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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 星座アヤカシのボスである天秤座と、長き因縁となっていたペガサス座をついに撃破した開拓者たち。残る星座も後わずか、残る懸念事項は平坂 空羅ただ一人。 残る星座は蟹座唯一つだが、平坂 空羅は黄道十二星座のメダルを所持していない。つまり、全く行方が知れていないのは蟹座だけということになる。 蟹座の行方はともかく、平坂 空羅は黄道十二星座以外の76枚もの星の一欠片を所持しており、ぶっ飛んだ話だがそれら全てを同時に扱うことも可能であるという。 それによる戦闘力はもはや人間の域を超越しており、たった一人で石鏡軍と渡り合うことも可能だという。 星座アヤカシたちとの共闘も終わり、充分な力を蓄えたと考えた平坂 空羅はついに自ら行動を起こし覇を唱える――― 「……さて、これが最後の逢瀬だ。我、天秤座の残滓はあと十分もすれば完全に消えてなくなる」 「……そうですか。一葉さんが戻ってくれば私はあなたのことなんて知ったことじゃないと思ってたんですけど……」 「フフン、いざとなると寂しいか?」 「はい。一葉さんと同化したあなたは、一葉さんの一部に違いありませんから」 「……素直に嬉しいよ。その言葉を聞けただけでもこの娘に取り付いた甲斐があった」 ある日の開拓者ギルド。 職員の西沢 一葉と鷲尾 亜理紗は訳あり依頼人のための座敷で会話をしていた。 平坂 空羅が連絡があり、開拓者ギルドが管理している11枚の黄道十二星座のメダルを寄越せと言ってきたのである。拒否すれば石鏡の村や町を片っ端から潰していくぞとの脅し付き。 黄道十二星座のメダルも手中に収め、自らの力をより盤石にするつもりなのだろう。もしかしたら88星座を揃えたら石鏡以外でも星の一欠片の力を振るうことができるようになるのかも知れない。 仮説はともかく、これ以上平坂 空羅に力を付けさせる訳にはいかない。76ものメダルを操る平坂 空羅を倒すのは困難を極めるが、本気で世界を掌握しかねない暴君を生み出すわけにも行かない。 「ところで、蟹座キャンサーの行方が分からないんですが何か知りません?」 「うん? キャンサーならお前たちはすでに出会っているだろう」 「……は?」 「依頼に参加する開拓者たち。それが蟹座キャンサーなのだ。キャンサーはアヤカシとしての実体を持たず、現象もしくは概念としてのみ存在している」 何気なく聞いてみたのだが、ぶっ飛んだ答えが返ってきたので亜理紗は混乱気味である。 「疑問に思ったことがあるだろう? 星の一欠片は確実にドロップするわけでは無いはずなのに、お前たちが依頼で倒した星座アヤカシは100%メダルを落としている。それは何故か……キャンサーの力が働いていたからだ」 「え、じゃあキャンサーって人間の味方をしてくれてるんですか……?」 「いいや。そうやって次の戦い、また次の戦いと延々と戦いの連鎖へと導いていくのが蟹座の力だ。お前たちが戦い続けることでどれだけのアヤカシが瘴気を還元できたと思う? ある意味では我、天秤座以上に世の均衡を保っている存在よ」 「質悪っ!」 「そう言ってやるな……キャンサーはペガサスと同じで、長い歴史のある時期に突然変異を起こしたタイプなのだ。特別な存在としてある意味黄道十二星座と同等かそれ以上の存在となったペガサスに比べ、キャンサーは恨まれ、馬鹿にされ、ヒエラルキーの最下層への転落を余儀なくされた。黄道十二星座であるにもかかわらず……いや、黄道十二星座だったからこそというべきか。そうして不当な扱いを受け続けたキャンサーはいつしか実体化することすら拒み、誰にも見えない概念や仕組みとして漂っている。まぁ、積尸気を司るキャンサーが実体化してしまったら正直人間では相手にならんぞ。一呼吸で命を握り潰すことができる故な」 「長いので三行でお願いします」 「お前たちがキャンサー キャンサー可哀想 キャンサー強い」 「……天秤座の残滓はとっくに消えてて、ただの一葉さんが喋ってるんじゃないでしょうね?」 「フッ、好きに捉えればいい。