【GR】忠誠の心
マスター名:西川一純
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/10/20 22:09



■オープニング本文

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 漆黒の闇の中に、不意に光が灯る。
 宝珠による光源は淡く揺らめくようであり、闇を照らし切るには不十分。
 しかし主はそんなことを気に病むことはない。眼前に傅く五体の龍を見下ろし、満足気な表情をしていた。
「随分と興じたようだなヒートガン。外の世界はどうであった?」
「はっ! 素晴らしき戦いに心が踊りました。開拓者を幾人も屠り、力を献上できましたことを光栄に存じます!」
 闇の中にあっても銀色に輝く武装した龍。装龍ことヒートガン。
 開拓者五人と互角にわたりあった中級アヤカシ。やはり最近の行方不明事件の幾つかに噛んでいたらしい。
 クローズドヘルムのため表情は見えない。しかし、ヒートガンは嬉しそうにしたのも束の間、とある報告をする。
「我らが龍王ゴッド・ラゴンよ。一つご報告しなければならないことがございます」
「申してみよ」
「私が倒した開拓者の何人かが、『龍王!? こんな手下が居るなんて聞いてないぞ!』というような言葉を残しました。御身は誰にも知られていないはず……どういうことでございましょう?」
「簡単なこと。余以外にも龍王と名乗る者がいるのだろう」
「なんやて!? そら不届きモンにも程があるでぇ! ゴッド・ラゴン! すぐにいてこましたりましょ!」
「……バルドリンガよ。言わせたいものには言わせておけば良い。そのように目立つ行動を取るものが居るのであれば我らの行動が隠される。いざとなればそちらに罪を擦り付けることもできよう」
 配下の龍の一体がいきり立ったのを見て、ゴッド・ラゴンはさらりとそう答える。
 生き残ったものが正しい。ならば精々利用させてもらう。それが彼のやり方なのかも知れない。
「我らが龍王ゴッド・ラゴン。今度こそ私に出撃をお命じください。まさかヒートガンにのみ自由をお与えになるわけではございますまい」
「ガルスキー……闘龍よ。そんなにも戦いたいか?」
「無論! それが我らの存在意義故!」
「ふ……よかろう。ヒートガンよ、例の取り逃がしたという開拓者の所在は掴めておらんのであったな?」
「は。情報を持っているという開拓者たちと交戦いたしましたが、撤退されてしまいました」
「ではガルスキー。逃げた開拓者の行方を追うとともに、ヒートガンと戦った開拓者も追え」
「御意! それ以外の開拓者と遭遇した場合はいかが致しましょう」
「任せる」
「心得ましてございます! ヒートガン、お前の無念は俺が引き継ごう」
 ガルスキーの言葉に、心強そうに頷くヒートガン。どうやら仲が良いようである。
 そうして、闇の中を一匹の龍が歩み出す。装龍とは真逆の、何も持たない己の身体一つだけで。
 仲間の失態を引き継ぎ、自らの自由と主のために―――

 一方、開拓者ギルドでは、確定した龍のアヤカシについて幾度と無く議論が交わされていた。
 自分で鍛えたという武具に身を固め、腕も確かな中級アヤカシというのは正直ヤバい相手である。
 頭がちょっと弱い、クローズドヘルムを被っているので噛み付きとブレス攻撃が来ないだろうという弱点(?)は予想できるが、決闘という名の下一対一の戦いを仕掛けて来るのが困りものだ。
 なるべく集団で行動するよう促すしかないのは厳しい。しかも最近、別の龍が開拓者を襲うという話も出ている。
 その龍は『ヒートガンを知っているか?』という質問を投げつけ、知らなければ叩きのめしてから飛び去り、知っている素振りを見せたら食い殺すという。
 それが例の武装した龍と関連があることは誰の目にも明らかだ。出現場所も前回装龍が出た付近であり、開拓者ギルドは再び依頼を出す。
 今度は調査ではない。最初から撃滅するべしとの内容で。
 龍王と呼ばれるゴッド・ラゴン。そしてそれに従う龍のアヤカシ。
 その規模がどれほどのものかすら、人間は把握できていない―――


