アルゴ座起動!(弱)
マスター名:西川一純
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2015/04/06 21:30



■オープニング本文

 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。
 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する―――


 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。
 星座アヤカシのボスである天秤座と、長き因縁となっていたペガサス座をついに撃破した開拓者たち。残る星座も後わずか、残る懸念事項は平坂 空羅ただ一人。
 選択により導き出された結果は、天秤座が瘴気を還元できずアルゴ座の完全復活は無いというもの。
 ただし、復活しないとは言っていない―――
「む……この気配。アルゴ座が起動したのか……?」
「えぇっ!? ……っていうかあなたまだ消えてなかったんですか!? 天秤座を倒したんですから迷わず成仏してくださいよう」
「じきに消えると申したであろうが。完全に切り離されておったからな、我まで消えるのはすこしばかり時間がかかる。そんなにつれないことを言うと助言してやらんぞ」
 ある日の開拓者ギルド。
 午後の仕事に取り掛かってからしばらくして、職員の西沢 一葉は突然人が変わったような口調になった。それは取り付いていた天秤座の一部が全面に出てきたからであるが、後輩職員の鷲尾 亜理紗は色んな意味でぎょっとした。
 天秤座を倒して以来、一葉はすっかり元通りになったように見えたので、急に入れ替わられるとびっくりする。しかも開口一番アルゴ座が復活したなどと言われるともう意味不明である。
「アルゴ座は復活しないたんじゃなかったんですか?」
「ふむ、我、即ち天秤座の瘴気が足りんかったはずなのだが……どうやら平坂 空羅が無理矢理復活させたな。あやつめ、そんなことまで出来るようになっていたか」
 天秤座の残滓によると、アルゴ座は完全な形で復活していれば全長1200mもの史上最大の船として降臨するはずだったのだが、手順に不備があったのを無理に復活させたので120mほどの大きさしか無いという。
 それでも空前絶後の巨大な帆船が空に浮かんでいるのは事実であり、大筒を何門も装備しているので放置する訳にはいかない。
 今回は意思を持つ巨大な帆船、アルゴ座を撃沈することが最優先。倒せば羅針盤座ピクシス、竜骨座カリーナ、艫座プッピスのメダルが手に入るだろう。
「しかし、盾座を引き込んでおいて本当に良かったな。アレがいなくとも我を阻止する手立てはあったが、難易度が跳ね上がっておっただろうよ。完全復活したアルゴ座は今の十倍以上強いからな……もしそうなっていたら死人がいくら出てことやら」
「逆に言うと、十分の一である今でもシャレにならないくらい強いってことですよね……」
「天に舵を取り天を照らす星々の船だからな。それを平坂 空羅が掌握すれば、はてさてどんなことになっておったのやら」
 そら恐ろしいこと言いつつ、天秤座の残滓はくっくと笑う。
 今回は空を飛べる朋友の助力が必要不可欠。鯨座の時と違い、アルゴ座以外の敵は居ないが、最強最大の星座の名は伊達ではない。
 最大限の注意を払いつつ、不完全なアルゴ座を沈めてもらいたい―――



 カウント・ザ・メダルズ! 現在、開拓者が使えるメダルは!
