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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 黄金に輝く88のメダルうち、3分の2を越えたところで、物語は最終局面へ―――? 「一葉さん。職場の先輩としてではなく、友人としてお願いしたいことがあるんですが。星見の間へ行く依頼を出してはいただけませんか?」 「記憶によると……星見の間っていうのは前にあなたが遠見した天井に星座が描かれている入り口のない洞窟のことね。普段亜理紗が突拍子もない事を言い出すのは知ってるけど……自分で出せばいいでしょう?」 「危険過ぎる『潜入』……ギルドが認めてくれるか分かりません」 「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ、却下されるかもしれない依頼を私の裁量で通してくれって言ってるわけ? それって『職権濫用』って事でしょうッ!?」 「行くのは開拓者さんと私です……一葉さんは書類に判を押してくれるだけでいい」 「ネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエネエ、 判を押すだけですって……私は健全な依頼人や開拓者諸氏ために依頼を受け付けてる人間よ……社会的に少しは有名なんだから。しかも! あなたは何が起こるかわからない星座アヤカシの重要拠点に殴り込みをかけるなんて言っているッ! 万が一のことがあった場合、遺族や私の嘆き悲しみは想像できない!!」 「『生還』をします」 「だから気に入った」 「ベネ(良し)。そうおっしゃっていただけると思ってました」 ある日の開拓者ギルド。 少し奇妙な雰囲気の中、職員の鷲尾 亜理紗と西沢 一葉は、依頼について話をしていた。 以前亜理紗は、星の一欠片の数が増えればそれらと星見の間を繋いでそこに移動する術を使えると言っていた。 そんな夢物語のような話を一葉は当初信じていなかったが、メダルが3分の2を越え条件を満たしたのだろう。亜理紗はさらっと星見の間へ行けるようになったというのだ。 だがよくよく考えれば亜理紗は有名なトンデモ術を使う陰陽師。失敗も多いが、ありえないとも言い切れなかった。 しかし、その移動術にはいくつか注意点というか問題点がある。 1つ、開拓者が使う分以外の星の一欠片を全て亜理紗が所持する 2つ、術の発動中、亜理紗は無防備になる 3つ、亜理紗も星見の間へ一緒に飛ばされる 4つ、亜理紗が一定以上のダメージを受けると術が解除され強制的に元の場所に戻される 5つ、件の術は一日一回のみ。練力や気力が回復してもこれは変わらない 「とりあえず今回は星見の間の調査をしたいんです。星座アヤカシの一匹や二匹迎撃に出てくるかもしれませんが、無茶はしません」 「是非そう願いたいわね。星見の間が何を意味する場所なのか……例の首謀者と思われる人影とか最強の十二星座とか、知りたいことは山ほどあるもの。さっき宣言したとおり、きっちり全員で生還しなさい」 「はい! ……ところで一葉さん、9月28日は一葉さんの誕生日ですよね。ちょっと気が早いですけどハッピーバースデー♪」 「気ぃ早っ! そういうのは当日やってくれない!?」 「勿論当日もやりますけど、ほら、ね? 私達の業務形態だと過ぎちゃうかもしれませんから」 「あー……まぁ、ね。ふふ、ありがと。誕生日プレゼント期待してもいいのかしら?」 「モチのロンですよ。楽しみにしててくださいね♪」 ついに反撃の時が来たのか、星座アヤカシの領域へこちらから仕掛けることが可能となった。 敵の迎撃に気をつけつつ、これからのための情報収集に努めていただきたい――― |
■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
アムルタート(ib6632)
