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■オープニング本文 天に瞬く星々の、輝き受け継ぐ黄金の印。 時は現在、場は集星。今、星座の力を持つアヤカシたちとの戦いが激化する――― 星の一欠片(スターダスト・ワン)。それは八十八星座が描かれた黄金のメダルである。 複数の星座アヤカシが同時出現することが多くなり、メダルの総数は3分の2にもなった。 激闘続く星座アヤカシとの戦いは、もう戦っていない星座の方が少なくなってきている。 最強の十二星座が望む最強の星座の復活。それによってもたらされるものは、やはり人類への恐怖と脅威か――― 「さて今回の星座アヤカシは、ペルセウス座ペルセウス、定規座ノルマ、帆座ヴェラの3体よ」 「おや、物品系が混ざってますね。ということはペルセウス座が残りの二体を装備している感じで?」 「ブブー。ハズレ。全部独立可動式のアヤカシよ」 ある日の開拓者ギルド。 職員の西沢一葉と鷲尾亜理紗は、今日も今日とて星座アヤカシの依頼を受け持っている。 これに忙しくて普通の、もしくは面白おかしい依頼を扱えないのが最近の悩みなんだとか。 「ペルセウス座は15歳くらいの美少年。戦闘力自体はそこそこだけど、厄介なのは目を合わせたものを石化するゴルゴンの盾を持ってること。彼を倒せば石化は解けるみたい。定規座はまんま、こういう定規に手足が生えた感じ。能力は自分と相手との距離を誤認させること」 説明しつつ手元の定規で自分の手のひらをぺしぺし叩く一葉。さらっと言ったが、ペルセウス座の能力は恐ろしい限り。 「帆座は風を操るくのいちって感じ? 羽織ってるマントみたいな帆を使って自由自在に空を飛び、空中から手裏剣やら毒の吹き矢やらで攻撃してくるからこれまた注意ね」 「ふぇぇ……物品系は装備品とばかり思われるのが嫌だからってぇ……」 正直、一体が二体を装備してくれている方が対処は楽だ。今回のように三体が三者三様の能力を持っていると非常に厄介である。 亜理紗ではないが弱気にもなりたくなる。しかし、これから更に戦いは激化していくのだろう。 「今回はちょっとヤバそうな気配がするから、必要とあらばあなたも援護に付いて行っていいって。要望があったら同行してね」 「はい。足を引っ張らないように頑張りますっ!」 石化、距離誤認、飛行射撃。どれも軽視できる相手とはいえない。 88星座全撃破の時は、一歩、また一歩と近づいている――― |
■参加者一覧
北條 黯羽(ia0072)
25歳・女・陰
鷲尾天斗(ia0371)
25歳・男・砂
真亡・雫(ia0432)
16歳・男・志
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
雪切・透夜(ib0135)
16歳・男・騎
レネネト(ib0260)
14歳・女・吟
各務 英流(ib6372)
20歳・女・シ
何 静花(ib9584)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●勇者の盾を打ち破れ! 「お前たち、ロクに背景のない星座のくせに生意気だぞ!」 「神話があればえらいってもんでもないっちゃ!」 「フン、そういう貴様も人型でない我を愚弄したではないか」 現地に着いた開拓者たちが最初に見たものは、口喧嘩をする三体の星座アヤカシの姿であった。 この隙に奇襲を仕掛けたいのは山々だが、生憎平原であるため隠れる場所はない。開拓者の接近は相手もとっくに気付いているだろう。 その証拠に、三体は開拓者たちの方へ『めんどくさいなぁ』という風のしかめっ面を投げかけた後、こう続けた。 「仕方ない……決着は後でつけるっちゃ。どうせ空を翔けるウチの圧勝だっちゃ」 「フン、よかろう。精々空を逃げまわり盾の影に隠れているがいい」 「距離誤認などという地味な能力で奴らが倒せるかな? 強敵だという話だぞ」 駄目だこいつら……早く何とかしないと。開拓者たちは違った意味で戦慄する。 こいつらを喋らせておくと本気でこちらの存在を食われかねない。見敵必殺迅速果断あるのみ! 開拓者たちは予め決めておいた作戦の通り、相手を選んで散会する。 