馭者座、山猫座、テーブル山座、三角座、南の三角座、海豚座、アンドロメダ座、ポンプ座
望遠鏡座、魚座、鳳凰座、矢座、時計座、彫刻具座、彫刻室座、蛇座
水蛇座、海蛇座、画架座、牡牛座、エリダヌス座、小犬座、小狐座、小獅子座
小馬座、蠍座、蝿座、六分儀座、八分儀座、大熊座、小熊座、孔雀座
竜座、顕微鏡座、カメレオン座、水瓶座、カシオペア座、ヘラクレス座、狼座、乙女座
巨嘴鳥座、コップ座、鶴座、飛魚座、炉座、祭壇座、麒麟座、一角獣座
鷲座、風鳥座、烏座、白鳥座、双子座×2、冠座、南の冠座、インディアン座
旗魚座、蜥蜴座、帆座、ペルセウス座、定規座、ケンタウルス座、コンパス座 、琴座
大犬座、髪の毛座、オリオン座、猟犬座、レチクル座、牡羊座、南の魚座、鳩座
南十字座、蛇遣い座、山羊座、鯨座、ケフェウス座、獅子座、射手座、盾座
牛飼い座、天秤座、ペガサス座、兎座


■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675
12歳・男・サ
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
レネネト(ib0260
14歳・女・吟
各務 英流(ib6372
20歳・女・シ
何 静花(ib9584
15歳・女・泰


■リプレイ本文

●天に舵を取り天を照らす
「派手なお迎えだな、これは!」
「『天に舵を取り天を照らす星々の船』かよ。面白れェ! 天ごと穿ち切裂いてやらァ!」
「アレを倒せば一区切りですね。ハリネズミみたいなやつですけども……」
 春めいてきたとはいえ、上空はまだまだ冷える。冷えるが風もなく、その空気は穏やかそのものであった。
 しかしその静寂を切り裂く火砲の爆音と複数の龍たちによる風切音は平穏とは真逆の存在。
 それは濃密な死の気配。圧倒的に強大な敵との命のやりとり。そして、開拓者たちと朋友たちとの絆が試される大空の戦場であった。
 何 静花(ib9584)と星風は少し引いた位置から、鷲尾天斗(ia0371)と火之迦具土、相川・勝一 (ia0675)と豪炎が凄まじい対空砲火に晒されているのを見て思わず手に汗を握る。
 相川はアルゴ座のことをハリネズミのようだと評したが、まさに的確。大筒の倍以上設置されている機関砲から何百何千という瘴気の弾丸が発射され、間を縫うように大筒からも砲撃が連射されている。
 その船体は全体がほんのり発光しており、夜に見たのであればまさに『天に舵を取り天を照らす星々の船』といった具合に見えたことだろう。
「山みたいな物が落ちてくるといいのだがな。……大きければもう山のように大きいテーブルでもいいっ。頼んだ、テーブル山座のメダル!」
 相川はアルゴ座を一気に黙らせるべく、使用者によっては高重力やら岩塊を落とすテーブル山座のメダルを使用する。
 相川のテーブル山座=自身を中心に直径20m円の地面を円柱型に隆起させる
 当然自らが地面に居ないと無効である。空中でなければ何かができそうな効果だけに惜しい。
「くっ……! ガイロン、耐えて!」
「鶫、蒼天にあれは不要だ。空は、静かな場所なのだから」
 真亡・雫(ia0432)とガイロン、雪切・透夜(ib0135)と鶫の二組は防御に秀でたコンビであり、龍の防衛力、生存性は非常に高い。
 速度には劣るため回避はできないが、防御力と自己再生で弾幕の突破を狙う。
 機銃だけならまだしも、やはり大筒が痛い。自分の意思を持つアルゴ座は硬い敵がいると判断、大筒の弾頭を徹甲弾に変更しダメージを増やしていく。
「えぇい、アルゴ座さん! 左舷、弾幕薄いですわよ! 何をやっていますの!」
