このロリコンどもめ!
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/01/31 00:22



■オープニング本文

 天儀の中心都市たる神楽の都。
 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。
 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら―――

 言うまでもないが、アヤカシには様々な形態のものが存在する。
 動物型、虫型、人型。形の他に、その気性においても統一感は全くない。
 よって、比較的穏やかなアヤカシというのもいなくはない。まぁ、穏やかだろうが何だろうが人類の敵であることは間違いないのだが。
 今回、開拓者ギルドに寄せられた依頼はそんなアヤカシについてである。
「えっと……? 闇目玉の親戚みたいな、空飛ぶ黒い目玉のアヤカシ。普段は浮遊しているだけで、積極的に人間に危害を加えようとはしない。事実、村人の被害者はゼロ……。え? これ依頼なんですか?」
 ギルド職員、十七夜 亜理紗は依頼書を手に目をぱちくりさせた。
 被害者ゼロなのに退治の依頼が出されている上に、その依頼書には『なんなら殺さなくていい』とまで注記されている。
 アヤカシは見敵必殺が基本。いつ人間に牙を剥くか分からない以上、それがベターな対応だ。
 が、今回の目玉は村人たちにしてみれば利用価値があるらしい。
「何々……このアヤカシは、一定の年齢以下の少年少女に興味を持つ男女が近づくと、目から怪光線を放ち怒り狂う。その際、『このロリコンどもめ!』『このショタコンどもめ!』などと叫ぶ。他の言葉は一切話さず、会話は成立しない……なんですか、ロリコンとかショタコンって」
「さぁ? ジルベリアあたりの言葉かしら……。話から察するに、幼女趣味とか幼男趣味って意味なんじゃない?」
「幼男趣味なんて言葉、初めて聞きましたけど……」
 亜理紗の疑問に答えたのは、先輩職員の西沢 一葉。忙しそうに自分のデスクワークに戻る。
 要するに、そのアヤカシは普通の人間には無害だがその分小さい子供に興味を持つ不届き者に対し攻撃性が高いのだろう。
 村人からすれば番犬感覚なのかも知れない。村の子供達が妙な事件に巻き込まれるのを防いでくれるのは確かであろうが……。
 事実、旅人が村の少女にちょっかいを出そうとしてこのアヤカシに撃退され、瀕死の重傷を負った。それでこのアヤカシの存在が公になり、村としてもポーズで依頼を出した……といったところか。
「けど、多少役に立つからってアヤカシを野放しにしておくわけにも行きませんからね……この村の方々には申し訳ないですが、依頼として出されている以上全力で狩らせてもらいましょう。多分、それが後々の為です」
 一定の人間にのみ攻撃的なアヤカシ。今回のように犯罪を未然に防いだというならともかく、これが何もしていない、そういう趣味があるだけの人間が襲われたらやはり困る。
 空を飛ぶ黒い目玉……これが存在すると困る人間も、居るには居る―――


■参加者一覧
シュラハトリア・M(ia0352
10歳・女・陰
バロン(ia6062
45歳・男・弓
谷 松之助(ia7271
10歳・男・志
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
ラシュディア(ib0112
23歳・男・騎
四方山 揺徳(ib0906
17歳・女・巫
フランヴェル・ギーベリ(ib5897
20歳・女・サ
向井・操(ib8606
19歳・女・サ


