【十七夜・終】未来へ
マスター名:西川一純
シナリオ形態: シリーズ
危険 :相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/02/13 12:11



■オープニング本文

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 数々の想いと戦いを重ね、時は現在に至る。
 あの時、あの場所で、あの人達だから。そうやって人々の歴史は紡がれていく。
 そして人生には必ず区切りがある。事件には終わりがある。それが、悠久の時を経てなお不変の真理―――

 長い時を越え、ついに因縁に終止符が打たれた。
 数々の激闘と悲しみ。それらの元凶であった十七夜 木乃華及びそれが呼び出した謎のミイラは死に、物語は終わった。
 だからこれはカーテンコール。物語を紡いできたあなたたちと、亜理紗のためのカーテンコール。
「木乃華が使ってた陣をギルドの調査隊が調べていたんですが……その調査が終わりました」
「へぇ。結果は?」
「全然分からないということが分かりました」
「駄目じゃないの!」
 ある日の開拓者ギルド。
 職員の十七夜 亜理紗と西沢 一葉は、訳あり相談者のための個室で話をしていた。
 秘密性の高い依頼などがあった場合に使われる場所で、つまりはこの話は他所に出したくないものということである。
「お偉いさん方も頭を抱えてました。作った奴は天才だがマジキチだって。五行の陰陽寮にでも依頼出来れば違うんでしょうけど国境超えるのは難しいですし、今のままじゃ平和利用も無理っぽいです」
「あなたでも駄目?」
「一部利用くらいはできますけど、全部は無理です。……それに、もう関わりたくありませんし」
 結局、破壊くらいはできるということで亜理紗に事後処理を頼み、念のためあの廃坑も潰してしまったほうが良いという結論に達したという。無理だとは思うが、万が一誰かに悪用されても困るからである。
 木乃華の遺体は調査の時にそこに埋められ、簡素ながら墓も作られた。それもろとも廃坑を崩し埋めてしまうらしい。
 亜理紗は悲しいとは思わなかった。別に墓参りに行くつもりもなかったからだ。
「ですから、近いうちに陣を破壊しに行きます。できればその時、開拓者の皆さんにも来ていただきたいかなーって」
「まぁ、いくら十七夜がいなくなったとはいえ廃坑に一人は危ないものね」
「それもありますけど……」
 歯切れの悪い亜理紗。一葉はなんとなく理由に気づいていた。
「マリッジブルー?」
「そ、そういうのじゃないと思います。でも……その、私は本当に幸せになってもいいのかなぁ……って」
 実の祖母である十七夜 木乃華が犯してきた罪。それによる大勢の犠牲者。
 亜理紗も被害者の一人とはいえ、祖母のしてきたことだからと無関係を決め込むわけにもいかない。
 愛する人が居る。愛してくれる人がいる。でもそれは、犠牲になった人たちも同じではなかったのか。
 それを思うと、亜理紗は自分が結婚して幸せになることを自分で許せなかった。
「……あなたが思い悩むことじゃないのに」
「あはは……頭では分かってるんですけどね。理解は出来ても納得ができないと言いますか」
「充分マリッジブルーの範囲内だと思うけどね」
「そ、そんなことないですってば! 私、旦那様のためなら何でもしますから!」
「ん? 今何でもするって言ったよね?」
「えっ、おかしいですか?」
「おかしいわよ。嫌なことは嫌、駄目なことは駄目ってきちんと区別なさい。対等じゃないと長く続かないんだから」
「結婚したこと無いくせにー!?」
「一般論よ! あなた、奴隷にでもなるつもり?」
「違いますよぅ!」
「じゃあ旦那様が人を殺せって言ったらあなた殺すの?」
「う……きょ、極論じゃないですか!」
「極論が必要な時もあります。旦那様が3日間ご飯抜きって言ったら従うの?」
「1日で餓死します!」
「しないわよ! じゃあ旦那様が俺のために死ねって言ったら死ぬの!?」
「あ、それならできます」
「できるんだ!?」
「どうせ旦那様に助けてもらった命ですから……」
「まったくもう。まぁ、私もあの人がそんなこという人じゃないっていうのは知ってるけど、本当に対等な立場で居ることは心がけておきなさい。引け目を感じながら結婚生活なんて幸せにはなれないわよ」
「うぅ……」
 まだ納得しきれていない表情を見て、一葉は重症だなと判断する。
 提出された依頼書にこっそりと『亜理紗がマリッジブルーっぽいのでそれとなく助けてあげて』と書き込んだのは内緒である。
 これはあなたたちと亜理紗のためのカーテンコール。
 過去にも想いを馳せるもよし……過去と決別するもよし。
 未来へと続く明日のために、御礼を―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
ヘラルディア(ia0397
18歳・女・巫
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
无(ib1198
18歳・男・陰
鹿角 結(ib3119
24歳・女・弓
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔


