【SA終】彷徨
マスター名:西川一純
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/29 06:43



■オープニング本文

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 天儀の中心都市たる神楽の都。
 様々な人が行き交うこの都に、開拓者ギルドは存在する。
 はてさて、今日はどんな依頼が舞い込むやら―――

 長きにわたり、開拓者たちと激戦を繰り広げてきたアヤカシ集団、セブンアームズ(以下SA)。
 その名のとおり元は七人であったが、ついに残り二人にまで数を減らした。
 生まれた意味を見出せず彷徨っていたSAたち。開拓者との戦いの中でそれを見つけ、逝った者もあるようだが‥‥。
「た、大変です! SAのシエルが無差別に人を襲ってるみたいです!」
 その情報が開拓者ギルドに寄せられたのはほんの数十分前。職員の十七夜 亜理紗は、先に担当していた書類を放り出し先輩職員のもとへと急いだ。
「そんな‥‥! 被害は?」
 その先輩職員である西沢 一葉も、亜理紗同様SAの依頼を担当してきた身。感情の乏しいシエルだけに、次々と消えていく仲間たちを見て精神に異常でもきたしたのだろうか?
「そ、それがですね、怪我人は沢山でてるんですが死人は一人もいないんです」
 瞬鎚のシエル。使用する武器は身の丈もあるハンマー。そうでなくてもアヤカシであるSAは人を喰らうはずだが、死人が出ていないというのはどういう事か。
 話を聞くと、シエルはここ最近戦場となっている山の麓に現れ、通りがかる人間に攻撃を仕掛けるのだという。
 もう一人の生き残りであるダシオンも一応止めてはいるようなのだが、いかんせん素早さが違う。
 シエルは、常にこう言ってから攻撃を仕掛けるという。
『私を殺してよ‥‥殺して見せてよ。皆に会わせてよ‥‥ねぇ‥‥!』
 相手が動けなくなると、自分を殺してくれないやつに用はないと去ってしまうらしい。どうやら、自分たちの存在意義や生まれた意味に悩んだ末に起こした行動のようである。
 死ぬのが彼女の出した答えなのだろうか? それはシエル自身にも分かってはいまい。
「‥‥悲しいわね。でも、これ以上被害を出すわけにもいかないわ。悲しいけど、開拓者さんに彼女の望みを叶えてもらいましょう」
「‥‥はい。おそらく限界以上の力で向かってくるでしょうから、ダシオンは倒せればという方向にした方がいいでしょうね」
「そうね。今回はシエルに集中して貰ったほうがいいと思う」
 死に場所を求め被害を出すシエル。仲間の復活も望めず、さらに仲間を減らした。自暴自棄と言ってもいいだろう。
 外見はまだ幼さの残る少女である。その涙を止めるには、命を奪うしかない―――


■参加者一覧
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
小伝良 虎太郎(ia0375
18歳・男・泰
煌夜(ia9065
24歳・女・志
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
无(ib1198
18歳・男・陰
朱月(ib3328
15歳・男・砂
叢雲 怜(ib5488
10歳・男・砲