■リプレイ本文

●問答無用
「感心なアヤカシも居た物だが……仕事は仕事だ、退治せねばなるまい」
 頼れる最年長、バロン(ia6062)の呟きがあったのは今から一分ほど前だっただろうか。
 一行は森に踏み入り、件のアヤカシを探していた。賑やかな面子で退屈はしなかったが、少々軽く見ていたのは確かだ。
 何を? もちろん、アヤカシを……である。
 バロンの呟きからしばし後、不意に何かが光り閃光が村雨 紫狼(ia9073)を貫いた。
「うぼあー!! な、なんじゃこりゃあ!?」
 抗議の声を上げる村雨。すると、それに応えるように山彦が。
『このロリコンどもめ……め……め……』
 重厚かつ渋い声。かなりエコーが効いており、遠方からの攻撃と発声であったことを伺わせる。
 敵の姿は当然見えない。しかし、またしても雷のような光線が一行を襲う。
「おぉぉぉぉ!? くっ……恐るべきアヤカシだ……必ず討伐しなくては!」
「と言いつつ他人に抱きつく辺り余裕があるな、汝は」
「えへへぇ、大丈夫大丈夫ぅ。痛いのもそのうち気持よくなっちゃうからぁ。程度によるけどねぇ」
 次に直撃を受けたのはフランヴェル・ギーベリ(ib5897)。またしても山彦で『このロリコンどもめ!』と声が響く。
 悔しそうに攻撃が来た方向を睨みつけながらも、フランヴェルはシュラハトリア・M(ia0352)を抱き寄せ背中を撫でる。
 谷 松之助(ia7271)はその様子を見て辟易としたようだが、シュラハはご満悦らしい。フランヴェルに頬を擦りつけて更に煽る。
「シュラハ……何て可愛らしいんだ! コケティッシュな笑顔にボクの魂はすっかり燃え上がってしまったよ。小悪魔……いや、夢魔と言うべきかな、ハハッ」
「うほっテンション上がってきた! ……げふんげふん。松之助殿、すこーしばかり拙者と戯れてみないか?」
「お こ と わ り だ」
「そんな殺生な……はぶぅぅっ!?」
 フランヴェルに触発されたのか、四方山 揺徳(ib0906)がじりじりと谷ににじりよる。
 するとまたしても何かが光り、寸分違わぬ正確さで四方山を直撃した。
 響いてきた山彦は、『このショタコンどもめ!』。確実に狙い済ましている。
 どちらかというと魔法に近い性質なのだろうか? 避けようと思ってもなかなか避けられない。
 長射程故に減衰しているのか、威力は今ひとつなのが救い。とはいえ、何度も喰らっていてはアヤカシ本体に辿り着く前に消耗しきってしまう。
「物陰に隠れながら進め。先はまだ長そうだぞ」
「……これ、例のアヤカシに襲われる理由がある人しか狙われないのでは……」
 沈黙。
「ろりこんは犠牲になったのだ……」
「ち、注意して進みましょう。うん」
 木の陰に隠れつつ進み始めた向井・操(ib8606)。それに続いていたラシュディア(ib0112)は、ふと気付いてしまいその考えを口に出した。
 二人は顔を見合わせ、どちらからともなく顔を逸らし、進軍を再開する。なにか思う所でもあるのだろうか?
「しかし、話が違うな。そういう趣味の人間が近づくと攻撃性が増すということだったが、ずいぶん遠くからでも気取られているぞ」
「……それだけ、あの二人が真性ということなのでは?」
 障害物に隠れたりせず、堂々とあるくバロンと谷。二人には一切攻撃が飛んでこない。
 例え、その数メートル横で『ぎょへー!?』というような悲鳴が上がっていたとしても……だ。
 村雨とフランヴェル……実は恐ろしい人物かも知れなかった―――