■参加者一覧
志藤 久遠(ia0597
26歳・女・志
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
トカキ=ウィンメルト(ib0323
20歳・男・シ
不破 颯(ib0495
25歳・男・弓
フィン・ファルスト(ib0979
19歳・女・騎
華表(ib3045
10歳・男・巫
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
刃香冶 竜胆(ib8245
20歳・女・サ


■リプレイ本文

●中級
 アヤカシにはピンからキリまである。
 何を今更といった感じではあるが、握り潰せる蚊サイズのものから果ては大アヤカシまで、その種類や大きさは千差万別。それは強さにおいても同義だ。
 下級アヤカシというのがどこにでも発生するありふれたアヤカシを形容するのであれば、装龍と名乗った全身フル武装した龍のアヤカシは名実ともにランクが違う。
 中級アヤカシ。何百体に一体発生するかどうかのそれらは、下級とは明らかに強さが違う。中級の中でも更にランク付けはあろうが、下級はどう頑張っても中級に勝てないだろう。
 それは以前戦った開拓者なら肌で感じた。オツムは少々残念であったが、その力は歴戦の凄腕開拓者とほぼ互角。しかも三次元機動やら飛行能力やらでアドバンテージの塊だ。
 その装龍には仕える主というのが存在し、彼と似たような龍も仲間にいるらしい。中級アヤカシの集団など想像したくないものである。
 今度の龍は目撃情報が多いというか殺していない相手が多い。その目的は、装龍……ヒートガンと戦った開拓者を探しているという。
「向こうの方がこちらを探しているのですし、以前の村近くで構えていれば自然と遭遇できるでしょう」
 参加者の一人、志藤 久遠(ia0597)はそう分析した。実際問題、前回の舞台である山岳地帯付近で目撃情報が相次いでいるため、反論する者はいない。
 そしてそれは正しいとすぐに証明された。現場を少しウロウロしているだけで、重苦しい羽音と共に空から龍が現れた。
「……以前の装龍もそうでしたが、目か耳が良いのでしょうかね?」
「大きい……あれが、龍のアヤカシ。皆様のお役に立てますように……」
 トカキ=ウィンメルト(ib0323)も以前の戦いに参加したクチだが、相手がどうやってこちらを発見したのかいまいちよくわからない。
 今回初参加にして貴重な回復役である華表(ib3045)は、自信と相手との身長差に驚きつつも確かな決意を漲らせる。
「おぅい、あんたヒートガンとやりあった相手探してるんだろぉ? 俺らだぜ?」
 不破 颯(ib0495)は相手が射程内に入った途端、矢で狙撃を開始する。
 極北という技で放たれた一撃は相手の防御力を低下させる。当たれば龍とて痛かろう。
 が、龍は俊敏にバレルロールし矢を回避。二の矢三の矢も見事な空中機動で回避した。
 矢の洗礼を尽く避け大地を踏みしめたその龍は、ヒートガンが銀色に輝く配色だったのに対し全身深い茶色。
 噂通り装備などは何もなく、自身の鱗だけが彼の身を守っている。
 拳を握って構える様は、確かに泰拳士のようであった。
「……やりますわね。見ただけでわかります」
「そうですね。あの発達した脚部に腕部……それでいて引き締まった全身は徒手空拳に適した体の造り。一拳士として心が踊らないでもないですね」
「……SAにも似た潔さの持ち主かもしれませんが、アヤカシはアヤカシ。人とは相容れぬ不倶戴天の敵なのです」
 ジークリンデ(ib0258)はさらりと長谷部 円秀(ib4529)に釘を差したつもりだったが、そんなことは長谷部も最初から分かっている。
 人型だろうと龍型だろうと人間を喰らう化物である。撃滅こそが最上の策だ。
 開拓者たちを見回したその龍は、心なしか嬉しそうに口を開いた。
「……なるほど。ヒートガンを退けた人間というのは嘘ではなさそうだ」
「わ、わかるんですか!? といってもあたしは前回参加してませんけど……」