「今日は鷲尾さん弄りをやっている余裕はありませんよ。それにしても、やはり厳しい。近づくことすらままならないとは」
「わかっていますわ。お姉様に伝えたいこともありますし、パインケーキを食べる約束もしましたし!」
「……ツッコミませんよ」
 各務 英流(ib6372)と氷龍(ややこしいが炎龍)、三笠 三四郎(ia0163)とさつなは囮組が攻撃を引き付けてくれた後に攻めこむ手はずであったが、なかなか隙を見出せず足踏みをさせられている。
 事前情報もあり主砲がある正面には入らないようにしているが、それでも対空砲火は充分脅威。観察していたレネネト(ib0260)と空龍、要請を受けて参加した亜理紗もレネネトの龍に同乗中。
「す、すいません、流石にあの規模の瘴気砲を反射するようなトンデモ術は無いですぅ……」
「残念なのです。こうなれば鯨座を試してみるのです」
 最強の星座だろうが星座は星座。こちらも星座の力をもってすれば戦えないことはあるまい。
 レネネトが握りしめた鯨座のメダルが輝く時、変化は起きた。
 レネネトの鯨座=騎乗している動物の全長が10倍の大きさになる。ただしステータスは変わらない
 50m級の巨大な龍となった空龍は、主が言うところの『ド〜ンとできないか』を試すためアルゴ座へと突撃する。
 空龍の素早さは大きくなっても変わっていない。対空機銃や大筒を回避しつつ、体当たりを―――
「いけない! 戻って!」
「デカすぎんだろォ!」
「生存性は上がっていないんですよ!?」
 真亡、鷲尾、雪切が慌てて静止をかける。それもそのはず、近づけば近づくほど弾幕は濃くなり面積が増えた分被弾しやすくなっている。しかも体力も元のままなので、連続で何発もヒットすれば即お陀仏である。
 慌てて空龍に指示を出し後退するレネネト。亜理紗も同情しているので無理はできないのだ。
「攻撃を防ぐだけが盾じゃない。攻撃の可能性を潰すのもまた防御さ」
「射手座の力……今ここに!」
 雪切は麒麟座のメダルで落雷を操り、遠距離から機銃をピンポイントで潰していく戦法。真亡は射手座のメダルを用い、賭けに出る。
 真亡の射手座=手の平から音速のオーラの矢を放つ。撃たれてからの回避とガード不可
 囮をもってしても乗り込むことができない以上、遠距離から削っていくしか無い。鷲尾も砲撃で船体を抉っていく方針に変更し、攻撃を加えていく。
 一つ、また一つと破壊されていく機銃。代わりに空中で炸裂し開拓者と朋友たちを削っていく三式弾の雨。泥仕合の様相を呈する空中戦はまだまだ続く……!
「ハリネズミどころかこれでは要塞だ。しかしこれだけ砲門が減れば大分攻撃しやすくなるな。ここからはこちらも攻撃に出るとする!」」
「お先にやってらァ。確実に削れてるぜェ。機銃と対空砲火が最初の半分くらいまでは減ったからなァ」
 相川と鷲尾の会話にもあるように、敵の戦闘力は確実に低下してきている。加えて朋友達による火球などで船体のあちこちに焦げができており、ダメージもそれなりに入っていると判断できる。
 ここで畳み掛けるべく、何が水蛇座のメダルを使い巨大な蛟を召喚、直上からアルゴ座に向かって落下させる。
 この蛟は何の言うことを聞いてくれるかどうかわからない博打要素なのだが、落とすだけなら従順だろうが反抗的だろうが関係ないし重力に逆らえる機能を蛟は持たない。
 直上にもきっちり放たれる対空砲火に顔をひきつらせた何であったが、蛟はそれらを喰らいながらも無事(?)甲板に叩きつけられ消滅したのであった。
「星風、あいつ(旦那とたらし)は盾だ。蛟の犠牲を無駄にするな」
 そんなアホな、と思いつつ星風は蛟の後を追いアルゴ座の直上から火砲を掻い潜る。
 ダン、と甲板に降り立った時、そこで待っていたのは……!
