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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 特別な出自を持つと思われる盾座を言葉巧みに誘導し、奇妙な協力関係を取り付けた開拓者たち。 星見の間を突破し敵の本拠地導星の社へ到着した一行は、楔を打ち込み橋頭堡を確保。 地下深くに眠るその場所には、ジルベリアで見られるような巨大な神殿がそびえ立っていたのだった。 盾座の言によると、その神殿を抜けた所に神社もあるらしい。まるで神殿という存在に塗り潰されるかのように……。 山羊座との戦いを経て、最強の星座が蘇るための条件が『天秤座が瘴気を還元するのみ』となったことを知った開拓者たち。もし何も知らず神殿に突入していたら最悪の事態になっていたかもしれない。 だが、心構えがあればある程度対策は可能。残る星座が僅かである以上、あとはガチ対決あるのみだろうか――― 「今回戦うのは獅子座レオと射手座サジタリアスの黄道十二星座姉妹です。どっちもガチの武闘派らしいので気をつけてくださいね」 「えっ、なんで相手が分かるわけ?」 「盾座さんからの情報です。ペガサス座から接触があって、開拓者にそう伝えろって言われたとか」 ある日の開拓者ギルド。 職員の鷲尾 亜理紗がさらりと言った言葉に、先輩職員の西沢 一葉は驚きを禁じ得ない。 一体でも強い黄道十二星座が二体、しかもガチガチの武闘派と言われたら激戦必至。だがそれ以上に相手が決まっていることにびっくりしたのだろう。 「ところで、姉妹っていうのは?」 「なんでも獅子座と射手座は兄弟姉妹なのが様式美だとかで、凄く仲の良い感じらしいですよ。妹の獅子座が剣と盾で戦う近接戦タイプ、姉の射手座がそれを弓で援護する遠距離タイプ。どちらも電撃を攻撃に絡めるとか」 「……言っていい?」 「ダメです。とにかく今回はこの二体の相手だけで精一杯だと思われますので、盾座さんのことも頭に入れつつ戦闘に専念してください。この二人を倒せば例の鏡も完全に砕け散るとか」 「ふむん。情報を漏らしすぎじゃない……? 何かの作戦なのかも」 「まぁ向こうも必死でしょうから援軍とか差し向けてくるかもしれないですけどね。蟹座とか天秤座本人とか」 「平坂 空羅とか?」 「うあ……」 思わず嫌な想像をしてしまい、しばし頭を抱える亜理紗。その頭を優しく撫で、一葉は微笑む。 「大丈夫よ。ここまで勝ち残ってきた開拓者たちならきっと勝てる。信頼して、安心して任せなさい」 「一葉さん……!」 「神話を信じるなら蟹座は友達を助けに来る可能性は高いけど♪」 「ちょっとぉぉぉ!? だから何なんですか、一葉さんのその蟹座推しぃぃぃ!?」 迫る時の中、黄道十二星座二体との同時バトルが幕を開ける。 生き残るのは開拓者か……それとも――― カウント・ザ・メダルズ! 現在、開拓者が使えるメダルは! 馭者座、山猫座、テーブル山座、三角座、南の三角座、海豚座、アンドロメダ座、ポンプ座 望遠鏡座、魚座、鳳凰座、矢座、時計座、彫刻具座、彫刻室座、蛇座 水蛇座、海蛇座、画架座、牡牛座、エリダヌス座、小犬座、小狐座、小獅子座 小馬座、蠍座、蝿座、六分儀座、八分儀座、大熊座、小熊座、孔雀座 竜座、顕微鏡座、カメレオン座、水瓶座、カシオペア座、ヘラクレス座、狼座、乙女座 巨嘴鳥座、コップ座、鶴座、飛魚座、炉座、祭壇座、麒麟座、一角獣座 鷲座、風鳥座、烏座、白鳥座、双子座×2、冠座、南の冠座、インディアン座 旗魚座、蜥蜴座、帆座、ペルセウス座、定規座、ケンタウルス座、コンパス座 、琴座 大犬座、髪の毛座、オリオン座、猟犬座、レチクル座、牡羊座、南の魚座、鳩座 南十字座、蛇遣い座、山羊座、鯨座、ケフェウス座 |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●輝きの刻 一陣の風さえも吹かぬ地下深く。