とにかく、この戦いに勝利すればキャンサーの呪縛からも解き放たれるだろう。88の星座をお前たちが揃えた時、星の物語は終わりを告げる……」 「……ライブラさん?」 「……そろそろ時間だ。我にはこの世界の行く末を見届けることはできぬが……願わくば、お前たちの未来に幸があらんことを」 「……はい。色々お世話になりましたし、お世話しました。……また、どこかで」 「フッ……会えると良いな。さよなら……亜理紗……そして……開拓者の、みんな―――」 そうして天秤座の残滓は完全に消滅し、一葉は座敷にふっと倒れる。 ややあって目が覚めた時、一葉はいつもの彼女に戻っていた。 「……あれ? 亜理紗? あー……ごめん、私、寝ちゃってた?」 「あはは……春ですからね。春眠暁を覚えずですよ。出会いと別れの季節です」 「うん? そうだけど……何か悪いものでも拾い食いした?」 「しませんよっ! もう一葉さんたら、相変わらず酷いですー!」 「あはは、ごめんごめん。で、午後からの依頼はどんなのがあったっけ?」 「えっとですねぇ……」 もう一人の一葉との別離。その悲しみをそっと堪え、亜理紗はいつもの様に仕事へと戻る。 この何気ない日常を守るためにも、最後の戦いに負けることは許されない。 決着は人間の手で。神よ、どうか手をお貸しにならないで――― カウント・ザ・メダルズ! 現在、開拓者が使えるメダルは! 馭者座、山猫座、テーブル山座、三角座、南の三角座、海豚座、アンドロメダ座、ポンプ座 望遠鏡座、魚座、鳳凰座、矢座、時計座、彫刻具座、彫刻室座、蛇座 水蛇座、海蛇座、画架座、牡牛座、エリダヌス座、小犬座、小狐座、小獅子座 小馬座、蠍座、蝿座、六分儀座、八分儀座、大熊座、小熊座、孔雀座 竜座、顕微鏡座、カメレオン座、水瓶座、カシオペア座、ヘラクレス座、狼座、乙女座 巨嘴鳥座、コップ座、鶴座、飛魚座、炉座、祭壇座、麒麟座、一角獣座 鷲座、風鳥座、烏座、白鳥座、双子座×2、冠座、南の冠座、インディアン座 旗魚座、蜥蜴座、帆座、ペルセウス座、定規座、ケンタウルス座、コンパス座 、琴座 大犬座、髪の毛座、オリオン座、猟犬座、レチクル座、牡羊座、南の魚座、鳩座 南十字座、蛇遣い座、山羊座、鯨座、ケフェウス座、獅子座、射手座、盾座 牛飼い座、天秤座、ペガサス座、兎座、艫座、竜骨座、羅針盤座 |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
臼井 友利子(ia0994)
18歳・女・志
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●極星乱舞 雨が降っていた。 土砂降りというほどでもなく、かと言って傘なしではいられないほどの雨。 しとしとと振り続けるその雨は、戦場に倒れ伏す多数の人影も容赦なく濡らしていく。 本来遮蔽物のないはずの平原は激戦で地形まで変わり、小高い丘や土で出来た壁のようなもの、地面から人を突き刺すかのように突き出た円錐など奇妙な空間と化していた。 倒れた人影はどれも動かない。死んではいないようだが、誰も彼も重傷で立ち上がることすらままならないのだ。 そんな戦場にあって、ただ一人二本の足で立ち、くっくと笑う人物。それは――― 「星の紡ぎ手たちもこんなものか。弱い、弱すぎる! いや……俺が強くなりすぎてしまったようだな。76の星座を操るこの俺に勝てるものなど在りはしない! 俺が! 天儀最強だッ!」 太刀を天に掲げ、勝利宣言をする平坂 空羅。その着物は濡れてはいるが泥の跡は見られない。 事の発端は戦闘開始前。注意深く戦場に向かっていた開拓者たちだったが、参加者の一人が突如として光線のようなものに貫かれ意識不明に陥ったのだ。 気を失う前に亜理紗が牡牛座のメダルを託されたが、これから始まる激戦に耐えられるわけがないと判断、木陰に運んで安静にしてもらうことになったのである。 そんな超長距離狙撃をやってのけたのは勿論平坂 空羅。望遠鏡座+コップ座+コンパス座のコンボだったらしい。第二射がなかったのは何故かと接敵後に尋ねたところ、 「こそこそ隠れて全員を撃ち殺すなど、覇を唱える人間がすることではない。ちょっとした実験だ……今回のことから俺が得るべき教訓は『倒すなら目の前で』だ」 あれではつまらんと吐き捨て、ついに相対した開拓者たちと本気の勝負を望んだのである。