■リプレイ本文

●会、愛、哀
 まるで通り魔のように人を襲うというシエル。件の山の麓を歩けば、出会うのに時間はかからなかった。
 彼女の行動はセブンアームズ(以下SA)の矜持とはかけ離れたものである。ルールもなく、ただ相手を叩きのめす。殺していないことだけが救いではあるが、それも殺す価値もないと勝手に判断しただけのことなので褒められたことでもない。
 外見上も精神上も一番幼いシエルは、その長い銀髪を風に揺らし、巨大なハンマーを肩に担いで立ち尽くしている。
 まるで迷子の子供のようだ。その姿を見つけた開拓者たちは、一人の例外もなくそう感じたという。
 シエルはこちらに気がつくと、生気のない濁った目で開拓者を出迎えた。
 その口元には、寒気のするような薄ら笑い―――
「あは‥‥来たね。やっぱりあなたたちだよね。私を殺してくれるのはあなたたちくらいだよね」
「自暴自棄‥‥ね。可哀想な気もするけど‥‥しょうがないよね?」
「あの‥‥そのね、シエル。おいら思うんだけど‥‥」
 朱月(ib3328)の呟きを聞いた小伝良 虎太郎(ia0375)は、わかってはいてもシエルに声をかけた。
 しかしそれをぶった切り、シエルは朱月に言葉を投げた。
「可哀想? 何で? 私嬉しいよ、こうやって会いに来てくれて。あなたたちが愛してくれるから」
「え‥‥し、シエルちゃん、何を言って‥‥?」
「分かったの。ジークもキュリテも、クレルもリュミエールだってあなたたちに愛されてたの。愛されてたから殺されたの。愛って、殺し殺されるくらい想うってことなんだよね?」
「‥‥シエルさん。あなたは‥‥」
「そうでなきゃみんな納得して死んだりしないもん。クランだって、きっとどこかで納得してたと思う」
 煌夜(ia9065)もレネネト(ib0260)も、シエルの異常にすぐ気がついた。
 心が、壊れている。特に幼かった彼女が、消えていく仲間のことを納得するにはそう理解する他なかったのだろう。
 薄ら笑いは続く。殺し、壊し、痛みを与えることが愛だと誤解したまま。
「まるで幼子ですね‥‥でも‥‥」
「彼女をこうしたのは私たちです。何れにしても、戦わねば。そして終わらさねばならないでしょう」
「だね。言葉は要らない。後はやるだけなのだぜ」
 无(ib1198)もジークリンデ(ib0258)も、シエルのことを哀れだとは思う。思うが、放置するわけにはいかないのだ。
 逆に、彼女の望みをかなえてやることだけが救いなのだと‥‥この場の誰もが理解する。
 幼いながら、叢雲 怜(ib5488)もまた同じ。今のシエルは、SAの矜持も、アヤカシの存在意義も、生きることすら放棄した存在になってしまったのだから。
「シエル、私も手伝いますよ。文句はありませんよね」
 ふと、木の影からダシオンが姿を現した。
 弓を生成し、戦闘態勢は出来上がっている。その表情は、悲しみと哀しみに満ちている。
「うん、勿論。みんなで愛し合お? ねぇ‥‥私を愛して? 私を愛して殺して。愛して殺して! 愛して殺してっ! 愛して殺してぇッ!」
「‥‥シエル‥‥」
 壊れたように叫ぶシエルに、鷲尾天斗(ia0371)は思わず感情が爆発しそうになる。
 しかし名前だけを呟き、必死に表情は平静を装った。
 開拓者たちが構えを取るのと、シエルが大地を蹴ったのはほぼ同時。
 ‥‥出会わなければよかったのだろうか? そうしたら他の誰かがこの場に立っていたのに。
 違う。このメンバーだからこそこの場に立てる。その事実を誇りに代えて‥‥
『来いッ!』
 八人は、力強くそう叫んだ―――