そこに漂うのは何かが焼け焦げたような嫌な臭いと、開拓者たちの呻き声であった。 いつものように導星の社に転移した開拓者たちを待ち受けていたのは件の射手座と獅子座のコンビ。神殿の外で待ち構えていた彼女らは、まさに圧倒的な戦闘力を誇っていた。 戦闘開始直後、彼女らが放った合体攻撃……雷のエンジェルハイロゥは周囲の全てを巻き込み地下に輝きと静寂をもたらした。盾座も全てのシールドビットと手持ちの盾を動員するが、それでも天使の輪には抗えなかったのだ。 共に銀髪ツインテールの少女で、弓を持つ射手座のほうが大人びた顔をしている。剣を持つ獅子座は不敵な笑みを浮かべる歳相応の少女といった具合。 見た目はただの少女であるのに、開拓者たちは地面を舐めさせられる結果となっていた。 「ふっふーん、こりゃレオちゃんが出るまでもなかったかな? ぜんぜん弱っちぃじゃん!」 「慢心してはダメよレオ。彼らに何体の星座アヤカシが討ち取られたか忘れたの?」 「サジ姉は心配性じゃん? 見なよ、こいつらのザマを」 ケラケラと笑い、勝利を確信する獅子座。しかしそれを否定するように、開拓者たちは一人、また一人と立ち上がっていく……! 「申し訳ないが、この程度で砕ける盾じゃない……!」 「白龍の牙も、まだまだ健在ですよ……!」 「双子座を使っていなければ即死でしたわ……」 「不死身と無敵……ヘラクレスの苦労が偲ばれますね……」 雪切・透夜(ib0135)は魚座のメダルを使い、美少女化した上盾を強化&ソードシールド化させている。これで大分軽減したらしい。一方、真亡・雫(ia0432)はケフェウス座のメダルを使用中。状況に合った効果が発動したようだ。 真亡のケフェウス座=女性及び女性型のアヤカシから受けるダメージを半分にする 各務 英流(ib6372)と三笠 三四郎(ia0163)は共に双子座のメダルを使用し、二人のステータスを合計した数値の力を得ている。これならば各務の実力がグンと上がる上、三笠も補強ができるのでどちらにとっても恩恵がある。 「ウザっ! どうせレオたちには勝てないじゃんっ!」 一足飛びで各務に接近し、諸刃の剣を振り下ろす獅子座。普段なら絶対止められないその一撃を各務は愛用の長斧で見事に受けてみせる。 「見える……私にも敵の動きが見えますわーッ!」 「見えるだけじゃ勝てないじゃんっ!」 その動きはまるで少し遅い瞬脚のよう。流れるような残像を残し剣の柄で各務を打ち付け、斬りかかってきた真亡の刀を盾で防ぐ。 その後すぐにバックステップで距離を取る辺り、口では舐めたことを言いつつ油断も見えない。 「仲がいいだけに連携もばっちり、と。厄介な相手だな。こちらも負けないよう連携していかないとか……!」 「こりゃ、マジパネェなァ。とにかく最初からクライマックスだァ!」」 痛みを堪え、相川・勝一(ia0675)は獅子座に向かって突撃し、鷲尾天斗(ia0371)は矢座の効果で矢のシャワーを射掛けていく。 「射手座の私に矢を放つなんて……おバカさん……♪」 鷲尾が降らせたオーラの矢の雨は、射手座がパチンと指を鳴らした次の瞬間、向きを変えて開拓者たちの方へ降り注ぐ! 「カバーしきれない……!」 「緊急防御なのです」 盾座が亜理紗のカバーに入るも、矢の数が多すぎて守りきれないのは火を見るより明らか。