「分かるとも。今まで倒してきた連中とは格が違う。この闘龍ガルスキー、相手にとって不足無し!」
「あぁ、口振りからして前の阿呆のお仲間のようでありんすな。まさに類は友を呼ぶようで……此度の相手も戦闘狂に近いものを持っているように見えんす」
「褒めても何も出んぞ」
「……褒めていやせんでありんす」
 フィン・ファルスト(ib0979)をはじめ、実力者が揃っている。それが逆に嬉しいらしく拳を握った闘龍に、刃香冶 竜胆(ib8245)は冷たい言葉をかけた。
 もっとも、皮肉が通じていないらしく本人はケロッとしていたが。
「武装龍の次はガチ殴り龍かぁ。前回同様強そうだねぇ。……中身面白そうだけど」
「貴様達も面白そうだぞ。やはり強い者と戦うのは楽しいからな!」
「……あれぇ? こいつもアホなんじゃねぇ?」
 脳筋でオツムが足りない。こんなところまで装龍と互角じゃなくてもいいのではと不破は思う。
「あの……聞いてもいいですか? 殺さなかった開拓者がいるのは何故なんですか? アヤカシなのに食いも殺しもせずに放置? 何か深い意味が……?」
「その方が本命が食いつきやすいと思ってな。こちらもそちらを探しているが、そちらもこちらを探して貰わねば困る。故に情報を掴ませやすくしてやったまで」
「……こいつ……!」
 フィンの問にしれっと答えるガルスキーの言を聞き、トカキの背筋に冷たいものが走る。
 アホに見えるがそれだけではない。計算してなのかなんとなくなのかは分からないが、理論建てて誘き出していたのだ。
 自分たちが人間に目をつけられていると知っていてなおの行動。余程自信があるのか……アホなのか。
「……おんしと装龍の他にも似たようなのがいるのでありんすか? 我らが龍王というからには部下が二人だけでは寂しんしょう」
「当然だ。我らが龍王に仕える龍は五体。皆勝るとも劣らぬ猛者揃いよ」
「あなたほどのアヤカシが龍王と呼ぶ主、ですか。ゴッド・ラゴン……どれほどのものか」
「なっ!? 貴様、何故その名を!?」
「は、はい? ヒート・ガンが普通に呼んでいましたが」
「……あいつめ……!」
 やっぱりアホかもしれない。いや、今回の件はガルスキーに非はないが。
 本人はゴッド・ラゴンのことを隠しておくつもりだったが、刃香冶や志藤との会話であっさりボロが出てしまったのはむしろ可哀想なくらいだ。
「とにかく、ヒートガンが逃したという開拓者のことも聞かねばならん。貴様らほどの実力者が絶望する時、強大な力が我らが龍王に捧げられるのだ!」
「……好き哉。ならば戦闘でありんす」
 すぐに気持ちを切り替えたガルスキーは、拳を握り直し翼を畳む。
 ……来る! 開拓者たちがそう思った瞬間、すでに大地を蹴っていた。
 二度目となる龍との激突が、今始まる―――

●闘龍
 闘龍。そのまま読むなら闘う龍だ。
 ヒートガンが文字通り武装した龍だったのを鑑みるに、ガルスキーも読んで字の如くだろう。
 大地を蹴った彼は開拓者たちのフォーメーションを一瞬で把握し……二歩目を踏みしめたところで忽然と消えた。
『っ!?』
 体長5メートルオーバーの龍の姿が忽然と消えれば誰でも驚く。そして次の瞬間、ガルスキーは最前衛である志藤のすぐ横に現れていた。
 それだけならまだいい。その体勢は蹴りを放つそれであり、志藤は反応もできずに頭部へ直撃を貰った。
 地面と平行に吹き飛ばされ、木に激突する志藤。ぶつかったことでようやく自分の身に起きたことを理解した。
「がはっ……! い、今のは……!」
「瞬脚!?」
「速い……! 抜かれないようにしないと!」
 慌てて志藤の治療に向かう華表を庇うように、長谷部とフィンが配置を変える。
 今から邪魔しに行っても治療は防げない。そう判断したガルスキーは志藤を放棄し次の目標を見定める。
 しかしそこでボーッとしているほど開拓者たちはお人好しではない。
「回復役を潰されるわけにゃぁな!」
「思ったより速いでありんす」
 不破が矢を射かけつつ、少しタイミングをずらし刃香冶が剣で突きを放つ。
 ガルスキーは飛来する矢を左足を軸に右回転し回避。続いて迫ってきていた刃香冶に回転の勢いを載せて尻尾を叩きつける!