16歳・女・ジ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●星に照らされて 「ここが、星見の間……」 「うひゃー、すごかったよねー。ビシュン! って感じで一瞬だったもんねー♪」 静花なる闇の中、天井に数々の星座が浮かび上がる。それはまるで夜空の縮図。 三笠 三四郎(ia0163)は呟きながらも素早く周囲に目を配り、敵対行動を取りそうな生物が居ないことを確認する。 くるくる踊りながら亜理紗に抱きつくのはアムルタート(ib6632)。想像していたような手荒い歓迎がないとわかったので、一先ず義姉の労を労っておこうというのだろう。 「あぁもナチュラルにお姉様に抱きつけるなんて……うらやまけしからんですわ……ギリギリ……!」 「なんだ、思ってたより明るいじゃないか。これなら後光は要らないな」 「あっれー、拾ってあげないのー? 相方でしょー?」 「誰が相方か。こっちはこっちで軽くトラウマっているんだ。余裕はない」 当初、邪魔者が居ないと喜んでいた各務 英流(ib6372)であったが、お目付け役(?)として来た義妹のアムルタートが亜理紗にべったりなので思うようにスキンシップが取れないらしい。 そうでなくとも敵の重要拠点に踏み込んでいるので、流石の何 静花(ib9584)もいちいちリアクションを取ってやれないらしい。叢雲・暁(ia5363)は今日も二人の漫才が見られることを少し楽しみにしていたようだったが。 「心眼にも反応なし……少なくともすぐに襲われることはないかな」 「ふむ……本当にどこにも出入口が見えない。完全なる密室状態ですね」 「かなり広いですね。20……いえ、30m四方くらいでしょうか」 真亡・雫(ia0432)は念の為に目に見えない敵の気配も探るが、幸いにも反応はない。それでも油断せず術を維持している亜理紗の側に立って護衛するのは雪切・透夜(ib0135)。頼もしき盾の騎士である。 レネネト(ib0260)はひとしきり辺りを調べた後、印を組んだままの亜理紗に問うてみる。 「以前遠見した時と違うことはあるのですか?」 「こんなに明るくなかったです。やっぱり天井の光る星座が増えたからでしょうか……」 その言葉に、一同は改めて天井を見上げた。 天井までの高さはおよそ5mほど。そこに所狭しと並ぶ星座の数々。 一つ一つが出す光はさほどでもないが、60以上もの光源が集まると流石に違う。ロウソク一本から焚き火に変わったようなものだろうか。 「んー? よく見るとメダルになってない星座も光ってるよ? ほら、射手座と……あれ何?」 「レチクル座ですね。あちらの竜骨座も光ってるみたいですけど……」 「見て、透夜くん。メダルになってるはずの蜥蜴座が光ってない。メダルと天井の絵は必ずしも同期してるわけじゃないみたいだ……」 叢雲の言葉に答えた後、雪切はまた別方向を指さす。その肩をとんとんと叩き、真亡が倒されているのに光っていない星座を発見する。 もう何が何やらだが、とにかく現在開拓者たちが所持しているメダルは大半が天井で瞬いているのだった。 「うーん、これ、どうやって光ってるんだろ。暖かくもないし、冷たい岩肌って感じー」 「横の壁も同じですが、どうやら普通の岩では無さそうですね。何さん、ちょっと彫ってみて貰えますか?」 「穴掘りは、地獄だ」 ナディエで跳び上がり光る星座を調べるアムルタート。三笠は隠し通路の有無なども念頭に入れ壁を調べていたが、何に彫刻具座で削岩を依頼する。 何の手にノミとトンカチが出現し、慣れた手つきでノミを岩に打ち付ける……が。 「ぬぉぉ……!」 かこーん! といい音が響いたものの、岩は少しも削れず何の腕が痺れるという結果だけが残った。 何の彫刻具座は彫刻をするときだけ物体の硬度などを無視できる効果があるが、それが無効化されてしまっている。どうやらこの星見の間全体がまっとうな岩ではないらしい。 しかし。 「むむっ! 気付いちゃったよー。みんな、上見てて!」 それを見ていた叢雲は、徐ろに顕微鏡座のメダルを発動させる。するとすでに光っている顕微鏡座の星図が、叢雲のメダル使用に呼応するように少しばかり光を強めまたすぐに元の光度に戻った。 「これは……何を意味するかは分かりませんが、ここの星座は星の一欠片にも共鳴するんですね」 「ところで、叢雲さんの顕微鏡座の効果は何なんですの?」 雪切と各務が叢雲に注目すると、叢雲は手で目を覆い隠しながら呟く。 「あ、ごめん。これ長い間使ってらんないや……」 叢雲の顕微鏡座=目が顕微鏡のようになり、極狭い範囲を拡大してしか見れないようになる 細かいものを見るときには便利かもしれないが、視界が数センチしか無くなってしまうのでは戦闘には不向きといえるだろう。 「そんじゃ私の望遠鏡座はどうかな〜。まさか暁とは逆に遠くしか見えなくなったりして!」 冗談交じりに望遠鏡座のメダルを発動させるアムルタート。その効果は…… アムルタートの望遠鏡座=現在地と関係のある場所のみを遠見できる 「……え、何アレ。洞窟の中に神社……? こっちは出発したギルドの裏庭……じゃああっちは何? ……誰か、居る……? ……うそ……あれって……」 「アムルタートさん、誰が居るんですか? お知り合いですか?」 「う……ん……。