「フフ……遅かったじゃありませんか。そんなことでは私の相方は務まらなくてよ?」
「……どうやって先回りしたんだ」
「ペガサス座のメダルでちょちょいっと……」
 各務のペガサス座=使用後一度だけ音速で跳躍できる。無事に着地できる保証はない
 この効果を使い、氷龍の背中から一気に跳躍、いの一番に潜り込むことに成功したというわけだ。
「ちなみに着地は帆に突っ込みましたわ」
「旗包みか!」
 音速で移動中に流れ弾に当たろうものなら即死だ。どっちみちペガサス座を使うためには機銃を潰して貰う必要があったわけだが。
「まぁまぁ、乗り込んでしまえばこちらのものですわ。残りの武装も全て木っ端ミジンコにして差し上げますわーーーッ!」
「散々手を焼かせてもらったからな。見せてやろう、孔雀座のワザマエを!」
 何の孔雀座=両膝に炎のようなオーラが宿り、膝を使った攻撃時のみ攻撃力+300
 流石のアルゴ座も甲板の上にいる人間に対空砲火を撃てるわけがない。乗り込んだ各務と何は悠々と移動し、機銃や大筒を破壊していく。
 反撃があるわけでもないのでものの五分も経たずに破壊工作は完了、アルゴ座は完全に沈黙し主砲以外の火器が使用不可能に追い込まれ、ただの的へと成り下がる。
 こうなってしまうと巨大であることは足かせにしかならない。堅固な要塞も反撃あってこそであり、ノーガードで浮いているだけの船に勝利などありえない。
「ふぅ……なんとか沈黙させましたね。そろそろこちらのダメージも深刻でしたから助かります」
「……果たしてそうでしょうか? 確かに苦戦はしましたが、最強の星座がこの程度だとは思えないのです」
 三笠がさつなを撫でて労っている横で、レネネトは口元に手をやり訝しげな表情をしている。
 アルゴ座は強かった。元の十分の一まで弱体していても強かった。しかし、これで終わりではあまりにあっけない。
 不完全な復活だからと言われればそれまでかも知れないが、レネネトにはどうしても納得がいかなかったのだ。
 そしてそれは的中する。まるで最後の星座アヤカシが意地を見せるかのように。
『なっ!?』
 龍に乗っている面々は勿論、アルゴ座の甲板上に居た何と各務も同時に驚愕する。
 アルゴ座の横っ腹が突如分割され、巨大な腕が左右に展開する。
 同時に船底にも切れ目が入り、途中で回転しつつ二本の足が姿を現す。
 船首が2つに割れ、ブレストプレートのような形で固定。船尾も2つに割れ、マストが倒れこみマントを羽織ったような姿となり……甲板に巨大な顔が現れ双眸が光り輝く。
 それはまるで人のような形。巨大な船から空飛ぶ人型巨大アヤカシへとトランスフォーメーションしたのだ……!
『もういい! もうたくさんだ! 開拓者を破壊する!』
 今までの沈黙が嘘だったかのように大音響の思念を放ってくるアルゴ座。追い込まれて最後の手段に出たらしい。
 別に火器が復活したわけではないが、人型ということは格闘戦ができるということ。
 撃沈を待つだけの船ではなくなったというだけで、消耗している開拓者たちには脅威だ……!
「だからといって……!」
「ここで諦められません!」
 真っ先に我を取り戻した雪切と真亡が突撃し攻撃を再開する。
 アルゴ座はその姿を的確に追い、ギロリと睨みつけ……
 ギィンッ! と甲高い音を立て、真亡の刃が弾かれる。
「ピンポイントバリア!? まだこんな能力を!」
 船状態の時には使えない能力か。青白いオーラのようなものが集中し刃を止めた。
 反撃とばかりに右腕で真亡、ガイロン、雪切、鶫を薙ぎ払おうとするアルゴ座。その攻撃速度は思いのほか速く、回避はギリギリのところで成功する。
「長く共に在る、僕だけの龍なんだ。そう容易いわけがないだろう。……力をよこせ、獅子座。あの喧しい船を落とす力をだ」
 雪切の獅子座=獅子の形のオーラを纏い1分間攻撃力を300アップする
 背面に回り獅子座を重ね、鶫の防御力に物を言わせ突撃する雪切。どうやら見えていない場所にもピンポイントバリアを張れるようで一度は太刀を止められたが、勢いと攻撃力で押し通った!
 ザクンという木とは違う手応え。どちらかというと動物の肉を斬り裂いた時の感覚に近い。
『この程度では沈まぬ! かつてはお前たちの首だったものを砲弾にして人間どもを苦しめてやろうじゃないか!』
「……赤くもないのに随分口の悪い」
「ヒャッハァァ! どォしたドン亀、着いて来れネェならマァダマダ行くぜェ!」
 三笠はげんなりした表情でペルセウス座のメダルを使用、アルゴ座の石化を試みるがピンポイントバリアに邪魔されて攻撃が通らない。火王双炎からの炎龍突撃+天歌流星斬でも同様。
 各務とともに双子座を使い、上記のコンボを使用した場合はバリアを貫通できるのだが、ダメージは軽微な上石化攻撃との併用ができないのが難点である。
 鷲尾も久々に狂眼に凶笑を浮かべ攻撃に集中するが、魔刃エアでのフェズ・アルダバランであってもバリアを抜けない。ならばと取り出したのは天秤座のメダル!