即ち、 北條 黯羽(ia0072) 何 静花(ib9584) VS ペルセウス座 レネネト(ib0260) 鷲尾 亜理紗 真亡・雫(ia0432) 相川・勝一(ia0675) VS 定規座 各務 英流(ib6372) 鷲尾天斗(ia0371) 雪切・透夜(ib0135) VS 帆座 以上のような図式が出来上がったわけである。 仲が悪く協力する気などさらさらないアヤカシタチもまた、開拓者の意図に気づきつつもそれに応じる。 一つの戦場で3つの戦い。その口火が切られようとした時だった。 ずどぉぉぉん! と大地を揺るがし轟音とともに現れたのはペガサス座の白忍者。どうやらペルセウス座たちが心配でやって来たらしい。 「……君達、本当に大丈夫なのかい? 何度も言うようだけど、星座アヤカシ同士仲良く―――」 しかし彼が鷲尾 亜理紗の姿を戦場に認めた瞬間、彼の表情が一変する。 どうして!? 何故彼女がここに!? 口に出さずとも表情がそれを物語っている。ペガサス座がここまで動揺し感情を露わにしたところを開拓者たちは見たことがなかった。 「え……わ、私ですか? えっと……お会いしたことありましたっけ……?」 居心地の悪さに頬を掻く亜理紗。しかしペガサス座は苦虫を噛み潰したような顔をすると、例の凄まじい脚力と翼であっという間に姿を消したのだった。 「……何しに来たンだい、あいつは」 「亜理紗さんを見て驚いていたのです。また亜理紗さんの一族が絡んでいるのですか?」 「し、知りませんよう! もう私、天斗さんしか家族いませんし!」 「マッポーの世の一側面を見たようなアトモスフィアだったな。ならばそのマッポー、この場に作り出してくれる」 ペルセウス座に当たる面々が一番に我に返り戦闘を再開する。気持ち遅れてペルセウス座もゴルゴンのレリーフが彫られた盾と剣を構え、迎撃体制を取った。 盾のレリーフはまるで生きているかのように目を見開き、開拓者たちを石化させるべく視線を揺らめかせている。 「ほれ、これを壁代わりに使うといい」 そう言って、何は三角座のメダルを使い赤青黄の光の三角片を仲間に配って回る。 ゴルゴンの盾の効果は視線を合わせたら発動なので、これで遮っておけば防げるだろう。 「ありがたいけど、静花はどうすンのさ」 「真上に絶対出るから敵を目で確認しても無駄である」 そう言って取り出したのは飛魚座ボランス=サンのメダル。これを発動した瞬間、何の身体はペルセウス座の真上5mの所に瞬間移動する。 これは知っている者でないと対処が難しい。事実、ペルセウス座は勿論、歴戦の開拓者である北條ですら何がどこに消えたのか一瞬わからなかった。 「紅砲スマッシュ! イヤー!」 何のアンブッシュは完璧であった。その拳から放たれる紅砲は確実にペルセウス座の脳天を捉えるはずだった。しかし明らかに自らの意思を以って、ゴルゴンの盾が何に向きなおる……! 「ちっ!」 反射的に目を腕で庇い体勢を崩す何。落ちてきたところを剣で斬りつけるペルセウス座。何は腕に斬撃を受け、草の上を転げて止まった。 「今の……盾が勝手に動いたように見えたのです」 「オートガードだって? 厄介だが……錆びてまで同じことができるかもンかね!」 錆壊符と呼ばれる術でゴルゴンの盾を錆びさせようと試みる北條。 ペルセウス座の強さはあの盾にほぼ集約される。ならばそれを使い物にならなくすればいいだけのこと。 放たれた符がスライムのように変化し盾に貼り付く。そのまま朽ち果てる……かと思われたが。 「馬鹿め! 僕の盾はこんなものじゃ錆びたりしない!」 剣を振りかざしそのまま襲ってくるペルセウス座。だが開拓者たちは一人ではない。北條と亜理紗に向かって突撃しているペルセウス座の真横から、レーザーめいた水流が! これまたゴルゴンの盾がオートで水流をガードしてしまったが、レネネトは何に作ってもらった三角座のプレートのお陰で不意にこちらを見られても目を合わさずに済んでいる。 「北條さん、メダルを使ってみましょう!」 「やってみようじゃないか。竜が出るか蛇が出るか……!」 亜理紗と北條はそれぞれメダルを手に発動させる。北條は竜座、亜理紗は祭壇座である。 北條の竜座=目の前の地面から龍の頭の形をしたオーラが飛び出る。壁用。 亜理紗の祭壇座=気力と練力が、その戦闘中のみ通常の3倍になる 「僕のゴルゴンの盾は、目さえ合えばオーラでも石にする!」 北條が創りだしたオーラの竜頭が即石化する。足元から徐々にではなく一瞬のノータイムだった。 