が小豆に声をかけた。
「いいところでやんすね」
「…」
「…そっとしときたいでやんす」
「商売のネタはもう見つけた」
 向けられた桜花の目を見て小豆は笑う。
「嬢の甘いもんは詰めたし、あとは、小豆冒険譚の一つに入る。見知らぬ島の開拓者との一夜だ。本にすりゃ、売れるだろうぜ」
 羅喉丸は最後に温泉の場所を地図に記して小豆に渡す。
「レティシア殿と作った地図だ。忘れた部分があればまたお呼びを」
「男前だねえ、兄さん。お嬢さんも最高だ」
 小豆は笑って地図を受け取った。

 行きと同じように途中まで船が迎えに来る。違うのは猿たちが見送ってくれたこと。
「世話になったな」
 最後に縄梯子に足をかけた羅喉丸が猿たちに言う。その時
「おもろかったで。ほな。うきっ」
 えっ、と羅喉丸は振り向いたが、猿たちは手を振って森の中に消えていくところだった。



 荷物一杯の「甘いもん」は早速桃火がヴォルフに持ち帰り、その後スィーラに届けられた。
 しかし「うききき」だけは異臭を放ちまくったので堪えかねて途中で海に捨てたそうだ。
 スィーラでは初めて見る果実にどうするべきか迷い、皇女の誕生パーティが先なので「うきき」はケーキに焼き込んでみた。
 それ以外はプディングにしたり、ソースにしてみたそうだ。味見をした限りではかなりイケる味だったという。
 また、島では誰一人お腹を壊す者はいなかったが、ニーナの幼馴染、バレク・アレンスキーが大変だった。
 ヴォルフの屋敷に来た時に「うききっきき」がウマいので皮の端まで食べたら唇が腫れて七転八倒したそうだ。
 スィーラではその情報を元に「うききっきき」は皮を厚く剥いて蜜煮にしたらしい。