■リプレイ本文

●あなたとエピローグ
 廃坑に到着した一行は、何の問題もなく最奥へと辿り着く。
 そこには簡易的に作られた十七夜 木乃華の墓と、今だ健在である巨大な陣だけが存在していた。
 これを破壊することで本当に全てが終わる。そしてそれができるのは十七夜の血を引く亜理紗だけなのである。
 しかしその前に。最後にこの陣にも良いことに役立ってもらおうと亜理紗は考えた。
 銃も刀も人殺しの道具だが、使い方次第で人を助ける事にも使える。
 要は使う側の人間の心一つというわけである。
 この陣は時間を操作する効力があるらしい。それを起動し、亜理紗は懐かしい面々を人妖として短い間であるが召喚できる。
 まず現れたのは―――
「……まさかこの私を喚び出すとはな」
 できれば二度と見たくない顔。全ての元凶、十七夜という名のミイラ。
 希望したのは无(ib1198)。亜理紗の術は不完全であるため、喚び出した人妖は完全に無害化しているので問題はあるまい。
「手短に。最後、誰に謝罪した?」
「我が主に。貴様らのお陰で再会の芽は完全に摘まれたからな」
「……そうですか。瘴気を吸収できるのは何故です?」
「答えてやる義理はない」
「でしょうね。充分です」
 无の合図で亜理紗はミイラを消した。無力であっても気分のいい相手ではない。
 次に喚び出されたのは、十七夜 木乃華であった。
「ねえ、お婆ちゃんは旦那さんとどう知り合ってどう結婚生活をしていたの?」
「まったく、おぬしらは最後の最後まで質問タイムなんじゃな。まぁ、ワシもこの時間が嫌いではなかったよ。頭のいい子は好きじゃからして」
 毒が抜け全てを悟ったような木乃華の表情。神座亜紀(ib6736)や无はいつものように質問をぶつける。
「爺さんとは幼馴染じゃったよ。仲の良い兄弟みたいな感じでな、いつの間にか良い仲になっとった。ワシが十七夜の啓示を受け陰陽寮に修行に出とる間もずっと待っとってくれてなぁ。殺伐とした中に唯一の日常が残った気がして、爺さんとの生活はワシの癒しじゃった」
「好きだったんだ?」
「おうとも。信じてもらえんかも知れんが、爺さんも、彩々楽も、その旦那も……亜理紗のことも愛しておったよ。……なのにどうしてとは聞いてくれるな。人は死ぬ。最後に残ったワシの日常が天寿を全うした瞬間、ワシの全ては修羅に塗りつぶされたのよ」
「……同情できるのか微妙な線なのです。私は亜理紗さんが産まれた日時を知りたいのです」
「また奇特じゃな。そんなことを知りたいとは」
 そう言って前に出たのはレネネト(ib0260)だった。
 それに対し、肩をすくめながらもさらっと日時を答える。
「……即答なのですね」
「うん?」
「孫の産まれた日時を正確に覚えている……愛していたというのは嘘ではなさそうなのです」
 苦笑いをする木乃華に今度は无が声をかけた。
「私も質問させていただきますよ」
「応よ」
「何故一人で考えてたんです?」
「話が突拍子もなさすぎて誰にも信じてもらえんじゃろ」
「……亜理紗さんに対して言葉は?」
「どの面下げて何を言えと? 幸せになれという言葉すらワシには烏滸がましいわい」
「十七夜の術の鍵は?」
「『想い』かのう。清濁含めて強い想いじゃな」
「ふむ……やはりあなたとはもう少し早く会いたかったですねぇ」
「ワシもじゃよ。おぬしが六十年ほど早く生まれておってくれたらまた違ったのかも知れん―――」
 そこで木乃華は消滅した。亜理紗の維持が限界だったらしい。
 次に喚び出されたのは、造瘴志と呼ばれた人妖の一人。病弱そうな作曲家の青年。
「お久しぶりだね。まさかこうしてまた会えるとは思ってなかった」
「僕もです。……事情は察していらっしゃるとのことですが」
 鹿角 結(ib3119)が造瘴志の面々を希望したのだが、代表で作曲家の彼が出てきたらしい。
 戦う必要のない状況であれば、彼らはただの被害者の一人。穏やかに話すことができる。
「えぇ、全部わかっています。僕達が存在しない人間であることも……僕達を創った人を君たちが倒してくれたこともね」
「そうですか……良し悪しは、僕には計りかねますが……」
「いえ、良かったんですよ。きっと他のみんなもあなた方に感謝してますよ」
「それを聞いて安心しました。こうして僕が会いたいと願い、実際に人妖として呼ばれた。このことが、もうあなた方は『存在しない者』ではない証明だと、そういったら信じていただけますか?」
「勿論。僕たちは君たちに出会って『存在する人間』になれたんだ。感謝してる。心の底からね。……できれば―――」
 君のために一曲作りたかったと言い残し、青年は消えた。