冗談じゃない……そう戦慄する亜理紗だったが、北條は不敵に笑う。 「なら視界を奪われても同じことが言えるのかねぇ」 暗影符。それは対象に黒い霧のような式を纏わりつかせて視界を奪う術。 これを受けたペルセウス座は、闇の中に放り込まれたに等しい。開拓者の姿を見ることもできないし、開拓者側からもゴルゴンの盾を見ることができない。即ち石化は完全に封じられていることになる。 そこにレネネトが魂よ原初に還れを発動。範囲にいる星座アヤカシ全てにダメージを与えた! 「くそっ! こんな小細工でこの僕がやられるものか!」 「小細工だけならな」 「!?」 飛魚座のメダルを使い、再びペルセウス座の真上に現れた何。このメダルも相手が霧に包まれていようが関係ない。 「しかし! ここまで近づけば!」 オートガードでゴルゴンの盾を何に向ける。勿論何は視線を逸らしているので盾の上に落下するだけに留まる。 ……が。 「調子に乗っている奴から負ける、石化がなんだと言うのか」 「お仕置きの時間ってヤツだぜィ?」 「!?」 白い綿を被った北條……いや、これは白面式鬼か。盾を上に向けたところを狙い、北條が白面式鬼を走りこませていたのだ。 その腕がペルセウス座の胸部を貫き、その直後に白面式鬼は消滅した。 「がっ……! く、そ……!」 「レーザーめいた水流でしめやかに爆発四散なのです」 「今度こそ紅砲スマッシュ! イヤーッ!」 「グワーッ!」 レネネトと何の連続攻撃が決まり、ペルセウス座はあえなく爆発四散、メダルを残して消滅したのだった――― ●蜃気楼のように 時を少し巻き戻し、こちらは定規座と戦う真亡、相川、各務。 前情報にもあったとおり、定規に手足が生えた異質な風体のアヤカシだが、その距離誤認能力は確かなものだった。 「見た目はアレだが力は厄介そうではあるな。が、まずはどの程度厄介か試させて貰う!」 と、相川を始め三人共息巻いていたのだが……相手から殴りかかってきたのでそれを回避し反撃すれば実は横に3mもずれていたとか、逆に相手との距離が5m近くもあるから大丈夫と高を括っていたら実はすぐ傍にいて蹴り飛ばされた……等々。 モーションもなく、毎回誤認する距離もバラバラ。接近戦を挑むにはあまりに酷な相手といえる。 「これで本体をぐにゃぐにゃにして、能力を発揮させられなくしてやるのですわーッ!」 「しかしやはりなんというか、格好だけはコミカルで困るな。この相手は……」 業を煮やした各務と相川は星の一欠片を発動させる。 各務の炉座=空から無数の石炭が降ってくる。一定時間経つと消滅 相川の小犬座=嗅覚が通常の数百倍になる 「この黒い石、何か役に立ちますの……?」 「俺のは役に立つ! おぉぉっ!」 「むっ……!」 目ではなく嗅覚で定規座を追う相川。チェーンブレードを手に、目を閉じ微かなアヤカシの匂いをたぐり寄せる! 振り下ろした剣を定規座は腕でガード。遠くから見ている真亡には、二人の距離は2m近くあるように見えるが……。 「これが音に聞こえた星の一欠片! 侮り難し!」 近接戦闘を繰り返す相川と定規座。各務と真亡は見ているしかない。 しかし、真亡はふと思い出し小狐座のメダルを発動。自動追尾式の小狐爆弾を出現させた。 「いつもご苦労様。あの定規座に近づけるかい?」 オーラでできた小狐はこくりと頷くと、とてとてと定規座目指して走って行く。 そして相川が定規座と一旦距離を取ったタイミングを見計らい、真亡からは定規座と7m以上離れているようにしか見えないところでジャンプし……爆発した。 「ぬわーーーっ! 馬鹿な、こうも的確に我を捉える!? すわ何事!?」 「やはり星の一欠片の効果だけに惑わされないんですのね……」 「でも各務さんのカシオペア座は止めた方がいいですよ。あれ、自分で狙いをつけるんでしょう?」 「フ、雫の小狐はいつも奥ゆかしくて何より。ならば俺のエリダヌス座も照覧あれ!」 仮面を付けた戦闘中の相川は、普段のように気弱な少年ではない。未知のメダルにもガンガン挑戦する意欲と勢いがある。 勿論、それだけで星の一欠片が良い効果を発揮してくれるとは限らないが、たぐり寄せることもある。 相川のエリダヌス座=戦場全域に深さ10センチ程度の水を張る。地面に染み込んだりはしない 普段なら疑問の残る効果だが、定規座に対してだけは致命的に有効である。