そこでレネネト(ib0260)が牡羊座のメダルを発動し、自分、亜理紗、各務、盾座を包み込む羊毛の塊を出現させた。 これは魔術を防ぐ効果があるため、オーラでできた矢座の矢をも防ぐことができる。 難点は中にいると窒息することと視界がゼロになることだが、この中にいれば最初に喰らった雷のエンジェルハイロゥも防げるだろう。 「残りの連中もアレの影に隠れたじゃん。まったく、星の一欠片っていうのはホントに厄介じゃん!」 「メダルはあくまで手段の一つ! 厄介と評するのであれば、我ら人間としてもらおう!」 「元々はレオたち星座アヤカシの核じゃん!」 「メダル中毒者に理屈は通じない。う〜メダルメダル」 すでに交戦していた相川と真亡に続き、三笠、何 静花(ib9584)の二人が羊毛の影から飛び出し獅子座に突撃する。 4人にさっと視線をやった獅子座は瞬時に行動に移り、一番近くに居た相川に足払いをかけバランスを崩したところで何を蹴り飛ばす。 背後から斬りかかる真亡を肘打ちでカウンターした後、双子座ブーストで一番の強敵と化した三笠の槍を盾でいなし相川にぶつける……というのが理想像。 しかしそれらの攻撃動作は全て盾座のシールドビットによるオートガードで防がれてしまっていた。 「ウザっ!」 「メダル、いい効果が出てくれよ!出てこないと……泣く! ていうか死ねる!」 相川の炉座=自分と、周囲3m以内にいる人間のスタミナを5分間無限にする。範囲から出ると即効果が切れる 「疲れなくなるのか。燃費が良いと家計が助かるぞ」 「能力アップとスタミナ増加……良い組み合わせです!」 瞬脚で撹乱しつつ、何は相川の炉座の恩恵を受け機動を開始する。三笠もここぞとばかりに槍を振るうが、獅子座は相川の槍を足で払い、何の拳を盾で弾き、三笠の槍を剣で弾く。 その速さはまさに電撃。次の瞬間、電撃を帯びた回転斬りが三人を薙ぎ払ったのだった。 「楽しそうねレオ」 「サジ姉もじゃん」 「こいつら……!」 弓術師相当であろう射手座は、至近距離で鷲尾と雪切に斬りつけられ……それでも余裕だった。 矢を放つことは当然できないが、手にした弓で魔槍砲や銃弾、刀を弾いていくその様はまるで近接職のよう。 「隙あり♪」 鷲尾がよろけた所に凄まじい速度の速射を重ね、貫こうとする射手座。盾座のシールドビットは獅子座の方で手一杯になり間に合わない! が、雪切が発動したレチクル座による防護ネットに引っかかり、すんでのところで射手座の矢は止まったのだった。 「悪ぃ」 「お気になさらず。しかし、あの弦は瘴気か何かでできているみたいですね。当てたのに切れなかったです」 会話の間も絶え間なく繰り出される連続攻撃。しかし射手座は鼻歌交じりでそれを回避し、逆に弓で二人の足を打ち付け足払いを翔かける! 「がっ……!」 「ぐっ……!」 手痛いローキックを喰らうのと大差はない。思わずガクリと膝をついた所に回し蹴りが炸裂――― 「またスクトゥム? いい加減鬱陶しいわね」 オートガードで守られた鷲尾と雪切は転がって一旦退避。期せずして開拓者一同、獅子座射手座が合流し仕切り直しの形となる。 獅子座と射手座はほとんどダメージを受けていない。それに対し、開拓者たちは最初の合体攻撃を含めダメージが蓄積している。 「……スクトゥム、邪魔じゃん?」 「……そうね。大分邪魔ね」 ギラリと盾座に視線をやる黄道十二星座たち。それに対し、盾座は珍しく緊張した面持ちだった。 この場所に転移してくる前、鷲尾に言われたことがある。 『今回はマジでヤバいみてェだからな。お前しか出来ねェ事を頼む。……亜理紗を護ってくれ』 『……私は……』 『全てを護るって言うのは傲慢だ。本当に護れるのは1人位、それを知ればお前はセブンアームズの心を知る事が出来る』 『他の皆の……心……?』 