 ぎゅっと握った拳で鹿角は何を思うのか。それは彼女にしかわからない。
 次いで現れたのは、同じく造瘴志。その最後の一人であり……壊れた救国の英雄である。
「お久しぶりです。僕は雪切・透夜(ib0135)。よければこれを受け取って」
「私……私はジャンヌ。素敵なリボン……いいの? 何で私なんかに……?」
「女の子ですもの、こういうのがあってもいいだろうから。理由は……気に入った相手だからだよ」
「くす……相変わらず女の子泣かせなのね」
「そ、そうかな。あ……よかったら絵のモデル、お願いできるかな。多分、亜理紗さんが保たないから途中からは僕が目に焼き付けた君を……ってことになるけど」
「えぇ、私で良ければ」
 雪切からもらった青いリボンで髪を結び、優しく微笑む少女。とても泣きながら死闘を演じた相手とは思えない。
 それが今なら叶う。素直に話すことができる。
「笑顔、見せてくれたよね。笑ってくれて嬉しかった」
「私も嬉しかった。捏造された人間である私を、一人の人間と扱ってくれて」
「お別れを言う為に呼んだんじゃないんだ。輪廻というモノがあるのなら、再び出逢う事を願うから。その時、一緒に笑い合えるといいな」
「うん……その時は普通の女の子になりたいな。でも、剣士としてあなたの背中を守るのも素敵かも」
 ザザザ、と彼女の体にノイズのようなものが走る。そろそろ維持が限界なのだろう。
 雪切は筆を走らせ続けながら呟いた。
「……忘れない。だから―――」
『またね』
 二人の声が重なり、パサリとリボンが地に落ちる。
 それを拾い上げ、雪切は心に誓う。必ずこの絵を完成させると。
 次に召喚されたのは、懐かしきSA……セブンアームズと呼ばれた銀髪の少女が二人。
 剛爪のリュミエールと瞬鎚のシエル。希望者は鷲尾天斗(ia0371)である。
「よォ、久しぶりだな。紹介する、今度結婚する事になった亜理紗だ」
「わぁ、おめでとうございますッス!」
「……興味ない」
「シエルは相変わらずだな!?」
 まるでちょくちょく会っていたかのような自然なやり取り。しかし彼女たちは過去に倒され消滅したアヤカシたちだ。
 笑顔を覗かせる二人に鷲尾は胸の奥に暖かいものを感じ、二人を抱き寄せた。
 失われたモノ。守れなかったモノ。神が与えた機会を使って、二人に謝罪と感謝を。
「子供が生れたら『リュミエール』と『シエル』って名付ける。そして嫁共々幸せにしてやるから待っててくれ」
「えっ」←シエル
「えっ」←リュミエール
「えっ」←亜理紗
「えっ」←鷲尾
「冗談ッスよ! 自分たちはまた鷲尾さんに会えただけで満足ッス!」
「……子供にどら焼き食べさせてあげて」
「任せろ。……じゃあな」
「……はい。可愛いからって自分の子供に手を出したら駄目ッスよー?」
「しねぇよ!」
 最後はおどけて笑顔で消えた二人。鷲尾の心も少しは救われただろうか?
 そして、オオトリとして現れたのは、赤と青の瞳を持つ少年。木乃華が喚び出した人妖の一人。
 希望したのは真亡・雫(ia0432)。十七夜に止めを刺した人物であり、因縁に終止符を打ってくれた人物である。
 しかし、前回のように白面で顔を隠すこともない今回は、なにやら随分しおらしい。普段から穏やかで優しい彼ではあるが、輪をかけて控えめだった。
 そんな彼が会いたかった人物。鏡の向こうの自分であるかのようだと感じた、オッドアイの少年剣士。
「あは……なんて言ったらいいんだろう。でも、嬉しいですよ」
「うん……聞きたいことがあって。亜理紗さんに無理言ってお願いしちゃったんだ」
 出会うはずのない出会い。交わることのないはずだった運命。この陣もこういうことにだけ使えるなら素敵なものだっただろう。
 真亡は、何故木乃華が可哀想と彼が言ったのか……それを聞いてみた。
「あの人は……たった一人に愛情を注いでもらいたかったんです。僕や、あなたのように。世界の傍観者ではなく主役になりたかった……と言ってもよくわからないよね」
「誰もが自分の人生の主役なのに……?」
「ううん、理解しなくていいんだ。しないほうがいい」
「好きな人と結婚するのとは、また違うのかな」
「うーん……それもすごく素敵なことなんだけど、ちょっと違うんだ。でも、もし君にそういう人がいたら大事にしてあげて。僕にもシオンっていう大切な人がいるように……きっと君にも、良い人が現れるから」
「最後に、キミの名は……?」
「僕は―――」
「……うん。どうもありがとう……」
 耳元で真亡だけに囁かれた彼の名前。
 雨の一雫のように、彼らだけにしか届かない儚いものだった。
 それでも確かに、深く優しく……真亡の心の中に染み込んだという―――