 鷲尾の天秤座=自分と相手の重量を同じにする
「ここでこんな効果かよォ!?」
「いえ、これはこれで使い道があります!」
「あれだけの巨体が人間とほぼ変わらない重量になったということは!」
 三笠とさつな、相川と豪炎が飛び出し武器で強引に攻撃を仕掛ける。
 例によってピンポイントバリアで防がれるが、先ほどとは違い100mオーバーの巨体がまるで紙のように空中をぶっ飛んでいくではないか!
 二人と二匹の勢いが完全にアルゴ座の重量を凌駕している。空中で姿勢制御するアルゴ座だが、素早い相手に重量負けしているのはかなりヤバい。
『今度こそ貴様らを屑肉にしてしまおうぞ!』
 唯一無事だった主砲は、人型形態だとちょうど胸のど真ん中にあたる。そこから巨大な瘴気砲を放ち、開拓者を一掃する算段のようだ。
 間の悪いことに開拓者たちは半数以上がその射程内。まともに喰らえば朋友もろとも屑肉はおろか骨も残るまい。
 その時、たった一人飛び出したのは……相川!
「兎座、幸運が訪れてくれればいいが……さてどうなる……!?」
 相川の兎座=使用後一度だけ、相手が行った攻撃を物理非物理問わず自分から逸らす
 直径20m近い極太の瘴気砲。それが相川の前でくいっと向きを変え、三位湖に着弾し盛大な水柱を立てた。
 そして攻撃が逸れた隙に真亡は南の魚座を使用していた。その効果は大雑把に言うと探しものが見つかるというもので、真亡はアルゴ座の弱点を探してみたのである。
 オーラでできた小魚が現れ、導くようにアルゴ座の胸部にある瘴気砲発射口の前でピタリと止まる……!
「そこが心臓部……最も強大で最も脆い場所……!」
 ガイロンに指示を出し、練力を貯めつつ発射口に向かう真亡。しかしガイロンは速度に難があり、主砲の第二射に間に合わない!
 その時!
「アルゴ座=サン。ハイクを詠め!」
 一足先に何と星風が発射口に辿り着き、極神点穴で発射口を強打! 多数のひび割れを引き起こし十メートル近く巨体を弾き飛ばす。
 怯んだところで本命の真亡が追いつき……閃波「白亡龍」を発射口に叩き込んだのであった。
 巨大な人型機動兵器を撃ち抜いた一匹の龍。ポッカリと空いた風穴からは、紫色の瘴気ではなく黄金の光が溢れだし天から地上へ降り注ぐ。
 暖かな光。希望の光。願いの光。それらをひっくるめて人々はその光をこう呼んだ。
『星の光』
 と―――
 地下にあった導星の社もそれを覆い隠していた神殿も、元々は人々の願いや想いをマイナス方面に捻じ曲げるための施設。それらの瘴気を根こそぎ使って復活したアルゴ座が滅びれば、捻じ曲げられていた願いや想いは正しいものへと還っていく。黄金の光はその象徴だ。
 これでもう石鏡及び集星に星座アヤカシが現れることもなくなるであろう。
 やがて消滅したアルゴ座から艫座、竜骨座、羅針盤座のメダルを回収した開拓者たち。
 その様子を望遠鏡座のメダルで監視していた平坂 空羅は、風鳥座のメダルを使い飛翔。開拓者たちの前にわざわざ姿を表した。
「いいぞ……相手にとって不足なし。貴様らを越えることで、俺は更なる高みへと上り詰める!」
「舐めやがって……なんで今やろうとしねェ?」
「舐めてなどいない。手負いの貴様達を倒したところで俺の名に傷がつくだけだからな。万全の貴様らを打ち倒してこその覇道! 強い敵を乗り越えてこその修羅! 違うか?」
「(それが舐めてるっつってんだ……!)」
 正直、開拓者も朋友たちもダメージの蓄積が酷い。
 悔しいがここは素直に退いてもらったほうが利口だ。そう判断した三笠は、なにか言いたげな仲間たちを手で制した。
「それでは、また今度ということで。お引取り願いましょう」
「くっくっく……そうだな。力の差をみせつけてくれる―――」