『俺は俺が護れるモノを護る。……頼んだぞ』 全てを守ることを志したアヤカシ。しかし一人を守ることで心というものを知れるという。 ……分からない。心とは何かが分からない。分かる必要があるのかもわからない。 ただ、鷲尾 亜理紗を守ることはこの場において全員を守るのと大差ない効果がある。頭ではなく本能でそう理解してはいる。 「大丈夫なのです。いざとなればこの牡羊座でなんとかするのです」 各務の長斧で羊毛の中から脱出したレネネトたち。ヤバいと感じればまた発動すればいいだけの話である。 幸い前衛職は揃っているので物理攻撃を仕掛けてくる獅子座さえ止めてくれれば射手座が亜理紗を狙おうが盾座を狙おうがなんとかなる。 だが、そんな心理を見透かしたように獅子座と射手座は微笑んだ。片や怪しく、片やふてぶてしく……! 「ふーん? この期に及んでまぁだレオたちの力を甘く見てるんじゃん?」 「ふふ……星の一欠片による防御、今までの星座には通用しても私達姉妹には……」 『通用しない!』 再び左右対称のポーズを取り、雷のエンジェルハイロゥを放つ獅子座と射手座。 天使の輪が緊急発動したレネネトの羊毛聖域と激突した瞬間、激しいスパークが巻き起こり神殿の影を大きく揺らめかせる……! 『我ら黄金の双雷! 轟け、奈落の奥底まで!』 今まで、星の一欠片の効果は星座アヤカシの能力を時に防ぎ、時に打ち破ってきた。少なくとも星座アヤカシの能力に一方的に力負けしたというのは記憶に薄い。 星座の中でも最高級である黄道十二星座。その一つ、牡羊座によって形成された聖域が……! 「羊毛が……燃えるのです……!」 スパークの高熱に耐えられず発火し蒸発する。当然、天使の輪は広がりきり開拓者たちは二度目の直撃を受けることとなる。 再び地面を舐めさせられた開拓者たち。味方側で唯一立っていられたのは、雪切や盾座に散々庇ってもらった鷲尾 亜理紗だけ。 「ふっふーん、これでもう立ち上がれないじゃん? 頑張ったみたいだけど、ま、格が違うじゃん」 「ライブラ様、お喜びください。ついに悲願の時、アルゴ座の復活ですわ!」 恭しくお辞儀をし、左右に分かれて道を開けた獅子座と射手座。その遥か先で神殿の入口が開き、天秤座が姿を現す。 銀髪に真紅の眼。メガネを揺らす西沢 一葉にそっくりの天秤座は、無感情な目で開拓者たちを見下ろしていた。 しかしため息を一つ吐くと、 「……まだだな。奴らの目はまだ死んでいない」 「冗談! レオとサジ姉の合体技を二度も受けて立てるわけ―――」 その時、獅子座は信じられないものを見た。這いつくばったはずの開拓者たちが、ふらふらとではあるが全員立ち上がり始めたのだ。 ダメージは蓄積し、気力もとっくに限界を越えているはず。なのにどうしてこいつらは立てる!? 「……ウザっ……!」 ギリリ、と歯噛みをする獅子座。その表情からは初めて余裕が消える。 全力で殺しに来る。それは誰の目にも明らかであった。 ……と、その時だ。盾座のシールドビット全てが獅子座に突撃し、押さえつけはじめた。続いて盾座自身も獅子座を羽交い締めにし全身から瘴気を噴出させる……! 「おい! 何する気だおい!?」 「くっ、放すじゃん!? ……こいつのどこにこんな力が……!?」 「『一人が誰かを助け、助けた奴が違う誰かを助ける。点を結び線としそれを繋げて面に。それを広げて円とする。ソレが繋がり』。……あなたたちが教えてくれたコト」 獅子座と盾座は共鳴するシールドビットにより瘴気の球体の中に閉じ込められるような格好となっている。エネルギーがスパークし、ドス黒い雷が内部に迸る地獄の空間。 これが盾座に唯一許された攻撃技。