拳神だァァァッ!
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/10/22 18:18



■オープニング本文

 天儀に数多存在する開拓者たち。彼らは時に手を取り合い、時にぶつかり合い、世の中を開拓していく。
 そんな中、チームを組んで戦う開拓者も多いことだろう。拠点での仲間、依頼でよく顔を合わせる者など、形は様々だが縁が深い関係になる者たちは少なくない。
 この物語は、一つのチームと邂逅する開拓者たちの記録である―――

「拳神だァァァッ!(ウォーウウォウウォーウォ!)
 技力だァァァッ!(ウォーウウォウウォーウォ!)
 拳で突け! 足技で裂け!
 炎連舞! 水連舞! 土石、木(もく)、金剛連舞!
 技力拳神! 電光石火! 信じてるのさ、未来を拓ける
 技力拳神! 疾風怒濤! 止められないぜ五人の絆
 天儀で輝け、戦星! 五曜戦団! 五曜戦団! 舞連団!(ウォーウウォウウォーウォーウォ!)
 まぁいれぇぇぇんだぁぁぁぁぁん! ワァァァオ!」

 ある日の開拓者ギルド。
 今日も今日とて開拓者でごった返すギルドの一角で、拍手と歓声が上がった。
 前にもこんなことがあったが、今度は依頼を探しに来た開拓者の中に、ノリよくコーラスまでやってくれる面子が現れる始末であった。
 歌いきった十七夜 亜理紗はペコリとお辞儀をした後、何事もなかったかのように依頼の紹介へと移った
「はい、というわけでこんにちは。本日依頼をくれたのは、『天儀で輝く戦星! 五曜戦団、舞連団!』の方々です」
 舞連団。泰拳士五人のチームで、拳法を駆使して戦う戦団である。
 素手は勿論、槍やヌンチャク、剣や三節棍なども手足のように扱う凄腕である。
 天儀のあちこちを徒歩で旅し、修行行脚しながらアヤカシなどを打ち倒していくのが特徴で、緊急時に連絡が取りづらいのが玉に瑕だ。
「依頼内容は、旅先の五行の国で人形兵の大群を発見したので援護を願いたいとのことです。それも只の人形兵ではなく拳法らしき動きをしてくるらしく、特殊な個体であることが伺えます。悪さの予感ですかね?」
 人形兵はアヤカシではなく、簡易的なゴーレムのようなものである。
 人と同じような姿形をしており、掌から刃を伸ばしたりと暗器攻撃も得意とする。
 耐久性は高くはないが、今回の場合は拳法の動きをするということで受け流しに注意だろうか。
「本物の拳法家が木偶人形に負けるわけにはいかないですが、いかんせん数が多く気配もない敵なので苦戦しているそうなんです。相手は人間ではないので遠慮はいりません。ガンガン壊しちゃってください」
 拳法の達人五人組も苦戦する人形兵。多様な種類がいるそうなので、ご注意を―――


■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
巴 渓(ia1334
25歳・女・泰
鞍馬 雪斗(ia5470
21歳・男・巫
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
王 娘(ib4017
13歳・女・泰
御調 昴(ib5479
16歳・男・砂
アムルタート(ib6632
16歳・女・ジ
熾弦(ib7860
17歳・女・巫