●シルバーテンペスト
 火事場の馬鹿力、という言葉がある。
 別段詳しく説明はしないが、どうやらそれは人間だけに当てはまらないらしい。
 全力以上と評されたシエルの動きは、まさに常軌を逸したものであった。
 ただえさえ得物のわりにスピードがずば抜けていたが、それが更に速い。
 同じくスピード自慢の小伝良でさえ、瞬脚を用いなければ到底追いつけない!
 その速度から繰り出されるハンマーの一撃。武器で受けても、大きく吹っ飛ばされる。
「遠慮なんて要らないよ? 私も愛してあげるから、私を愛して? みんなに会わせて!?」
 一撃を加え、地面に足が付いた途端再び大地を蹴る。
 マントを大きく靡かせ地面を滑り、縦横無尽に駆け巡る。
 人間ならとっくにバテている動きでも、アヤカシには大して意味はない。そうでなくとも、体も心も自棄っぱちなのだから。
「は、速くて全然狙えないのだぜ!」
「まずいわね‥‥なのにダシオンは射ち放題とか冗談じゃないわ」
 ペアになり行動することを決めていた開拓者たち。班分け自体は終わっているが、どの組も反撃の糸口が掴めない。
 シエルの高速移動を無視するわけにはいかないし、かと言ってダシオンは離れたところから一行を狙い撃ちにしているのでそちらへの意識も向けなければならない。
 SA側には打ち合わせがあるようには思えない。ダシオンがなんとかシエルには当てないように頑張っている‥‥と見るのが妥当か。
「くっ! もし、この場にキュリテ達がいたなら、今の君を見て怒るか悲しむかすると思う!」
「そんなことないよ。きっと褒めてくれる。シエルも愛を理解したな、って!」
「違う! そりゃ君よりずっと一緒にいた時間は短いけど‥‥それくらいはわかるよ!」
「じゃあ何であなたはキュリテを殺したの? 何の為に? 分かってる。悲しみ、苦しみ、痛み‥‥それが愛だからだよ!」
 シエルの言葉はドップラー効果さえ伴っている。一言呟く間にもすぐ横を通り抜けて行ってしまい、ハンマーを振りかざしまた戻ってくるのだ。
 防御で手一杯の一行。小伝良もよく反応しているが、回避が間に合わない!
「このタイミングならば‥‥!」
 无が小伝良に迫るシエルに魂喰を発動し、迎撃を図る。
 術攻撃は基本的に必中攻撃だ。障害物でもない限り避けようとして避けられるものでもない。
 しかしシエルは避けようとはせず、手にしたハンマーを魂喰に向かって投げつけた!
 瘴気武器であるそれは魂喰によってすぐさま消滅したが、シエル本体にまでは届かない。
 攻撃を断念し、小伝良の横を駆け抜ける間にも新たなハンマーを再生成している‥‥!
「動きを遅められれば‥‥!」
 重力の爆音を発動するレネネト。ダメージは例によってマントに防がれるが、押さえつけ効果は有効。
 有効なのだが、命中・回避は抑制できても今のシエルが相手では敏捷性までは奪えない。
 逆にターゲットを自分に移すことになり、タン、タンと小気味のよいリズムに乗せてシエルがジグザグに突っ込んでくる。
 横薙ぎのハンマー。しかしペアである鷲尾が割って入り、槍でそれをブロックした。
 ミシミシと嫌な音を立てる槍。シエルはパワーも限界突破中のようだ。
「お前と初めてデートしてから今日まで、ホント楽しかったんだがなァ‥‥。けど、中々ハッピーエンドって言うわけにはいかねェなァ!」
「あははっ、そうだね。どら焼き美味しかったよ! でも違うよ、どっちが死んでもハッピーエンドだよ!」
 受けられたと感じた瞬間に、シエルはすぐさま機動を再開。決して止まろうとはしない。
 鷲尾は痺れかけた両手を心の中で叱咤激励しつつ、シエルに声をかけた。
「ざけんな! 最後の最後位は‥‥笑って逝かせてやる!」
「ならもう大丈夫。ほら、私、笑ってるよ!」
「違ェ! そんなモン本当の笑顔じゃねェ!」
 シエルは止まらない。攻撃も、機動も止めはしない。
 どんなに言葉を尽くしてももう無理だと開拓者たちも分かっている。
 例えそれが自己満足にしかならなくとも、後悔をしたくないから‥‥!
「ジークリンデ、アイヴィーバインドは? 无も幻影符は射程範囲に入ったこともあるでしょ?」
「駄目です、抵抗されていて束縛できません。まるで捕まえられる気配がないのです」
「こちらも同様です。何もかもが振りきってしまっていますよ、今の彼女は」
 朱月もジークリンデを斬竜刀を手にガードしつつ全体の指揮を試みているが、事は上手く運ばない。
 抵抗力も増しているらしく、拘束系の術をシエルはものともしないのだ。抵抗されたらそれまでという術の弱点が浮き彫りになってしまった形か。
 一応アイアンウォールを使用しダシオンの矢を防ごうという案も出たが、逆にシエルに防御に使われたり、空間攻撃に使用されてはたまらないという理由で実行には移していない。
 では、フロストマインは? 氷の審判と呼ばれる彼女の得意技の一つのはずだが‥‥
「フッ‥‥何度も同じ手でやられるのも癪ですしね」
 設置したところをダシオンが矢で攻撃し、暴発させてしまうのだ。
 普通の矢なら発動しないかも知れないが、瘴気で生成されたダシオンの矢を、フロストマインは『術者以外の存在』だと認識している‥‥のかも知れない。
「怜くん、下がって。シエルは意地でも私が止めるわ」
「うん! 俺だって男だし、ちゃんと背中を護るのだよ!」
 専らダシオン担当となっている叢雲。シエルには当てられそうにないので妥当な線ではある。
 それに対し、なんとかシエルに攻撃できないか模索する煌夜だが、なかなかタイミングが合わない。
 ぎりぎりの間合いを計っての攻撃を考えていたが、シエルは決して直進だけで突っ込んでこない。必ず何かしらの余計な動作を混ぜ込んでくるし、突っ込んでくる途中で目標を変えることもざら。
 クロスレンジでの攻撃が無理ならと、桔梗での遠距離攻撃もしかけるが、ハンマーでガードされ通用しない。
 マントは再生成に限度があるらしいが、武器はそうではないようだ。例え壊れても何度でも替えが効く。それは今までのことでも、今日のことでも明らかである。
 せめてダシオンがいなければ。それでも厳しいとは思うが、何百倍もマシだったのにと歯噛みをする。
 状況が打破できない。突破口が見つからない。開拓者たちにだけダメージが蓄積し、練力も底をつき始める‥‥!
「‥‥どうしたの? ねぇ、愛してくれないの? あなた達だけなんだよ、私を殺してくれるの!」
 開拓者たちの劣勢に、シエルのほうが動揺し始める。しかし、すぐにある結論に至り攻撃を再開した。
「あぁ、私に愛して欲しいんだ? そうだよね、殺してもらうからには私ももっともっと愛さないと!」
 無感情だったシエル。それが今は狂気の沙汰で笑う。
 ダシオンは援護の矢を放ち続けながらも、それが悲しくて仕方がなかった。
「‥‥こうなったら仕方がないね。天斗」
「ハッ、言われなくても分かってらァ。無理をせずに倒せるSAなんて今までいたかよ?」
 朱月は、追い込まれた中で非常な決断を下す。鷲尾はすぐに朱月の意図を理解し、槍を構え直した。
 それは、事前に鷲尾が皆に話した最後の手段。
 できれば使いたくないが‥‥甘えたことを言っていてはなぶり殺しにあってしまうだろう。
 煌夜が桔梗を放ち、レネネトが重力の爆音を放つ。そうして動きを牽制した後、无が魂喰を発動―――
「させませんよ!」
 不穏な動きを察知し、ダシオンが強烈な一撃を放ってくる。
 しかし小伝良が割って入り、无をガード!
「何‥‥!?」
「荒鷹陣だけは誰にも負けないようにって鍛え続けたんだ、『別にどうという事もない』なんて言わせないよ!」
「これ以上の邪魔はさせないのだよ!」
 鋼鉄をもぶち抜くと自負する矢を三節棍で受けられ、驚愕するダシオン。続いて叢雲が銃を連射するので、流石に動きを止めざるを得ない。
 その間にも、无は魂喰を発射! シエルは例によってハンマーを犠牲に防ぎ、攻撃は中止―――
「よう」
「っ!?」
「‥‥全部受け止めてやらァ。懐の深い男としてなァ」
 攻撃の姿勢を取っているようには見えなかった鷲尾が、斜めから突然シエルに抱きついた。
 それは煌夜とレネネトから始まる一連の攻撃でシエルを追い込んだ結果、なんとか手の届きそうな範囲まで誘導したということである。
「今だ! オレごと技を叩きつけて止めを刺せ!」
「‥‥一緒に死ぬの? あなたも私を愛して‥‥くれないの‥‥?」
「まだンなこと言ってンのかよ。‥‥終わったらどら焼き、一緒に食おうな」
「‥‥どら、焼き‥‥」
 力いっぱい抱きしめる鷲尾。多少もがくが、振りほどこうとはしないシエル。
 鷲尾の優しい目が、腕を千切るくらい容易なはずのシエルの心の方を捉えて放さなかったのだ。
 小伝良が瞬脚でシエルのすぐ後ろに現れる。そして空気撃が放たれ、二人を弾き飛ばした。
 転がった先は‥‥開拓者たちの眼前。
「シエル!」
 叫んだダシオン。それに答えるべく、シエルは小さく‥‥それでも確かに、こう呟いた。
「‥‥もういいよ。ありがとう―――」