今定規座がいるように見えるところから斜め後方5mほどの所に、水面が2つ穴を開けている……! 「流石勝一くん! その勢い、乗らせてもらうよ!」 真亡はそこに向かい、刀を構えて駆け出した。続けて八分儀座のメダルも発動する。 真亡の八分儀座=武器を横薙ぎに振った場合、10m先まで八分儀型の軌跡が出る。(射程延長、攻撃範囲増加) 正確な位置がほぼバレた上、扇のような横に広い斬撃一閃。とっぽい自分では身を伏せても間に合わない。直感でそれを悟った定規座は、全力で上に跳躍する。 通常の斬撃と違い、軌道変更できないので真亡の一閃はあえなく躱されてしまった。しかし定規座が安堵の息を吐くことは無い。 彼の目の前には、猛スピードで突っ込んでくる定規座の姿が……! 「これなら遠近感など関係ない! 進路上の物は全て跳ね飛ばすのですわーッ!」 着水した水飛沫を頼りに、カシオペア座で加速し体当たりを敢行する各務。咄嗟に腕をクロスさせてガードするが、そのあまりの突進力に定規座は大ダメージを受け跳ね飛ばされた。 「距離を誤認させてくるのであれば……こちらは武器の間合いを誤認させてやる!」 相川のチェーンブレードが空を裂き唸りを上げ、空中に投げ出された定規座の体を真っ二つにした。 そこにトドメとばかりにレネネトが放った魂よ原初に還れが直撃し、末期の台詞さえ吐けずにメダルを残し消滅したのだった――― ●風を受けて また時は逆上り……帆座と相対する鷲尾と雪切に焦点を移す。 「空戦ならお任せを。こういうときにはもってこいですね」 「俺の名を冠した星座! 飛べたらイイなァ!」 蝿座のメダルでシールドにオーラのブースターを付与した雪切と、 鷲尾の鷲座=背中に鷲の翼が生え、飛行できるようになる。ただし夜目が効かなくなる を得た鷲尾は帆座と激しい空中戦を行っていた。 元より他の援護をするつもりのない帆座は、マントを巧みに操りまるで宙を舞う羽毛のようにひらりひらりと攻撃を躱し手裏剣や吹き矢などで反撃する。 『って言うかよォ、本人に当てなくてもあのマントに穴を空けたら落ちるんじゃね?』 当初はそう考えた鷲尾であったが、まず攻撃が当たらないこと、雪切のチェーンブレードが掠めても傷一つ付かなかったマントを見て、あれは普通の素材ではないのだと判断した。 帆座の使う得物は一発一発が軽く、盾を使う雪切は勿論、鷲尾にも致命傷を与えるのは難しい。また、上空からの狙撃という位置アドバンテージが無くなってしまっている以上、帆座の真価は発揮できていない。 それはつまり…… 「オラオラァ! 砲撃銃撃、お好きな方をどうぞってかァ!?」 「面攻撃はどうでしょうね?」 「くぅぅっ!? 何さこいつら、ウチと相性悪すぎっちゃ!」 撒菱を空中で撒いて避けようのない面攻撃を繰り出すなど、雪切は空中戦というか蝿座のメダルに大分慣れている。一方、鷲尾は初使用だけありまだ不慣れな感じは否めないが、地上では絶対にできないアクロバティックな射撃戦を展開できる。 以上を加味すれば、帆座の勝利は九分九厘無い。問題があるとすればきっちり当てる方法だけだ。 「戦闘前には何も起こらなかったんだよなァ……だがやってみる価値はある。亜理紗、双子座だァ!」 「天斗さーん、双子座の片割れ持ってるのはレネネトさんですー!」 「なんでだよォ!? しゃーない、レネネト、力貸せやァ!」 「こっちも忙しいのです……」 「僕も試してみようかな……麒麟座」 蝿座と鷲座を解除し一旦地面に降りる二人。星の一欠片は同時に起動するとヤバい。 この時点ではまだペルセウス座と戦闘中のレネネトにも声をかけ、メダルを発動! 鷲尾とレネネトの双子座=二人が活性化させているスキルを共有できるようになる 雪切の麒麟座=目標に雷を落とす。知覚依存威力500。空が見える場所でなければならない 「あ」 文字通り雷に打たれた帆座は、意識がトんだのか地面に墜落する。元々頑丈な方ではないようだ。 慌てて飛び起きたものの、目の前には得物を突きつける鷲尾と雪切の姿が……。 「透夜、既婚者(リア充)の底力見せつけてやったなァ」 「僕にも守りたい人がいます。残念ですが、君に負けてあげる訳にはいきませんよ。……それとね?」 『主役は僕たち(俺たち)だ』 無慈悲な聖堂騎士剣と二丁乱舞が炸裂し、帆座はあえなく消滅した。 最大の敗因は、やはり制空権を取れなかったことであろう――― |