そしてそこからは一方的……あまりに一方的だった。 1つ2つでも強力な(?)効果が出る星の一欠片が76枚、しかも自由に合成可能となってはもう手がつけられない。 回避のためにステップを踏めば地面との摩擦をゼロにされ立ち上がることすらままならなくされ。 果敢に斬りかかろうとすれば山猫座で分身され。 遠距離から詩で攻撃しようとすれば琴座で音を中和され。 次から次へと繰り出される星座の力は対応力がありすぎる。 そしてその結果が今だ。聞こえるのは大地に落ちる雨音と、それにかき消されるような数々の呻き声だけ……。 「さて……勝敗は誰の目にも明らかだ。黄道十二星座のメダル……渡してもらおうか」 空羅は手近にいた者ではなく、わざわざ後方にいた亜理紗のところまで歩いて行き、仰向けに倒れていた彼女の胸ぐらを掴んで軽々と持ち上げてみせた。 泥と血で汚れた巫女服。その首は徐々に締まっていく。 「……まだ……まだ、皆さんは……負けて、ません……!」 「負けていない? 負けていないだと? どこが! どこをどう見ても貴様らの負けだ! それとも何か?『負けたけれど星の一欠片は渡したくないです』などと言うつもりか? 見苦しいにも程があるわ!」 それは分かっている。勝ち目が薄いことも、苦しい主張をしていることも。 しかし、亜理紗は記録係としてずっと背中を見送ってきた。星座アヤカシたちとの戦いに赴く開拓者たちを、基本的には見送るしかなかったのだ。 開拓者たちが大怪我をして帰ってきたとしても、亜理紗は労いの言葉をかけることくらいしかできなかった。だから、こうやって参加している時くらい。最後の決戦の時くらい……! 「……意地があるでしょ……女の子にも……!」 「まさか貴様、今更星の一欠片に期待しているのではなかろうな? 馬鹿馬鹿しい……確かに貴様らは幾多の危機を星の一欠片で脱してきたかも知れんが、俺は76枚のメダルを持っているんだぞ? 黄道十二星座だろうが、76の星座で押し潰すまで! それとも、反動覚悟で同時発動を試してみるか? やってみせるがいい、凡人共!」 亜理紗を地面に投げ捨て、両手を大きく広げて開拓者たちを煽る空羅。 星の一欠片の同時発動は自分だけの特権。そう信じて疑わない彼は、ふらふらと立ち上がり始めた開拓者たちをまるで警戒していない。死にぞこないに何ができると完全に舐めている。 「お前の様な奴ァ、やると言った事はやる男だ……。ただ……これからの時代に、お前の様な野心は……必要ねェ。お前は時代に、乗り遅れたんだよ……マヌケが……!」 鷲尾天斗(ia0371)は山羊座を。 「強い力は、人を孤独にする……今の貴方、そのもの、だよ。その道を、見誤らないために……仲間との繋がりが必要なんだ……!」 真亡・雫(ia0432)は魚座を。 「ここまで来たら、退路などあるものか……! 全ての決着を、つけるために……何度でも参る……!」 相川・勝一(ia0675)は獅子座を。 「例え私が、死ぬことになっても……お姉様だけは、守らねばならないのです……! それが、惚れた弱みですから……!」 各務 英流(ib6372)は双子座を。 「メダルの誘う、伝説は……星の彼方に……。人の歴史は、人の手で作らねば意味がありませんよ……!」 三笠 三四郎(ia0163)は双子座を。 「輝く星座も、空賊の旗も……まだ、折れちゃいない……! 消えちゃいない……!」 天河 ふしぎ(ia1037)は乙女座を 「所詮、人の敵は人……。覚悟はいいか、殺人鬼候補……?『afor ye go』そう、ここから始まるんだ……!」 雪切・透夜(ib0135)は射手座を。 「私には、まだ仕事が残っているのです……。勇者たちの物語を、後世に語り継ぐのです……!」 レネネト(ib0260)は牡羊座を。 「まだまだ、踊り足りない、もーん……! 兄ロリも、姉ロリも、絶対死なせないんだよー……!」 アムルタート(ib6632)は蠍座を。 「こんな事を、続けても……悲しみしか産まれないのです……! もう、止めるのです……!」 臼井 友利子 (ia0994)は水瓶座を。 そして再び立ち上がった亜理紗が天秤座のメダルを構える。 瀕死に近い重傷を受けてなお闘志を燃やし立ち上がった開拓者たち。