●そんなんばっかりか!
 襲い来る怪光線をかい潜り、ようやく開拓者たちはそれと出会った。
 空中に浮かぶ黒い目玉。見下すような視線をこちらに向け、威圧している。
 会話はなくとも何となく伝わるフィーリング。それは……
『こいつとは、永遠に分かり合えない!』
 これまでの道すがらで散々狙撃された村雨とフランヴェル。
 ここまで来ると最早意地。優雅な仕草を信条とするフランヴェルでさえ、その口元を引きつらせていた。
「このロリコンどもめ!」
 目玉の方にも分かり合う気はない。そして、この二人がかつて無いほどの危険人物(?)であると認識したのか、問答無用で怪光線を放つ!
「くぅぅ……! しかしこの程度でボクを屈服させることはできない!」
「つか、枝分かれする光線ってなんだよ!? 俺らばっかりじゃん、狙われてんの! 不公平だろー! 他にも居るだろー、狙われても仕方ないのがー!」
 アヤカシが発射した怪光線は、途中で枝分かれし村雨とフランヴェルを同時に焼いた。
 ずいぶん器用なことをするものだ。それに抗議し、ビシッとラシュディアと向井を指さす村雨。
「ちょっ!? 俺らを巻き込むなよ!? あれだ、特殊な趣味の相手しか攻撃しないってことなら、俺は対象外だろ、うん……!」
「わ、私はただ幼子が好きなだけだしな。うむ。ろりこんでもしょたこんでもないぞ」
「またまたご冗談を。ならコイツの目を見て言ってみろよ」
 木に隠れながら進んできたラシュディアと向井。一応、まだ光線の洗礼は受けていない。
 村雨に炊きつけられ、思わず目玉と視線を交わす。
 物言わぬ無表情の黒い目玉。しかし、値踏みするような、疑うような視線のようなきがするのは何故だろう?
「……す、スケッチでもさせてくれるつもりか? 私は願ったり叶ったりだが」
「視線外しながら言うなぁ!? えっと、俺は……」
 一人だけ、何故か逃げられない雰囲気に取り残されたラシュディア。
 自らの潔白を証明するため、言葉が通じないはずの目玉をまっすぐ見据え、言葉をぶつける……!
「……その、元許婚で、今も、なんだ、大事な人だったりする娘がいて……その子が11歳だったりするんだけど、俺はロリコンじゃないからなっ!」