自らの死とともに敵一人を道連れにする、仲間を守るための自爆……! 「ライブラ様、御加勢を……!」 「……自分たちで充分なのであろう? 自分の言動には責任を持て」 射手座が天秤座にレオの救援を乞うたその一瞬。それが明暗を分けた。 射手座は戸惑い、自らの手で雷を落とし球体を破壊しようとするが、それよりわずか先に球体は爆裂する……! 「やめろォォォッ!」 洞窟内に絶叫が轟き、瘴気が渦を巻く。 それが収まった時、人影が2つ、地面に倒れ伏した。 「うォォォッ! 静花ァァァッ!」 鷲尾が吠える。何が応える。 戦陣「龍撃震」の効果を得た何が瞬脚で一気に間合いを詰め、射手座は速射で迎撃しようとするが、何の蜥蜴座の効果に阻まれる。 何の蜥蜴座=発動後1度だけ、飛来した物を手の平で無傷で受け止められる 「押しこむ……勝機はここだけだ!」 そのまま酔拳の動きで拳を叩き込む何。腹に一撃、しかしこの程度では射手座は倒れ――― 何のすぐ後ろに各務の姿。手にした長斧を振りかざし、肩口に抉り込む! 「鯨座の力、ご覧遊ばせ!」 各務の鯨座=攻撃ヒット時、敵に50倍重力の追加ダメージ お次は相川。炉座のメダルを手に槍を構える。 「ここでやりきらねば武を語れん!」 相川のカメレオン座=手にした武器をガラスのような半透明にする。相手の防・受防ダウン 視認しづらくした槍で斬り抜け、更に三笠が続く。 「撤退する前にやるべきことがあります……!」 三叉戟を振るい、あえて射手座の手を狙いペルセウス座の効果で石化させる。 驚愕する暇もなく、射手座に雪切が襲いかかった。 「……やりづらいな、本当に……!」 聖堂騎士剣での一撃を腹に叩き込み走り抜ける。その表情は前髪に隠れよく見えなかったが、絞りだすような台詞で内心は察せられる。 そして怒涛の六連撃のシメとして、走りこんだ真亡が刀を振るう。 「こんな……僕たちは、こんな結果を望みはしなかったのに……! クリムさん……!」 それは悲しみ。仲間を失った悲しみが閃波「白亡龍」と具現化し、射手座の胸を穿ったのであった。 「そん……な……! わたし、たち、までが……! レオ……!」 ざぁっ、と瘴気に還り黄金のメダルを落とした射手座。その様を見て、かろうじて生きていた獅子座の心が折れる。 「サジ、姉……! ごめん……!」 彼女もまた瘴気に還り、メダルを残して消滅。 鷲尾はガクガク震える足でなんとか盾座のところまで到着、消え行く身体を抱き起こした。 「馬鹿野郎っ……! 皆を守ったって、おまえが死んじゃ、なんにも……!」 「……これで、よかったの……。アヤカシとしての使命も全うした……セブンアームズとしての矜持も全うした……。もう、思い残すこと……ない……」 悲しみにくれる鷲尾を見下ろすように天秤座が立つ。他のメンバーは先程の連撃で力を使い果たし動けない。 だが天秤座はふっと目を伏せ、拾った獅子座と射手座のメダルをレネネトに向かって投げ渡しその場を去ろうとする。 「……どうしてなのです? あなたの行動は不可解な点が多すぎるのです」 「……ボクは分かってたよ……あなたが邪魔をしないって。あなたも、悲しい人だね……」 「……我は人ではない。天秤座ライブラである」 殺そうと思えば余裕でこの場の全員を皆殺しにできただろう。それをせずに去る意味がわからない。だが、優しく微笑む盾座の表情にそれ以上の追求は憚られた。 「頑張って……一葉。そして、ありがとう……みんな……」 最高の笑顔のまま消滅した盾座。洞窟に静寂が戻り、何事もなかったかのような静けさが訪れる。 しかし鷲尾の手の平に載せられた盾座のメダルだけが、激闘と悲劇を否応なしに突きつけてくるのであった――― |