●あなたにありがとう
 亜理紗は自分が幸せになっても良いのだろうかと悩んでいた。
 それを察した西沢 一葉が亜理紗のマリッジブルーをなんとかしてあげてくれと依頼書に追記し、開拓者たちはそれぞれの言葉で亜理紗を励ます。
 いつだって支えてくれた人々。大切な仲間。今もまた亜理紗の心を救ってくれる。
 だから、精一杯の感謝を。私が思う、私の感謝をみんなに。
「まずは……神座さん。
 まだ小さいのに、辛い戦いに参加してもらってごめんなさい。お姉さんたちにもお礼を伝えてください。
 頭が良くて活発で、ここぞっていう時に皆を助けてくれる一手を指せるのが羨ましいです。
 恐いことも、許せないことも、納得出来ないことも多かったと思います。でもそれらはきっと神座さんを成長させて、私なんてすぐに追い抜いちゃうと思います。
 お互いもっと成長して行きましょう。ありがとうございました。

 次に、鹿角さん。
 その正確な射撃には何度も救われました。三魔星戦では鹿角さんがいなかったら結果は違っていたんじゃないかと今でも思います。
 木乃華のせいで無用な犠牲を出させてしまってごめんなさい。それだけが心残りです。
 私が言うことじゃないのかもしれませんが、どうかあなたは自分で自分を許してあげてください。
 どうか、背負いすぎて心を壊さないことを願って……ありがとうございました。