 吹き飛ぶ刃香冶。そこにジークリンデがアイヴィーバインドを仕掛ける!
「とりあえず、動きを止めますか」
 魔法の蔦に絡め取られたガルスキー。追い打ちで動きを止めるべくトカキが影縛りを発動する。
 どんなに動きが速かろうがそれを止められればどうしようもなかろう。その考えは正しかったが、ガルスキーは瞬脚を発動し無理矢理蔦を引き伸ばして影縛りの範囲から脱する!
「無茶苦茶な! しかし!」
 開拓者たちの作戦は、断続的に攻撃することで相手の注意を分散し合図とともに一斉攻撃、聖堂騎士剣を持つフィンがトドメ……という流れだ。
 それが破られたわけでない以上、変更はない。長谷部が拳と蹴りの二連撃を放ち、一旦離れようとする……が!
「逃がさん!」
「そんなっ!? 長谷部殿……うあっ!」
 再び瞬脚を発動したガルスキーは、そのままの勢いで長谷部の顔面に飛び蹴りをぶち込み……あろうことか足で顔を掴んだまま空中で二回転、彼の身体を志藤に叩きつけた。
 華表に回復してもらった志藤。今回のダメージはさほどでもないが、長谷部を華表のところまで護衛せねばなるまい。
「ジルベリア騎士、フィン・ファルスト……行きます!」
「断る」
「へっ!?」
 お前の専売特許ではないとばかりに瞬脚で接近したフィン。しかしガルスキーは読んでいたのかバックステップのような体勢で再び瞬脚。その先には……ジークリンデ!
「想定済みですわ」
 ガルスキーの拳がジークリンデに届こうかというとき、フロストマインが発動しその足を凍結させる。
 予め仕掛けられていた極寒のトラップ。確かにびゅんびゅん飛び回るガルスキーには有効だろう。
 が。
「こちらもな」
 そう呟くと、巨大な龍の顎が開かれ灼熱の炎がジークリンデを襲う。
 クローズドヘルムを被っていたヒートガンはともかく、生身のガルスキーが火を吐けない道理はなかった。
「遠距離攻撃ありかよ!」
「緊急時用だ。俺の炎など爆龍に比べれば火遊びに過ぎん」
 動きが止まっているうちにと連続で矢を射かける不破。流石に足が凍結している時間中は機敏な動作が行えないガルスキーはその身に二本の矢を受ける。
「おまけです」
 比較的近くにいたトカキが棒手裏剣を放つ。ヒートガンと違って手応えはあるが、龍の姿をした中級アヤカシはそう簡単には倒れない。
「火傷が酷いでありんす。治りんす?」
「大丈夫です。でも皆さん、致命傷だけは避けてくださいね」
 回復で大忙しの華表。彼がいなければもう自分たちで定めた撤退条件を満たしていたはずだ。刃香冶に華表のところまで連れてきてもらいジークリンデが回復する。
 しかし、怖いことをさらっと言っていた。彼の炎も人一人を焼き殺すのに充分な火力があるはずだが、それが火遊び扱いされるという爆龍とは何者か。
 フロストマインの拘束も解け、仕切り直しとばかりに陣形を立て直す両者。
 お互い相手の実力の片鱗を見た。それは一見優勢に見えるガルスキーでさえも迂闊な行動を自重せざるを得ないものであったという。
 正直に言えば最初の一撃で一人殺すつもりだったがそれは叶わなかった。一か八かで蔦が絡んだまま影縛りから逃げたが半ば博打だった。
 鋭い個人技、連携の巧妙さは舌を巻くほどだ。
「……なるほどな。ただ数を頼みにするのとはわけが違う。ヒートガンが倒しきれんわけだ」
「一対一じゃないのは申し訳ないけどねぇ、ガルスキーさん?」
「俺は別に構わんが……多勢に無勢は美しくはないな」
「ぐ。言ってくれるじゃないの」