●愛に抱かれて
 ダシオンはシエルの言葉を聞き、すぐさまその場を退いた。
 暴れられても困るため、鷲尾には悪いが朱月は言葉通り鷲尾ごとシエルの腹部を斬竜刀で貫く。
 非常ではあっても酷くはない。指揮をすると決めたのなら、非常な決断も必要なのだから。
「‥‥不思議‥‥。痛いのに‥‥これから死ぬのに‥‥。なんでか‥‥安心してる‥‥」
「‥‥シエルちゃん、それはあなたが、本当の意味で鷲尾さんに愛されてるからよ」
 そっとシエルの頬を撫でる煌夜。鷲尾は腹部を貫かれたまま、それでもシエルを放さない。
 激痛を耐えながらも、シエルに笑いかけていた。
「ほんとうの‥‥愛‥‥。あぁ‥‥愛って、暖かいんだね‥‥。辛いのは‥‥愛じゃ、ないんだ‥‥」
「おうよ‥‥。ほれ‥‥は、腹に、風穴開けちまったけど‥‥どら焼きだ」
 今までどこに持っていたのか、どら焼きを懐からレネネトに取り出してもらう鷲尾。
 シエルに抵抗する力が残っていないことを悟ると、朱月は二人を起こし、鷲尾が背後からシエルを抱き抱えるような形にして座り直させてやる。
「どうぞ。鷲尾様の愛のこもったどら焼きです」
 ジークリンデはシエルの手にどら焼きを握らせてやろうとするが、すでにシエルの手は動かない。限界突破のツケが今やってきたのだろうか? 優しく微笑み、口元に運んでやる。
 弱々しくかじるシエル。咀嚼するにも時間がかかっていた。
「‥‥美味‥‥しい‥‥。ねぇ‥‥」
「あん‥‥?」
「わた、し‥‥せかいで‥‥いち、ばん、しあわせ‥‥な‥‥アヤカシ‥‥だね‥‥」
「‥‥あぁ。だから‥‥幸せなまま、眠りな‥‥」
「‥‥うん‥‥」
 鷲尾は薄れ行く意識の中、白梅香を発動する。
 シエルの胸にその右手をやり‥‥その身体を浄化していく。
 胸を熱くする開拓者たち。涙を隠さない者も多い。
 世界で一番幸せなアヤカシ。そう言って、少女は消えた。
 胸いっぱいの、愛に抱かれて―――