 雪切さんには普段からお世話になってましたね。雪切さんが描く優しい絵、私も好きです。
 文字通り皆の盾となって前線に立つあなたはすごく頼もしかったです。
 造瘴志の時の大爆発……あの状況で守っていただいたこと、一生忘れません。
 あは、もし出会う順番が違ったら、私は鷲尾さんじゃなくて雪切さんに恋をしていたかもしれません。でもその感情はカミーユさんにお譲りしますね。
 鈍感なのは美徳とは言えませんよ。ジャンヌさんのようにあなたに好意を寄せてる女の子、たくさんいるんですから。
 これからも素敵なお友達でいてください。ありがとうございました。

 真亡さんも、お茶飲み友達としてお世話になってました。
 その優しさが、気配りがすごく素敵だと思います。でも、優しいからこそ心を痛め、憤ることも多かったでしょうね。ごめんなさい。
 獣骨髑髏との空中での死闘、そして雨の中の決着。忘れられません。きっと彼はあなたに救われたはずです。
 それと……木乃華が勝手に喚び出したあの人物、ごめんなさい。他の方々にも謝らないといけないと思いますが、特に真亡さんに。
 今度、ご飯に招待します。雪切さんや皆さんと一緒に御馳走しますね。ありがとうございました。

 レネネトさんには、SAやら三魔星やら造瘴志やら十七夜やらと、本当に色々な依頼でお世話になりました。
 前衛のような目立った大立ち回りはなくても、その知略と旋律で大きく助けていただきましたね。
 怪我もさせてしまいました。やきもきさせたことも多いと思います。それでも投げ出さずに最後までお付き合いいただいたことに感謝してもしきれません。
 レネネトさんの超越聴覚がなかったら色々なことが違っていたと思います。私も森から生還できなかったかもしれません。本当にありがとうございました。

 无さん。ここだけの話ですが、最初うーさんと読んでました。ごめんなさい。
 陰陽師の先輩ということで、すごく頼りになりました。必殺の魂喰がSAのマントを貫くのは凄かったです。知略だけでなく戦闘力もあって羨ましいですよ。
 あ、何より、あの木乃華のことを理解しようとしてくださったことに感謝しなくちゃいけないですね。
 本人も言ってましたが、あなたと話す時間は楽しかったと思います。もしかしたらあの質問タイムの間だけ、旦那さんと話しているような穏やかな気持になれたんじゃないでしょうか。
 ありがとうございました。よければこれからも先輩として御指導ください。

 ヘラルディア(ia0397)さんは知略担当であると同時に、皆の生命線でした。
 戦場でしっかり考えて位置取りして範囲回復を使う判断力は憧れるレベルです。
 縁の下的な立ち位置のせいで、あまり活躍を語れなかったことは申し訳ない限りです。こ、今回も……。
 女性らしい立ち居振る舞い、穏やかな言葉遣いも目標に足る人物です。ちょっと私には難しいですけど。
 最後の最後まで警戒を忘れず、気を配ってくださるその心遣い……ずっと忘れません。ありがとうございました。

 最後に……鷲尾さん。
 あなたに出会って、私の物語は始まりました。それが途中で終わることなく、今度はあなたと一緒に物語を紡いでいけるなんて夢のようです。
 強く、弱く、激しく、脆く、優しく、狂おしく。そんなあなたを私に支えさせてください。
 あ、私が歳を取ったからって捨てたりしちゃ嫌ですよ? ガチロリさん。
 ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします!
 それじゃ、崩しますよ!」
 そう言って亜理紗は陣を起動、廃坑を崩壊させていく。
 真亡が今は亡き者たちに捧げた白い花を中央に置いたまま、陣は暴走し最終的には砕け散ったらしい。
 外ではすでに日が傾き、影を伸ばしていた。
 その光に照らされ輝く亜理紗の左手。愛する人が贈ってくれた婚約指輪。
 共に贈られたサムシングフォーが、人の幸せな未来を予感させたのだった―――