しかし空羅はそれを見回すと、こらえきれずとうとう大声で笑い出してしまった。 「何かと思えば……先ほど試してダメだったメダルばかり。しかも十二星座揃っているかと思いきや双子座が二枚、10種類しか無いではないか」 痛いところを突かれた開拓者達であったが、この際そんなことは気にしていられない。 先ほど使用してダメだったのは一人一人やったからだ。全員で十二星座を同時発動すれば何かが起きるかもしれない。事前の作戦でもやって見る価値有りと結論づけられた事だ。 しかし、戦闘開始前に一人欠員が出たことで牡牛座が浮いてしまった。蟹座の事を差っ引いても10種類しか発動できないのでは意味が無い。 「立ち上がるだけ無駄だったな。苦しみが伸びただけだ」 炉座を発動し全身に炎のオーラを纏う空羅。全員を殺して回る気満々である。 そんな時、亜理紗は託された牡牛座のメダルも取り出し、両手で一枚ずつ構えてみせた。 「ほう、いい度胸だ。見せてもらおうか……自爆ショーを」 「自爆なんて、しませんよ……!」 しかし亜理紗は痛みで顔をひきつらせながらも笑ってみせる。 そして目で仲間に訴える。『大丈夫です、信じてください』と。 亜理紗には十二星座同時発動に関しては勝算があった。発動後それが有効打になるかはともかく、作戦はなんとか遂行できると確信していた。 何故ならば……! 「ほう……何故だ?」 「だって……私のお腹の中に、もう一人居ますから……!」 『!?』 驚いたのは空羅だけではない。その場に居た全員が様々な感情で驚愕する。 しかし、生まれてもいない子供に星の一欠片が使えるわけがない。 ……普通ならば。 「繋いで、星の力を! 星華連生陣!」 おなじみのトンデモ術でお腹の子と牡牛座のメダルをシンクロさせ、その効果を無理矢理発動。開拓者たちも遅れることなく同時に十二星座のメダルを発動させる! 「馬鹿め! 牡牛座が増えようが11種! 貴様らは届かんのだ……俺にも、自分たちの理想にも!」 そう、どうしても蟹座が足りない。依頼に参加する開拓者が蟹座キャンサーと言われても、具体的にどうすればいいのかは全くわからないのだ。 だから、叫んだ。臼井が心の底から、ありったけの願いを込めて。 「蟹座さん、どうか姿を現して、私達に力を貸して欲しいのです……! 皆に馬鹿にされたって、誰か一人に認められれば、それは嬉しい事なのです。私が……いえ、ここにいる皆が、蟹座さんの凄さを分かってあげるのです……! だから……!」 「神頼みならぬ蟹頼みとは笑わせる。もういい、貴様らは死ね! 死体からメダルを毟り取ってくれる!」 空羅が太刀を振り上げた瞬間、開拓者たちが黄金の光に包まれる。 そして輝きを増した十二星座のメダルたちが歓迎するような光を放つ中、空中に蟹座のメダルが現れた……! 「馬鹿な……アヤカシを倒してもいないのにメダルだと!? ちぃっ!」 大地を蹴り蟹座のメダルに手を伸ばす空羅。しかしそれより一瞬速く天河が流星の如きスピードで奪取する。 「天歌流星斬か! しかし、同時発動すれば貴様は終わりだ!」 「どうかな……今の僕達は、星座の祝福を受けてると思うけどね……! 信じる物だけがみえるピースを、今一つに……これが、僕達の内から溢れる……星の輝きだ……!」 天河が蟹座を追加で発動し、ついに黄道十二星座のメダルが揃った。 開拓者たちを包む黄金の輝きはその強さをどんどん増し、ついには目を開けていられないほどまでになる。 ややあって……ようやく光が収まった時、先ほどまで雨を降らせていた黒雲は綺麗さっぱり吹き飛ばされ、満天の星空に無数の星座が輝いているのが見えた。 星々の輝きは気のせいかいつもより強い光を放っているようであり、激闘の間に夜になっていたことすら心地良く感じる。 と。 「どういうことだ……何故星の一欠片が発動しない!? 何故だ!?」 動揺した空羅の声で現実に引き戻される開拓者たち。気づけば自分たちの持つメダルも効果を失い、使用できなくなっている。 それはまるで、黄金のメダルから星座の魂が抜け出て天空に還ったかのようで――― 「馬鹿な! 88星座を集めれば俺は更に盤石になれるはずだったんだ! それが、たかだか12枚のメダルで全ての星座が失われる!? こんな馬鹿なことがあってたまるか!」 