■リプレイ本文

●山間だァァァッ!
 開拓者ギルドから出発し、五行に跳んで件の山に到着した開拓者たちを、先んじていた舞連団が出迎える。
 それぞれ赤、緑、青、黄、桃を基調とした拳法服に身を包んでいる。
 自己紹介を終えた一同は、すぐさま山中へと踏み入った。
 山中はそこまで険しいわけではないが、やはり足場はよくない。加えて人形兵は気配が無いので、集団戦となると後方からの攻撃に注意をしなければならないだろう。
「人形兵な‥‥確か前に見たものはボロボロになっても動いていたし‥‥厄介だ」
「ねぇねぇ、人形兵がどこに居るかは分かってるの〜? くるみ割り人形、いる〜?」
 鞍馬 雪斗(ia5470)やくるくる踊りながら聞くアムルタート(ib6632)が気にしているのは殲滅対象の人形兵について。
 最近見られるようになったこの人形兵たちは、アヤカシではないため勿論自然発生しない。
 誰かが作るなり放すなりしているからこそこんな山中でも活動しているのだ。
 命を持たないカラクリ。そのほとんどが人殺し目的で作られているのは悲しい限りである。
 ちなみに、舞連団の面々によるとおおよその場所は特定できているらしい。そして、近づけば嫌でも分かるということも付け加えられた。
 と、そんな時である。
「待て。‥‥なんだ、この音は。あちこちから聞こえてくるな」
「無機質な‥‥木の音でしょうか。少なくとも楽器ではありませんね」
 水鏡 絵梨乃(ia0191)が聞きつけたのは、カタカタというかすかな音。
 音源はまだ遠いが、レネネト(ib0260)はそれを聞き分け木が発する音であると判断した。
「なるほど‥‥これは近づけば分かるわけですね」
「全部が全部こういうのではないだろうがな‥‥」
「ハン、上等じゃないか。見つかるの前提とはな」
 御調 昴(ib5479)や王 娘(ib4017)も状況を理解する。要は人形兵の内部、カラクリが発している音なのだ。
 人形兵は製作者によって多種多様な造形のものが居る。その中には全く音を立てない暗殺用の物も存在することだろう。
 しかし今回は、巴 渓(ia1334)が言ったように敵に見つかることを考慮していない。試作品の群れなのか、元々そういうコンセプトなのかは不明だが。
「やれやれ‥‥隠れ住んでいると世情に疎くなっていけない。こんなものが平然と歩いているなんて、世の中も変わったものね」
 熾弦(ib7860)は肩をすくめてみせるが、人形兵は他の開拓者たちもあまり見たことがない物体だ。時代が変わったと思うのは彼女だけではない。
 そうこうしているうちに、草木を掻き分け人形兵たちが姿を現し始める。
 人に似せられた木製のカラクリ。カタカタいう音をあちこちから発し、その数は50をくだらないだろう。
 後はもう壊して壊して壊しまくるだけである。
「いくぞみんなァァァッ!」
 舞連団の赤の叫びで、一同は戦闘態勢を取ったのだった―――