 目玉、審議中…………

「……このロリコンどもめ!」
「ずぉあぁぁぁっ!? 誰がロ○コンだーーー!?」
「いや、そこもう伏字にする意味なかろう!?」
 怪光線の直撃を受けたラシュディアに谷がツッコむ。
 一気に近づこうとするが、目玉は敏感にそれを察知し上昇する。
「この隙に回復するでござるよ、皆のしゅぶぅぅぅっ!?」
「このショタコンどもめ!」
「むぅ、意外と素早いな。しかも機を見るに敏とは、なかなかやりおる」
 皆が何とかやってこれた重要なファクターである四方山。彼女の回復術がなければとっくに引き返さざるをえない状況になっていただろう。
 が、彼女も充分目玉のターゲット足りえる人物なのを忘れてはならない。木の陰からひょこっと顔を出し(?)、容赦なく怪光線を浴びせるアヤカシ。
 腕組みをして成り行きを見守るバロン。ふと目玉と視線が重なるが、目玉はすぐに別の標的へと向かってしまう。彼にそういう趣味がない上、危害を加えてこようとしていないからか。
 と、そんな時である。
「聞きたまえ、アヤカシよ! 幼い少女を愛する事が罪なのか!?」
 弓を構えたフランヴェルが目玉にそう問いかける。
 目玉はそちらを向くと、真意を図るようにフランヴェルの言葉を待った。
「少女達と愛し合う。温もりや匂い……ボクは石鹸の香りも汗のつんとした匂いも好きさ。味や柔らかさを感じ愛の高みへと登りつめていく……恥じるべき事などない!」
「このロリコンどもめ!」
「ぐぁぁっ……! し、少女達を一方的に蹂躙し収奪する外道は討たれて当然だ。ボクは……傷付けた事がない、とは言わない」
「このロリコンどもめっ!」
「ごふぁっ‥‥!? だ、だが……ボクは子猫ちゃん達を全身全霊で愛している! 心の奥底からね! 強引に迫って奪った事なんて……ごめん、何回かあった」
「このロリコンどもめッ!!」
「か……はっ……! ……で、でも、最後には悦……喜んで、いたし、愛する心に……偽りはないんだ……!」
「いいからもう汝は黙れよ! 見てるこっちが痛々しいわ! かっこいい雰囲気で喋ってはいるが完全に駄目人間の台詞だぞ! というかアヤカシのほうが正しいリアクションだろう!」
 何度も怪光線を浴びながら主張を止めないフランヴェル。だが、谷がツッコんだように攻撃されても仕方のないような台詞ばかりである。
「おねぇちゃ〜ん、がんばってぇ〜♪」
「よかろう、シュラハ君! 君の愛らしいその声援があれば、ボクはあと十年は戦える!」
「汝も炊きつけるなぁっ!? 寝かせておいたほうがみなのためだ!」
「ぶぅ。ロリコンでも良いと思うんだけどなぁ、ロリコンは人類愛だって誰かも言ってたしぃ」
「そんなことを言う奴は明らかに社会不適合者だろうが!」
「何よりぃ……シュラハがあんまり気持ちいいコトできなくなって楽しくないもぉん!」
「ツッコミきれるかぁぁぁっ! 年齢を考えろ年齢をぉぉぉっ!」
「いや待てシュラハ君! キミは確かに可愛い、可憐でかつ妖艶さを併せ持つ薔薇のようだ! だーがしかしっ、ロリ−タとは無垢、すなわちイノセンスっ! ロリコンは、美幼女にエロスを求めないんだ……っ!! 小さければいいんじゃない……そう、俺は違いの分かるロリコン……!」
「ツッコミきれないと言うておろうが……! 自分で認めていれば世話はないんだ馬鹿垂れが……!」
「あ、痛い! 谷さん痛い! 拳でこめかみぐりぐりは痛い!」
「このロリコンめッ!」
「オィィィッ!? この目玉とうとう個人に狙い絞ってきやがったぞォォォッ!?」
 カオス。この場を表すならその三文字こそが相応しかった。
 煽るロリ。撃たれても撃たれてもめげないロリコンに、巻き添えを食らうショタコンとロリコン予備軍(?)。それらに一人敢然と立ち向かうツッコミ。そして、ロリコンを追い回すアヤカシ。
 最早完全に収拾不能。誰もが当初の目的を失念していた……と、思われたが。
「そろそろ、終わりにするか。せめて奥義で葬ろう……」
 その言葉を聞いていた者は殆どいない。
 が、その意識の外であったが故に……届く。貫く。目の前の獲物にばかり目が行っていたアヤカシに、一本の矢が突き刺さる……!
 悲鳴も上げないアヤカシ。しかし、苦しそうに空中で暴れ高度を下げる……!
「ぬいぐるみにしてやる。それで許せ……」
 閃刃が空を裂き、目玉を背後からバッサリと斬りつける。
 傷口から大量の瘴気を吹き出し、アヤカシは消滅していく。
 バロンと向井。二人だけは冷静でいてくれたようである。
「こ……の……ロリコン、ども……め……!」
 攻撃対象以外の人間に注意を向けない習性が仇となったか。特にバロンであれば倒す機会はいくらでもあったということなのだろう。
「あ、おいこら待て! 俺をロリコンと誤認したまま消えるな! 返せ! 戻せ! 撤回してから消えろぉぉぉ!」
「恐ろしい敵だった……しかし、この世にロリコンが居る限り、第二第三のあいつが……!」
「フッ……ボクらは戦わなければならないようだね……愛しき子猫ちゃんたちを安心して愛でるためにも……!」
「……もうこいつらは倒されていたほうが良かったのではなかろうか……?」
 肩で息をする谷は、もうラシュディアや村雨、フランヴェルにツッコむ余力もなかったという。
「……ところで、向井殿は他に強烈過ぎる面子がいたから狙われづらかっただけなのではないか?」
「…………さーて、忘れない内にスケッチスケッチ。供養のためにもあれのぬいぐるみ作らないとー」
「……最近はこのような連中ばかりか……」
 バロンの問いに、またしても視線を逸らし誤魔化す向井。
 強い奴にはとことん強いが、相性の悪いやつにはあっという間。
 これはきっと、そんなアヤカシと開拓者たちとの物語―――

「……ところでぇ、シュラハ、おっぱいおっきぃんだけどぉ……それでもロリに数えられるかなぁ?」
「無論でござる。ナニがでかくともショタはショぶべふぅ!?」
「最後の最後まで自重しないな汝らは!?」
 それにしてもこの開拓者たち、ノリノリである―――