「それは違うのです……。失われたのではなく、本来の姿を取り戻したのです……正しい心によって……」 「メダルに頼り過ぎたな……。一人だけでは、何一つ掴めやしないよ。どれだけ力があろうともね……」 レネネトと雪切の言葉に、更に激昂する空羅。 確かに開拓者たちは重傷で動くこともままならない。しかし星の一欠片を失った空羅は駆け出し程度の力しか無い。これだけのハンデがあってようやく戦えるかどうかといったところ。 だから……。 「さァ、来やがれ騒乱の徒花……! その首、置いて逝けェ!」 「小細工はここまで……というかこれ以上はないな。後は倒れるまで、正面から殴りあうだけだ……!」 「魚座……小狐座。僕にとって、君達にはお世話になることが、多かったよね……。……最後まで、どうか……見守っていて。僕に力を貸して……!」 「相方のことも心配なので、手加減はできませんわ……御免遊ばせ!」 「あとはみんなの動きに合わせるように! 連携って凄いねー!」 「これで本当に終わりです。星の中に、物語を完結させましょう……!」 鷲尾、相川、真亡、各務、アムルタート、三笠。その誰もが星の物語を紡いできた者達。 生かして捕縛などという余裕はない。気を抜けば今にも倒れてしまいそうなくらい誰もが重傷なのだ。 問答無用で、御意見無用で、今の全力を空羅に叩き込んだ。 崩れ落ちる空羅。そしてその生命が終わったことを確認し……開拓者たちは大の字で再び地に倒れ伏したのだった。 「わー、きれ〜い! ちゃんとした星座、見たかったんだぁ!」 満天の星空を……星座を独り占めしているような気分になれる絶景の下、暫くの間動きたくない。誰もがそう思っていた中、鷲尾だけが起き上がり亜理紗をお姫様抱っこで抱き上げた。 「さて、んじゃ行くか」 「へ!? 行くってどこにですか?」 「今から新婚旅行に行こう」 「はいぃ!? え、でも私、明日も仕事―――」 「安心しろ、有給は一葉に押し付けてきた。もしギルドを首になったら俺が養ってやるよ。夫婦なんだしな。それに……お腹の子のことも、あるだろ?」 鷲尾も重傷には違いないので、腕の中でバタバタされると結構堪える。 今まで黙っていた分、お腹の子の事を持ちだされると辛い。周りからの『ヒューヒュー!』だの『おめでとー!』だのという声を聞いていると、気恥ずかしくて抵抗する気もなくなる亜理紗であった。 「えっと……じゃあ恒例の、個別のお礼だけ言わせてください。 まず三笠さん。冷静な判断と柔軟な発想力は唸らせられることが多かったです。いてくださると安心感が違いましたね。 相川さん。小さいながらも切り込み役として、たくさんお世話になりました。ショタ枠的な魅力を引き出せなかったのはごめんなさい。 レネネトさん。定規座や牡羊座で私を守ってくれたこと、感謝しています。レネネトさんがいなかったら即退却という場面も実は結構あったんですよ? 臼井さん。双子座の時に続き、参加有難うございます。蟹座はきっと、臼井さんみたいな優しい黒髪ロングな女性に弱いんだと思いますよ? 天河さん。コップ座の時以来ですね。物凄い経歴の方なので心強かったです。今回、蟹座のメダルを掴むのは天河さんにしかできなかったのではないでしょうか。 各務さん。いつも私のことを想ってくださるのは本当に嬉しいです。でも、私の愛している天斗さんのことも邪剣しないであげてくださいね。 真亡さん。あなたの優しさはアヤカシにも届く。思えばいつでもそうだった気がします。いつまでも変わらないあなたでいてくださいね。 雪切さん。盾の騎士の名は健在で、常に色んなものを守ってくださいました。実は小技や搦め手も得意なの、凄いと思いますよ。 アムちゃん。義妹として、仲間として、常に場を明るくしてくれてありがとう。これからもよろしくね。私も少しくらい、ステップ教わろうかな。 常連のあの方も、今回は戦場に来られず離脱しちゃいましたけど……いつも楽しい行動や台詞で和ませていただきました。ギャグ要員ばかりでごめんなさい。 最後に、天斗さん。……愛しています。新婚旅行の後も、末永くよろしくお願いしますね。子供の名前は―――」 心からの感謝。語り尽くせぬ想い。それらも全て引き受けて、物語は星の中で終わりを告げた――― |