●いくぞォォォッ!
「赤連拳! 火曜星、キョウ!」
「緑連拳! 木曜星‥‥ショウゴ!」
「青連拳! 水曜星チュウジ!」
「黄連拳! 金曜星、タツ!」
「桃連拳! 土曜星ミン!」
赤「天儀で輝く、五つ星!」
五人『五曜戦団! 舞連団!』
「天酔星、絵梨乃ッ!」
「蝶天舞星アムルタート! 見っ参!!」
 レネネトの奏でるBGMを背に受け、舞連団と水鏡、アムルタートが恐ろしくキレのある動きで名乗りを済ませる。そしてすぐさま攻撃に移った。
 王などはその動きに思わず拍手をしてしまい、注目を浴びてフードを目深に被ってしまったが、誤魔化すように三節棍を手に攻撃に参加する。
「うーん‥‥相手は意思もへったくれもない人形兵なんですけどねぇ」
「‥‥全く、何をしに来たんだか‥‥余興には悪くないかもしれんがな」
「いやいや、精神の高揚は実際の力になると私は信じているわよ」
 御調と鞍馬は苦笑いをしているが嫌いではなさそうだ。
 熾弦は微笑みながら少し下がり、いつでも怪我人を回復できるよう待機する。
「そんじゃいっちょやるかねぇ。俺もこの場の雰囲気に相乗りして魔拳士とでも名乗っとくか?」
「えっ」←御調
「えっ」←鞍馬
「えっ」←レネネト
「‥‥なんだてめぇら。その『普段からそうじゃないの?』みたいな面はよ」
「あなたのことよく知らないんだけど、その黒尽くめにスカルフェイスがいけないんじゃない?」
「‥‥‥‥。ちぇっ、毒気抜かれちまった。お仕事お仕事っと」
「???」
 熾弦は巴が毒気を抜かれたという理由がよくわからなかったようだ。色んな意味で有名人は辛い。
 いざ本格的に戦闘に突入した一同は、想像以上の苦戦を強いられていた。
 確かに個々の戦闘力は人形兵を大きく上回っている開拓者たちだったが、慣れない場所、悪い足場、前後左右どこからでも仕掛けてくる大量の敵と条件が悪い。
 しかも人形兵はそれぞれ内蔵武器が違う。掌から刃を伸ばしてきたり、肘から弾丸を発射したり、膝から焙烙玉を放り出したりと多彩である。
 基本人型だが中には動物型のものもいる。カタカタと音を立てているがその音が多すぎ、元々気配が無いので不意を突かれることも多い。
 そんな中、活躍しているものが約二名。
「天酔星、乱れ流星群ッ!」
「そらそら、横からも来てるぜ後輩!」
 水鏡は背拳のスキルを活性化させている。要所要所でそれを発動させることにより、背後からの攻撃にも的確に対処することができる。
 説明しよう! 天酔星・乱れ流星群とは、酔拳の不規則な動きから敵のあらゆる部位に蹴りを流星のように連続で叩き込む、絵梨乃が今咄嗟に思いついた必殺技である!(キリッ)
 そして巴はというと、守りを旨とし他の面々を補助することに全力を挙げている。
 この方式は舞連団も採用しており、攻撃3、補助2という具合で戦闘中。
「‥‥どうも。‥‥しかし、何を考えてこんなのを作ったんだ‥‥?」
 巴の援護を受けながら三節棍を軽快に操り戦う王。可愛い人形兵がいたらどうしようと思っていたが、それは杞憂でしかなかった。
 カクカクとぎこちない動きで拳法のような動きを見せる人形兵たちは、どれも可愛いとは程遠い外見をしている。
 中には子供が見たらトラウマになりそうな恐ろしい外見をしているものもあり、ますます制作経緯が分からない。
 掌底→刃のコンボを回避しつつ足払い、続けて三節棍を振り下ろす。彼女も背拳を活性化させてはいるが、やはり前の二人に比べると地力の差が出る。
「だ〜め♪ させないよ?」
「助かります! 次弾装填‥‥舞連団の方々、戦陣で支援します!」
「‥‥ふむ、恋人の正位置‥‥か。試練の克服、調和ね‥‥悪くないな」
 アムルタートが鞭で援護し、御調が銃に弾丸を込める時間を提供する。
 御調は攻撃役として銃を放つ傍ら、舞連団をスキルで強化もしていた。参加者同士の連携もいい。そういう意味で、鞍馬が行ったタロット占いは当たっていると言っていいだろう。
 もちろん、鞍馬自身もブリザーストームを駆使し援護を忘れていない。
「怪の遠吠えはやはり通じませんか。ならば実力で吹き飛ばすしかありませんね」
「アムルタート君、一旦戻って! 怪我が多くなってきてるわよ」