「技とは弱者が強者に勝つための手段……汚かろうと勝利の為には手段を選ばないのもまた技ですよ」
「……バルドリンガのような事を言う。それも正しい物の見方だとは思うが、俺は真っ向からぶつかり粉砕する以外の生き方は出来ん」
 矢を構えたまま不敵に笑う不破。今にも大地を蹴りそうな長谷部。開拓者たちは華表のおかげでまだまだ戦える。一方、命に別条はないもののダメージを負っている闘龍。これだけではどちらが有利かは分からない。
 埒を明けたい。誰もがそう思った時、志藤がゆっくりと槍の穂先を下げた。
 それは予め決めた一斉攻撃の合図。開拓者たちは顔に出さずにその意図を承諾する。
 一方、ガルスキーも何かを感じ取り開拓者の攻撃に備える。
 右か。左か。はたまた正面か。この緊迫感が魂が震えるかのように心を滾らせる。
「行きますよ!」
 長谷部の掛け声とともに不破が矢を放ち、ジークリンデがララド=メ・デリタを放つ。
 続けて長谷部の姿が一瞬消えたのを確認し、ガルスキーは行動を決めた。
 大地を蹴り、翼を広げて上空へ!
 高く高く舞い上がり、まずは魔法の射程と矢から身を遠ざける。
 フロストマインを受けて分かったが、ジークリンデの魔術のダメージは尋常ではない。今まで戦った魔術師の数倍はあろう。
 そのジークリンデが放ったあの魔法には直感的に嫌なものを感じた。詳しくは知らないが近寄らない方がいいと判断したのは正しい。絶対命中魔法にも対処法はいくつかあるが、範囲外に逃げるのが一番手っ取り早い。
「太陽を背にしていますね……見えないです」
「このまま逃げるつもりじゃないですよね? だとしたら興冷めですが」
 華表とトカキは手のひらを太陽にかざして見るが、相手の姿が確認できない。
「……いえ、来ますよ。飛ぶ時のあの人の目……逃げる目じゃありませんでした」
 フィンの呟きを肯定するかのように、微かに耳に届く風切り音。
 それは、太陽の方向からではない!?
「遅いッ!」
 木の枝を文字通り木っ端微塵にしながら、衝撃が開拓者を襲う。
 全く別方向から降ってきたガルスキーは開拓者の中心に蹴りで飛び込み、纏めて粉砕を狙った。
 それを間一髪直撃を避けた八人は、立ち込める土煙をも斬り裂き反撃に出る。
 刃香冶とトカキがその喉元を狙い武器を突き出す。しかし龍の巨体がまたも消え武器が空を切る。
 が、それは瞬脚ではなかった。ガルスキーは逆立ちのような体勢になり、身体を縮ませていた!
 刃香冶を蹴り飛ばし、尻尾で追い打ちをかけ反動でバク転、再び地に足をつける……!
「そこまで動けば!」
 志藤が五月雨で二回連続攻撃を仕掛ける。流石に体勢が悪く、二撃目はまともに喰らい、脇腹に槍が喰い込む!
「今度こそ! みっぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
 瞬脚→猿叫→聖堂騎士剣という全てを込めた一撃。体勢を戻せない今しかチャンスはない。
 実体装備を持たない闘龍にとって聖堂騎士剣は致命傷になり得る。願いを込めたフィンの一撃は……!
「チィィィッ、やるッ!」
 ギリギリで身を捻り、左腕の肘から先を犠牲になんとか身を躱した。
 どさりと地面に落ち瘴気に還る左腕。同時に大地を蹴り、再び上空へと登るガルスキー。
 今度は戻ってこない。それは誰もが直感した。
「……あれが闘龍。あれと同じようなのが他にも4体……?」
 皆を治療しながら空を見上げた華表。その幼い瞳に、中級アヤカシはどう映っただろうか―――