知り合いっていうかー……」 真亡に声をかけられても、珍しくアムルタートの歯切れは悪い。 バツが悪そうな表情で亜理紗の顔を見るその表情は、太陽のようないつもの笑顔とは程遠い。 「え、どうしたのアムちゃん。まさか私と同じ顔とか言わないよね?」 「ううん、違うよ。そうじゃないけど……」 何故かアムルタートが口ごもり、今度は全員の顔を見渡す。 ますますわけがわからなくなる一同の中、すでに山猫座のメダルを発動していた三笠に電流走る。 三笠の山猫座=3時間の間、数秒後に起こる厄介事を直感で悟れるようになるが、詳しい内容までは分からない 「この感じ……何か、来る……!?」 三笠の呟きに、一同が身を固くした瞬間。部屋の中央に一人の女声が現れた。 その女性はふぅ、と溜息を付くと、振り返ってこう言おうとした。 「ペガサス。居るならさっさと報告に―――」 その言葉は最後までは紡がれなかった。 振り返った先に目にしたのが、想定していたペガサス座の少年忍者ではなく、9人もの開拓者たちだったからだ。 しかし開拓者たちも動けない。その顔は、全員がよく知っているものだったから。 「…………一葉、さん…………?」 やっとの思いで言葉を絞り出したのは亜理紗であった。目の前の女性は開拓者ギルドの職員、西沢 一葉に瓜二つであったのだ。 セミロングの髪。知的なメガネ。違うのは、髪の色が黒ではなく銀であり、眼の色も黒ではなく真紅であるという点。 そう、別人ではある。明らかに別人ではあるのだが、偶然と言ってしまうにはあまりに容姿も声も一葉に似ているのだった。 目の前の女性は一瞬しまったという顔をしたものの、今更慌てたところで遅いと思い至ったのか、ため息を一つ吐いて気持ちを切り変える。 「……まさか星見の間に侵入されるとは。どうやった? ここは通常の手段で来られる場所ではない」 「おーっほっほっほ! 私のお姉様の力を見くびって頂いては困りますわ! 私への愛の力でお姉様も日々進化し続けているのですわーーーッ!」 「あえてツッコまないでおきましょう。女性に物を問うにしては無礼だとは思いますが……あなたこそ何者ですか? その顔……僕達のよく知る方にそっくりです」 「喋りたくないならそれでもいい。拳で聞き出すまで」 各務、雪切、何がすぐさま亜理紗の前に出て防衛体制に入る。その手際の良さと言葉の端々から、女性はすぐに察することができた。『あぁ、こいつらが例の開拓者たちか』と。 「少なくとも彼女はアヤカシです。心眼に反応しています」 「あのペガサス座をつかまえて報告を求めるということは、少なくとも彼の上司なのです。それはそのまま、貴女が首魁でもおかしくないという理由になるのです」 真亡、レネネトの言葉を受け、どうするべきか一瞬迷った女性だったが、ため息を一つ吐いて言葉を紡ぐ。 「……いいだろう。ここまで来られたことに敬意を評して答えよう。我が名は天秤座ライブラ。最強の十二星座にして、星座アヤカシを統括する者也」 その言葉を聞いて心の底からほっとする亜理紗。 一葉さんじゃない。姉のように接してくれた彼女を失うのは御免被りたい。その思いが強いのだろう。 「それじゃご褒美ついでにもう一つ! さっききみがいた神社は、導星の社ってやつかな〜?」 「そうだ。ここよりさらに地下深く……我ら星座アヤカシの総本山。そこに眠る最強の星座を蘇らせる事こそ我らが悲願」 「何故そんなことを、と聞くのは愚問でしょうね」 「その通り。我らはアヤカシ。強大な力で人間から負の感情を還元し更に強大なものとなっていく。我らに破壊の理由を尋ねるはお前たち人間に『何故生きるのか』と問うに等しい」 叢雲の問いにすんなり答えてくれたばかりか、三笠の言葉に補足までくれる。 口が軽いのか、それとも…… 「生かして帰すつもりがないってことかなー?」 「無論。元よりお前たちのことはそろそろ疎ましく思い始めていた。いくらなんでも図に乗りすぎだ、とな。いい機会だ……ここで終わらせてやる」 アムルタートの問いに、無感情な顔で静かに答える天秤座。 最強の十二星座の力……果たして――― 「『健康と不健康の均衡』」 『ッ!?』 ぽつり、と天秤座が言葉を口にした瞬間、開拓者たちを虚脱感が襲う。 動けなくなる程ではない。しかし全快とは程遠いレベル。それが、何の前触れもなく突然に……!? 「我は全ての均衡を司る天秤座。100では駄目だ。0でも駄目だ。50、中心でこそバランスを取れる」 「じゃ、じゃあ僕達も殺されはしないのかなー、なんて……」 「……我の能力では無理だな。全ての中心に状態をもっていくが故。ただし……」 空元気を出す叢雲の目の前で、天秤座は瘴気で剣を作り出す。 