「助かるよ〜! 流石に全部はカバーしきれないね〜」
 重力の爆音を駆使し、回復役である熾弦を守るレネネト。全体の流れを観察し怪我人に指示を出すのも熾弦の重要な役割。
 十三人で戦っているといえば楽勝な気配もするが、敵はその五倍近く居る。
 しかも急所を狙えば一撃で無力化出来るというものでもなく、腕の一本や二本はおろか、四肢をもいでも口から含み針などというパターンもあるから困る。
 どうしても生傷は増えていく。それは水鏡や巴であっても同じだ。
「やれやれ‥‥こいつらとは友だちになれそうにないな。芋羊羹も喰えない奴とは付き合えん」
「とか言いつつ何だ、その攻撃方法。わざわざ股間を蹴り上げて投げる必要あんのか?」
「む‥‥何故かどうしてもやっておかないといけないような気がして」
「なんだそりゃ。そんな余裕があるなら他の連中を助けてやんな!」
「ふ‥‥それはお前の役目だろう? 髑髏仮面」
 流石に余裕のある水鏡と巴。負傷を見越して回復に向かうのも手馴れたものだ。
 見れば、舞連団も大分傷が増えてきている。流石に彼らまで熾弦に診てもらうのでは彼女のほうがもたない。
 よって‥‥
「数が多すぎる‥‥今更だが‥‥。負傷は出来る限りしないよう気をつけて、回復はするからな」
 鞍馬がレ・リカルで補助することとなった。長期戦になるので練力切れには充分注意して欲しい。
「技力!」
「ハイィィィッ!」
 複数人数で確実に一体一体を潰していく舞連団。いつの間にか長い槍のようなものを使っている者も居る。
 敵はアンデッドと相互互換のような存在。命がないという点は共通しているが、武装が厄介。
 そういう意味では近づかずに戦える御調などはいくぶんか戦いやすいのだが‥‥。
「はぁっ、はぁっ、練力が、足りなくなる‥‥!」
「避けてばかりじゃないんだからね! 迅鷹のように舞いグリフォンのように刺すかもよ!」
「いけませんね‥‥アムルタートさんもいつまで続くか。司令塔を壊せば全滅‥‥というわけにもいかないんでしょうね」
「私の練力も無限じゃないわ。そろそろ厳しくなってくる‥‥!」
 御調が弱音を吐くのも無理は無い。もうかれこれ十分以上動きっぱなしなのだ。
 しかも只の運動ではなく命をかけた戦いとあって、精神力の減少も著しい。
 若さに任せて暴れまくるアムルタート。冷静に分析するレネネトや熾弦もうかうかはしていられなかった。
「あっ‥‥!」
 足をもつれさせ体勢を崩すアムルタート。その眼前に、肘から白刃を生やした人形兵が迫る‥‥!
「邪魔するぞ、人形兵ども‥‥」
 間一髪、王がカットに入り人形兵を蹴り飛ばす。
「なんてやつらだ、こんなのを野放しにしておけるか! 全部ぶっ壊してやるぜ!」
「そうです! この拳‥‥何かを守るために!」
「フ‥‥だそうだぜ? まったく馬鹿ばっかりだ」
「それが舞連団の‥‥ううん、開拓者のいいところでしょ?」
「そうだ! そっちの皆も頑張ってくれ! きりょ‥‥」
『それは言うな!』
「なんで!?」
『なんとなく!』
「わ、わかったよ‥‥じゃあ、燃やし尽くすぜ!」
 何故か全員から台詞を止められてしまった赤。気を取りなおし、再び拳を振りかざす。
 戦闘が終了するまで、ここから更に十分ほど動き続けなければならなかったという―――

●終了だァァァッ!
 カァー、カァーとカラスが鳴く。
 徐々に日が傾き、空は茜色に染まっていく。
 そんな中、開拓者たちは全員大の字になって山肌に身を投げ出していた。
 長い戦いの後、ダメージこそあったが全員無事で勝利を掴み取った一同。しかし、あまりの疲労に意気揚々と凱旋とはいかなかったのだった。
「うー、踊りたいのに踊れないー。疲れすぎたー!」
「戦闘中、踊るように戦っていたのですからいいじゃありませんか‥‥」
「やー! きちんと踊りたかったのー!」
 レネネトにツッコまれても立ち上がれないアムルタート。
 最後の一体が完全に動かなくなったあと、全員がバタバタと倒れ息を吐いた。
 蓄積した疲労。受けた負傷。しかし、やり遂げたという満足感が充足感を与えてくれる。今はただ、火照った身体に秋の風を感じていよう。
 突如現れた謎の人形兵‥‥討・伐・完・了―――