「直接手を下すなら話は別。素っ首叩き落としてくれる」 「……させないっ!」 叢雲を庇う形で割り込んだ雪切が、スィエーヴィル・シルトで剣を防御する。 疲労状態ではあるが、まだまだ動ける。50%も体力が残っているなら充分! 「守るといった……故に押し通す。悪いが譲る気はないな」 「ふむ……貴様が盾の開拓者か。ならばその盾……砕いてやる。『頑強と脆弱の均衡』」 「なっ……!」 天秤座が言葉を紡ぐと、雪切の持っていたアイギスシールドに音を立ててヒビが入る。 崩壊するほどではないし、補修すれば充分使える状態に戻るだろう。が、このまま天秤座の攻撃を受け続ければ……! 「透夜くん!」 「爆発四散させてやろうか!」 「姉ロリは私が守るんだからー!」 真亡、何、アムルタートがフォローのため突撃する。天秤座は機を見るに敏で、雪切に深追いはせず一旦バックステップで距離を取り、言葉を紡ぐ。 「『重力と無重力の均衡』」 「わっ、ちょっ!?」 星見の間の重力が半分になり、思いもせず高くジャンプしてしまう三人。体勢が崩れた所に天秤座もジャンプし、空中で三人を蹴りとばし地面に叩きつける! 「……流石に斬らせてくれるほど甘くはないか。……!」 空中で身を撚る天秤座。その頬を、レネネトのコップ座による水流レーザーが掠めていった。 薄く肌が切れ瘴気が漏れだすが、すぐに塞がってしまう。 天秤座が気を逸らした所に、開拓者たちは星の一欠片を一斉に発動させる。 三笠の小熊座=昼でも悪天候でも室内でも、常に北極星の位置を感じ取れるようになる 雪切の六分儀座=使用した後、次の斬撃が一度の振りで五連斬になる。武器に付与効果がかけられていると発動しない 真亡の冠座=味方一人につき一度だけ、その人にどんなことでも命令できる。第三者を傷つけるような命令は不可 レネネトの定規座=指定した敵が自身に5m以上近寄れなくなる 各務のインディアン座=手にした斧の刃に元の十倍の大きさのオーラが宿り、攻撃力+500 叢雲の時計座=10秒ごとに自身の体力が1%回復していく。傷は癒えない 「これは……一見無意味なようですが、この場所の特定に使えるかも……」 「六分儀と六分割って全然関係ない気もしますけど……役には立ちそう、かな」 「えっと……あれ、何も起こらない……?」 「これは便利なのです。魂よ原初に還れで一方的に攻撃なのです」 「天井に引っかかりそうで上手く振れませんわー!?」 「おおー? なんか体力が戻ってきてるけど、もうちょっと派手なのがよかったー!」 開拓者たちが星の一欠片を使う度、天井の星座たちも呼応し輝きを増す。 それはまるで星空の下、星座たちに祝福されているかのよう。星座の力を持つという星座アヤカシの首魁たる天秤座からしてみれば、配下の者が敵に力を貸しているようで面白くはない。 それに星の一欠片による付与効果や武装は彼女の『均衡』を突破してくる。大将という立場上、深追いはすべきでないが……? 「仕方あるまい。猟犬座カネス・ヴィナティキ、レチクル座レティクルム、出ませい」 天秤座の声に従い、浅黒い肌の屈強な男とあやとりを手にした少女が瞬間移動で現れる。と言うより、天秤座が召喚した感じか。 「流石に三体相手はきついか。使うぞー。続けて解除しろ」 「えっ……あ、はい……!」 何が牡牛座のメダルを使い、自身から目を開けていられないほどの大量の光を放射する。これには流石の天秤座たちも一瞬視界を奪われ、その隙に亜理紗は印を解き術を解除する。 すると開拓者たちの姿は一瞬で掻き消え、星見の間に静寂が戻ったのだった。 「……しまった。まるで太陽だな……。ペガサスに怒られてしまうか……」 少しばかり眉を寄せた天秤座であったが、ため息を一つ吐き星見の間から姿を消したのだった――― ●傷 術が解除され、一同はギルドの裏庭に出現した。明暗の差に思わず目が眩んでしまう。 「あら、お帰り。何か成果はあった?」 その声に一同はぎょっとして得物を構える。ようやく目が慣れてくると、そこには見知った黒髪の女性……西沢 一葉がびっくりしたような表情でこちらを見ていた。 「ど、どうしたのよ。そんな物騒なもの向けないでくれる?」 安堵の息を吐き座り込む開拓者たちを見て、一葉は疑問符を浮かべるだけであった。 ……と。 「……一葉さん? そのほっぺ、どうしたんですか?」 「え? ……あらやだ、いつの間に切ったのかしら。血は出てないみたいだけど……痕になっても嫌だから治してもらえる?」 「……は、はい……」 そこはレネネトの水流レーザーが天秤座の頬を掠めたところと全く同じ場所。 何か得体のしれない不安に襲われる亜理紗であった――― |